機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

白血病の治療薬がパーキンソン病の阻止に有望か

2016-06-30 06:06:55 | 
Blocking key enzyme halts parkinson's disease symptoms in mice

June 27, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160627214827.htm


(パーキンソン病の脳におけるα-シヌクレインの凝集塊

Credit: Donghoon Kim/Johns Hopkins Medicine)

ジョンズ・ホプキンズの研究者は、パーキンソン病との戦いで新たに2つの重要な手がかりclueを探し出したgleanedという
1つは、c-Ablというタンパク質の酵素を阻害することにより、特別に育てたマウスのパーキンソン病を防ぐことが可能だったということ
もう1つは、c-Ablが化学的な目印をつける相手のタンパク質がパーキンソン病の存在と進行を伝えるバイオマーカーとして役立つかもしれないということである
6月27日にJournal of Clinical Investigation誌で発表された今回の研究は、薬剤研究の有望な標的を提案し、そしてパーキンソン病の研究をより広範囲に推進するためのツールをもたらすだろうと彼らは言う

「c-Ablの活性がパーキンソン病につながるという兆しindicationが存在する
我々の実験はそのようなつながりの実在を示す」
Ted Dawson, M.D., Ph.D.は言う
彼は神経学の教授であり、ジョンズ・ホプキンズ大学医学部の細胞工学研究所/Institute for Cell Engineeringでディレクターでもある

「白血病の治療薬としてFDAによって承認されたc-Ablの阻害剤が既に存在する
なので我々はこれがパーキンソン病に対して安全に使えるのかどうか、または他の治療を開発するための出発点として利用可能かに興味を持っている」


病理解剖autopsyの結果からパーキンソン病患者の脳内ではc-Ablが特に活性が高いことが明らかになり、
加えてパーキンソン病になりやすいマウスの研究からc-Ablを阻害することで疾患は阻止されるか進行が遅くなることが判明した

しかし、神経学の助教授assistant professorであるHan Seok Ko, Ph.D.は言う
「c-Ablを阻害するために研究で使われた薬剤は同様のタンパク質も阻害しうるため、c-Ablを阻害したことの何がどのようにしてマウスの改善につながったのかは完全には明らかではない」


今回の実験は遺伝子工学的にパーキンソン病を発症するようにしたマウスと、c-Ablをコードする遺伝子を『ノックアウト』したマウスで始まった
c-Ablをノックアウトすると疾患の症状を示す動きは減少し、逆に遺伝学的にc-Ablの量を増加させるとモデルマウスの症状は悪化して疾患の進行は早まった
さらに、通常のマウスもc-Ablの産生を増加させるとパーキンソン病を発症した

それがどのようにして起きたのかについてさらに調べるため、研究チームはc-Ablがどのようにしてα-シヌクレインという他のタンパク質と相互作用するのかを調べた
α-シヌクレインの凝集した塊clumpはパーキンソン病の特徴であることが以前から知られている

実験の結果、c-Ablはα-シヌクレインの特定の箇所にリン酸基という分子を付け加えることが明らかになった(チロシン39リン酸化)
c-Ablレベルの増加はα-シヌクレインの凝集化clumpingを促進し、症状の悪化を伴った

「c-Ablが標的とする箇所にリン酸基/phosphate groupが付け加えられたα-シヌクレインが パーキンソン病の重症度を測定する指標として使えるかどうか、我々はこれから調べる予定である」

そのような客観的objectiveで生化学的な測定方法は現在のところ存在せず、それが潜在的な治療法の研究を妨げているとDawsonは言う

DawsonとKoは、白血病の薬であるニロチニブnilotinibの使用はまだパーキンソン病への適応がないnot indicatedと警告する
今回の結果が臨床に応用できるようになるまでにはさらなる研究が必要である

Parkinson's Disease Foundationによると、毎年約6万人のアメリカ人がパーキンソン病と診断され、全世界で1000万人がこの病気に罹患しているという
特定の遺伝子変異や環境的な曝露がパーキンソン病と関連付けられているが、原因はいまだに調査中である


http://dx.doi.org/10.1172/JCI85456
Activation of tyrosine kinase c-Abl contributes to α-synuclein–induced neurodegeneration.
チロシンキナーゼc-Ablの活性化はα-シヌクレインによる神経変性の一因である


Abstract
今回我々は非受容体型のチロシンキナーゼであるc-Ablがα-シヌクレインによる神経病理neuropathologyを調節する際に決定的criticallyであることを報告する

ヒトのα-シヌクレイン病/synucleinopathyと関連する突然変異を発現するマウス(human A53T α-synマウス)において、c-Ablをコードする遺伝子の削除はα-シヌクレインの凝集を低下させ、神経病理neuropathologyならびに神経行動学的neurobehavioralな欠陥が減少した

反対に、h A53T α-synマウスにおいて構成的に活性化したc-Ablの過剰発現は、α-シヌクレイン凝集、神経病理、神経行動学的な欠陥を加速させた
さらに、c-Ablの活性化はα-シヌクレインのチロシン39残基リン酸化の加齢依存的な増大につながった

パーキンソン病患者のヒト死後脳サンプルでは、年齢的にマッチングさせた対照群と比較して、脳組織ならびにレヴィ小体にチロシン残基39のリン酸化の蓄積が見られた

さらに、in vitroの研究では、c-Ablによるα-シヌクレインチロシン残基39へのリン酸付加phosphorylationはα-シヌクレイン凝集を促進した

合わせて考えると、この研究はα-シヌクレインによる神経変性におけるc-Ablの決定的な役割を確立するものであり、c-Ablの選択的な阻害が神経保護的である可能性を実証する
さらに、この研究ではα-シヌクレインのチロシン残基39番目のリン酸化がパーキンソン病ならびに関連するα-シヌクレイン病の潜在的な指標として役立つ可能性を示す
 

パーキンソン病には自己免疫が関与するかもしれない

2016-06-28 06:06:30 | 
Researchers open new path of discovery in Parkinson's disease

Neuron cell death may be caused by overactive immune system

June 27, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160627095043.htm

モントリオール大学(カナダ)の科学者Michel Desjardins博士とマギル大学(カナダ)モントリオール神経学研究所病院/Montreal Neurological Institute and Hospital (MNI) のHeidi McBride博士という2人を中心とする研究チームは、パーキンソン病と関連する2つの遺伝子が免疫系にとっても鍵となる調節因子であることを明らかにした
これはパーキンソン病を自己免疫疾患と関連付ける直接的な証拠evidenceをもたらす
研究チームは細胞モデルとマウスモデルを使い、免疫系によって検出されて攻撃されないよう防ぐためにPINK1とParkinという2つの遺伝子が必要であることを示した

PINK1とParkinはパーキンソン病患者の一部で機能を失っているが、そのような状態の細胞はその表面にミトコンドリアのタンパク質の一部を『抗原』として提示するようになる
細胞表面に抗原が存在すると、T細胞という免疫細胞の活性化が起きる
T細胞は脳に入ることが可能であり、ミトコンドリアに由来する抗原を表面に表示するどんな細胞でも破壊する能力がある

パーキンソン病は脳内でドーパミンを作るニューロンの細胞死によって起きる
PINK1とParkin遺伝子の機能不全によって過剰に活性化した免疫系は、なぜドーパミン作動性ニューロンがパーキンソン病患者で死んでいくのかについての説明となるかもしれない
つまりパーキンソン病が他の多くの自己免疫疾患、多発性硬化症や1型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスlupusと同じような疾患である可能性である
自己免疫疾患とは自分自身の免疫系が正常な細胞を攻撃するようになる状態である


これまで多くの研究者がミトコンドリアのパーキンソン病への関与を疑ってきた
パーキンソン病ではミトコンドリアが損傷し、壊れたミトコンドリアが蓄積してその毒性によりニューロンが死ぬことになると広く信じられてきた
しかしながら、動物モデルでそれが実際に起きているという証拠evidenceを提供するのは難しかった

Cell誌で6月23日に発表されたDesjardinsとMcBrideのチームの新たな研究結果は、有害なミトコンドリアの蓄積ではなくむしろ自己免疫的なメカニズムとパーキンソン病とを関連付けるものであり、これはPINK1またはParkinを欠損させたパーキンソン病のマウスモデルで実証された


「これまで臨床家たちはパーキンソン病患者の脳内で免疫系が活性化していることを示してきた」
モントリオール大学でpostdoctoral fellowであり論文の筆頭著者first authorであるDiana Matheoud博士は言う

「我々の研究は、免疫系による攻撃がどのようにしてドーパミン作動性ニューロンの破壊の原因となるかを説明する
今回我々は自己免疫メカニズムがドーパミン作動性ニューロンの喪失につながるかどうかをテストし、我々の研究をヒトのニューロンに拡張するためのシステムを開発した」


「抗原提示antigen presentationは、パーキンソン病に直接関与するとは考えられていない」
McBrideは言う

「研究室のほとんどが『有害なミトコンドリア』というモデルの手がかりtrailを追っているが、
免疫系を中心とするアプローチはパーキンソン病を異なる観点から観察する方向へと我々を導いた
異なる道へと導かれた我々はled us down a different road、自己免疫が疾患の進行において重要な役割を演じるようだということを発見した」


パーキンソン病の病理に関与する2つの鍵となる遺伝子と自己免疫メカニズムとの間のつながりが確認された今、次のステップはミトコンドリアの抗原提示を制限することができる薬剤の開発である

注目すべきことにremarkably、このミトコンドリアの抗原が提示されるメカニズムには小胞形成vesicle formationのプロセスが含まれており、これは元々はMcBrideのグループによって記述されたものである
これはプロセスを阻害する新たな薬剤開発のための分子的な標的を提供する


今回の研究結果は他の疾患の治療の改善にもつながるかもしれない
Desjardinsは言う
「我々はこの研究がパラダイムシフトを起こすと考えている
なぜならパーキンソン病においてミトコンドリアを免疫メカニズムへとつなげる新たな生物学的な経路を突き止めたからであり、これは免疫系の調整をベースとした治療法を使うという可能性を開く
そのような治療法は様々な疾患の治療で既に使われている」

「興味深いことに、ミトコンドリア由来の抗原提示を制限する際にPINK1とParkinが演じる役割はパーキンソン病に影響するプロセスを調節するだけでなく、
他の自己免疫疾患、例えば1型糖尿病やループスlupus、原発性胆汁性肝硬変/primary biliary cirrhosisにも影響する可能性がある
それらの疾患ではミトコンドリア由来の抗原提示へのつながりが観察されている」

原発性胆汁性肝硬変: 肝臓の胆管が炎症を起こして破壊される疾患。血清抗ミトコンドリア抗体(AMA)が患者の85%から95%にみられる


「今回の論文は遺伝によって受け継がれるこれらの劣性recessiveの突然変異がどのようにして神経変性につながるかというまったく新しいメカニズムを提案suggestする」

ブリティッシュコロンビア大学とバンクーバー・コースタルヘルス/Vancouver Coastal Healthの神経学部長headであり、以前はPacific Parkinson's Research Centre(PPRC)のディレクターであったJon Stoessl教授は言う

「パーキンソン病における炎症が潜在的に果たす役割に多くの関心が寄せられている
ParkinとPINK1に関するこれまでの研究は、ミトコンドリアの恒常的な細胞代謝的機能housekeeping functionsの乱れに焦点を合わせてきた
今回の発見は明らかな関連はあるものの、以前とは異なる標的治療targeted therapiesの開発に向けたまったく新しいアプローチを示唆する
しかしこれらはパーキンソン病の原因としてはまれなものであり、優性遺伝dominantly inheritedや散発性sporadicのパーキンソン病との関連については確定していないままであるということを記憶にとどめておかなければならない」


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2016.05.039
Parkinson’s Disease-Related Proteins PINK1 and Parkin Repress Mitochondrial Antigen Presentation.

(LPSまたは熱ストレス→

『野生型の場合』
PINK1がパーキンをリクルート,リン酸化,ユビキチン化→パーキン活性化→Snx9をプロテオソームで分解

『PINK1/パーキンが機能喪失している場合』
パーキンが活性化しない→Snx9がプロテオソームで分解されない→Snx9/Rab9によるMDVの形成→(Rab7によるMDVの輸送?)→MDVがエンドソームでプロテアーゼにより分解される→MHCクラスIへの抗原の負荷(ERが関与するかもしれない)→抗原提示→T細胞活性化)


Highlights
・パーキンソン病に関与するタンパク質であるPINK1とParkinは、適応免疫adaptive immunityを調節する
・PINK1とParkinは、ミトコンドリアからの抗原提示/mitochondrial antigen presentation (MitAP) をin vitroとin vivoで阻害する
・MitAPはミトコンドリア由来の小胞によって促進drivenされ、マイトファジーmitophagyによるものではない
・自己免疫メカニズムがパーキンソン病に関与しそうであるlikely involved


Summary
抗原提示antigen presentationは、免疫寛容の確立、感染症や癌への免疫応答、どちらにも必要である

抗原提示はオートファジーによって仲介されうるが、
今回我々は
ミトコンドリアからの抗原提示/mitochondrial antigen presentation (MitAP) が
オートファジー/マイトファジーよりもむしろ
ミトコンドリア由来小胞/mitochondrial-derived vesicles (MDVs) の形成と輸送に依存することを実証する

我々はパーキンソン病と関連付けられている2つのミトコンドリアタンパク質、PINK1とParkinが能動的activelyにMDVとMitAPの形成を阻害することを発見した

PINK1またはParkinが欠けていると、
in vitroとin vivoの両方で 炎症状態が免疫細胞におけるMitAPの引き金を引く

MitAPとMDVs形成にはRab9とSorting nexin 9(Snx9)が必要であり、それらのミトコンドリアへのリクルートはParkinによって阻害される

炎症によって引き起こされる『免疫応答を引き出す経路/immune-response-eliciting pathway』の抑制因子としてPINK1とParkinを同定したことは、パーキンソン病の病理への新たな洞察を提供する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/316ad3e3c5a33ccc052a826727ddc327
pink1とparkinはマイトフュージンの分解を助け、ERストレスを予防する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c1b52d3af3376503ff68869378ac4b96
古いミトコンドリアの除去が1型糖尿病の予防に重要



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/735d3e7de5b11b1efa84ce4c20e84d37
LRRK2キナーゼは特定のRabタンパク質(Rab3、Rab8、Rab10、Rab12)の不活化により細胞内輸送を調節する



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6527
Rab7L1とLRRK2は協調してニューロンにおける細胞内輸送を制御するとともにパーキンソン病の発症リスクを決定する
 

インスリン抵抗性とインスリン敏感性

2016-06-27 06:06:46 | 代謝
Insulin-sensitive fat leads to obesity

Cellular sorting protein disrupts fat metabolism by recycling molecular receptors for insulin

