石匠風間ブログ!

読書、音楽、雑学

シュレディンガーの猫(量子論3)

2003-10-01 | 科学
さて、シリーズ第3弾は前回までの整理から。電子などミクロの世界では物質は我々の常識とはかけ離れた性質を持っている、電子のダブルスリットの実験などによって粒の性質と波の性質をあわせ持つことがわかった、観察すると粒状だが見ていないときは波のように広がっておりいろいろな場所にある状態が重ねあっているという。

やっぱりうまく説明できないが、科学者にも明快な説明は出来ないのだから仕方ない。とにかく何でそうなるのかわからないが、そうなっているといろいろなことに説明できるそうで、ここから半導体や超伝導などの最新ハイテクが生み出されている。

で、その波を物質波といって、「そういうものがあるらしい」というレベルでの話で観測は出来ない。観測しようとすると粒になってしまうから。量子論の主流を行く『コペンハーゲン学派』はそういった考え方で深く追求することをやめてしまった。

ここにシュレディンガーという学者が登場する。彼が最初に学会に登場するのは「シュレディンガー方程式」、複素数を用いて物質波の広がり方を計算するというもの、これによって量子力学は飛躍的に進歩したのだが、彼自身は量子論に関わったことを後年悔やんでいる。つまりアインシュタインと同じくコペンハーゲン解釈に反旗を翻したのだ。主流量子論に対し彼は有名なパラドックスを唱えた、『シュレディンガーの猫』である。

鉄の箱の中に放射性物質と検出装置それに連動した毒ガス発生機を置く。放射性物質が原子核崩壊を起こすと放射線を出しそれを検出して毒ガスが発生する。この箱の中に猫を入れる。放射線が出れば当然猫は死ぬ、出なければ生きている。外からは箱の中は見れない(猫は生きていても音を立てないものとする)。こうして1時間経った、さて猫の運命は?

猫の生死はふたを開ければすぐにわかる。シュレディンガーが問題にしたのは開ける前の猫の状態をどう考えるかである。1時間以内に原子核崩壊の可能性は50%とする。こういう条件のとき量子論では「原子核が崩壊した状態と崩壊してない状態が重ね合わさっている」と考える。では猫の状態は?これも量子論に基づくとふたを開けるまでは(観測するまでは)死んだ状態と生きた状態が重ね合わさっているという奇妙な結論に至る。

前回も書いたが、誤解しないで欲しいのは猫は生きてるか死んでるかどちらか決まっていてそれを知ることが出来ないのではなく、観測するまで猫の生死は決まっておらずふたを開けたとたんに猫の生死が決まるということ。そんなバカなことがあるかとシュレディンガーやアインシュタインは反論しているわけだ。

さあ、このパラドクスを解く離れ業が『多世界解釈』だ。もととなったのはアメリカの大学院生エヴェレットの論文「パラレルワールド論」。並行宇宙論ともいい、はっきりいって漫画の世界だ、常軌を逸している。

この論によると、世界は可能性の数だけ複数に分かれていく。「猫が生きている世界」と「猫が死んでいる世界」が並行して存在する。そして我々も「生きている猫を見る我々がいる世界」と「死んでる猫を見る我々がいる世界」に分かれていく。大体これらの前に「実験をした世界」と「実験をしなかった世界」に分かれるし、ああ~、きりがない!

というわけで多世界解釈によって量子論を非常に素直に解釈することが出来るんだって。できるかぁ?詳細は次回、請うご期待。