機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

酸素が不足すると癌幹細胞が増加する理由

2016-03-31 06:06:44 | 
How cancer stem cells thrive when oxygen is scarce

March 28, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160328100159.htm

ジョンズ・ホプキンズ大学の科学者たちは、今回のヒトの乳癌細胞とマウスを使った研究は低酸素の状態で特定の癌幹細胞がどのようにして育つのかを説明するという
癌幹細胞は化学療法に抵抗し、さらに腫瘍を転移を促進する傾向があり、そのような細胞の増殖は治療成功への主な障害であると考えられている

胚性幹細胞と乳癌幹細胞の両方ともが低酸素状態で増殖が促進され、それはどちらも同じ生化学的なイベントの連鎖を通じてであることが新しい研究から示唆された
これは障害を通り抜けて成功へと向かう道筋を示すだろう

「まだ多くの疑問が残っているが、しかし進行したヒトの乳癌で見られるような酸素の不足した環境が癌幹細胞を育てる最適な条件nurseryとして働くことを今や我々は理解している」
Gregg Semenza, M.D., Ph.D.は言う
彼はジョンズ・ホプキンズ・キンメルがんセンターの一員であり、教授職のC. Michael Armstrong Professor of Medicineでもある

「それは我々に薬剤の標的をいくつかもたらし、ヒトの癌におけるその脅威を低下させる」

研究の概要はPNASのオンライン版で3月21日に発表される



Semenzaによると科学者たちは低酸素の環境が腫瘍の増殖に影響を及ぼすことを長い間知っていたが、進行した腫瘍ではパラドックスparadoxが存在するという
「悪性の癌には酸素が不足して癌細胞が死に絶えるような領域が含まれるが、このような癌の患者は一般に予後が最も悪い
我々の新たな研究結果は低酸素状態が実際には特定の癌幹細胞の増殖を促進し、それは胚性幹細胞が使うのと同じメカニズムを通じてであることを教える」

全ての幹細胞は未成熟な細胞であり、無限に増殖する能力を持つことで知られている
幹細胞からは特定の細胞タイプへと成熟する前駆細胞が生じ、胚が成長する間に人体の組織を形成し、生涯を通じて生体の組織を補充し続ける
しかし腫瘍で見られる癌幹細胞はそれら胚性幹細胞と同じ特性attributeを使い、歪曲twistさせて癌の生存を促して維持する
Semenzaによると、「化学療法は腫瘍内の癌細胞の99パーセント以上を殺すかもしれないが、癌幹細胞というわずかな集団を殺すことには失敗する。この癌幹細胞は後の再発と転移の原因となる」という

「今回の研究ではこれらの細胞の『アキレスのかかと』を見つけようと努力した
もし癌幹細胞の幹細胞状態を捨てさせることができれば、それらはもはや腫瘍を再び増やし続ける力を持たないだろう」


彼らの研究を助けたのは、我々が呼吸する大気には21パーセントの酸素が含まれるのに対して健康な胸部の組織では約9パーセントであり、乳癌の腫瘍内ではわずか1.4パーセントしか酸素が含まれていないという知識だった
最近の研究で低酸素状態がHIF(hypoxia-inducible factor/低酸素誘導因子)というタンパク質ファミリーのレベルを増大させることが示された
HIFは何百という遺伝子のスイッチを入れ、その中にはNANOGという細胞を幹細胞化させる遺伝子が含まれる

 低酸素→HIF→NANOG mRNA↑→幹細胞化

さらに、胚性幹細胞embryonic stem cellの研究からNANOGタンパク質レベルはメチル化という化学プロセスによって低下しうることが明らかにされた
この場合のメチル化はメッセンジャーRNA(mRNA)というタンパク質の前駆体にメチル基を付加するものである
Semenzaによるとこのメチル化はNANOGのmRNAを破壊してタンパク質が作られないようにするという
それは胚性幹細胞に幹細胞状態を放棄abandonさせ、様々なタイプの細胞へと成熟させる

 メチル化─┤NANOG mRNA


癌幹細胞の再生には胚性幹細胞が使うのと同様の一連のイベントが含まれるかどうか、そしてそのプロセスが酸素レベルによって影響を受けるのかを調べるため、Semenzaたちは二種類の乳癌細胞系統の研究に集中した
この系統は低酸素に応じてALKBH5というタンパク質の生産を上昇させ、ALKBH5はmRNAのメチル基を取り除く

(乳癌は細胞の表面上の3つのホルモン受容体の存在を元にカテゴリー化され治療される
彼らが研究した内の一つはエストロゲンとプロゲステロン受容体を示し、もう一つは3つとも示さないトリプルネガティブである)

彼らはNANOGの分析に集中し、低酸素状態がHIFタンパク質の作用を通じてNANOGのmRNAレベルを増大させることを明らかにした
HIFはALKBH5遺伝子のスイッチを入れ、ALKBH5はメチル化を低下させてNANOGのmRNAが破壊されないようにした

細胞がALKBH5を作れないように妨害するとNANOGレベルは低下し、癌幹細胞の数は減少した
研究者が細胞の遺伝子を操作してALKBH5レベルを増大させると細胞を低酸素に晒さなくてもNANOGのmRNAのメチル化は低下し、乳癌の癌幹細胞の数は増加した

最後に彼らはトリプルネガティブ乳癌の細胞1000個をマウス胸部の脂肪パッドfat padに注入し、マウス版の乳癌を形成させた
手を加えない細胞は注入した7匹のマウス全てに腫瘍を形成したが、
ALKBH5を持たないようにした細胞を使うと14匹中6匹、つまり43パーセントのマウスにしか腫瘍が形成されなかった

「それにより我々はALKBH5が癌幹細胞の存続と腫瘍形成能の維持を助けることを確認した」
Semenzaは言う


Semenzaのチームはこれからもマウスの研究を継続し、転移も低酸素/ALKBH5/NANOGの関係によって影響を受けるのかどうかを研究するつもりだという
彼らはこの関係に他のどんなタンパク質やmRNAが関与するのかを調べ、また、彼らがテストした癌の細胞系統の中には低酸素に応じて同様のALKBH5レベル増大を示さなかったものがあったのはなぜなのかを研究したいという


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1602883113
Hypoxia induces the breast cancer stem cell phenotype by HIF-dependent and ALKBH5-mediated m6A-demethylation of NANOG mRNA.
低酸素状態はHIF依存的にALKBH5を介してNANOGのmRNAからm6Aを脱メチル化することにより乳癌の幹細胞表現型を誘導する

Significance
NANOGのような多能性ファクターは癌幹細胞の維持と特殊化において重要な役割を演じる
癌幹細胞は原発腫瘍の形成と転移に必須である

今回の研究で我々は乳癌細胞を腫瘍の微小環境の決定的な特徴である低酸素に曝露させると
N6-メチルアデノシン/N6-methyladenosine(m6A)の脱メチル化を誘導してNANOGのmRNAを安定化させ、
それにより乳癌幹細胞(BCSC)表現型が促進されることを報告する

m6Aを脱メチル化するAlkB homolog 5 (ALKBH5) を阻害するか、
低酸素の乳癌細胞でALKBH5遺伝子の転写を活性化するHIF-1α/HIF-2αを阻害することは、
NANOGの発現を低下させてin vivoでBCSCを標的にする効果的な戦略である


Abstract
mRNAのN6-メチルアデノシン (m6A) による修飾は、胚性幹細胞の多分化能pluripotencyの調節に関与する

MDA-MB-231という乳癌細胞におけるALKBH5発現をノックダウンした結果、BCSCの数が減少し、その腫瘍開始能を有意に低下させた



関連記事
https://blog.goo.ne.jp/news-t/e/cce233b5cfcfa9bc5ab09af62ccdcff6
低酸素ならびにアデノシンが多い微小環境でT細胞はA2Aアデノシン受容体を介して阻害される



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/d16ba27c8f39c536b11eafaa6804ec93
脳腫瘍は低酸素でセリンからグリシンへの変換を促進するSHMT2の発現を上昇させてPKM2を抑制し、TCA回路に入るピルビン酸を減少させて酸素の消費を抑える



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/05/150507145325.htm
乳癌細胞は低酸素に曝露するとtRNAの断片を作り、特定のアミノ酸のtRNA断片(グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、チロシン)が多い癌細胞は転移しにくくなる
さらに、この断片を癌細胞に加えると増殖と進行が減少した

http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.02.053
Endogenous tRNA-Derived Fragments Suppress Breast Cancer Progression via YBX1 Displacement
内因性tRNA由来の断片は、YBX1の置き換えにより乳癌の進行を抑制する
 

メラノーマの9割が発現するlncRNA

2016-03-29 06:06:11 | 
Breakthrough in diagnosis of melanoma skin cancer

March 23, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160323151848.htm

ルーヴェン・カトリック大学/Katholieke Universiteit Leuven(KU Leuven)からfromのフランダース・バイオテクノロジー研究所(VIB)の研究者は、ゲント大学(ベルギー)と協力して
悪性のメラノーマとノンコーディングRNAのSAMMSONとの間の注目すべきつながりを明らかにした

※VIB: Flanders Institute for Biotechnology。Flandersは、フランス語でFlandre、フラマン語(ベルギー北部で話されるオランダ語方言)ではVlaanderen。フランダース、フランドル、フランデレン

SAMMSON遺伝子はヒトの悪性メラノーマで特に発現し、印象的なことに悪性皮膚癌の増殖はこの遺伝子に強く依存する
今回の研究結果は皮膚癌の診断と治療の改善へとつながる可能性がある
研究を主導したJean-Christophe Marine教授 (VIB/KU Leuven) とPieter Mestdagh教授 (UGent) は、この結果が一流の科学誌であるNatureに発表されることで大きな騒ぎを引き起こすことが予想されている


ヒトのゲノムを主に占めるのは『ジャンクDNA』、つまりタンパク質をコードしない役立たずのガラクタであると長い間考えられてきた
しかし最近の洞察から実際にはゲノムが多くのノンコーディングRNA/non-coding RNA(タンパク質をコードしないRNA)を作り出し、生物学的なプロセスや疾患において重要な役割を演じることが示されている

Marine教授 (VIB/KU Leuven) とMestdagh教授 (UGent) のラボは現在ノンコーディングRNA遺伝子の癌への寄与について研究しており、中でも彼らが特に興味を持っているのは長鎖タイプのノンコーディングRNA(lncRNA)である


癌におけるlncRNAのスクリーニング
Screening for lncRNA genes in cancer

皮膚癌の発症における特定のlncRNA遺伝子の重要性を評価すべく、VIBラボはゲント大学の小児学部・遺伝医学部medical geneticsと手を組んだ
Pieter Mestdaghが率いるゲントの研究チームが様々なタイプのあらゆる癌で莫大な数のlncRNAの発現について大規模なスクリーニングを実施した結果、
メラノーマ特異的なlncRNAとしてSAMMSONを明らかにした


Pieter Mestdagh (UGent) は言う
「我々の研究では長鎖ノンコーディングRNA遺伝子のSAMMSONがヒトのメラノーマで特に発現し、患者の約10パーセントで重複duplicatedするか増幅amplifiedされていた
そしてSAMMSONはメラニンを作る通常の細胞であるメラノサイトや他の正常な成人組織ではまったく見られなかった
このSAMMSONの独特の発現プロファイルから我々はこの遺伝子がメラノーマの病因において重要な役割を演じているのかもしれないという仮説を立てるに至った」

VIBの研究チームはSAMMSONがヒトの悪性メラノーマ臨床サンプルの90パーセント以上で特に発現しており、良性では発現しないことを確認した
さらに、SAMMSON遺伝子はメラノーマ特異的な転写因子SOX10によって活性化されることも示した


メラノーマのSAMMSONへの依存
Melanoma addiction to SAMMSON

加えて、VIBの科学者たちはメラノーマ細胞がSAMMSONの発現に顕著な依存を示すことを発見した
培養したメラノーマ細胞でSAMMSONの発現を低下させると、メラノーマのタイプに関係なく癌細胞は急速にそして甚だしく死に絶えていったことから『SAMMSONへの依存』という重要な結論に至った

Jean-Christophe Marine (VIB/KU Leuven) は言う
「in vitroとマウス前臨床モデルの両方で、標的を限定するアンチセンス分子を通じてSAMMSONを阻害することによりメラノーマの増殖を劇的に抑制することを我々は示した
重要なことに、癌細胞にエネルギーをもたらすミトコンドリアにSAMMSONはリクルートされることを我々は発見した
これらのアンチセンス分子はSAMMSONの分解を促進することによって活発なミトコンドリアの活力を妨害し、腫瘍の成長を止めた
他の言葉で言えば、SAMMSON依存は明確な弱点であり、
通常の細胞に影響を与えることなく標的治療を通じて戦うことが可能である」


臨床試験に向けた次のステップ
Next steps for clinical trials

SAMMSONがメラノーマ悪性度のバイオマーカーとしてはたらくという仮説をしっかり確認するためにはさらなる研究が必要になるだろう
SAMMSONは良性メラノーマでは発現しないため、その出現はメラノーマの予後を劇的に改善する新たな診断ツールの開発において重要なファクターでありうる

おそらくより重要なことに、ゲント大学、VIB、ルーヴェン・カトリック大学が協力して努力した今回の結果は新しい皮膚癌治療に向けた堅い地盤となる
今回と同じ研究グループがすぐに毒物学的な/中毒の研究を開始する予定であり、現在互いに有益な未来の提携を探るべく様々な工業/産業的な参加者たちindustrial playersと話し合いを始めるところである


http://dx.doi.org/10.1038/nature17161
Melanoma addiction to the long non-coding RNA SAMMSON.

