機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

2014年8月25日

2014-08-31 22:18:39 | 

7人に1人が睡眠酩酊障害に冒されているかもしれない
Sleep drunkenness disorder may affect one in seven


今回の研究は睡眠酩酊(sleep drunkenness)という睡眠障害に関して新しく光を当てている。

睡眠酩酊障害が起きるのは夜の初めか朝であり、眠りから覚めるまでの間、または目が覚めた後の錯乱や不適切な行動のことである(例えば時計のアラームをオフにする代わりに電話に出てしまうようなこと)。

エピソードはしばしば強制的な覚醒によって引き起こされ、睡眠または健忘の間は暴力行為さえ引き起こすかもしれない。

※episode: エピソード。(ある疾患で繰り返す)症状の出現

「混乱した目覚めというエピソードは、夢遊病ほどには注目されてこなかった。その結果がまさに同程度に深刻であるにもかかわらずである」、カリフォルニア州スタンフォード医科大学のモーリスM. Ohayon博士は言う。



研究では18歳以上の一般的なアメリカ人集団19,136人にインタビューし、睡眠の習慣と睡眠障害を経験したかどうかについて尋ねた。

さらに精神病の診断と、摂取している薬物についても質問した。



その結果、15パーセントはエピソードを昨年に経験しており、その半分以上は1週間に1回以上のエピソードがあると報告した。

睡眠酩酊の人々の大多数(84パーセント)は睡眠障害かメンタルヘルス障害があり、抗うつ薬のような向精神薬を服用していた。

エピソードのあった人々の37.4パーセントは精神障害も患っていた。鬱病、双極性障害、アルコール症、パニック障害、外傷後ストレス障害、不安な人々は、睡眠酩酊を経験する割合が高かった。

睡眠酩酊の人々のおよそ31パーセントは抗うつ薬のような精神作用薬物を服用していた。



長すぎるか短かすぎる睡眠時間はどちらも睡眠障害と関連していた。

1晩につき睡眠が6時間未満の人々のおよそ20パーセント、最低9時間以上の人々の15パーセントは睡眠酩酊を経験した。

また、睡眠時無呼吸のある人々は、障害になる率が高かった。



「睡眠障害やメンタルヘルス問題のある人々は、睡眠酩酊エピソードのリスクが大きい可能性に気づく必要がある」、Ohayonは言う。

学術誌参照:
1.錯乱興奮は病的か?

神経学、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140825185311.htm

<コメント>
アメリカでは約7人に1人が睡眠酩酊(sleep drunkenness)/錯乱性覚醒(confusional arousal)、つまり寝ぼけて興奮して時には暴れるという記事です。アメリカだけで3千万人以上がこの睡眠障害ということになります。

睡眠の質は特定の神経の数と関連するという記事が少し前にもありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/9106e9dd92a4df5d40c0f0fb7a1d8e09

>1996年、Saperの研究室は腹外側視索前野(ventrolateral preoptic nucleus)がラットにおける「睡眠スイッチ」として機能することを初めて発見した。

2014年8月24日

2014-08-30 15:26:51 | 

抗うつ剤を髄芽腫の治療に再利用する
Repurposing anti-depressant medication to target medulloblastoma



シンシナティ小児病院メディカル・センターの癌・血液疾患研究所(Cancer and Blood Diseases Institute; CBDI)を中心とした国際研究チームは、悪性の髄芽腫(medulloblastoma)の原因となる新たな分子経路をNature Medicineで報告した。

彼らの研究は、抗うつ剤を再利用してその新しい経路を目標とすることが髄芽腫との戦いを助ける可能性を示唆する。



「現在の治療は生存率を改善するが、患者は重度の副作用に苦しんできた。そして、腫瘍の再発は治療に抵抗する突然変異を持つ」、CBDI脳腫瘍センターの科学ディレクター、Q.リチャード・ルー博士は言う。

