goo blog サービス終了のお知らせ 

機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

潜伏するHIVを再活性化させる新薬

2015-09-18 06:24:07 | 感染症
Researchers reawaken sleeping HIV in patient cells to eliminate the virus

An emerging class of drugs called Smac mimetics may lead to a safe, effective treatment to eradicate HIV

September 9, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150909124102.htm

BIRC2はHIV-1の転写を抑制して潜伏させる
Smacを模倣する化合物のSBI-0637142はBIRC2を阻害して、潜伏するHIV-1を活性化する

Smac模倣物のSBI-0637142とヒストン脱アセチル化阻害剤のpanobinostatの組み合わせはウイルス再活性化の徴候を示したが、免疫系の活性化は引き起こさなかった
既に癌での臨床試験が行われているSmac模倣物のLCL161とpanobinostatの組み合わせでも同様の結果が得られた


http://dx.doi.org/10.1016/j.chom.2015.08.009
BIRC2/cIAP1 Is a Negative Regulator of HIV-1 Transcription and Can Be Targeted by Smac Mimetics to Promote Reversal of Viral Latency.
BIRC2/cIAP1はHIV-1転写の負の調節因子であり、cIAP1はSmacの模倣物mimeticsによって標的にしてウイルス潜伏の反転を促進することが可能である


Highlights
・Targeted RNAiスクリーニングにより初期ステージのHIV-1複製を阻害するホストタンパク質を同定する
・BIRC2/cIAP1はLTR依存的HIV-1転写の負の調節因子である
・Smac mimeticによるBIRC2枯渇は、NF-κBシグナル伝達を活性化してHIV-1潜伏を覆す
・Smac mimeticとHDAC阻害剤は、相乗作用によりHIV-1潜伏をin vitroとex vivoで覆す

Summary
ART療法はHIV-1複製を抑制するが、潜伏するウイルスリザーバーは残る

我々は対象を絞り込んで/targeted、RNA干渉スクリーニングを行うことで、ユビキチンリガーゼのBIRC2 (cIAP1) を同定した
BIRC2は非古典的NF-κB経路の抑制因子であり、LTR依存的HIV-1転写を強力に負へと調節する
(BIRC2はHIV-1を潜伏させる)

Smac mimeticsという小分子アンタゴニストによるBIRC2の低下はHIV-1転写を促進して、JLat潜伏モデルシステムの潜伏を覆した
ARTにより抑制された患者の休止状態CD4+T細胞を、HDAC阻害剤のpanobinostatとSmac mimeticsの両方で処理した結果、
潜伏リザーバーは相乗的に活性化された

これらのデータは、潜伏HIVリザーバーを消去するshock-and-kill戦略にとってSmac mimeticsが有用な薬剤であることを意味する
 

潜伏するHIVを2つの化合物が目覚めさせる

2015-08-07 06:05:13 | 感染症
Waking up HIV

Two compounds show great potential to rouse latent virus

July 30, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150730162238.htm

カリフォルニア大学Davisの研究者は、潜伏するHIVを活性化する2つの化合物の組み合わせを発見した
さらに良いことに、化合物のPEP005は既にFDAによって承認されている

PEP005は前癌性の光線角化症actinic keratosisの治療薬であるPICATOの有効成分active ingredientであり、
患者の血液でHIVを活性化させ、毒性も低かった

※PEP005: インゲノール 3-アンゲラート
/ingenol-3-angelate

※光線角化症: 皮膚有棘細胞癌(squamous cell carcinoma)の前駆病変


しかしHIVは複雑なウイルスである
研究者はPEP005に加えて他のHIVを活性化する化合物をテストし、さらにJQ1を同定した
JQ1はPEP005との相乗作用によりsynergistically活性化を最大化する
2つを組み合わせることでHIVの活性化は15倍に増大した

※JQ1: p-TEFbアゴニスト/BETブロモドメインタンパク質阻害剤


これは有望なpromising結果だが、研究者は「ショックを与える」のはその後に「殺す」ことでのみうまくいくということを忘れていない


http://dx.doi.org/10.1371/journal.ppat.1005066
Synergistic Reactivation of Latent HIV Expression by Ingenol-3-Angelate, PEP005, Targeted NF-kB Signaling in Combination with JQ1 Induced p-TEFb Activation.

PEP005は、pS643/S676-PKCδ/θ-IκBα/ε-NF-κBシグナル伝達経路により効果的に潜伏HIVを活性化するが、
NF-κBタンパク質産生を誘導せず増加させなかった

組み合わせはPEP005の単体の7.5倍


潜伏するHIVを妨害するため過去に様々な化合物がテストされ、
中でもプロテインキナーゼC (PKC) - NF-κB経路により
ウイルスlong terminal repeat (LTR) からHIVの再活性化を誘導するものが高い効果を示した

最近の研究では、
対症療法suppressiveのART療法を受けているHIV感染患者で
休止状態のCD4+T細胞からHIVの完全な転写を誘導する際に
PKC-NF-κBを刺激するlatency reversing agents/LRAsが
最も効果的である可能性が示された [26]


我々は以前、インゲノールエステルingenol esterであるインゲノール-3-ヘキサン酸/ingenol-3-hexanoate/IngBが、潜伏HIV活性化の優れた候補であることを報告した [24]

しかしIngBは、NF-κBとCyclinT1/CDK9の両方の発現と活性化を誘導し、IFNγ発現をprimary CD4+ T細胞で刺激するため、
HIVをさらに活性化させつつ細胞毒性の低い新たなインゲノール化合物のさらなる研究が必要だった [24,27,28]
 



HIVの進行にはコレステロールが必要

2015-07-26 17:39:19 | 感染症
Cholesterol metabolism in immune cells linked to HIV progression

Findings may lead to novel strategies to control HIV infection

July 17, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150717142437.htm


HIVが進行しない人は、抗原提示細胞/APCでのコレステロールの代謝が促進されている






Low cholesterol in immune cells tied to slow progression of HIV

April 29, 2014

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/04/140429085558.htm

HIVが体内に入ると、一般的にはtypically樹状細胞のような免疫細胞に取り込まれ、
リンパ節に運ばれてT細胞などの他の免疫細胞に渡される
HIVはT細胞の中で増殖し、やがて免疫系を圧倒してAIDSを発症させる

樹状細胞やB細胞のコレステロールが少ない人では、HIVはT細胞に感染しない(感染が検出できない)
ただし血中のコレステロールは正常

コレステロールは外側の細胞膜に必須の構成要素で、HIVが様々な種類の細胞で効率的に複製するために必要


http://dx.doi.org/10.1128/mBio.01031-13
Alterations in Cholesterol Metabolism Restrict HIV-1 Trans Infection in Nonprogressors.






