機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

パーキンソン病ではリソソームによるオートファジーが低下する

2016-01-08 06:09:12 | 
A glitch in the recycling: Study identifies key factor in the neural death that causes Parkinson's disease

April 28, 2015

Source: ルートヴィヒがん研究センター

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150428082207.htm

パーキンソン病のニューロンには、しばしばレヴィ小体という奇妙な塊が含まれている

パーキンソン病では中脳のドーパミン作動性ニューロンにLmx1bが少ない
転写因子のLmx1bは『リソソームによるオートファジー』というプロセスにとって重要な多くの遺伝子の発現を制御する

オートファジーは異常な折りたたみタンパク質を分解するプロセスで、パーキンソン病ではこのプロセスが損なわれていると考えられている

 Lmx1b→リソソームによるオートファジー─┤レヴィ小体


http://dx.doi.org/10.1038/nn.4004
Dopaminergic control of autophagic-lysosomal function implicates Lmx1b in Parkinson's disease.
ドーパミン作動性ニューロンのオートファジー-リソソーム機能の制御は、Lmx1bのパーキンソン病への関与を示す

Abstract
ニューロンの性質の維持ならびに疾患における発達上の転写因子developmental transcription factorsの役割はほとんど理解されていないままである

Lmx1aとLmx1bは、腹側ventralの中脳ドーパミン/midbrain dopamine(mDA)ニューロンの早期の特殊化specificationにとって必須の、鍵となる転写因子である

今回我々は、中脳ドーパミンmDAニューロンの特殊化specificationの後に条件付きでLmx1aとLmx1bの遺伝子を除去することにより、パーキンソン病に早くから見られる細胞の異常と高い類似性を示す異常が起きることを示す

我々はLmx1bがオートファジー - リソソーム経路の正常な実行に必須であり、
ドーパミン作動性神経末端の完全性ならびに中脳ドーパミンニューロンの長期生存にも必要であることを示す

特に、ヒトのLMX1Bの発現はパーキンソン病に罹患した脳組織の中脳ドーパミンニューロンにおいて減少していた

ゆえに、これらの結果は中脳ドーパミンニューロンの機能にとってLmx1bが持続的に必須であることを明らかにし、その機能不全はパーキンソン病の病理発生を示唆するものである




関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/3236d7fa036fe0a6a5c93efef5d80fc9
Lmx1aは皮膚細胞をドーパミンニューロンへと変える際に必要な転写因子



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6527
RAB7L1とLRRK2は協調してニューロンにおける細胞内輸送を制御するとともにパーキンソン病の発症リスクを決定する
RAB7L1のノックダウンによってもリソソームの肥大化がみられること,同時に,リソソームの機能に重要な加水分解酵素の輸送を担うカチオン非依存性のマンノース6-リン酸受容体のリソソームへの局在が減少することが見い出された.
一方,RAB7L1の過剰発現によりG2019S変異をもつLRRK2の発現によるリソソームの肥大とマンノース6-リン酸受容体のリソソームへの局在の低下は回復した.
 

ドーパミンポンプの障害が脳細胞を自滅させる

2016-01-07 06:07:21 | 
Hunting down trigger for Parkinson's: Failing dopamine pump damages brain cells

June 16, 2014

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140616082146.htm

ウィーン医科大学脳研究センターの研究グループは、パーキンソン病と健康な人の細胞内のドーパミンポンプの機能を調査した
研究の結果、パーキンソン病患者のポンプはドーパミンをくみ出してたくわえる効率が通常より低いことが判明した
ドーパミンが正しく貯蔵されないと、それは神経細胞の自滅を引き起こす


ドーパミンは脳内で異なるニューロン間の情報交換を仲介し、それを助けるために、通信する神経細胞間between the corresponding nerve cellsの接触する箇所で絶えず作り直されている
ドーパミンは小胞vesicleという構造の中に貯蔵されて必要な時に放出されるが、パーキンソン病ではこれらの神経細胞が死んでしまうためにドーパミンが欠乏し、動きの遅れ、筋肉の硬直、振戦のような動作の問題を引き起こす

50年以上も前、ウィーン大学の薬理学研究所(現在のウィーン医科大学)のHerbert EhringerとOleh Hornykiewiczはパーキンソン病が脳の一定の領域におけるドーパミンの欠乏によって引き起こされることを発見した
この発見によりHornykiewiczはドーパミンの代わりとしてアミノ酸のL-DOPAをパーキンソン病の治療に採り入れることが可能になり、この病態の症状を数年間管理できるmanageableようにした

パーキンソン病で神経細胞が死ぬ理由は完全には理解されておらず、それがいまだに疾患の発症を防ぐことができない理由である
しかしながら、ドーパミン自体が正しく小胞に貯蔵されないと、影響を受けた神経細胞に自滅self-destructionを引き起こす


そして今、疾患の原因究明に向けた研究が一歩前進する
ウィーン医科大学の脳研究センターのChristian Piflと現在87歳のOleh Hornykiewiczを中心とする研究チームは、亡くなったパーキンソン病患者の脳と神経学的に健康な対照となる死者の脳を比較した
研究チームはドーパミンを貯蔵する小胞を脳から取り出して調製prepareすることに初めて成功し、それによりVMAT2というポンプでくみ上げてドーパミンを貯蔵する能力を定量的に計測することが可能になった
計測の結果、パーキンソン病患者の小胞のポンプはドーパミンをくみ出す効率が低いless efficientlyことが判明した

