機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

赤身肉による心疾患をエクストラバージンオイルの成分で防ぐ

2015-12-31 06:05:00 | 腸内細菌
Researchers identify potential approach to treat heart disease through the gut

Study identifies microbial inhibitor that prevents atherosclerosis; Further confirms link between gut bacteria and cardiovascular disease

December 17, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151217130454.htm

クリーブランドクリニックの研究者は
腸内の微生物を標的にすることにより『動物性食品によって引き起こされる心疾患』を防ぐ可能性を初めて実証した
この心疾患は赤身肉や卵、高脂肪の乳製品などの動物性食品に豊富に含まれる栄養素によってもたらされる

このまったく新しいアプローチは
トリメチルアミン-N-オキシド/trimethylamine N-oxide(TMAO)についての研究チームの以前の発見を中心とする
TMAOは腸が動物性脂肪を消化する間に作られる副産物だが、TMAOはアテローム硬化症や心疾患と関連がある

今回研究チームは、低温圧搾cold-pressedのエクストラバージンオイルやグレープシードオイルに含まれる3,3-ジメチル-1-ブタノール/3,3-dimethyl-1-butanol(DMB)を、自然に生じるTMAOの阻害剤として同定した
DMBはマウスでTMAOレベルを低下させ、アテローム硬化症を抑制した

この発見はアメリカ人の死因第1位である心疾患や、糖尿病のような代謝異常/代謝性疾患metabolic diseasesを防ぐための潜在的な新しい治療法となる可能性がある
それらの疾患は腸の微生物と関連することがわかっているからである
この研究はCell誌のオンライン版と12月17日号の両方で発表される


TMAOと腸内微生物、そして心疾患との間の関連は、今回の研究と同じStanley Hazen, M.D., Ph.D.を中心とする研究チームによって4年前初めて発見された
彼はラーナー研究所で細胞分子医学部のchairであり、クリーブランドクリニックではミラーファミリー心血管研究所で予防心臓学・リハビリテーションのsection headでもある

「アテローム硬化症や肥満、糖尿病のような多くの慢性疾患が腸の微生物と関連がある」
Hazen博士は言う
「我々の研究は、食事によって腸で始まる心疾患の進行を防ぐか遅らせるretardことが可能であるというエキサイティングな可能性を実証する
これは将来アテローム硬化症や他の代謝性疾患に対する新しい種類の治療に向けた扉を開く」

TMAOはコリンcholineやフォスファチジルコリンphosphatidylcholine(レシチンlecithin)、カルニチンcarnitineのような栄養素を消化する間に作られる腸の代謝物であり、それらは動物性食品に豊富である
血液中のTMAOレベルは心臓発作heart attack、脳卒中stroke、死亡リスク上昇と関連することが臨床研究で明らかになっている
カルニチンは赤身肉と肝臓に多く、コリンとレシチンが豊富なのは牛肉、ラム肉、肝臓、卵の黄身、高脂肪の乳製品である


今回の研究は、TMAOが生成される最初の段階、つまり共生微生物commensal microbeによるトリメチルアミン/trimethylamine (TMA) の生成を標的にすることが、食事によって誘発されるアテローム硬化症の阻止を助けることを示唆する

研究チームはコリンやカルニチンを多く含むエサを与えたマウスに3,3-ジメチル-1-ブタノール/3,3-dimethyl-1-butanol(DMB)を投与することでTMAの生成を阻害した
このマウスはTMAOが少なく、アテローム硬化症の発症も抑制された

DMBが抗生物質ではないという重要な事実が示唆するのは、この『治療』が特異的に微生物の経路を標的にする一方で腸の微生物フローラを保護し、世界中の健康上の問題となっている抗生物質の過剰使用と抵抗性を回避するということである

Hazen博士は言う
「我々は『微生物叢に薬を飲ませるdrugging the microbiome』ことがこの種の食事によって誘発される心疾患を防ぐための効果的な方法であることを示した
この『阻害剤』は腸の微生物によって作られる排出物の形成を阻害し、TMAOレベルを低下させて食事に依存的なアテローム硬化症を予防する」

「これは我々がコレステロール合成を阻害するためにスタチンを使うのと非常に似たやり方である」


Centers for Disease Control and Preventionによると、アメリカでは心疾患により国民の4人に1人の年間61万人が死亡する
これはアメリカ人の男性と女性の両方で死因の第一位である
この研究はNIH、AHA、the Office of Dietary Supplementsのグラントによってサポートされた


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.11.055
Non-lethal Inhibition of Gut Microbial Trimethylamine Production for the Treatment of Atherosclerosis.
腸微生物によるトリメチルアミン産生の非致死的な阻害によりアテローム硬化症を治療する


Highlights
・腸の微生物が持つ『トリメチルアミンリアーゼ/trimethylamine lyase』はアテローム性動脈硬化症atherosclerosisの治療標的である
・3,3-ジメチル-1-ブタノールは、微生物によるトリメチルアミン形成を阻害する
・3,3-ジメチル-1-ブタノールは、コリンの豊富な食事によって促進されるアテローム硬化症を弱めるattenuate
・腸内微生物を殺すことなく酵素を阻害することは宿主の心臓代謝表現型cardiometabolic phenotypesに強い影響impactを与えうる


Summary
トリメチルアミン-N-オキシド/trimethylamine (TMA) N-oxide (TMAO) は腸の微生物叢に依存的な代謝産物であり、
動物モデルにおいてアテローム硬化症を促進し、ヒトの臨床研究でも心血管リスクと関連する

今回我々が研究するのはTMAO産生の最初の段階、つまり共生微生物によるTMA産生を標的として阻害することが『食事により誘発されるアテローム硬化症』に対してどのような影響を与えるかについてである

我々はコリンの構造的なアナログである3,3-ジメチル-1-ブタノール (DMB) が、培養微生物からのTMA形成を非致死的に阻害することを示す
DMBは別個の微生物のTMAリアーゼを阻害し、
複数の菌の生理的な培養(例えば腸の内容物やヒトの糞便)からのTMA産生を阻害するとともに、
コリンまたはL-カルニチンを多く含む食事を与えたマウスでTMAOレベルを低下させることも示す

アポリポタンパク質e-/-マウスにおいてコリンによって促進される内因性のマクロファージ泡沫細胞endogenous macrophage foam cellの形成、ならびにアテローム硬化症による病変の発生をDMBは阻害したが、
これには血液中の循環コレステロールレベルの変化を伴わなかった

腸の微生物によるTMA産生を特異的に標的にするような非致死的に微生物を全般的に阻害する化合物は、心臓代謝疾患を治療するための潜在的なアプローチとして役立つことを今回の研究は示唆する



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150129170358.htm
腸内細菌のTMAOが腎臓にも影響



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c6986b5d9e7a95d4b61f18a94e2ee4f6
赤身肉に多いL-カルニチンが腸に入るとTMAOとγ-ブチロベタインに変わり、どちらもアテローム性動脈硬化症を引き起こす



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151202142210.htm
メトホルミンが効く理由の一因は、腸内細菌の変化とそれによる酪酸などの短鎖脂肪酸による



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23563705
カルニチンからのTMAO産生はヒトでは微生物に依存するプロセスであり、TMAOはコレステロールの逆輸送/RCTを阻害する
 

寒さは腸内微生物を変化させて脂肪燃焼を引き起こす

2015-12-13 06:08:55 | 腸内細菌
Gut microbes trigger fat loss in response to cold temperatures

December 3, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151203135832.htm

寒さと運動には同様の効果があり、代謝的な健康を改善して肥満から守ることが知られている
12月3日にCellで発表された研究によると、寒さによる健康への良い影響の一因は腸内の微生物によることが明らかにされた
寒さにさらされたマウスの腸内では細菌の構成が劇的に変化し、そしてこの細菌の変化は脂肪を燃やすのに十分な変化である
グルコースの代謝も改善され、体重は減少した

「我々が環境に適応するための能力に腸の微生物が強く関与するという、説得力のあるcompellingエビデンスを我々は提供する
それは直接我々のエネルギーバランスを調節することによる」
ジュネーブ大学/University of Genevaの教授であり首席著者のMirko Trajkovskiは言う