Can cholesterol-lowering drugs help treat acute Ebola cases?

July 17, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150717101433.htm

コレステロール低下薬がエボラ患者の治療を助ける可能性


エボラの糖タンパク質glycoprotein/GPは、GP1とGP2から構成されるが、
膜に固定されたanchored GP2サブユニットだけで、細胞毒性を引き起こすのに十分であることを研究者は証明した
GP2は細胞のつながりを壊して、感染者の上皮バリア喪失の要因となる可能性がある

同時に、それは感染細胞膜に大量のフィラメント(薄く、糸のような細胞構造threadlike cell structures)の形成を開始する
これはおそらくGP2サブユニットがウイルス膜の組み立てに関与していると研究者は推測する


エボラの糖タンパク質glycoproteinは、細胞膜アンカーとして知られる部分の中に、通常とは異なるアミノ酸パターンを持つ
このアンカーは特異的な配列から構成され、タンパク質を細胞膜内に局在化させる

この特定のアミノ酸パターンは、細胞膜でのウイルス糖タンパク質と宿主hostの膜脂質コレステロールとの間の特異的な相互作用を可能にする


「エボラ糖タンパク質の細胞毒性と、宿主細胞膜でのフィラメント形成は、どちらも細胞のコレステロールの量を基に調節されうる」

ハイデルベルグの研究者はスタチンを使い、
細胞のコレステロールの減少とともに
エボラウイルスの糖タンパク質によって引き起こされる細胞の剥離detachmentの抑制を報告する


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms8688
Inhibition of Ebola virus glycoprotein-mediated cytotoxicity by targeting its transmembrane domain and cholesterol.


Figure 4: A novel role for GP in virus assembly at the plasma membrane.

(a) GP2の三量体は、細胞膜でのコレステロールレベルの上昇によって結合を開始する


2015年2月12日

2015-02-15 22:28:27 | 感染症

腺ペストのボトルネック: 科学者はペストに関する定説をひっくり返す
Bubonic bottleneck: Scientists overturn dogma on the plague



科学者たちは何十年もの間、腺ペスト(bubonic plague)を引き起こす細菌は蚤に食われた跡(fleabite)で宿主の細胞をハイジャックして、そこからリンパ節に向かうと考えてきた(ペスト菌はリンパ節で増殖して重い疾患を引き起こす)。しかし、ノースカロライナ大学医学部研究者は、この広く認められた理論が勘違い(off base)であることを発見した。

細菌は宿主の細胞を使わない; 細菌は独力で、そして少数だけがリンパ節に移動する。実際には、ペストを引き起こす細菌であるペスト菌(Yersinia pestis)の大部分 は、ボトルネックとなる皮膚やリンパ節への途中、またはリンパ節それ自体のいずれかで捕らえられる。ほんの少数のペスト菌だけは逃げ出して、リンパ節を感染させて疾患を引き起こす。



標準治療の抗生物質は十分に早く服用すればペスト菌に対して有効である。しかし感染は何日も気付かれずに進行することが可能であり、それが診断を難しくする。抗生物質は効きにくくなり、細菌の感染は長期化する。

ペスト菌は3種類のペストを引き起こす:
腺ペスト(bubonic plague; 蚤に食われた跡から感染する);
肺ペスト(pneumonic plague; 細菌を吸い込むことによって感染する);
敗血性ペスト(septicemic plague; 重い血液の感染症)。

微生物学と免疫学の教授であり論文のシニア著者のヴァージニア・ミラー博士たちの研究チームは、肺ペストと腺ペストを調査している。

3年前、当時UNC大学院生だったRodrigo Gonzalez博士(現在はハーバードのポストドクター)は文献を検索し、ペスト菌は蚤に食われた跡からリンパ節まで食細胞(phagocyte)によって移動するという一般に認められている概念を確認した。培養した食細胞にペスト菌を加えると食細胞は細菌を取り込むので、科学者はこの考えを容易に受け入れた。食細胞は基本的に有害な微生物を食べてリンパ系からリンパ節まで移動するので、科学者は必然的に食細胞がペスト菌をリンパ節へ連れて行くという結論に至った。

しかし、注射とは異なり、蚤に食われた跡は皮膚のすべての層を貫通しないということをGonzalezとミラーは知っていた。ノミと蚊の噛み傷は皮内(intradermal)であり、それらは皮膚の層の中で生じる。Gonzalesとミラーは、この長い間保たれてきた理論をテストすることは価値あるプロジェクトであることに同意した。

Gonzalezは、正確な量の細菌がマウスの皮膚から移動するように蚤の咬傷を研究室で模倣するための適切な方法を数ヵ月かけて作り出した。続いてミラーの研究チームは10種類の特別なDNA配列を作成して、それらをペスト菌の染色体に加えることで10種類の異なる菌株を作製した。この配列は細菌の毒性には影響を及ぼさないが、微生物にタグ(標識)を付けて、どの細菌が「噛み傷」からリンパ節まで移動したのか特定できるようにする。

「10系統の内、リンパ節にたどり着くのは一つか二つだけだと判明した」、ミラーは言う。

「しかしそれらの菌の到着は早く、細菌が注入されて5分から10分以内だった。もし細菌が宿主の細胞の中で一緒に移動するなら、素早く移動することはないだろう。宿主の細胞の動きは遅いからである。細菌は液体の中を流れるように移動できるが、細胞はどちらかと言えばリンパ系の中を這って動く。」