June 21, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160621111214.htm


(SORLAレベルの上昇とともに脂肪細胞のサイズが大きくなる

Credit: Vanessa Schmidt/MDC)

SORLAは細胞内のタンパク質が どのような処理を受けるかを分類sortする機構の一部である
そこでタンパク質は分解されるか、または再利用されるための目印をつけられる

アルツハイマー病の場合、SORLAはアミロイドβという危険な蓄積物を生じるタンパク質のレベルを低下させる
しかし、脂肪細胞ではSORLAにもう一つの役割があり、脂肪細胞をインスリンに過剰に敏感にして脂肪を過度に蓄積させる

この代謝的な機能の詳細が今回Thomas Willnow教授らが率いる研究チームによって突き止められた
この研究結果はJournal of Clinical Investigation誌で発表される

その中で科学者たちはSORLAがどのようにして機能するかを詳しく記述している
研究はヒトのサンプル、マウスモデル、細胞培養で行われた

これまでSORLAの特定の遺伝型と、腹部径の大きさ、体脂肪レベルの増大との間のつながりが知られていたが、それらは遺伝学的な研究によるものだけだった

研究者は362人の脂肪組織を分析し、脂肪にSORLAが多いほど過体重の度合いが強くなるであろうことを発見した

彼らはさらに、SORLAの遺伝子が脂肪組織だけでSORLAタンパク質を多く作るようにしたマウスの実験により因果関係を確立した
このマウスが高カロリーのエサを食べ始めると急速に太ったのとは対照的に、
SORLAの遺伝子を不活化されたマウスは同じエサを食べても、SORLAが通常レベルのマウスと比べてさえ顕著に痩せていた

SORLAが過剰な細胞は、明らかに強くインスリンに反応していた
培養細胞の研究により研究者はSORLAとインスリン受容体分子を追跡し、それらが途中で細胞の『分類ステーション/sorting station 』を通過することを明らかにした
そこでSORLAはインスリン受容体に再利用されるように目印をつけ、リソソームという区画で分解されないようにしていた
SORLAが高レベルであるほど、細胞の表面に到達するインスリン受容体は増加した
受容体の数が多いということはより多くのインスリンが細胞に結合できることを意味し、
細胞はインスリンに対して過剰に敏感になる
これにより細胞が本来なら分解すべき脂肪を分解する量が減少する


インスリンによって引き起こされる代謝プロセスの乱れは糖尿病の特徴である
今回の研究結果からWillnowたちはインスリンシグナルが細胞内で通過するまったく新しい経路を明らかにした
この経路は糖尿病を治療する人々で顕著である可能性が高いだろう

「2型糖尿病にはインスリンが効きにくいというインスリン抵抗性
も含まれているが、それだけが問題なのではない」
Willnowは言う

「代謝が乱れうるもう一つの原因は、脂肪組織がインスリンに対して過剰に敏感になることである」

マウスの実験では、通常のエサを食べている時はSORLAの量が多くても少なくても体重は変わらなかった
しかし、SORLAが多すぎるマウスだけが『ファーストフード』、つまり高脂肪かつ高炭水化物のエサを食べて極端に体重が増えたのである

Willnowは言う
「このことが示唆するのは、インスリンに対して過剰に敏感な脂肪組織だけが、不健康な食事を食べる時に問題となるということである」


http://dx.doi.org/10.1172/JCI84708
SORLA facilitates insulin receptor signaling in adipocytes and exacerbates obesity.

細胞内に内在化されたインスリン受容体は、SORLAによってエンドソームから細胞膜に戻される



関連サイト
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=SORL1
Aliases for SORL1 Gene
SORLA
LR11



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5410eb0f0900f4f19d875c843cfb6ab9
可溶性LR11/SorLAは脂肪組織の熱発生を抑制し、ヒトのBMIと相関する



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/9857
SorLAはアミロイドβペプチドのような凝集を起こしやすい性質をもつ様々なペプチドを幅広く認識して分解系へと輸送する役割をもつ


<コメント>
論文のReference 18が
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5410eb0f0900f4f19d875c843cfb6ab9

ただし論文中では影響が見られなかったという


>Recently, a role for the soluble ectodomain of SORLA (called sLR11) in control of thermogenesis in mice has been reported.
>Specifically, sLR11 is proposed to act via the BMP receptor pathway to suppress browning of WAT (18).
>Possibly, SORLA may assume different roles in control of systemic metabolism, including action as a humoral factor.

>However, our data unambiguously document a cell-autonomous function for the full-length receptor in control of body weight and the incidence of obesity.
>This conclusion is supported by unchanged rates of transcription of genes proposed to act downstream of sLR11 in control of thermogenesis (18) in experimental conditions described here (Supplemental Figure 10)
(今回の実験の状態では、熱発生の制御においてsLR11の下流で働くと提案されている遺伝子の転写レートには変化がなかった) 
 

パーキンソン病の神経変性はERストレスが直接の原因か

2016-06-26 06:06:12 | 
New findings challenge current view on origins of Parkinson's disease

Researchers investigate mutant flies

June 23, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160623095246.htm


(我々の主な発見のまとめを示す図
ミトコンドリアはオレンジ色、ERは緑色で表す

Credit: University of Leicester)

遺伝性の早期発症パーキンソン病の中のいくらかは、ミトコンドリアの機能低下が原因であるとされてきた
信頼できるエネルギー源がなければニューロンは衰えてwither、やがて死んでしまうのだという
しかしこれは、パーキンソン病に冒された細胞の中で起きていることを完全には説明していないかもしれない

ロイチェスター大学MRC Toxicology Unitの研究者は、この問題を調査するためにショウジョウバエを用いた
ショウジョウバエが使われるのはそれがヒトの遺伝学的な良いモデルを提供するからである

神経変性プロセスの根底にあるシグナル伝達経路や細胞内プロセスを明らかにするためには、ヒトを対象とした研究では限界がある
その理由は、人種的、技術的な制約が遺伝子分析の範囲を限定してしまうからである

ショウジョウバエはヒトの疾患の分子的なメカニズムを理解するための十分確立された動物モデルである
それは、ヒトの疾患を引き起こす遺伝子の75パーセントが、似たような形でハエにも存在するからである
加えてハエは研究がしやすく、急速に成長し、ハエのどんな遺伝子でも操作できるツールが多数利用可能である
そしてハエでは治療の候補薬をエサに混ぜて簡単にテストできる


そのようなハエの分析で、損傷したミトコンドリアを持つニューロンへのダメージの多くは、ミトコンドリアと関係はあるものの異なる源から生じたものだと判明した
それはミトコンドリアと接している迷路のような構造物、小胞体 (ER) である

ERはタンパク質が細胞内で働けるように構造を折りたたむという重要な役割がある
折りたたみに失敗misfoldedしたタンパク質は細胞にとって危険であると認識され、
折りたたまれなかったタンパク質が多くなりすぎると細胞はタンパク質を作ることを止める
このようなストレスに対応するシステムは保護的ではあるが、重要なタンパク質の製造も停止してしまい、やがてニューロンは死ぬことになる

ERストレスがパーキンソン病に関与するのかどうかを明らかにするため、Miguel Martins博士が率いる研究チームはpink1またはparkinの遺伝子に変異を持つショウジョウバエを分析した
pink1とparkinの変異体は、欠陥のあるミトコンドリアの除去を妨げることでニューロンのエネルギーを枯渇させることが既に知られている
そしてこれらの遺伝子はヒトの遺伝性のパーキンソン病でも突然変異を起こしている

ヒトのパーキンソン病患者とほぼ同様に、どちらかの遺伝子に変異を持つショウジョウバエの動きは遅く、筋肉は弱っていた
それらのハエは飛ぶことが困難で、そして脳内のドーパミン作動性ニューロンを失っていた
これはパーキンソン病の古典的な特徴である

Miguelのチームはこれらの変異体と正常なハエとを比較し、変異体は強いERストレスを受けることを発見した
変異体は正常なハエほど早くタンパク質を製造しておらず、加えてタンパク質を折りたたむための分子であるBiPのレベルも上昇していた
これはストレスの証拠telltaleとなるサインである

pink1とparkin遺伝子の機能の一つは、 マイトフュージンmitofusinの分解を助けることである
マイトフュージンはミトコンドリアをERにつなぎ止めるタンパク質である
変異体のハエではこのタンパク質の量が多く、ミトコンドリアのERへの接着が正常のハエよりも増加することが明らかになった

このような理由から、研究者は
ERストレスがミトコンドリアの余分な結び付きと関連があり、それにより欠陥のあるミトコンドリアの除去が妨げられることを示唆している

変異体のハエはそのような接着が多くなるほどドーパミン作動性ニューロンが少なく、このニューロンの減少は脳に悪影響を及ぼしうる
そしてつなぎ止める数を減らすことにより、ニューロンの喪失を阻止できる可能性がある
研究者が実験的にマイトフュージンの量を減らしたところ、
接着の数は減少し、ニューロンの数は再び増加した
ハエの筋肉も、ミトコンドリア自体は損傷していたにもかかわらず正常なままだった
これらの結果は、パーキンソン病で見られる神経変性はミトコンドリア全般の欠陥というより、むしろERストレスの結果であることを示唆する
科学者たちはマイトフュージンを減らすだけでなく、ERストレスの影響を阻害する化学物質によっても神経変性を防ぐことが可能だった

Miguel Martins博士は言う
「この研究は現在中心的な考え方、つまりパーキンソン病はミトコンドリアの機能不全の結果であるという仮説に異を唱えるものだ
我々が疾患モデルで突き止めたERストレスを阻害することで、神経変性を防げる可能性がある
今回のようなラボの実験で、我々はERストレスがパーキンソン病に対してどのような影響を与えるのかを調べることができるようになる
今回の発見はまだショウジョウバエにしか当てはまらないが、
さらなる研究によりヒトでも同様の介入が特定のタイプのパーキンソン病の治療に役立つかもしれないと我々は考えている」


http://dx.doi.org/10.1038/cddis.2016.173
Mitofusin-mediated ER stress triggers neurodegeneration in pink1/parkin models of Parkinson’s disease.

Abstract
PINK1とPARKINの突然変異は早発性/若年性early-onsetのパーキンソン病を引き起こすが、それはミトコンドリアが有害であるためだと考えられている

今回我々はショウジョウバエdrosophilaのpink1とparkinの突然変異体mutantにおいてミトコンドリアの欠陥が小胞体(ER)ストレスのシグナル伝達も生じさせることを示す
特に、小胞体ストレス応答/unfolded protein response(UPR)の経路の一つである『PKR様小胞体キナーゼ/protein kinase R-like endoplasmic reticulum kinase(PERK)』が活性化する

pink1とparkin変異体で促進されるERストレスシグナル伝達はマイトフュージンmitofusinの橋状結合bridgesによって仲介され、この結合は欠陥ミトコンドリアとERとの間に作られることを我々は示す

マイトフュージンとERとの接触を低下させることは神経保護的であり、それはPERKシグナル伝達の抑制による
しかしミトコンドリアの機能不全は変化しないままである

さらに、ショウジョウバエのPerk(dPerk)に依存的なERストレスシグナル伝達を遺伝学的に阻害しても、
PERK阻害剤のGSK2606414を使って薬理学的に阻害しても、
どちらもpink1変異体/parkin変異体の両方に対して神経保護的だった


pink1とparkin変異体のハエでは、欠陥ミトコンドリアによるERストレスの活性化がニューロンに有害であると我々は結論する
これは欠陥ミトコンドリアには依存することなく起きる


この論文の映像による要旨がオンラインで利用可能である
http://www.nature.com/cddis/journal/v7/n6/suppinfo/cddis2016173s1.html



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4971dbae7ee0570afb2d7ba9221e765b
カロリー過剰によるERストレスは腸によるウログアニリンの産生を止める



関連サイト
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%B0%8F%E8%83%9E%E4%BD%93%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%B9#.E3.83.91.E3.83.BC.E3.82.AD.E3.83.B3.E3.82.BD.E3.83.B3.E7.97.85
ERストレスとパーキンソン病
Parkinはユビキチンリガーゼの一種で、これまでに10種類以上の基質タンパク質が報告され、その中でもパーキンソン病の発症に関わる因子としてPeal受容体がある。Peal受容体は複数回膜を貫通するタンパク質で小胞体内の折りたたみが難しいタンパク質のひとつであると考えられている。折りたたまれないでミスフォールドされたPeal受容体はParkinによってユビキチン化され、ERADによって分解される。Parkinが欠損する患者ではミスフォールド化したPeal受容体がERADの系で分解されず、ミスフォールドのまま小胞体に蓄積し小胞体ストレスを引き起こすことが示唆されている[39]。
Peal受容体は中枢神経系ではオリゴデンドロサイトに広く分布しているが、神経細胞では黒質ドーパミンニューロンに発現している。パーキンソン病で障害を受けやすい黒質ドーパミンニューロンがPeal受容体を発現していることは、本疾患で小胞体ストレスが発症に密接に関わる重要な根拠になっている。

また、パーキンソン病患者の神経細胞内レビー小体の構成成分であるα-シヌクレイン(α-Syn)はリン酸化修飾を受けており、これによって小胞体―ゴルジ装置間輸送が抑制される[40][41]。その結果、小胞体内に未成熟なタンパク質が蓄積して小胞体ストレスを誘発する[42]。パーキンソン病はミトコンドリアの機能障害も生じているが、α-Synによる一連の反応はミトコンドリアの機能障害の発生前に起こることが示唆されている[43]。
 

乳癌が低酸素を生き残るための新たな経路が発見される

2016-06-24 06:06:00 | 
Breast cancer cells use newfound pathway to survive low oxygen levels in tumors

Potential to render cancer cells less able to cope with hypoxia

June 20, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160620141305.htm


(Dr. Benjamin Neel speaks with researchers at Perlmutter Cancer Center.)