「我々はこれらの発見が治療につながる可能性に非常に興奮している
これらの微生物のいくつかを標的にすることが有望なアプローチになりうるかどうかをテストし、
肥満とそれに関連する代謝的な病態を防げるかを調べたいと考えている」


肥満を治療するための方法の一つは、『良い脂肪』つまり褐色脂肪やベージュ脂肪の形成を促進することである
ヒトの幼児は熱を産生するための褐色脂肪を大量に持ち、寒さから守られている
成人でも褐色細胞のサブタイプであるベージュ脂肪から主に構成される褐色脂肪を維持していることが最近明らかにされた
寒さや運動はベージュ脂肪の形成を促進し、それにより蓄えられたカロリーを燃焼して低体温から守り、肥満や代謝的な問題からも保護している

腸内の微生物が肥満や代謝的な病態に関与することが知られているため、
Trajkovskiの研究チームは、腸の微生物が『寒さの健康的な影響』にも関与するかもしれないと考えた

 寒さ→ベージュ細胞─┤肥満

 腸内細菌─┤肥満

 寒さ─(腸内細菌?)→ベージュ細胞─(腸内細菌?)─┤肥満


この考えを支持するように、10日間の寒さ(6℃)への曝露はマウスの腸内微生物の構成に大きな変化を引き起こし、体重増加を防ぐことが実験から明らかになった

研究者は次に微生物が代謝に与える直接の影響を調べようとした
『寒さによって変化した腸内細菌』を無菌環境で育てられたために腸内に微生物を持たない別のマウスに移植したところ、
移植によりグルコース代謝は改善し、さらに寒さへの耐性toleranceが上昇して体重も減少した
さらに詳しく調べたところ、この改善はベージュ脂肪の形成が促進されたことによるものだった

「これらの発見は、環境の変化に応じて腸の微生物が直接エネルギーバランスを調節することを実証する」
Trajkovskiは言う


しかしながら、寒さの実験から3週間もすると、体重は安定し始めた
「エネルギー消費が高まったことによる体重減少に対抗counteractするため、より多くの栄養を腸が吸収しているのだろう」と研究者は推測した

この考えを支持するように、
『寒さに長くさらされたことと関連する腸内微生物』を移植したところ、
レシピエントマウスの腸のサイズは変化し、栄養を吸収する腸の表面積が増加することが実験で示された

「これらの発見は
長期の寒さと関連するエネルギー需要の増大に適応する方法として
哺乳類の腸内微生物がより多くのエネルギーを食物から取り入れられるようにすることを実証する
それにより微生物は低体温から守るのを助けるのである」
Trajkovskiは言う

「我々は腸の微生物が腸の構造と機能に対して劇的な影響を持つことにとても驚いている」


研究者は現在、腸の微生物が環境の変化を感知してホストのエネルギーバランスを変更させる分子メカニズムの研究を計画しているところである

研究のもう一つのアプローチavenueは、特定の細菌が腸の構造を再構成して腸からの栄養の吸収を『減少』させることにより肥満を防ぐかもしれないという考えに焦点を当てている


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.11.004
Gut Microbiota Orchestrates Energy Homeostasis during Cold.


Highlights
・寒さへの曝露は腸内微生物の構成に著しい変化を引き起こす
・寒冷微生物叢cold microbiotaの移植は、インスリン感受性を増大させ、白色脂肪組織の褐色化を誘導する
・寒さへの曝露または寒冷微生物叢移植は、腸の大きさを増加させて吸収能を上昇させる
・寒さにより抑制されるcold-suppressedアッカーマンシア・ムシニフィラ/Akkermansia muciniphilaの復元reconstitutionは、カロリー取り込みの上昇を逆戻りさせるreverts the increased caloric uptake


Summary
宿主の生理機能における微生物の機能は、宿主と微生物の共進化の結果である

我々は寒さへの曝露が微生物構成の著しい変化につながることを示す
そのように変化した微生物叢の無菌マウスへの移植は、
ホストのインスリン感受性を増大させるとともに、寒さへの忍耐を可能にするenable toleranceのに十分だったが、
その理由の一部は白色脂肪の褐色化の促進によるものであり、それがエネルギー消費ならびに脂肪減少の増加につながった


しかしながら、寒冷が長期化すると体重喪失は抑制されattenuated、
これは「絨毛villiならびに微絨毛microvilliの長さを増大させることによりカロリー取り込みを最大化する」という適応メカニズムにより引き起こされた

この吸収表面積の増大は『寒冷により変化した微生物叢cold microbiota』と共に移植可能transferableであり、寒冷微生物叢は腸の組織再構築を促進し、アポトーシスを抑制する遺伝子発現の変化につながる
しかし、『寒冷微生物』の移植中、寒さにより最も下方調節される株のアッカーマンシア・ムシニフィラを共に移植することによってその効果は減少する

我々の研究結果は微生物叢がエネルギー需要が増大する間のエネルギー恒常性全体を統合するための重要な要因であることを実証する


Figure 1
(H) Comparison of phylum-level proportional abundance of cecum and feces of up to 31 days cold-exposed or RT control mice.
門レベルの比較。室温/room temperature (RT)と比較して、寒冷曝露群では、盲腸cucumでも糞便fecesでも、ヴェルコミクロビア門/Verrucomicrobiaが減少している


(G)
下の方にヴェルコミクロビア科/Verrucomicrobiaceaeがあり、寒冷群で減少している


<コメント>
アッカーマンシア・ムシニフィラといえば糖尿病の改善と関連するとされてきた菌なだけに、
それが肥満を改善する寒冷によってむしろ『減少』するというのが意外だった

(寒冷が続くと、マウスの腸ではアッカーマンシア・ムシニフィラが減少して、腸からの栄養の取り込みが上昇した
逆に言うと、アッカーマンシア・ムシニフィラの増加は、腸からの栄養の取り込みが元に戻る/取り込みが減るという方向に作用するようだ)



※生物分類表
└ 細菌ドメイン Bacteria
 └ ヴェルコミクロビア門 Verrucomicrobia
  └ ヴェルコミクロビア綱 Verrucomicrobiae
   └ ヴェルコミクロビア目 Verrucomicrobiales
    └ ヴェルコミクロビア科 Verrucomicrobiaceae
     └ アッカーマンシア属 Akkermansia



関連サイト
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%93%E3%82%A6%E3%83%A0%E9
ヴェルコミクロビウム門はグラム陰性の真正細菌の門である



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b77a14410432564eed1bbe615cbf9fcc
緯度が北の方ほどファーミキューテス門が多くバクテロイデス門が少なく、その比率が肥満と関連する



関連サイト
http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?kibanID=5087
ラードを食べたマウスでは炎症を起こすビロフィラ属の細菌が増殖し、魚油を食べたマウスでは体重増加を抑えグルコース代謝を改善するアッカーマンシア・ムシニフィラが増殖した
 ラード→[腸内細菌]LPS→TLR4→TRIF/MyD88→CCL2



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5410eb0f0900f4f19d875c843cfb6ab9
太るほど体内のsLR11というタンパク質が多くなり、sLR11は褐色脂肪による燃焼を抑制する



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151202142210.htm
メトホルミンが効く理由の一因は、腸内細菌の変化とそれによる酪酸など短鎖脂肪酸による

※メトホルミンの記事中のI. bartlettiは、Intestinibacter bartlettiiのこと(Intestinibacterは2014年に新しく作られた属)
クロストリジウム属のClostridium bartlettiが新たに分類し直され、Intestinibacter bartlettiiに変更された
 

ココナッツオイルはカンジダ菌をコントロールする

2015-11-24 06:22:53 | 腸内細菌
Coconut oil can control overgrowth of a fungal pathogen in GI tract, study in mice suggests

November 18, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151118125325.htm