Christian Piflが説明する
「パーキンソン病患者の小胞におけるポンプの欠陥とそれによるドーパミン貯蔵能力の低下は、神経細胞内のドーパミン蓄積collectingにつながり、有毒な効果を引き起こして神経細胞を破壊する」


http://dx.doi.org/10.1523/JNEUROSCI.5456-13.2014
Parkinson's Disease a Vesicular Dopamine Storage Disorder? Evidence from a Study in Isolated Synaptic Vesicles of Human and Nonhuman Primate Striatum.
パーキンソン病は小胞のドーパミン貯蔵の疾患か? ヒトとヒト以外の霊長類の線条体から単離したシナプス小胞における研究からのエビデンス

Abstract
ニューロン内でのドーパミンは大部分がlargelyシナプス小胞に閉じ込められ、小胞内では代謝による分解から保護される
しかしながら、細胞質に遊離したドーパミンは細胞毒のフリーラジカルの形成を生じさせる
通常、細胞質のドーパミン濃度はvesicular monoamine transporter 2/小胞モノアミントランスポーター2 (VMAT2) の継続的なポンプ活動により最小限at a minimumに保たれる
細胞質ドーパミンのVMAT2による制御の欠陥は、ドーパミンによって生成されるオキシラジカルoxy radicalsのレベルを増大させ、最終的にはドーパミン作動性ニューロンの変性という結果になる

今回我々は6人のパーキンソン病患者と4人の対照群の線条体からドーパミンを貯蔵する小胞を初めて単離し、小胞ドーパミン貯蔵メカニズムのいくつかの指標indexを計測した

我々の発見は次の通りである
(1) 小胞によるドーパミン取り込みと、VMAT2に選択的な標識labelである重水素標識ジヒドロテトラベナジン/[3H]dihydrotetrabenazine は、パーキンソン病で強く減少していた(それぞれ87–90%、71–80%の減少)

(2) ドーパミン神経末端の喪失を修正後、VMAT2のトランスポート箇所によるドーパミンの取り込みはパーキンソン病の線条体と被殻とで有意に減少していた(それぞれ53%、55%の減少)

(3) VMAT2によるトランスポートの欠陥はパーキンソン病に特異的であるように思われた
その理由は、『MPTPによる黒質から線条体への神経変性/nigrostriatal neurodegeneration』が同程度のカニクイザル/Macaca fascicularis(MPTP群7匹、対照群8匹)には、この欠陥が存在しなかったからである

※黒質線条体の/nigrostriatal: 黒質緻密部から線条体(尾状核と被殻)へ向かう線維結合

(4) 小胞の標本preparationにおけるドーパミンの外向き流束の研究efflux studiesと酸性化の計測measurements of acidificationにより、ドーパミン貯蔵の欠陥impairmentはVMAT2タンパク質それ自体に局在することが示唆される

以上から我々は、VMAT2の欠陥defectは、パーキンソン病における黒質線条体ドーパミンニューロンの細胞死につながるメカニズムを促進する早期異常である可能性を提案する



<コメント>
 ドーパミン─(VMAT2)→小胞取り込み

 ドーパミン─(ミトコンドリア外膜/MAO)→DOPAL─(細胞質/ALDH1A1)→DOPAC



関連記事/関連サイト
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150302121504.htm
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2015/023441.php
脳のインスリン抵抗性状態では、ドーパミンを分解するMAOAとMAOBという2つの酵素の産生がミトコンドリアで増加してうつ病につながる

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25733901
Insulin resistance in brain alters dopamine turnover and causes behavioral disorders.
脳内でインスリン受容体をノックアウトすると、ミトコンドリアの酸化活性が低下、ROSが増加、線条体striatumと側坐核nucleus accumbensには酸化した脂質とタンパク質のレベルが増大し、MAOAとMAOBが増加してドーパミン代謝が増大した

 インスリン─(インスリン受容体)─┤MAOA,MAOB



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ドーパミンの代謝産物DOPALはドーパミンニューロンを殺す



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農薬のベノミルはALDHを阻害してDOPALを蓄積させる
 

農薬のベノミルはALDHを阻害してDOPALを蓄積させる

2016-01-06 06:34:31 | 
Pesticides and Parkinson's: Further proof of a link uncovered

January 4, 2013

http://www.sciencedaily.com/releases/2013/01/130104101427.htm

この数年の間、カリフォルニア大学ロサンゼルス校/UCLAの神経学者は農薬とパーキンソン病との間に関連が存在するという証拠を集めてきたbuild a case
パラコートparaquat(ジメチルビピリジウム系除草剤)、マンネブmaneb(カルバミン酸塩系抗菌剤)、ジラムziram(ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛)のような一般的にカリフォルニアのセントラルバレー等で噴霧されてきた化学物質は、
これまで農場労働者farmworkerだけでなく単に近くに住んでいるか働いていて吹き流された粒子を吸い込んだ可能性がある人々の疾患の増加と関連付けられてきた

今回の研究でUCLAの科学者は、それとは別の農薬であるベノミルbenomylとパーキンソン病とのつながりを発見した
ベノミルの毒物学的な影響は環境保護庁/Environmental Protection Agencyによって禁止された後もなお約10年間残存するlinger

さらに重要なこととして、ベノミルによって始まる一連の有害damagingなイベントは、まったく農薬に曝露したことがないパーキンソン病の患者でも起きるかもしれないことを研究は示唆する
研究の首席著者でありUCLAで神経学の教授であるJeff Bronsteinによると、ベノミルへの曝露は細胞内で一連のイベントを開始してパーキンソン病につながる可能性があるという
この農薬はALDH(アルデヒド脱水素酵素/aldehyde dehydrogenase)という酵素を阻害してDOPALの制御をできないようにする
DOPALは脳内で自然に生じる毒素で、ALDHによって抑制されないとニューロンに蓄積してダメージを与え、パーキンソン病の発症リスクを上昇させる