アメリカとヨーロッパの研究者は、腫瘍内部で見られる酸素不足に癌細胞が対処するのを助けるための新しいシグナル伝達経路を明らかにした
この研究結果は6月20日にNature Cell Biology誌で発表されたもので、研究に参加したのはニューヨーク大学ランゴンメディカルセンター/NYU Langone Medical Centerとローラ・アイザック・パールマターがんセンター/Laura and Isaac Perlmutter Cancer Center、カナダ・トロントのプリンセスマーガレットがんセンター、トロント大学、ハーバード・メディカル・スクール、オックスフォード大学の研究者たちである


酸素はヒトのあらゆる細胞が適切に機能するために重要だが、癌細胞は酸素が欠乏していてさえ生き残ることができる
充実性腫瘍solid tumorの多くで見られる急速で異常な細胞増殖に対して血液の供給が追いつかず、腫瘍の中には酸素が少ない部分が生じる
この『低酸素hypoxia』に直面した癌細胞はその遺伝子の発現を変化させ、酸素を使うプロセスの中で最も重要なものを除いてall but遺伝子のスイッチを切る

「我々の研究結果は癌細胞の低酸素への応答の新たな理解をもたらす
このことは、癌細胞から低酸素状態を生き残る能力を奪い去ってから低酸素の環境へと追いやって殺すという将来の治療デザインを可能にすることが期待されるhopefully」
パールマターのディレクター、Benjamin Neel, MD, PhDは言う

Neelのラボの大学院生graduate studentであるRobert Banhを中心とした今回の研究では、プロテインチロシンホスファターゼ1B/protein-tyrosine phosphatase 1B (PTP1B) という酵素から生じたシグナルが、酸素の欠乏した乳癌細胞で酸素を使うプロセスを停止させて生き残れるようにするためにこれまで知られていなかった方法で働くことが明らかにされた


糖尿病と癌とモヤモヤ病
Diabetes to Cancer to Moyamoya Disease

1990年代の前半、Neelたちは腫瘍の増殖を抑制する分子を探し求める中で、PTP1Bの遺伝子を初めて突きとめた
PTP1Bは、分子からリン酸基を取り去ることで増殖のようなプロセスをオンにしたりオフにする酵素グループの代表的なメンバーである

これまでの研究でNeelたちとマギル大学/McGill University(カナダ)のMichel Tremblayは、PTP1Bの機能が特定の癌で増殖に必要であることをマウスの実験で明らかにした(※)
その癌の中にはヒトの乳癌の20パーセントに関与するHer2という癌遺伝子によって引き起こされる乳癌(HER2+乳癌細胞)が含まれていた

※Reference 16
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18236007
"PTP1B and TC-PTP: regulators of transformation and tumorigenesis."

※Reference 41
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17347513
"Protein-tyrosine phosphatase 1B is required for HER2/Neu-induced breast cancer."


さらに最近の研究でRobert BanhとNeelたちは、PTP1Bを持たないヒトHER2+乳癌細胞は通常の培養状態では正常に育つが、低酸素では非常に急速に死ぬことを発見した
それによると、PTP1Bを持たないHER2+乳癌細胞では、癌細胞が低酸素に適応させることが知られる3つのシグナル伝達経路はうまく働いていたという
その経路の1つは有名な低酸素誘導因子(HIF)で、HIFはミトコンドリアによる酸化的リン酸化から酸素を必要としない解糖系へと細胞が酸素を使う方法を切り替えて、ミトコンドリアによる酸素消費を抑制する
しかし、『ミトコンドリア以外の酸素を消費する源』は、PTP1Bを持たない乳癌細胞では適切に抑制されないことをBanhたちは明らかにした

研究チームはさらに、PTP1BがRNF213というタンパク質を調節することによって低酸素での腫瘍の応答をコントロールすることを発見した
ユビキチンE3リガーゼのRNF213は、α-ケトグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼ/α-ketoglutarate-dependent dioxygenases (α-KGDDs) による酸素消費を抑制する
α-KGDDは酸素を使う酵素であり、様々な反応を触媒するために酸素とビタミンCと鉄を使う

※α-KGDDs: ALKBH1ALKBH2ALKBH3ALKBH4ALKBH5ALKBH6ALKBH7ALKBH8、ALKBH9(FTO

研究チームがPTP1B経路についての詳細を明らかにし始める過程で、文献の調査からRNF213がもやもや病というまれな病態でも重要であることに気付いた
もやもや病の患者の脳内では異常な血管形成が生じ、動脈がふさがれて痙攣などの発作seizureが起きる

Neelが考えるところではconceivably、もやもや病の症状は血管の細胞での低酸素に対する異常な応答を反映している可能性があり、彼のラボではこの病態の分子的な基礎を理解するための研究が進められている

「我々は癌の研究分野で、細胞がストレスに対して応答するメカニズムを説明するためにまれな疾患の研究が重要になるということを何度も見てきている」
Neelは言う

「我々はこの研究がもやもや病への洞察をもたらし、それが再び癌生物学の研究にフィードバックされることを望んでいる」


http://dx.doi.org/10.1038/ncb3376
PTP1B controls non-mitochondrial oxygen consumption by regulating RNF213 to promote tumour survival during hypoxia.
PTP1BはRNF213を調節することにより非ミトコンドリア酸素消費を制御し、低酸素中の腫瘍の生存を促進する

Abstract
もやもや病の原因遺伝子産物であるRNF213はユビキチンE3リガーゼであり、HER2+乳癌細胞ではPTP1Bによって負の調節を受ける



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ce587959b3b5c648a5587f04ed677dac
低酸素になるとHIFはALKBH5遺伝子のスイッチを入れ、増加したALKBH5はNANOGというmRNAのメチル基を取り除く
メチル化が低下したNANOGのmRNAは破壊されなくなり、乳癌の癌幹細胞の数は増加する
 

サリドマイドの催奇形性と抗腫瘍効果に共通するメカニズム

2016-06-22 06:06:56 | 癌の治療法
Scientists discover mechanism of thalidomide

Malformations, anti-cancer effects have a common mechanism

June 17, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160617104926.htm


(サリドマイドは腫瘍細胞内で特定のタンパク質複合体(黄色で強調されている)を消滅させる
同じメカニズムが胎児には深刻な奇形を引き起こす


Credit: Bassermann/TUM)

1950年代にサリドマイドthalidomideは鎮静剤sedative drugとして妊婦に処方され、結果として深刻な奇形malformationの幼児が数多く生まれることとなった
その悲惨な先天的欠陥birth defectの理由は現在まで不明のままだった

そんなサリドマイドの分子メカニズムを、ミュンヘン工科大学/Technical University of Munich (TUM) の研究者はとうとう明らかにした
彼らの研究結果は現在の癌の治療法に強い関連がある
なぜなら、それと関連する物質が現在の癌治療の処方に必須の要素だからである


サリドマイドは西ドイツで鎮静剤として発売され、他の国では『コンテルガン/Contergan』というブランド名で市場に出た
しかし55年前の1961年、胎児unborn childrenにぞっとするような恐ろしい奇形deformationを引き起こして大ニュースになった
全世界で5千から1万人の子どもが奇形を生じ、今日に至るまで世界中で2千人以上の犠牲者がいまだにこの悲劇の結果と共に生きている
この破壊的devastatingな副作用が明らかになってすぐにサリドマイドは市場から回収された

しかし最近になってサリドマイドthalidomideは特定の腫瘍の増殖を阻害することが偶然発見されたことから復活を遂げ、後継となるレナリドミドlenalidomideとポマリドミドpomalidomideという2つの物質が癌の治療薬として承認されている
このサリドマイドの派生物はどちらも多発性骨髄腫のような骨髄のがんの治療に使われて成功を収めた

それらは腫瘍に対する強い可能性を示しつつサリドマイドより副作用も少ないが、それらはいまなお深刻な先天的欠陥を引き起こすリスクがあり、妊娠中に服用してはならない


複数のタンパク質が関与
Several proteins involved

サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、これらは『免疫調整薬/immunomodulatory drug (IMiD)』としても知られる
その名の通り、それらには免疫応答を調整する能力がある

TUM大学病院の内科学IIIで教授のFlorian Bassermannと彼のチームは免疫調整薬の分子メカニズムを研究し、その成果がNature Medicine誌で発表されている
Bassermannはトランスレーショナルがん研究ドイツコンソーシアム/German Consortium for Translational Cancer Research (DKTK) の主任研究員Principle Investigatorでもある


以前、別の研究チームはセレブロンcereblonというタンパク質がIMiDの機能において重要な役割を果たすことを明らかにしていた(※)

※Reference
5. Cereblon expression is required for the anti-myeloma activity of lenalidomide and pomalidomide. Blood 118, 4771–4779 (2011)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21860026

6. Lopez-Girona, A. et al. Cereblon is a direct protein target for immunomodulatory and antiproliferative activities of lenalidomide and pomalidomide. Leukemia 26, 2326–2335 (2012)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22552008

しかしながら、セレブロンがどのようにしてIMiDの影響を仲介するのかについての正確な詳細は、Bassermann教授らによって今回初めて解き明かされたworked out
それによると、細胞内でのセレブロンはCD147とMCT1というタンパク質と常に結合している
これら2つのタンパク質は典型的には造血細胞blood buildingや免疫細胞で生じ、役割としては特にamongst other thingsそれらの増殖と代謝を促進して、新しい血管の形成を促す
多発性骨髄腫のような癌では腫瘍細胞にCD147とMCT1が特に高レベルで存在している


IMiDはタンパク質を『(競合して)打ち破る』
IMiDs "outcompete" proteins

CD147とMCT1は常にペアで存在し、いわゆる複合体を形成している
しかしながら、それらがもう片方を見つけて活性化するためには、セレブロンの助けが必要である
セレブロンに結合すると複合体の形成と安定性が促進promoteされ、そうして活性化した複合体は細胞の増殖を刺激して、乳酸のような代謝産物の排泄を促進facilitateする

多発性骨髄腫のような疾患ではこのタンパク質複合体の量が増加し、腫瘍細胞は増殖して急速に拡散することが可能になる
そのような癌にIMiDを投与すると、この薬はタンパク質複合体をセレブロンとの結合からほとんど追い出すdisplaces the complex from its binding to cereblon
結果として、CD147とMCT1という複合体はもはや活性化することができずに消え失せ、最終的に腫瘍細胞は死ぬことになる

印象的なこととして、TUMの科学者と神経変性疾患ドイツセンター/German Centre for Neurodegenerative Diseases (DNZE) の研究チームは、このタンパク質複合体の破綻が破壊的な先天的欠陥も引き起こすことの実証にも成功した

「メカニズムは全く同一identicalだ」
Bassermann教授が説明する

「このタンパク質複合体を特異的に不活化することで、サリドマイド治療後に観察されるのと同じ発達上の欠陥が引き起こされた」

これら2つのタンパク質がないと、血管は適切に発達することができない
このことはコンテルガンによる典型的な奇形が新たな血管の減少または異常形成と関連するという有力な仮説を立証confirmする


新たな治療アプローチ
New treatment approaches

IMiD治療の臨床的な効果と、観察される分子的な影響の完全な相関から、直接の臨床的結果が引き出される


「このタンパク質複合体の消失は、この種の治療に十分反応した患者でのみ観察される」
Florian Bassermannは言う

これは実際の治療を開始する前に患者の応答を評価する際の助けになりうる
つまり患者の腫瘍細胞のサンプルを取り出して培養し、IMiDで処理するのである
もし培養でタンパク質複合体が破綻するなら、その患者でIMiD治療が有効である可能性は非常に高いだろう


今回の研究結果はIMiDを使わない新しい治療法の根拠となる
このタンパク質複合体は腫瘍の治療にとって特に魅力的な標的である
なぜならこの複合体は細胞表面で主に見られ、細胞の内部から外部へ事実上結びつけているからである
したがって、複合体の不活化は特定の抗体や他の特別な薬によって容易に達成される可能性がある
その可能性が現在、Bassermann教授たちによって探し求められている


http://dx.doi.org/10.1038/nm.4128
Immunomodulatory drugs disrupt the cereblon–CD147–MCT1 axis to exert antitumor activity and teratogenicity.
免疫調整薬はセレブロン-CD147-MCT1複合体を破綻させ、抗腫瘍活性ならびに催奇形性を発揮する

Abstract
サリドマイドとその誘導体derivativeのレナリドミドやポマリドミドのような免疫調整薬/immunomodulatory drugs (IMiDs) は、血液系腫瘍hematologic malignancy、特に多発性骨髄腫/multiple myeloma (MM) や 5番染色体長腕欠損/del(5q) の骨髄異形性症候群/myelodysplastic syndrome (MDS) の治療法として重要である

CRL4ユビキチンリガーゼ複合体の基質受容体であるセレブロン/cereblon (CRBN) は、IMiDが抗癌効果ならびに催奇形性を仲介するための主な標的である

今回我々はユビキチンとは独立したCRBNの生理学的シャペロン様機能を同定した
CRBNは、ベイシジン/basigin(BSG; CD147としても知られる)と、溶質輸送体solute carrierファミリー16メンバー1(SLC16A1; MCT1とも)というタンパク質の成熟を促進する

このプロセスによりCD147–MCT1という膜貫通複合体が形成されて活性化できるようになる
CD147–MCT1複合体は様々な生理的な機能を促進し、それは例えば血管形成angiogenesis、増殖、浸潤、乳酸排出などである

我々はIMiDがCD147とMCT1への結合に関してCRBNを打ち破りoutcompete、CD147-MCT1複合体の安定性が失われることを発見した

それと一致して、IMiDに感受性の多発性骨髄腫(MM)の細胞はIMiDに曝露した後にCD147とMCT1の発現を失い、一方でIMiDに抵抗性の細胞ではそれらの発現が保持された

さらに、del(5q) のMDS細胞ではCD147の発現が上昇し、この発現はIMiD治療後に弱まったattenuated

最後に、
ゼブラフィッシュにおけるベイシジンのノックダウンは
サリドマイド曝露による催奇形性の影響と見かけ上は同じ表現型になるphenocopyことを
我々は示す

これらの研究結果は、IMiDによる催奇形性と多面的抗腫瘍効果の両者を説明するための共通の機構的枠組みmechanistic frameworkを提供する



関連サイト(pdf)
http://www.jsm.gr.jp/files/shourokupdf/jsm39.pdf
レナリドミド投与によるcereblonの活性変化がどのように骨髄腫細胞に細胞死を誘導するのかが精力的に研究されている。



関連サイト
http://beautiful-nature.net/
私はこれをbasic immunoglobulin superfamilyの意味でベイシジン(basigin)と命名した。
彼らはベイシジンがMCT1とMCT4に結合すること、さらMCT1, MCT4を細胞膜へ運ぶ役割をすることを明らかにした。



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/662fdc857d52a82f163891c81e7bc3c2
多発性骨髄腫にサリドマイド誘導体が効かなくなる理由



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141117164409.htm
多発性骨髄腫に対して、レナリドミドとイクサゾミブ(経口プロテアーゼ阻害剤)、デキサメタゾンを組み合わせるフェーズI/II試験



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151207165330.htm
レナリドミドとデキサメタゾンに加えて、抗ヒトCD38モノクローナル抗体のダラツムマブ(フェーズI/II)、プロテアソーム阻害剤のイクサゾミブ(フェーズIII)、骨髄腫細胞や限定的にナチュラルキラー細胞上に発現する細胞表面糖タンパク質のCS1を標的するヒト化モノクローナル抗体のエロツズマブ(フェーズIII)をそれぞれ追加併用する臨床試験



