内容紹介
劣等感とやり場のない怒りを溜め、埠頭の冷凍倉庫で日雇い仕事を続ける北町貫多、19歳。将来への希望もなく、厄介な自意識を抱えて生きる日々を、苦役の従事と見立てた貫多の明日は――。現代文学に私小説が逆襲を遂げた、第144回芥川賞受賞作。
芥川賞が面白いと感じたのは初めてかもしれない、薄い本なのにこの説得力はなんだろう!あるいは読んじゃいけないものを読んじゃったような妙な背徳感。
今やおしゃれで知性的な小説が溢れる世界で、こんなドブの中でもがくような私小説がなにゆえ新鮮に感じられるのだろう。
武闘派太宰治ってとこか。
解説で石原慎太郎も書いていたが、社会の底辺に這いつくばってる身上だからこそ生まれるリアリティ。賞を獲って小説が売れて裕福になった著者にこれほど魅力ある作品が書けるのかどうか?
短くて読みやすいし昭和初期みたいな古臭い文体がとても魅力、本好きならお薦めです。