研究者はベノミルに関する彼らの発見がパーキンソン病の患者すべてに一般化されるかもしれないと考えている
ALDH活性を保護する新たな薬の開発によって、個々人が農薬に曝露したかどうかにかかわらずいつかは疾患の進行の抑制を助けるだろうと彼らは言う
この研究はPNASで発表される

パーキンソン病は世界で数百万人が罹患する消耗性の神経変性疾患で、その症状は主に中脳の黒質という部分の神経変性の進行にともなって増していく
この領域は神経伝達物質のドーパミンを産生し、そして中脳の損傷は疾患と関連する
一般的にパーキンソン病の症状が現れるまでにはドーパミン作動性ニューロンの半分以上が失われている


筆頭著者のArthur G. Fitzmauriceによると、これまで遺伝性のパーキンソン病を引き起こす遺伝子多型が同定されてきたが、パーキンソン病で遺伝子が原因なのはほんのわずかであるという

「結果として、この疾患では環境要因が重要な役割を演じるのはほとんど確実である」
Fitzmauriceは言う

「関連するメカニズムの理解、特に何が原因で選択的にドーパミン作動性ニューロンが失われるのかを理解することは、疾患の発症を説明するための重要な手がかりを与えるだろう」


ベノミルは毒物学的な証拠により肝臓の腫瘍や脳の奇形、生殖への影響、発癌につながる可能性があると明らかにされるまで30年以上の間アメリカで広く使われていたが、2001年に禁止された

研究者はベノミルとパーキンソン病との間に関係があるのかどうかを研究しようとした
それは農薬の使用と慢性的な曝露から10年以上という長期間の毒物学的な影響の可能性を実証するだろう
しかし、農薬とパーキンソン病との間の直接の因果関係はヒトの試験で明らかにすることはできないため、研究者は実験モデルでの曝露が疾患の病理学的な特徴のいくつかを再現できるかどうかを決定しようとした

研究者は初めにベノミルの培養細胞での影響をテストして、この農薬がドーパミン作動性ニューロンにダメージを与えるか破壊することを確認した

彼らは次に農薬をゼブラフィッシュのパーキンソン病モデルでテストした
この淡水魚freshwater fishは研究で広く使われるが、その理由は遺伝子の操作が簡単で、早く育ち、そして透明なので、生物学的なプロセスの観察や計測が他の生物よりも簡単だからである
蛍光で染色してニューロンの数を数えることにより、このゼブラフィッシュで著しくニューロンが失われ、それがドーパミン作動性ニューロンだけで起きることを彼らは発見した
他のニューロンは影響を受けないままだった


これまでの証拠はα-シヌクレインというタンパク質をパーキンソン病の原因として特に示してきた
このタンパク質は全てのパーキンソン病患者に共通に見られ、
凝集して結合すると有害になりニューロンを殺して疾患につながる経路を作ると考えられている

ALDH活性の特定により、今や研究者は疾患を止めるために焦点を合わせるべきもう一つの標的を手に入れる

「動物モデルと細胞培養において、農業用の農薬はパーキンソン病につながる神経変性プロセスを引き起こすことがわかっている」
UCLA Movement Disorders ProgramのディレクターであるBronsteinは言う

「疫学研究では農業労働者と田舎に住む集団で高率に生じることが一貫して示されている
我々の研究は農薬が原因の一部かもしれないという仮説を裏付け、この新たな経路の発見は新しい治療薬の開発につながる可能性がある」


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1220399110
Aldehyde dehydrogenase inhibition as a pathogenic mechanism in Parkinson disease.
パーキンソン病の発病メカニズムとしてのALDH阻害

Abstract
農薬への曝露はパーキンソン病の発症と関連付けられており、
我々は以前防カビ剤のベノミルbenomylがパーキンソン病の病理発生に関するいくつかの細胞プロセスに干渉することを報告した

今回我々はベノミルがその生理活性化されたbioactivated代謝産物であるチオカルバミン酸スルホキシド/thiocarbamate sulfoxide(T-SO)を介してアルデヒド脱水素酵素/aldehyde dehydrogenase (ALDH) を阻害し、反応性のドーパミン代謝産物である3,4-ジヒドロキシフェニルアセトアルデヒド/3,4-dihydroxyphenylacetaldehyde (DOPAL) の蓄積につながることを提案する
それはドーパミン作動性ニューロンの選択的な変性とパーキンソン病の発症につながる
この仮説は多くのエビデンスによって支持される

(i) 我々は以前、ベノミルからS-メチル N-ブチルチオカルバミン酸スルホキシド/S-methyl N-butylthiocarbamate sulfoxide(MBT-SO)への代謝をマウスで示した
この物質はナノモルレベルでALDHを阻害する

我々は今回、初代培養primaryの中脳ニューロンmesencephalic neuronにおけるベノミルへの曝露が (ii) ALDHを阻害し、(iii)ドーパミンの恒常性を変化させることを報告する

※初代培養: 生体から取り出した組織や細胞を容器等で培養する

それは (iv) in vitroの中脳の初代培養primary mesencephalic culturesと (v) in vivoのゼブラフィッシュ系において、ドーパミン作動性ニューロンの選択的な損傷を誘発する

(vi) in vitroの細胞喪失は、DOPALの形成を低下させることにより緩和される

(vii) 我々の疫学研究では、ベノミルへの曝露の高さはパーキンソン病リスク増大と関連があった

パーキンソン病の病因に関するこのALDHモデルは、ドーパミン作動性ニューロン選択的な脆弱性の説明を助ける可能性がある
これは環境からの毒性物質toxicantsがパーキンソン病の病理発生に寄与するという潜在的なメカニズムを提供する