ミラーの研究チームは現在、感染できない大部分のペスト菌はどのようにリンパ節への感染を阻害されているのか知るための実験を実施している。

「我々は、脆弱性の1つを発見したかもしれない」、ミラーは言う。

「その脆弱性の利用は、ペスト菌と他の昆虫媒介性の病原体を打ち破る新しい方法につながる可能性がある。」

記事出典:
上記の記事は、ノースカロライナ大学医学部によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.高度に有毒な病原体の伝播: 感染を特徴づける早期の事象を追跡する。

PLOS Pathogens、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150129125459.htm



<コメント>
ペスト菌(Yersinia pestis)の感染経路は従来考えられていたものとは異なるかもしれないという記事です。

関連記事にもありますが、ほんの数ヶ月前にペスト菌が樹状細胞(dendritic cells)と単球(monocytes)に感染したまま鼠径(groin)等のリンパ節に移動する(その後S1Pアゴニストで刺激するとリンパ節に留まり生存が改善する)というImmunityの研究記事が掲載されたばかりでした。


2015年1月21日

2015-01-27 14:20:52 | 感染症

エボラ・タンパク質の断片の毒性が特定される
Toxic Ebola protein fragment identified


ルイジアナ州立大学ヘルスサイエンスセンター・ニューオリンズ医学部で微生物学と免疫学、寄生生物学の名誉教授であるWilliam Gallaher博士は、細胞に有毒なエボラウイルス蛋白質の断片を発見した。この断片はウイルスの感染と疾患に寄与する可能性がある。この発見はオープンアクセス誌のVirusesのオンライン版で2015年1月20日に発表された。

エボラウイルスが細胞と接着する際にGP(glycoprotein)というタンパク質が関与する。今回発見された断片は、そのタンパク質と並列して作られるひと固まりのアミノ酸の中から発見された。このいわゆる「デルタ・ペプチド」はエボラウイルスが既に感染した細胞との接着を阻害することが最近明らかにされているが、今回の新しい発見はデルタ・ペプチドがおそらく細胞膜の透過性を変化させることにより作用することを示唆する。

この発見の後にGallaher博士は長年の共同研究者であるロバート・ギャリー博士に連絡した。チューレイン医科大学の微生物学と免疫学の教授である彼に構造モデルを作製してもらい、作用の潜在的メカニズムを推測するためである。モデリングの成果は論文にされてこの分野の専門家によって厳しい査読を受け、承認されて初めてViruses誌の特別号「エボラウイルス・マールブルグウイルス・Cuevavirusに関する2014-2015年の研究における前進」で公開される予定である。

断片の潜在能力は合成ペプチドを用いた予備的な研究により確かめられたが、感染細胞内の自然な環境でのその特異的な役割と潜在能力はまだ確認されていない。しかしながら、Gallaher博士たちはエボラ・タンパク質断片の有毒な特性を(研究所の環境ではあるが)不活性化する方法を発見した。彼らは有毒なメカニズムの阻害剤も開発しており、それは最終的に薬として役立つかもしれない。エボラウイルス疾患におけるデルタ・ペプチドの役割は、今後の研究によって確立されるはずである。

学術誌参照:
1.エボラウイルス・デルタ・ペプチドのモデル化は、潜在的な細胞溶解の配列モチーフを明らかにする。

Viruses、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150121103304.htm



<コメント>
エボラウイルスのsGP(soluble GP)が作られる際に切断されて生じるデルタペプチド(delta peptide)は、感染した細胞にチャネルを形成することで毒性を発揮するという記事です。

デルタペプチドはアミノ酸40残基の短いペプチドで、両親媒性(amphipathic)のα-ヘリックスを形成して細胞膜に埋め込まれるような形でチャネルとして作用するとのことです。


2015年1月8日

2015-01-14 11:44:05 | 感染症

新しく発見された抗生物質は、抵抗性なしで病原体を殺す
Newly discovered antibiotic kills pathogens without resistance



長い間、病原体の抗生物質への耐性は研究者の一歩先を行った。そしてそれは公衆衛生上の危機を引き起こしている。

しかし今、科学者は病原体を排除する新しい抗生物質を発見した。それはどんな抵抗性も検出されない。

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150108124854.htm

<コメント>
グラム陽性に対する「抵抗性を生じない」抗生物質teixobactinが発見されたという記事です。

高度に保存されたモチーフであるLipidII(ペプチドグリカン/peptidoglycanの前駆体)とLipidIII(壁タイコ酸/wall teichoic acidの前駆体)に結合して、細胞壁の合成を阻害するとされています。


Extended Data Figure 7
teixobactinによる細胞壁合成の阻害


Lipid II(ペプチドグリカンの前駆体)は、細胞質の中で合成されて、MurJ48またはFtsW49によって内膜の表面に反転される(flipped)。

Lipid III(壁タイコ酸/WTAの前駆体)は細胞内で同じように形成される。そして、WTA Lipidが結合された前駆体は、ABC輸送体TarGH50によって細胞質の膜の反対側にトランスロケーションされる。

Teixobactin(TEIX)は、細胞壁の前駆体であるLipid IIとLipid IIIとの化学量的な(stoichiometric/反応に関与する物質量(モル数)の関係を指す用語)複合体を形成する。

これら基礎単位の奪取(abduction)は、ペプチドグリカン(右側)とWTA(左側)の生合成、ならびに前駆体のリサイクルを同時に妨げる。細胞壁の合成経路内の複数の標的に対する結合は、機能的な細胞エンベロープの形成を妨げる。

左のパネルは、下がteixobactinの標的となるグラム陽性菌、上はteixobactinに抵抗するグラム陰性菌。teixobactinの生産者はグラム陰性菌であり、外膜(OM)、つまり透過できない障壁の外に排出することによってこの化合物から保護される。teixobactinの標的となるグラム陽性細菌は外膜を持たない。