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151112123700.htm
マントル細胞リンパ腫に対して、レナリドミドとリツキシマブ(B細胞のCD20を標的にする抗体)を組み合わせるフェーズII試験



関連サイト
http://dx.doi.org/10.1038/onc.2013.454
グルコース欠乏はMCT1発現を増加させ、MCT1依存的な腫瘍細胞の移動を増大させる

Abstract
解糖系の最終産物である乳酸は、腫瘍増殖を多面的に促進する要因である
その働きは主に細胞による取り込みに依存し、その取り込みプロセスは 乳酸とプロトンを共輸送symportするシンポーターsymporter である『モノカルボン酸輸送体1/monocarboxylate transporter 1(MCT1)』によって促進される
したがって、この輸送体またはそのシャペロンタンパク質である『ベイシジン/basigin(BSG; CD147)』を標的にすることは癌の魅力的な治療オプションである(MCT1それ自体が悪性腫瘍の表現型に関与する)が、その発現の調節ならびに両タンパク質の相互作用と活性に関する基本的な情報がまだ欠けている

今回の研究で我々は 酸化力のある腫瘍細胞oxidative tumor cellにおいて グルコース欠乏が用量依存的に MCT1とCD147タンパク質の発現とそれらの相互作用を上方調節することを明らかにした
このような翻訳後の誘導は、解糖系阻害、低酸素、酸化的リン酸化(OXPHOS)阻害剤のロテノン、または過酸化水素を用いて再現可能だった一方で、酸化的な基質oxidative substrateならびに特定の抗酸化剤によって阻害された
このことは、それがミトコンドリアによる制御であることを示す

事実、グルコースを除去した上でのMCT1とCD147タンパク質の安定は ミトコンドリア不全とそれに関連する活性酸素種の生成に依存することを我々は発見した

グルコースの供給が限られていると(これは自然に生じるか、または腫瘍への多くの治療中に起きる状況である)、MCT1とCD147のヘテロ複合体が集積した(その集積する場所は細胞膜の突出protrusionも含まれる)
これにより、酸化力のある腫瘍細胞oxidative tumor cellがグルコースに向かって移動する能力は増加する

MCT1とCD147を過剰発現する細胞の移動は増加したが、それは グルコースが欠乏していても代わりの酸化的燃料を提供された細胞では阻害された
同様に、抗酸化剤を投与するか、MCT1の発現を欠損させる、または薬理学的にMCT1を阻害しても阻害された

我々の研究は 腫瘍細胞の移動を促進するグルコースセンサーとしてミトコンドリアを同定した一方で、MCT1もこの応答の変換器transducerであることを明らかにした
これはMCT1阻害剤を癌で使用する新たな根拠rationaleを提供する
 

VLDLを調節するタンパク質はミリスチン酸で活性化する

2016-06-20 06:06:52 | 代謝
Damage to Tiny Liver Protein Function Leads to Heart Disease, Fatty Liver

June 10, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160610140704.htm

セントラルフロリダ大学(UCF)医学部の研究者は、肝臓のタンパク質の一つが乱されるとアメリカの死因の第一位である心血管疾患や、脂肪肝疾患につながることを初めて明らかにした
脂肪肝疾患は肝臓癌の前兆precursorである
そしてこのタンパク質の繊細な仕組みmechanicsを無力化する主犯the chief culpritは、赤身肉やバターに含まれている脂肪酸だという
今回のShadab Siddiqi博士による発見は、Journal of Biological Chemistry誌の6月10日版のカバーストーリー(表紙と関連する特集記事)になっている

医学部の生物医科学バーネットスクールで助教授であるSiddiqiの研究の焦点は、超低密度リポタンパク質(VLDL)の肝臓による分泌を調節することによってどのようにして心疾患を防ぐかということである
VLDLというリポタンパク質はコレステロールレベルを増すことが知られており、そしてコレステロールレベルは動脈にプラークが蓄積するリスク要因である
彼の以前の研究では、新しく形成されたVLDLがどのようにして血流に輸送されてプラークを形成するのかが明らかにされている

肝臓が健康に機能するためには、正常なVLDL分泌がほどよく保たれなければならない
肝臓からのVLDL分泌が少なすぎると脂肪肝になり、肝臓癌につながる可能性があるpotentially
(VLDL分泌の調節に必要な)タンパク質と、何がそれを活性化するのかを明らかにすることは、その不調と疾患を防ぐ方法を発見するための第一歩である

食事を変えることはとても難しいので、Siddiqiはもっと簡単な代案を発見したいと考えた

NIHの出資による研究で、Siddiqiは『バロシン含有タンパク質と相互作用する小分子タンパク質/Small Valosin-Containing Protein Interacting Protein (SVIP)』という小さなtinyタンパク質がVLDL分泌に関与することを明らかにした
SVIPはVLDLがどれぐらい血液中に分泌されるのかを調節する
最適な健康状態を確保するためには肝臓のSVIPが適切に調節されなければならない、とSiddiqiは言う

彼はこの小さなタンパク質をマニュアル車manually operated carにたとえている
スムースに走らせるためにドライバーはアクセルペダルとクラッチを正確にシンクロさせる必要がある
もし両者がシンクロしないと車は簡単には動かず、けいれんを起こしたように不規則に走り出しhave fits and starts、やがて止まってしまう

※by fits and starts: 発作的な不規則さで、断続的に


SVIPを同定した後、Siddiqiのラボはそれがミリスチン酸myristic acidの結合箇所を含むことを発見した
ミリスチン酸はバターの脂肪や動物性脂肪に含まれる14の炭素からなる脂肪酸で、特に赤身肉に多い

この発見を元にセントラルフロリダ大学の研究者は様々な食事の脂肪がSVIPの機能に与える影響を研究し、ミリスチン酸だけがSVIPを活性化させて過剰なVLDLを血中に分泌させることを発見した
しかし、ミリスチン酸が存在しないと肝臓はVLDLの分泌に失敗し、脂肪が肝臓内に蓄積した
そのような蓄積は癌につながる可能性がある

この研究結果は食事中の過剰なミリスチン酸、つまり動物性脂肪や乳製品の脂肪を通じての過剰な摂取は、SVIPが適切に肝臓のVLDL分泌を調節できないようにすることを示唆する


「我々の食事は複雑な分子プロセスを調整し、我々の健康と寿命に深い影響を与えることをこれらの発見は示唆している」
Siddiqiは説明する

「目標challengeは、肝臓の他の多くの機能には影響を与えないような治療法を作り出すことだろう」


http://dx.doi.org/10.1074/jbc.M115.705269
Silencing of Small Valosin-containing Protein-interacting Protein (SVIP) Reduces Very Low Density Lipoprotein (VLDL) Secretion from Rat Hepatocytes by Disrupting Its Endoplasmic Reticulum (ER)-to-Golgi Trafficking.
SVIPのサイレンシングは、ERからゴルジへの輸送を乱すことにより、ラットの肝細胞からのVLDL分泌を低下させる

Abstract
発生しようとするnascent/初期のVLDL粒子のERからゴルジ装置への輸送は肝臓によるVLDL分泌を支配determineし、その輸送は『VLDL輸送小胞/VLDL transport vesicle (VTV) 』という特殊化されたER由来の小胞によって仲介される

我々の以前の研究で、ER由来のVTVの形成にはcoat complex II proteinsに加えて、タンパク質が必要なことが示されている

VTVのプロテオーム から、SVIPという9kDaのタンパク質がこれらの特殊化された小胞に独特に存在することが明らかになった
我々の生化学的かつ形態学的なデータは、VTVがSVIPを含むことを示す

共焦点顕微鏡と共免疫沈降法/co-immunoprecipitation assay(Co-IP)を用いて、SVIPがアポリポタンパク質B-100(アポB100)と共局在し、特にVLDLのアポB100ならびにcoat complex II proteinsと相互作用することを我々は示す

細胞質の存在するところでER膜をミリスチン酸で処理すると、SVIPのERへのリクルートを濃度依存的に増大させる
さらに、肝細胞をミリスチン酸で処理することで、VTVの発芽buddingとVLDLの分泌が両方とも増加することを我々は示す

VTV形成におけるSVIPの役割を決定するため、我々は特異的な抗体を使うかまたは肝細胞でsiRNAによってSVIPがサイレンシングすることにより、SVIPタンパク質を阻害した
我々の結果は、SVIPの阻害ならびにSVIPサイレンシングは両方ともVTV形成が有意に減少する結果につながることを示す

加えて、我々はSVIPのサイレンシングがVLDL分泌を減少させることを示す
これは細胞内のVLDL輸送ならびに分泌においてSVIPが果たす生理学的な役割を示唆する

我々の結論はSVIPがカーゴならびにコートタンパク質との相互作用によりVTV形成の新たな調節因子として働き、肝細胞によるVLDL分泌に重要な関係があるということである



<コメント>
SVIPは、VCPと相互作用するタンパク質。
NCBIには「ERADというミスフォールドされたタンパク質分解経路をSVIPは阻害し、細胞のタンパク質分解が過剰に活性化しないようにする」とある



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12529442
VCP/p97は、膜との融合やユビキチン依存的なタンパク質分解など様々なプロセスに関与する
p47やUfd1pのようなアダプタータンパク質は、機能的な多用途性versatilityをVCP/p97にもたらすことが示唆されてきた
我々は新たなアダプターを探索し、SPIVを発見した
SVIPと以前発見されたアダプターのp47とufd1pは、排他的にVCP/p97と相互作用する
完全長のSVIPの過剰発現、または切り詰めたtruncated変異体はゴルジ装置の構造に著しい影響は与えなかったが、
広範囲の細胞の空胞形成vacuolationを引き起こし、それは神経細胞におけるVCP/p97変異体の発現またはポリグルタミンタンパク質の発現を思い出させるreminiscentものだった
この空胞vacuoleはER膜に由来するように思われた



参考サイト
http://beslimbody.com/blog/
>2015年02月22日
>ヤフーニュースで「食事性コレステロール摂取量、政府指針案から上限値撤廃 米国」という記事が発表されていました。
>これは糖質制限をオススメしている身としては嬉しい話ですね。
>僕はダイエットでは炭水化物の代わりに肉や卵などを積極的に食べることを薦めていますが、そういう話をすると「コレステロールが・・・」と心配する人が結構な割合でいます。

ヤフーニュース(笑)

実際のニュースはこちら

http://www.afpbb.com/articles/-/3040196
>2015年版ガイドラインでは、食事から摂取のコレステロールと血清コレステロールの間に明確な関連を示す証拠がないとして、コレステロール摂取の上限値が撤廃される可能性が出てきた。
>一方、コレステロールとセットで語られることの多い飽和脂肪については、より厳しい摂取量の制限が求められた。
>レベッカ・ソロモン氏(臨床栄養学)は、「長い間、体内のコレステロールレベルについては、食事性のコレステロールではなく遺伝や飽和脂肪の過剰摂取が主要な原因であることは分かっていた」と述べ、このような形で認識されて嬉しいと続けた。



関連記事
http://ta4000.exblog.jp/18303888
ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質 (MTP) の発現促進は、VLDLの産生と分泌の増加につながる。



関連記事
http://ta4000.exblog.jp/18328835/
肝細胞において、FoxO1はMTPのプロモーターに結合して活性を刺激する。
 

抗血管新生薬とミトコンドリア阻害剤を組み合わせて癌を殺す

2016-06-19 06:06:55 | 癌の治療法
Researchers discover a mechanism that reverses resistance to antiangiogenic drugs

Antiangiogenics like TKIs are one of the most widely used cancer treatments but patients eventually develop resistance.
Adding an antidiabetic to the drug regimen eliminates resistance to TKIs and inhibits tumor growth up to 92 percent in animal models

June 9, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160609134303.htm

スペイン国立がん研究センター(CNIO)の乳癌臨床研究ユニットは、癌の治療で広く使われる薬の一つである抗血管新生薬antiangiogenic drugに関する重要な発見をCell Reports誌で発表した
彼らはこれらの阻害剤に対する抵抗性のメカニズムと、それを無効化する方法について記述する
乳癌と肺癌モデルのマウスに対して抗血管新生薬に加えて抗糖尿病薬を足すことで、腫瘍の増殖は92パーセント阻害されたという


抗血管新生薬への抵抗性は上皮性腫瘍epithelial tumourに共通の問題であり、それが乳癌、肺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、腎臓癌、肝臓癌など癌の治療で広く使われていることを考慮すれば、抵抗性についての研究は特に有意義である
チロシンキナーゼ阻害剤/Tyrosine Kinase Inhibitors (TKIs) は抗血管新生薬の一つであり、ソラフェニブsorafenibやスニチニブsunitinibよりも効果が高いとされる新しいTKIのニンテダニブnintedanibが、進行した肺癌の治療用としてFDAとEMEAによって最近承認された
ゆえに、治療が患者の利益になる時間を延ばすために「TKIへの抵抗性を獲得するメカニズムを明らかにすることは重要である」と著者は言う


細胞の代謝の変化
Changes in Cell Metabolism

異常な血管は腫瘍の発達を支え、組織に酸素の不足(低酸素hypoxia)を引き起こす
酸素の欠乏は細胞代謝の変化の引き金となる(ワールブルク効果として知られる現象)
癌細胞は通常の細胞よりも最大で20倍も多くグルコースを消費し、したがって通常の細胞がエネルギーを得るための『発電所』であるミトコンドリアよりも優勢になる

CNIOの乳癌臨床研究ユニットの所長であるMiguel Quintela-Fandinoによると、TKIによる治療は癌細胞の制御不能なグルコース代謝を阻害するという
しかしながら、癌細胞が飢えて死ぬはずのTKIの治療では望んだような致死的効果が常に得られるわけではなく、腫瘍の多くは抵抗性を獲得する

それがどのようにして起きるのか?
今回の論文はそれに答える
『エネルギー源を変更してミトコンドリア呼吸に逆戻りrevertすることによる』

しかしながら、腫瘍が生き残るために使うこのような適応メカニズムは癌細胞を攻撃するための機会をもたらすことをCNIOの研究者は発見した


癌と戦うために糖尿病の薬を使う
An Antidiabetic Agent to Combat Cancer

「エネルギー源の一つである解糖系glycolysisを薬理学的に制限すると、腫瘍はもう一つのエネルギー源であるミトコンドリア代謝に依存するようになり、その阻害に対して脆弱になる」と論文で著者は指摘する

仮説をテストすべく乳癌のモデルマウスにTKIのニンテダニブを投与したところ、癌細胞によるグルコースの消費は激しく低下した一方で、ミトコンドリアの呼吸から生まれる代謝産物が増加した

