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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

BBBでのアミノ酸の輸送の障害が自閉症につながる

2016-12-30 06:06:38 | 
Autism spectrum disorders: New genetic cause of identified

December 1, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/12/161201121502.htm

自閉症スペクトラム障害(ASD)は全世界の人口の約1パーセントが罹患しており、社会的な相互作用やコミュニケーションでの広範囲な困難が特徴である
Cell誌で発表された新たな研究によれば、ISTオーストリアの教授であるGaia Novarinoが率いるチームはASDの遺伝的原因の一つを突き止めたという
Gaia Novarinoはこの発見の重要性を次のように説明する

「自閉症の原因となる遺伝子変異には様々なものが多くあるものの、それらは全て非常にまれである
自閉症の効果的な治療法の開発を困難にしているのは、そのような異種混合性heterogeneityである
我々の分析は自閉症と関連する新たな遺伝子を明らかにしただけではなく、その遺伝子の変異が自閉症を引き起こすメカニズムを突き止めた
興味深いことに、他の遺伝子における変異も同じ自閉症を引き起こすメカニズムを共有する
これは我々がASDのサブグループを浮かび上がらせたunderscoreということを示す」

Caglayan博士は次のように指摘する
「新たな遺伝子を突き止めることは、特に自閉症のような異種混合性heterogeneousの疾患では非常に難しい
しかしながら、共同研究の努力の結果、近親婚consanguineous marriagesの家庭に生まれ、症候性自閉症syndromic autismと診断された複数の両親において、我々はSLC7A5という遺伝子の変異を明らかにした」
彼はIstanbul Bilim University in
トルコ/Turkeyのイスタンブール・ビリム大学/Istanbul Bilim Universityの医学部で遺伝医学部/Department of Medical Geneticsの部長Chairmanである

※SLC7A5/LAT1
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=SLC7A5


SLC7A5はアミノ酸の一種、分岐鎖アミノ酸/branched-chain amino acids (BCAA) を脳内に輸送するタンパク質である
SLC7A5の変異がどのようにして自閉症につながるのかを理解すべく、研究者は血液と脳との間のバリアにあるSLC7A5を取り除いたマウスを調査した
これによりマウスの脳内のBCAAレベルは低下し、ニューロンのタンパク質の合成は干渉を受ける
実験の結果、マウスは社会的な相互作用の低下を示し、他の自閉症マウスモデルでも観察されるような行動の変化を示した

以前の研究でGaia Novarinoたちは、同じアミノ酸の分解に関与する遺伝子の変異を複数の患者、つまりASDと知的障害intellectual disability、てんかんepilepsyの患者において明らかにしている

Gaia Novarinoは次のように説明する
「もちろん、自閉症を引き起こす遺伝子の全てがアミノ酸レベルに影響するわけではなく、そしてこのタイプの自閉症が非常にまれなのは議論の余地がないunarguably
しかし、さらに多くの自閉症原因遺伝子がこのグループに分類される可能性はありそうである」


特に注目すべきは、血液脳関門でSLC7A5を失った成体マウスにおける神経学的な異常のいくらかは治療可能だったということだ
BCAAをマウスの脳内へと3週間投与すると、行動症状behavioral symptomsの改善が観察されたのである

筆頭著者でありGaia NovarinoのグループでPhD studentのDora Tarlungeanuは、この結果からもたらされる見通しoutlookに興奮して次のようなコメントをしている
「我々の調査から、このタイプのASDマウスモデルで現れる特定の症状について潜在的な治療法が見つかった
しかし、ヒトのASD患者へと応用translationするにはさらに長い研究が必要になるだろう」


今回の結果は、ASDという病態が常に不可逆で回復不能であるという一般的な観念に反するものだ
無論、彼らがマウスで治療した方法は直接ヒトで使うことはできないが、
彼らはSlc7a5を持たないマウスが示す神経学的な合併症complicationsのいくらかが回復可能であるという結果を示しており、いつかはヒトの患者もまた治療が可能になる見込みはありそうである


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2016.11.013
Impaired Amino Acid Transport at the Blood Brain Barrier Is a Cause of Autism Spectrum Disorder.


タンパク質の翻訳↓、社会的相互作用↓、mIPSCの頻度↓

微小抑制性シナプス後電流/miniature inhibitory postsynaptic current(mIPSC

Highlights
・マウスのSlc7a5は脳内の正常なBCAAレベルの維持にとって決定的に重要である
・マウスにおいて脳内のBCAA欠乏は神経行動学的な変化の引き金を引く
・SLC7A5変異を持つ患者は自閉症スペクトラム障害(ASD)ならびに運動遅延motor delayを示す
・Slc7a5変異体/mutantのマウスの行動は、BCAA注入によって部分的に修正される


Summary
自閉症スペクトラム障害/autism spectrum disorders (ASD) は、しばしば他の神経学的病態と重複する遺伝的疾患genetic disordersの一群である
以前我々は、ASDの原因として、分枝鎖アミノ酸/branched-chain amino acid(BCAA)の異化経路catabolic pathwayにおける異常について記述した
今回我々は血液脳関門(BBB)に局在して大型中性アミノ酸/large neutral amino acid(LNAA)を輸送する『溶質輸送体solute carrierトランスポーター7a5(SLC7A5)』が、脳内の正常なBCAAレベル維持において必須の役割を演じることを示す

※中性アミノ酸: 中性アミノ酸は脂肪族や芳香族、イミノ酸、オキシアミノ酸、含硫アミノ酸、酸性アミノ酸アミドという6種類に大きく分類される。20種類の中で中性アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン
酸性アミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸。塩基性アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジン。

※分岐鎖アミノ酸/branched-chain amino acid(BCAA):バリン、ロイシン、イソロイシン

※大型中性アミノ酸/Large Neutral Amino Acid(LNAA): トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン

※トランスポーターによるアミノ酸の輸送は、ナトリウムの存在に依存するかどうかによって分類される。中性アミノ酸の輸送で、ナトリウムに依存するのがA型、G型、ASC型、N型などで、ナトリウムに依存しないのがL型、asc型、T型など。L型の一つがLAT1(SLC7A5)


マウスBBBの内皮細胞からSlc7a5を削除すると、その結果として、非典型的な脳アミノ酸プロファイル、異常なmRNA翻訳、重度の神経学的異常につながる
さらに、SLC7A5遺伝子に有害なホモhomozygousの変異を持ち、自閉症の特質traitsならびに運動遅延motor delayを示す複数の患者を我々は同定した
最後に、脳室内intracerebroventricularにBCAAを投与することで変異を持つ成体マウスの異常行動が軽減されることを我々は実証する
我々のデータはSLC7A5変異によって定義される神経学的症候群を明らかにし、ヒトの脳機能においてBCAAが必須の役割を演じることを支持するものである



関連サイト
http://www.j-pharma.com/b3.html
癌ではLAT2の代わりに発癌遺伝子c-Mycの制御を受けるLAT1の発現が上昇し、LAT1の発現は悪性度を予測する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150107131339.htm
リソソーム膜SLC38A9輸送体によるアルギニンの輸送によってmTORC1が活性化する