CM、細胞質膜; CW、細胞壁; OM、外膜; LTA、リポタイコ酸; WTA、壁タイコ酸

2014年12月4日

2014-12-07 11:35:22 | 感染症

チフスのメアリー、マウスのチフス:
チフスからマウスを保護する酵素は、ヒトにはない

Typhoid Mary, not typhoid mouse: Enzyme protects mice, not humans from typhoid



チフス菌はヒトにチフスを引き起こすが、他の哺乳類はチフスにかからない。カリフォルニア大学サンディエゴ校とエール大学医学部の研究者は、今その理由の1つを明らかにする。それは、ヒトがCMAHという酵素を持たないからである。

この酵素がないと毒素はヒトの細胞に結合しやすくなり、細胞に侵入して病気を引き起こすことが可能になる。この研究はCellの12月4日号で発表される。

http://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(14)01429-9



我々に進化的に最も近い大型類人猿を含むほとんどの哺乳類では、CMAHは細胞表面の糖分子をチフス菌の毒素が結合できない種類に変更する。

ヒトはCMAHを産生しないため、細胞表面の糖分子は変化しないままである。今回の研究が示すように、それはちょうどチフスの毒素が結合できる状態である。

「我々がこのプロジェクトを始めたのは、全く関係がない癌に関する研究のためだった。しかし代わりに、セレンディピティにより我々はチフスの毒素の結合に関するミステリーを解決した」、共シニア・オーサーのカリフォルニア大学サンディエゴ校Ajit Varki博士は言う。

全ての哺乳類は、細胞表面をNeu5Acというシアル酸糖分子の一種で装飾する。大部分の哺乳類において、CMAHはNeu5AcをNeu5Gcに変換する。それはただ1つの酸素原子を含むだけの、わずがだが重要な違いである。

VarkiとGalanたち研究チームは、チフス毒素の結合は、ヒト・タイプのNeu5Acにきわめて特異的であることを初めて発見した。

記事出典:
上記の記事は、カリフォルニア大学サンディエゴ校健康科学によって提供される素材に基づく。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141204140614.htm



<コメント>
チフス菌(Salmonella Typhi)の毒素の結合は、CMAHをもたないヒトに特異的であることが判明したという記事です。

CMAH(CMP-Neu5Ac hydroxylase)は、シアル酸の一種であるN-アセチルノイラミン酸 (Neu5Ac) をN-グリコリルノイラミン酸 (Neu5Gc) に変換する酵素です。

タイトルの「チフスのメアリー」を画像検索すると、こんなのが。荒木先生…


2014年11月20日

2014-11-26 15:55:55 | 感染症

広範囲の炎症を生じさせ、血管を漏れやすくするエボラウイルス蛋白質
An Ebola virus protein can cause massive inflammation and leaky blood vessels



エボラウイルスEbola virus)の表面を覆うGPタンパク質は、感染細胞からも排出される。PLOS Pathogensで11月20日に発表される研究では、排出されるGPタンパク質が広範囲にわたって免疫応答の調節不全を引き起こし、血管の透過性に影響を及ぼすことを報告する。

エボラウイルスには7つの遺伝子がある。その1つであるGPは、2つの関連するタンパク質をコード化する: より短い方は分泌される(secreted)。長い方はウイルスの表面全体から突き出し、その表面のGPの一部はヒトの酵素によって切り離されて、その後感染細胞から排出される(shed)。排出GP(shed GP)、分泌GP(secreted GP)は、感染したヒトと動物の血液中に高濃度で見られる。

クロード・ベルナール・リヨン第1大学と、フランスの国立保健医学研究所(INSERM)の病原制御学研究国際センター(International Center for Infectiology Research; Centre International de Recherche en Infectiologie; CIRI)の研究者であるViktor Volchkovたちは、完全なエボラウイルスは使わず、組織培養により排出GP・分泌GPを産生し、これらのタンパク質を使用してヒト細胞に対する影響をテストした。

分析の結果、排出GPはマクロファージならびに樹状細胞と結合できることが判明した。そのどちらもエボラウイルス感染の標的となる免疫細胞である。これらの免疫細胞は、排出GPと結合するとすぐに莫大な量の免疫変調成分(immune-modulators)を放出し始める。排出GPとこれらの免疫変調成分は可溶性タンパク質であり、血流に乗って移動する。このことは、ウイルスに対する初期免疫応答が、排出GPの継続的な産生と放出によってどのように増幅されるかを説明するかもしれない。免疫応答はらせん降下するように制御できなくなり、高熱、広範囲の炎症、そしておそらくショック死に至る。

科学者はさらに、排出GPの免疫細胞に対する影響がTLR-4に依存的であることも発見した。特異的な抗体でTLR-4を阻害すると、免疫細胞の反応は弱まり、免疫変調成分の放出の多くは消去された。

広範囲かつ破壊的な炎症の他に、エボラ出血熱は血管の完全性(blood vessel integrity)の喪失とも関連がある。研究者は血管を形成する内皮細胞の透過性(permeability)に対する分泌GPと排出GPの影響を調べ、排出GPは内皮細胞の透過性を直接増加させることができることを発見した。排出GPと結合した免疫細胞によって作られる様々な免疫変調成分も、同様に透過性を増加させる。



研究の結果は動物またはヒトで確認される必要はあるものの、著者は次のように結論する。

エボラウイルスの排出GPは、過剰かつ調節が破綻した宿主の炎症反応、ならびに血管の透過性の増大に関与することを研究データは裏づける。

さらに、抗TLR4抗体は排出GPによって引き起こされる炎症性反応を抑制するために用いることができると思われる。

記事出典:
上記の記事は、PLOSによって提供される素材に基づく。


学術誌参照:
1.エボラウイルスの排出GPは、免疫活性化と血管透過性の増大を引き起こす。

PLoS Pathogens、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141120141654.htm

<コメント>
Shed GPの訳が見つからないので、とりあえず「排出GP」と訳しておきます。

エボラウイルスの表面糖蛋白質であるGP(glycoprotein)は、感染細胞のTNFα変換酵素(TNFα-converting enzyme; TACE/ADAM17)によって切断されて排出され、様々な影響を引き起こすという記事です。