タフツ大学/Tufts Universityの研究者を中心とした学際的な研究により、ココナッツオイルは真菌病原体のカンジダ・アルビカンス/Candida albicans (C. albicans) の過剰な増殖を効果的にコントロールすることがマウスの実験で明らかになった
ヒトの胃腸でカンジダ菌が過剰に増殖すると血流による感染につながり、侵襲性カンジダ症invasive candidiasisなどを引き起こす
mSphere誌で発表された今回の研究は、カンジダ菌による感染リスクを低下させるために抗真菌剤の代わりとして使える食品によるアプローチを示唆する


カンジダ菌は一般的な真菌病原体であり、胃腸の正常な微生物叢floraの一部である
普段は免疫系によって抑えられているが、免疫系が弱まると胃腸管を越えて広まり疾患を引き起こす日和見病原体である
カンジダ菌による全身感染は侵襲性カンジダ症を引き起こし、カンジダ感染は未熟児や高齢の患者など免疫の弱い患者で最も多い
CDCによるとこの感染はアメリカの入院患者で4番目に多い血液感染症である

抗真菌剤は腸管のカンジダ菌を抑えるために使われる
この薬剤はカンジダ菌が血流に拡散するのを阻止するが、繰り返し使うことで薬剤抵抗性の真菌病原体株が出現する
しかしカンジダ菌による感染を防ぐためには、胃腸管のカンジダ菌の量を減らす必要がある

微生物学者のCarol Kumamoto、栄養科学者のAlice H. Lichtensteinを中心とする研究チームは、油脂がカンジダ菌の量に与える影響をマウスの腸で調査した
研究に使われた油はココナッツオイル、牛脂、大豆油の三種類で、対照群のマウスには通常の食餌が与えられた
ココナッツオイルが選ばれた理由は、研究室の実験で真菌を抑える性質があったという以前の研究に基いている

実験の結果、ココナッツオイルが豊富なエサは牛脂や大豆油のそれと比較して腸のカンジダ菌を減少させた
ココナッツオイル単独、またはココナッツオイルと牛脂の組み合わせは、牛脂が豊富なエサと比較して腸のカンジダ菌を90%以上も減少させた

「ココナッツオイルは、牛脂からココナッツオイルへ切り替えたり、牛脂とココナッツオイルを同時に摂取させた時でさえ、
カンジダ菌のコロニー化を抑制した
この発見は既存の患者の食事へのココナッツオイルの添加がカンジダ菌の腸での増殖をコントロールする可能性を示唆し、
おそらくカンジダ菌による真菌感染リスクも低下させるだろう」
タフツ大学医学部の分子生物学と微生物学の教授であるKumamoto, Ph.D.は言う


http://dx.doi.org/10.1128/mSphere.00020-15
Manipulation of Host Diet To Reduce Gastrointestinal Colonization by the Opportunistic Pathogen Candida albicans.


<コメント>
mSphereという雑誌は初めて知りましたが、アメリカ微生物学会の新しいオープンアクセス・ジャーナルのようです
上の記事はタフツ大学のプレスリリースからですが、アメリカ微生物学会によるプレスリリースも別にありました
実験の内容が少し詳しく書かれています

http://www.asm.org/index.php/journal-press-releases/93865-coconut-oil-shows-promise-in-the-prevention-of-deadly-bloodstream-infection

こちらでKumamoto博士が言っているように、どのようなメカニズムなのかは気になるところです

>“There are two directions that we would like to take with this research now,” said Dr. Kumamoto.
>“One of them is finding out the mechanism of how this works. That is a big question we would like to answer.
> The second question is whether this can have any impact on humans.”
 

カンジダ菌がマクロファージを殺す方法

2015-11-19 06:13:51 | 腸内細菌
How a deadly fungus evades the immune system

March 31, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150331074350.htm

カンジダアルビカンスCandida albicansは、
単一の丸い形状a single, round cellから細長い線維状a long string of cells, or filamentsへと形を変えることで、血中へ移動して、フィラメントを貫通させて免疫細胞/マクロファージを殺すと考えられていた

しかし、カンジダは死んでもマクロファージを殺すので、形を変えること自体per seが原因ではない

カンジダのグリコシル化したタンパク質glycosylated proteinsの糖鎖を切断すると、マクロファージを殺す能力は消えた


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms7741
Global analysis of fungal morphology exposes mechanisms of host cell escape

エルゴステロールの生合成/ergosterol biosynthesisとN-グリコシル化/N-linked glycosylationが重要


C. albicansのfilamentationは、ホスト免疫細胞からの回避には不要

マクロファージのピロトーシスpyroptosisは、
マクロファージのファゴソームに応じた(貪食後の)真菌細胞壁のリモデリングと、グリコシル化されたタンパク質によって引き起こされる


貪食されて既に死んでいる細菌killed, previously phagocytized cellsがマクロファージの溶解lysisを引き起こす能力は、
カンジダと(分類学的に)遠い関連がある真菌病原体クリプトコッカス・ネオフォルマンスでも観察される



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151109110610.htm
Dead bacteria used to kill colorectal cancer

死んだ細菌で結腸癌を殺す

スポロゲネス菌/Clostridium sporogenesは、死んでいても癌を殺す
化学療法は酸素が必要だが、C. sporogenesは酸素の不足した微小環境の癌を殺す

http://dx.doi.org/10.1038/srep15681
Effect of Heat-Inactivated Clostridium sporogenes and Its Conditioned Media on 3-Dimensional Colorectal Cancer Cell Models.
 

ドライプラムは結腸癌リスクを低下させる

2015-10-01 06:23:33 | 腸内細菌
Dried plums can reduce risk of colon cancer, research shows

September 25, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150925131420.htm

ドライプラムにはフェノール化合物phenolic compounds/ポリフェノールが多い
フェノール化合物は健康への影響が数多くあり、例えば抗酸化物質として作用してDNAを傷つけるフリーラジカルの酸化作用を中和する

ドライプラム入りのエサを結腸癌モデルのラットに食べさせると、近位結腸/proximal colonでは変化がなかったが、遠位結腸/distal colonでのバクテロイデス門/Bacteroidetesが増加してファーミキューテス門/Firmicutesは減少した
通常のエサを食べさせた対照群の遠位結腸では逆の結果になった

ドライプラム群では異常な陰窩/cryptsの数も減少した



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150918152005.htm
βグルカン入りのパスタは良い腸内細菌を育ててLDLコレステロールを減らす



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f5ae416a37f82d474dae0acbc3316b1b
>胃腸マイクロバイオーム調整薬のNM504は血糖を改善する



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150714142231.htm
>2型糖尿病とその前状態の人に、イヌリン、βグルカン、抗酸化物質から構成されるNM504という処方を作って投与した
>NM504を投与された人は腸内微生物叢の構成が変化を示し、その結果、血糖コントロールが改善し、満腹感が増して、便秘から解放された
>全大豆莢whole soybean podsに由来するMT303は肥満マウスの微生物叢の構成を変化させ、結腸の炎症から保護され、体重の増加は減少した



関連サイト
http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=51078&-lay=lay&-Find
腸内細菌が体重、脂肪、善玉コレステロールのレベルに影響



関連サイト
http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=50877&-lay=lay&-Find
魚油の利点は腸内細菌が媒介している?
 

腸内細菌の増殖速度を計測する

2015-09-11 06:36:54 | 腸内細菌
How does your microbiome grow?