関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/70990360aaeb3bb060b485ef09d88549
たった一つのスプライシング関連タンパク質が自閉症の発症に広く影響を与える

 

たった一つのタンパク質が自閉症の発症に広く影響を与える

2016-12-23 04:44:40 | 
Autism breakthrough: One protein's sweeping influence on development of autism revealed

December 15, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/12/161215143402.htm


(動物実験では、nSR100タンパク質のレベルを半分に低下させることは自閉症のようなふるまいを引き起こすのに十分だった

Credit: Mathieu Quesnel Vallieres)

自閉症の三分の一もの症例は脳内の単一のタンパク質が欠乏することによって説明されうることを、トロント大学の科学者は明らかにした
この研究結果は『遺伝的欠陥の多様な集団a motley crew of genetic faultsに根ざした疾患』である自閉症の治療法を開発するための、これまでに類のない機会をもたらす

※a motley crew: いろいろな人間の一団

トロントの研究者は脳の正常な発達に重要なnSR100というタンパク質(SRRM4としても知られる)のレベルを低下させることによって、マウスに自閉症様のふるまいを誘発させた
12月15日号のMolecular Cell誌で発表された今回の研究は、自閉症の人々の脳内ではnSR100タンパク質が減少していることを示した以前の研究を基にしている

※nSR100: Neural-Specific Serine/Arginine Repetitive Splicing Factor Of 100(ニューロン特異的セリン/アルギニン反復スプライシング因子100)
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=SRRM4

研究チームを率いるのはトロント大学ドネリーセンターのBenjamin Blencowe教授と、同じくトロント大学分子遺伝学のSabine Cordes教授である
Cordesはサイナイ医療システム/Health SystemのLunenfeld-Tanenbaum Research Instituteにも所属している

Cordesは次のように言う
「我々は以前nSR100タンパク質レベルと自閉症との間の関連を報告した
しかし今回我々は、nSR100レベルの低下が実際に原因causativeとして作用することを示す
これは非常に重要なことだ
ただ単にnSR100レベルを50パーセント低下させることにより、自閉症的なふるまいの特徴が観察されるのである」

また、今回のデータからはnSR100が『自閉症に寄与する様々な分子的エラー』を伝えるための中核hubとして働くことが示唆される


自閉症は一般的な神経疾患であり、人口の1パーセント以上が罹患している
自閉症は『変わった社会的行動/altered social behaviours』をすることでよく知られ、その程度は途方もなく多様でありうるために『自閉症スペクトラム障害/autism spectrum disorder (ASD)』とも呼ばれる
その発端は遺伝であるとしても原因が特定されているのは症例のほんの一部だけであり、疾患の背後にある原因はわかっていない

今回のトロント大学の研究では、nSR100タンパク質が社会的行動や自閉症の他の特徴に広範囲な影響を与えるというエビデンスがもたらされる
選択的スプライシング/alternative splicingというプロセスからは著しく多様なタンパク質が生み出されるが、nSR100は脳内で選択的スプライシングの鍵となる調節因子として働く

細胞の材料であるタンパク質は遺伝子のDNA配列にコードされているが、有用なコードは何もコードしていないDNA(ノンコーディングDNA)によってバラバラになっている
選択的スプライシングではそのような何もコードしないスペーサーが除去され、タンパク質をコードする部分が接合されて(※splice「重ね継ぎをする」「接合する」)、タンパク質のテンプレートが完成する
しかしつなぎ合わされたコードの指示書は変化することがあり、途中がいくつか抜け落ちたりすることで、単一の遺伝子から様々なタンパク質が生まれうる
このようにして細胞は、遺伝子の数よりも途方もなく多いタンパク質のツールボックスを持つことができるのである

なので、選択的スプライシングが特に脳で際立っているのは驚くべきことではない
脳の驚くべき複雑さの背後にある駆動力は、タンパク質多様性の急激な増加によると考えられているからである


nSR100を発見したのはBlencoweのチームであり、自閉症の人々の多くの脳でnSR100が減少していることも示している

今回の研究結果は自閉症が(部分的には)間違ってスプライシングされたタンパク質が脳細胞に蓄積して生じうることを示唆する
それが脳内の配線の間違いにつながり、やがて自閉症的な行動という結果になりうるのだという


今回の研究ではnSR100の不足が実際に自閉症を引き起こすかどうかを真正面からhead-onテストしようと決め、BlencoweとCordesが共同で監督/jointly superviseした大学院生graduate studentのMathieu Quesnel-VallieresがnSR100を欠くミュータントマウスを作成してその行動を研究した
その結果、驚いたことにnSR100タンパク質レベルが半分低下するだけで自閉症の行動的な特徴、つまり社会的相互作用の回避/avoidance of socialinteractionsや、雑音に対する感受性の高さを引き起こすのに十分であることを発見した
nSR100変異マウスはヒトの自閉症患者が持つ他の多くの特徴、例えば選択的スプライシングの変化や、脳内のシグナル配線の変化のような特徴を共有していた

大学院生のZahra Dargaeiやトロント大学細胞システム生物学部のMelanie Woodin教授、バルセロナゲノム調節センターのManuel Irimia博士らとの共同研究では、nSR100レベルがニューロンの活動とリンクしていることを示すことも可能だった


Quesnel-Vallieresは言う
「ニューロンの活動が上昇すると(それは自閉症の多くのタイプに当てはまるが)、nSR100がコントロールする選択的スプライシングのプログラムが乱れ、それが自閉行動/autistic behaviourの発端となる」


トロント大学で分子遺伝学の教授でもあるBlencoweは言う
「nSR100欠陥マウスの持つ大きな価値は自閉症の他の原因について説明できることであり、それらの原因がnSR100タンパク質へと収束することによってどのようにして神経生物学に影響を与えるのかの理解を助けるのである」

「我々のマウスモデルは、自閉症で不足するnSR100を回復できるような小分子をテストするための有用な実験の場/testing groundとしても役立つだろう」


Cordesは言う
「自閉症と関連する個々の変異に注目する代わりに、nSR100のような『調節の中核/regulatory hubs』を突き止めることは非常に強い影響があるpowerful
将来、自閉症患者でこのタンパク質をわずかに強めるturn upことで行動障害のいくつかを改善できるかもしれない」


http://dx.doi.org/10.1016/j.molcel.2016.11.033
Misregulation of an Activity-Dependent Splicing Network as a Common Mechanism Underlying Autism Spectrum Disorders
自閉症スペクトラム障害の根底にある共通のメカニズムとしての、ニューロンの活動に依存的なスプライシング・ネットワークの調節不全


Highlights
・nSR100/Srrm4のハプロ不全haploinsufficientのマウスは複数の自閉症様の特徴を示す
・nSR100変異マウスはシナプスの伝達ならびにニューロンの興奮性が変化する
・ニューロンの活性化は、自閉症の個々人で観察されるスプライシングの変化を誘発する
・ニューロンの活性化は、nSR100レベルを低下させることによりスプライシングを変化させる