GPはD637(アスパラギン酸637)とQ638(グルタミン638)の間でTACEによって切断されることが2004年に報告されています



2014年11月17日

2014-11-20 23:32:11 | 感染症

科学者はエボラの防御の弱点を明らかにする
Scientists Reveal Weak Spots in Ebola's Defenses



スクリップス研究所(The Scripps Research Institute; TSRI)の科学者は、エボラウイルスの表面でZMappの抗体が標的にする弱点を特定した。ZMappは最近のエボラ大発生で数人の患者に投与された試験的な抗体カクテルである。

この研究はTSRIの構造生物学者Andrew WardとErica Ollmann Saphireによって指揮されたもので、ZMapp抗体がどのようにエボラウイルスと結合するのかを三次元画像によって明らかにした。

Wardは言う。

「ZMappがどのようにエボラを標的にするかについて知った今、我々は新しく開発された全ての抗エボラ抗体を比較することができる。」

Mappバイオファーマシューティカル(サンディエゴ)によって開発されたZMappは、進行中のエボラウイルス大発生において数人の患者を治療するために8月に用いられた。ZMappを投与した7例のうちの5例が生き残ったが、研究者はZMappが患者の回復において効果を生じたかはまだ確実には言えないという。

新しい研究はZMappがなぜ効果的でありえたかについて説明する。電子顕微鏡画像を分析したところ、ZMappの2つの抗体はウイルスの底部近くで結合していた。それはウイルスが細胞に侵入することを阻止すると思われる。第3の抗体はウイルスの最上部付近に結合し、それはおそらく感染箇所に免疫システムを呼び寄せるビーコンとして作用する。

このZMappの新しい画像では、ウイルスの底部近くの2つの抗体は結合する部分(エピトープ)が重複して競合しているように見える。この箇所は先行試験で特定されたエボラウイルスの表面の弱点であると思われるが、これから先もこの2つの抗体を使用し続けるべきか、それとも第3の角度からウイルスを攻撃するべきかという疑問が生じた。

8月に学術誌Scienceで発表された研究によれば、エボラウイルスは現在の大発生中に300以上の遺伝子的な変化を経験した。しかし幸いなことに、新しい研究はZMapp抗体が結合する部位がこれまで影響を受けなかったことを示す。



今回の新しい研究は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)により資金助成されたウイルス性出血熱免疫療法コンソーシアムの一部である。コンソーシアムはエボラウイルスならびに他の密接に関連する出血熱ウイルスを中和する最善の抗体カクテルを開発することを目的として、世界中の25の研究室からの抗体をテストしている。

コンソーシアムのための次の段階は現在の大発生の生存者からの新しい抗体を調査することである。コンソーシアムを指揮するSaphireは、ウイルスが変異して治療薬に抵抗性になる場合に備えてバックアップ・カクテルの開発に成功することを望んでいる。

ZMappは、2015年の初めに臨床試験に入るのを期待されている。カクテル抗体は、元はカナダの衛生行政機関と感染症の米陸軍医学研究所によって分離されたものである。

記事出典:
上記の記事は、スクリップス研究所によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.保護的抗体の構造は、エボラウイルス上の脆弱な部位を明らかにする。

PNAS、2014年11月17日;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141117154608.htm



<コメント>
ZMappに含まれる3つの抗体のうち2つはウイルスの基部に結合して細胞への侵入を阻止し、もう1つはウイルスの上部に結合して免疫を誘導しているようだという記事です。

エボラウイルスは免疫を抑制する仕組みを持っているため、免疫を刺激することも重要になってくるのでしょう。


2014年11月12日

2014-11-17 22:03:32 | 感染症

HIVの毒性は、ウイルスが宿主DNAのどこに挿入されるか次第である
HIV virulence depends on where virus inserts itself in host DNA



ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、宿主であるヒトDNAの異なる位置にウイルス自身を挿入することが可能である。KU Leuvenの分子ウイルス学・遺伝子治療学の研究者の報告によれば、この特定の組込み部位(integration site)は疾患がどのような早さで進行するかを決定する。彼らの研究は本日、学術誌のCell Host & Microbeでオンラインにて発表された。



HIVは免疫細胞を乗っ取り、新しいHIV粒子を作るようにプログラムを作り直す。このプロセスでHIVタンパク質インテグラーゼ(integrase)は重要な役割を果たす。インテグラーゼは宿主のDNAに存在する短いセグメントを認識して、ウイルスDNAが宿主DNAに挿入されるプロセスを触媒する。

インテグラーゼはヒトDNAのさまざまな場所にウイルスDNAを挿入することができるが、ウイルスがその挿入位置をどのように選択するかは20年以上も謎のままであった。

今回の研究でKU Leuvenの研究者はその謎を解明した。答えは2つのアミノ酸にある。Jonas Demeulemeester博士は次のように説明する:

「HIVインテグラーゼは200以上のアミノ酸から構成され、一定の構造に折り畳まれる。この構造をモデル化することにより、我々はインテグラーゼが宿主のDNAと直接接触する2つのアミノ酸の位置を特定した。この2つのアミノ酸がHIVの組込み部位を決定する。これはHIVだけでなく、関連する動物由来のウイルスにも当てはまる。」



研究ではさらに、HIVの組込み部位の選択に手を加えることが可能だったとRik Gijsbers教授は説明する。

「我々は特定のHIVインテグラーゼ・アミノ酸を動物由来のウイルスのそれと取り替えて、動物由来のウイルスが通常は統合するであろう位置でHIVのDNAが宿主DNAに統合されることを発見した。」

「HIVインテグラーゼは変異する場合があることも我々は示した」、Rik Gijsbers教授は言う。

「その2箇所には時々異なるアミノ酸が出現する。これらのバリアント・ウイルスは通常とは異なる箇所で宿主DNAに統合される。」



研究チームはクワズールー大学-ネイトル(南アフリカ国ダーバン)のThumbi Ndung'u博士と共に、これらのウイルスバリアントのAIDSへの進行に対する影響をアフリカのHIV患者のコホートで研究した。