病巣での染色体3p13-3p14の増幅はメラノーマの約10%で生じ、予後の悪さと関連する
メラノーマ特異的な癌遺伝子MITFはこの増幅産物ampliconのepicentreに存在する(1
しかしながら、この増幅産物に存在する他の遺伝子座もまたメラノーマ形成oncogenesisに寄与するのかどうかは明らかではない

今回我々は最近アノテーションされたannotated長鎖非コードRNA/long non-coding RNA(lncRNA)遺伝子のSAMMSONが一致してMITFと共に得られるco-gainedことを示す

加えて、SAMMSONはこの系統特異的な転写因子であるSOX10の標的であり、その発現はヒトのメラノーマの90パーセントで検出可能である

外因的なSAMMSONはクローン原性ポテンシャルclonogenic potentialをトランスにin trans増大させる一方で、SAMMSONのノックダウンは転写的な細胞の状態ならびにBRAF・NRAS・TP53の変異状態に関係なく劇的にメラノーマ細胞の生存能力を低下させる

さらに、SAMMSONを標的にすることはin vitroならびに患者由来の異種移植モデルにおいてMAPKを標的とする治療法に対してメラノーマを感受性にする

機構的に見ると、SAMMSONはミトコンドリアの恒常性と代謝のマスターレギュレーターであるp32と相互作用し、そのミトコンドリアを標的にする機能ならびに腫瘍形成性の機能を増大させる

我々の結果は癌遺伝子SAMMSONへの系統的な依存のサイレンシングが、必須vitalのミトコンドリア機能を癌細胞特異的な方法で中断disruptさせることを示す
したがってこのサイレンシングは非常に有効かつ組織限定的な抗メラノーマ治療応答をもたらすと期待される



http://dx.doi.org/10.1038/nature17161
References

9.Amamoto, R. et al.
Mitochondrial p32/C1QBP is highly expressed in prostate cancer and is associated with shorter prostate-specific antigen relapse time after radical prostatectomy.
ミトコンドリアp32/C1QBPは前立腺癌で発現が高く、根治的な前立腺切除術後のPSA再発時間の短さと関連する
Cancer Sci. 102, 639–647 (2011)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21205079

10.Fogal, V. et al.
Mitochondrial p32 protein is a critical regulator of tumor metabolism via maintenance of oxidative phosphorylation.
ミトコンドリアp32タンパク質は腫瘍代謝の決定的な調節因子であり、酸化的リン酸化の維持を仲介する
Mol. Cell. Biol. 30, 1303–1318 (2010)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20100866

11.Fogal, V. et al.
Mitochondrial p32 is upregulated in Myc expressing brain cancers and mediates glutamine addiction.
ミトコンドリアp32はMycを発現する脳腫瘍で上方調節され、グルタミン依存を仲介する
Oncotarget 6, 1157–1170 (2015)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20100866

12.Fogal, V., Zhang, L., Krajewski, S. & Ruoslahti, E.
Mitochondrial/cell-surface protein p32/gC1qR as a molecular target in tumor cells and tumor stroma.
腫瘍細胞と腫瘍ストロマにおける分子標的としてのミトコンドリア/細胞表面タンパク質p32/gC1qR
Cancer Res. 68, 7210–7218 (2008)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18757437

13.Muta, T., Kang, D., Kitajima, S., Fujiwara, T. & Hamasaki, N.
p32 protein, a splicing factor 2-associated protein, is localized in mitochondrial matrix and is functionally important in maintaining oxidative phosphorylation.
p32タンパク質/スプライシング因子2関連タンパク質はミトコンドリアマトリックスに局在し、酸化的リン酸化の維持において機能的に重要である
J. Biol. Chem. 272, 24363–24370 (1997)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9305894


14.Yagi, M. et al.
p32/gC1qR is indispensable for fetal development and mitochondrial translation: importance of its RNA-binding ability.
p32/gC1qRは胎児の発達ならびにミトコンドリア翻訳に必須である: そのRNA結合能の重要性
Nucleic Acids Res. 40, 9717–9737 (2012)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22904065


15.Hu, M. et al.
p32 protein levels are integral to mitochondrial and endoplasmic reticulum morphology, cell metabolism and survival.
p32タンパク質レベルはミトコンドリアならびにERの形態/構造、細胞の代謝と生存にとって必須である
Biochem. J. 453, 381–391 (2013)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23692256


16.Matos, P. et al.
A role for the mitochondrial-associated protein p32 in regulation of trophoblast proliferation.
栄養膜増殖の調節におけるミトコンドリア関連タンパク質p32の役割
Mol. Hum. Reprod. 20, 745–755 (2014)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24874554


17.Li, Y., Wan, O. W., Xie, W. & Chung, K. K. K.
p32 regulates mitochondrial morphology and dynamics through parkin.
p32はミトコンドリアの形態/構造ならびに動態を調節するが、それはパーキンを通じてである
p32はE3ユビキチンリガーゼのパーキンをオートファジーにより分解させる
Neuroscience 199, 346–358 (2011)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22008525


18.Jiao, H. et al.
Chaperone-like protein p32 regulates ULK1 stability and autophagy.
シャペロン様のタンパク質p32はULK1安定性とオートファジーを調節する
Cell Death Differ. 22, 1812–1823 (2015)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25909887



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160229221011.htm
メラノーマはDNMT3b/メチル化によりmTORC2/Rictorを調節して増殖を促進する
DNMT3b↑─┤miR-196b↓─┤mTORC2/Rictor↑→増殖↑

http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.02.010
DNMT3b Modulates Melanoma Growth by Controlling Levels of mTORC2 Component RICTOR

 

遺伝性ALSで免疫系を標的にする

2016-03-28 06:06:13 | 
Researchers find that immune cells play unexpected role in Lou Gehrig's disease

Findings raise hope for new ALS treatments that target immune cell dysfunction

March 17, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160317145954.htm

シーダーズ・サイナイメディカルセンター/Cedars-Sinai Medical Centerの研究者たちは、脳内の免疫細胞が『筋萎縮性側索硬化症/amyotrophic lateral sclerosis(ALS)』の発症に直接関与することを明らかにした
この発見はこの徐々に麻痺して死に至る神経変性疾患を標的とする新しい治療法への希望をもたらす
この研究成果はScience誌で3月18日に発表された


この研究ではALSならびに前頭側頭型認知症/frontotemporal dementia(FTD)を引き起こす遺伝子の突然変異に焦点を当てた
FTDはもう一つの神経疾患であり、典型的な特徴として性格personalityや行動behavior、言葉遣いlanguageが変化する

研究者はC9orf72という遺伝子を持たない二系統のマウスを開発し、それが脳内の免疫系の機能にとって重要であることを発見した
この遺伝子を持たないマウスはALSを発症せず、意外なことに免疫系の異常を生じた
免疫細胞の内部の構造の一つであるリソソームは通常細胞内の望ましくないものを処理しているが、C9orf72遺伝子を持たないマウスの免疫細胞ではリソソームが適切に機能するのを止めた


「C9orf72遺伝子は脳内の免疫細胞が適切に機能するために決定的に重要である
脳内の免疫系は単純に損傷に応答するよりむしろ積極的に疾患に関与していることを支持するエビデンスが増えつつあるが、
今回の研究結果もそれに加わることになる」
首席著者のRobert H. Baloh, MD, PhDは言う
彼はシーダーズ・サイナイで神経学部神経筋医学とALS学際的プログラムのディレクターである

「この研究結果は、ALSやアルツハイマー病のような病態においてどのようにして脳細胞が失われるのかについての我々の考え方を根本的に変化させるパラダイムシフトをさらに継続させるものだ」


徐々に脳と脊髄の神経細胞が死んでいくALSは最も一般的な神経筋疾患の一つである
ALS協会によるとアメリカでは毎年5600人以上が新たにALSと診断され、そのうち約10パーセントがC9orf72遺伝子の突然変異によって引き起こされる
ある研究ではアメリカ人のおよそ50万人がこの突然変異のキャリアであるという

Balohたちは彼らの発見が、特にC9orf72遺伝子の突然変異を持つ患者の免疫細胞の機能不全を標的とする新しい治療法への道を示す可能性があると述べる
また、C9orf72遺伝子のレベル低下を標的とする薬剤には慎重にアプローチすべきであると彼は言う
なぜならそれがさらに免疫系を混乱disruptさせる可能性があるからだ


研究に寄与したproject scientistであるJacqueline Gire O'Rourke, PhDは、今回の結果がC9orf72突然変異のキャリアとそれ以外のALS患者との間の差異を理解するのを助けるだろうという

「我々の研究は、免疫を調整する薬剤に対してC9orf72遺伝子キャリアと他のALS患者では反応が異なることさえあるかもしれないという可能性を示唆する」


http://dx.doi.org/10.1126/science.aaf1064
C9orf72 is required for proper macrophage and microglial function in mice.
C9orf72はマウスのマクロファージとミクログリアの適切な機能に必須である


神経変性と免疫細胞とのつながり
Linking neurodegeneration and immune cells

C9orf72の繰り返し配列の伸長expansionはALSの主な遺伝的原因である
この伸長はC9orf72の発現を低下させるものの、ほとんどの研究はニューロン内部での有害なRNAとタンパク質に焦点を当ててきた

O'RourkeたちはC9orf72が意外なことに自然免疫細胞に関与することを明らかにした
C9orf72を持たないマウスではマクロファージとミクログリアの機能不全を起こし、加齢と関連する神経の炎症が生じた

この結果はニューロンの有害な副産物byproductがC9orf72発現低下によるミクログリアの機能不全と組み合わさって共に神経変性を促進するという『二重効果/dual-effect』が疾患のメカニズムであるという可能性をもたらす


Abstract
C9orf72遺伝子の非コード部分に存在するGGGGCCという6つのヌクレオチドの繰り返しの伸長は、ALSならびにFTDの最も一般的な遺伝的原因である
伸長のキャリアではC9orf72の発現低下が見られることから、その機能喪失が疾患に関与することを示唆する

我々はC9orf72オーソローグortholog(相同蛋白質)の3110043O21Rikを全ての組織で持たない二つの独立したマウス系統が正常に成長して運動ニューロン疾患を発症せず加齢することを発見した

代わりにC9orf72ヌル・マウスは進行性の脾臓巨大症/脾腫splenomegalyならびにリンパ節症lymphadenopathyを発症し、貪り食うengorgedマクロファージ様の細胞が蓄積した


C9orf72の発現は骨髄系細胞myeloid cellで最も高く、C9orf72の喪失はマクロファージとミクログリアにおけるリソソーム蓄積ならびに免疫応答の変化という結果になった
加齢とともにC9orf72突然変異ALSに似た神経炎症age-related neuroinflammationを伴い、ヒトの散発性sporadicのALS患者の組織とは異なっていた

したがって、C9orf72は骨髄系細胞の正常な機能に必要であり、ミクログリアの機能の変化はC9orf72伸長キャリアにおける神経変性の一因である可能性がある



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/7acfb1a2f4e4c93bf185698ef5d38fe4
C9ORF72遺伝子の突然変異から生じる有害RNAを阻害する化合物が開発される



関連サイト
http://www.als.gr.jp/staff/document/kiso/kiso_35.html
C9ORF72反復配列の異常伸長の頻度は、臨床的FTD患者では、孤発性FTD203例中6例(3.0%)、家族性FTD171例中20例(11.7%)、
臨床的ALS患者では、孤発性ALS195例中8例(4.1%)、家族性ALS34例中8例(23.5%)で見られる。
 

MEK阻害剤はT細胞の免疫応答を妨害する

2016-03-26 06:06:18 | 癌の治療法
Many targeted cancer therapies suppress T cell immune responses

New 'superagonist' can help overcome these immunosuppressive effects while preserving the powerful anti-cancer benefits of these drugs

March 22, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160322120045.htm


(José Conejo-Garcia, M.D., Ph.D.

Credit: The Wistar Institute)

癌への標的治療targeted therapiesは多くの場合化学療法や手術よりも好まれるが、その理由は標的治療が腫瘍を促進する変異を持つ特定の癌細胞を攻撃して殺す一方で、そのような変異を持たない通常の健康な細胞は残すからである
臨床試験では標的治療の腫瘍細胞への効果を調べることが強く強調されてきたが、しかしそれが免疫系に与える影響はまったく調査されてこなかった

しかしながら、ウィスター研究所の新たな研究により標的治療の多くはT細胞の活性を抑制することが実証された
T細胞は本来腫瘍と戦う細胞である

さらに、FDAによって承認された標的治療であるトラメチニブ/trametinibとシグナル伝達タンパク質『スーパーアゴニストsuperagonist』とを組み合わせることで、T細胞の活性を刺激しつつ癌を阻止する能力はそのまま保たれることを明らかにした


「腫瘍細胞に標的治療を使うと免疫系にどのような結果が起きるのか、我々は知りたかった」
首席著者のJosé R. Conejo-Garcia, M.D., Ph.D.は言う
彼はウィスター研究所の腫瘍微小環境・転移プログラムで教授でありプログラムリーダーでもある

「もし我々が標的治療と免疫療法の組み合わせまたは逐次的投与の効果を最大化するつもりならば、これらの薬が腫瘍細胞と白血球との間の相互作用に与える影響を理解しなければならない
白血球は免疫原性immunogenicの腫瘍細胞の増殖をコントロールするために必須の免疫細胞である」


Conejo-Garciaたちは様々な小分子の阻害剤41種類とそれがヒトT細胞に与える影響を調べた
T細胞は病原体や癌細胞から体を守る細胞である
そして研究でテストしたあらゆるevery標的治療がことごとくT細胞を阻害し、しかも癌細胞よりも強力potentlyに妨害した
研究者が注目したのはメラノーマの全患者のほぼ半数に見られるBRAFV600E/K突然変異を持つ転移性メラノーマの治療用としてFDAに承認されたトラメチニブ(メキニストMekinist)というMEK1/2阻害剤で、これが特に強くT細胞の活性を阻害した