Reproduction rates of bacteria in gut may be a good indicator of health or disease

September 2, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150902093256.htm

(極端に食事を変化させた被験者で細菌の増殖速度を計算した
食事法の変化により細菌の増殖速度ダイナミクスに全体的な変化が観察された
 上段: 平均
 下段: 特定の種類
 赤の方が増殖が速い)

腸内細菌が健康に与える影響について、新たな視点からのアプローチをワイズマン研究所の科学者がScienceで報告している
それは、様々な細菌の増殖速度を評価する方法である
この方法は既に細菌の増殖速度と2型糖尿病や炎症性腸疾患との興味深い関連を明らかにしている

このコンピュータによる新たな分析手法は、単一のサンプルによる静的な『スナップショット』から増殖のようなダイナミックなプロセスを明らかにするものであり、ゆえに診断法と新しい研究法の両方と関連するだろう


コンピューターサイエンス・応用数学部のEran Segal教授のラボは免疫学部のEran Elinav博士のラボと協力して、まず現在多くの微生物研究で使われている次世代ゲノムシーケンシング技術advanced genomic sequencing techniquesから研究を始めた
これはすべての細菌DNAを配列決定/sequencingして、短い配列から細菌の種類とその相対量relative abundanceを描き出す

しかしワイズマン研究所の研究チームは、このシーケンシング技術が持つもう一つの『情報』を明らかにした

「サンプルの細菌は、どの細菌が最善を尽くしているかを明らかにする:
つまり、増殖できるようにゲノムを複製しているかどうかである」
Segalは言う

「そのため、細菌のほとんどは1つ以上のゲノムを持つ
例えば、ゲノム1つともう半分だったり、ゲノム1つと4分の3を持つ」

ほとんどの細菌株は、前もってプログラムされた『開始』配列と『終了』配列を持っている
そのため、研究チームはサンプルで最も優勢prevalentな短い配列として『開始』箇所を同定することが可能だった
最も優勢prevalentではない、ゲノムのもう片方の末端は、DNAが最後に複製される場所である
研究者は、『開始DNA』と『終了DNA』の相対量relative amountsが個々の細菌株の増殖速度に変換できることを発見した


研究グループはこの公式化formulationをまずコントロールと観察がしやすい単一の細菌株で実験し、
次に複数の動物モデル系で行い、最後にヒトの微生物叢のDNAシーケンシングでテストした
彼らの方法は予想以上にうまくいった
推定される細菌の増殖速度は、観察された増殖率とほとんど同一であると判明した

「我々は今や微生物叢のダイナミクスがどれほど疾患への傾向と関連するのかについて述べることができる
微生物の増殖速度は他のどんな分析法でも明らかにできなかった我々の健康についての事柄を明らかにする」

例えば、ヒトの微生物叢のデータの検査では特定の細菌の増殖速度の変化が2型糖尿病と独特のuniquely関連があることを明らかにした
別の変化は炎症性腸疾患と関連があった

これらの関連は将来、疾患の検出や病原体感染の早期診断、プロバイオティクスや抗生物質の効果を判定するためのツールとして使える可能性がある
さらに、科学者たちはこの微生物叢の新たな理解が我々とその健康の内にある複雑でダイナミックな生態系ecosystemとの関連についてのさらなる研究の促進につながると考えている


http://dx.doi.org/10.1126/science.aac4812
Growth dynamics of gut microbiota in health and disease inferred from single metagenomic samples.

Abstract
今回我々は、様々な細菌メタゲノムシーケンシング読み取り深度のパターンthe pattern of metagenomic sequencing read coverage for different microbial genomesには、単一の溝troughと単一の頂点peakが含まれていることを示す
後者は細菌の『複製起点origin of replication』の配列と一致する

さらに、シーケンシング範囲での頂点と溝との間の比率は、種speciesの増殖速度を定量化する方法を提供する

いくつかの細菌の種類に関しては、相対量relative abundancesではなく、頂点と溝の読み取り深度比率peak-to-trough coverage ratiosが、
炎症性腸疾患ならびに2型糖尿病の徴候/症状発現manifestationと相関する

※coverage: 「次世代シーケンサー関係の英語の文献や話題を追っていると,よくcoverageという単語が出てきます.coverageはどう和訳するべきなのでしょうか?


Editor's Summary
シーケンシング読み深度のパターンが細菌の増殖速度を反映するのは、細菌のゲノムが円形circularであり、複製起点が一つだからである
 


微生物と遺伝と食事の相互作用が肥満につながる

2015-09-11 06:27:18 | 腸内細菌
Genetic factors drive roles of gut bacteria in diabetes, obesity

Study examines how bacterial, mammalian genomics interact to boost insulin resistance, other metabolic disorders

September 3, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150903131728.htm

消化管内の無数の細菌はヒトの代謝に大きく関与していて、それらは2型糖尿病や肥満、メタボリック症候群のリスクと関連がある
糖尿病や肥満のヒトと動物モデルはそうでないものとは異なる腸内細菌を持ち、科学者が微生物を肥満のヒトや動物から無菌動物に移植するとレシピエントは肥満や糖尿病にかかりやすくなる

Cell Metabolismで報告されたジョスリンのマウスを使った研究は、
宿主の遺伝子がどのように微生物の遺伝子と相互作用してそのような病態を作り出すのかを明らかにしたと
ハーバード・ジョスリンのKahn博士は言う

研究の結果、
遺伝的に肥満になりやすいマウスの系統は、
単に腸内微生物を別のマウスの環境と共有することによりその腸内微生物集団が変化するだけで
過剰な体重増に対して抵抗するようになるという

また、ジョスリンの科学者は
糖尿病や肥満、それと関連するメタボリック症候群に正または負の影響を与えるように思われる特定の細菌株を同定することに成功した
そしてそれは部分的には、ホストの動物の遺伝子構成に依存するという


ジョスリンの科学者は、3つの一般的なマウスモデル
 肥満と糖尿病の両方になりやすいマウス
 肥満になりやすいが糖尿病にはなりにくいマウス
 肥満にも糖尿病にもなりにくいマウス
は、腸内の微生物が初めから非常に異なることを発見した

マウスに高脂肪食を与えると、それらのマウスのすべてで腸内の微生物集団が劇的な変化を示す
やがてこれらの微生物集団は、同じ動物施設facilityで維持されているそれらのマウスとその子孫のすべてで似たようなものになる

ジョスリンの研究者は
3つのマウスモデルの世代を新しく育て、
それらのマウスから採取した微生物を無菌マウスに与えて
ドナーと同じように肥満や糖尿病になりやすいかどうかをテストした

微生物を移植したあと、糖尿病になりにくいマウスの中には、体重が増えて血糖レベルが上昇するものがあった
しかし別のマウスでは
「代謝的に悪い細菌でさえ、問題を引き起こさなかった」
とKahn博士は言う
「それらが問題になったのは、その細菌が増殖して影響を引き起こすような感受性をマウスが遺伝的に持つ場合だけだった」


研究で使われたDNAシーケンサーは3000種の細菌をマウスの腸内に同定し、その中でも約300種が比較的多かった
シーケンシングにより特定の細菌株の集団が実験の状況下でどれぐらい変化するかを定量化することが可能になり、
それにより研究者はマウスの障害との関連を探すことが可能になった

この分野の実験では概して個々の細菌株についてではなく細菌グループの役割を分析することが多い
しかしジョスリンの研究者は、肥満や高血糖のような状況と強く相関する特定の細菌株に焦点を絞った
それらの状態を引き起こすのを促進することが示唆されるような細菌株についてである


ジョスリンのチームは、無菌マウスに個々の細菌株のいくつか与えてインスリン感受性や代謝性パラメーターの変化を促進するかどうかを調べようと計画している
また、マウスに抗生物質を与えるなどして微生物集団を変化させた結果を調査したいとしている


http://dx.doi.org/10.1016/j.cmet.2015.07.007
Interactions between Gut Microbiota, Host Genetics and Diet Modulate the Predisposition to Obesity and Metabolic Syndrome.
腸内微生物、ホストの遺伝的特徴、そして食事は、肥満と代謝性症候群への素因を調整する


Highlights
・ホストの遺伝的特徴は、高脂肪食に応じた腸内微生物の変化を決定する
・環境的な履歴historyは、腸内微生物ならびに食事による変化への応答に対して強い影響を与える
・Specific bacterial taxa correlate with metabolic phenotypes within and across strains
・Diet, host genetics, and gut microbiota interact in development of metabolic syndrome

Summary
3つの同系交配系inbred strainsのマウス

※近交系: 近親交配を繰り返して作り上げた動物系統


肥満と糖尿病になりやすいマウス
obesity/diabetes-prone C57Bl/6J mice

肥満にも糖尿病にもなりにくいマウス@ジャクソン研究所
obesity/diabetes-resistant 129S1/SvImJ from Jackson Laboratory

肥満にはなりやすいが糖尿病にはなりにくいマウス@タコニック
obesity-prone but diabetes-resistant 129S6/SvEvTac from Taconic

そしてこれらの系統から新たに一般的な環境で作られた3つの派生系統derivative lines


これら全ての系統ならびに環境的に正常化された派生系統の代謝的パラメーターならびに腸内微生物の分析により、
腸内微生物、食事、育成場所、代謝的表現型の強い相互作用が明らかになった

系統依存的な相関ならびに系統に依存しない相関が特定の微生物と表現型との間に見られ、
それらのいくつかは糞便移植により無菌マウスレシピエントに移行することが可能だった

微生物の環境再プログラムにより、肥満になりやすい129S6/SvEvTacは、肥満に抵抗性になった


ゆえに、肥満/代謝性症候群の発症は、腸内微生物とホスト遺伝的特徴と食事の相互作用の結果である
許容的な(細菌が育つことが許される)遺伝的背景permissive genetic backgroundsならびに微生物の環境的再プログラムは、代謝性症候群の発症を緩和しうる



関連サイト
http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=50877&-lay=lay&-Find
>魚油の利点は腸内細菌が媒介している?