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3545765/figure/fig01/

Figure 1
ALDH阻害はベノミルによって誘発されるパーキンソン病のメカニズムとして提案されている
ベノミルは効率的にBICやMBT、特にMBT-SOのようなALDH阻害剤へと代謝されるため、曝露は有毒なドーパミン代謝産物のDOPALの蓄積につながる
パーキンソン病の病理発生pathogenesisにおいて観察されるドーパミン作動性ニューロンに対する選択的な毒性に関して、この仮説は可能性としてあり得る説明を提供する

※GSH: グルタチオンglutathione

 ベノミルカルベンダジム,BIC─(GSH)→MBT─(CYP)→MBT-SO

※BIC: イソシアン酸ブチル/ butyl isocyanate

※MBT: S-メチル N-ブチルチオカルバミン酸/ S-methyl N-butylthiocarbamate

※MBT-SO: S-メチル N-ブチルチオカルバミン酸 スルホキシド/ MBT sulfoxide



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/de38d259df48ee0f94b1a0d265590190
ドーパミンの代謝産物DOPALはドーパミンニューロンを殺す



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昔の牛乳の殺虫剤はパーキンソン病の徴候と関連



<コメント>
ベノミルの代謝にグルタチオンやCYPが関与しているので、これらに作用する環境的な要因も影響がありそうな気がします(喫煙による活性酸素等)。

 

ドーパミンの代謝産物DOPALはドーパミンニューロンを殺す

2016-01-05 06:17:41 | 
Natural toxin implicated as triggering Parkinson's disease

February 11, 2011

http://www.sciencedaily.com/releases/2011/02/110210123026.htm

セントルイス大学の研究者は、パーキンソン病につながる一連の細胞イベントの原因が『脳自体によって作られる毒』であるという証拠を発見した
脳の毒であるDOPALがドーパミンニューロンの細胞死に関与して病気を引き起こすという今回の研究はPLoS Oneで発表される


セントルイス大学の研究者は以前の研究で、DOPALが健康なドーパミンニューロンを殺す原因であり、それがパーキンソン病を引き起こすようだということを発見した
今回の研究では動物モデルを用いて、この化学物質が容疑者であることを疑う理由をさらに付け加える

パーキンソン病は消耗性/衰弱させる神経変性運動疾患であり、65歳以上の2%、85歳以上の4-5%が罹患する
この疾患はドーパミンニューロンの喪失によるものであり、運動緩慢bradykinesiaと静止時の振戦tremorが特徴である

ドーパミンは体の筋肉と動きを制御するニューロンの調和機能coordinated functionを可能にする重要な化学物質で、黒質substantia nigraの神経細胞によって作られる
この細胞の80%が死ぬか損傷するとパーキンソン病の症状、例えば振戦、動作の緩慢、強剛rigidityと硬直stiffness、バランスの困難が現れ始める

※parkinsonian rigidity: 筋強剛
※muscle stiffness: 筋硬直

セントルイス大学の薬理学と生理学の教授であるW. Michael Panneton, Ph.D.は、この研究がパーキンソン病の理解に向けた大きな一歩になると言う

「パーキンソン病においてドーパミンニューロンの死が症状の原因であることを我々は知っているが、なぜこの細胞が死ぬのかは誰も知らなかった」

細胞の視点から博士はパズルのピースのいくつかを見つけた
パーキンソン病では黒質でドーパミンニューロンが失われ、それが線条体striatumでのドーパミン低下につながり、そしてα-シヌクレインというタンパク質が蓄積する

α-シヌクレインは脳内のどこにでも見られるが、中には凝集している人もいる
研究者はα-シヌクレインを凝集させるのはDOPALであることを発見した
これがDOPALのさらなる増加を誘発し、ドーパミンを作る細胞が死んでパーキンソン病を引き起こす

現在のパーキンソン病への主なアプローチはドーパミンを補うことによる対症療法である
しかし、このアプローチはドーパミンニューロンの喪失を防ぐことができない


http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0015251
The Neurotoxicity of DOPAL: Behavioral and Stereological Evidence for Its Role in Parkinson Disease Pathogenesis.

チロシン─(チロシン3-モノオキシゲナーゼ)→DOPA→ドーパミン─(MAO)→DOPAL─(ALDH1A1)→DOPAC

3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン/3,4-dihydroxyphenylalanine(DOPA/L-DOPA)
3,4-ジヒドロキシフェニルアセトアルデヒド/3,4-dihydroxyphenylacetaldehyde (DOPAL)
3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸/3,4-dihydroxyphenylacetic acid(DOPAC)


Introduction
DOPALは神経学的に正常なヒトの患者の生検でも2–3 µMのレベルで存在する [19]
しかしながら、パーキンソン病患者の黒質/SNと線条体のDOPALレベルは増大し [30]、
一方でALDH1A1のmRNA、タンパク質、活性は黒質と線条体で低下する [31], [32], [32]–[34]
これはDOPALが潜在的な内因性の毒であることを意味する

さらに、我々は以前DOPALが生理的濃度でもニューロンにとって有害toxicであることをin vitroで示し [19], [21]、
α-シヌクレインの凝集を引き起こすことも示した [21]


Reference
19
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11295535
Kristal BS, Conway AD, Brown AM, Jain JC, Ulluci PA, Li SW, et al. (2001)
Selective dopaminergic vulnerability: 3,4-dihydroxyphenylacetaldehyde targets mitochondria.
(選択的なドーパミン作動性の脆弱性: DOPALはミトコンドリアを標的にする)

