ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

師家所蔵 オープンリールテープのデジタル化大作戦!(その4)

2011-01-17 21:25:17 | 能楽
熱が出ました~ つらかった~ 週末は台無しでした…。楽しみにしていた 伊豆の「どんど焼き」を見に行く計画も断念。(T.T)

さてさてオープンリールですが、こうして重宝がられて録音された音源もやがて時代の趨勢によってカセットテープなどの別のメディアに取って代わられ、オープンリールデッキさえも納戸の奥にしまい込まれる運命を辿ることとなりました。

今回発掘調査したのがこの聞かれなくなったオープンリールテープで、調査にあたってリストを作るところからスタートしたわけですが、結果は昭和30年が最も古い録音…と前述したのですが、昭和27年の『石橋』の録音が出てきました。昭和27~30年といえば、師家としては戦災で品川にあった高輪能楽堂を失い、また現在の 東京都渋谷区にある師家の稽古舞台も建っていない頃ですから、ご苦労が多かった時代ではないかと思いますが、それでもそんな当時にこれほど録音にバイタリティが傾注されていたのですから、やはりテープデッキというものは夢の機器の登場であったのでしょう。

さて録音されていた内容ですが…これは大変に貴重、重要なものばかりだと言えると思います。ちょっと例を書き記してみますと…

『石橋』大獅子(昭和27年)
『融』十三段之舞(昭和30年)
『鸚鵡小町』(昭和31年)
『高砂』八段之舞(昭和31年)
『三輪』誓納(昭和33年)
『乱』双之舞(昭和33年)
『姨捨』(昭和41年)
『木賊』(昭和43年)
『鷺』(昭和43年)

ここまでは ぬえにとっては先代の師匠(故人)がシテを勤められた音源ですが、よくまあ これほどまでに大曲がズラリと並んだものだと思います。

一方、ぬえの今の師匠がおシテを勤められた曲の音源もいくつかありました。

『翁』(昭和31年)
『望月』(昭和32年)
『道成寺』(昭和33年)
『富士太鼓』現之楽(昭和40年)
『融』十三段之舞(昭和40年)

昭和31年~40年ということになると、ぬえの今の師匠が15歳~24歳という計算になりますね。…え?? 師匠ってば高校生の頃にすでに『翁』『望月』を勤められたのです?? (@_@;)

…まあ、現在とはまたいろいろと事情が違ったのでしょうが、それにしても若い頃に重い曲を次々に勤められたのはお家の跡取りとしての自覚も、父親…先代の師匠の教育も相当に強く発揮されなければ実現しないでしょう。…そういう家の事情や方針ということもまたあるのですが、そのほか ぬえはこの上演曲を見て、今より決して公演回数が多いはずはなかった当時の、それでも現代をはるかにしのぐような能楽界の活気みたいなものを感じます。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