腸内微生物叢の概日リズムが肝臓の概日リズムに影響する

2015-08-13 07:16:25 | 腸内細菌
Gut microbes affect circadian rhythms and metabolism in mice

August 3, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150803212713.htm


http://dx.doi.org/10.1016/j.chom.2015.03.006
http://www.cell.com/cell-host-microbe/abstract/S1931-3128(15)00123-7
Effects of Diurnal Variation of Gut Microbes and High-Fat Feeding on Host Circadian Clock Function and Metabolism.


Highlights
・腸内微生物とその機能における日ごとの変動/日内変動diurnal variationは、食事とホストの合図cueによって促進されるdriven

・高脂肪食は、腸内微生物の構成と機能の日ごとのパターンを妨げる

・微生物の代謝産物metaboliteの振動oscillationsは、ホストの概日リズムならびに代謝metabolismと関連する

・ホスト-微生物の概日ネットワークの乱れdisturbancesは、食事による肥満を促進する


Summary
概日時計と代謝は、手がつけられないほど込み入ってinextricably絡み合っているintertwined
そこでは中枢・肝臓の概日時計が、明-暗・睡眠-覚醒サイクルに応じて、代謝イベントを一定の秩序に整える/調整するcoordinate


明暗シグナルの持続persistenceにもかかわらず、
無菌マウスは、低脂肪食・高脂肪食のどちらでも、
中枢・肝臓の概日時計遺伝子発現circadian clock gene expressionの著しい異常を示し、
一般的なやり方で育てられたconventionally raised対照counterpartと比較して、体重は増えなかった
(腸内細菌のいる一般的対照は増加した)


一般的対照の腸内細菌を調べると、
食餌の構成に依存的に、微生物の構成ならびに機能の異なる日内変動diurnal variationを示した


さらに、
低脂肪食/高脂肪食による特定の微生物代謝産物、特に短鎖脂肪酸は、
肝臓内の概日時計遺伝子発現を直接調整したが、硫化水素hydrogen sulfideはそうではなかった


この結果は、微生物に由来する代謝産物の中枢・肝臓の概日リズムならびにホストの代謝機能を調節regulateまたは修正するmodify能力を強調する

後者(肝臓の概日リズム)は西洋食の摂取後(に調節される)



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141016123522.htm
Jet lag can cause obesity by disrupting the daily rhythms of gut microbes
(時差ボケは腸内細菌の日ごとのリズムを壊すことで肥満を引き起こす)
 


ホストの概日周期と性はどちらも腸内微生物叢に影響する

2015-08-13 07:00:46 | 腸内細菌
Daily changes in mouse gut bacteria moves with internal clock, gender

August 4, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150804103636.htm


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1501305112
Rhythmicity of the intestinal microbiota is regulated by gender and the host circadian clock.


Significance
ホストの概日システムとホストの性は、どちらも、糞便微生物叢fecal microbiotaの総量total loadと分類の豊富さtaxonomic abundancesの周期性/律動性rhythmicityに影響し、
ホストの時計による調節が支配的であるdominant


Bmal1の削除によるホストの概日時計の崩壊disruptionは、
糞便の微生物構成を性依存的に変化させた


我々の分析は、微生物研究のデザインにおいて概日ファクターとホストの性を考慮する必要性を示唆する
そして微生物叢の理解における絶対量absolute abundanceを分析することの重要性を強調するhighlight


Abstract
我々は糞便の微生物叢における概日リズムを分析し、
糞便細菌の絶対量absolute amountならびにバクテロイデス門の量abundance of Bacteroidetesが概日周期性circadian rhythmicityを示した

これはメスのマウスで顕著だったpronounced


アレルギーの予防における微生物叢の役割

2015-07-18 21:47:20 | 腸内細菌
Role of microbiota in preventing allergies

July 10, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150710095244.htm


(緑がtype 3細胞)

これまで「衛生仮説」という現象の根底にある生物学的メカニズムは不明だった
今回のScienceで発表された研究は、マウスの腸で共生する微生物symbiotic intestinal microbesはアレルギー反応を阻害することにより免疫系に作用することを示した


細菌や真菌などの微生物は「タイプ3」という免疫応答を引き起こす
これらの免疫細胞は貪食phagocytosisを調整/連繋してcoordinate、微生物を殺す

しかし、あまりに大きすぎてタイプ3では扱えない感染(寄生虫やある種のアレルゲン)の場合、
その病原体の除去を(そしてアレルギー反応を)組織化するorganizeためのタイプ2細胞が出てくる


今回の研究でパスツール研究所Institut Pasteurの科学者は、微生物の攻撃で活性化されたタイプ3の細胞は、直接タイプ2細胞に作用してその活動を阻害することを示した
その結果、タイプ2はアレルギー性の免疫応答ができなくなる

 微生物叢→タイプ3─┤タイプ2→アレルギー反応


これらの結果は、微生物叢の不均衡がどのようにしてタイプ2免疫応答の悪化を引き起こすのかを説明する
タイプ2は通常は寄生虫と戦うために使われるが、アレルギー反応にもつながる

 微生物叢×→タイプ3↓─┤タイプ2↑→アレルギー反応↑


http://dx.doi.org/10.1126/science.aac4263
The microbiota regulates type 2 immunity through ROR t T cells.

人生の早い時期の共生微生物叢symbiotic microbiotaの変化または欠損は、タイプ2免疫ならびにアレルギー炎症を悪化させうる
微生物叢がどのようにタイプ2免疫を調節するかは不明だが、それは炎症性のヘルパーT細胞/Th17ならびに制御性T細胞/Tregを強く誘導する


今回我々は、微生物叢により誘導されるTregは核ホルモン受容体のRORγtを発現し、Th17細胞にもつながるlead to経路に沿って分化することを報告する

 微生物叢→RORγt+ Treg

RORγt陽性のTregsが存在しない状態では、Th2により促進される対寄生虫防御はより効率的であるが、Th2と関連する病理pathologyは悪化する

  微生物叢→RORγt+ Treg─┤Th2


ゆえに、微生物叢は「type 3」のRORγt+ TregsならびにTh17の誘導を通してtype 2免疫応答を調節し、粘膜表面での免疫応答のバランスを保つことにおいて重要なファクターとして作用する


腸内細菌のバイオフィルムと自己免疫疾患

2015-07-15 15:00:20 | 腸内細菌
Bacterial biofilms may play a role in lupus, research finds

July 6, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150706154855.htm

ループスlupus/全身性エリテマトーデスの説明storyの中心は、バイオフィルムタンパク質の蓄積で、アミロイドである
アミロイドは、その渦巻き繊維状の外観curly fiber-like appearanceから「curli」と呼ばれる

また、バイオフィルムの一部は、細菌によって放出されたDNAである
バイオフィルム内でcurliアミロイドとDNAが出会うと、それらは異常に長持ちするdurable結合を形成する
この複合体はバイオフィルムの形成を加速する