20
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14556942
Burke WJ, Li SW, Williams EA, Nonneman R, Zahm DS (2003)
3,4-Dihydroxyphenylacetaldehyde is the toxic dopamine metabolite in vivo: implication for Parkinson's disease pathogenesis.
(DOPALは有害なin vivoのドーパミン代謝産物である)

21
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17965867
Burke WJ, Kumar VB, Panneton WM, Gan Q, Pandey , et al. (2008)
Aggregation of α-synuclein aggregation by DOPAL, the monoamine oxidase metabolite of dopamine.
(MAOによるドーパミン代謝産物DOPALによるα-シヌクレインの蓄積)
 

昔の牛乳の殺虫剤はパーキンソン病の徴候と関連

2016-01-04 06:06:40 | 
Pesticide found in milk decades ago may be associated with signs of Parkinson’s

December 9, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151209183729.htm

1980年台前半より前に使われていた殺虫剤のヘプタクロルエポキシドは当時の牛乳にも含まれ、それがパーキンソン病の徴候と関連するかもしれないという研究が医学雑誌Neurology誌のオンライン版で12月9日に発表された
Neurology誌は米国神経学アカデミーの学会誌である

「先行研究で乳製品とパーキンソン病との関連が発見されている」
筆頭著者で滋賀県大津市にある滋賀医科大学のR. D. Abbott, PhDは言う

「我々は特に牛乳とパーキンソン病の脳の徴候との関連を調べた」


今回の研究ではホノルル-アジア加齢研究に参加した平均年齢53歳の日系アメリカ人Japanese-Americanの男性449人を死ぬまで30年以上追跡し、死後に病理解剖autopsyを実施した
このテストで参加者の脳の黒質substantia nigra領域で脳細胞が失われているかどうかを調べた
そのような喪失はパーキンソン病の症状が現れる数十年前から始まる可能性がある

また、研究者は116の脳でヘプタクロルエポキシドheptachlor epoxideという殺虫剤の残留量を計測した
この殺虫剤は1980年台前半のハワイではパイナップル工業で害虫を殺すために用いられていたが、アメリカではこの頃に禁止されて使われなくなった
この殺虫剤は当時の牛乳中に高レベルで見られ、井戸水からも見つかる可能性もある

研究の結果、非喫煙者で1日2杯より多く牛乳を飲んでいた人は、2杯未満しか飲まなかった人よりも黒質の脳細胞が40%少なかった
どの時点であれ喫煙者だった人に関しては、牛乳摂取と脳細胞喪失との関連は見られなかった
以前の研究で喫煙者はパーキンソン病を発症するリスクが低下することが示されている

ヘプタクロルエポキシドの残留は最も多く牛乳を飲んでいた人たちの90%で見つかり、
対照的に牛乳をまったく飲まない人では63%だった

Abbottは参加者が飲んでいた牛乳にヘプタクロルエポキシドが含まれていたという証拠がないことに言及する
また、彼は今回の研究が殺虫剤や牛乳摂取によりパーキンソン病が引き起こされることを示すものではなく、関連を示しているだけであるとも述べている

「この関連に関していくつかの説明が考えられる。単なる偶然chanceもありうる」
米国神経学アカデミーのメンバーであり編集委員長記を書いた国立環境衛生科学研究所/National Institute of Environmental Health Sciences(NIEHS)のHonglei Chen, MD, PhDは言う

「また、牛乳の消費は研究の開始時に一度だけ計測されたのみである
この計測が、時が経っても参加者の食習慣を表していると推量するしかない」

この論文は疫学研究がどのようにしてパーキンソン病の原因調査に寄与しうるのかという優れた例であるとChenは述べた

今回の研究は、国立老化研究所/National Institute on Aging(NIA)、国立心肺血液研究所、国立神経疾患・脳卒中研究所、陸軍省/Department of the Army、退役軍人省/Department of Veterans Affairs、クアキニ・メディカル・センター/Kuakini Medical Centerのサポートによるものである


http://dx.doi.org/10.1212/WNL.0000000000002254
Midlife milk consumption and substantia nigra neuron density at death.

有機塩素系殺虫剤/organochlorine pesticide



関連サイト
http://www.shiga-med.ac.jp/education/newresearch/main.html
滋賀医科大学の『最新研究論文の紹介』



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/02/110214115442.htm
殺虫剤のロテノンとパラコートがパーキンソン病と関連



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/11/121112171050.htm
5分以上の意識消失loss of consciousnessを伴う頭部損傷と殺虫剤のパラコートはパーキンソン病リスクにつながる
 

皮膚を簡単にドーパミンニューロンに変換する方法が発見される

2016-01-03 06:06:54 | 
Discovery puts designer dopamine neurons within reach

Parkinson's disease researchers discover a way to reprogram the genome

December 7, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151207081821.htm


(ニューロンにのみ見られるタンパク質(赤色)、ドーパミンを合成する酵素(緑色)、細胞のDNA(青色)を示した画像)

数十年に及ぶパーキンソン病の研究における『とらえどころのない聖杯/究極の目的elusive holy grail』は、不完全なドーパミンニューロンを修復して患者に戻し、ドーパミンを再び作り始めるための方法を見つけることだった
その目的のために研究者たちは胎児由来の材料materialを使ってきたが、得るのが難しく、質も不安定なものだった
胚性幹細胞embryonic stem cellsは途方もない革新tremendous innovationの象徴ではあったが、
幹細胞からドーパミンニューロンを作るのは長いプロセスを必要とする割に成功する割合は少ないa long process with a low yield

これらの問題から、研究者は皮膚のような簡単に得られる細胞を通常脳内に隠れているドーパミンニューロンへと変換する方法を開発する努力に迫られてきた
しかし、それも十分な量のニューロンを得るのは難しかった

