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IDHの変異がゲノムの折りたたみを失敗させる

2016-01-15 06:06:06 | 
Genome misfolding unearthed as new path to cancer

Isocitrate dehydrogenase mutations disrupt how the genome folds, bringing together disparate genes, regulatory controls to spur cancer growth

December 23, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151223221528.htm

ブロード研究所とマサチューセッツ総合病院の研究者は、その画期的な研究で癌の根底にある全くcompletely新しい生物学的メカニズムを明らかにする
研究チームはイソクエン酸脱水素酵素/isocitrate dehydrogenase (IDH) の遺伝子に変異を持つ脳腫瘍を研究し、ゲノムがどのようにして自分自身を折りたたむのかに関する指示instructionsにいくつかの異変unusual changesを発見した

それらの変化はインスレーターinsulatorというゲノムの重要な部分を標的にする
インスレーターは、ある領域の遺伝子がその隣の領域にあるプロモーター(遺伝子のコントロールスイッチ)や遺伝子と相互作用しないよう物理的に妨害するDNA配列である

※insulator: 絶縁/隔離、インスレーター
※insulate: 絶縁/隔離する

IDHが変異した腫瘍でインスレーターに異常が起きるrun amokと、強力な成長因子の遺伝子が『常にオンになっている遺伝子スイッチ』の制御に影響されるようになり、癌を促進する強力なコンビネーションを形成する

Nature誌のオンライン先行出版号advance online issueで12月23日に発表されるこの研究結果は、癌の大部分に共通するプロセスを明らかにするもので、他のタイプの癌も促進するようである

「これは癌を引き起こすメカニズムとして全くtotally新しいものであり、
我々はこれが脳腫瘍だけでなく他のタイプの癌にも当てはまるhold trueと考えている」
ブロード研究所の一員であり、マサチューセッツ総合病院では病理学の教授でもある首席著者のBradley Bernsteinは言う

「癌を引き起こす遺伝子cancer-causing genesがそのDNA配列の変化によって異常に活性化されうることは、既に十分に立証されている
しかし今回の場合、我々はゲノムがどのようにして折りたたまれるのかが変化することにより癌を引き起こす遺伝子のスイッチが入ることを発見した」


ヒトのゲノムを端から端まで伸ばすと約6フィート半になる
ゲノムは別々の異なる染色体chromosomesから構成されるが、ゲノムのそれぞれは三次元で一緒になって複雑に入り組んでintricately折り重なっているfold
そうした折りたたみによって長大なゲノムは顕微鏡でしか見えないような細胞の領域confineの中にコンパクトに収まっているfit compactlyと現在では考えられている

これらのゲノムの折りたたみfoldsは、単にゲノムを詰め込むためのパッケージングではないmore than mere packaging
折りたたみは『結んだ靴ひもtied shoelace』のような一連の物理的なループから構成され、
遠くはなれた遺伝子と遺伝子制御スイッチを非常に近い場所へと集める
合計およそ1万個のこのようなループを形成することにより、ゲノムはこの形態を利用して機能を調節する

「ゲノムの機能的なユニットfunctional unitは染色体ではなく、遺伝子でさえない
むしろこれらの『ループ・ドメイン/loop domain』であることがだんだん明らかになってきている
ループ・ドメインは物理的に分かれているため、隣り合ったループ・ドメインから絶縁insulatedされている」
Bernsteinは言う

しかし、Bernsteinの研究グループはこの高次構造を形成するゲノムの詰め込みhigher-order packing of the genomeの研究を開始せず、
代わりに脳腫瘍の一種である神経膠腫gliomaを、より悪性のタイプである膠芽腫glioblastomaも含めて、より深く分子的に理解しようと追求を始めた
過去二十年間これら不治の悪性腫瘍の治療での進歩は比較的小さいものだったが、Bernsteinたちはこの腫瘍の生物学的な性質に明らかにするため、The Cancer Genome Atlas (TCGA) などの最近のがんゲノムプロジェクトから得られた膨大な量のデータをしらみつぶしに調べたcomb
分析の結果、彼らはIDHが変異した腫瘍に異常な傾向を検出した
成長因子の一つであるPDGFRA遺伝子のスイッチがオンになると、遠く離れたFIP1L1という遺伝子もオンだった
そしてPDGFRAがオフになるとFIP1L1もオフだった

※PDGFRA: Platelet-Derived Growth Factor Receptor, Alpha Polypeptide(血小板由来成長因子アルファポリペプチド)
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=PDGFRA