そして、このcurlyとDNAの混合物compositeにおいて自己免疫疾患は生じるようである


長い間、感染症は、ループスの発赤flaresと関連することが知られてきた

新しい研究によれば、バイオフィルムのcurli amyloidとDNAの複合体は(SalmonellaとE. coliの両方とも)炎症を生じるだけでなく、ループスで見られる自己を攻撃する抗体/自己抗体も生じることが判明した


樹状細胞はバイオフィルムの中へ「巻きひげtendrils」を伸ばして、それらの一部を取り込み、炎症性サイトカインを大量に分泌した
このサイトカインのレベルはLPSに対するそれを上回るもので、サイトカインにはI型インターフェロン/Type-1 interferonが含まれた。これはループスと関連することが知られている


自己免疫疾患を起こしやすいマウスにcurli amyloidとDNAの複合体かプラセボを投与すると、2週間以内に二重鎖DNAを標的にする自己抗体が生じた
(通常なら4から5ヶ月はかかる)

自己免疫疾患になる傾向がないマウスでも、複合体の投与から2週間以内に自己抗体を生じた。しかし、そのレベルはループスになりやすいマウスよりは低かった


実験のマウスは、複合体がサルモネラ由来かE.Coli由来かにかかわらず、すべて自己抗体を生じた
E.coliは健康な消化系にも見られるものである
そしてcurli遺伝子は、腸のあらゆる細菌に存在する: Bacteroidetes, Proteobacteria, and Firmicutes


http://dx.doi.org/10.1016/j.immuni.2015.06.002
Amyloid-DNA Composites of Bacterial Biofilms Stimulate Autoimmunity.

2015年4月7日

2015-04-12 22:28:38 | 腸内細菌
2015年4月7日

腸の免疫システムは糖尿病治療における有効な標的であることが新たに特定される
Gut immune system identified as a new and effective target in treating diabetes



クローン病のような炎症性腸疾患の治療として一般的に用いられる薬は、肥満マウスの血糖値を下げることが示された。この研究結果は、ヒトの糖尿病の治療における有効な標的である可能性を明らかにする。

「これらの結果は斬新で、そして非常に重要である。我々は腸に存在する免疫システムが血糖のコントロールに関与することを特定した。これは、腸の免疫学のあらゆる分野を利用して肥満とそれに伴う高血糖のような状態を研究する道を開く」、トロント総合研究所(TGRI)の糖尿病研究グループの科学者Dan Winerは言う。彼の研究室は双子の兄弟のShawn Winerとともに今回の研究を先導し、2人とも本論文の首席著者である。彼らの研究はCell Metabolism誌の2015年4月7日オンライン版で発表される。



過体重、特に腹部やウエスト周りでの肥満は、2型糖尿病を発病する可能性を増加させる。多くの科学者が答えようと試みている問題は、次のようなものである。

「なぜ肥満はインスリン抵抗性の原因となるのか?」

Winer兄弟は以前の研究で、腹部脂肪の内側の免疫細胞は炎症誘発性の化学物質の放出を引き起こし、血糖値を調節するホルモンのインスリンへの感受性を低下させることを示した。これはインスリン抵抗性として知られ、2型糖尿病の主要な引き金である。

今回の研究の焦点は脂肪組織ではなく腸である。Winer兄弟は、高脂肪で高カロリーの食餌を与えられたマウスの腸は通常のマウスよりも炎症誘発性の免疫細胞が多く、免疫を制御して終結させるのを補助する細胞が少ないことを発見した。同じ結果が14人のヒトでも観察され、そのうちの7人は肥満だった。

高脂肪食は腸の免疫細胞に炎症性の変化を誘導して免疫バランスを混乱させ、それは次に化学的カスケードを作動させて腸壁に損傷を与える。腸壁の損傷により、細菌の産物は血流に漏れ出す(leak)。この漏出はインスリン抵抗性の原因であり、そうなると細胞はもはやインスリンに反応することができず、インスリンを使って効果的に血糖を安定させることは不可能になる。

「このプロセスのちょうど始まりで炎症誘発性の免疫細胞を阻害することができれば、我々はより効果的に疾患を治療することができるだろう」、Shawn Winerはそのように推論する。彼はユニバーシティ・ヘルス・ネットワーク(UHN)薬剤プログラム研究室の胃腸病理学フェローである。

「腸に再び焦点を合わせることで、我々はさらに多くの(糖尿病の)治療選択肢を手にする。なぜなら、炎症を起こした腸の治療に利用できる承認薬は既にたくさん存在するからである。」



研究者は続いて、肥満マウスで観察される腸の炎症を標的にすべく5-ASAを投与した。5-ASA(メサラジン)は炎症性腸疾患を治療するために一般的に用いられている薬である。この薬はマウスのインスリン抵抗性を打ち消して、ほとんど通常のレベルまで血糖を低下させた。

「この薬を使うことでマウスの2型糖尿病を防げることが判明した」、UHNの内分泌病理学者であり、トロント大学の薬剤病理生物学研究室の助教授でもあるDan Winerは言う。

彼はさらに、腸を標的にするいくつかの薬剤は腸でのみ局所的に働き、腸以外の部分への吸収と副作用は最低限で済むことを指摘する。

学術誌参照:
1.腸への抗炎症性物質の投与による、肥満と関連するインスリン抵抗性の調節。

Cell Metabolism、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150407123054.htm

<コメント>
高脂肪食は腸の免疫を変化させてバリアを破壊し、インスリン抵抗性を引き起こすという記事です。

Abstractを見ると、マウスのインテグリンα4β7のβ7だけを欠損させて腸への免疫細胞のホーミングを抑制すると高脂肪食によるインスリン抵抗性は減少し、5-アミノサリチル酸(5-ASA)を投与すると結腸の炎症は回復して代謝パラメーターは改善したとあります。

下の画像の免疫細胞を数えてみると、Th1、CD8+T、IL-17産生γδT細胞は増加し、Treg(制御性T細胞)とNKp46+CD4-ILC(自然リンパ球/ILC。IL-22を産生して杯細胞からのムチン合成を促進する)は減少して、Th17は変化がなかったようです。


本文を見ると、サイトカインのIL-10とIL-22が低下し、代わりにIFN-γ、IL-17、IL-12p40、IL-1β、TNF-αが増加しています。IFN-γやTNF-αはタイトジャンクションを構成するタンパク質(ZO-1、occludin、claudin-1)の配置を変化させて、バリア機能を低下させることが知られています。

高脂肪食による免疫の変化は、食物に対する免疫寛容も低下させるとも書かれています。最近ブログで、高タンパク食/高脂肪食をしていてだんだん調子が悪くなり、IgGを計測してみるとグラフを振り切るほど数値が高かったという記事をいくつか見かけます。何か関係があるのかもしれません。

数年前のDiabetes誌に高脂肪食による代謝性エンドトキシン血症についての論文が掲載されていました(翻訳記事)。今Google Scholarで検索すると被引用回数が1500を越えていて、この分野への関心の高さが伺えます。


2015年4月9日

2015-04-12 09:27:16 | 腸内細菌

微生物は腸のセロトニン産生を助ける
Microbes help produce serotonin in gut



セロトニンは脳の神経伝達物質として有名だが、体内のセロトニンの約9割が消化管で作られると推定されている。実際、この末梢のセロトニンのレベルの変化は、過敏性腸症候群や心血管疾患、骨粗しょう症のような疾患と関連づけられている。Cell誌の4月9日号で発表されたカリフォルニア工科大の新しい研究は、腸の特定の細菌が末梢のセロトニンの産生にとって重要であることを示す。

「マウスや他のモデル生物が腸の微生物の変化によって行動の変化を示すという研究はますます増えている」、生物学と生物工学の研究助教授であり、研究の首席著者でもあるElaine Hsiaoは説明する。

「我々は、微生物がどのようにして神経系と情報を交換するのかについて関心がある。
我々はまず初めに、通常の腸の微生物が宿主の神経伝達物質のレベルに影響するのかを調査した。」

末梢のセロトニンは、腸クロム親和性(enterochromaffin; EC)細胞によって消化管で作られる。さらに、特定のタイプの免疫細胞とニューロンも作ることができる。Hsiaoたちは最初に、腸の微生物がセロトニンの産生に影響を及ぼすのか、そしてもし影響するならどのタイプの細胞が関与するのかを知ろうとした。