彼らが次にミトコンドリアの阻害剤であり糖尿病薬として使われるフェンホルミンphenforminを処方に加えると、マウスの腫瘍の成長は最大で92パーセント低下した
特にフェンホルミンをTKIと同時simultaneouslyではなく、TKIの次に順を追ってsequentially投与した時に強い効果が見られた

彼らが『代謝性合成致死/metabolic synthetic lethality』と名付けたこのような効果は、他のタイプのTKIであるレゴラフェニブregorafenibとミトコンドリア阻害剤ME344を組み合わせた時にも生じた
この治療は肺癌モデルで全生存中央値median overall survivalを40パーセント以上も延長した


このプロジェクトの最も興味深い側面は、それが即座に応用可能だということである

「フェンホルミンは糖尿病患者に対してまれに副作用を引き起こすために市場から回収されたが、この薬は糖尿病ではない患者には安全である」
Quintelaは言う
彼のグループはこの相乗的な薬剤の組合せが抗血管新生薬に対する抵抗性を反転できるかどうかを研究するために独立した/独自independentの臨床試験を6ヶ月以内に始める予定である


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.05.052
Targeting Tumor Mitochondrial Metabolism Overcomes Resistance to Antiangiogenics.
腫瘍のミトコンドリア代謝を標的にすることで抗血管新生薬への抵抗性を克服する


Highlights
・抗血管新生薬は乳癌と肺腫瘍の低酸素hypoxicを修正する
・酸素が正常normoxicな腫瘍は解糖系を停止させてミトコンドリアの代謝に依存する
・ミトコンドリア代謝は正常な酸素下での腫瘍の生存に必須である
・ミトコンドリア代謝を標的にすることは抗血管新生と相乗作用を示す

Summary
上皮性の悪性腫瘍epithelial malignanciesには抗血管新生薬による治療が効果的だが、抵抗性の獲得が治療上の大きな問題である
上皮性腫瘍は一般にMAPK/Pi3K-AKT経路に突然変異を持ち、結果として高速high-rateの好気的解糖aerobic glycolysisにつながる

今回我々はマルチキナーゼ阻害による抗血管新生薬(TKI)がどのようにして突発性spontaneousの乳癌モデルならびに肺腫瘍モデルにおいて低酸素を修正correctするのかを示す
低酸素が修正されると、腫瘍は解糖系を下方調節し、スイッチを切り替えてミトコンドリア呼吸に長期にわたって依存するようになる

トランスクリプトーム、メタボローム、ホスホプロテオミクスを組み合わせた研究から、この代謝的な切替えはHIF1αとAKTの下方調節ならびにAMPKの上方調節によって仲介されることが明らかになった
それにより脂肪酸とケトン体の取り込みと分解が可能になる

この切替えはミトコンドリア呼吸を腫瘍の生存に必須にさせる
フェンホルミンやME344のような薬剤はTKIと組み合わせた時に相乗作用的な腫瘍コントロールをもたらし、代謝性合成致死metabolic synthetic lethalityにつながる

我々の研究はTKIに対する腫瘍の抵抗性プロセスにおける機構的な洞察を明らかにするとともに、臨床的な実用性applicabilityを持つ可能性がある



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癌細胞は本当にグルコースで増殖するのか?



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

は?
 

カロリーの取り過ぎが満腹感を阻害する

2016-06-17 06:06:08 | 代謝
Broken calorie sensing pathway: How overeating may lead to more eating

June 15, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160615134450.htm

トマス・ジェファーソン大学/Thomas Jefferson Universityの研究者は、余分な体重がなかなか落ちにくい理由についてとうとう解明し始めた
彼らは今回の新たな研究で、その人がどれぐらいの食物を食べたのかを腸が感知してそれを脳に中継する方法の一つを明らかにした
それによると、カロリーが多すぎることを腸が感じ取ると、満腹感feeling of fullnessを促進する経路がブロックされるという
この研究はNatureが発行する学術誌のNutrition & Diabetes誌で発表される

結腸癌についての以前の研究で、ジェファーソンのシドニーキンメル医学部で薬理学と実験治療学のChairであるScott Waldman, M.D., Ph.D.を中心とする研究者たちは、ウログアニリンuroguanylinというホルモンが肥満にも関与するようだということに気付いたnotice

※グアニリンguanylin: 15のアミノ酸(PGTCEICAYAACTGC)からなるペプチドホルモン

※ウログアニリンuroguanylin: 16のアミノ酸(NDDCELCVNVACTGCL)からなるホルモン。受容体やシグナル伝達はグアニリンと同じで、C型グアニル酸シクラーゼ/guanylate cyclase type-C(GC-C)のアゴニスト。胃の腸クロム親和様細胞/enterochromaffin-like cell (ECL) や腸のクロム親和細胞 (EC)、膵β細胞、腎尿細管細胞で産生される。Cl-分泌とNa利尿作用はグアニリンより強く、経口のNa負荷で合成と分泌が亢進する

以前の研究では肥満ではないマウスでウログアニリンが脳まで移動し、そこで満腹感を生み出すことが示された
しかし、肥満の状態でこのシグナル伝達に何が起きるのかはわかっていなかった

今回の研究で研究者は過剰に食べさせたマウスを調べ、そのマウスの小腸がウログアニリンの産生を止めることを観察した
脳内に存在するウログアニリンの受容体は完全であり、その数が増加してさえいたが、もはやホルモン自体が作られていなかった
これは食べ過ぎovereatingがウログアニリンの産生を妨害することを示唆する
しかしながら、マウスの食事を制限すると/put on a (restricted) diet、グアニリンの産生は再開した

Waldman博士は言う
「興味深いのは、痩せているマウスが食べ過ぎるか、太っているマウスが食べ過ぎるか、それは問題ではなかったということだ
ウログアニリンの産生はカロリーを摂り過ぎるとどちらのグループでも止まった」

これは肥満と関連する別のホルモン、インスリンやレプチンとはまったくの正反対である
それらは体重が増えるにつれて作られる量がさらに増えていく

「ウログアニリンの問題を引き起こすのは肥満の状態ではなく、むしろカロリーだ」

過食がどのようにしてウログアニリンの産生を停止させるのかを明らかにするため、研究者はこのホルモンを作る小腸の細胞を調査した
彼らは小胞体(ER)ストレスが関与する可能性を疑った
ERは体内のタンパク質やホルモンの多くを作る細胞内の小器官で、ストレスがかかると機能を止めてしまうからである

ERストレスを引き起こすことが知られている化学物質のツニカマイシンtunicamycinを投与したところ、マウスのウログアニリンの産生は過食時と同じように停止した

過食させた肥満のマウスに、今度はERストレスを解放することが知られている化学物質を与えると、そのマウスは再びウログアニリンを作り始めた

「合わせて考えると、これらの実験は『過剰なカロリー』、つまりそれが炭水化物からでも脂肪からでも、小腸の細胞にストレスを与えてウログアニリンの産生を止める
ウログアニリンは食後の満腹感を促すので、それがなくなれば満腹になりにくくなる」
Waldman博士は言う

「わからないのは、どれぐらいが過剰になるのか、そしてどのような分子センサーがそのような決定をするのかということである」

「癌と同様、簡単には回復しないほどの肥満になるまでには多くの段階が存在する
ウログアニリンというホルモンの経路はそのような段階の一つであるようには見えるものの、
それが段階の早期で重要なのか後期でなのか、そしてどれほどの役割を演じているのかは不明である」
Waldman博士は言う

「しかし、ウログアニリンホルモン補充は、他のアプローチとを組み合わせることで肥満を回復するための重要な要素となるかもしれない」


http://dx.doi.org/10.1038/nutd.2016.18
Calorie-induced ER stress suppresses uroguanylin satiety signaling in diet-induced obesity.
食事による肥満において、カロリーによって誘発されるERストレスはウログアニリン満腹シグナル伝達を抑制する

要旨
Abstract

背景/目的
Background/Objectives:
ウログアニリンとその受容体GUCY2C、そして腸と脳とのつながりaxisは、摂食、エネルギー恒常性homeostasis、体容積body mass、代謝を調節する要素の一つであることが明らかになってきているemerge
今回我々は、食事によって誘発される肥満/diet-induced obesity (DIO) の根底にあるメカニズムにおいて、このつながりaxisが果たす役割を調査した


対象/方法
Subjects/Methods:
腸のウログアニリン発現と分泌、ならびに視床下部のGUCY2C発現と食欲不振誘発性シグナル伝達anorexigenic signalingを、高カロリー食を14週間与えたマウスで定量化した

DIOにおけるウログアニリンの抑制で小胞体(ER)ストレスが果たす役割を調査するため、ERストレスを誘発するツニカマイシン/tunicamycinと、ERストレスを防ぐ化学シャペロンのタウロウルソデオキシコール酸/tauroursodeoxycholic acid (TUDCA) を使用した

ウログアニリン発現に対する消費カロリーの影響を、食事の操作manipulationによって調査した

肥満の根底にあるメカニズムにおいてウログアニリンが果たす役割を調査する際に使用したのはCamk2a-Cre-ERT2-Rosa-STOPloxP/loxP-Guca2bのマウスで、タモキシフェンを投与することによりマウスの脳内にトランスジェニックなホルモン発現を誘導する


結果:
食事によって誘発される肥満(DIO)は腸のウログアニリン発現を抑制し、食後の血液循環への分泌を喪失させた

DIOがウログアニリンを抑制したのはERストレスを通じてであり、ツニカマイシンによって同様の効果が得られ、TUDCAによって阻害された

DIOによるウログアニリンホルモン抑制は、病態生理学的な肥満の環境milieuよりもむしろ消費カロリーを反映した
なぜならas、炭水化物による高カロリー食は痩せたマウスでもウログアニリンを抑制した一方で、カロリー制限は肥満のマウスでウログアニリンの発現を回復したからである

しかしながら、視床下部のGUCY2C(特に弓状核で発現が高い)は
外からのアゴニスト投与により満腹感を仲介する食欲不振誘発性シグナルanorexigenic signalsを生じた
そしてDIOはこれらの応答を損なうことはなかった

脳内でのトランスジェニックの発現によるウログアニリンの補充replacementは
DIOとその関連する病態comorbidity(内臓脂肪visceral adiposity、グルコース不耐性、脂肪肝)にもかかわらずopposing、
ホルモンの不足を回復repairし、満腹の応答を復元reconstituteした

結論:
これらの研究は肥満に寄与する新たな病態生理学的メカニズムを明らかにする
そのメカニズムとは、腸のウログアニリンがカロリーによって抑制されることが
食欲不振誘発性の内分泌シグナル伝達を失わせて
摂食を調節する視床下部のメカニズムを損なうというものである

その相補的な治療枠組みcorrelative therapeutic paradigmが示唆するのは、
ホルモンは不足しているが受容体の感受性は維持されているという状況において
肥満はGUCY2C受容体のリガンドとなるホルモン補充によって阻止または治療できるかもしれないということである


Materials and methods
Diets

Diet 5010 (LabDiet, St Louis, MO, USA)
低カロリー食
(3.1 kcal g−1, カロリー比率は脂肪12.7%, 炭水化物58.5%、タンパク質28.8%)

Diet 58Y1
高カロリー、高脂肪食
(5.1 kcal g−1, 脂肪61.6%、炭水化物20.3%、タンパク質18.1%)

Diet 58Y2
中カロリー、高炭水化物食
(3.8 kcal g−1, 脂肪10.2%、炭水化物71.8%、タンパク質)

随意の摂食で6週齢から20週齢まで維持

可逆的なウログアニリン喪失の研究では、マウスは低カロリー食の5010または高カロリー食の58Y1のどちらかで18週間維持、または高カロリー食の58Y1で14週間維持
そして次に低カロリー食の5010に戻されて4週間

ob/ob系統での研究では、随意摂食、または低カロリー食の5010を1日3グラムに制限させ、6週間維持



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/bfd19fa7951ad286a8a1a4165424c086
マウスの肥満はグアニリンという腸上皮で作られるホルモンの喪失と関連し、グアニリンは増殖を制御する腫瘍抑制因子として働く



<コメント>
飢餓に備えて満腹感を低下させる仕組みなのかもしれない

関係ないが、トーマス・ジェファーソン大学の設立者はトーマス・ジェファーソンさんじゃなかった

https://en.wikipedia.org/wiki/Thomas_Jefferson_University
>History
>a group of Philadelphia physicians led by Dr. George McClellan
 

トキソプラズマ感染が神経変性疾患と関連する理由

2016-06-16 06:06:27 | 
Scientists unpack how Toxoplasma infection is linked to neurodegenerative disease

New research focused on glutamate, the most important neurotransmitter in the brain

June 9, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160609150841.htm


(ニューロン(灰色)、アストロサイト(緑色)、血管(赤)

Credit: Wilson lab, UC Riverside.)