Zeger Debyser教授は続ける:

「驚いたことに、組込み部位が変更されると疾患はより急速に進行した。言い換えれば、バリアント・ウイルスはより急速に免疫システムを破壊した。この洞察は疾患についての我々の知識を増やして、新しい展望を開く。宿主DNAの組込みを『より安全な』部位へと標的を変更させることにより最終的に新しい治療法を開発したいと思う。」

学術誌参照:
1.HIV-1インテグラーゼのバリアントはウイルス組込みの標的を変更し、それは慢性的な感染コホートで疾患進行と関連している。

Cell Host & Microbe、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141112132103.htm



<コメント>
HIVインテグラーゼのアミノ酸の変異がAIDSへの進行に影響するという記事です。

下の画像の青色がHIVインテグラーゼ、赤がHIVウイルスDNA、オレンジがヒトDNAです。



2014年11月12日

2014-11-14 23:25:50 | 感染症

口の発癌性HPVは、口と生殖器から伝染するかもしれない
Oral cancer-causing HPV may spread through oral, genital routes



口と生殖器のどちらか、または両方がヒト・パピローマウイルス(HPV)に感染している女性パートナーがいる男性は、そうでない男性よりも口のHPV感染が広く見られた。これはHPVの感染が口から口、または性器から口(オーラルセックス)により生じることを示唆する。

このマギル大学によって実施された研究は、アメリカ癌学会(AACR)の学術誌Cancer Epidemiology, Biomarkers & Preventionで発表される。



「HPVは世界で最もありふれた性感染病であり、いくつかの癌の危険因子である。例えば子宮頸癌、膣癌、外陰癌、口腔咽頭癌[喉頭がん/扁桃腺癌]、肛門癌と陰茎癌などである」、マギル大学のエドゥアルド L.フランコ教授は言う。

「HPVの感染経路を理解することは重要である。なぜならそれはHPV感染の危険が最も高い人たちを特定し、彼らとそのパートナーの保護を助けることができるからである」、医学部の腫瘍学部の主任教授でもあるフランコは、そう付け加えた。

「我々の研究は、HPVが口から口、および性器から口というオーラルセックスのような性的接触によって口腔に感染するという付加的なエビデンスを提供する。」



年齢18~24歳の若い女性学生とその男性パートナーは2005年から2011年の間にリクルートされた。フランコが率いる研究チームが222人の男性とその女性パートナーでのHPV感染を観察した結果、男性222人のうち130人は生殖器がHPVに感染した女性パートナーがおり、男性の口中HPVの感染率は7.2パーセントであった。

感染率は喫煙者の男性で高く(12.2パーセント)、そして一夫一婦制の関係ではない(non-monogamous relationships)男性で高かった(17.9パーセント)。また、口中にHPVが感染した女性パートナーを持つ男性(28.6パーセント)、口中と生殖器の両方または生殖器のみがHPVに感染した女性パートナーのいる男性(11.5パーセント)でも高かった。

最も一般的な発癌性HPVタイプの1つであるHPV16の感染率は研究に参加した全男性の2.3パーセント(5人)であり、生殖器にHPV16が感染した女性パートナーがいる男性33人の6.1パーセント(2人)であった。

女性パートナーに対するオーラルセックスの頻度が増加するごとに(全くない/まれに、時には、ほとんど/常に)、女性パートナーの性器に存在する特定のHPVタイプへの男性の感染率は2倍以上増加した。

それとは逆に、タバコを決して吸わず、一夫一婦制の関係であり、口または生殖器がHPVに感染していない女性がパートナーの52人の男性は、誰もHPVに感染していなかった。

学術誌参照:
1.ヒトパピローマウイルスの男性の口への性的な感染。

Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention、2014年11月;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141112083843.htm

<コメント>
口と口の接触またはオーラルセックスの頻度が高いほどヒトパピローマウイルスが伝染しやすいという記事です。

タバコを吸う男性は特に注意が必要なようです。


2014年11月7日

2014-11-12 13:43:30 | 感染症

ヒトの細胞でノロウイルスを培養する方法が発見される
Researchers discover how to cultivate norovirus in human cells



ノロウイルスは激しい嘔吐と下痢を引き起こす悪質な腸ウイルスである。回復したように見えても、最大で3日後まではウイルス保菌者のままである。ノロウイルスは多くの一般的な消毒薬に抵抗性であり、しかもウイルス感染に必要な量はきわめて少ない。そのため、綺麗に掃除した後も感染に十分なだけのウイルスがまだ残っている可能性がある。

ワクチンは臨床試験中だが、現在のところウイルスと戦う薬は存在しない。その理由の一部は、研究者がヒトのノロウイルスを培養することができなかったからである。

しかし、フロリダ健康大学のStephanie Karst博士はノロウイルスが腸で標的にする細胞を特定し、それによりヒトのノロウイルスを培養する方法を発見した。

「ノロウイルスは1972年に発見されたが、その研究には大きなハードルが存在した。ヒトのノロウイルスはシャーレで培養することができなかった」、分子遺伝学と微生物学部の准教授、Karstは言う。



これまで研究者は、ノロウイルスが主に腸の上皮細胞を標的にするだろうと推測していた。しかし今回の新しい研究によれば、ウイルスはB細胞を標的にする。

「この結果には非常に驚いた」、Karstは言う。

Karstはさらに、腸内細菌に存在する細菌がノロウイルスのB細胞への感染を助けたことにも驚いたという。彼女によれば、ノロウイルスは細胞に感染するために特定の種類の炭水化物(糖鎖)を必要とすることを科学者は以前から知っていたという。

「ノロウイルスは共生細菌上に発現する炭水化物に付着し、この相互作用はB細胞へのウイルス感染を刺激する」、Karstは言う。

「これは本当にエキサイティングで新しいテーマである。様々な腸ウイルスがしばしば我々の腸に存在する細菌を利用するようである。これらのウイルス感染は、腸にいる細菌の存在によって増強される。」