「我々は強力な腫瘍サプレッサーを確認した。それは、悪性の髄芽腫の形態にかかった患者のサブセットを助ける可能性がある。」



彼らはヒトの髄芽腫をモデル化した遺伝子工学マウスを使い、Gαsというタンパク質をコードするGNAS遺伝子を同定した。

Gαsはシグナル・カスケードを開始して、ソニックヘッジホッグ・タンパク質によって引き起こされる悪性髄芽腫のイニシエーションを抑制する。

ヨーロッパと日本では行動療法のためにロリプラムという抗うつ剤が承認されているが、彼らはそれをGNAS遺伝子を発現しないよう設計されたマウスに投与した。

マウスへのロリプラム投与はcAMPという分子のレベルを上昇させ、GNAS-Gαs経路の腫瘍抑制機能を回復した。それにより腫瘍は縮小して、鎮静化した。

また、細胞内のcAMPレベルの上昇はソニックヘッジホッグ阻害剤の効力を増強することが示唆された。



著者たちはcAMPレベルを増大させる作用が癌のタイプに依存するかもしれず、マウスにおける研究結果はヒトに必ずしも当てはまるとは限らないと警告する。

学術誌参照:
1.Gタンパク質αサブユニットGαsは、ソニックヘッジホッグによる髄芽腫における腫瘍サプレッサーである。

Nature Medicine、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140824152337.htm

<コメント>
幼児に多い髄芽腫についてです。

Reference629を見る限りでは、cAMPはPKAを介してGliの活性を調節することでShhシグナルを抑制するようです。


2014年8月22日

2014-08-28 23:18:23 | 

選択的な癌治療のための新しい酵素標的
New enzyme targets for selective cancer therapies



アルバータ大学のクリストファー・カイロ教授と研究チームは、ノイラミニダーゼという酵素の阻害剤を初めて合成した。

インフルエンザ・ウイルスも感染プロセスの一部として同じメカニズムの酵素を使用するが、ヒトの細胞は多くの生物学的プロセスで自らのノイラミニダーゼ酵素を使用する。

ノイラミニダーゼは脳癌の一種であるグリア芽細胞腫(glioblastoma)で過剰に発現することがイタリアのミラノ大学の研究チームによって示されていた。

彼らはカイロの酵素阻害剤をテストし、グリア芽細胞腫の癌幹細胞が正常な細胞に変化したことを発見した。

今回の化合物は薬として使うことはできないが、その主な理由は血液脳関門を突破するように設計されていなかったためであるとカイロは説明する。

ミラノ大学の研究チームは非常に高い濃度で化合物を使う必要があったと彼は付け加えた。



癌細胞で見られる『炭水化物』は、正常な細胞のそれとは非常に異なることを科学者は何十年も知っていた。

例えば、多くの癌は『シアル酸』のような特定の残基の量が異なるか、あるいは同じ残基でも異なる配置になっている。

ノイラミニダーゼ/シアリダーゼ(neuraminidase/sialidase)は、そのシアル酸(sialic acid; ノイラミン酸の誘導体)を遊離させるエキソ型α-グリコシダーゼである。

ウイルスのノイラミニダーゼ酵素に関する研究は多かったが、カイロの研究チームはヒトの酵素の阻害剤を発見した。

「ヒトの細胞でのチャレンジは、4つの異なるアイソエンザイムがあるということである。我々が癌に関与する1つを目標としたくても、間違ったものにヒットすると有害な副作用が起きる可能性がある」、カイロは言った。



アルバータ大学研究チームは、患者から分離される癌細胞のノイラミニダーゼ・アイソエンザイムの役割を研究していたミラノ大学の同僚に連絡を取り、そのアイソエンザイムに特異的な阻害剤をテストするように持ちかけ、今回の発表に至った。

彼らはすでに化合物を改善することを目指して研究中であり、彼らが作り出したインヴィトロ・アッセイのパネルを使って新規または既存の阻害剤をテストしている。

学術誌参照:
1.シアリダーゼNEU4は、グリア芽細胞腫の幹細胞の生存に関与する。

Cell Death and Disease、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140822132932.htm

<コメント>
多形性グリア芽細胞腫(glioblastoma multiforme)から分離された癌幹細胞(glioblastoma stem cell)にシアリダーゼ4阻害剤を投与すると、NANOG、OCT-4、SOX-2、CD133等の幹細胞様の発現が抑制され、ガングリオシド(シアル酸を含むスフィンゴ糖脂質)であるGD3の合成が減少して生存が低下したという記事です。

この癌幹細胞ではシアリダーゼ4(NEU4)が過剰に発現してGSK-3βを阻害し、SHH/Wnt経路を活性化して幹細胞様の表現型を促進しています。




2014年8月21日

2014-08-27 18:01:46 | 

まれな腎臓癌の配列決定は、テロメラーゼに関わる独特の変化を明らかにする
Sequence of rare kidney cancer reveals unique alterations involving telomerase