トキソプラズマ・ゴンディ/Toxoplasma gondiiは体長5ミクロンの原生動物門の寄生虫で、世界の人口の約3分の1に感染している
十分に加熱されていない肉やよく洗われていない野菜を食べることで感染し、アメリカでも15から30パーセントが感染、フランスとブラジルでは80パーセントまでが感染している
特に危険なのは妊娠中であり、妊娠女性における感染は深刻な先天性の障害を引き起こし、死ぬことさえある

この寄生虫の慢性的な感染には2つの要素がある
単一の細胞による寄生と、それによって引き起こされる組織の炎症である


カリフォルニア大学リバーサイド校の生物医学科学者チームは、トキソプラズマの感染が脳内の神経伝達物質の混乱につながり、それがもともと罹患しやすい傾向のある人に神経疾患を引き起こすと主張するpostulate
PLOS Pathogens誌で報告された彼らの研究はマウスで実施されたもので、他の全ての哺乳類と同様にマウスはこの寄生虫の自然宿主natural hostである

この報告で彼らはトキソプラズマ感染がグルタミン酸の著しい増加につながることを示す
グルタミン酸はニューロン間で興奮性のシグナルを伝達する脳内で最も重要な神経伝達物質である
このグルタミン酸の増加は『細胞外』つまり細胞の外で生じるもので、通常はアストロサイトという中枢神経系(脳と脊髄)の特殊specializedな細胞により厳密にコントロールされている
グルタミン酸の増加buildupは、外傷性脳損傷/traumatic brain injury(TBI)や重度の病的な神経変性疾患(てんかん、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症)でも観察される

アストロサイトが果たす役割の一つは、ニューロンに有害になりうる病的なレベルまで増加しないようにlest細胞外のグルタミン酸を除去することである
これは主にグルタミン酸トランスポーターのGLT-1によって行われ、細胞外のグルタミン酸を調節する役割を担っている
GLT-1はニューロンによって放出されたグルタミン酸を取り込み、より安全な物質であるグルタミンに変換する
グルタミンは細胞がエネルギーとして使うことができるアミノ酸である


「ニューロンが発火fireする時にグルタミン酸はニューロンとニューロンの間の空間に放出される」
中心となった研究者lead researcherのEmma H. Wilsonが説明する
彼女はリバーサイド医学部の生物医科学部で助教授associate professorであり、トキソプラズマ症toxoplasmosisについて15年以上も研究している

「近くのニューロンはグルタミン酸を検出し、それがニューロンの発火を引き起こす
グルタミン酸がGLT-1によって除去されなければニューロンは適切に発火することができず、やがてニューロンは死に始める」

Wilsonと彼女のチームはトキソプラズマが感染している間のアストロサイトは膨張swellして細胞外グルタミン酸の濃度を調節することができず、GLT-1は適切に発現しないことを明らかにした
これはニューロンから放出されたグルタミン酸の蓄積buildupにつながり、ニューロンの発火は不発に終わるmisfire

「慢性的なトキソプラズマ感染が不活発quiescentで良性benignであると憶測されているのとは異なり、これらの結果は正常な神経学的経路ならびに脳の生化学的な変化に対する潜在的なリスクについて我々は知っておくawareべきであるということを示唆する」


次に研究者たちがトキソプラズマ感染マウスに抗生物質のセフトリアキソン/ceftriaxoneを投与したところ、GLT-1は上方調節された
この抗生物質はALSのマウスモデルに有益な効果をもたらし、様々な中枢神経系の損傷において神経を保護することが知られている
このGLT-1発現の回復は細胞外のグルタミン酸を病的な状態から正常な濃度まで著しく減少させ、ニューロンの機能を正常な状態まで回復した

Wikipedia(en)には「セフトリアキソンは興奮性アミノ酸トランスポーター2ポンプの発現と活性を中枢神経系で増加させ、グルタミン酸作動性の毒性glutamatergic toxicityを低下させる潜在性を持つ [30][31]
セフトリアキソンは脊髄性筋萎縮症(SMA)[32]、筋萎縮性側索硬化症(ALS)[33] など多くの神経疾患で神経保護的な性質を持つことが示されてきている」とある


「我々はトキソプラズマ感染の結果として起きる脳内の主要な神経伝達物質の直接的な破綻を初めて示した」
Wilsonは言う

「この最も一般的な病原体の実体realityを理解するため、さらに直接的で機構的な調査を実施する必要がある」

Wilsonたちの次の研究予定は、トキソプラズマ慢性感染中の何がGLT-1の下方調節を開始させるのかについてである

「グルタミン酸恒常性の維持に対するこのトランスポーターの重要性にもかかわらず、その発現を決定するメカニズムについてはほとんど理解されていない」
Wilsonは言う

「末梢の免疫細胞も含めた細胞が、どのようにして脳内の寄生虫をコントロールしているのかを我々は知りたい
トキソプラズマ感染は一生を通じてニューロンの内部に寄生虫性嚢胞/シストparasitic cystが存在することになる
我々はさらに、シストcystを殺すことに焦点を当てたプロジェクトを進めたいと考えている
寄生虫はシストにより免疫応答から隠れており、シストの除去は寄生虫の再活性化ならびに脳炎のリスクの脅威を取り除き、脳内の慢性感染を最小限に抑えることを可能にする」


奇妙なことに、この寄生虫はネコの中でしか性的な生殖ができない
この寄生虫は核を持つあらゆる哺乳類の細胞で無性生殖asexuallyで増殖し、事実この寄生虫はこれまでテストされたあらゆる哺乳類で見られる

感染後、寄生虫の再感染と脳炎を防ぐためには免疫応答能のあるcompetent免疫系が必要である
免疫系に欠陥がある人が感染すると予防薬prophylactic drugを一生続ける必要があり、さもなくばシストが再感染して死ぬ危険がある

この寄生虫は、危険を志向risk-seekingするような、特定の行動を乱す潜在性potentialを持つ脳内の領域に住み着く(感染したマウスはネコの尿から逃げず、尿に向かって走る)

トキソプラズマはかつて考えられていたほど潜伏latentしたり休止状態dormantではない
先天性の感染や網膜トキソプラズマ症の症例が増加しつつあるon the rise(脳と網膜は密接な関連がある)
統合失調症の人はトキソプラズマに感染しやすい
トキソプラズマの感染はアルツハイマー病、パーキンソン病、てんかんといくらかの相関が示されている

にもかかわらず、Wilsonは感染が主な心配の原因ではないことに言及する

「我々は長い間この寄生虫と生きてきた
宿主を殺したいのではなく、家を失いたいのではない
感染を防ぐ最も良い方法は肉を加熱調理し、手と野菜を洗うことだ
もしあなたが妊娠しているなら、ネコのトイレの砂litterを変えないように」


http://dx.doi.org/10.1371/journal.ppat.1005643
GLT-1-Dependent Disruption of CNS Glutamate Homeostasis and Neuronal Function by the Protozoan Parasite Toxoplasma gondii.

Abstract
中枢神経系はその免疫特権的な性質immune privileged natureから慢性的かつ潜在感染に脆弱でありうる
脳の生涯感染とそれによる炎症が宿主の神経学的な健康に与える影響はほとんどわかっていない
免疫能のある人でトキソプラズマ感染はほとんど無症候性だが、最近の研究で特定の神経変性疾患ならびに精神障害との強い相関が示唆されている

今回我々は主なアストロサイトグルタミン酸トランスポーターであるGLT-1のトキソプラズマ感染後の有意な低下を実証する
我々は感染したマウスの前皮質で微量透析法microdialysisを行い、グルタミン酸の細胞外濃度が有意に増加することを観察した

グルタミン酸の調節不全と一致して、樹状突起棘dendritic spine(シナプスはここにつくられることが多い)の減少、VGlut1とNeuNの免疫反応immunoreactivityを含む形態的な変化がニューロンの分析で明らかにされた
さらに、行動的なテストならびに脳波electroencephalogram(EEG)記録では、ニューロン出力の有意な変化が示された

最後に、これらのニューロン接続の変化は、トキソプラズマ感染によるGLT-1下方調節に依存する
β-ラクタム抗生物質のセフトリアキソンceftriaxoneの投与は、細胞外グルタミン酸濃度、ニューロンの病理と機能を回復した

合わせて考えると、これらのデータはトキソプラズマ感染後にグルタミン酸のアストロサイトによる精密な調節が乱されることを実証し、慢性感染で観察される一定範囲の異常a range of deficits observed in chronic infectionの原因を説明する



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アルツハイマー病発症の20年前に脳内に炎症性の変化が見られ、アストロサイトの活性化を示す



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アルツハイマー病モデルマウスの脳では反応性アストロサイトがプトレシンからMAOBによってGABAを産生し、Bestrophin-1チャネルを通してGABAをリリースしてシナプス伝達の間の正常な情報の流れを抑制する



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特定の神経細胞が軸索を通じてアセチルコリンを海馬に放出し、それにアストロサイトが反応してグルタミン酸を出して、その結果『記憶モード』に切り替わる
 

α-シヌクレインはどのようにしてミトコンドリアを阻害するのか

2016-06-14 06:06:00 | 
Key to Parkinson's disease neurodegeneration found

June 8, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160608154030.htm

ピッツバーグ大学医学部の研究者は、なぜパーキンソン病と関連するタンパク質のα-シヌクレインがニューロンにとって有害なのかについての主な理由を明らかにした
α-シヌクレインはパーキンソン病の病理学的な特徴hallmarkであるレヴィ小体の成分である
Science Translational Medicine誌のオンライン版で発表された今回の発見は、この破壊的な疾患の進行を遅くするか止めうる新たな治療法につながる潜在性を持つ


パーキンソン病(PD)は振戦、緩慢な動き、歩行gaitとバランスの困難さが特徴characterizedの神経変性疾患であり、アメリカ国内では約100万人が罹患している
これらの症状は脳内のニューロンが変性するか失われることによって生じ、特に動きの開始initiationと調整coordinationに重要なニューロンが影響を受ける

「我々がこの破壊的な疾患の新たな治療法を生み出すために標的にできるメカニズムを発見したことは本当にエキサイティングだ」
中心となった研究者lead investigatorのJ. Timothy Greenamyre, M.D., Ph.D.は言う
彼はピッツバーグ医学部で神経学のLove Family Professorであり、ピッツバーグ神経変性疾患研究所(PIND)のディレクターでもある
PINDの目的goalは神経変性疾患とそのメカニズムの研究に向けて統合された学際的アプローチであり、その目標aimは一変させるtransformingような最先端の科学で神経変性疾患に罹患した個々人の直接の利益となるような新たな治療法と診断法を目指すことである

「PINDの4人の研究者が共に研究したこの研究では、この協力によるアプローチの力に焦点を当てる」
Greenamyre博士はそのように付け加えた


PDの現在の治療法は症状を減らすことはできるが、疾患の悪化は不可避で進行を遅くすることはない
進行を遅くするか止めるため、科学者たちはなぜ、そしてどのようにしてニューロンが死んでいくのかを初めて特定した

変性しているニューロンにはα-シヌクレインというタンパク質が凝集した大きな塊が存在する
細胞で作られるα-シヌクレインが多過ぎるか(PARK4)、α-シヌクレインが突然変異を起こしていると(PARK1)、このタンパク質の毒性のためにPDを発症するリスクが高いことがわかっている

科学者たちはPDにおけるα-シヌクレインの蓄積が有害である理由が ミトコンドリアの正常な機能を乱すためであることも実証してきた
ミトコンドリアは細胞のエネルギーを作り出す『小さな発電所』である

今回の新しい研究でGreenamyre博士は共著者Roberto Di Maio, Ph.D.とPaul Barrett, Ph.D.が率いるPINDのチームと共に十分に確立されたPDのげっ歯類モデルを使い、α-シヌクレインがどのようにしてミトコンドリアの機能を乱すのかを正確に示した
彼らはα-シヌクレインがTOM20というミトコンドリアのタンパク質に結合してミトコンドリアが適切に機能することを妨げ、その結果としてエネルギーの産生は減少し、有害damagingな細胞の廃棄物が増加することを明らかにした
このα-シヌクレインとTOM20との相互作用は最終的に神経変性につながるのだとGreenamyre博士は説明する

次に彼らは動物実験での結果をPD患者の脳組織で確認した

「α-シヌクレインのミトコンドリアへの影響を例えると、完全に上手くいっている石炭燃料の発電所を極端に非効率的にするようなものだ
それは十分な電力を作るのに失敗するだけでなく、有害な汚染物質も大量に作り出す」


研究チームは培養した細胞を使い、α-シヌクレインによって引き起こされる毒性を防ぐための2つの方法を発見した
1つは遺伝子治療であり、ニューロンに強制的にTOM20を多く作らせることでニューロンはα-シヌクレインから保護された
もう1つはα-シヌクレインがTOM20にくっつかないように防ぐことができるタンパク質で、これもα-シヌクレインのミトコンドリアへの有害な影響を防いだ

これらのアプローチがPD患者を助けうるかどうかを確かめるためにはさらに多くの研究が必要なものの、Greenamyre博士は楽観的であり、それらの一方、または両方が最終的には現在不可避なPDの進行を遅くするか止めるためのヒトでの臨床試験につながるだろうと考えている


http://dx.doi.org/10.1126/scitranslmed.aaf3634
α-Synuclein binds to TOM20 and inhibits mitochondrial protein import in Parkinson’s disease
パーキンソン病においてα-シヌクレインはTOM20に結合し、ミトコンドリアへのタンパク質インポートを阻害する

α-シヌクレインはミトコンドリアタンパク質の『輸入業』を破綻させる
α-Synuclein disrupts the mitochondrial protein import business

α-シヌクレインの蓄積とミトコンドリアの機能障害はほとんどのタイプのパーキンソン病の病理発生にとって重要central toであって、両者は重複しているように見える
しかし、この2つがどのようにしてお互いに関連するのかはわからないままだった

今回Di Maioたちは、野生型のα-シヌクレインの特定の形態、例えばオリゴマー形態やドーパミンで修飾された形態dopamine-modified formは高い親和性でミトコンドリアのTOM20という受容体に結合するが、単一分子や繊維状の形態のα-シヌクレインはTOM20に結合しないことを報告する

※dopamine-modified alpha-synuclein: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18172548

この結果としてミトコンドリアが機能するために必要なタンパク質のインポートが損なわれ、ミトコンドリアの老化につながり、呼吸respirationの低下と活性酸素種(ROS)の増加を示す

今回の研究は、この有害な相互作用とその下流の結果を防ぐための潜在的な方法にも光を当てる


要旨
Abstract

α-シヌクレインの蓄積とミトコンドリアの機能不全はパーキンソン病(PD)の病理発生に強く関連し、そしてその2つはつながりがあるように見える
ミトコンドリアの機能不全はα-シヌクレインの蓄積とオリゴマー化につながり、増加したα-シヌクレインはミトコンドリアを損なう
しかし、この双方向の相互作用の基盤は不可解obscureなままである

今回我々は、翻訳後に修飾された特定の形態のα-シヌクレインが高い親和性でTOM20(translocase of the outer membrane 20/ミトコンドリア外膜の転送装置)に結合することを報告する
TOM20はミトコンドリアタンパク質をインポートする機構の一つで、『前駆配列presequence』の受容体である

TOM20と修飾α-シヌクレインとの結合は、TOM20とその共受容体TOM22との相互作用を妨害し、ミトコンドリアタンパク質のインポートを損なう
その結果としてミトコンドリアの呼吸に欠陥が生じ、ROSの産生が増加し、ミトコンドリアの膜電位membrane potentialが失われる

PD患者の死後の脳組織を検査したところ、黒質線条体nigrostriatalのドーパミン作動性ニューロン内のα-シヌクレインとTOM20の異常な相互作用が存在し、それがインポートされるミトコンドリアタンパク質の喪失と関連することが明らかになった
これによりヒトのパーキンソン病でもこの病原性pathogenicのプロセスを確認した

PDのin vivoモデルにおいて、内因性endogenousなα-シヌクレインの適度modestのノックダウンは、ミトコンドリアタンパク質のインポートを維持するのに十分だった

さらに、in vitro系では、TOM20の過剰発現、またはミトコンドリアを標的とするシグナルペプチドは有益な効果があり、ミトコンドリアタンパク質のインポートは保持された

この研究はPDにおける病原性のメカニズムを特徴付け、野生型αシヌクレインの有害な形態を同定し、神経を保護するための潜在的かつ新たな治療戦略を明らかにした



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18172548
"Dopamine-modified α-synuclein blocks chaperone-mediated autophagy"
『ドーパミン修飾α-シヌクレイン』は『シャペロンを介するオートファジー(CMA)』を阻害する

Reference 18
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15817478
Reversible inhibition of alpha-synuclein fibrillization by dopaminochrome-mediated conformational alterations.
ドーパミンが自己酸化して形成されるドーパミノクロームdopaminochromeは、α-シヌクレインの125-129残基(YEMPS)との相互作用により立体構造を変化させて微小繊維化を可逆的に阻害し、球状のオリゴマーを形成する

Reference 19
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15790526
Synuclein, dopamine and oxidative stress: co-conspirators in Parkinson’s disease?