彼らは、通常の腸内細菌を持つマウスと、常在微生物を持たない無菌マウスの末梢セロトニンレベルを測定することから始めた。その結果、無菌マウスのEC細胞は、通常の細菌コロニーをもつマウスのEC細胞よりもセロトニンの産生が約60パーセント少なかった。これらの無菌マウスに通常の腸微生物を再定着させるとセロトニンレベルは戻った。これはセロトニン産生の障害は回復できることを示す。

「EC細胞は腸のセロトニンを大量に作り出す源である。我々がこの実験で観察したのは、EC細胞のセロトニン産生は微生物に依存するらしいということだ。少なくとも、その大部分は」、論文の筆頭著者のJessica Yanoは言う。

研究者は次に、腸に住む多様な微生物の中から特定の種類がEC細胞と相互作用してセロトニンを作るのかどうかを調べた。YanoとHsiaoたちは既知の腸内微生物の組み合わせを調査し、約20種の芽胞菌(spore-forming bacteria)が存在すると無菌マウスのセロトニンレベルが上昇することを観察した。この細菌のグループを投与されたマウスは無菌マウスと比較して胃腸運動の増加を示し、血小板の活性も変化した。血小板はセロトニンを使うと凝固を促進することが知られている。

この微生物と宿主の間の興味深い協力に関与するメカニズムを明らかにすべく鍵となる分子を探した結果、彼らはいくつかの微生物の代謝産物を特定した。その代謝産物は芽胞菌によって調節され、培養EC細胞からのセロトニン産生を増加させた。さらに、無菌マウスでこれらの代謝産物を増やすとセロトニンレベルは増加した。

この分野の以前の研究は、いくつかの細菌が単独でセロトニンを作れることを示した。しかし今回の新しい研究は、体内のセロトニンの多くは特定の細菌に依存し、細菌は宿主と相互作用することでセロトニンを作らせることを示唆するとYanoは言う。

セロトニンはヒトの健康の多くの面で重要だが、Hsiaoは「これらの発見がクリニックで使えるようになるにはもっと多くの研究が必要である」と警告する。

「我々は一群の細菌を特定したが、それらはセロトニンを増加させること以外にもおそらく影響がある」と彼女は言う。

「また、末梢の過剰なセロトニンが有害らしい病態も存在する。」

本研究は腸内のセロトニンに限られたものだが、Hsiaoと彼女の研究チームは現在、このメカニズムが脳の発達にとっても重要かについて調査している。

「セロトニンは様々な生物学的プロセスに関与する重要な神経伝達物質でありホルモンである。腸の微生物がセロトニンレベルを調整するという発見は、それらを使って生物学的変化を促進するという興味深い見通しを増やす」、Hsiaoは言う。

記事出典:
上記の記事は、カリフォルニア工科大学によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.腸微生物叢の常在菌は、宿主のセロトニン生合成を調節する。

Cell、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150409143045.htm

<コメント>
腸内細菌の特定の種類がセロトニンの産生に重要という記事です。

Abstractを見ると、ヒトとマウスがもともと持っている芽胞を作る細菌(indigenous spore-forming bacteria from the mouse and human microbiota)による代謝物は、腸のクロム親和性細胞(enterochromaffin cells)のトリプトファンヒドロキシラーゼ1(Tph1)の発現を増加させて、セロトニンserotonin (5-hydroxytryptamine, 5-HT) の生合成を促進するという内容です。作られたセロトニンは粘膜、腸管、循環血小板に供給されて、胃腸管/消化管の運動性と、血小板の機能を調整するとあります。

Referenceを見ると、胆汁酸のコール酸(cholic acid)、二次胆汁酸のデオキシコール酸(deoxycholate)、腸内細菌のクロストリジウム属が関係あるようです。Referenceの一つには、Clostridium scindensによる7α-脱ヒドロキシ化(7α-dehydroxylation reaction)が胆汁酸を変化させ、クロストリジウム・ディフィシレ(C. difficile)への感染への抵抗性を促進しているというものがあります。免疫の変化なのか腸管の運動性の結果なのかは分かりませんが、これがつまりセロトニンが腸管に分泌されることによる効果ということなのでしょう。

腸内のセロトニン産生にはビタミンDが関与するという記事がありました。

自閉症の子供では早くから胃腸の問題が起きやすいという記事もあります。





2015年2月5日

2015-02-09 09:24:36 | 腸内細菌

1型糖尿病とマイクロバイオームの関連: 疾患の発症より前に起きるマイクロバイオームの種多様性の変化
Microbiome linked to type 1 diabetes: Shift in microbiome species diversity prior to disease onset



MITとハーバードのブロード研究所、マサチューセッツ総合病院(MGH)、DIABIMMUNE研究グループの研究者たちは、これまでで最大規模となる経時的なマイクロバイオーム研究において、腸微生物叢の変化と1型糖尿病(T1D)発症との間の関係を特定した。遺伝的にT1Dになりやすい傾向を持つ乳児を追跡調査した結果、T1Dが発症する前に微生物多様性が低下し、腸の健康を促進する種(species)の数が不釣合いに減少するなどの異常が生じることを発見した。Cell, Host & Microbeによって発表される今回の発見は、微生物に基づくT1Dの診断ならびに治療の選択肢への可能性を開くかもしれない。



我々の体内に住む細菌やウイルスなど何兆もの微生物から構成されるヒトのマイクロバイオームは、それらがヒトの健康と疾患において演ずる役割を研究者が探求し始めるにつれて医学コミュニティにとっての関心事になりつつある。マイクロバイオームのほとんどの微生物は無害でしかも有益ですらあるが、マイクロバイオームの変化、そして微生物種が宿主のヒトと共有する相互作用における変化は、糖尿病や炎症性腸疾患/IBDなどのさまざまな疾患と関連付けられている。

マイクロバイオームの変化と1型糖尿病との間の関係を調査するため、ブロード研究所のメンバーでありMGHの胃腸病学のチーフでもあるRamnik Xavierを中心とする研究チームは、フィンランドとエストニアの子供たちの大規模なコホートから遺伝的にT1Dになりやすい傾向のある33人の乳児を選んで追跡調査した。研究チームは出生から3歳までの便検体を定期的に分析して、腸マイクロバイオームの組成に関するデータを収集した。

その結果、この期間中にT1Dを発病した少数の子供は、発症の1年前に群集の多様度(community diversity; マイクロバイオームに存在する種の数)が25%低下した。この集団の変化には、腸の健康の調節を助ける細菌の減少と、炎症を促進する潜在的に有害な細菌の増加が含まれていた。この発見は以前に特定された腸の炎症と1型糖尿病との関連のエビデンスに続くものである。

「過去の研究から、腸細菌の組成の変化が1型糖尿病の早い時期の発症と相関することが知られている。その細菌ネットワーク間の相互作用は、疾患の危険性がある人々の中でなぜ1型糖尿病を発症する人と発症しない人がいるのかについての理由の一部である可能性がある」、研究に資金助成したJDRF(国際若年性糖尿病研究財団)Discovery ResearchのディレクターであるJessica Dunneは言う。

「今回の研究は、マイクロバイオームの特異的な変化がどのようにして症候性のT1Dへの進行に影響するかについて示す最初のものである。」



先行研究は、自己免疫性糖尿病の素因をもつマウス(マウスのT1Dに相当する)から素因をもたないマウスへの微生物叢の移植は、自己免疫性糖尿病の有病率を増加させることを示した。ヒトにおける研究もT1Dと腸内細菌の組成との間に関連を示している。しかしながら、それらの研究は後向き(retrospective)であり、患者がT1Dを発症した後に研究が実施されたために因果関係を証明するのは困難である。

「1型糖尿病の発症のリスクが高い子供のコホートを選び、続いてどんなマイクロバイオームの変化が疾患の進行へバランスを変えたかについて追跡したという点で、我々の研究は独特である」、Xavierは言う。