ベイラー医科大学を中心とした国際的な共同研究は、珍しい腎臓癌の遺伝子の変化についての手掛かりを明らかにした。

国立衛生研究所の癌ゲノムアトラス主導のプロジェクトは色素嫌性腎細胞癌(chromophobe renal cell carcinoma; ChRCC)の配列決定を完了し、その結果をCancer Cell誌で発表した。

「癌ゲノムアトラスは連邦によって資金助成された国家的な努力であり、癌の多くのタイプの配列をすでに完成させた(例えば卵巣癌、乳癌、肺癌)。現在、このプロジェクトはよりまれなタイプの癌を配列決定するために枝分かれしている」、チャド・クレイトン博士は言う。



色素嫌性腎細胞癌はまれなタイプの腎臓癌で、米国では毎年約2,000人が新しく診断される。悪性度は低く、大多数の患者は疾患を生き残る。

「腎臓腫瘍の病理が色素嫌性だと大部分の患者は安心するが、我々はみな色素嫌性腎臓癌が転移して死亡した患者を看護してきた」、ノースカロライナ大学チャペルヒル校ラインバーガー総合癌センターの准教授、Kimryn Rathmell博士は言う。

「今回の報告はこれらの患者を看護する医師にとって信じられないほどエキサイティングである。我々のすべての治療計画は、より一般的な腎臓癌タイプの生物学に基づいていたからである。」



研究チームはベイラーのヒトゲノムシーケンシングセンターで66の腫瘍サンプルを配列決定した。

これらのサンプル上で他のタイプのデータも集められ、遺伝子発現とエピジェネティックなデータを含む塩基配列決定データに統合された。

塩基配列決定した既知の遺伝子に加えて、ミトコンドリアと全ゲノムのDNAも配列決定された。

その結果、サンプルの大多数(86パーセント)は染色体の1つのコピーまたは多くのコピーを失っていた(染色体1、2、6、10、13、17)。

また、染色体3、5、8、9、11、18、21の喪失は頻度が高い(12~58パーセント)として注目された。

科学者は変更されたか失われた遺伝子を探索したが、かなり大きな頻度で確認されたのは2つの遺伝子(TP53とPTEN)であった。



彼らが最も驚いた重要な発見は、チームが「余分な分析」をしたあとだったとクレイトンは言う。

「我々は詳しくエクソームを見る代わりに、全ゲノムを分析した。これは通常はこのようなゲノム研究では実行されない」、クレイトンは言う。

エクソームは全ゲノムのたった1パーセントで、他の99パーセントは研究でしばしば無視される。

「遺伝子ではない部分を観察すると、ずっと多くのことが進行している」、クレイトンは言う。

「例えば、ゲノムの遺伝子を調節する特質は変更されている可能性がある。」



全ゲノムの分析から、研究チームはかなりの量の構造的再編成(ブレイクポイント; 区切り、中断点、ゲノムが連続していない状態)がTERTという遺伝子のプロモーター領域に関与することに気が付いた。TERTはテロメラーゼ複合体の最も重要なユニットをコードする。

テロメラーゼは細胞の『時計』を示す。

「このことは細胞分裂において決定的な役割を果たす。実際、多くの癌細胞でテロメラーゼのレベルは高い。どんなに分裂しても『時』は決して尽きず、細胞は決して死ななくなる。」

影響を受けたのは実際の遺伝子ではなくプロモーター領域であった。

「この異常は遺伝子の中ではないので、全エクソーム分析で拾われない。」

また、今回の研究はミトコンドリアDNA変化の役割と、癌開始に関与する原因となる細胞の役割についての興味深い質問も生じた。



「我々は、他のタイプの癌の調節性領域も調査する必要がある。」

癌ゲノムアトラスのあらゆるプロジェクトからのデータは、研究に世界中の科学者に利用できる。

「この努力は、我々がどのようにして癌を全体として調査するかという大きなインパクトを示している」、クレイトンは言う。

学術誌参照:
1.色素嫌性腎細胞癌の体細胞ゲノム・ランドスケープ。

Cancer Cell、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140821124829.htm