UF科学者はパイエル板でウイルスを検出した。パイエル板は腸の内側を覆うリンパ小節のポケットであり、病原体を探査する場所である。

記事出典:
上記の記事は、フロリダ大学によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.腸内細菌は、ヒトおよびマウスノロウイルスのB細胞への感染を促進する。

Science、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141107154732.htm

<コメント>
ノロウイルスは腸管の上皮細胞ではなく、B細胞を標的としていることが明らかになったという記事です。

Abstractによれば、種々のノロウイルス株への感受性は個々人の血液型抗原(histo-blood group antigen; HBGA)と相関するとあります。以前からノロウイルスは血液型の糖鎖を認識すると言われていました(ウイルス株によってはB型が感染しにくい)。

今回の研究でノロウイルスの感染は、その血液型抗原を発現する腸内細菌の存在が必要であることが明らかになりました。実際、マウスのノロウイルスは抗生物質の経口投与で腸内細菌が枯渇するとウイルス複製が減少したようです。腸内細菌に対する免疫寛容が関与するのかもしれません。

糖鎖の形成と感染症の感受性との関連を示す報告がつい最近もありました。

http://first.lifesciencedb.jp/archives/9269
>腸管上皮細胞はさまざまな糖鎖および糖転移酵素を発現しており,それらのなかでは糖鎖の末端にフコースを付加する2型フコース転移酵素も発現している.

>この研究では,腸管上皮細胞における2型フコース転移酵素の発現にセグメント細菌を含む腸内細菌,および,インターロイキン22やリンホトキシンを産生する3型自然リンパ球が関与していることが見い出された.さらに,2型フコース転移酵素のノックアウトマウスはSalmonella typhimurium(ネズミチフス菌)に感染しやすいことが示された.

2014年11月10日

2014-11-12 12:34:11 | 感染症

肝移植患者のC型肝炎ウイルスを根絶する、期間が短く副作用が少ない併用療法
Combination therapy offers quicker, less toxic eradication of hepatitis C in liver transplant patients



肝移植を受ける全てのC型肝炎の患者は最終的に新しい肝臓にもウイルスが感染してしまうため、抗ウイルス薬による治療を必要とする。しかし伝統的な移植後C型肝炎治療は1年はかかる上に潜在的な毒性があり、臓器拒絶につながる可能性がある。

現在ボストンで開かれている米国肝臓学会議(American Association for the Study of Liver Diseases; Liver MeetingR 2014)で、メイヨー・クリニックの研究者は肝移植後の2つの薬の経口投与が安全かつ有益で、治療に必要な期間はわずか12週のみであると報告する。

「これは肝移植レシピエントで新薬のシメプレビル(Simeprevir)とソフォスブビル(Sofosbuvir)の効果を調べる最初の研究である。この大規模な研究により、それが現在の治療薬よりも良好な選択肢であることが判明した」、フロリダ・メイヨー・クリニックの研究者、Surakit Pungpapong博士は言う。現在標準的な移植前後の治療薬は、インターフェロンとリバビリンの併用である。



Pungpapong博士によれば、インターフェロンはヒトの免疫システムをC型肝炎ウイルスと戦うように仕向けるが、この免疫応答は臓器拒絶につながる可能性があるという。さらにインターフェロンは、貧血、鬱病、被刺激性、インフルエンザ症状、不眠症、脱毛など種々の副作用を生じる。研究の臨床的な重要性を考慮して、この研究結果は本会議で発表される予定である。

慢性C型肝炎ウイルスは、米国で300万人以上が罹患する最も一般的な慢性血液媒介感染である。ほとんどの感染者は疾患の症状がないものの、5パーセントから30パーセントは数十年後に慢性炎症による肝疾患が生じる。C型肝炎感染は、新たに診断された慢性的な肝疾患症例の3分の2と、そして肝移植の40パーセントを占めている。



本研究でメイヨー・クリニックの研究者は3つの都市(ミネソタ州ロチェスター、アリゾナ州スコッツデール、フロリダ州ジャクソンビルのメイヨー・クリニック移植センター)から100例以上の移植後の患者を登録した。これらの患者は、移植前にC型肝炎の治療をするにはあまりに病気が進行していたとPungpapong博士は言う。

「肝硬変が生じると、抗ウイルス薬を使うには遅すぎる可能性がある」、彼は言う。

Simeprevirとsofosbuvirは昨年に食品医薬品局(FDA)によって移植前の治療薬として承認されたが、併用療法としては承認されていない。FDAはそれらをインターフェロンとリバビリンを組み合わせることも義務づけた。

しかし、研究者は大規模な臨床試験においてインターフェロンを使わずに(適応外使用で; off-label use)移植前の患者にSimeprevirとSofosbuvirを試験し、その組合せが短期間で済む効果的な治療であることが判明した。

今回の研究では、移植後の患者へと同様の組み合わせを拡張した。その結果、患者におけるウイルスの根絶はインターフェロンとリバビリンの使用より優秀かつ効果的であり、副作用も非常に少ないことが明らかになった。

「これらの薬の組み合わせは移植前と移植後の両方で重要な臨床前進を示すと我々は考えている」、Pungpapong博士は言う。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141110110108.htm

<コメント>
C型肝炎ウイルスの治療薬、NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬のシメプレビル(Simeprevir)とNS5Bポリメラーゼ阻害薬のソフォスブビル(Sofosbuvir)を組み合わせて肝移植前後の治療に使うという記事です。

インターフェロンを使う必要がなく副作用が少ない上に、期間が短くて効果も高いということで、これからは標準的な治療になっていくのでしょう。


2014年10月31日

2014-11-05 08:39:01 | 感染症

エボラウイルスのマウスモデルの改善により、潜在的なワクチンと治療の研究は加速するだろう
Improved mouse model will accelerate research on potential Ebola vaccines, treatments



エボラとの戦いにおいて重要なハードルの1つが、たった今クリアされた ― マウスで。ノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究者たちは、エボラに感染することが可能な最初のマウス遺伝子系統を開発した。このマウスはヒトが経験するのと同様の症状を示す。