研究者たちはもしサイトカインという細胞シグナル伝達タンパク質が免疫細胞へのシグナルだけを促進できればトラメチニブのネガティブな影響からT細胞を解放できると推測し、そして実際に一般に投与されるサイトカインがT細胞の活性を保護することを示した
中でもインターロイキン-15(IL-15)がトラメチニブと共に使うことが適切なサイトカインであることを彼らは明らかにした
IL-15はエフェクターT細胞のシグナル伝達活動をより強力に促進する一方で、エフェクターT細胞を抑制する可能性がある制御性T細胞の集団は増殖させなかった

Conejo-Garciaたちは現在第一相/第二相の臨床試験中であるIL-15の『スーパーアゴニストsuperagonist』、ALT-803を使ってトラメチニブによって抑制されたT細胞を解放rescueできるかどうかを調べた
彼らがin vivoでの効果をテストしたところ、T細胞の増殖proliferationはもはやトラメチニブによって影響を受けなかった
この結果はトラメチニブがT細胞を阻害する影響とIL-15がこの抑制を克服する能力、その両方を立証するものだった

※IL-15スーパーアゴニスト: IL-15と可溶性IL-15Rαを組み合わせた複合体を指す
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18458113
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26216888
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26567920


「トラメチニブのようなMEK阻害剤は様々な腫瘍で現在試験中であり、我々はこれらの薬剤がT細胞に与える影響を制御する効果的な方法を実証した
T細胞は癌との戦いでさらなる助けとなりうる細胞である」
Conejo-Garciaのラボでpredoctoral traineeであり筆頭著者のMichael Allegrezzaは言う

「我々は標的治療が腫瘍微小環境に与える影響を研究し続けたいと考えている
我々がエフェクターT細胞で観察したような影響が他の免疫細胞にも見られるかどうかを調べる計画だ」

ウィスター研究所のビジネス開発チームは現在MEK阻害剤とIL-15スーパーアゴニストの組み合わせから得られる臨床的な利益を実現すべく、開発パートナーを積極的に探しているところである


http://dx.doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-15-2808
IL-15 AGONISTS OVERCOME THE IMMUNOSUPPRESSIVE EFFECTS OF MEK INHIBITORS.
IL-15アゴニストはMEK阻害剤の免疫抑制的効果を克服する

Abstract
癌の治療法として開発されている多くのシグナル伝達阻害剤は腫瘍を攻撃する白血球の適切な機能にとっても重要な経路を標的とするため、その治療効果を弱める可能性がある

今回我々は複数のシグナル伝達経路を標的とするほとんどの阻害剤が、癌細胞に有効な容量で特に強い負の影響をT細胞の活性化に与えることを示す
我々は特に最近承認されたMEK阻害剤がT細胞に対してin vitroで強力な抑制効果を示すことを発見した

しかしながら、この影響は癌患者に投与することが可能な特定のサイトカインによって弱められる可能性がある

T細胞選択的にPI3Kを活性化させるIL-15スーパーアゴニストが現在臨床的に利用可能だが、これが特にMEK阻害剤との相乗効果をin vivoで発揮し、強力かつ永続的durableな抗腫瘍応答を引き出す
その応答には腫瘍の再負荷re-challengeに対する抵抗性をもたらすというワクチンのような効果も含まれる

我々の研究はMEK阻害剤がT細胞に与える抑制的な影響を克服するための臨床的にすぐにも使用可能actionableなアプローチを明らかにし、加えてin vivoでの望ましい免疫効果を妨害するシグナル伝達阻害剤による欠陥をどのようにして両立reconcileさせるかを実証するillustrate



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c13f9b05824cf1ff4aa3e1996a2f9912
エイズウイルスの薬でメラノーマの薬剤耐性を回避する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150317122801.htm
BRAF V600E/KメラノーマのBRAF阻害剤への抵抗性と、マクロファージとの関連
マクロファージはメラノーマで最も多く見られる炎症性細胞で、その存在は患者の予後と全てのステージで逆相関する
BRAF阻害剤はマクロファージのMAPKを活性化してVEGFを分泌させ、これがメラノーマのMAPKを活性化して増殖を促進する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/05/150528123853.htm
メラノーマのBRAF阻害剤への抵抗性はJAK1経路による
BRAF抵抗性のメラノーマでJAK1はEGFRの発現を増大させる
JAK1の増大は、JAK1を調節するユビキチンリガーゼRNF125のレベル低下による



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141211124530.htm
メラノーマはBRAF阻害剤やMEK阻害剤に対して抵抗性が生じることが多いが、
その原因は、チロシンキナーゼ受容体(RTK)やSRCファミリーキナーゼ(SFK)シグナル、または変異NRASによる
汎RAF阻害剤のCCT196969とCCT241161は、RAFもSFKも阻害して抵抗性が起きない



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150112110401.htm
メラノーマの抵抗性は、細胞表面のEphA2による
EphA2は膠芽腫の幹細胞でも見られる

http://dx.doi.org/10.1158/2159-8290.CD-14-0293
Ligand independent EphA2 signaling drives the adoption of a targeted therapy-mediated metastatic melanoma phenotype
リガンドとは独立したEphA2シグナル伝達は、標的治療を介する転移性表現型メラノーマの選定を促進する

BRAF阻害剤に抵抗性を生じた多くの患者は新しい箇所でも疾患を発症するが、これは阻害剤による選択圧が転移を促進していることを示唆する
今回我々は質量分析を用いてリン酸化タンパク質スクリーニングを実施し、リガンド非依存的なEphA2シグナル伝達がBRAF阻害療法への適応として生じることを明らかにした
BRAF阻害の結果として転移性の表現型が選択adoptionされる
EphA2シグナルはリガンドに依存せず、そしてAKT/PI3Kに依存的である
 

神経疾患や癌と関連するタンパク質の細胞質での役割

2016-03-24 06:06:16 | 
New cytoplasmic role for proteins linked to neurological diseases, cancers

March 17, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160317151134.htm


(左から右へ、Michael Buszczak博士、大学院生のArnaldo Carreira-Rosario、Varsha Bhargava

Credit: UT Southwestern Medical Center)

テキサス大学(UT)サウスウエスタン・メディカルセンターの研究者は、Rbfox1というRNA結合タンパク質の二つ目の役割を明らかにした
この研究結果は自閉症やてんかん、そしてある種の癌のような、Rbfox1タンパク質と関連する神経疾患や病態についての新たな洞察をもたらす

「これらのデータはそれらの疾患の再評価を促すはずだ
我々が明らかにしたRbfox1の新しい機能が疾患の発症や進行に寄与するのかを調べることになるだろう」
首席著者のMichael Buszczak博士は言う
彼はUTサウスウエスタンで分子生物学の準教授Associate Professorであり、ハモン再生医科学センター/Hamon Center for Regenerative Science and Medicineの一員でもある


Developmental Cell誌で発表された今回の研究は、RNAに結合するタンパク質の一つであるRNA-binding fox(Rbfox)がメッセンジャーRNA/messenger RNA(mRNA)からタンパク質への翻訳を監督overseeすることを示す
研究者はショウジョウバエをモデルとして使うことで、Rbfox1タンパク質が特に翻訳の調節に関与することを示した

Rbfox1タンパク質は、遺伝子をコードするエキソンexonという部分を接合してmRNAを形成するスプライシングsplicingの際に重要な役割を演じることが知られていた
スプライシングは主に細胞の核内で起き、Rbfox1タンパク質の多くも核内に存在する
しかし、Rbfox1タンパク質のバリアントvariantが核外の細胞質にも存在しており、その細胞質での機能は不明だった

「我々は細胞質のRbfox1が特定のタンパク質の産生を抑制することを発見した」
Buszczak博士は言う


UTサウスウエスタン分子生物学の大学院生graduate studentで研究の筆頭著者のArnaldo Carreira-Rosarioは、Rbfox1がmRNA分子の末端の特定の配列elementに結合し、mRNAがタンパク質に翻訳されるのを妨害することを明らかにした
もしRbfox1タンパク質が失われるとmRNAからの翻訳はもはや抑制されなくなり、異常な細胞の増殖、つまり癌につながる

研究者たちは細胞質に存在する形態のRbfox1がショウジョウバエの生殖細胞の発達に必要であることを明らかにした
「このタンパク質がないと生殖細胞は極めて特定の分化段階で止められて、そこでぐずぐず留まるlinger
生殖細胞は成熟した卵へと分化することができない」
医学研究におけるE.E. and Greer Garson Fogelson ScholarでもあるBuszczak博士は言う

この分化の停止によりメスのショウジョウバエは不妊になり、
他の状況では不適切な細胞増殖につながり癌の発端となるunderlie

共著者のMani Ramaswami博士(ダブリン大学トリニティカレッジ、アイルランド)の研究により、
新たに明らかにされたRbfox1タンパク質の機能と、神経の発達・機能との間のつながりが示された
このことはRbfox1の破綻と関連する多くの神経疾患にとって重要な意味を持つ

「Rbfox1の喪失が疾患を引き起こす理由は細胞質でタンパク質の発現を混乱させることによるもので、核内のRNAのスプライシングではないということである」
Buszczak博士は言う

「もしこの解釈が正しければ、問題になっている疾患の治療法をどのようにして開発するのかに関して意味を持つだろう」

※the idea is that: ~ということ


http://dx.doi.org/10.1016/j.devcel.2016.02.010
Repression of Pumilio Protein Expression by Rbfox1 Promotes Germ Cell Differentiation.
Rbfox1によるPumilioタンパク質の発現抑制は、生殖細胞の分化を促進する


Highlights
・ショウジョウバエの細胞質のRbfox1は、卵巣の生殖細胞の分化を調節する
・Rbfox1はmRNAの3′非翻訳領域(UTR)に依存的な方法で(UTRに結合して)翻訳を調節する
・Rbfox1はpumilio mRNAの翻訳を抑制する
・pumilioの異常発現ectopic expression、またはRbfox1の喪失は、生殖細胞の分化を阻止する


Summary
RNA-binding Fox (Rbfox) タンパク質は選択的スプライシング/alternative splicingの調節に関与することが確認されているが、
Rbfoxの特定のアイソフォームは核局在シグナルを欠いており細胞質に蓄積する
スプライシングから独立した細胞質での潜在的な機能は不明のままである

今回我々は細胞質のショウジョウバエRbfox1が生殖細胞の発達を調節し、3′UTRの中にある(U)GCAUGという配列を含むmRNAの翻訳を抑制することを実証する

生殖系列germlineの配偶子cystが分化する間、Rbfox1はpumilioのmRNAを標的として不安定化させて翻訳をサイレンシングし、それにより生殖細胞の発達を促進する

pumilioの発現異常は生殖系列の腫瘍形成につながり、その腫瘍には
崩壊break downし、有糸分裂的に活発な単一の細胞single, mitotically active cellへと脱分化した配偶子cystが含まれる


合わせて考えると、これらの結果は細胞質に存在するRbfoxファミリーメンバーが特定の標的mRNAの翻訳を調節することを明らかにする

ショウジョウバエの卵巣において、このRbfox1の活性は生殖細胞が発達状態を逆戻りしないように防ぐ『遺伝子障壁/genetic barrier』をもたらす

Rbfoxタンパク質がmRNA翻訳を調節するという今回の発見は、Rbfox関連疾患Rbfox-related diseasesに関係がある



関連サイト
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=RBFOX1
Entrez Gene Summary for RBFOX1 Gene
RBFOX1タンパク質はアタキシン-2のC末端に結合し、脊髄小脳失調症2型/spinocerebellar ataxia type 2(SCA2)の病理に限定的に寄与する可能性がある
アタキシン-2はSCA2遺伝子の産物であり、SCA2は家族性の神経変性疾患を引き起こす
Fox-1とアタキシン-2はどちらもトランス-ゴルジネットワークに局在する
RBFOX1の異なるアイソフォームをコードする選択的スプライシングによる転写バリアントがいくつか見つかっている

GeneCards Summary for RBFOX1 Gene
RBFOX1/Ataxin 2-Binding Protein 1と関連する疾患として、脊髄小脳失調症2型/spinocerebellar ataxia 2と住肉胞子虫症sarcocystosisがある
 

エイズウイルスの薬でメラノーマの薬剤耐性を回避する

2016-03-23 06:06:52 | 癌の治療法
HIV drug could stop skin cancer becoming drug-resistant

March 14, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160314140114.htm

Cancer Research UKが資金を提供した研究によると、抗エイズウイルス薬は皮膚癌細胞の治療抵抗性につながる早くからの変化の一つを止める可能性があるという
この研究はCancer Cell誌で発表された


メラノーマに対する標準治療を開始していた11人の患者から得られたメラノーマ皮膚癌をマンチェスター大学の研究者が調べたところ、癌細胞は『分子スイッチ』を切り替えて一時的に自身の配線を組み直していた
それにより癌細胞は治療を始めて最初の2週間で抗癌剤に抵抗できるようになり、その後に遺伝子の変化により永続的な抵抗性を獲得した

エイズウイルス(HIV)への薬であるネルフィナビルnelfinavirは、細胞が治療を生き残る能力を加速する『分子スイッチ』を阻害することにより作用する
今回の研究はマウスで実施されたものだが、ネルフィナビルと皮膚癌への標準治療とを組み合わせて使うことで治療をさらに強力にすることに加えて薬剤抵抗性を遅らせる可能性が示唆される


筆頭著者、マンチェスター大学のClaudia Wellbrock教授は言う
「皮膚癌への標準治療で癌細胞は最初の数週間でより強く丈夫になり、治療に抵抗するようになる
しかし、完全に抵抗性になる前に皮膚癌細胞を標的とすれば、そのような回避を阻止するチャンスが得られるだろう
我々はこの研究がそれを現実とする方へ一歩さらに近づけると考えている」


