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俳優チェ・ミンシク氏ファンが綴る覚え書き+韓国旅+勉強ブログ。

雑誌「VOGUE(ヴォーグ)」インタビュー(2)

2010-08-19 | チェ・ミンシク氏
VOGUE公式サイト●(韓国語)
「チェ・ミンシクの帰還」



ヴォーグ「『悪魔を見た』での演技的開基は何ですか?」
ミンシク「私が没頭していなかったということです。没頭できなかっただけで、むしろテクニカルな部分で演技を追って行きました」

ヴォーグ「それならば『悪魔を見た』の主語は何ですか?」
ミンシク「暴力でしょう。初めは愛する女性を殺されたことに対した復讐心でくってかかるが、段々と悪を征伐しなければならないという使命感は消えいき暴力をより楽しむようになるのです。獣を捕まえようとして獣になった、2匹の獣の話だとも言えるでしょうか。段々恋人を失った悲しみと苦痛の情緒は消えていき、互いが遊戯としての暴力と野獣性に伝染されているのですよ」

ヴォーグ「それはまるで『復讐は我のもの(復讐者に憐れみを)』を思い出されますね。ソン・ガンホが娘を誘拐したヤツを自ら征伐し苦痛を与えるために聾唖であるシン・ハギュンを残忍に殺す話です」
ミンシク「ここでは道徳的な自然法則はありません。虫を捕まえても責め立てず寂しがる幼い子供のように、暴力が遊戯になるということが焦点です」

ヴォーグ「私は時々パク・チャヌクの『復讐は我のもの』と『オールド・ボーイ』のキャスティングを代えたとしたら、どんな結果をもたらしたかを想像して楽しみます」
ミンシク「そうだったなら面白くなくなるでしょう(笑)。そしてソン・ガンホはその『オールド・ボーイ』の髪型が似合いません。似会うのは私です。(ヘラヘラヘラ)」

ヴォーグ「演技的な面でも2人は異なっているでしょう。ドライで冷たく揮発性の強いソン・ガンホと、断腸の思いで嗚咽する湿っぽくて体臭が強いチェ・ミンシク。もしそうだったなら『復讐は我のもの』はハードボイルドではなく道徳的な質問を投げる熱い“復讐劇”になっていたかもしれません」
ミンシク「そうですね。ハードボイルドではなかったでしょう。しかしソン・ガンホが自分の色で本当によくやりましたよ」

ヴォーグ「『パイラン』『酔画仙』『オールド・ボーイ』・・・。2000年代はチェ・ミンシクの時代でした。あなたのメソッド演技は完璧に近づいたでしょう。しかしあなたは熱すぎる男でした。スクリーンに火傷を負わせるぐらい。『拳が泣く(クライング・フィスト)』以降、私はこの時代があなたの高体温に耐えられないと感じました」
ミンシク「それは時代の自然な流れだったと、自然な人生でした」

ヴォーグ「カンヌ映画祭が開かれた現場で一人スクリーンクォーター縮小反対闘争をするとき寂しかったでしょう?」
ミンシク「寂しかったです。両親に追い出された子供のようでした。しかし楽天的な性格なのでまた起き上がりました。私が正しくても、大衆との疎通でぶざまで田舎くさいならそれはたぶんアマチュアってことです」

ヴォーグ「社会があなたに暴力を振るったと思われますか?」
ミンシク「光化門でスクリーンクォーター縮小反対デモをすると騒ぎ立てていた頃でした。暴力的な状況でかき乱したが、今はとても穏やかになりました。当時“オーマイニュース”の記者がコラムを書いていましたね。“チェ・ミンシクはもう少し政治的な思考が必要だ”」

ヴォーグ「好意的な記事だったのですか?」
ミンシク「ある意味では有難いと思います。暴風が過ぎ去って悟ったのでしょう。あぁ、世の中は政治的な思考が必要だなぁ。しかし私は政治的な人にはなれないだろう。あぁ!クソー。なずがまま生きて行こう。くははは。ただ、政治的でなくても理想的で筋のある対話は必要だろう。大衆の横でカッカッと怒っては駄目だということです」

ヴォーグ「あなたは映画の中で振り回される三流人生で、気のむくまま生きる一流人間でした。50を前にした今、どんな人生を送っていますか?」
ミンシク「私の人生をチェ・ミンシク主演の映画だと考えたなら、その暴風も大丈夫でした。私は後輩もアーティストとして自身の意見を言えることを望みます。社会は道徳の先生のようなアーティストを願っては駄目でしょう」

ヴォーグ「暴風が過ぎた後の気分はいかがでしたか?」
ミンシク「5年ぶりに仕事をして、本当に感謝しています。私がしたいことを今でもできて、同僚たちが横にいるというのが幸せです」

ヴォーグ「イ・ビョンホンの演技はディテールとトーン&マナー(=技法)であなたと全く異なっています。あるいはずっと映画と一緒に進化して来た彼がより現代的に感じられることもできます。『オールド・ボーイ』でユ・ジテがそうだったように、温度の面でよりクールに見えることもあります。相手俳優として彼をどのように見ていますか?」
ミンシク「ユ・ジテがより純粋にひどいキャラクターでしょう。イ・ビョンホンはひとつのシークエンスからどのように見せるのか計算をうまくしていました」

ヴォーグ「実際に関係は良いですか?」
ミンシク「私が一方的にひどく当たりました(笑)。実際にタッチが強いと痛かったりもするんですよ。しかし後輩とのアンサンブルは幸せです。良いパートナーに会えば、その楽しみが倍になります」