Summary
自閉症の脳をトランスクリプトーム・プロファイリングで分析したところ、分析した人たちの3分の1以上で、ニューロン・スプライシング調節因子のnSR100/SRRM4の調節不全と、その標的であるマイクロエクソン・スプライシング・プログラムとの相関が明らかになった

nSR100の調節不全と自閉症とに因果関係があるのかどうかを調査すべく、nSR100タンパク質レベルならびにその標的スプライシング・プログラムが低下する変異マウスを我々は作成した

実験の結果、際立っていたのはこれらのマウスが複数の自閉症様の特徴(社会行動の変化、シナプス密度とシグナル伝達の変化)を示したことである

ニューロンの活動の上昇はしばしば自閉症と関連するが、それはnSR100の急速な減少、ならびに、マイクロエクソンのスプライシングという結果になる
それらは自閉症の脳で調節不全を起こしているものと著しく重複する

まとめると、我々の結果はnSR100に依存的なスプライシング・ネットワークの調節不全が自閉症の症例のかなりの割合と因果関係があるというエビデンスを提供する
このスプライシングネットワークはニューロンの活動の変化によってコントロールされる



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150401093631.htm
自閉症患者の脳ではnSR100のレベル低下とマイクロエクソンのスプライシングが相関する




関連サイト
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20150424-3/
自閉症患者の脳内ではPTPδのミニエクソンペプチドA及びB配列を含むスプライシング調節に異常がある




関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/502eb26129d1acd3872624e380fbd02b
核内でスプライシングに関与するRbfox1は自閉症やてんかん等と関連するが、細胞質のRbfox1バリアントはmRNAに結合して翻訳を調節し、Rbfox1が失われると翻訳の調節が失われて癌化する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4f9b9ec8e2dbbf4fc50e0a4097a83e31
自閉症患者から作られたミニチュア脳では、FOXG1遺伝子発現の増大により抑制性ニューロンが過剰に産生された
細胞増殖・ニューロン分化・シナプス形成に関与する遺伝子が上方調節され、細胞周期は加速し、GABA作動性の抑制性ニューロンが過剰産生された



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a09b1b207c031eeb1a6939ed733c6f07
自閉症ではオートファジー/刈り込みが抑制されている



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160211142012.htm
ADNP遺伝子の突然変異は自閉症と関連する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/dc706e6e2204d0f3b8c534f205abb7f2
カルモジュリン・MYC・代謝調節型グルタミン酸受容体に代表される3つの遺伝子ファミリーのコピー数多型が、自閉症スペクトラム障害の発症に影響する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/05c3fe31c2803ff395c2c1bf7cfd41e4
UBE3Aはリン酸が結合するとスイッチがオフになるが、自閉症と関連する変異はこの調節スイッチを破壊して常に活性化したままにする



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150130092921.htm
自閉症スペクトラム障害と関連付けられた遺伝子の多型はドーパミン輸送機能を障害する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f1d4a500b4d4d020b4450fd2a87e6a35
CHD8遺伝子の突然変異がある人々は、自閉症と胃腸障害、そしてより大きな頭部と広い眼が特徴である可能性が高い
自閉症スペクトラム障害の6,176人の小児の研究では15人にCHD8の突然変異があり、これらの症例すべてに同様の外見と、そして睡眠障害と胃腸問題の問題があった。



関連サイト
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%82%AE%E3%83%B3
ニューレキシンの内因性リガンドであるニューロリギンはシナプスの成熟や機能を調整し、遺伝子改変マウスは自閉症様行動を示す。



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161028161729.htm
自閉症とミトコンドリア障害に関連
自閉症の一部にミトコンドリア遺伝子欠失の異常などが見られた




関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160107094747.htm
脊髄小脳失調症1型(SCA1)マウスのプルキンエ細胞では、シナプスの足場タンパク質であるHomer-3が低下しており、そのHomer-3はmTORC1によって調節される
「興味深いことに、mTORC1のシグナル伝達の変化は自閉症様の行動ならびに知的障害と関連する」
 


癌の転移が高脂肪食で増加することを示す革新的なエビデンス

2016-12-13 06:06:59 | 
Cancer spread is increased by a high fat diet, ground-breaking evidence shows

Researchers discover new cancer spreading protein

December 7, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/12/161207132117.htm



イギリスの慈善団体/UK charityである『世界がん研究/Worldwide Cancer Research』から一部資金提供を受け、バルセロナ研究所/Institute for Research in Barcelona(IRB)の教授であるSalvador Aznar Benitahが率いる研究チームは、転移する能力を持つ癌細胞上にCD36というタンパク質を初めて特定した
腫瘍細胞の細胞膜内に見られるCD36は細胞が脂肪酸を取り込むためのタンパク質である
この独特なCD36の活性ならびに脂肪酸への依存は、他の腫瘍細胞とは異なり、転移を開始する細胞の本質的特徴である
研究は本日Nature誌で発表される


癌が致死的となるのは転移を始めた時であり、治療の成功は難しくなる
したがって世界中の科学者たちが転移のプロセスがどのようにして起きるのかを理解しようと努力しており、それを止めるための方法を開発しようとしている

Benitah教授の研究チームは、様々な腫瘍の患者から得られた転移癌細胞の表面にCD36が存在することを発見した
調査された腫瘍には口腔癌、メラノーマ皮膚癌、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、乳癌が含まれる

CD36が癌の転移に必須となる役割を演じていることを確認するためにCD36を『転移しない癌細胞』に加えたところ、その細胞は転移するようになったのである

「我々はまだ腫瘍の全てのタイプでテストしてはいないが、CD36は転移する細胞の大部分に共通するマーカーgeneral markerであると言える
これは私が知る初めての転移全体に特異的な特徴である」
IRBバルセロナの幹細胞・癌研究室/Stem Cell and Cancer Labの代表/HeadであるBenitah教授は言う

「我々はこの研究が科学界/scientific communityに大きな衝撃を与え、転移の研究にさらなる進歩をもたらすと予想している
また、我々は転移に対する治療法としてのCD36の潜在性を実証できればと思っている
このようなことは毎日そうそう起きるものではない」


研究チームは続いて、脂肪の取り込みが癌の転移にどのように関与するのかを調べた
マウスへ高脂肪食を与えた後にヒトの口腔癌タイプの癌細胞を注入すると、高脂肪食は50パーセント多いマウスで転移を大きくし、転移の頻度を増加させた

彼らは次に、パルミチン酸palmitic acidという特定の飽和脂肪酸をテストした
パルミチン酸は動物脂肪や植物油の主な要素であり、特にパーム油に高濃度で含まれている
パーム油はピーナッツバターや加工食品から歯磨き粉に至るまで、日常的な家庭用品house hold productsの多くで使われる油である

研究チームがヒトの口腔腫瘍をパルミチン酸で二日間処理し、それを通常食を与えていたマウスに注入すると、CD36を持つマウスの全てが転移を生じた
しかし、パルミチン酸で処理しなかった場合は半分しか転移が起きなかった


Benitah教授が警告する
「ヒトの腫瘍細胞を接種されたマウスでは、脂肪の取り込みと、CD36による転移の潜在能力potentialの増加との間には、直接のつながりが存在するように思われるappear
この興味深い関連を解明するためには、さらなる研究が必要である
その理由は特に、工業化された国々では飽和脂肪や砂糖の消費が驚くほどの増加を示しているからである」