Cancer Research UKのマンチェスターがん研究センターのディレクターであるNic Jones教授は言う
「メラノーマは治療が難しいが、その理由は癌細胞が極めて早く薬剤抵抗性を獲得するためである
しかし、今回の刺激的な研究は抵抗性への初めの一歩を阻止することにより治療をより長く有効にして、
我々が反撃fight backできるようになることを意味する」


「薬剤抵抗性は非常に難題だが、我々は大きく進歩しつつある
皮膚癌後期の薬剤抵抗性はいまだに我々が取り組まなければならない大きな問題だ
最近の免疫療法の開発で我々は大きく前進したが、
今回の刺激的なアプローチは皮膚癌が抵抗性を生じるのをより早い段階で止めることができるだろう」


http://dx.doi.org/10.1016/j.ccell.2016.02.003
Inhibiting Drivers of Non-mutational Drug Tolerance Is a Salvage Strategy for Targeted Melanoma Therapy.
突然変異によらない薬剤耐性ドライバを阻害することはメラノーマ標的治療への救済戦略である


[メラノーマ]
 BRAF↑→MEK↑→ERK→SKI,SMAD2─┤PAX3↓→MITF↓→薬剤耐性↓

[阻害剤投与]
 MAPK阻害剤─┤BRAF↓→MEK↓→ERK→SKI,SMAD2↓─┤PAX3↑→MITF↑→薬剤耐性↑


Highlights
MITFは、非突然変異的で可逆的な薬剤耐性の段階drug-tolerance phaseのドライバである

※薬物耐性/drug toleranceは、不可逆的な抵抗性を獲得する薬物抵抗性/drug resistanceとは異なる

・薬剤再利用/drug repositioningにより、メシル酸ネルフィナビル/nelfinavir mesylateをMITF発現の抑制因子として同定する
・ネルフィナビルは、BRAF・NRAS突然変異メラノーマをMAPK阻害剤による治療に対して感受性にする
・ネルフィナビルの組み合わせ療法は、NRASをドライバとして獲得される抵抗性に打ち勝つ


Summary
MAPKを標的とする治療に対してメラノーマがいったん薬剤抵抗性を獲得するまでに進行するとonce melanomas have progressed with acquired resistance、変異の不均一性は大きな難題をもたらすpresent a major challenge

ゆえに薬剤抵抗性の獲得が生じる前の治療段階を調査した結果、メラノーマ生存癌遺伝子melanoma survival oncogeneのMITFが、変異によらず可逆的な初期の薬剤耐性状態のドライバであることを発見した
この薬剤耐性はPAX3を介したMITFの上方調節によって誘導される

薬剤を再利用するスクリーニングdrug-repositioning screenにより、
エイズウイルスHIV1のプロテアーゼを阻害するネルフィナビルを PAX3とMITFの発現を強力potentに抑制する阻害剤として同定した
ネルフィナビルは、BRAF/NRAS突然変異メラノーマ細胞をMAPK経路阻害剤へと深く感受性にする

さらに、
ネルフィナビルは
MAPK阻害剤療法が進行した患者から単離されたBRAF/NRAS突然変異メラノーマ細胞ならびにBRAF/NRAS/PTEN突然変異メラノーマ腫瘍に有効である

我々は
MAPK阻害剤によって誘導される薬剤耐性のドライバの阻害が
メラノーマの標的療法に対する現在のアプローチを改善しうることを実証する



関連サイト
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=MITF
UniProtKB/Swiss-Prot for MITF Gene
MITFは細胞の分化、増殖、生存において必須の役割を演じる遺伝子発現を調節する転写因子で、BCL2とチロシナーゼのような標的遺伝子のプロモーターに見られる対称的なDNA配列(E-box)(5-CACGTG-3)に結合する
チロシナーゼtyrosinaseとチロシナーゼ関連タンパク質/tyrosinase-related protein 1(TYRP1)の発現を調節することにより、メラノサイトの発達において重要な役割を演じる

※チロシナーゼ: チロシンをドパキノン(DOPA quinone)に変換する。ドパキノンは非酵素的に重合してメラニンとなる

MITFは様々なタイプの細胞の分化に関与する
例えば、神経堤neural crestに由来するメラノサイト、肥満細胞、破骨細胞、
眼杯optic cupに由来する網膜色素上皮層retinal pigment epitheliumである



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/0d6c4d5b3164482e86df3d268e50a70c
メラノーマやトリプルネガティブ乳癌はバックアップシステムでキナーゼ阻害剤を回避する
 

免疫系を阻害する腫瘍の酸性環境を中和する

2016-03-22 06:06:28 | 癌の治療法
Neutralizing tumor acidic environment improves immune-targeting therapies

Sodium bicarbonate combined with PD-1 or CTLA-4 Inhibitors or adoptive T-cell transfer reduces melanoma and pancreatic tumor growth

March 17, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160317114538.htm

癌細胞は腫瘍内の酸性環境でも増殖することが可能だが、免疫細胞のような普通の細胞にとって酸性は有害である
今週出版されるCancer Research誌のカバー論文cover articleで、モフィットがんセンター/Moffitt Cancer Centerは
酸性の腫瘍環境を中和することでいくつかの免疫を標的とする癌療法の効能が増加すると報告した


腫瘍細胞の代謝増大と血管の少なさによって生じる酸性の環境でも充実性腫瘍は生き残る
しかし酸性度の上昇は免疫細胞のいくつかの機能を低下させ、結果として腫瘍も生存につながる
加えて腫瘍は免疫細胞の機能を阻害するタンパク質を発現することにより免疫系による検出を回避する

免疫を抑制するタンパク質のPD-1やCTLA-4を標的とする薬剤など、免疫系を再び刺激するいくつかの治療法が現在FDAによって承認されたか臨床開発中である
これらの薬剤は臨床的に有望な作用を示してきたものの患者の応答率はわずか11パーセントから27パーセントの幅に留まっており、
このことは他の治療法との組み合わせによって改善される可能性を示唆している

モフィットの研究者は酸性環境がどのようにして免疫細胞の機能ならびにPD-1/CTLA-4を標的とする治療法に影響するのかを評価したいと考えた
実験の結果、酸性環境はT細胞という免疫細胞の活性を低下させることが明らかになった
研究者はこの酸性環境を中和することが腫瘍を標的としうるT細胞を再活性化して腫瘍増殖に影響すると仮説を立てた

研究チームが中和剤の炭酸水素ナトリウム/sodium bicarbonate(重曹)をマウスに投与したところ、炭酸水素ナトリウムそれ自体はマウスのメラノーマ腫瘍の増殖を抑制しなかったものの、腫瘍内部のT細胞レベルを実際に増加させた
炭酸水素ナトリウムが腫瘍内のT細胞レベルを増大させることから、さらに免疫系を刺激するPD-1/CTLA-4阻害剤と組み合わせることでうまくいく可能性が示唆された

研究者が炭酸水素ナトリウムとCTLA-4/PD-1阻害剤を組み合わせてマウスに投与すると、それぞれ単体の投与よりもメラノーマと膵臓腫瘍の増殖を低下させることが示された
患者の腫瘍に対して特に活性の高いT細胞の注入はそれらとは別の有望な免疫療法だが、これも重炭酸bicarbonateとの組み合わせでさらに高い効能を示す

「腫瘍の微小環境で遭遇encounterdする酸性のpHには免疫を著しく抑制する効果がある
これを緩衝剤bufferで中和することにより、メラノーマと膵臓腫瘍の免疫療法への応答を改善することが可能である」
モフィットの癌画像化・代謝部門のchairであるRobert J. Gillies, Ph.D.は言う

この論文の筆頭著者first authorであるShari Pilon-Thomas, Ph.D.は次のように付け加える
「今回の研究は、腫瘍に由来する酸を腫瘍によって分泌される免疫抑制要素のリストとして加えるものだ」


将来モフィットの研究者は炭酸水素ナトリウムの投与が膵臓癌とメラノーマ患者における抗PD-1療法の効能を増大させるかどうかを評価するための臨床試験を開始する計画である


http://dx.doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-15-1743
Neutralization of Tumor Acidity Improves Antitumor Responses to Immunotherapy.
腫瘍酸性度の中和は免疫療法に対する抗腫瘍応答を改善する

Abstract
酸性のpH環境はin vitroでT細胞の活性化を阻害し、T細胞の解糖系を制限する

加えて、インターフェロンγ(IFN-γ)の放出は酸性pHによって阻害されるが、それは安定状態のmRNAのレベルでは起きない
これは酸性の影響がmRNAからの翻訳後posttranslationalであることを意味する

酸性化acidificationは細胞質のpHには影響しない
このことは細胞外の酸性度によって伝達されるシグナルsignal transduced by external acidityは『酸性を感知する特定の受容体』によって仲介される可能性が高いことを示唆する
それらの受容体のうち4つはT細胞が発現している

特筆すべきは/notably、重炭酸の単独投与monotherapyによる腫瘍酸性度の中和はマウスでいくつかのタイプの癌の増殖を低下させ、それはT細胞浸潤の増大と関連があったことである

さらに、抗CTLA-4、抗PD1、T細胞の養子免疫療法と重炭酸療法との組み合わせは多くのモデルで抗腫瘍応答を改善improveさせ、中には治癒cureする対象も存在した

全体として、我々の研究結果は経口緩衝剤療法を通じた腫瘍内のpH上昇がどのようにして免疫療法への応答を改善することが可能なのかを示すものであり、臨床的に即刻トランスレーションできる潜在性を持つ



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2013/01/130125111145.htm
責任著者corresponding authorでありモフィットの癌画像化・代謝部門のchairであるRobert J. Gillies, Ph.D.によると、腫瘍の浸潤は正常または正常に近いpHレベルでは起きず、炭酸水素ナトリウムsodium bicarbonateを経口投与して中和したところ、浸潤は止まったという
「血管形成が乱れることにより腫瘍の酸性度は上昇するが、
その理由の一つは灌流の低下により酸素を制限し、グルコースの発酵の速度/率rateを上昇させるためである
二つ目は灌流の低下が乳酸などの酸の除去を低下させ、周囲の組織のpHは非常に低くなることによる」

腫瘍細胞が酸性度の上昇に適応するにつれて、正常な細胞の死を通じたニッチ操作と新血管形成が腫瘍内に生じて、免疫応答が抑制される
「腫瘍細胞は悪性細胞には無害だが通常細胞/組織には負の影響を与える酸性環境を作ることによりニッチを操作して、悪性細胞の局所的な浸潤を促進する」



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160125114243.htm
通常は細胞内がわずかに酸性で細胞外がわずかにアルカリ性だが、増殖する組織ではそれが逆になり『pHの濃度勾配の逆転/pH Gradient Reversal』が起きる
細胞外の高い酸性度は通常の細胞には有害だが腫瘍細胞には増殖の利点となる
タンパク質分解を促進し、ゲノム不安定を増大させ、免疫を抑制し、治療抵抗性と血管形成を引き起こすことにより、腫瘍発生をさらに促進する
細胞内のアルカリ度の上昇は、腫瘍を細胞外の酸性によるアポトーシスの誘発から保護し、増殖を促進する
これは腫瘍発生の極めて早くに起きて、解糖系の酵素の活性を増大させ、癌の構成材料(核酸など)の産生を促進する
それはDNA損傷によって仲介される細胞周期の停止を阻害し、G2からM期への移行を促進する
これが腫瘍細胞の無制限の増殖と遺伝子不安定性の蓄積につながる

果物と野菜の豊富な低塩分食は、そのアルカリ性の性質によって腫瘍による『pHの濃度勾配の逆転』を最小限に抑え、それにより悪性の性質を低下させて治療抵抗性を抑える
さらに、腫瘍のこのようなpHの特徴を特に標的とする治療法は、腫瘍細胞を殺すことのみに焦点を合わせた伝統的な治療法に対して価値ある補助薬valuable adjunctをもたらす可能性が高く、毒性が強く非選択的な古い治療選択を置き換えることさえありうる



関連記事
https://blog.goo.ne.jp/news-t/e/dd5f0507eea0b2e78f76bbccbba164a1
腫瘍の酸性pHはクロロキンのオートファジー阻害効果を妨害する



関連記事
https://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c691e0fc29bad7b91da9873028ec9e5e
癌細胞はグルコースを強奪してT細胞を去勢する



関連記事
https://blog.goo.ne.jp/news-t/e/cce233b5cfcfa9bc5ab09af62ccdcff6
低酸素ならびに細胞外アデノシンが豊富な腫瘍微小環境では、抗腫瘍T細胞はA2Aアデノシン受容体を介して回避または阻害される



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2011/09/110919121808.htm
T細胞を引き付けるCCL2は、腫瘍が作る有害な活性窒素種/reactive nitrogen species(RNS)によって修飾され、効果を失う

※活性窒素: NO・(一酸化窒素nitric oxide)、NO2+(二酸化窒素カチオンnitronium cation)、ONOO-(ペルオキソ亜硝酸peroxonitrite)、LOONO(アルキルペルオキソ亜硝酸alkyl peroxonitrite) など
 

高脂肪食で癌になりやすくなる理由

2016-03-20 06:06:18 | 
High-fat diet linked to intestinal stem cell changes, increased risk for cancer

March 2, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160302132730.htm

過去十年以上にわたる研究で、肥満や高脂肪食、高カロリー食は様々なタイプの癌の重大なリスク要因であることが判明している
今回ホワイトヘッド研究所とMITコッホ統合がん研究所の新たな研究により、高脂肪食は腸の上皮細胞を癌になりやすくすることが明らかになった


マウスを使った今回の研究は高脂肪食が腸の幹細胞集団の急増を促進し、幹細胞のように振る舞う他の細胞プールも形成することを示唆する(幹細胞とはそれ自身を無限に再生し、他のタイプの細胞へと分化できる細胞のことである)