※FIP1L1: Factor Interacting With PAPOLA And CPSF1(PAPOLA・CPSF1相互作用因子)
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=FIP1L1
>この遺伝子はCPSF(cleavage and polyadenylation specificity factor)複合体のサブユニットをコードする。CPSFはmRNA前駆体の3'末端をポリアデニル化(ポリA化)する
>この遺伝子は酵母のFip1(factor interacting with PAP)のホモログであり、pre-mRNAのUリッチな配列に結合して、ポリAポリメラーゼ(poly(A) polymerase/PAP)の活性を刺激する

「これは本当に興味深かった
なぜならこのような遺伝子の発現シグネチャーsignatureは他の状況contextsでは見られなかったからだ
つまり、IDHが変異していない神経膠腫では見られなかった」
Bernsteinは言う

このシグネチャーsignatureを目立たせたのは、問題の二つの遺伝子が異なるゲノムのループに存在するということであり、それらのループはインスレーターによって分かれている
結んだ靴ひもtied shoelaceのループが中心の結び目に集まるのとちょうど同じように、ゲノムの二つのインスレーターが互いに結合してループを形成する
これらのインスレーターは、CTCF結合箇所/CTCF binding siteのようなゲノムの特定の領域に結合する複数のタンパク質の作用を通じて交わるjoin together

※CTCF: CCCTC-binding factorの略。このタンパク質はインスレーターinsulatorに結合する

Bernsteinと研究チームは、この奇妙な現象が
他の多くのCTCF結合箇所と遺伝子ペアを含めてゲノム全体に見られることを発見して驚いた
このことは、IDHが変異した腫瘍では全体的にゲノムの絶縁insulationが妨害されていることを示唆する
しかし、これがどのようにして生じ、そしてIDHはどんな役割を演じているのか?


IDH遺伝子の変異は、大規模な腫瘍ゲノムシーケンシングから生まれた初期のサクセス・ストーリーの一つを示す
歴史的にIDH遺伝子は平凡run-of-the-millな『ハウスキーピング遺伝子/housekeeping gene』であると考えられており、癌のドライバではないように思われた
これは癌ゲノムのシステマティックな探求を通じて発見したいと科学者が望んだ、まさに予想もしなかった類の発見だった

数年があっという間に経ったがfast forward a few years、IDHが変異した腫瘍への生物学的な理解はほとんど進まないままである
IDH遺伝子が変異すると有害な代謝産物を生じる酵素が作られ、それが様々なタンパク質に干渉する
その代謝産物のどれが癌に関係があるのかは正確には不明だが、わかっているのはIDHが変異した腫瘍のDNAが修飾され、メチル基という化学的なタグtagの数が異常に多いということである
この過剰なメチル化の重要性はまだ明らかになっていない

「IDHが変異した神経膠腫で我々が観察したゲノム全体の絶縁insulationの欠陥を基盤にして、我々はこれらのIDHパズルのピースを一箇所に組み立てるput togetherためのやり方を探した」

Bernsteinたちはゲノムスケールでのアプローチを組み合わせることで
IDHが変異した神経膠腫の過剰なメチル化がCTCF結合箇所に局在し、インスレーターの機能を妨害することを明らかにした

彼らの以前の結果を合わせて考えると、
通常はループドメインを分離するように閉じ込められて滅多に相互作用しないPDGFRAとFIP1L1が
IDHが変異した腫瘍では密接に関係するようになることを今回の研究は示す
それは靴ひもをほどいて新しい形/相対的配置configurationへ結び直すのに似ている
この異常な関係は、間に存在interveningするCTCF結合箇所が過剰にメチル化した結果として生じる

「白血病や結腸癌、膀胱癌など他の様々な腫瘍がIDH遺伝子の変異を持つ
この研究結果が神経膠腫を越えてどれぐらい一般的に適用されるかを調べるのは非常に興味深いことだ」

IDH変異の神経膠腫や他の癌のさらなる研究を通じてこれらの初期の研究結果を広げる必要があるものの、それらは潜在的な治療アプローチに向けたいくつかの興味深い洞察を提供する
この治療アプローチとしては現在臨床で開発中のIDH阻害剤や、関連するDNAメチル化を減少させたりその下流の癌遺伝子を標的にする薬剤が考えられる