「脂肪は人体の機能に必要である
しかし、制御不能の脂肪摂取は健康に影響を与えうる
それは既に結腸癌のようないくつかの腫瘍で示されており、また我々が今回転移で示したようにである」


さらに研究チームはヒトの口腔癌を持つマウスを使い、CD36の阻害が転移を完全に阻止することを示した
既に転移した癌細胞を持つマウスでは、CD36を阻害する抗体により20パーセントのマウスで転移が完全に除去された一方で、残りのマウスでも転移を80パーセントから90パーセントも劇的に減少させ、腫瘍のサイズを縮小させた
重要なことに、それらは全て、深刻な副作用が全くなく達成された

研究者たちは現在CD36に対する抗体をベースとした新たな治療法を開発中である
将来それは潜在的に、幅広い癌の治療に適する可能性がある


Worldwide Cancer ResearchのScience Communications ManagerであるLara Bennett博士は次のように言う
「我々は何年もの間Benitah教授の研究をサポートしてきたが、今回このような真に革新的な結果を目にすることはとても素晴らしいことだ
もし研究チームがヒトの治療に使える抗体を開発できれば、毎年何千何万という命が救われるだろう」




http://dx.doi.org/10.1038/nature20791
Targeting metastasis-initiating cells through the fatty acid receptor CD36.
脂肪酸受容体CD36を通じて転移開始細胞を標的にする


Abstract
転移を開始する細胞のアイデンティティがヒトのほとんどの癌で不明であるという事実は、転移に対する治療法の開発を妨げている

今回我々はヒト口腔癌におけるサブ集団のCD44bright細胞について記述する
それは間葉系遺伝子を発現せず、細胞周期が遅く/slow-cycling、脂肪酸受容体CD36ならびに脂肪代謝遺伝子を高レベルで発現し、そして転移を開始する能力は唯一無二uniqueである

パルミチン酸または高脂肪食は、CD36陽性の転移開始細胞の転移の潜在能力を明確に加速し、それはCD36に依存的なやり方である/CD36-dependent manner

CD36を阻害する中和抗体を使うことにより、免疫不全immunodeficientまたは免疫応答immunocompetentのどちらでも、ヒト口腔癌の同所(移植)マウスモデル/orthotopic mouse modelsにおいて転移はほとんど完全に阻止され、副作用はない

※orthotopic graft: 同所移植(正常に存在すべき解剖学的部位に移植すること)

臨床的には、非常に多くのタイプの癌でCD36陽性の転移開始細胞の存在は予後の悪さと相関があり、
CD36を阻害することは、少なくともメラノーマと乳癌由来の腫瘍では転移を抑制する

合わせて考えると、我々の結果は、転移開始細胞は転移を促進するために食事の脂質に特に依存することを示す



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体が燃焼するよりも多くの脂肪酸を摂取すると、過剰な脂肪はセラミドに変換される
セラミドはPKCζの活性化を促進し、肝臓でCD36による脂肪取り込みを増加させる



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/56f388798d065b7830e4e7c300ccef81
高脂肪食は非幹細胞に幹細胞の性質を獲得させて、腫瘍形成の増大につながる



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脂肪を蓄積した癌は悪性化する



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転移する癌はミトコンドリアを使う



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グルコースが欠乏すると食事の好みをグルタミンへと変化させる癌細胞がいる



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白血病のCD36+癌幹細胞は脂肪組織に隠れる



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癌はどのようにして脂肪に依存するようになるのか



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https://www.sciencedaily.com/releases/2014/02/140227191211.htm
前立腺癌細胞はアンドロゲンに応答して、解糖系だけでなくミトコンドリアによる脂肪代謝も上昇させる



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/7760e8a53d9993cf4f91f9d8aed311bc
癌細胞はミトコンドリアで乳酸を使う



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CD44v6を阻害するペプチドは転移を抑制する

http://dx.doi.org/10.1053/j.gastro.2015.10.020
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参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

はぁ?
 

タウのリン酸化は悪いことばかりではない

2016-12-11 06:06:07 | 
Discovery opens door to new Alzheimer's treatments

November 17, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/11/161117151205.htm


(These are neurons in culture dishes.
The colors highlight the human tau protein in green, a structural component in red and the DNA inside the cell nucleus in blue.

Credit: UNSW/Lars Ittner)

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)の研究者は、アルツハイマー病(AD)につながる神経細胞のプロセスに光を当てた
これはアルツハイマー病がどのようにして起きるのかについてのこれまでの考えを一変させるものであり、疾患の進行を止めるか遅くしうる新たな治療の選択肢への扉を開く
この研究はScience誌で発表される

UNSWはNeuroscience Research Australia(NeuRA)と共同でヒトの脳組織を研究し、アルツハイマー病が進行するにつれてp38γというキナーゼが失われることを突き止めた
彼らがマウスの脳にp38γを再導入したところ、疾患と関連する記憶障害に対して保護的な効果があることが示された

「この研究は、アルツハイマー病が発症する間に脳内で何が起きるのかについての我々の理解を根底から変えた」
筆頭著者lead authorのLars Ittner教授は言う

アルツハイマー病の大きな特徴は、アミロイドベータからなる『プラークplaques』と、タウタンパク質からなる『もつれtangles』が脳内に存在することである
プラークともつれの蓄積は、神経の細胞死、脳の萎縮、記憶の喪失と関連がある

※もつれ: tangle
※神経原線維変化: neurofibrillary tangle(NFT)


研究チームはこれまで誤解されていた『もつれにつながるプロセス』の重要な段階を明らかにした
これまでの考えでは、プラークを形成するタンパク質であるアミロイドベータがタウタンパク質の修飾、つまりリン酸化/phosphorylationを引き起こすと信じられており、それが細胞死を誘発して最終的にアルツハイマー病につながるのだとされていた
タウのリン酸化が増加する結果、それがもつれとして蓄積するというのが以前の考え方だった

しかし、今回の新たな研究の結果からタウのリン酸化が初めはニューロンに保護的な効果があることが示唆され、
その保護的な機能に対してアミロイドベータが猛攻撃する結果、それは徐々に失われるのだという
その段階で毒性レベルがニューロンの破壊を引き起こし、アルツハイマー病と関連する認知障害という結果になる

「アミロイドベータはニューロンに毒性を誘発するが、タウのリン酸化の初めの段階は実際には毒性を低下させる」
Ittner教授は言う

「これは全く新しい考え方mindsetだ
タウが修飾されるようになる理由は、実際にはダメージから保護するためだった」


研究でp38γというキナーゼが突き止められるまでに様々なマウスモデルが使われ、ヒトの脳組織はSydney Brain Bankから提供された
p38γは保護的なタウのリン酸化を助けており、アミロイドベータによってもたらされる毒性に干渉していた