Reference 20
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14556942
3,4-Dihydroxyphenylacetaldehyde is the toxic dopamine metabolite in vivo: implications for Parkinson’s disease pathogenesis.

※3,4-dihydroxyphenylacetaldehydeはドーパミンの代謝産物(DOPAL)

HER2乳癌の抵抗性を回避する新たなタンパク質化合物

2016-06-12 06:06:13 | 癌の治療法
Promising treatment prospects for invasive breast cancer

June 3, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160603071704.htm


(有効成分のDARPins(赤とオレンジ)は HER2受容体(青色)を屈曲させてbend、増殖シグナルが細胞内部(黄色の線から下)に伝達されなくなる

Credit: (c)UZH)

スイスだけで毎年5700人以上の女性が乳癌と診断され、約1400人がこの病気のために死亡する
非常に浸潤性の乳癌の多くでは細胞が表面上にHER2という受容体を持ち、その結果として制御不能の細胞増殖が生じる
HER2受容体を認識するトラスツズマブtrastuzumabやペルツズマブpertuzumabのような様々な抗体が長年乳癌の治療で使われてきた
しかしながら、これらの抗体は癌細胞を絶滅させることはない
そのような治療法は癌細胞を休止状態にして、いつでも再活性化が可能である


なぜ乳癌細胞は抗体による治療に抵抗するようになるのか
Why breast cancer cells become resistant to antibody therapy

今回チューリヒ大学生化学部のディレクターAndreas Plückthunたちが率いる研究チームは、なぜトラスツズマブのような抗体が癌細胞を全滅させるどころか腫瘍の増殖を遅くするだけなのかを発見した

HER2受容体は複数のシグナル伝達経路を同時に使い、成長して分裂すべきだという情報を細胞に伝える
しかし現在利用できる抗体はシグナル伝達経路のたった一つ(PI3K-AKT)を阻害するだけで、残り(RAS-RAF-MEK-ERK)は活性化したままである
そしてこれらの開いた経路で最も重要なものは、RASという中心となるハブを通じてつながっている(RAS-PI3K)

「HER2受容体から発せemitられた成長シグナルを再び活性化する原因は、このRASタンパク質である
抗体は効果を失い、癌細胞は増殖を続ける」
初めて詳細が明らかにされたメカニズムをAndreas Plückthunはそのように説明する


チューリヒ大学の科学者は、癌細胞でHER2から同時に発せemanateられた複数のシグナル全てのスイッチを切るための驚くほど効果的な解決法を発見した
彼らは同時に2つのHER2受容体に対して標的を定めて結合し、そしてそれらtheirの空間的構造を変化させるようにタンパク質化合物protein compoundをデザインした
この『受容体屈曲/receptor bending』は細胞内部に伝えられるはずのあらゆる成長シグナルを阻害し、結果として癌細胞は全滅する

もう一つの利点はこの物質の効果が非常に選択的であるということで、癌細胞は効果的に全滅させるが正常な体細胞は傷つけないまま残すことを保証する
この革新的なタンパク質物質protein substanceはマウスの腫瘍を退縮させ、しかしマウスの健康を危険にさらすことはなかった


非常に効果的なタンパク質化合物はまもなく患者で試験される予定である
Very effective protein compound soon to be tested on patients

この化合物の有効成分active ingredientは、複数の『DARPins(designed ankyrin repeat proteins/デザインされたアンキリンリピートタンパク質)』から構成されている

この生産が容易でかつ多くの望ましい結合性質を持つ新しい種類のタンパク質化合物はPlückthunの生化学ラボで考案されて生み出された
これと非常に似た物質が分割独立spin-offしたチューリヒ大学の企業であるMolecular Partnersによって現在開発されており、その目的はこのメカニズムによって機能する初めての薬剤をできるだけ早く一連の臨床試験で試験することである

Andreas Plückthunは楽観的である
「HER2陽性の癌細胞の『アキレスの踵』が明らかになった今、乳癌のような浸潤性の腫瘍を将来効果的に治療するための新たな機会が訪れつつある」


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms11672
Intermolecular biparatopic trapping of ErbB2 prevents compensatory activation of PI3K/AKT via RAS–p110 crosstalk.
ErbB2分子間の二重パラトープ的な捕捉は、RAS–p110クロストークを介するPI3K/AKTの補償的活性化を妨害する

Abstract
AKT-ErbB3ネガティブフィードバックのような補償的メカニズムは、ErbB2依存的な腫瘍の標的治療への感受性を低下させることが知られている

今回我々はトラスツズマブ治療中のPI3K/AKT経路の再活性化につながる適応メカニズムを記述する
これはErbB3の再リン酸化とは独立して起きる

リン酸-ErbB3シグナルの迂回は、ErbB2が過剰発現する細胞ではRAS-PI3Kクロストークを介して作動し、このシグナル迂回は活性化したErbB2ホモ二量体が原因であるattributable

薬理学的な阻害やRNA干渉といった方法によるErbB2/RASとErbB3の二重阻害や、RAS-p110α相互作用を妨害する特定のタンパク質結合によって実証されるように、PI3K/AKT経路の再活性化を防ぐためには両方の経路を阻害しなければならない

※ErbB2/HER2の下流には RAS-RAF-MEK-ERKと PI3K-AKTという2つの経路があり、PI3Kというキナーゼは110kDaの触媒サブユニット(p110)と85kDaの制御サブユニット(p85)から成る

これらの一般的な原則を適用し、我々は二重パラトープの『designed ankyrin repeat proteins(DARPins)』を開発した
これは二量体化する能力がない状態でErbB2を捕捉し/閉じ込めtrap、ErbB2だけでなくErbBの全体的な阻害を引き起こしてentail、発癌シグナル伝達における永続的なオフの状態を作り出す
それにより、ErbB2に依存する腫瘍に大規模な/広範囲extensiveのアポトーシスを引き起こす

このように、ネットワークの頑強さrobustnessの根本にあるメカニズムへのこれらの新たな洞察は、ErbB2/ErbB3を標的とする治療に対する適応応答を克服するためのガイドを提供する


http://www.nature.com/ncomms/2016/160603/ncomms11672/fig_tab/ncomms11672_F10.html
Figure 10: Model of induction of apoptosis and adaptive resistance in response to ErbB2 blockade.
ErbB2阻害に対する適応的抵抗性とアポトーシス誘発のモデル


(a) ErbB2の過剰発現はリガンドがなくてもErbB2とErbB3を活性化するのに十分であり、主にErbB2/ErbB3-PI3K/AKTというシグナル軸により腫瘍の成長を駆動する

このシグナル伝達経路はAKTとErbB3との間のネガティブフィードバックな調節を構成的に抑制する
しかしながら、このシグナル経路はErbB2/ErbB3受容体または下流のシグナル伝達経路の阻害によって軽減されるrelieved

(b) トラスツズマブによる治療は リガンドに依存しないErbB2/ErbB3ヘテロ二量体化に対して選択的に干渉することによって 部分的なErbB2阻害を誘導し、それによりErbB3をPI3K/AKT再活性化から分離する

今回我々はErbB2/RASから生じるemanate新たな適応応答を明らかにした
この応答では、PI3K/AKTシグナル伝達を活性化させるErbB3は迂回される
(AKT↓─┤RAF↑,FOXO↑→ERK↑,ADAM17↑,p27Kip1↑→ErbB3,EGFR転写↑,ADAM17切断によるheregulin/ERG↑)

(c) 二重パラトープのDARPins(6L1G)は、ErbB2のリガンド依存的な複合体ならびにリガンドには依存しない複合体、その全てを妨害する

そのようなあらゆるErbB2の阻害は、PI3K/AKTシグナル伝達カスケードならびに引き続く適応応答を阻害し、ErbB発癌ネットワークを安定したオフの状態にする
結果として、本来備わっているintrinsicアポトーシスが誘発され、適応的な抵抗性の発生を阻害する



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https://www.sciencedaily.com/releases/2015/06/150630122404.htm
ヒトの乳癌は、以下のような少なくとも6つの異なる臨床的に関連する分子サブタイプに分類される
luminal A、luminal B、HER2+/ER-、basal-like、normal breast-like、claudin-low



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160510084159.htm
乳癌には10のサブタイプがある
PIK3CAは10の内3つしか影響がなく、PIK3CA阻害剤が一部にしか効果がない理由だろう



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151230143816.htm
HER2を認識するT細胞がHER2陽性乳癌の再発を防ぐかもしれない
再発した患者は10分の1しか抗HER2応答がなかった



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151125143739.htm
トラスツズマブエムタンシン(T-DM1)という抗体-薬物複合体は、CTLA-4/PD-1阻害療法に対する強い感受性をHER2乳癌に持たせる
 

パーキンソン病を引き起こす新たな遺伝子が発見される

2016-06-11 06:06:33 | 
New gene shown to cause Parkinson's disease

Third gene definitely linked to disease in patients from North America, Asia

June 6, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160606115903.htm


(矢印はシナプス小胞synaptic vesicleというニューロン内の小さな袋sackを指している
シナプス小胞はドーパミンのような神経伝達物質がニューロンからニューロンへと分泌される前に貯蔵される場所である

Credit: Image courtesy of Northwestern University)

ノースウェスタン大学の科学者たちはパーキンソン病の新たな原因を明らかにした
TMEM230という遺伝子の突然変異は、この最も一般的な運動障害の確認された症例と決定的に関連する三番目の遺伝子であるようだ

彼らはNature Genetics誌で発表された研究において、北アメリカとアジアのパーキンソン病患者でTMEM230の突然変異が原因である症例についてのエビデンスを提供する
また、彼らはこの遺伝子がニューロンの神経伝達物質であるドーパミンの(シナプス小胞への)詰め込みpackagingに関与するタンパク質を産生することを実証した
ドーパミン産生ニューロンの喪失はパーキンソン病の決定的な特徴である

全体的に見て今回の研究結果は脳内でパーキンソン病がどのようにして発症するのかを説明するための新たな手がかりをもたらし、それらの手がかりは将来の治療への道しるべとなるかもしれない
現在パーキンソン病には何の治療もなく、原因もほとんど知られていない

「これまでの研究でパーキンソン病は様々な環境的な要因へと関連付けられてきたが、既知の唯一直接的な原因は遺伝である」
ノースウェスタン大学ファインバーグ・メディカルスクールのTeepu Siddique博士は言う

「多くの遺伝子がパーキンソン病を引き起こすと主張されてきたが、それらは確認validatedされていなかった
我々はこの新しい遺伝子の突然変異が病理学的かつ臨床的に証明されたパーキンソン病の症例につながることを示す」

パーキンソン病の症例の約15パーセントが遺伝的性質geneticsによって起きると考えられており、それは主にSNCA(α-シヌクレインをコードする)とLRRK2という2つの遺伝子の突然変異によるものである
Siddiqueによると、他の遺伝子はパーキンソン症候群/parkinsonism(運動症状を伴う神経学的疾患)の特徴と関連付けられているに過ぎないという

※GBA遺伝子など(http://www.nejm.jp/abstract/vol361.p1651

TMEM230の突然変異がパーキンソン病につながるというノースウェスタン医学部のチームによる証明は、世界中の協力者たちと実施された20年にも及ぶ研究の成果である


この遺伝子はどのようにして発見されたのか
How they uncovered the gene

このプロジェクトは1996年、Siddiqueと筆頭著者のHan-Xiang Deng博士がパーキンソン病の典型的な症状を示す15人を含む家族の調査を開始した時から始まった
共著者のAli Rajput(カナダ・サスカチェワン大学)によって提供されたDNAサンプルを使い、SiddiqueとDengはパーキンソン病の13人を含む家族の構成員65人に対してゲノム全体の分析を実施した
この高い罹患率を説明できる共通した変異を発見することを期待してのことである

彼らは染色体20番の遺伝子141個を含む狭い領域に研究の焦点をしぼり、全エキソンの配列を決定する技術/whole exome sequencing technologyを使って遺伝子の変異variationを比較した
科学者たちはそこに9万を越える変異体variantを発見し、その中から疾患を引き起こす変異としてTMEM230遺伝子を明らかにした

Dengが説明する
「これはまったく新しい遺伝子だったため、我々はその機能を知らなかった
そのため我々は様々な研究を実施し、この遺伝子がコードするタンパク質がどの場所に存在し、何をしているのかを解明しようとした」

研究の結果、彼らはTMEM230がニューロン内のシナプス小胞という小さな袋sackの膜を貫通していることを発見した
シナプス小胞は神経伝達物質がニューロンからニューロンへと分泌される前に貯蔵される場所である

Siddiqueは言う
「現在のパーキンソン病に対する対症療法は、シナプス小胞によって分泌される神経伝達物質ドーパミンを増加させるものが中心である
ドーパミンは脳の様々な場所に投射するニューロンに分泌され、それは運動や気分、様々な器官系organ systemを制御している
つまりパーキンソン病で影響を受ける部分である」


科学者たちはこのTMEM230というタンパク質がシナプス小胞の動きに関与するという仮説を立てた

「我々は小胞輸送の欠陥がパーキンソン病の鍵となるメカニズムであると考えており、それはこの変異を持つ症例に関してだけでなく疾患の大部分に共通する経路である
SNCAとLRRK2、そしてTMEM230という原因として証明authenticatedされた3つの遺伝子は、全てシナプス小胞に集中する」
Dengは言う

「我々の新たな研究結果は、シナプス小胞の輸送の正常化が将来の治療を開発するための戦略となる可能性を示唆している
我々はこの決定的な経路を促進する薬剤を開発できるだろう」


様々な集団でTMEM230を立証する
Verifying the gene across populations

重要なことに、研究チームは北アメリカや遠く離れた中国の別の家族の症例でもTMEM230遺伝子の変異を発見した

彼らはこれらの患者が疾患の臨床的な特徴(振戦tremor、緩慢slownessな動き、硬直stiffness)、そして脳内の病理学的なエビデンス(ドーパミンニューロンの喪失、ニューロン内部のタンパク質の異常な蓄積)、その両方を備えていることを立証verifyした

「このパーキンソン病を引き起こす遺伝子は北アメリカの一集団に限定されるものではなく世界中に及んでおり、様々な民族や環境の状態で見られる
この変異はそれほどに強力である」