<コメント>
癌の全ゲノム、エピジェネティック、ミトコンドリアなど、すべてのデータを統合した研究についての記事です。

色素嫌性腎細胞癌(ChRCC)は、腎明細胞癌(ccRCC)と比較しても、ミトコンドリアDNAを含めたあらゆる性質が全く異なっているようです。



2014年8月21日

2014-08-27 11:54:23 | 

自閉症の小児は、脳に余分なシナプスを持つ
Children with autism have extra synapses in brain



コロンビア大学メディカル・センター(CUMC)の研究によれば、自閉症の小児および青年は脳のニューロンを接続するシナプスが過剰であり、この過剰は発達期の正常な脳「刈り込み」プロセスが減速することによる。

幼少期の正常な脳発達では、爆発的なシナプス形成が特に皮質の自閉行動に関係する領域で生じる。刈り込み(pruning)は、青年期後半までにこれらの皮質シナプスのおよそ半分を排除する。



シナプスは自閉症と関連する多くの遺伝子によって影響を及ぼされることが知られている。研究者の何人かは自閉症患者のシナプスが普通より多いかもしれないと仮定した。

この仮説をテストするため、CUMCのGuomei Tang博士は他の原因により死亡した自閉症小児の頭脳を調べた。

Tang博士は脳の一部の皮質ニューロンから分岐するスパイン(spine)の数を計数することによってシナプス密度を測定した(各スパインはシナプスを経て別のニューロンと連結する)。

その結果、小児期の後期までにコントロール群のスパイン密度はおよそ半分低下していたが、自閉症患者の頭脳では16パーセントしか低下していなかった。



刈り込み障害を引き起こした原因の手掛かりも患者の頭脳で発見された。自閉小児の脳細胞は古いかまたは損害を受けた部品で占められており、「オートファジー」という分解経路が非常に低下していた。

研究者は自閉症のマウス・モデルを使用して刈り込み障害の原因を追求し、mTORと呼ばれるタンパク質にたどり着いた。

mTORが過剰に活性化すると、脳は自己貪食(self-eating)する能力の多くを失った。

この能力がないと、マウスの脳は十分に刈り込まれず、シナプスが過剰になった。

学術誌参照:
1.mTOR依存的なマクロオートファジーの減少は、自閉様シナプス刈り込み障害を引き起こす。

Neuron、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140821124730.htm


<コメント>
mTORC1はオートファジーを阻害しますが、今回はそれがシナプス刈り込みを障害して自閉症につながるという記事です。

TSC2変異(mTORC1活性化)がてんかんや自閉症を伴う疾患を引き起こすことは以前から知られています

mTORC1の活性化はアミノ酸に依存的なので、タンパク質が過剰な食生活も自閉症増加の一因になっているのでしょう。


2014年8月20日

2014-08-27 09:40:56 | 代謝

膵臓の驚くべき再生ポテンシャル
Astonishing regeneration potential of the pancreas



思春期までの膵臓は、以前仮定されたよりも順応性があり、自然治癒の大きなポテンシャルを持つ。

これは国立研究プログラム「幹細胞と再生医療」(NRP 63)を通して資金助成されたマウスの研究によって達する結論である。



1型糖尿病は膵臓のベータ細胞の減少によって引き起こされる。ベータ細胞は再生しないので、科学者はこれらの細胞の減少が不可逆的であると伝統的に仮定してきた。

4年前、ジュネーブ大学のペドロウ・エレーラ(Pedro Herrera)の研究チームはこの仮定に初めて疑いを投げかけた。

遺伝子を修正した糖尿病マウスのアルファ細胞が、少数ながらベータ細胞に変化したことを証明したからである。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20364121



今回、エレーラの研究チームは、思春期前のマウスの膵臓がインスリン産生ベータ細胞の減少を補うことができることを発見した。

「これはこれまで不明なメカニズムによって達成される」、エレーラは言う。

実験の過程でソマトスタチンを生じるデルタ細胞は前駆体様の細胞状態に先祖返り(reversion)した。それらは増殖して、後期にはベータ細胞とデルタ細胞の集団を再形成した。

前回の実験でわずかなアルファ細胞集団が変換したのとは対照的に、今回のデルタ細胞の運命変化を含む新しいメカニズムは、ベータ細胞の減少の相殺と糖尿病を回復するためのより効率的な方法である。