「我々はマウスを使って、我々がこれまでの研究で知っていた疾患の進行に関与する『非常に特異的な毒性』に関してふるいにかけたscreen
我々はこの進行を仲介するメディエーターを見つけるべく研究を開始し、それが我々をこの驚くべき発見へと素早く導いた
それは我々が予測していたのとは全く正反対のものだった
このアルツハイマー病の発症に関与するプロセスへの我々の見方を変えた時に初めて、これらの結果は意味を持ち始めるのである」


Ittner教授たちはヒトの脳組織を研究する中で、アルツハイマー病が進行するにしたがってp38γは失われることを突き止めた
脳内に残っているのは本当にわずかな量である

「p38γは最初は保護をもたらすが、アルツハイマー病患者の脳内では早くに消え去ることを我々は発見した
これはp38γによる保護が失われることを示唆する」

「研究ではp38γを再び導入し、活性を上昇させた
マウスでは記憶障害が起きるのを防ぐことが可能だったことから、これは真に治療としての潜在性を持っている
もしその活性を刺激できれば、我々はアルツハイマー病の進行を遅らせ、あるいは止めることすらできるかもしれない」

研究者にとって次の段階は、この特許を取った発見から、ヒトの患者のための新たな治療法を開発することになるだろう
ただしそれには新たな資金調達が必要である/subject to new funding


http://dx.doi.org/10.1126/science.aah6205
Site-specific phosphorylation of tau inhibits amyloid-β toxicity in Alzheimers mice.
アルツハイマー病モデルマウスにおいてタウの箇所特異的なリン酸化はアミロイドβの毒性を阻止する


タウのリン酸化は必ずしも悪ではない
Tau phosphorylation—not all bad


アルツハイマー病はアミロイドβ (Aβ) からなるプラークと、タウのもつれを示す
この分野で支配的な考えは、Aβがタウのリン酸化を誘発し、それがニューロンの機能不全を仲介するというものだ

Ittnerらはアルツハイマー病のマウスモデルを研究することで、アルツハイマー病の初期におけるタウの保護的な役割に関するエビデンスを発見した
この保護は、シナプス後部postsynapseでのタウの特異的なリン酸化(スレオニン205)を伴うinvolve

リン酸化したタウの疾患における保護的な役割は、タウのリン酸化は有害なプロセスを仲介するだけであるというドグマに異議を申し立てるものだ


Abstract
アルツハイマー病におけるアミロイドβ(Aβ)の毒性は、リン酸化したタウタンパク質によって仲介すると考えられている
それとは対照的に、少なくとも疾患の初期では、タウの箇所特異的なリン酸化がAβの毒性を阻止することを我々は発見した

このタウの特異的なリン酸化はニューロンのMAPKであるp38γによって仲介され、シナプス後部でAβと噛み合った興奮毒性シグナル伝達複合体に干渉する/interfered with postsynaptic excitotoxic signaling complexes engaged by Aβ
これと一致して、p38γの枯渇はアルツハイマー病のマウスモデルにおいて、ニューロン回路の異常、認知障害、若年死亡率premature lethalityを悪化させる一方で、p38γの活性の上昇はこれらの障害を無効化した
さらに、
箇所特異的site-specificなタウのリン酸化を模したところ、Aβによって誘発されるニューロンの細胞死は軽減され、興奮毒性excitotoxicityからの保護がもたらされた

我々の研究はアルツハイマー病の病理発生におけるシナプス後部のプロセスへの洞察を提供し、ニューロンの毒性におけるタウのリン酸化には全く病原性の役割しかないという考え方に異議を唱えるものだ



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5fa6854054e1286ed0a7c0e494ba7ab4
Aβオリゴマーと細胞プリオンタンパク質の複合体は、mGluR5からFynキナーゼを通じてタウのリン酸化につながる




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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/049339c7c42e622ed4fe9abb25e211ba
タウはプリオンのように伝わり、タウ凝集の立体構造の違いが異なる神経変性につながる





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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/1da80ab653ed9104f4940f195a8b651f
タウはエンドサイトーシスによってシナプス間を移動し、エンドソーム膜を破損させて病理を伝える

 

アルツハイマー病でグリンパ系/アクアポリン4を標的にする

2016-12-09 06:06:41 | 
Possible new target for treating and preventing Alzheimer's

December 1, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/12/161201165405.htm


(左は高齢のアルツハイマー病患者の脳のスキャン画像で、右は認知が正常な人のもの
赤い蛍光色は膜タンパク質のアクアポリン4を示す

認知が正常な人はアクアポリン4の発現が組織全体で比較的均一evenであり、血管の周囲では際立って促進stark enhancementされている一方で、
アルツハイマー病の人は不均一で『不調和な/まだら状のpatchy』 発現である

Credit: OHSU)

今回の新たな科学的発見は、アルツハイマー病の治療と予防に新たな道を示すかもしれない

JAMA Neurology誌で11月28日に発表された研究では、脳細胞の膜タンパク質であるアクアポリン4/aquaporin-4について調査した
オレゴン健康科学大学(OHSU)の研究者たちは科学研究のために提供された献体の脳を調査し、年老いた人々のアルツハイマー病の有無とアクアポリン4の分布prevalenceとの間に相関があることを発見した

「アクアポリン4はアルツハイマー病の予防と治療に役立つ標的である可能性が示唆される」
首席著者senior authorのJeffrey Iliff, Ph.D.は言う
彼はOHSU医学部の麻酔・周術期医学部/Department of Anesthesiology and Perioperative Medicineで助教授/Assistant Professorである

「しかしながら、我々はこれ一つだけを修正すればそれでアルツハイマー病が治癒できるという、思い違いをしているわけではない」


アルツハイマー病は進行性の疾患でほとんどは加齢と関連して生じ、記憶、思考、行動で問題が起きる
世界的に痴呆の主な原因で、現在のアメリカでは死因として6番目である
治癒する方法は知られておらず、いくつかの症状に対症療法があるのみである

アクアポリン4は脳全体に広がる『グリンパ系/glymphatic system』という水路channelsのネットワークの重要な一部である
グリンパ系は、脳に蓄積するアミロイドやタウのようなタンパク質を脳脊髄液が洗い流すことを可能にする
それらのタンパク質はアルツハイマー病に罹患する人々の脳内に蓄積する傾向があり、その後の神経細胞の破壊に関与する可能性がある

「アルツハイマー病の人々では多くのことが狂ってうまくいかなくなるが、グリンパ系はその一つである」
Iliffは言う

今回の研究ではOHSU Layton Aging and Alzheimer's Disease Centerの一部であるOregon Brain Bankを通じて提供された79の献体の脳を詳しく調査した
研究者はそれらを次の3つのグループに分類した

・60歳未満で、神経疾患の病歴がない人々
・60歳より上で、アルツハイマー病の病歴がある人々
・60歳より上で、アルツハイマー病ではない人々

調査の結果、アルツハイマー病ではない60未満と60より上の人々の脳内では、アクアポリン4タンパク質が十分に整っていてorganized、脳の血管を裏打ちlineしていた
しかしながら、アルツハイマー病の人々の脳内ではアクアポリン4タンパク質は乱れてdisorganizedいるように見えた
それは脳がアミロイドベータのような廃棄物を効率的に除去できないことを反映しているのかもしれない

研究の結論としては、将来のアクアポリン4の形態または機能に注目した研究が最終的にはアルツハイマー病を治療または予防するための薬剤の開発に繋がるかもしれないという
2015年、Iliffが率いるOHSUの科学者からなる集学的multidisciplinaryな研究チームは140万ドルのグラントをPaul G. Allen Family Foundationから受けた
その目的はMRIをベースとした新たな画像化技術の開発であり、高齢者の脳でアクアポリン4を含めたプロセスが作用しているところを観察するためである


http://dx.doi.org/10.1001/jamaneurol.2016.4370
Association of Perivascular Localization of Aquaporin-4 With Cognition and Alzheimer Disease in Aging Brains.
高齢者の脳における血管周囲へのアクアポリン4の局在と認知ならびにアルツハイマー病との関連


キーポイント/Key Points

問題/Question
アストログリアの水チャネルwater channelであるアクアポリン4の発現または局在は、高齢者advanced ageまたはアルツハイマー病患者で変化するのか?