これらの幹細胞stem cellsと『幹細胞のような細胞stem-like cells』は腸の腫瘍を生じやすいとOmer Yilmazは言う
彼はMITで生物学の助教授assistant professorであり、研究チームの共同リーダーである

「高脂肪食は幹細胞の生態biologyを変化させるだけではなく、非幹細胞集団の生態をも変化させ、それは全体的に腫瘍形成の増大につながる」
コッホ研究所の一員でありマサチューセッツ総合病院の胃腸病理学者gastrointestinal pathologistでもあるYilmazは言う

「これらの非幹細胞は高脂肪食により幹細胞の性質を獲得し、形質転換すると腫瘍形成性tumorigenicとなる」
ホワイトヘッドの一員であるDavid Sabatiniは言う
彼はMITで生物学の教授であり、ハワードヒューズ医学研究所の研究者でもある

Sabatini教授とYilmaz助教授は以前カロリー制限が腸の幹細胞性に与える影響について共同研究を行っており、今回Natureで3月2日に発表される研究で両者は首席著者である


肥満の人々は結腸直腸癌になるリスクが高いことがこれまでの研究で判明している
SabatiniとYilmazのラボでは食事と癌との間の関連を研究しており、今回は結腸癌リスクの上昇の根拠となる細胞メカニズムを明らかにしようとした

「我々は理解したかったのは、
長期の高脂肪食がどのようにして幹細胞の生態biologyに影響し、そしてそのような食事によって誘発された幹細胞における変化がどのようにして腸の腫瘍発生に影響を与えるかということだった」
Yilmazは言う

一生涯ずっと生き続ける腸の幹細胞は、結腸癌を生じるような突然変異を蓄積し続ける可能性が最も高い細胞であることが最近の研究で示された
これらの幹細胞は腸の上皮細胞という裏打ちliningの中に存在し、上皮を構成する様々なタイプの細胞を生み出す

肥満と関連する癌とこれらの幹細胞との間にある関連の可能性を調査するため、研究者たちは健康なマウスに60パーセントの脂肪から構成されるエサを9ヶ月から12ヶ月間与えた
科学者たちによると、この食餌は典型的なアメリカ人の食事よりも脂肪の割合が高い(アメリカ人は20パーセントから40パーセント)
この期間中、高脂肪食のマウスは通常食のマウスよりも30パーセントから50パーセント多く体重が増加し、通常食のマウスよりも多く腸の腫瘍を発症した

これらのマウスは腸の幹細胞にいくつか特有の変化を示すことを研究者は明らかにした
まず一つ目は高脂肪食のマウスは腸の幹細胞の数がより多かったことである
これらの幹細胞は隣の細胞からの入力inputがなくても働くoperateことが可能だった

通常、腸の幹細胞は『ニッチ細胞/niche cells』というサポート細胞によって囲まれており、
それらは幹細胞の活動を調節し、幹細胞にいつ幹細胞自身を再生するかまたは分化した細胞を作るかを指示する
しかしながら、高脂肪食を与えたマウスの幹細胞は通常食のマウスよりも幹細胞が『独力で/on their own』機能することが可能だった
これらの幹細胞をマウスから取り出してニッチ細胞がない状態で培養すると、通常食のマウスよりも容易に『小さい腸/mini-intestines』を生じた

「高脂肪食ではより多くの幹細胞を生じ、それらは微小環境からの入力に依存せず働くことが可能である」
Yilmazは言う

また、研究者は前駆体細胞という別の集団(幹細胞から分化した娘細胞)が幹細胞のように振る舞うことも発見した
この前駆体細胞の集団は通常の二~三日の寿命よりも長生きで、
体外で培養すると小さい腸/mini-intestinesを生じることも可能だった

「このことは実に重要である
なぜなら、腸の幹細胞はしばしば腫瘍を生み出す突然変異を獲得する細胞であることが知られているからだ」
Yilmazは言う

「高脂肪食では古典的な幹細胞が多くなるだけでなく、幹細胞ではない集団が突然変異を獲得できるようになり、それが腫瘍を生じるのである」

研究者はさらに、高脂肪食で活性化する栄養感知経路も明らかにした
この脂肪酸を感知するセンサーはPPAR-δ/デルタdeltaと呼ばれる
PPAR-δは高レベルの脂肪に応じて代謝プロセスのスイッチをオンにして、エネルギー源として通常の炭水化物や糖類の代わりに脂肪を燃焼できるようにする
「事実、PPAR-δアゴニストの小分子は、通常食を与えていても
高脂肪食による動物実験の影響と似たような結果になる」
Sabatiniは言う

この代謝プログラムの活性化に加えて、PPAR-δは幹細胞のアイデンティティに重要な遺伝子セットをまとめてオンにするようだとYilmazは言う
彼のラボは現在これがどのようにして起きるのかをさらに調査しており、
肥満で生じる腫瘍に対する抗癌剤の標的を明らかにできるかもしれないと希望を持っているという


http://dx.doi.org/10.1038/nature17173
High-fat diet enhances stemness and tumorigenicity of intestinal progenitors.
高脂肪食は腸の前駆細胞における幹細胞性ならびに腫瘍形成性を促進する

Abstract
肥満を促進する食事が組織の幹細胞機能ならびに前駆細胞機能をどのようにして調節するのかはほとんど知られていない

今回我々は高脂肪食による肥満が哺乳類の腸のLgr5+幹細胞の数と機能を促進することを示す

機構的に見ると、高脂肪食は腸の幹細胞ならびに前駆細胞においてPPAR-δシグネチャーを強く誘導する
薬理学的にPPAR-δを活性化すると、高脂肪食がこれらの細胞に与える影響が再現された

高脂肪食と同様に、エクスビボex vivoで腸オルガノイド培養に高脂肪食を構成する脂肪酸を投与すると、これらオルガノイド体の自己再生ポテンシャルが促進され、それはPPAR-δに依存的である

特に、高脂肪食ならびにアゴニストによって活性化されたPPAR-δシグナル伝達は、前駆細胞にオルガノイド開始能力をもたらす
強制的にPPAR-δシグナル伝達を誘導すると、これらの前駆細胞は腫瘍抑制因子のAbcが失われるとin vivoで腫瘍を形成できるようにった

これらの研究結果は、食事によって調整されるPPAR-δ活性化が腸の幹細胞ならびに前駆細胞の機能をどのようにして変化させるのかだけでなく、腫瘍を開始する能力をどのようにして変化させるのかという点に光を当てる


http://www.nature.com/nature/journal/v531/n7592/fig_tab/nature17173_F5.html
Figure 5: PPAR-δの活性化は非幹細胞にオルガノイドorganoidならびに腫瘍を開始する能力tumour-initiating capacityをもたらす

i, 腸が高脂肪食へ適応するモデル

機構的に見ると、高脂肪食は腸の前駆細胞がオルガノイドを生じる能力ならびに腫瘍を開始する能力を促進するプログラムを活性化し、このプログラムはPPAR-δを介する
PPAR-δのプログラムの特徴には、β-カテニン標的遺伝子サブセットの誘導が含まれる

P, パネート細胞/Paneth cell(細菌の細胞壁を消化する好酸性の分泌顆粒を含む細胞)
Pr, 前駆細胞/progenitor cell
S, 幹細胞/stem cell
T, 腫瘍細胞/tumour cell

赤い点線red dotted linesは、Apcがヌルnullで腫瘍形成能力を持つ細胞を示す
対照群Controlでは幹細胞Stemからのみ腫瘍Tumorが生じるが、
高脂肪食HFDでは幹細胞Stemに加えて前駆細胞Progenitorからも腫瘍Tumorが生じる



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141201113030.htm
通常は幹細胞が分裂して娘細胞になるが、制御するGREM1遺伝子に異常が起きると、幹細胞の領域から外に出た娘細胞が幹細胞のように振る舞って腫瘍が生じる
そのため、薬剤で癌幹細胞を殺しても娘細胞が幹細胞のように振る舞って癌は継続する

http://dx.doi.org/10.1038/nm.3750
Aberrant epithelial GREM1 expression initiates colonic tumorigenesis from cells outside the stem cell niche.
腸管上皮のGREM1遺伝子の異常によって、そのようなことが起きる
Lgr5が陰性の前駆細胞が、幹細胞の性質を持続・再獲得する
これらは、異所性の陰窩ectopic cryptを形成して増殖し、変異を蓄積して、新生物を生じる



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/06/150616123917.htm
放射線治療に抵抗する長寿の癌幹細胞集団Lgr5-を結腸癌で発見した
この幹細胞は結腸腫瘍を生じ、腫瘍の成長を支える
これまで結腸癌と関連する唯一の幹細胞集団Lgr5+は放射線に感受性があったため、治療には放射線治療が有効だと考えられていた

http://dx.doi.org/10.1016/j.stem.2015.04.013
Krt19+/Lgr5− Cells Are Radioresistant Cancer-Initiating Stem Cells in the Colon and Intestine.
Krt19+/Lgr5− の細胞は、結腸において放射線抵抗性の癌幹細胞である

 

キナーゼ阻害剤を無効にするバックアップシステム

2016-03-18 06:06:45 | 
Why some tumors withstand treatment

March 16, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160316082948.htm


(MITのGertlerラボ。
左から右へ、Miles Miller, Frank Gertler, Douglas Lauffenburger, Madeleine Oudin

Photo: Bryce Vickmark)

分子標的薬のような新しい抗癌剤は、腫瘍の遺伝子プロファイルに基づいたテーラーメイド治療を可能にする
しかしながら、これらの薬剤がまったく効かず有効ではない患者がいる

マサチューセッツ工科大学(MIT)とマサチューセッツ総合病院(MGH)の新たな研究では、キナーゼ阻害剤という種類の薬剤がなぜ必ずしも腫瘍の増殖を止めるわけではないのかを明らかにする
研究によると、キナーゼ阻害剤は標的を停止させることに成功するものの、細胞を刺激してバックアップ・システムのスイッチも入れてしまい、薬剤によって止められたシステムに取って代わりうるという
研究チームはマウスモデルにおいて薬剤を組み合わせて両方とも妨害することでずっと良い結果をもたらすことも示した

「我々は標的治療への抵抗性に関与する『これまで認識されてこなかったメカニズム』を明らかにした」
MITで生体工学の教授であるDouglas Lauffenburgerは言う

「このメカニズムの存在が臨床患者におけるいくつかのキナーゼ阻害剤への応答の悪さと関連するようだ
我々はこの抵抗性メカニズムに対する薬剤を加えることで、応答しなかった最初の標的薬が作用できるようになることをマウスで実証した」

MITのコッホ統合がん研究所のaffiliate memberでもあるLauffenburgerは、Cancer Discovery誌のオンライン版で発表される論文の首席著者senior authorである
lead authorsはMiles MillerとMadeleine Oudinであり、前者はかつてのMITの大学院生graduate studentで現在はハーバードメディカルスクールのポスドクpostdoc、後者はコッホ研究所のポスドクpostdocである


迂回システム
Bypass system

乳癌や卵巣癌などに対してよく使われるキナーゼ阻害剤は、細胞の成長・増殖・浸潤性を刺激するシグナル伝達経路を妨害することにより作用する
医師は患者の腫瘍が上皮成長因子受容体(EGFR)のような癌を刺激するタンパク質を過剰発現するかどうかを元に、この阻害剤を処方する

しかしながら、これらの薬剤は作用するはずの腫瘍でさえ失敗する可能性がある
そのような失敗のおよそ半分は癌細胞が薬剤の作用を回避できるような遺伝子変異によって生じ、そして残り半分は説明不能であるとLauffenburgerは言う

Lauffenburgerたちは子宮内膜症endometriosis(子宮組織が周囲の臓器へと増殖する)に関する以前の研究を基に、癌細胞がキナーゼ阻害剤を回避sidestepできるようになるバックアップ・システムの存在を疑った
その研究で彼らは浸潤する子宮内膜の細胞が特定の増殖シグナルに『依存addicted』するようになり、事実この経路が他の増殖経路を停止shut offさせることを発見している
最初の経路を停止shut downさせる薬剤は、それらのバックアップ・システムを活性化するという意図しない効果を発揮しうる

MITのチームは同じことが癌細胞にも起きるのかという可能性に興味を持ち、メラノーマとトリプルネガティブ乳癌という二つの悪性癌に焦点を合わせた
それらはしばしばEGFR受容体を活性化させるリガンドによって促進される癌であり、このシグナル伝達は癌細胞が動いて浸潤性になるのを助ける

研究の結果、EGFRリガンドは癌細胞表面の受容体に結合して細胞の浸潤性を促進する一連の反応を引き起こすだけでなく、正のフィードバック・ループをも活性化することを明らかにした
プロテアーゼという酵素がEGFRリガンドを細胞表面から解放してさらに多くの受容体と結合できるようにすることで、浸潤促進シグナルをさらに強化していた

研究者はそれらのプロテアーゼが 浸潤促進経路を開始する他の受容体 をも切り離すchop offことを発見した
本質的に、癌細胞はEGFRによって促進される経路に依存するようになり、必要としない競合経路を停止させる

「細胞は他の入力を受け付ける能力を持つが、既に一つがシグナルを伝達していると癌細胞は『この上なく幸せperfectly happy』になり、残りを止めてしまう」

結果として、医師がEGFR経路を止めるキナーゼ阻害剤を処方するとそれらのプロテアーゼも止めてしまい、EGFR以外のバックアップ経路が作用できるようにする
それはもはや抑制されることなく仕事を引き継ぐtake over


より正確な予測
More accurate predictions

研究者はこれらの切断された受容体タンパク質が患者の血液サンプル中に検出可能であり、タンパク質レベルはEGFR阻害剤が個々の患者でどれくらい作用するのかと相関することも示した
切断されたタンパク質が高レベルであることはバックアップ・システムが動き出すための潜在能力の多さを意味し、キナーゼ阻害剤は有効ではないだろう
しかしながら、もしこれらのタンパク質レベルが低いと、患者の腫瘍のバックアップ・システムはそれほど強くないことを示唆する

「今回の発見は、長期にわたって臨床的な利益を受け続けるであろう患者と、素早く適応して治療を回避する腫瘍の患者とを、治療の開始時または最初の治療から数日以内に実施する血液ベースのテストによって区別して明らかにするように思われる」
論文の著者の一人であるKeith Flahertyはそのように述べ、この種のテストが実施され始めることを望むという

この研究はさらに、強力なバックアップ・システムを持つ腫瘍の患者にはEGFR阻害剤に加えて二番目の経路を停止させる薬剤を加えることが有益であることも示唆する
候補の一つは現在臨床試験中のAXL阻害剤である
MITの研究チームはマウスの研究で、この薬剤の組み合わせがそれぞれ単独を与えるよりもはるかに有効であることを明らかにした


http://dx.doi.org/10.1158/2159-8290.CD-15-0933
Reduced Proteolytic Shedding of Receptor Tyrosine Kinases Is a Post-Translational Mechanism of Kinase Inhibitor Resistance.