しかし、アルファ細胞の変換は年老いたマウスでもベータ細胞へと再プログラムすることはできたが、デルタ細胞からベータ細胞への再プログラム能力は限定的で、思春期を過ぎて延長はしない。



エレーラたちはマウスで膵臓細胞の融通性(versatility)を調査したが、ヒトの糖尿病患者でのいくつかの観察はヒトの膵臓も転換(transformation)できることを示唆する。

学術誌参照:
1.膵臓δ-細胞の年齢依存的なインスリン産生細胞への変換による糖尿病回復。

Nature、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140820164406.htm

<コメント>
若い時に限って、デルタ細胞はベータ細胞に変換することができるようだという記事です。

少し前にも、1型糖尿病ではアルファ細胞からベータ細胞とデルタ細胞への分化転換(transdifferentiation)が起きているという記事がありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/82f7c3a7cfab9d357ba28ebd02a421bb

>研究チームは1型糖尿病患者の膵臓組織を調べて、セルレインによってマウスで誘導されるのと同じプロセスが、患者の膵臓でも生じたという強力な証拠を発見した。

>アルファ細胞がベータ細胞に変わるプロセスには、年齢の限界があるようにも見えなかった。それは老人でも若い人でも生じていて、中には何十年も1型糖尿病だった人もいた。


腸の細胞様の組織のFoxO1を阻害するだけでベータ細胞に変化させることができるという記事もありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4f765cb78fcd84adbb054dab554d05a8

>AcciliとポストドクターのリョウタロウBouchiは、ヒトの多能性幹細胞を使ってヒトの腸組織モデルを作製した。

>次に彼らは遺伝子工学により腸細胞の中であらゆる機能的FOXO1を不活性化した。

>7日後、細胞のいくつかはインスリンを放出し始めた。そして同時に重要なのは、それがブドウ糖にだけ反応したということである。


今回もFoxO1関連です。






2014年8月21日

2014-08-27 08:26:32 | 医学

スイスへの『自殺観光旅行』、4年で2倍に
'Suicide tourism' to Switzerland has doubled within four years



自分自身の生命を奪うためにスイスへ行く『自殺観光客』の数は、4年間で2倍になったことを研究は報告する。

2008~2012年の間に合わせて31の国からの入所者がスイスでの死亡を助けられた。

ドイツ(268)と英国(126)国民が3分の2を占め、トップ10の他の国はフランス(66)、イタリア(44)、米国(21)、オーストリア(14)、カナダ(12)、スペインとイスラエル(8)である。

大半を占めるドイツと英国民は神経障害にかかっていて、例えば麻痺、運動ニューロン疾患、パーキンソン病、多発性硬化症が症例のほぼ半分を占めた。

スイス人ではない611人が2008~2012年に死亡を助けられ、その内4人を除く全てがディグニタスへ行った。

記事供給源:
上記の記事は、BMJ-ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルにより提供される材料に基づく。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140821090647.htm

<コメント>
スイスへの『自殺観光』についての記事です。

細かい内容は記事を直接ご覧になってください。

2014年8月20日

2014-08-26 23:50:30 | 腸内細菌

過敏性腸症候群の痛み治療は効果が薄い
Pain treatments less effective for those with irritable bowel



過敏性腸症候群(IBS)にはいろいろな形態があるが、それらは全て不可解な腸の痛みを伴う。

「本研究は、IBSの免疫システムと痛みの症状の間の相互作用を初めて明らかにした」、アデレード大学のパトリック・ヒューズ博士は言う。

「腸には単球とマクロファージという特殊化した(specialised)免疫細胞が存在する。健康な人々の免疫細胞は通常、モルヒネのようなオピオイド化学物質を分泌して痛みをブロックする。しかし、IBSの人々ではこれらの細胞によるオピオイドの産生に障害があることが明らかになった。」

「したがって、IBSの人々の不可解な痛みが継続することは不思議ではない。そして免疫システムに欠陥がある場合、患者が服用する鎮痛剤が適切に鎮痛効果を発揮しないことを意味する可能性もある。」

学術誌参照:
1.免疫由来のオピオイド性による内臓感覚求心性神経(viscerosensory afferents)の阻害は、過敏性腸症候群患者で減少する。

Brain, Behavior, and Immunity、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140820164024.htm