ヴォーグ「トンカチで歯を抜いたり舌を切ることより、もっと水位が高い残酷なシーンがありますか?」
ミンシク「身体の決定的なところが毀損されます。目と歯だけを除き、体中が血で覆われます。あぁ!もうこんな苦痛を受ける役をしたくありません。鼻血を出すことさえ謝絶します。「アルプスの少女ハイジ」のおじさんのような長閑で牧歌的な役で帰りたいです」

ヴォーグ「何年か前、チョン・スイル監督と『ヒマラヤ~風がとどまるところ』でヒマラヤに行かれましたでしょう?そこでは幸せでしたか?」
ミンシク「本当に土地がやせていました。夜になればキツネが集団で吠えていましたね。撮影していた最中に村人が亡くなったのだが、死体を切断して山の中腹の岩に上げておきました。ラッパ吹きがラッパを吹けば、クロハゲワシが飛んで来て死体をついばんで食べました。空の命だという葬式文化と生命の循環が印象的でした。そこでは羊一匹捕まえるのにも格式がありました。一瞬のうちにナイフで胸をえぐり、やさしく心臓を取り出した後、キレイな聖水で息絶えた羊の目と耳を引きちぎってましたね。そのとき感じました。すべての思考と文化は相対的ではないかと。人間の心は本当に笑わせるもので、私が正しいと考えていることさえ偏見にすぎないのかも知れません」

ヴォーグ「厭世主義のニオイがしますね」
ミンシク「時々そんな考えをします。私が生きているのではなく、私が少しずつ消えるだけだなぁと」

ヴォーグ「あぁ!消えていくにはあなたの人生はとてもドラマティックです」
ミンシク「そうです。一番耐え難かったことは無味乾燥と無為徒食です。妻は時々話します。”あなたは退屈なことを我慢できない。安全に出かけても必ず一つずつ事件になるでしょ”(笑)」


インタビューが終わった後にもチェ・ミンシクは虚空にウィンクするようにタバコの煙をふかしカッコつけた。彼はフランシス・コッポラ監督の『ゴッドファーザー』を見たと言った。イタリアのマフィアの家族が中心の大叙事詩『ゴッドファーザー』シリーズ。早くに自らも越えられない傑作を作ったコッポラ監督と一生を賭けて達成しなければならないシネマスコープの傑作演技は、初期に完成させてしまったチェ・ミンシクの芸術的疲労と似ているように思えた。しかし俳優でなければ天性焼き栗商人しかできないようなチェ・ミンシクは、ハリウッドのショーン・ペーンのように、またその狂気に狂いスクリーンを駆ける。髪をなびかせ、なすがまま、カンヌ映画祭の受賞台の上で”3匹の死んだタコに冥福を祈る”と言った、その栄光のカンヌ映画祭から再び一人デモをした自由主義者、映画界で最も政治的な行動をした最も非政治的な人間。チェ・ミンシクが戻って来た。

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6 コメント

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なんてカッコいいのでしょう! (amudena)
2010-08-19 22:29:53
すごい俳優ですね。役だから何でもするけど、「没頭していなかった」と言い切る・・・
クハハハハと笑う。カッコいい!!2006年夏にソウルへ行って光化門の彼を見ました。
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一人デモ (NOB)
2010-08-19 23:25:34
2006年のデモを目撃されたんですかー。
あの頃はミンシク兄ファン初心者、韓国初心者であったので、
もう何が何だか夢中で記事を検索したのを覚えています。

JJの20年後は、どんな役者さんになっていますかね?^^
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なすがままに生きる (morio)
2010-08-22 23:51:34
インタビュー記事ありがとうございます!
素晴らしいインタビューですね^^

ミンシク兄の演技にここまで惹かれるのは何故だろうと
考えるのですが、決してテクニックだけではない、人生の
辛酸や暴風にさらされ傷ついたり時には泥にまみれながら、
その生き様が演じる役に魂を注いでいるのではないかと。
うまく言えないんだけども。

魂を揺さぶられる事が多いけど、今回の作品はどうなんだろうか、
敢えて没頭せず、テクニカルに徹した演技も楽しみです。
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訳が・・・ (NOB)
2010-08-23 07:37:38
>morioさん
いえいえワタシの訳がいい加減で申し訳ないですね、、、。

『悪魔を見た』は、ある意味で魂を揺さぶられます!!
ただ『追撃者』でハ・ジョンウ氏が演じた役並に悪魔。
(韓国の)ファンでさえ、色々な感想が出ていました。
あぁはやく感想を語り合いたいです~!!
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釜山国際映画祭! (morio)
2010-08-23 23:31:35
こんばんは~!

NOBさんの訳ワタシ好きなんですよ。
本当にいつもありがとう。

ハ・ジョンウも悪魔だったね。
不気味すぎて途中可笑しくなってきたけど
最後そう思った事を後悔したよ。

そうそう、もう知っているかな?
10月の釜山国際映画祭で無削除版が
上映されるらしいですよ~~~。
はぁ=見に行きたい、そして感想を語り合いたい!
11月に訪韓を予定してたんだけど(謎笑)
う~ん弾丸渡航で見に行きたいくらいです(:_;)
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ノーカット! (NOB)
2010-08-24 19:46:46
さっき知って、ツイッターでもRTさせてもらいました^^

はぁ~行きたいけど無理そうッス、、、。
てかチケット取る自信もありません^^;;;
釜山のKさん、今年も行かはるのかなぁ?
詳細は彼女に任せるか・・・。

『追撃者』も映画館で観ましたが、あのときも途中で気分悪くなって・・・
『悪魔を見た』もそんな感じに、かなり心身ともに疲れます。
決して面白くないわけではないんですけど。
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