ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

狩野川薪能、大成功で終了しました!(その1)

2008-08-25 08:59:00 | 能楽

8月23日(土)、伊豆の国市で行われた「狩野川薪能」は大成功のうちに終わりました。半年間の稽古の成果は遺憾なく発揮されて、よい催しになったと思います。

ぬえは前日に東京で能の公演(←やっぱり小学生対象の能楽鑑賞会でした!)に参加してから伊豆に入って子どもたちに稽古をつけて、翌日の薪能当日はやはり子どもたちに最終稽古をしてから本公演。終了後は装束を片づけてから。。東京に戻ったのは午前0時をまわっていました。そのまた翌日。。つまり昨日の日曜は朝から師家のお蔵に装束を片づけに伺い、昼からは観世能楽堂で師家の月例会に参加。。と、まあ目が回るような忙しさではありましたが。。

また、薪能当日は残念ながらの荒天で、伊豆の国市のシンボルの岩山・城山直下の狩野川河川敷特設会場は使えず、やむなく会場はまたしても伊豆長岡の「アクシスかつらぎ」ホールに変更となりました。これで3年間連続の雨天会場への変更で、「狩野川薪能」の唯一の泣きどころなんですよね~。誰が雨男なんだ?。。はい、それは ぬえ自身なんです。。たぶん。

それでも催し自体は、子どもたちも今までの稽古の中で一番良い舞台になったと思います。ぬえが見ている範囲では子どもたちは ほぼノーミスでしたね。声もよく出ていたし。本公演の約3時間前、舞台の設営が終わったところで、公演の第一部となる子どもたちの発表会の最終稽古をしましたが、このときには緊張からか、いつもの稽古よりも少しミスが目立つように思いましたし、またふだんよりも大声を出そうとして咳き込む子もいたり。。大丈夫かな~ と思わせる場面も多かったのですが、本番ではみごとにみんな緊張を跳ね返しての熱演となりました。

実行委員会の責任を一手に引き受けておられる遠藤宏さん、望月良和・伊豆の国市長のご挨拶のあとに、まず第一部として上演された子ども発表会では、小2~4年生による大小鼓の連調『高砂』、小中学生全員。。総勢28名の出演による子ども創作能『江間の小四郎 ~波頭の出~』、中学生の仕舞『吉野天人』、小中学生の連管『中之舞』が演じられました。

連調は『高砂』の待謡の部分を ぬえらが謡い、それに合わせて7名の小学生に大小鼓を打ってもらいました。鼓の手組は少し簡単にしたとはいえ、下は小学校2年生の女の子(←とってもよく出来る。年頃になって恥ずかしさの気持ちが出てこないで、このまま成長してくれるとうれしいな~)から4年生まで、しかもほとんどの子が薪能初体験。。ということは鼓も稽古ではじめて見たような状態なわけで、それにしてはよく声も出て、また鼓も鳴りましたね。ふだんの稽古では ぬえが下稽古をしておいて、大倉正之助氏(薪能の発起人で総合プロデューサー)が伊豆に来られる機会に時折 子どもたちの稽古を見て頂きました。

当日は大倉さんは人数分の鼓を持参したのですが、驚いたことに子どもたちに使わせた大鼓の革はすべて本物でしたね。最近は小鼓も大鼓も稽古用に合成の革があって、これは手入れも要らないし、そのうえ簡単に鳴らすことができるので、アマチュアのお弟子さんの稽古にはとっても重宝しているのだそうです。今回はなぜ、しかも小鼓と違って消耗品である大鼓の革に馬の革の本物を使ったのか。。あとで大倉さんに聞いてみたところ、合成皮革の大鼓の革はとんでもなく固くて、小学生とはいえ思いっきり打つと手を痛めてしまうのそうです。大鼓方の能楽師のように指革を右手の指にはめて打つ、いうなれば稽古が進んできたお弟子さんであればよいのですが、今回のように囃子の体験の延長にあるような発表会に出演して素手で大鼓を打つような場合には向かないのだそうで。。は~、いろいろ専門家の道は ぬえが知らないことがたくさんあるもんです。

画像は ぬえの『嵐山』。
シテ=ぬえ、前ツレ=桑田貴志、子方=増田綸子・八田和弥、ワキ=森常好、ワキツレ=森常太郎・則久英志、笛=寺井宏明、小鼓=久田舜一郎、大鼓=大倉正之助、太鼓=三島卓、後見=中村裕ほか、地謡=中森貫太ほか(敬称略)のみなさんの出演です。(不許複製です)
能楽写真家の渡辺国茂さんからご提供頂きました。深謝致します~


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