「基礎科学はしばしばトランスレーショナル科学や臨床科学とは別々の容器に入れられる」
Bernsteinは言う

「しかし今回の研究は、非常に基礎的で機構的な科学でありつつ、臨床的な状況でなされた例だ
これは我々にヒトの疾患の基礎について注目すべき何かを教えているのである」


http://dx.doi.org/10.1038/nature16490
Insulator dysfunction and oncogene activation in IDH mutant gliomas.
IDH変異神経膠腫におけるインスレーター機能不全と癌遺伝子活性化

機能獲得型gain-of-functionのIDH変異は、神経膠腫の臨床的分類ならびに予後の分類の大部分を定義するイベントを開始する (1, 2.
突然変異体のIDHタンパク質は2-ヒドロキシグルタル酸/2-hydroxyglutarate(2-HG)という新たな癌代謝物onco-metaboliteを作り出し、
TETファミリーの5′-メチルシトシンヒドロキシラーゼを含む鉄依存性ヒドロキシラーゼhydroxylaseに干渉する (3, 4, 5, 6, 7.
TETはDNAメチル化の除去において鍵となる段階を触媒する酵素である (8, 9.

したがって、IDH変異神経膠腫は、CpGアイランドメチル化表現型/CpG island methylator phenotype (G-CIMP) を示すが (10, 11、
この変化したエピジェネティック状態の機能的な重要性は不明のままである


我々はヒトIDH突然変異体神経膠腫がコヒーシンcohesinならびにCCCTC-binding factor (CTCF) の結合箇所で過剰メチル化を示し、
メチル化に影響されやすいこのインスレーターinsulatorタンパク質の結合を損なうことをここに示す

CTCF結合の減少は、トポロジカルなドメインと異常な遺伝子活性化との間の絶縁insulationの喪失と関連する

我々は特に
ドメイン境界boundaryでのCTCFの喪失により
構成的エンハンサーが
神経膠腫の癌遺伝子として著名prominentな受容体型チロシンキナーゼ遺伝子のPDGFRAと異常な相互作用が可能になることを実証する

※constitutive: 構成的な。常に活性がある

IDH突然変異体の神経膠腫スフィアgliomasphereに脱メチル化剤で処理すると、部分的にインスレーター機能が回復し、PDGFRAが下方調節される
反対に、IDH野生型の神経膠腫スフィアにおいて、CRISPRを介するCTCFモチーフの妨害はPDGFRAを上方調節し、増殖を増大させる

我々の研究は
IDH変異が染色体のトポロジーを妨害し、癌遺伝子の発現を誘導する異常な調節相互作用を許すことにより
神経膠腫の発癌gliomagenesis/glioma tumorigenesisを促進することを示唆する


http://www.nature.com/nature/journal/v529/n7584/fig_tab/nature16490_F4.html
Figure 4: Boundary methylation and CTCF occupancy affect PDGFRA expression and proliferation.
境界メチル化とCTCF占有が、PDGFRA発現と増殖に影響する

※meCpG は、メチル化したCpGを表す

a, PDGFRA遺伝子座locusにおけるクロマチンループと境界を表す図解schematic

(左)IDH野生型の細胞では、完全な境界boundaryが癌遺伝子を絶縁/隔離するinsulate
CTCFモチーフを取り除くことによる境界の破綻は、癌遺伝子を活性化させるだろうshould

(右)IDH突然変異体の細胞では、過剰なメチル化がCTCFを妨害し、境界を損なって、エンハンサーが癌遺伝子を活性化できるようにする
脱メチル化はCTCFを介する絶縁/隔離insulationを回復するだろうshoul



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b9a5d42e4bba4e00fb26777d33a8b188
ジャンクDNAと思われていたゲノムの多型はDNAの環状化によりゲノムの遠い箇所と相互作用して結腸癌などのリスクにつながる
SNPのrs6983267は下流のMYCと相互作用し、さらにMYCと50万塩基以上離れているCCAT1を上流の調節因子として同定した



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http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151214130033.htm
変異したIDH1の活性を阻害すると2-HGは減少したが、細胞の増殖は止まらなかった
分析すると、IDH1阻害によりNAD+が増加していた
NAD+を枯渇させると癌細胞は死んだ

変異したIDH1はNAD+レベルを維持する酵素の発現を低下させ、それによりNAD+を枯渇させることに脆弱になる
変異したIDH1を抑制するとNAD+レベルを維持する酵素の発現は上昇し、NAD+レベルは上昇する

http://dx.doi.org/10.1016/j.ccell.2015.11.006
Extreme Vulnerability of IDH1 Mutant Cancers to NAD Depletion.