<コメント>
IBSの人は単球由来のβ-エンドルフィンが少なく、腸の粘膜固有層(lamina propria)のマクロファージの数が減少しているために痛覚が過敏になっているという記事です。

IBSとマクロファージの関係についての記事が少し前にもありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/db098b54e0e375d5837f186757f1587c

>「筋性マクロファージが枯渇すると、正常だった腸の運動は異常を起こした。それはおそらく筋収縮が十分に調整されていなかったためで、腸運動がマクロファージによって調節されることを示唆している」、Bogunovicは言う。



※opiate: オピエート。アヘン製剤。ラテン語のopium(眠りをもたらす)より。アヘンの主要薬理成分がモルヒネ

※opioid: オピオイド。エンケファリン、エンドルフィン、ダイノルフィンに分けられ、それぞれδ、μ、κ受容体のリガンドとされる。エンドルフィンの前駆体はプロオピオメラノコルチン(POMC)


2014年8月20日

2014-08-25 23:57:48 | 免疫

活動性結核の予防を助けるタンパク質が特定される
Study identifies protein that helps prevent active tuberculosis in infected patients



カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)を中心とした研究によれば、インターロイキン-32(IL-32)は、結核(TB)に対する十分な防御を示すバイオマーカーである。

IL-32はビタミンDの濃度が充分に高い時だけ、結核菌の殺菌を誘導できることが発見された。

「これまで、潜在的な感染者が活動性結核を発病しない理由を、生物学的な因子に基づいて予測する方法は存在しなかった」、UCLAのデニス・モントーヤは言う。

学術誌参照:
1.IL-32は、ヒト結核の宿主防御ネットワークの分子マーカーである。

Science Translational Medicine、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140820164311.htm

<コメント>
結核の防御に重要なバイオマーカーが明らかになったという記事です。

IL-32はマクロファージのTNF-α産生等を誘導し、さらにビタミンD依存的に抗菌ペプチドのカテリシジン(cathelicidin)ならびにベータディフェンシン2(Defensin beta 4A; DEFB4)を誘導します。

http://stm.sciencemag.org/content/6/250/250ra114

>IL-32 induced the vitamin D–dependent antimicrobial peptides cathelicidin and DEFB4 and to generate antimicrobial activity in vitro, dependent on the presence of adequate 25-hydroxyvitamin D.


ビタミンDの受容体はTCRの刺激により誘導され、PLC-γ1の発現増大につながる(~75倍)という関連記事もあります。

http://www.sciencedaily.com/releases/2010/03/100307215534.htm



今回と同じUCLAの関連記事もあり、結核とビタミンA、そしてコレステロールの関係についてです。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/02/140225122218.htm

>The active form of vitamin A -- all-trans reinoic acid -- is responsible for activating the immune system.

>To investigate the role of this active form of vitamin A in immune defense, the UCLA team first compared its effects on cells to the effects of a similar nutrient, vitamin D, which the group had previously studied.

>The researchers thought the two vitamins might use the same mechanism to aid the immune system, but this wasn't the case. They found that when the vitamins were added to human blood cells infected with tuberculosis, only vitamin A decreased the cells' cholesterol levels.

>The researchers also discovered that the action of vitamin A was dependent on the expression of a gene called NPC2.

>Further experiments in the lab showed that even if an infected blood cell was stimulated with vitamin A, it would not be able to fight the tuberculosis bacteria if the cell couldn't express the NPC2 gene.

>"We were very surprised that this particular gene was involved, since it has traditionally been associated with cholesterol transport and not immune defense,"


>Cholesterol is stored in lysosomes, compartments in a cell that also play an integral role in fighting infections.

>If the lysomome is full of cholesterol, it supplies the bacteria with needed nutrition instead of killing it.

>Vitamin A induces the cell to express NPC2, which helps the cell effectively remove cholesterol from the lysosomes so the bacteria can't access it.

>This allows the lysomomes to once again become effective in killing the bacteria.