※星状膠細胞/アストログリアastroglia: この細胞の突起の一部は血管壁に終わっていて(終足endfeetと呼ばれる)、終足と血管壁が接触する部分にはアクアポリン4が存在する

研究成果/Findings
年老いているが認知的に完全な人々とアルツハイマー病患者の死後の脳皮質でアクアポリン4タンパク質の発現と局在を分析したところ、アクアポリン4の発現と加齢との間には統計的に有意な関連があることが明らかになった
アクアポリン4タンパク質の『血管周囲アストロサイト終足/perivascular astrocytic endfeet』への局在が失われることは、アルツハイマー病の状態statusならびに病理pathologyと強い関連があった

意義/Meaning
アクアポリン4発現の上昇は、年老いたヒトの脳の特徴である
アクアポリン4の局在の異常は、アルツハイマー病の病理の発生と関連がある


Abstract

Results
アクアポリン4(AQP4)の発現は、全ての人々で加齢advancing ageと関連していた (R2 = 0.17; P = .003)

血管周囲へのAQP4の局在は、年齢とは関わりなくアルツハイマー病(AD)の状態と有意に関連していた (OR, 11.7 per 10% increase in localization; z = −2.89; P = .004)
認知的に完全で85歳より上の最高齢の人々の間では、血管周囲へのAQP4の局在は保持されていた

年齢で調整したところ/when controlling for age、血管周囲へのAQP4の局在が喪失することは、アミロイドβの負荷の増大と関連し (R2 = 0.15; P = .003) 、Braak神経原線維変化ステージの上昇とも関連した (R2 = 0.14; P = .006)

※Braak神経原線維変化ステージ: ステージIからステージVIまで。http://dementia.umin.jp/link4-3.html



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グリンパ系と睡眠とアルツハイマー病の関連



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オメガ3多価不飽和脂肪酸はグリンパ系の機能を仲介することにより脳からのAβ除去を促進する



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Aβを分解するネプリライシンneprilysinと、Aβを排出させるABCC1、それらを両方とも欠くマウスはアルツハイマー病のようになった
 

グラム陰性細菌はアルツハイマー病の病理に影響する

2016-12-07 06:06:47 | 
Gram-negative bacteria may influence Alzheimer's disease pathology

November 30, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/11/161130114200.htm

カリフォルニア大学デイビス校(UC Davis)の研究者は、遅発性アルツハイマー病/late-onset Alzheimer's disease(LOAD)の脳内ではグラム陰性菌/Gram-negative bacteriaに対する抗体のレベルが高いことを発見した
対照群と比較してアルツハイマー病患者は『リポ多糖/lipopolysaccharide (LPS)』と、タンパク質の『E. coli K99』のレベルが高かった

加えて、LPS分子はアミロイドプラークと共に集まっていた
アミロイドプラークはアルツハイマー病の病理ならびに進行と関連する斑点状の部位である
この研究はNeurology誌の印刷版print editionで発表された

「年老いた人の脳を免疫組織化学染色immunohistochemistryで調べると、被験者18人の全てでLPSとE coli K99が検出された」
筆頭著者first authorのXinhua Zhanは言う
彼はUC Davis神経学部とMIND研究所の准研究教授associate research professorである

※MIND: マサチューセッツ総合病院-マサチューセッツ神経変性疾患総合研究所/MassGeneral Institute for Neurodegenerative Disease

「ウェスタンブロット分析によると、アルツハイマー病の脳では対照群と比較してK99が有意に増加していた
アルツハイマー病の脳の血管やアミロイドプラークではLPSがアミロイドβと共に局在していた」

研究者たちは細菌がアルツハイマー病を引き起こすのか、それともアルツハイマー病の結果として起きることなのかを確かめてはいない


グラム陰性菌の多くは病原性pathogenicであり、その中には大腸菌/E. coli、ピロリ菌/Helicobacter pylori、サルモネラ菌/salmonella、肺炎クラミジア菌/Chlamydophila pneumoniae、赤痢菌/Shigellaが含まれる

研究者たちの間では以前から感染症がアルツハイマー病のリスクを増すことが知られていた
しかしながら、アルツハイマー病患者の脳内でのグラム陰性菌への抗体や細菌分子のレベル上昇が、疾患の病理と関連することが判明したのはこれが初めてである

今回の研究は以前のSharpのラボでの動物実験の結果を元にしている
その研究では細菌のLPSと虚血/低酸素との組み合わせがアミロイドβを増大させ、アミロイドプラーク状の凝集物を作り出しうることが示されていた


今回の研究では、アルツハイマー病患者の灰白質と白質の24のサンプルを、認知機能低下のエビデンスを示さない人々から得られた18のサンプルと比較した
アルツハイマー病の診断基準としてはCERAD基準(Consortium to Establish a Registry for Alzheimer's disease criteria)を使用した

LPSとK99はどちらのグループでも観察されたが、有病率prevalenceはアルツハイマー病患者の方が高かった

ウェスタンブロット分析ではアルツハイマー病患者の灰白質中にK99が13人中9人で見られたが、対照群では10人中1人だけだった
K99レベルの上昇はアルツハイマー病患者の白質サンプルでも観察された
同様にLPSも6つのサンプル(ウェスタンブロット分析で灰白質と白質のサンプルがそれぞれ3つ)の全てで観察されたが、対照群では全く見られなかった

「脳内に細菌の分子が見つかったことには驚くが、アルツハイマー病の脳内により多く見られたことはとても驚いた」
神経学の教授で首席著者senior authorのFrank Sharpは言う

これまでも脳内に感染病原体infectious agentsが認められてきたが、細菌の分子が全ての脳内に一致して見つかったのは今回が初めてである


研究者たちは発表の前に4年を費やしてこれらの結果を確認してきた
LPSは一般に多くの試薬に見られるため、彼らは特にサンプルの汚染を心配していた
しかしながら、アルツハイマー病のサンプルと対照群との間の差differential、そしてアルツハイマー病の脳内でのそれら分子の独特な局在は、研究チームがそのような落とし穴pitfallを避けたことを示しているように思われた