今回ニューヨーク州立大学バッファロー校Jacobs School of Medicine and Biomedical Sciencesに所属するパーキンソン病の研究者は、そのような細胞変換の障害を乗り越える方法を発見し、皮膚の細胞からドーパミンニューロンへの変換を強化する方法を開発した
彼らが言うには、それは同時にあらゆる細胞を研究する科学者のやり方を変化させる深い意味を持つという


細胞の『門番』
A cellular 'gatekeeper'

Nature Communicationsで12月7日に発表された新たな研究は、転写因子であるp53が『門番』として働くという発見を中心に展開するrevolve around

「我々はp53が細胞内の『現状the status quo』を維持しようと努力することを発見した
p53はある細胞タイプから別のタイプに変化することから守っている」
生理学部と生体物理学部の教授である首席著者のJian Feng, PhDはそのように説明する

「p53は門番の一種として働き、細胞のタイプが変化しないように防いでいる
我々がp53の発現を低下させると興味深いことが起きた
線維芽細胞を非常に簡単にニューロンへ再プログラムすることが可能になったのである」

この進歩は基礎細胞生物学にとって重要な意味を持つとFengは言う

「これは細胞のタイプを変化させる一般的な方法generic wayである
変化への障壁を取り除けば細胞をソフトウェアシステムとして処理できることを我々の研究結果は立証する
どの遺伝子のスイッチがオン/オフに切り替わるのかを制御する転写因子の組み合わせを明らかにできれば、どのようにしてゲノムが読まれるのかを変化させることが可能である
我々はより素早くこのシステムをいじるplay withことが可能になり、体内の組織と似たような組織を作ることが可能になるかもしれない
そう、脳組織でさえ」

「人々は物事が階層的に進むと考えるのが好きであり、人間が一つの細胞から始まってだんだん40兆の細胞からなる大人へ成長すると考えるが、我々の研究結果はそのような『階層』がまったく存在しないことを証明する
我々の細胞は全てが最初の細胞と同じソースコードを持ち、このコードが異なった読まれ方をすることで体を構成するあらゆるタイプの細胞が作られる」


細胞を変換して新しいドーパミンニューロンを作る
Generating new dopamine neurons via cellular conversion

タイミングが彼らの成功の鍵だった
Fengは言う
「ゲノムの複製準備が全て整ったことを保証ensureするために細胞が環境を感知しようとするまさに直前、
細胞周期におけるそのようなポイントが『ゴールデンアワー/prime time』であることを我々は発見した」

※prime time: 一日で最も視聴率の高い時間

細胞周期のまさにその時間にゲノムの門番であるp53を抑制することによって、彼らは以前の研究で発見されていた転写因子の組み合わせ(Ascl1, Nr4a2, Lmx1a, miR-124)を使って皮膚細胞を容易にドーパミンニューロンへと変えることが可能になった
これらの操作はDNAを修飾して脱メチル化する酵素であるTet1の発現をオンに切り替え、ゲノムの読み方を変化させる

http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=ASCL1
>This protein plays a role in the neuronal commitment and differentiation and in the generation of olfactory and autonomic neurons.
(このタンパク質はニューロンのコミットメントと分化に関連する)

http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=NR4A2
>Mutations in this gene have been associated with disorders related to dopaminergic dysfunction, including Parkinson disease, schizophernia, and manic depression.
(この遺伝子の変異はドーパミン作動性の機能不全に関する疾患と関連する)

http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=LMX1A
>This gene also plays a role in the development of dopamine producing neurons during embryogenesis. Mutations in this gene are associated with an increased risk of developing Parkinson's disease.
(この遺伝子はドーパミン産生ニューロンの発達に関与する)

「我々の方法は以前開発されたものよりも早く、そしてはるかに効率的である」
Fengは言う

「これまでの方法では2週間かかって5%のドーパミンニューロンを作成するのが最高だったが、
我々の方法は10日で60%のドーパミンニューロンを得ることができる」

研究者は多くの実験を実施し、これらのニューロンが中脳ドーパミン作動性ニューロンとして機能することを立証している
パーキンソン病で失われるのはこの種のニューロンである

この発見により研究者は患者それぞれに特異的なニューロンを試験管内で作成し、脳内へ移植して壊れたニューロンを修復することができるようになる
それはまたパーキンソン病の新たな治療法を効率的にスクリーニングするために使うことも可能である


OPEN
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms10100
Cell cycle and p53 gate the direct conversion of human fibroblasts to dopaminergic neurons.
細胞周期とp53はヒト線維芽細胞からドーパミン作動性ニューロンへの直接変換をゲート制御する

線維芽細胞から誘導ドーパミン作動性ニューロン/induced dopaminergic (iDA) neurons等への直接変換は、細胞運命の可塑性を実証する
これらの比較的早い変換の効率の低さは、動的な障壁が存在して細胞アイデンティティを保護していることを示唆する

今回の研究で我々はp53の抑制を細胞周期のG1での停止ならびに適切な細胞外環境と組み合わせることで、転写因子とマイクロRNA(Ascl1, Nurr1, Lmx1a, miR-124)によるヒト線維芽細胞からiDAニューロンへの分化転換transdifferentiationの効率を著しく増大することを示す

この変換はTet1依存的である
なぜなら、G1停止かp53ノックダウンまたは再プログラム因子発現は相乗的にTet1を誘導するからである

Tet1ノックダウンはこの分化転換を無効化するが、Tet1過剰発現は変換を促進する

iDAニューロンは中脳ドーパミンニューロンのマーカーを発現し、活発にドーパミン作動性の伝達をする

我々の結果はこのような動的な障壁を乗り越えることで非常に効率的なエピジェネティック再プログラム化を全般的に可能にし、
パーキンソン病の研究と治療に役立つ患者特異的な中脳ドーパミンニューロンを生成するであろうことを示唆する



