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ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

頂きました~(その1)

2009-11-15 01:34:56 | 能楽

どうもバタバタとしていまして、なかなかブログの更新ができません~ すみません~m(__)m

さて、それならば そんなに ぬえは今忙しいのかと言うと、ん~そうでもないんですが。。 それでもこのところ細々とした仕事が多くて、なんだか落ち着きません。とは言え、昨日はお弟子さんのお仕舞の稽古の参考にと、基本の型を集めたDVDを作っておりました。まず自分が舞っているところをビデオに収めて、それに型の解説やコツなどを別録りしてキャプションとして加えて。もう1日がかりの作業でしたが、なかなかお弟子さんも仕舞の習得には困っている様子も見受けられるので、参考になればいいな~、と思っております。

こういった仕事の傍ら、最近はいろんなモノを頂戴する機会に恵まれました!
最初はこれ! 今年五月に師家の月例会で舞った『殺生石・白頭』で使いました面「野干」ですっ

話せば長いことながら、経緯をまとめますと。
この面は師家所蔵の古い「野干」を写したもので、作者は ぬえのためによく面を打って下さる能面師・村上稔氏です。といっても村上さんは無名なのでご存じの方はないと思いますが。。

村上さんと ぬえが出会ったのは、今から20年くらいも以前のことになります。謡のお稽古に見えたのですが、お稽古自体は諸事情もあって1年ほどしか続きませんでした。ところがその出会いの時にすでに村上さんは面打ちは10年以上の経験をお持ちで、ぬえも何度か村上さんの作になる面を見せて頂いたりしておりました。当時 ぬえはまだ書生でしたし、また ぬえは一代目の能楽師なもので、親から譲り受けるような面も装束も道具も、なあんにも持っていませんでしたね。ですから ぬえにとって村上さんの面は、はじめて自由に触らせて頂ける能面でしたし、あこがれを持ちましたですね~。

そうしているうちに ぬえは思いついて、村上さんの打った面を師匠にお見せしてご批評を仰いでみることを村上さんに提案してみたのです。村上さんは「アマチュアの打ったものですから。。」と恐縮されていましたが、まだ経験の浅い ぬえにも村上さんの面が平均以上に優れていることは気づいていましたから、無理にお勧めして、面をお預かりして師匠にお見せしてみることになったのでした。

能楽師にもいろいろな方がおられますが。。ぬえにとって幸せだったのは、ぬえの師匠が能楽界の中でもずば抜けて面に対する造詣が深いことです。これは ぬえが能の世界に飛び込むまでは知らないことでしたが。。師匠は村上さんの面をご覧になって「なかなか筋がよろしい」とすぐに褒めてくださいました。続けて、「ただ、ここは もっとこうした方がいいんだよ」「この種類の面はここを見るんだ。ここが良くできていなければすべてダメだから」とご批評も。。いや、正直驚きました。ぬえが思ってもいなかったところを師匠は見ておられたんですね~。

早速 ぬえは師匠のご批評を村上さんに伝えました。今から考えれば、ここでの村上さんの対応もすばらしいものだったと思います。村上さんは ぬえから伝え聞いた師匠のご批評にじっと耳を傾けて。。「わかりました。もう一度直して持参しますので、再度お目に掛けて頂いてご批評を頂戴できますでしょうか。。」

このときよりずっと以後、ぬえも何度か、村上さん以外の「自称」面打ちの方から自作の面の批評を乞わる機会もありましたが、こういう村上さんの対応とはずいぶん違いましたですよ。。つまり、「忌憚のないご意見を。。」と言われたので、師匠から教わったことを踏まえてあちこちと指摘すると。。するとこの方、立腹してしまうのです。「そんな細かいところまで要求されても無理ですよ」「こっちは趣味なんだから」 。。え~~?? ぢゃ、なぜ能楽師に意見を。。?

そうして村上さんは、1~2ヶ月も経った頃でしょうか、「面を直しましたので、お師匠さまにお目に掛けて頂けますか?」と連絡を頂きます。ぬえはその新作の面を携えて再び師匠のもとへ。。こうして師匠と村上さんとの間を行ったり来たりのメッセンジャーの立場の ぬえが誕生しました。いや、これが勉強になったのなんの。
コメント
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