これらの研究結果は、感染病原体がどのようにしてアルツハイマー病に影響するのかについてのさらなる調査への必要性に焦点を当てる

アルツハイマー病患者の脳内サンプルでLPSとK99が発見されたことは幸先が良いスタートだが、研究者たちは細菌が疾患の病理にどのように関与しているのかを研究しなければならないだろう
細菌感染とアルツハイマー病との間のつながりが証明されたことは、疾患の予防と治療のための新たな機会をもたらす可能性がある

「もしLPSが原因であるcausativeのなら、我々が通常行っているよりも強力にLPSを無効化immunizeするか、グラム陰性菌による感染を治療できる」
Sharpは言う


今回の結果は確認のためにより大規模な研究で再現される必要があるだろう
加えて、グラム陰性菌が直接疾患の進行に影響しているのか、それとも単に他のプロセスの副産物であるのかは不確かである

「我々はこれらの細菌の構成要素を年老いた被験者の脳内で検出した」
Zhanは言う

「我々の次の段階は、これがアルツハイマー病の原因なのか結果なのかを解決することだ
グラム陰性菌の分子は疾患を引き起こす原因なのか?
それともアルツハイマー病になると、より多くの細菌の分子が脳内に入り込むのか?」


http://dx.doi.org/10.1212/WNL.0000000000003391
Gram-negative bacterial molecules associate with Alzheimer disease pathology.



Abstract

目的/OBJECTIVE:
我々はグラム陰性菌の分子がアルツハイマー病の神経病理と関連するのかどうかを決定した
それは以前の研究でグラム陰性菌の大腸菌/Escherichia coliが細胞外アミロイドを形成することが実証されており、加えてグラム陰性菌が正常なヒトの脳内でも見られる支配的な細菌であると報告されていることを考慮してのことである

方法/METHODS:
アルツハイマー病患者24人と、年齢をマッチさせた対照群18人から得られた灰白質と白質の脳サンプルを調べた
リポ多糖/lipopolysaccharide (LPS) と E coli K99 pili タンパク質は、ウェスタンブロットと、免疫細胞化学immunocytochemistryによって評価した
ヒト脳サンプルは、E coliのDNAに関して評価し、その後にDNAシーケンシングで検討した

結果/RESULTS:
LPSとE coli K99は、対照群の脳と比較して脳実質parenchymaで免疫化学染色により検出された
アルツハイマー病と対照群の全ての脳実質と血管が、免疫細胞化学的に検出されている

ウェスタンブロットで計測されたK99レベルは、対照群と比べてアルツハイマー病で高かった (p < 0.01)
K99はアルツハイマー病の脳ではニューロン様細胞に局在していたが、対照群の脳ではそうではなかった

LPSレベルは、対照群と比較してアルツハイマー病で高かった
LPSはアルツハイマー病の脳内のアミロイドプラーク内ではAβ1-40/42と共に局在し、血管周囲ではAβ1-40/42と共に局在していた

DNAシーケンシングによりヒトの対照群とアルツハイマー病群の脳内でE coliのDNAを確認した

※Aβ1-40: Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-His-Asp-Ser-Gly-Tyr-Glu-Val-His-His-Gln-Lys-Leu-Val-Phe-Phe-Ala-Glu-Asp-Val-Gly-Ser-Asn-Lys-Gly-Ala-Ile-Ile-Gly-Leu-Met-Val-Gly-Gly-Val-Val
DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVV

※Aβ1-42: Asp-Ala-Glu-Phe-Arg-His-Asp-Ser-Gly-Tyr-Glu-Val-His-His-Gln-Lys-Leu-Val-Phe-Phe-Ala-Glu-Asp-Val-Gly-Ser-Asn-Lys-Gly-Ala-Ile-Ile-Gly-Leu-Met-Val-Gly-Gly-Val-Val-Ile-Ala
DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA


結論/CONCLUSIONS:
E coli K99とLPSのレベルは対照群の脳よりもアルツハイマー病の脳内で高かった
LPSはアルツハイマー病の脳のアミロイドプラーク内ならびに血管周囲でAβ1-40/42と共に局在していた
このデータはグラム陰性菌の分子がアルツハイマー病の神経病理neuropathologyと関連することを示す

それらは我々の『LPS-虚血-低酸素ラットモデル』と一致する
そのモデルではミエリン凝集を生じる
この凝集はAβと共に局在し、そしてアミロイド様プラークと似ている



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高血糖は免疫系の機能不全を引き起こす
ジカルボニル化合物(メチルグリオキサール/グリオキサール)で処理した抗菌ペプチドのヒトβ-ディフェンシン-2は、グラム陰性細菌の攻撃を止める能力が大幅に低下した



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Aβは脳内の天然の抗生物質/抗菌ペプチドである




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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161006092015.htm
腸内細菌のcurliがタンパク質凝集と脳内の炎症につながり、アルツハイマー病などの神経変性の一因となる



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6533480ade13bb2f6a7879639b1a1f01
腸内細菌のバイオフィルムと自己免疫疾患



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160519130105.htm
腸内細菌を殺す抗生物質は、海馬の神経細胞の増殖も止める
抗生物質を使うと脳内のLy6C hi単球が減少して記憶力が低下したが、運動かプロバイオティクスで改善した



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/07/160721072559.htm
抗生物質は腸内微生物叢の変化によりアルツハイマー病の進行を弱める
マウスへの長期の抗生物質投与はプラークレベルを低下させ、ミクログリアの神経炎症活動を促進した



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血管のアミロイドはニューロン周囲のアミロイドとは構造が異なる



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Aβを分解するネプリライシンneprilysinと、Aβを排出させるABCC1、それらを両方とも欠くマウスはアルツハイマー病のようになった



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8ab2c14e5c92528c45a0b42d1db98364
HtrA1はタウタンパク質を分解させ、プラークが作られないようにAPPを切断するが、アポE4はHtrA1に強く結合するのでタウが分解されずプラークが作られるようになる

 

腸の微生物はパーキンソン病モデルマウスの運動障害を促進する

2016-12-05 06:06:54 | 
Gut microbes promote motor deficits in a mouse model of Parkinson's disease

December 1, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/12/161201122159.htm


(Sampsonらの研究によると、腸内微生物からのシグナルはパーキンソン病のモデル動物における神経炎症応答、そして特徴的な胃腸障害ならびにα-シヌクレイン依存的な運動障害にとって必要だという

Credit: Sampson et al./Cell 2016)

遺伝的にパーキンソン病にかかりやすくしたマウスでのパーキンソン病に似た運動障害movement disordersの発症には、腸の微生物が重要な役割を演じるかもしれないということをカリフォルニア工科大学/California Institute of Technologyの研究者が12月1日にCell誌で報告した
抗生物質の投与はマウスモデルでの運動障害motor deficitならびにパーキンソン病の分子レベルでの特徴を減少させ、逆にパーキンソン病患者からの腸内微生物の移植はマウスモデルの症状を悪化させた
この研究結果はアメリカで二番目に多い神経変性疾患であるパーキンソン病の新しい治療戦略につながる可能性がある


「我々は腸の微生物叢とパーキンソン病との間の生物学的なつながりを初めて発見した
より一般的には、神経変性疾患の起源がこれまで考えられていたような脳だけでなく、腸にもあることをこの研究では明らかにした」
首席著者senior study authorのSarkis Mazmanianは言う