Abstract
キナーゼ阻害剤への抵抗性は、『迂回bypass』シグナル伝達経路の上方調節をしばしばともなうが、この経路はほとんど理解されていない

今回我々は、細胞外のプロテオーム的な適応extracellular proteomic adaptationがシグナル伝達迂回と薬剤抵抗性への経路の一つであることを示す

細胞表面の受容体のタンパク質分解による放出proteolytic sheddingはシグナル伝達活動に負のフィードバックを生じるが、
しかしそれはキナーゼ阻害剤によって阻害され、迂回シグナル伝達を促進する


特にMEKの阻害は、多数の受容体チロシンキナーゼ/receptor tyrosine kinase(RTK)の放出を広く減少させる
RTKには、HER4、METなどが含まれ、最も顕著なのはAXLである(AXLはADAM10とADAM17の基質)
したがって細胞表面のRTKレベルは増大し、細胞分裂促進シグナル伝達は促進される


臨床的なBRAF/MEK阻害剤による治療を受けたメラノーマ患者の無増悪生存期間progression-free survivalは、治療後のRTK放出の減少と逆の相関を示した(RTK放出が減少するほど、無増悪生存期間は延長した)
このRTK放出は血漿plasmaで非侵襲的に計測された

TIMP1を中和することによりプロテアーゼ阻害剤を乱すdisruptと、MAPK阻害剤の効能は改善された
MAPK/AXL阻害剤の組み合わせは異種移植xenograftモデルにおいて相乗作用的に腫瘍の増殖と転移を減少させた

全体的に見て、RTK放出の減少を通じた細胞外のプロテオーム的proteomicな再配線は、抗癌剤への抵抗性においてシグナル伝達を迂回するための驚くべきメカニズムを代表する


<コメント>
切断された他の受容体の破片が多い=EGFRを阻害するとそれらがすべて復活する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ff1b393c3ae61fc80da5b76b70840dc7
「我々がメラノーマ患者で同定した逃走ルートは約15通り存在し、任意の患者で癌細胞がどのルートを使うのかを予測するのは決して簡単ではない」
 

細胞の代謝はin vitroとin vivoで異なる

2016-03-15 06:06:36 | 
Amino Acids Rather than Glucose Account for the Majority of Cell Mass in Proliferating Mammalian Cells

http://www.cell.com/developmental-cell/references/S1534-5807(16)30036-3

癌細胞が増殖するためのエネルギー」の論文のReferencesから



http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18177721
The biology of cancer: metabolic reprogramming fuels cell growth and proliferation.
癌の生物学: 代謝的な再プログラムが癌細胞の成長と増殖に燃料を供給する

http://www.cell.com/action/showImagesData?pii=S1550-4131%2807%2900295-1
Figure 2
炭素の流れは静止状態と増殖する細胞では異なる
Carbon Flux Differs in Quiescent versus Proliferating Cells


静止状態の細胞(左)ではグルコース/glucose(glc)からピルビン酸/pyruvate(pry)へと変換する解糖系の速度が基底状態であり、ピルビン酸はTCA回路で酸化される
細胞は環境や細胞の高分子macromoleculeからアミノ酸や脂肪酸のような他の基質も獲得して酸化する
結果として、ATP(黄色の☆)の大部分は酸化的リン酸化oxidative phosphorylationから生成される

増殖する細胞(右)では、大きく増大した解糖系の流れがATPを細胞質に生成し、細胞質でのNAD+/NADHの比率を低下させる
結果として生じるピルビン酸のほとんどは乳酸デヒドロゲナーゼA/lactate dehydrogenase A(LDH-A)によって乳酸/lactate(lac)に変換され、NADHからNAD+を再生する
このNAD+の再生が解糖系を持続させ、乳酸は細胞外へ放出される
ピルビン酸のいくらかはピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)によってアセチル-CoA(Ac-CoA)に変換されてTCA回路に入り、そこで中間生成物intermediate、例えばクエン酸/citrate(cit)に変換されて高分子の生合成に使われうる
クエン酸は脂肪酸とコレステロールの合成に必要であり、これが分裂後の娘細胞の脂質膜を作る
細胞質に輸送された後のクエン酸はATPシトレートリアーゼ/citrate lyase(ACL)によってオキサロ酢酸と酢酸へと分解され、
結果として生じるアセチル-CoAは脂肪酸合成酵素/fatty acid synthase(FAS)によって使われ、
オキサロ酢酸(OAA)は細胞質の低いNAD+/NADH比を利用して(過剰なNADHを使って)リンゴ酸デヒドロゲナーゼ/malate dehydrogenase(MDH)によってリンゴ酸/malate(mal)に変換される
リンゴ酸は クエン酸-リンゴ酸対向輸送counter transport(逆輸送antiport)によってミトコンドリアに戻されるか、
リンゴ酸酵素/malic enzyme(ME)によってピルビン酸に変換され、NADPHを生成して脂肪酸合成に使われる



http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26853747
Environment Impacts the Metabolic Dependencies of Ras-Driven Non-Small Cell Lung Cancer.
環境はRasをドライバとする非小細胞肺癌の代謝的依存に強い影響を与える

http://dx.doi.org/10.1016/j.cmet.2016.01.007


Highlights

・腫瘍の代謝的表現型の決定metabolic phenotypingにより必須の代謝経路を明らかにする
・Krasをドライバとする肺腫瘍は、ピルビン酸カルボキシラーゼpyruvate carboxylaseとピルビン酸デヒドロゲナーゼpyruvate dehydrogenaseを必要とする
・Krasをドライバとする肺腫瘍は、培養細胞よりもグルタミナーゼglutaminaseに依存しない
・腫瘍組織の環境は腫瘍代謝表現型の重要な決定要素である

※ピルビン酸カルボキシラーゼ: ピルビン酸とオキサロ酢酸の相互変換を触媒する。糖新生経路の一つ
※ピルビン酸デヒドロゲナーゼ: 複合体の一つ。複合体はピルビン酸・NAD+・CoASHからアセチルCoA・CO2・NADH2を生成する
※グルタミナーゼ: グルタミンのアミド基を分解してグルタミン酸とアンモニアを生成する


Summary
培養細胞はグルコースを乳酸へと変換し、グルタミンはTCA回路/クエン酸回路の主な炭素源だが、それと同じ代謝表現型が腫瘍内でも見られるかは研究されていない
我々は肺癌のマウスに同位体isotopeで標識したグルコースまたはグルタミンを注入し、腫瘍と正常組織におけるこれらの栄養素の運命を比較した

予想された通り、肺腫瘍はグルコースから乳酸の産生を増大させた
しかしながら、肺腫瘍と正常な肺の両方でグルタミンの利用は最小限minimalであり、正常な肺組織と比較して肺腫瘍ではTCA回路へのグルコースの寄与の増大を示した
グルコース酸化に関与する酵素を消去する実験により、グルコース炭素のTCA回路への寄与は腫瘍形成に必須であることが実証された

これらのデータは、腫瘍による栄養素の利用の理解が癌のin vivoにおける代謝的な依存性を予測できることを示唆する
さらにこれらのデータはin vivoの環境が癌細胞の代謝表現型の重要な決定要素であることを証明するargue



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8c4f2053e55ed484c872909b1e781086
グルコースは腫瘍がエネルギーとして消費する唯一の栄養素ではなく多くの栄養素の一つに過ぎないことが示唆される
遺伝学的に決定される腫瘍の代謝的な好みは、細胞の環境によってくつがえされうる
 

Myc「私を食べないで」「私を見つけないで」

2016-03-14 06:06:17 | 
Protein increases signals that protect cancer cells, study finds

March 10, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160310143811.htm

スタンフォード大学医学部の研究者は癌関連遺伝子Mycの発現と、腫瘍を免疫系から保護する細胞表面の分子との間のつながりを明らかにした
Mycは『二つの分子』の発現を直接制御することで免疫系から腫瘍を守るのだという

この発見は、腫瘍がうまく成長するために必要な二つの重要なステップを関連付ける初めてのものである
一つは制御不能な細胞の増殖であり、Mycが変異するか調節不能になると細胞分裂を促進するタンパク質レベルの増加を引き起こす
そしてもう一つは、その増殖を止めるために作られる免疫分子の裏をかくoutwitための能力である

ドイツ・バイエルンのヴュルツブルク大学との協力のもと実施された今回の研究は、Scienceのオンライン版で3月10日に発表される予定である
首席著者は腫瘍学と病理学の教授であるDean Felsher, MD, PhDであり、筆頭著者はpostdoctoral scholarのStephanie Casey, PhDである

Felsherは言う
「Mycのような癌遺伝子がどのようにして癌を引き起こすのか、そしてそれら癌細胞はどのようにして免疫系をうまく回避するのか?
我々の発見はそれらの間の密接な因果関係について述べる」


「私を食べないで」と「私を見つけないで」
'Don't eat me' and 'don't find me'

二つの分子の一つはCD47というタンパク質である
これは以前スタンフォードのIrving Weissman, MDのラボの研究者によって『私を食べないで』というシグナルとして働くことが明らかにされている
このシグナルは癌を貪り食う免疫細胞であるマクロファージを寄せ付けないward off
Weissmanはがんの臨床研究を担うVirginia and D.K. Ludwig Professor教授職であり、スタンフォード幹細胞生物学・再生医学研究所のディレクターでもある

※D.K. Ludwig: Daniel K. Ludwigが1971年にルートヴィヒがん研究所を設立した(1971年はニクソン大統領が『癌との戦い』を宣言した年)
※2006年に6つのルートヴィヒセンターがアメリカに設立された(ジョンズ・ホプキンズ大学、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、メモリアルスローンケタリングがんセンター、スタンフォード大学、シカゴ大学)

ヒトの癌はほぼ全てが細胞表面にCD47を強く発現しており、CD47タンパク質を標的とする抗体が現在様々なヒトの癌に対して第一相の臨床試験中である

もう一方の分子はPD-L1で、これは『私を見つけないで』というシグナルを送り免疫系を抑制することが知られている
PD-L1は癌や自己免疫疾患で過剰発現しているが、通常の妊娠中にも見られる分子である
PD-L1に結合する抗体が膀胱癌と非小細胞癌の治療用としてアメリカFDAによって承認されているが、他の多くの癌の治療でも有効なことが示されている


癌でMycはいつも容疑者
In cancer, Myc a usual suspect

Felsherのラボの研究者はMycタンパク質を10年以上研究している
Mycはいわゆる癌遺伝子によってコードされている
正常な癌遺伝子は細胞の重要な機能を実行しているが、変異したり不適切な過剰発現することにより強力な癌のプロモーターとなる
Myc癌遺伝子はヒトのあらゆる癌の半分以上で変異するか調節を失う

Felsherのラボは特に癌遺伝子依存oncogene addictionという現象を研究している
この依存状態にある腫瘍細胞は特定の癌遺伝子の発現に完全に依存していて、
動物実験ではMyc遺伝子の発現を阻害することにより腫瘍が完全に退縮complete regressionする

2010年にFelsherたちはこの動物実験での退縮regressionが完全な免疫系が存在する時のみ起きることを示したが、その理由は不明だった

「それ以来、私は心の奥でMycと免疫系との間に関係があるに違いないと考えてきた」
Felsherは言う


Mycの発現をオフにする
Turning off Myc expression

CaseyとFelsherはMycの発現と癌細胞表面のCD47・PD-L1タンパク質との間に関係があるのかを調べるため、マウスとヒトの腫瘍細胞でMycの発現を能動的にオフにすると何が起きるのかを調査した

実験はマウスとヒトの急性リンパ芽球性白血病(ALL)、マウスとヒトの肝細胞癌、ヒトの皮膚癌、ヒトの非小細胞肺癌で行われ、
実験の結果、Mycの発現の減少はCD47とPD-L1タンパク質レベルを同様に低下させた
対照的に、細胞表面に見られる他の免疫調節性分子のレベルは影響を受けなかった

研究者は公的に利用可能な何百人もの腫瘍患者サンプルの遺伝子発現データから
肝臓、腎臓、結腸直腸の腫瘍においてMyc発現レベルがCD47・PD-L1遺伝子の発現レベルと強く相関することを明らかにした

次にCD47・PD-L1遺伝子を調節するDNA領域を直接調べた結果、マウス白血病細胞、ヒトの骨癌細胞系統において高レベルのMycタンパク質がCD47・PD-L1のプロモーター領域に直接結合することが明らかになった
彼らはこのMycの結合がCD47遺伝子の発現を増大させることもヒトの血球細胞系統において確認した


相乗作用による治療の可能性
Possible treatment synergy

最後に、CaseyとFelsherは遺伝子工学によりマウス白血病細胞でMyc発現状態にかかわらずCD47またはPD-L1遺伝子を常に発現するようにした
この細胞はマクロファージやT細胞のような免疫細胞による発見を回避することが通常の細胞よりもうまく、
これらの細胞から生じた腫瘍はMyc発現が不活化されても退縮regressしなかった


「CD47とPD-L1が癌細胞の表面に存在すると、癌遺伝子を停止させてもマウスは適切な免疫応答を開始せず、腫瘍は退縮しないということを我々は突き止めつつある」
Felsherは言う

今回の研究は、MycとCD47かPD-L1の発現を標的とする治療の組み合わせが腫瘍の増殖を遅くするか止め、加えて免疫系に向けて『赤旗を降る』ことによりおそらく相乗効果を発揮するだろうということを示唆するとFelsherは言う

「癌の免疫分野において途方もない興奮が高まりつつある」
There is a growing sense of tremendous excitement in the field of cancer immunotherapy

「多くの場合はうまくいくが、なぜ癌の中に免疫療法が有効なものとそうでないものがあるのかは明らかになっていない
我々の研究は癌遺伝子の発現と免疫の調節との間の直接のつながりに光を当てるものであり、
これは患者を救うために利用できる可能性がある」

この研究はスタンフォード医学部がプレシジョン・ヘルスprecision healthに焦点を当てる一例である
その目標は疾患の先手を打って予防し、病苦を正確に診断して治療することである


http://dx.doi.org/10.1126/science.aac9935
MYC regulates the antitumor immune response through CD47 and PD-L1.