今日発行されるScienceで発表される研究は、エボラ治療とワクチンの基礎研究を著しく改善するだろう。それはこの疾患の世界的な公衆衛生と経済的な損害を抑制するために非常に重要である。

「エボラウイルスの疾患の範囲を模倣する動物モデルがない限り、我々はエボラの治療法を探すことはできない」、UNC Gillings School of Global Public HealthならびにUNC医学部の疫学の教授であり、研究共著者のRalph Baricは言う。

「我々は初めて、このウイルスによるヒトの疾患を再現する新しいマウス・モデルを急速に開発するための新しいプラットフォームを生み出すことができた。」



典型的な研究室マウスは通常、ヒトのようなエボラ出血熱を発症しない。そのため研究者は、全てのマウスがエボラに感染しないのかどうかを調べた; もしいくつかの系統が感受性である場合、どの遺伝子が疾患への感受性を持たせるかを理解するためにマウス遺伝学の力を利用できる。

それを明らかにするため、ワシントン大学と国立衛生研究所ロッキー山脈国立研究所の研究チームは8つの遺伝子バリアントマウスを飼育して効率よくマウスの系統をテストし、潜在的なエボラワクチンと治療の活発な研究を行った。

その結果、このモデル・システムはウイルスに感染するとヒトの疾患をより正確に反映した。研究チームは、遺伝子の組合せが症状の範囲を生み出す際に関係し、マウスの遺伝子変異がエボラ疾患による様々な症状の種類に直接つながることを示した。さらに研究者はその変異の多くを説明する単一の遺伝子、TEKというタンパク質をコードする遺伝子を特定した。

「エボラ感染に関する一般的な理解は、出血熱の後の高い死亡率に焦点を合わせる。しかしエボラは実際には様々な症状を生み出す」、UNC医学部の遺伝学の研究助教授であり、共著者のMartin Ferrisは言う。

「疫病が発生している間は、疾患の重症度の決定に関与する遺伝子変異の役割を評価するのはしばしば困難である。治療を開発するつもりならば、我々はこの遺伝子変異について知っている必要がある。」

記事出典:
上記の記事は、ノースカロライナ大学チャペルヒル校によって与えられる素材に基づく。

学術誌参照:
1.宿主遺伝子の多様性は、エボラ出血熱の病因と抵抗性を可能にする。

Science、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141031121248.htm

<コメント>
エボラウイルスによる様々な症状を模倣するマウスモデルの開発についての記事です。

これまでのマウスは、血液凝固の遅れ(delayed blood coagulation)、播種性の血管内血液凝固(disseminated intravascular coagulation)、ショック死(death from shock)を再現できなかったとAbstractにあります。

リンパ球の分化と接着、血液凝固因子の活性化の促進等に関与するTEKの遺伝子多型が、疾患への感受性と抵抗性に関与する可能性が示されたようです(TIE1 and TEK signaling promote activation of coagulation factors, such as thrombin (F2), tissue factor (F3), and ...)。


2014年9月23日

2014-09-24 09:16:44 | 感染症

DNA塩基配列決定法による結核診断
New DNA sequencing method to diagnose tuberculosis



英国とガンビアの研究者は、時間のかかる培養をする必要なく結核(tuberculosis; TB)を診断するために喀痰から抽出されるDNAを直接配列決定する、メタゲノミクスと呼ばれる新しいアプローチを開発した。

この研究は、ワーウィック・メディカルスクールの微生物ゲノミクスの教授であるマークPallenと、ガンビアの英国医学研究審議会(Medical Research Council; MRC)ユニットのTB診断研究室長、マーティン・アントニオ博士によって指揮された。



「従来のアプローチによるTBの検査室診断は、数週間から数ヶ月もかかる延々と続くプロセスである」、Pallenは言う。

「このような研究室培養への依存は、1880年代にさかのぼる技術を使用することを意味する! 我々は最新のハイスループットな塩基配列決定と洗練された生命情報科学を用いたメタゲノミクスにより、細菌を育てることなく約1日でTBの細菌を検出して、ゲノム配列とその菌が属している系列を明らかにすることができる。」



研究チームは、8つの痰サンプルでTB細菌の配列を検出し、それらを既知の7系列に割り当てることが可能だった。

その内2つのサンプルは、西アフリカに特有のTB細菌であるミコバクテリウム属africanumの配列を含むことが判明した。




Pallenたちは去年、メタゲノミクスを使用して200年前のハンガリーのミイラからTBゲノムを回収した。今年の初めには、イタリア国サルデーニャ州の700年前の骸骨からブルセラ症を引き起こすブルセラメリテンシスのゲノムを回収した。

Pallenは言う。

「我々は原理証明(proof-of-principle)を提示したが、しかし依然としてメタゲノミクスの感度を高め、ワークフローを改善する必要がある。しかし、警告はともかく、メタゲノミクスはすでに過去と現在の感染を立証する準備ができているという事実を賞賛しよう。それは微生物病原体の出現と進化、蔓延を明らかにする!」

学術誌参照:
1.痰サンプルからベンチトップ・シーケンサーでショットガン・メタゲノミクスを使用して、ヒト型結核菌ならびにミコバクテリウム属africanuminを培養せずに検出し特徴づける。

PeerJ、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140923090204.htm

<コメント>
喀痰(sputum)から得られた結核菌のDNAをランダムに切断して(ショットガン)、シーケンサーにより配列決定、メタゲノミクス(genomics; ゲノム構造研究)という手法により系統を分析することが可能になったという記事です。

結核菌の培養は非常に時間がかかるため、このような分析はこれからもっと重要になっていくのでしょう。

関連記事には、血液中のミコバクテリア特異的なCD4+T細胞の状態により活動性結核(active infection)を検出するというものがあります。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140901090733.htm

>The new so-called TAM-TB assay(T-cell activation marker–tuberculosis assay) is a sputum-independent blood test.

>It makes use of an immunological phenomenon during tuberculosis disease:

>During an active infection, the expression of CD27 -- a surface marker expressed on mycobacteria specific CD4+ T cells -- is lost.