内容(「BOOK」データベースより)
別れた妻が殺された。もし、あのとき離婚していなければ、私はまた遺族になるところだった。東野圭吾にしか書けない圧倒的な密度と、深い思索に裏付けられた予想もつかない展開。私たちはまた、答えの出ない問いに立ち尽くす。
すごい勢いで著作を頻発し続ける東野圭吾、それがほとんどハズレ無しってのがまたすごい。ベストセラー作家の王道をひた走る。
しかし今回は重かった、軽い作風のものに混じって時々この手の重厚感のあるミステリを書いているが、その「重厚もの」にはだいたい共通したテーマが在るように思える。
「罪と罰」っていう感じかな。
犯罪を犯す者とその被害者遺族、それらへのスポットを強く当て少年法を含めた現行刑法の矛盾、死刑の是非などを事細かく物語に織り込んで、読むたびにじっくりと考える機会になってる。
そのテーマを重んじるため結果として推理要素はさほどのものじゃないんだけど、そこも逆に「東野風味」になってるか。あまり本格推理ものに適したテーマじゃないしね。
あえて苦言を呈せば、いささかパターン化したストーリーと感じる所かな。後半になるとだいたい材料が出揃って「ああこんな感じで大団円か」と予想する通りに終結するという、だからって読者に突きつけた濃厚なテーマは微塵も薄まらないのでこれでいいのでしょう。
文章が簡易で読みやすいため厚そうでもすぐ読み終わるってのもベストセラーの秘訣かな。
色々言ったけど、普通におもしろいですよ。