関連サイト
http://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/31255
ヒト繊維芽細胞から機能を持った誘導神経(iN)細胞を作れることが、3つの研究により実証された。
Pangたちは、Ascl1(別名Mash1)、Brn2(別名Pou3f2)、Myt1lという3つの転写因子の組み合わせが、ヒト胚性幹細胞のニューロンへの分化を著しく促進することを明らかにしている。
Caiazzoたちは、Mash1、Nurr1(別名Nr4a2)、Lmx1aという3種類の転写因子の混合物を使って、マウスとヒトの出生前繊維芽細胞および成体繊維芽細胞を、機能を持ったドーパミン作動性ニューロンへと変換している。
Yooたちは、miR-9/9*とmiR-124をヒト繊維芽細胞で発現させると、機能を持ったニューロンへの変換が起こり、この過程は神経発生を誘導する転写因子をさらにいくつか加えることで促進されることを明らかにしている。

http://dx.doi.org/10.1038/476158a
Regenerative medicine: Bespoke cells for the human brain

References
1.Pang, Z. P. et al. Nature 476, 220–223 (2011).
http://www.nature.com/doifinder/10.1038/nature10202

2.Caiazzo, M. et al. Nature 476, 224–227 (2011).
http://www.nature.com/doifinder/10.1038/nature10284

3.Yoo, A. S. et al. Nature 476, 228–231 (2011).
http://www.nature.com/doifinder/10.1038/nature10323



関連サイト
http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2011/kr7a43000009logj.html
慶大、皮膚の細胞から2週間で神経幹細胞を作成することに成功



関連サイト
http://www.med.keio.ac.jp/gcoe-stemcell/treatise/2012/20130328_01.html
miR-124はPTBを標的として選択的スプライシングを介して神経細胞への分化を誘導する
 

ヒトのアストロサイトの機能が初めて調査される

2016-01-02 06:49:45 | 
Brain function: First look at how astrocytes function in humans

December 10, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151210124540.htm



脳内で起きるほとんどすべてのことは、アストロサイトがなければ失敗するだろう
この星形をしたグリア細胞は、シナプス形成、神経組織修復、血液脳関門の形成において重要な役割を演じることが知られている
しかし、この神経組織をサポートする細胞についてマウスでのデータは何十年分も存在するが、それらの実験がヒトの生物学に対してどれほどの関連があるのか(そして潜在的な治療法は成功しうるのか)は未解決の問題open questionである

Neuron誌で12月10日に発表された研究で、スタンフォードの科学者はヒトとマウスのアストロサイトを機能的かつ分子的に初めて比較した
それによると、遺伝子の85%から90%は同様であるもののヒトのアストロサイトは独特の遺伝子を持ち、神経伝達物質であるグルタミン酸に特に異なる反応を示すという
これはおそらく、成人/成体のステージではヒトのアストロサイトはマウスのそれとは対照的に、ニューロンの活性を感知してそれに応じて機能を調整するのが得意であるということを意味する

「我々はヒトのアストロサイトの独特な特性を理解し始めたばかりである」
スタンフォード大学医学部の神経生物学でpostdoctoral scholarであり筆頭著者のYe Zhangは言う

「我々はヒトのアストロサイトのみに排他的に発現する何百もの遺伝子を発見した
将来の研究でさらなる生物学的な違いが明らかになるだろうwill
この研究は潜在的に生物学的な疾患におけるこれらの細胞の役割についての我々の認識を助ける」


ヒトのアストロサイトについての研究は多くの問題に直面する
例えば『アクセスaccessに関連する問題』があり、生きた組織のサンプルは脳腫瘍またはてんかんの手術や胎児組織から得なければならない
『精製purificationについての問題』もあり、アストロサイトを他の細胞から分離すると頻繁に死ぬため多くの実験が失敗に終わる


Zhangと、共著者の大学院生graduate studentであるSteven Sloan、そして学部の指導者mentorである首席著者のBen Barres教授は、アストロサイトを単離して生きたまま培養し続けるために抗体を使ったプロトコルを開発してこの技術的な課題を乗り越えた
この方法により、マウスだけでなく膠芽腫glioblastomaのような脳腫瘍やてんかん患者のアストロサイトを健康な脳組織と比較することも可能になった
マウスの研究からこれらの疾患においてアストロサイトは非常に反応的reactiveであることが知られていたが、その意味は不明のままだった
今回の研究を通じて、そのように活性化している間に発現するヒトの『良い遺伝子』と『悪い遺伝子』による影響が解剖されてparsed out明らかになり始めた


もう一つの驚くべき発見は、アストロサイトには二つの異なるステージ(前駆体progenitorと成熟体mature)があり、早いステージのアストロサイトと脳腫瘍はお互いに非常に良く似ているということである
これはグリア細胞を源とする脳腫瘍の細胞を強制的に『成熟』した状態に移行させ、したがって分裂できないようにするという新たな治療法の可能性をもたらす
著者はこの発見が胎児組織を用いることなくして不可能だっただろうと記している

「そのような知識は胎児組織へのアクセスなしでは得られなかっただろう」
Zhangは言う
「我々はただ単にマウスの脳を研究するだけではヒトの脳と神経発達的な疾患の生物学を推定することはできないのである」

Zhangと彼女の同僚は今回開発した新しい方法により、アルツハイマー病やALS、脳卒中、脳外傷、自閉症、統合失調症など様々な疾患におけるヒトのアストロサイトの独特の性質をすぐに調べ始めたいと考えている


http://dx.doi.org/10.1016/j.neuron.2015.11.013
Purification and characterization of progenitor and mature human astrocytes reveals transcriptional and functional differences with mouse.