研究では1型糖尿病を最終的に発病しなかった乳児も追跡調査したため、研究者は乳児期の通常のマイクロバイオームの発達に対する洞察も得ることができた。腸マイクロバイオームに存在する細菌の種は個人間で非常に異なる一方、個々人の中でのマイクロバイオームの組成は時間が経過しても概して安定していた。さらに、代謝の間に産生される小さい分子(代謝産物)を被験者の便検体から観察するメタボローム分析では、細菌の種が個人間で異なる一方で、マイクロバイオームのさまざまな種によって果たされる生物学的機能は時間が経過しても人によって一貫したままだった。

「乳児期の早期は細菌のコミュニティの大きさは小さく、そして人生の後期になってそれがより大きくなっても、細菌のコミュニティの大きさや組成とは関係なくコミュニティは常に同じ大きな機能を果たす。たとえどの種が存在しても、彼らは同じように大きな代謝経路をつくり上げる。それは彼らが同じ仕事をしていることを示す」、Kosticは言った。

治療法(therapeutics)に関しては、ハーバード医科大学院のKurt Isselbacher教授職でありMITのマイクロバイオーム・インフォマティクス・セラピューティクスセンターの共同ディレクターでもあるXavierは次のように言う。T1Dの子供の胃腸管にどの種が存在せずどの種が栄えているのかを知ることは、マイクロバイオームを操作して免疫を調節する方法を明らかにすることにより発症後に疾患の進行を遅らせることを可能にすることの助けになる、と。



次のステップはサンプルの蓄積を拡大し、環境とマイクロバイオーム中のどのような要因がフィンランド人をT1Dにかかりやすくしている可能性があるかについて確かめることである(フィンランド人は例外的にT1Dのリスクが高い)。それは衛生仮説を再訪することを含む。衛生仮説では小児期の微生物や他の潜在的な感染病原体への曝露の欠乏が免疫システムの発達を妨げ、免疫的障害への感受性を増加させるとする。

研究者は研究で集められたメタゲノム・データも分析し、微生物叢が作用する生物学的経路やどんな代謝産物を産生しているかを確かめ、T1Dの発症に寄与する原因を明らかにしようとしている。

記事出典:
上記の記事は、MITとハーバードのブロード研究所によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.乳児の発達中のマイクロバイオームならびに1型糖尿病へと進行中のマイクロバイオームのダイナミクス。

Cell Host & Microbe、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/02/150205123022.htm

<コメント>
1型糖尿病を発症する乳児は、発症前に細菌の多様性が低下していたという記事です。3歳児までの研究ですが、成人になってから緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)を発症する人もいるので関係はあるのかもしれません。

Abstractを見ると、まずセロコンバージョン(seroconversion)、つまり血清中の抗体が陽性になり、次にコミュニティ多様性(community diversity)が減少し、炎症と関連する生物と経路が増加して、それからT1Dの発症/診断という流れです。



文中のDIABIMMUNEはフィンランド・ロシアカレリア・エストニアという近隣の国で1型糖尿病について調べるプロジェクトです。特にフィンランドとカレリアは国境を接しているにも関わらずT1Dの発症率は6倍以上も違うとのことです。

>The incidence of T1D is six times lower in Russian Karelia than in Finland, whereas there are very limited differences in the frequency of predisposing and protective HLA ( human leukocyte antigen) genotypes in the background population.

2015年1月22日

2015-01-25 23:46:05 | 腸内細菌

ウイルスは、炎症性腸疾患において予想外の役割を果たすかもしれない
Viruses may play unexpected role in inflammatory bowel diseases



炎症性腸疾患(Inflammatory bowel diseases; IBD)は腸における細菌の多様性の減少と関連する。しかし、セントルイスワシントン大学の医学部を中心とする新しい研究によれば、同疾患はウイルスの多様性の増加とも関連づけられた。炎症性腸疾患の患者は、健康なボランティアよりも消化器系のウイルスの種類が多かった。これはおそらくウイルスが疾患に関与することを示唆する。この研究は1月22日にCellのオンライン版、1月29日の印刷版で発表される。



科学者がマイクロバイオーム、つまり体内と皮膚のすべての細菌とその遺伝子の疾患における役割を認識し始めたのはほんの最近のことである。例えば腸マイクロバイオームの変化は、肥満、糖尿病、メタボリックシンドローム、そして炎症性腸疾患と関連づけられてきた。今回の研究はバイローム(virome)、つまり体内のウイルスとその遺伝子の変化を腸の疾患と初めて関連づける。研究者によれば、この研究結果はウイルスが肥満と糖尿病、そして2つの最も一般的な炎症性腸疾患であるクローン病と潰瘍性大腸炎に関与する可能性を上げるものだという。

「これは、氷山の一角である」、シニア著者のHerbert W. Virgin IV医学博士は言う。

「これらの患者で特定したウイルスDNAのかなりの割合が、我々にとって未知である。それは我々がほとんど知らない新しく特定されたウイルスに由来する。バイロームの変化がこれらの病態を引き起こしているのか、それとも病態の結果としてバイロームの変化が起きているのかを確定するためには、我々にはまだ多くのやるべきことがある。例えばこれらのウイルスの遺伝子の配列決定、そしてウイルスがどのように腸や腸の細菌と相互作用するかを研究しなければならないだろう。」

Virginたち研究グループは、シカゴ、ボストン、イギリスに住むクローン病または潰瘍性大腸炎の患者グループを調査した。彼らは研究の参加者とその家族やボランティアの便から精製されるウイルスDNAを比較した。

「炎症性腸疾患で増加していたウイルスの多様性の多くはバクテリオファージだった。バクテリオファージは細菌に感染して、自分自身を細菌の遺伝物質へと組み込むことができるウイルスである」、病理学のEdward Mallinckrodt教授職であり、病理免疫学部のトップでもあるVirginは言う。

炎症性腸疾患において細菌を排除するような腸の変化は、死んだ細菌からバクテリオファージを開放するかもしれないとVirginは推測する。または食事による新しいバクテリオファージの移入が消化器系やマイクロ・バイオームの反応を誘発して障害を引き起こす可能性があると彼は言う。炎症性腸疾患の治療を改善するためには、科学者は腸マイクロバイオームと腸バイロームがどのようにして患者の遺伝子と相互作用するかをもっと学ぶ必要があるという。

学術誌参照:
1.炎症性腸疾患における腸バイロームの疾患特異的な変化。

Cell、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150122132738.htm


<コメント>
炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease/IBD)は細菌の多様性の低下だけでなく、ウイルスの多様性の増大とも関連するという記事です。

関連記事にも同様の内容があります。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/03/140310090919.htm
>The most common viruses in the gut are the bacteriophages. These rapidly-evolving viruses can outnumber bacteria by a factor of 10 to one;

>they infect and destroy bacterial cells and have the ability to transfer genetic material from one bacterium to another, with potentially profound implications for GI health and disease.
(ウイルスのバクテリオファージは急速に進化し、そして細菌よりも非常に数が多い。バクテリオファージは細菌に感染して破壊し、遺伝物質を細菌から細菌へと伝えることができるため、腸管の健康と疾患に深く関連する可能性がある。)

>"There is a predator-prey relationship between bacteriophages and bacteria that may play a role in altering the bacterial microbiota in conditions such as inflammatory bowel diseases (IBD)," says Prof. Wu.
(バクテリオファージと細菌の間には捕食者と獲物の関係があり、それはIBDのような病態における細菌叢の変化と関連する。)

"The fact that bacteriophages induce immune responses in bacteria and may also transmit genomic material into bacteria that may alter their function makes these viruses extremely important and we need to know much more about them."
(バクテリオファージは細菌における免疫応答を誘発し、遺伝物質を細菌に伝えてその機能を変化させるという事実を考えれば、ウイルスは非常に重要な存在である。我々はもっとウイルスについて知る必要がある。)

英語版Wikipediaのviromeの項目には、食事とviromeの関連についての記述があり、Referenceとして報告が一つ挙げられています。

http://genome.cshlp.org/content/21/10/1616
>Here, we investigate viromes from human subjects on a controlled feeding regimen.
>The dietary intervention was associated with a change in the virome community to a new state, in which individuals on the same diet converged.