SiddiqueとDengはTMEM230の変異がどのようにして疾患を引き起こすのかをマウスモデルを使って研究しようと計画している
Siddiqueはファインバーグで神経学・細胞分子生物学の教授であり、Dengは神経学の研究教授research professorである


http://dx.doi.org/10.1038/ng.3589
Identification of TMEM230 mutations in familial Parkinson's disease.
家族性パーキンソン病におけるTMEM230突然変異の同定

Abstract
パーキンソン病は二番目に多い神経変性疾患であり、効果的な治療法は存在しない
その大部分は散発的sporadicで、病因etiologyは不明である
まれな家族性のタイプの遺伝学的な研究から典型的なパーキンソン病またはパーキンソン症候群と関連する複数の遺伝子における変異が明らかにされてきたが、パーキンソン病の病理発生pathogenesisはほとんど不明である

今回我々は、20番染色体短腕(20pter-p12)上に存在する、常染色体autosomal優性dominantの臨床的に典型的かつ病理学的にレヴィ小体で確認されたパーキンソン病に関する遺伝子座を報告し、TMEM230を疾患原因遺伝子として同定する

※pter: petite(短腕)+ terminal(末端)

我々はTMEM230がニューロン内のシナプス小胞を含めた分泌/リサイクル小胞の膜貫通タンパク質をコードすることを示す
疾患と関連するTMEM230突然変異体mutantは、シナプス小胞の輸送を損なう

我々の研究データはニューロン内シナプス小胞の膜貫通タンパク質突然変異体が病因としてパーキンソン病と関連するという遺伝学的エビデンスを提供する
それはパーキンソン病の病理発生メカニズムの理解ならびに合理的rationalな治療法の開発と密接な関係implicationsがある


http://www.nature.com/ng/journal/vaop/ncurrent/carousel/ng.3589-F1.jpg
Figure 1: パーキンソン病患者のTMEM230突然変異



(a)
様々な種において進化的に保存されたTMEM230タンパク質のアミノ酸を示す
ヒトTMEM230のアミノ酸と同一のアミノ酸は黒字で示し、同一ではないアミノ酸は赤字で示すdenoted



関連サイト
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=TMEM230
GeneCards Summary for TMEM230 Gene
>TMEM230 (Transmembrane Protein 230/膜貫通タンパク質230) はタンパク質をコードする遺伝子である

>以下、TMEM230遺伝子に関して利用できるデータは存在しない
>Entrez Gene Summary , UniProtKB/Swiss-Prot , Tocris Summary , Gene Wiki entry , PharmGKB "VIP" Summary , fRNAdb sequence ontologies , piRNA Summary



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5dc8d2df5cf3c367e14b14a84eac884e
β-グルコセレブロシダーゼをコードするGBA1遺伝子の突然変異は、α-シヌクレインのリサイクルに問題を起こす



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/735d3e7de5b11b1efa84ce4c20e84d37
LRRK2キナーゼは特定のRabタンパク質(Rab3、Rab8、Rab10、Rab12)の不活化により細胞内輸送を調節する



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6527
RAB7L1とLRRK2は協調してニューロンにおける細胞内輸送を制御するとともにパーキンソン病の発症リスクを決定する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160412091004.htm
パーキンソン病のレヴィ小体型認知症を顎下腺のα-シヌクレインで診断する
 

p53の調節と核小体の完全性

2016-06-08 06:06:48 | 
Aspects of the regulation of the anti-tumor protein p53

June 6, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160606103754.htm

ブリュッセル自由大学のDenis Lafontaine教授が率いるRNA分子生物学研究室は、抗腫瘍タンパク質のp53の調節において必須の側面aspectを明らかにした

p53は癌細胞を殺すことにより我々を守っており、『良い』タンパク質であると考えられている

通常の細胞ではp53が常に分解され、p53は欠乏している
癌細胞でp53は安定化して分解されなくなり、増加したp53が細胞死につながる

p53のレベルは様々な方法で調節されているが、p53を上方調節する重要な因子のいくつかはリボソーム内に存在する
リボソームは全ての生物の全てのタンパク質を合成する必須の細胞ナノマシンである
リボソームタンパク質は『p53を分解するタンパク質』を捕えて隔離し、それによりp53の分解を妨害して、p53が分解されないようにする

我々の細胞の中心には核小体/nucleolusと呼ばれる重要な工場が存在し、そこでリボソームは合成されている
数十年もの間、核小体の外観/性質aspectは細胞の健康状態を示す良い指標であると考えられてきた
細胞がストレスを受けるか疾患になると、核小体の形状、サイズ、そして数は、大きく変化する
核小体の異常は、特に癌細胞やウイルス感染細胞で顕著notably appearである

現在のところ、癌の病理学者は核小体のバイオマーカーとしての潜在性を利用していないが、その理由は日常的な臨床プロトコルで実行implementationできるぐらいしっかりrobustとした信頼できる定量的なツールが存在しないためである

Denis Lafontaine教授は言う
「我々の目的には2つの要素twofoldがある
一つは、基本的な生物学的疑問に答えたかったというものだ
『核小体の完全性integrityを支配する原理原則principleは何なのか?』
我々は核小体の構造の維持において細胞のどの構成要素が重要なのかに特に興味を抱いたnotably wonder」

核小体がイタリアの科学者のFontanaによって1774年に発見されて以来、これらの基本的な疑問は誰も答えられていない
この疑問に対処すべく、Lafontaineのラボはハイスループットなスクリーニング・プラットフォームを構築した
これはロボット化した顕微鏡により何千という細胞を短時間で調べて形態と構造morphologyの詳細intimate detailをチェックし、テーラーメイドなコンピュータ・アルゴリズムに報告するというものである

概念実証proof of conceptとして、Lafontaineのラボはリボソームタンパク質の一つを持たない核小体に何が起きるのかに焦点を当てた

「これはミカドを遊ぶようなものだ」

※Mikado: 積み上げた棒を動かさずに1本ずつ抜き取る遊び

Denis Lafontaineは言う

「我々はリボソームタンパク質をそれぞれ一つずつ抜き取り、ロボットとソフトウェアに問う
『核小体の構造に影響はあったかい?』と」

Lafontaine教授は続ける
「もう一方の要素として、核小体の異常を定量的quantitivelyかつ定性的qualitativelyに見分けるための強力なコンピュータ・コードを我々は開発したかった
言い換えると、我々は健康な細胞とそうでない異常な細胞で核小体がどのように見えるのかをはっきりとunequivocally伝えるtellことができるようにしたかった
なぜかと言われれば、それは彼らが持っていないツールを臨床家に提供することを我々が目指したからだ」

ルーヴァン・カトリック大学 (ICTEAM-ELEN) のChristophe De Vleeschouwer教授と協力して、Lafontaineのラボは革新的な指標indexを開発した
その名を『核小体崩壊指標/index of nucleolar disruption』といい、略して『iNo score』と呼ぶ
このスコアは核小体の構造が損傷を受けたかどうか、そしてもし損傷していたらそれがどれぐらい重度なのかについての統計的に確認された情報を提供する

Lafontaine教授は次のように結論づける
「我々の研究の主要な結論は、80のリボソームタンパク質の中で核小体の構造を維持するために必要なのはほんの2つか3つに過ぎないということだ
そして本当に愕然astoundとさせる結果は、核小体の構造に最も必要なリボソームタンパク質はまさにp53レベルの調節に重要なリボソームタンパク質だということである
これはまったく予想されていなかった結果で、我々が期待したものをはるかに越えていた
基礎研究は常に我々を驚かせ続けるものだ」

今回の研究は生物医学的な研究への応用として重要であり、iNoスコアは臨床生物学で利用される潜在性を持っている


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms11390
Involvement of human ribosomal proteins in nucleolar structure and p53-dependent nucleolar stress.
核小体構造ならびにp53依存的な核小体ストレスにおけるヒトリボソームタンパク質の関与

Abstract
核小体は強力な疾患バイオマーカーであり、癌治療の標的である

リボソームの生合成は核小体で始まり、ほとんどのリボソーム (r-) タンパク質/ribosomal (r-) proteinsは前駆体rRNAへと組み立てられる

今回我々は、ヒトの80個のr-タンパク質それぞれを欠乏させると核小体の構造にどのように影響するのかを体系的systematicallyに調査し、
加えてプレ-rRNAのプロセシング、成熟したrRNAの集積、p53の安定状態レベルに対する影響も調べた

我々が開発した定性的かつ定量的に核小体の形態/構造morphologyの変化を正常なものと識別するための画像処理プログラムを使った分析の結果、
特にuL5 (以前formerlyはRPL11と呼ばれていた) と uL18 (RPL5) が核小体の完全性に最も強く寄与することを我々は発見した
それらは5S rRNAと共に、組み立て後期の60Sサブユニットの中央隆起central protuberanceを形成し、
Hdm2を捕らえることでp53を安定させる因子として働く

他にp53の恒常性に寄与する主な因子としては、厳密に後期に組み立てられるstrictly late-assembling大サブユニットのr-タンパク質もそうであり、これも核小体構造に必要である

核小体の構造維持ならびにp53安定状態レベルの維持に特に寄与するr-タンパク質を明らかにしたことは、細胞と癌生物学の基礎的な側面への洞察をもたらす



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/fee0262154c9e36d6e756c6d68235371
核小体低分子RNA/small nucleolar RNA(SNORA)のSNORA42は結腸直腸癌の進行を予測する
 


治療法の組合せが膵癌患者の生存を加速する

2016-06-05 06:06:56 | 癌の治療法
Chemo, radiation, surgery combo boosts survival for pancreatic cancer patients

May 24, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160524163803.htm



膵癌患者の約3分の1で腫瘍は膵臓の周囲まで成長し、重要な血管を取り囲んでいる
一般通念conventional wisdomとしてそのような状態の腫瘍を取り除く手術が選択肢になることはまれで、寿命の見込みは数ヶ月であると考えられてきた

メイヨークリニックの腫瘍学者や胃腸と血管の外科医を中心としたチームは、これらの患者の多くが実は手術の候補であることを明らかにした
メイヨーでは治療計画protocolを微調整してきており、2つの研究で生存が数年まで延長されている
この研究結果はサンディエゴで開かれているPancreas Club(膵臓クラブ)とSociety for Surgery of the Alimentary Tract(SSAT; 消化管外科学会)の年次総会で発表される

「我々は決定的な変革revolutionを目にしている」
メイヨークリニック(ミネソタ州ロチェスター)の胃腸外科腫瘍学者/gastrointestinal surgical oncologistであるMark Truty, M.D.は言う
彼は一方の研究発表では要旨abstractの筆頭著者first authorであり、もう一つの方では首席著者senior authorである

「この結果の多くは、化学療法薬の改善と、そしていわゆる『集学的治療/multimodal therapy』に関連がある
集学的治療とはこの場合、化学療法と放射線療法を実施して、その後thenに積極的aggressiveな手術をするというものだ
今や我々は、これまで治療の選択肢がまったくないと言われてきた患者に、これらの治療を提供することができるかもしれない」

アメリカでは毎年約5万人が膵臓癌と診断され、診断後に少なくとも5年間生存する患者はわずかに7パーセントでしかなかった
この癌は症状が現れる前に広がる傾向があるため、手術で完全に切除するclear-cut選択が可能なぐらい十分早く診断されるのは患者の約15パーセントに過ぎない
患者の約半分は診断されるまでに癌が体中に広がっていて、手術の可能性は排除されるrule out

患者の3分の1では癌は体中に広がってはいないが、膵臓の周囲と、そして動脈と静脈の周囲まで成長している
数十年もの間、そのような患者のほとんどで手術は危険過ぎる上に実施しても効果がないと考えられていた
メイヨーの研究は、これらの患者の治療の転換transformationを歴史に刻むchronicleことになる


消化管外科学会(SSAT)年次総会の発表で研究者は、動脈の除去と再建reconstructionの手術を受けたステージ3患者の間で過去25年間の結果を分析した
このグループの過去5年で実施された手術のほとんどは、改善された化学療法と放射線療法の出現以降のものだった

これらの手術は動脈の除去と再建を必要としない手術よりもリスクが高いにもかかわらず、化学療法と放射線療法の後にそのような積極的aggressiveな手術を受けた患者には、著しくsignificantly長期の生存アドバンテージが存在するようだった
初めに化学療法または放射線療法を受けずに手術を受けた患者は長期的にはうまくいかず、一方で化学療法と放射線療法の両方または片方を手術の前に受けた患者は著しくsignificantly長期にわたって成功していたdid well
短期的な結果を調べると、合併症complicationの割合は時が経つにつれて低下することが明らかになった

Trutyは言う
「全般的に見てall in all、この分析結果は、典型的には手術されなかったであろうこれらの患者は、適切な計画protocolと治療順序sequenceによって短期的にも長期的にも良い結果になりうる可能性を示す」


膵臓クラブミーティングで発表される研究では、腫瘍が血管を包んでいてinvolve、かつ化学療法・放射線療法・積極的手術aggressive surgeryの特定specificの計画protocolを実施したステージ3患者に関する最新modernの手術結果を分析した

現在80パーセントの患者がメイヨーの計画protocolを完了go throughしてデータがレビューに利用可能である

この研究では、患者が計画protocolを完了した後の生存期間中央値/median survival time(MST)は4年に届こうとしていることが明らかになった
これは手術を受けない患者のそれと比較して約4倍の数値である


うまくいったdo well患者は次のような人たちである
・手術の前に、より多くの化学療法を受けた患者
・CA19-9という特定の腫瘍マーカーが化学療法後に正常値まで戻った患者
・腫瘍の除去後に分析を受けた際、癌が最低限しか残っていないことが判明した患者

また、この研究では、化学療法後で手術前のCTスキャンでは患者の大多数で腫瘍が縮小を示さなかったが、腫瘍が手術で取り除かれると、癌のほとんどが死んでいたことが判明した


「我々はこの分析データがアメリカ全てにすぐにnow広まることを望んでいる
これらの患者をどのようにして治療するのか、そしてこの複合的な施術が有効な患者をどのようにして選ぶのかに関するロードマップを人々/国民peopleが持つことになるだろう」
Trutyは言う
彼は患者たちに楽観的意識を感じて欲しいと期待している
選択肢は存在するのだ、と

「全ての人がこのような大きな手術や、化学療法と放射線療法も含めた長い治療計画に参加しようと望むわけではない
しかし今や彼らは利用可能な選択肢を持っており、これが有益なものなのかどうかについて知識を基にそのような決断を下す/make that educated decisionことができる」

「これまでずっと無視されてきたかなりの数の患者にとって、我々は小さいながらもさらなる希望をもたらす」


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