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2d47e9452ca9fbe9fd92159fba5b70bc
CD47に対する抗体で「私を食べないで」シグナルを無効化し、マクロファージが癌細胞を破壊できるようにする



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ba31225fb3f8b2ca8d9732645ddc4c3d
p53はmiR-34aを活性化させ、miR-34aはPD-L1の発現を直接阻害する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/86d8ce693a9d47602829e71dc811c01c
p53突然変異はMLL1を介してゲノムのメチル化を変化させ、癌の増殖を促進する
 

肥満は癌幹細胞を増大させる

2016-03-12 06:06:18 | 
Breast cancer has a higher incidence in obese women because fat facilitates cancer stem cells expansion

March 10, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160310080818.htm


(未成熟な脂肪細胞の顕微鏡画像
Credit: Image courtesy of University of Granada)

グラナダ大学(UGR)が参加する国際研究チームは、なぜ乳癌は肥満の人々に多く、そしてより悪性化するのかについての新たなデータを明らかにした
その理由は、腫瘍の周囲の脂肪が、癌幹細胞(CSC)の増殖と浸潤を促進するためだった
癌幹細胞は腫瘍の発症と成長の原因となる細胞である


癌幹細胞が腫瘍の内部で占める割合は非常に小さいが、その主な特徴は転移を生じることであり、元の腫瘍から遠く離れた場所に移動する
従来の化学療法や放射線療法ではCSCを排除できず、そのため最初は反応があっても多くの癌患者は再発に苦しむというのが一般的である
今回の新たな研究はマイアミ大学(フロリダ)を中心とするもので、そこへグラナダ大学の大学病院センターと研究チーム『先進療法Advanced therapies: 分化と再生と癌differentiation, regeneration and cancer』が参加した


メカニズムは未だ明らかではない
Mechanisms yet to be clarified

肥満が蔓延した結果としての癌の罹患率と脂肪率は非常に深刻な問題である
事実、癌と関連する死亡の20%までが肥満のせいであるかもしれないと現在推定されている

肥満の女性は閉経後に乳癌を患う危険性が高く、年齢とは関係なく悪性の進行を示すが、肥満が癌の発症と進行に寄与するメカニズムは未だ明らかではない
肥満と関連する脂肪は局所的な炎症を引き起こし、脂肪細胞が成熟するのを妨げる

Cancer Research誌で発表された今回の研究はマウスで実施されたものであり、脂肪細胞と乳癌細胞を同時に培養させてその影響を評価した
評価する項目は、腫瘍の悪性度aggressivity、局所浸潤能、腫瘍が転移する潜在性などである

実験結果、乳癌の最初のステージの間に
腫瘍の近くでの腫瘍細胞と未成熟な脂肪細胞との間の相互作用は炎症性タンパクであるサイトカインの分泌を増大させた

「このサイトカインは、非常に転移しやすいCSCをさらに増殖させる」
グラナダ大学の教授Juan Antonio Marchal Corralesは言う


前臨床的な論理的根拠
Preclinical rationale

加えて、研究者はこのプロセスが起きるメカニズムについて記述している
それはSRCキナーゼタンパク質の活性化と関連があり、そこからSox2転写因子の活性化が誘導され、マイクロRNAのmiR-302bの発現が上昇する
Sox2は幹細胞の性質を維持するために必要な転写因子である

「腫瘍細胞と未成熟な脂肪細胞との長期の共培養はCSCの割合を増加させ、サイトカインでも同じことが起きた
CSCは新しく腫瘍を形成する能力を持つ細胞である
マウスの実験では、CSCの増加だけでなく、血液中を循環する腫瘍細胞の存在を増やし、その転移能を増大させた
SRCキナーゼを阻害する薬剤はサイトカインの産生とCSCをどちらも減少させた」

これらの研究結果は肥満の人の乳癌での死亡率増大の根本に存在する新たな洞察を明らかにするとともに、まったく新しい乳癌治療にSRCキナーゼ阻害剤の効能を試験する前臨床的な論理的根拠をもたらす


http://dx.doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-15-0927
Interactions between Adipocytes and Breast Cancer Cells Stimulate Cytokine Production and Drive Src/Sox2/miR-302b-Mediated Malignant Progression.
脂肪細胞と乳癌細胞との間の相互作用はサイトカイン産生を刺激し、Src/Sox2/miR-302bを介する悪性進行を促進する

Abstract
機構的な分析から、
未成熟な脂肪細胞またはサイトカインと共に培養した癌細胞はSrcキナーゼを活性化させ、そうしてSox2とc-Myc、Nanogの上方調節を促進することが実証された

加えて、Sox2依存的なmiR-302bの誘導がcMYCとSOX2発現をさらに刺激し、サイトカインによって誘導される癌幹細胞様の性質をさらに高めた


関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8b2f4115e30e99b7b6e8eecb632fb94e
肥満→胎盤成長因子→VEGFR-1→炎症↑免疫抑制性TAM浸潤↑→癌進行↑体重増加↑→肥満↑↑



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/bfd19fa7951ad286a8a1a4165424c086
グアニリンの受容体は増殖を制御する腫瘍抑制因子として働くが、肥満の結腸癌患者ではグアニリン遺伝子発現が低下している
 

癌細胞のセリンの合成を止める

2016-03-11 06:06:44 | 
Team finds new approach to curbing cancer cell growth

March 7, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160307114023.htm

スクリップス研究所/The Scripps Research Institute (TSRI)の科学者たちは、
新しいアプローチを用いてある種の乳癌、肺癌、メラノーマの治療に使える可能性がある薬剤の新たな候補を明らかにした

今回の研究で焦点を当てたのは20あるアミノ酸の一つ、セリンである
癌の多くは急速で持続的かつ制御不能な増殖を維持するためにセリンを合成する必要がある

この経路に干渉する薬剤候補を見つけるために研究チームは様々なソースから得られた化合物の大規模なライブラリーをスクリーニングし、
ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ/3-phosphoglycerate dehydrogenasePHGDH)を阻害する分子を探索した
PHGDHはセリン生合成において最初の関与段階committed step(方向が決定される段階)を担当する

「癌の代謝を標的とする阻害剤を発見することに加えて、
我々は今やセリン代謝についての興味深い質問に答えるのを助けるツールも持っている」
Luke L. Lairsonは言う
彼はTSRIの化学助教授であり、カリフォルニア生物医学研究所(CALIBR)では細胞生物学の主任研究員principal investigatorでもある
Lairsonは最近PNASで発表された論文の首席著者senior authorである


セリンへの依存
Addicted to Serine

セリンは、ヌクレオチド、タンパク質、脂質を生合成するためにあらゆる細胞において必要とされる
細胞は主に二つの経路からセリンを獲得し、一つは細胞外環境からの取り込み、もう一つは解糖系の中間生成物の3-ホスホグリセリン酸/3-phosphoglycerateをPHGDHによって変換して得る

セリン生合成
3-ホスホグリセリン酸/3-phosphoglycerate

ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ/3-phosphoglycerate dehydrogenase(PHGDH)

3-ホスホノオキシピルビン酸/3-Phosphonooxypyruvate(3-ホスホヒドロキシピルビン酸/3-phosphohydroxypyruvate)

ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ

O-ホスホセリン/O-phosphoserin

ホスホセリンホスファターゼ

セリン

「癌細胞は好気的解糖というプロセスを使って増殖に必要な代謝産物を生成することが1950年台遅くから知られている」
Lairsonは言う

このプロセスはセリンの過剰産生へとつながりうる
最近、癌の中にはPHGDHの発現を増加させる突然変異を獲得するものがいることが実証され、そのような『セリンに依存serine-addicted』する癌細胞でPHGDHの発現を低下させると増殖は阻害された
ワイルコーネル大学医学部(Nature Geneticsで発表)とホワイトヘッド研究所(Natureで発表)の研究から、PHGDHを過剰発現するタイプの癌にとってPHGDHが潜在的な薬剤標的であることが示唆された

LairsonたちはPHGDHを阻害する小分子が癌の代謝に干渉する薬剤候補であり、効果的な癌の治療法の開発への道を指し示すという仮説を立てた
重要な事にこの薬剤は通常の細胞には無害であり、その理由はそれらは通常の増殖をサポートするために十分なセリンを取り込むことができるからである


123と数えるくらい簡単、ではない
As Easy as 1-2-800,000

Lairsonはワイルコーネル、ミシガン大学、ハーバードメディカルスクール、CALIBRと協力して、PHGDHの阻害剤を検出するために80万もの小分子ライブラリーからハイスループットのin vitro酵素分析スクリーニングを実施した
研究グループは408の候補を見つけ出し、このリストからさらに細胞タイプ特異的な増殖阻害活性を元にリストを絞り、他のデヒドロゲナーゼも広く標的にするような阻害剤は消去していった
7つの候補を同定することに成功し、チームはこれらの分子が複雑な細胞環境でPHGDHを阻害できるかを決定すべく質量分析を利用して薬剤候補の存在下で細胞内に新しく合成されたセリンを計測した
分析結果7つの中の一つのCBR-5884が特にセリン合成を30%阻害し、この分子が特にPHGDHを標的とすることが示唆された

研究グループは確認のためにPHGDHを過剰発現する乳癌とメラノーマの細胞系統に対してCBR-5884を投与し、実際に増殖を阻害できることを示した
予想された通り、CBR-5884はPHGDHを過剰発現しない癌細胞を阻害しなかったが、それはこの癌細胞がセリンを取り込むことができるからである
セリンを欠乏させた培地で培養すると、CBR-5884はそれらの癌細胞の増殖も抑制した

研究グループはこの薬剤候補が効果的な治療法となる前に多くの最適化のための研究が必要になるだろうと予想している
この目標のため研究者たちは薬剤候補の効能と代謝的安定性を改善するために医薬化学的なアプローチで取り組むtake a medicinal chemistry approach予定である


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1521548113
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1602228113
Identification of a small molecule inhibitor of 3-phosphoglycerate dehydrogenase to target serine biosynthesis in cancers.



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/d16ba27c8f39c536b11eafaa6804ec93
膠芽腫の一部はアミノ酸のグリシンを分解する酵素に依存する
 

癌細胞が増殖するためのエネルギー

2016-03-10 06:06:45 | 
How cancer cells fuel their growth

March 7, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160307144528.htm

癌細胞は増殖がコントロールできず、腫瘍細胞の大集団hordeを作り出すことが知られている
この急速に増殖する細胞が消費するエネルギーのほとんどはグルコースである

科学者は新しい細胞を構成する質量massのほとんどがグルコースに由来すると考えてきた
それは癌細胞も例外ではない

しかしながら、マサチューセッツ工科大学(MIT)の生物学者は、新しい細胞を形作る材料の最も大きな割合を占めるのはアミノ酸であることを明らかにした
アミノ酸は増殖する細胞があまり『消費』しない栄養素であるため、このことは彼らにとっても意外に思われた

この発見は癌細胞の代謝を調べる際に新しい見方を提供し、増殖して分裂する癌細胞の能力を遮断するための薬剤をもたらすだろう

「もし癌の代謝をうまく標的にしたいのなら、
どのようにして様々な経路が実際に質量を作り出すために使われているのかについてを理解する必要がある」
MITのコッホ統合がん研究所の一員であるMatthew Vander Heiden助教授は言う

Vander Heidenが首席著者senior authorである今回の研究はDevelopmental Cell誌で3月7日に発表される
筆頭著者はMITの大学院生graduate studentのAaron Hosiosである


徹底的に調べる
Burning up

科学者は1920年台から癌細胞が通常の細胞とは異なるやり方、いわゆる『ワールブルク効果』によってエネルギーを作るということを知っていた
通常ヒトの細胞はエネルギー源としてグルコースを使い、酸素を必要とする一連の複雑な化学反応を通してグルコースを分解する
しかしドイツの生化学者ワールブルクは腫瘍細胞が『発酵fermentation』という酸素を使わずエネルギーを作る量も少ない非効率的な代謝戦略に切り替えることを発見した

最近になり、科学者は癌細胞がこの『代わりの経路』を使って増殖のための材料も作るのだろうと仮説を立てた
しかしながら、この仮説に対して、グルコースのほとんどが乳酸に変換されて細胞にとって役に立たないという反論があった
さらに、新しく増殖する癌細胞が一体何を元に構成されるのかについての正確な研究がほとんどまったく存在しなかった
そして、急速に増殖する哺乳類細胞のどんな種類であれ、そのような研究はなかった
there has been very little research on exactly what goes into the composition of new cancer cells or any kind of rapidly dividing mammalian cells.