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141010083859.htm
マウス脳卒中後の線条体アストロサイトにおけるNotch1シグナル低下は神経発生に必須である

http://dx.doi.org/10.1126/science.346.6206.237
A latent neurogenic program in astrocytes regulated by Notch signaling in the mouse.
 


アストロサイトはAβには近づかない

2016-01-01 06:07:34 | 
Geometric study of brain cells could change strategies on Alzheimer's

December 9, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151209091357.htm

バルセロナ自治大学の研究者はマサチューセッツ総合病院(ボストン)と協力して、
銀河や素粒子間相互作用の研究に用いられる数学モデルを応用することでアストロサイトの空間的な配置を分析した
アストロサイトはニューロンが正常に機能するために必須の脳細胞である
この研究はPNASで発表される


科学者の観察では、アストロサイトはアミロイド/Aβプラークによって押し返されるrepelledように見えた
アミロイドプラークはアルツハイマー病の発症と関連があり、いくつかの治療戦略はその形成を減らして除去することを目指している
これまで研究者たちはアストロサイトがアミロイドプラークに向かって移動し、それを貪食すると考えていた
そのため、アストロサイトの活性化はアルツハイマー病に対する優れた治療法になる可能性があるとされていた
しかしながら、アストロサイトの空間配置の分析では正反対を示し、アストロサイトはプラークによって押し返されるようである

「この発見は非常に重要である
なぜなら、脳細胞自体によるアミロイドプラークの除去は
現在開発中のアルツハイマー病の治療法として重要な戦略の一つだからである
ゆえに、どの細胞がプラークを除去できるのか、またはできないのかを明らかにすることは効果的な治療法の開発には不可欠である」
UAB神経科学研究所のElena Galeaはそのように説明する

研究者はアストロサイトとアミロイドプラークが取りうる相対位置を説明するために、それらの間の相互作用を形作る力を明らかにしようと分析を始めた

研究者は統計物理学の技術を借りることにした
統計物理学とは、例えば星同士が相互作用する力を元に銀河の進化を決定するための学問である
今回は銀河と星の代わりにアルツハイマー病マウスモデルの脳内にいるアストロサイトの三次元画像を分析した
この分析でアストロサイトはお互いに押し返し、アストロサイトはアミロイドプラークによって押し返されることが明らかになった
したがって、これらの反発力repulsionの間のバランスはアストロサイトの『領域からなる組織territorial organisation』を維持し、
プラークが大量に存在するとアストロサイトに空間的な緊張spatial tensionを誘導する


Elena Galeaによると、おそらくこの研究で最も重要な情報は「アルツハイマー病研究者の推測に反して、アストロサイトはこの組織organisationを壊してアミロイドプラークに向かって動いて貪食することができず、むしろプラークから少し離れるのである」

にもかかわらず、アストロサイトはプラークが形成される際に何かを『感じる』に違いないという
なぜなら、形成時にアストロサイトはその特徴的なタンパク質であるGFAPをより多く作るからである
「このことは、アストロサイトがアミロイドプラークの形成に対して
位置の移動ではなく機能を調整することにより反応している可能性を意味する」
とGaleaは結論する

※神経膠原線維性酸性蛋白質/glial fibrillary acidic protein (GFAP): アストロサイトに特異的な中間径フィラメントを構成するタンパク質で、アストロサイトの星状の形態を維持する細胞骨格として働く


http://www.pnas.org/content/112/51/15556
Topological analyses in APP/PS1 mice reveal that astrocytes do not migrate to amyloid-β plaques
APP/PS1マウスにおける位相幾何学的な分析により、アストロサイトがアミロイド-βプラークに向かって移動しないことを明らかにする


Abstract
アルツハイマー病患者のアミロイドβプラークの周囲にGFAP免疫陽性アストロサイトがクラスター化していることから、プラークはアストロサイトを引き寄せるという憶測が広まっていた
しかし最近の研究ではアストロサイトが損傷部位において動かないstay put in injuryことが示唆されている

今回我々はアストロサイトがプラークへ移動するかどうかを再調査する
我々はAPP/PS1マウスと野生型の同腹仔littermateから二光子顕微鏡で得られた生体三次元画像におけるアストロサイトのトポロジーtopologyを調査するため、定量空間分析ならびにコンピュータによるモデル化を用いた

※topology: 位相幾何学、トポロジー。局所解剖学。配置

野生型マウスでは

皮質アストロサイトのトポロジーは、限られたスペースで硬い球状の液体a liquid of hard spheresがお互いを排除するというモデルに適合した

プラークは非常に大量に存在する場合を除いてはこの配置arrangementを妨害しなかったが、
局所的には、プラーク周囲の三段目に位置するアストロサイト/the astrocytes located in three tiers around plaquesのわずかな外側への移動を引き起こす

これらのデータは、プラークによるニューロピルneuropil損傷に対してアストロサイトが主に表現型を変化させることにより応答することを示唆する
表現型の変化は、ゆえに機能の変化につながる
位置の変化ではない

※ニューロピル/neuropil: 神経網。ニューロンの軸索や樹状突起、グリア細胞などの突起が互いに入り組んでいる部分



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/7c164e3a90679c635d0d2d5aaf92717a
ミクログリアは放出された脂質をTREM2によって感知してアミロイドβの周りに集まる



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151123201933.htm
Aβは血管に外骨格を形成してアストロサイトと血管を分離させ、認知症の症状を引き起こす



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151124082233.htm
アストロサイトは乳酸を生成し、ニューロンがそれを利用する