「微生物の変化がパーキンソン病に関与するかもしれないという今回の発見はパラダイムシフトであり、患者の治療にとって全く新しい可能性を開く」


パーキンソン病はアメリカで推定100万人、60歳を越える人口の1パーセントが罹患している
この疾患は異常な形状のα-シヌクレインというタンパク質がニューロンに蓄積することが原因であり、運動をコントロールする脳の領域に位置するドーパミン放出ニューロンに特に有害な影響を生じる
結果として患者は消耗性の/衰弱させるような症状debilitating symptoms、例えば振戦tremors、筋硬直muscle stiffness、動きの緩慢さslowness of movement、歩行障害impaired gaitなどを経験する
現在の第一選択療法first-line therapiesは脳内のドーパミンレベルを上昇させることが中心だが、そのような治療は深刻な副作用を生じることがあり、薬が有効性を失うことがしばしばである


より安全でより効果的な治療が必要とされる現状に対処すべく、カリフォルニア工科大学のMazmanianと筆頭著者first authorのTimothy Sampsonは、興味深い可能性intriguing possibilityとして腸の微生物に注目した
パーキンソン病の患者では腸の微生物叢microbiomeが変化しており、しばしば便秘constipationのような胃腸の問題が、運動障害が出る何年も前に先行して起きる
さらに、腸の微生物はニューロンの発達や認知能力、不安、うつ病、自閉症などに影響することがこれまで示されてきている
しかしながら、神経変性疾患においては、腸の微生物の役割を支持する実験的なエビデンスは欠けていた


工科大学の研究者たちは、パーキンソン病のような症状を生じるよう遺伝学的に修飾したマウスを通常の『滅菌していないケージ/non-sterile cage』か、または『無菌の環境/germ-free environment』のどちらかで飼育raiseした

すると興味深いことに、無菌状態のケージで育てたマウスは、そうでないマウスよりも運動障害が少なく、運動をコントロールする脳の領域内ではミスフォールドしたタンパク質の凝集の蓄積が少ないことが示された
事実、このマウスは様々な課題でほとんど正常なパフォーマンスを示した
課題とは例えば、棒渡りtraversing a beam、鼻から粘着材を取り除くremoving an adhesive from their nose、棒降りclimbing down a poleである

抗生物質の投与は、パーキンソン病のような障害を生じやすいマウスの運動症状の軽減に対して、無菌環境と同様の効果があった

対照的に、無菌のケージで育てられたマウスでも、細菌の代謝産物である短鎖脂肪酸を投与されたり、ヒトのパーキンソン病患者の腸内微生物を糞便で移植されると運動症状の悪化を示した

合わせて考えると、この結果が示唆しているのは腸内の微生物が運動症状を悪化させ、
そしてそれは折りたたみに失敗した/ミスフォールドしたmisfoldedタンパク質が凝集しやすい環境を作り出すことによるということである


加えて今回の研究では腸内の微生物が『特定の遺伝的要素genetic factor』と協力してパーキンソン病の発症リスクに影響したことに注目することが重要である
今回の研究ではα-シヌクレインの蓄積を通じて運動症状を再現する特定の遺伝学的マウスモデルを使ったのであって、
遺伝学的に正常なマウス、つまりパーキンソン病を発症しやすいわけではないマウスは、パーキンソン病患者から糞便移植を受けても運動症状を発症しなかったのである
他の遺伝的要因や環境的な要因、例えば殺虫剤への曝露pesticide exposureもまたパーキンソン病に関与する


今回の研究結果はプロバイオティクスprobioticsや、プロバイオティクスを促進するプレバイオティクスな治療prebiotic therapiesが、パーキンソン病の症状を軽減する能力があることを示唆する
しかしながら、抗生物質antibioticsや糞便による微生物の移植は、現時点では実現からは程遠い

「我々が今回の研究で実施したような長期間の強力な抗生物質の使用は、ヒトでは著しいリスク、例えば免疫機能や代謝機能の障害を伴う」
とSampsonは警告する

「腸内細菌は生理的に巨大な利益をもたらす
そして我々はまだ、どの細菌がパーキンソン病で有害なのか、または有益なのかを知るためのデータを持っていないのである」

したがって、どの病原性微生物がパーキンソン病リスクの上昇や総体的症状symptomatologyの重症化に寄与するのかを突き止めることが決定的に重要であり、それこそが彼らの計画している調査の方向性である
また、彼らは運動機能の低下から患者を保護する可能性のある特定の細菌の種類も探している


最後に、パーキンソン病で変化する微生物の種類や代謝産物を突き止めることは疾患のバイオマーカーとしても役立つ可能性があり、それは薬剤の標的にすらなりうる
微生物の不均衡imbalancesを修正するための介入は、このしばしば患者を消耗させる運動障害の進行を遅くするか止めるための、安全かつ効果的な治療をもたらすかもしれない

「他のあらゆる薬剤の発見プロセスと同様、この革新的な研究をマウスからヒトへと応用するには長い年月が必要になるだろう」 Mazmanianは言う

「しかし、これは我々の長期的目的へ向けた重要な初めの一歩である
つまり、我々が発見した腸と脳のつながりに関する深い機構的な洞察を活用し、
パーキンソン病の医療的、経済的、そして社会的な負荷を緩和するのを助けるための一歩である」


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2016.11.018
Gut Microbiota Regulate Motor Deficits and Neuroinflammation in a Model of Parkinson’s Disease.



Highlights
・腸の微生物は、α-シヌクレインを介する運動障害ならびに脳の病理を促進する
・腸内細菌の枯渇は、ミクログリアの活性化を低下させる
・短鎖脂肪酸/SCFAsはミクログリアを調整modulateし、パーキンソン病の病態生理pathophysiologyを促進する
・ヒトのパーキンソン病患者の腸の微生物叢microbiotaは、マウスの運動障害motor dysfunctionの促進を誘発する


Summary
シヌクレイノパチー/synucleinopathiesはα-シヌクレイン (αSyn) の凝集が特徴であり、パーキンソン病を例とするような運動障害をしばしば引き起こす

今回我々はαSynを過剰発現するマウスを使い、運動障害motor deficits、ミクログリアの活性化、そしてαSynの病理には腸の微生物叢が必要であることを報告する

成体マウスの病態生理pathophysiologyを、抗生物質の投与は緩和し、微生物の再コロニー化は促進することから、
生後postnatalの腸と脳との間のシグナル伝達が疾患を調整modulateすることが示唆される
事実、微生物の特定の代謝産物を無菌マウスに経口投与すると、ニューロンの炎症neuroinflammationならびに運動症状が促進される

注目すべきことに、αSyn過剰発現マウスにパーキンソン病患者からの微生物叢をコロニー化させると、健康なヒトのドナーからの微生物叢の移植と比較して、肉体的な障害physical impairmentsが促進される

これらの研究結果は腸の細菌が運動障害を調節することを明らかにするものであり、
ヒトの微生物叢microbiomeの変化はパーキンソン病のリスク要因を代表することを示唆している



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