「哺乳類は様々な食物を食べるため、『どの食物が細胞質量のどの部分に使われるのか』というのは答えが出ない問いに思われた」
Vander Heidenは言う


腫瘍も含めて細胞が必要な材料をどこから得るのか明らかにするため、科学者たちは複数の癌細胞と通常の細胞を培養し、炭素と窒素の同位体で標識付けした様々な栄養素を与えた
これにより彼らは元になった分子が最終的にどうなったかを追跡することが可能になった
また、彼らは細胞を分裂する前と後で重さを量ることで、利用可能だった栄養素それぞれが細胞質量に寄与した割合を計算できるようにした

実験の結果、細胞は非常に高い速度でグルコースとグルタミンを消費したにもかかわらず、それらは新しく増殖した細胞の質量にあまり寄与していないことが明らかになった
グルコースは細胞内の炭素の10%から15%であり、グルタミンは10%だった
代わりに最も細胞質量に寄与していたのはタンパク質を構成するアミノ酸であり、
グルタミンを除いたアミノ酸は新しい細胞で見られる炭素原子の大部分に貢献し、総質量の20%から40%を占めていた

最初は驚いたものの、この研究結果は理にかなっているとVander Heidenは言う
なぜなら細胞はほとんどがタンパク質からできているからだ

「自分自身を構成するものを作るために、より単純でより直接的な経路を利用することはいくらかの節約になる
もしレンガ造りの家を建てるなら、泥からレンガを作るよりも周りにレンガがあればそれを使ったほうが簡単だ」


疑問に再び焦点を合わせる
Refocusing the question

謎が残ったままである
なぜ増殖するヒトの細胞はそんなにも多くのグルコースを消費するのか?
これらの細胞によって燃焼されるグルコースのほとんどが乳酸として排出されることが明らかになり、これは以前の研究と一致している

「ここから我々が至った結論は、
グルコースの高い消費速度の重要性は必ずしも細胞質量を形作るための炭素の操作ではなく、
それによって提供される他の産物に関してのもの、たとえばエネルギーである」
Hosiosは言う


Vander Heidenのラボは現在、ワールブルク効果がどのようにして細胞の増殖reproduceを助ける可能性があるのかについてのより統合的な理解を追求している
「これは疑問に再び焦点を合わせる
それは必ずしも
細胞がグルコースを細胞質量に組み入れるのを どのようにしてワールブルク効果が助けるのかについてではなく、
むしろ
細胞がアミノ酸を使ってより多くの細胞を作るのを なぜグルコースから乳酸への変換が助けるのかについてである」


http://dx.doi.org/10.1016/j.devcel.2016.02.012
Amino Acids Rather than Glucose Account for the Majority of Cell Mass in Proliferating Mammalian Cells.
増殖する哺乳類細胞において細胞質量の大部分を占めるのはグルコースよりもむしろアミノ酸である


Highlights
・哺乳類の細胞質量の大部分の源はグルコースとグルタミンではない
・増殖する細胞にとって豊富な炭素と窒素を提供するのはグルタミン以外のアミノ酸である
・増殖しない哺乳類細胞は、細胞質量の代謝回転turnoverの程度は変わりやすくvariable可変性を示す
・栄養素の運命は限定されておりdetermined、グルタミンは主にタンパク質になる


Summary
細胞は増殖proliferateするために質量を二倍duplicateにしなければならない

グルコースとグルタミンは増殖する哺乳類の細胞が消費する栄養素の大部分を占めるが、
これらや他の栄養素が細胞質量にどの程度寄与しているのかは知られていない

我々は様々な栄養素に由来する細胞質量の割合を定量化することにより
細胞内の炭素の大部分は他のアミノ酸に由来することを明らかにした
グルタミン以外のアミノ酸はグルコースとグルタミンよりも消費速度がかなり遅い

グルコースの炭素は様々な運命をたどるが、グルタミンはそのほとんどがタンパク質に貢献する
これはTCA回路の中間生成物intermediateを補充するグルタミンの能力(アナプレロティック反応anaplerosis)が
主にアミノ酸の生合成のために使われることを示唆する

これらの研究結果は、栄養素の消費速度は質量の蓄積と間接的に関連があることを実証し、
グルコースとグルタミンの消費の早さは、生合成のための炭素を提供する以外に、急速な細胞増殖をサポートする



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/41d21c8ebda202f1c0bc582fec4aa5d6
細胞の増殖にはアスパラギン酸の合成とミトコンドリアの呼吸が必要



PARK7の欠陥は代謝を変化させて酸化ストレスを生じる

2016-03-07 06:06:26 | 
New approaches for Parkinson's treatment? Researchers study metabolic changes

March 2, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160302083559.htm

ルクセンブルク大学・システム生体医学センター/Luxembourg Centre for Systems Biomedicine (LCSB) は、
ドイツのコンスタンツConstance、ミュンヘンMunich、ボーフムBochumの研究者たちと協力して、
DJ1(PARK7)という遺伝子に欠陥があるパーキンソン病患者のニューロンが早く年老いていく原因を研究している

この遺伝子の欠陥は細胞の代謝の変化を引き起こし、
その結果ニューロンは酸化ストレスにさらされsubjected、脳内の免疫応答が増大する結果になるmean
この研究結果は科学誌のNeurobiology of Disease誌で発表された


パーキンソン病は二番目に多い神経変性疾患であり、患者の15%に遺伝的な原因がある
この疾患に特徴的な運動症状が生じる原因は黒質ドーパミン作動性ニューロンの早すぎる老化にあるが、
それがどのようにして起きるのかは完全には理解されていない

LCSBメタボロミクス研究グループのリーダーであるKarsten Hiller教授は代謝metabolismの面からその答えを探している
今回の研究で彼ら研究チームは、パーキンソン病のタイプの一つであるDJ1遺伝子に欠陥がある患者を調査した

「DJ1の量は適切でなければならない
癌の中にはDJ1が多すぎるものがある一方で、パーキンソン病のニューロンには十分な量のDJ1がなく、次第に死に絶えていく」
Hillerはそのように説明する

研究チームはDJ1を持たないニューロンの代謝を調べ、二つの重要な代謝経路が影響を受けることを明らかにした

「DJ1がないとニューロンは十分なグルタミンを吸収できず、これはセリン産生にも影響する
グルタミンとセリンはどちらもグルタチオンを作るために重要であり、足りなければフリーラジカルを中和できなくなる」
筆頭著者のJohannes Meiserが説明する

「DJ1が存在しないとこの防御メカニズムは効率的に働かず、酸化ストレスが生じる
これが細胞を早く老化させる」

研究チームはDJ1遺伝子の突然変異が脳内の別の細胞にもネガティブな影響を及ぼすことも示した
ミクログリアは脳内の免疫反応を担当する細胞だが、DJ1に欠陥があるとミクログリアは『過剰に活性化』する

「通常のミクログリアは、例えば炎症時など脳内の何かを取り除く必要が生じた時にのみ活性化する
しかしながら、今回我々が発見したようにDJ1に欠陥がありミクログリアが常に活性化していると、
その影響下にあるニューロンを弱めてしまう」

興味深いことに、研究者はDJ1に突然変異を持つ患者のミクログリアだけでなく、血液中でも代謝的な変化を明らかにした
これは将来新たな診断法への道を開く可能性がある

次のステップは、冒された代謝経路にどのようにして薬剤で影響を与えられるかについての調査などが予定されている
今回明らかにされたグルタミンとセリンの代謝プロセスの変化は、したがってパーキンソン病の治療への新たなアプローチの開発に用いられる可能性がある


http://dx.doi.org/10.1016/j.nbd.2016.01.019
Loss of DJ-1 impairs antioxidant response by altered glutamine and serine metabolism.


Highlights
・DJ-1の欠損は、ニューロンにおけるグルタミン取り込みの不足とGLS2発現の減少につながる
・DJ-1の欠損は、ニューロンにおけるセリン生合成の減少とMTHFD遺伝子発現の減少につながる
・ニューロンにおけるグルタミンとセリン代謝の減少は合わせてGSH恒常性に影響を及ぼし、酸化ストレスを惹起する
・DJ-1に欠陥があるマウスミクログリアは、弱い炎症促進性の活性化を構成的に示し、さらにDJ-1欠陥ニューロンを混乱させるperturbe
・我々はROSから保護する複雑なメカニズムを解決し、トランスレーショナル研究への代謝的なエントリーポイントを正確に指摘する


Abstract
癌遺伝子oncogeneであるDJ-1は、元々PTENのサプレッサーとして明らかにされた
それよりずっと先にfurther on、DJ-1の機能喪失変異がパーキンソン病の要因causative factorとして記述されてきた

DJ-1は細胞の抗酸化応答において重要な機能を持つが、そのニューロンの中心的な代謝における役割は未だ明らかではない


我々は安定同位体を用いた代謝プロファイリングによりDJ-1の機能喪失の影響を調査し、
DJ-1に欠陥を持つ神経細胞ではグルタミンの流入が減少してセリン生合成が低下することを示した
これら二つの代謝経路はGSH合成の前駆体を提供するため、これらは細胞の抗酸化応答にとって重要である

DJ-1喪失の結果として起きるこれらの経路の下方調節により抗酸化応答は損なわれる
さらに、DJ-1欠陥マウスミクログリアは弱いが構成的な炎症促進性の活性化を示す
それらを組み合わせた影響は、DJ-1突然変異を持つ患者のドーパミン作動性ニューロンの神経変性への感受性を上昇させる



Fig. 7.
Dj-1ノックアウトマウス骨髄由来細胞とマクロファージへ分化した細胞(BMDM)ならびにDJ-1患者の末梢血単核球(PBMC)由来のCD14+マクロファージの安定同位体ラベリングは、TCA回路へのグルタミンの寄与の低下を示す

(g)
DJ-1の機能的な役割をハイライトし、かつDJ-1欠乏の結果として影響を受ける代謝経路を要約したモデル図

影響を受ける代謝産物metabolite、酵素、経路は、赤い星でハイライトされている

DJ-1の喪失はグルタミンの流入の減少につながり、
セリン生合成が低下、5,10-methylene tetrahydrofolate dehydrogenase(MTHFD)発現が低下する
これらはグルタチオン(GSH)の恒常性ならびに抗酸化応答に必要である

GSHレベルの低下により、DJ-1が欠乏した細胞は活性酸素種(ROS)への感受性が増大する

さらに、MTHFDとG6PDHの発現の低さは
NADPH産生の潜在能力potentialの低下を示唆する
NADPHは酸化したグルタチオン(GSSG)の還元に必要である

癌細胞においてDJ-1はPTENを抑制するリプレッサーとして働く
PTENはAKTのネガティブな調節因子である

 DJ-1─┤PTEN─┤AKT

活性化したAKTはmTORC1を活性化しうる

AKTとmTORはどちらも、細胞生存と増殖に必要な代謝プロセスの駆動に重要であり、
何よりもグルタミノリシスglutaminolysis(グルタミンを分解してエネルギーを取り出す)に必要なプロセスで重要である

 DJ-1─┤PTEN─┤AKT→mTORC1→グルタミノリシス

加えて、転写因子p53はPTENの活性化因子として働き、それによりDJ-1機能と拮抗する
さらに、p53はmTORを抑制し、アポトーシスを誘導する

しかしながら、これらの代謝ネットワークの潜在的なノードnodeの関連性は神経細胞ではさらに確認する必要がある


Discussion
DJ-1が欠けていると、AKTのリン酸化は低下し、mTORの活性も低下する
mTORはアナプレロティック反応anaplerosisのマスターレギュレーターであり、増殖と細胞生存に重要である
それらの低下はp53の活性に有利である
転写因子p53は酸化ストレスで活性化し、アポトーシスを誘導する

 DJ-1↓,酸化ストレス↑,AKT↓,mTOR↓,p53↑,アポトーシス↑




関連サイト
https://en.wikipedia.org/wiki/PARK7
英語Wikipedia: PARK7
酸化ストレス状態下において、デグリカーゼdeglycaseであるDJ-1は、そのシャペロン活性によりα-シヌクレインの凝集を阻害する[7][8]
したがって酸化還元に感受性のシャペロンとして機能し、酸化ストレスのセンサーとして働く


関連サイト
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=PARK7
DJ-1はタンパク質デグリカーゼdeglycaseであり、メチルグリオキサール-ならびにグリオキサール-糖化アミノ酸(システイン・アルギニン・リジン)を修復する

※glycate: グリケート。タンパク質のフリーのアミノ基と糖との間の非酵素的な反応による生成物
※glycation: グリケーション。メイラード反応などと呼ばれていた非酵素的反応
※glycated albumin: 糖化アルブミン

※glycase: グリカーゼ
※deglycase: デグリカーゼ



関連サイト
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3%E7%97%85
日本語Wikipedia: パーキンソン病: PARK7 DJ-1
DJ-1タンパクは酸化ストレスに対して神経を保護する作用を持つ[96]。ミトコンドリアにも局在しており、パーキン/ピンク1経路とはまた別の経路でミトコンドリアを保護し、オートファジーに関与している[97]。

[96]http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15784737
Hypersensitivity of DJ-1-deficient mice to 1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyrindine (MPTP) and oxidative stress.

酸化ストレス仮説
抗酸化作用をもつDJ-1タンパクをコードするDJ-1遺伝子の変異が家族性パーキン病の原因 (PINK7) となることから、酸化ストレスがパーキンソン病の一因であると推測される。