ビタミンA(ATRA)はNPC2の発現を誘導してリソソーム内のコレステロールを取り除き、結核菌がコレステロールを使えないようにするという内容でした。

ATRAはベータディフェンシン1の発現も誘導します


2014年8月20日

2014-08-24 22:13:32 | 

科学者は、ボブ・マーリーを殺したまれな皮膚癌について、より多くを学ぶ
Scientists learn more about rare skin cancer that killed Bob Marley



末端黒色腫(acral melanoma)は音楽家ボブ・マーリーの死を引き起こした珍しいタイプの皮膚癌である。

マンチェスター大学Cancer Research UKの研究者は、末端黒色腫が遺伝子的に見て他のタイプの皮膚癌とは異なることを発見した。

他の一般的な黒色腫とは異なり、それは太陽の紫外線(UV)が原因ではない。



研究チームは末端黒色腫を有する5例の患者の腫瘍の配列を決定して、他の3例の患者のデータと組み合わせた。

次に彼らは、これらの8つの腫瘍で見られる遺伝子の誤りのパターンを一般的なタイプの皮膚癌と比較した。

その結果、末端黒色腫で見られるDNA損傷のタイプは他の皮膚癌と非常に異なることを明らかにした。

例えば、末端黒色腫ではDNAが断絶して他の箇所と再び結合した跡がかなり多く見られた。これは通常の皮膚癌で見られるDNAの変化が小さいのとは対照的である。

学術誌参照:
1.全ゲノム塩基配列決定ならびに比較分析によって明らかにされる、末端黒色腫の突然変異の負荷量。

色素細胞及び黒色腫研究(2014);

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140820123209.htm

<コメント>
末端黒色腫という皮膚癌の遺伝子変異は他の皮膚癌とは異なるという記事です。

少し前にも、DNAの遺伝子がまとめて変異を起こすカティージスについての記事がありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2557d6b78c3d3f44d0182feeb688dfd9

>DNAの突然変異は、ゲノムの全体を通じてランダムに生じる珍しいイベントであると考えられてきた。

>しかしアイオワ大学のアンナMalkova准教授は『切断により誘発される複製(break-induced replication; BIR)』というDNA修復経路が突然変異のクラスター化を促進する可能性があると言う。

2014年8月20日

2014-08-24 11:51:49 | 

なぜ高齢者は睡眠に問題が起きやすいか
Why elderly are prone to sleep problems



人は年をとるにつれて、眠りにつくことと眠っている状態を保つことがしばしば難しくなり、朝は目がさめるのが早過ぎる傾向がある。

これはアルツハイマー病の人では特に顕著であり、夜間の混乱と徘徊の原因となる。

今回のベスイスラエル・ディーコネスメディカルセンター(BIDMC)とトロント大学/サニーブルック健康科学センターによる研究は、睡眠が年と共に断片的になりやすい理由を説明するのを助ける。

「70代の人は1晩につき平均して、20代よりもおよそ1時間睡眠が少ない」、BIDMCのクリフォードB. Saper医学博士は説明する。

「不眠と睡眠の分断化は、多くの健康問題、認知機能不全、血圧の増加と血管疾患、そして2型糖尿病を発症する傾向などと関連している。

人々が年をとるにつれて一部の抑制性ニューロンを喪失していくことが、これらさまざまな疾患の一因となっているようだ。」



1996年、Saperの研究室は腹外側視索前野(ventrolateral preoptic nucleus)がラットにおける「睡眠スイッチ」として機能することを初めて発見した。

これは抑制ニューロンの重要な細胞グループであり、脳の覚醒系(arousal systems)をオフにすることで動物は眠ることができるようになる。

「動物実験では、これらのニューロンの減少は著しい不眠症を生じることを示した。動物の睡眠は正常の約50パーセントだけであり、残りの睡眠は断片的で、阻害される」、



類似した位置にあるヒトの脳の細胞グループ(中間核; intermediate nucleus)は、ラットにおける腹外側視索前野と同様に抑制神経伝達物質のガラニンを持つ。

著者は、もし中間核がヒトの睡眠にとっても重要であり、動物の腹外側視索前野とホモログなら、それはヒトの睡眠と覚醒の循環(sleep-wake cycles)を同じように調節するかもしれないと仮定した。



この仮説をテストするため、研究者はRush Memory and Aging Projectのデータを分析した。

このプロジェクトは1997年から始まった地域に密着した老化と痴呆の研究であり、研究に参加した約1000人の健康な65歳が死ぬまでを追跡したものである。死後、彼らの頭脳は研究のために供与された。

「2005年以降、Memory and Aging Projectの被検者のほとんどは、挙動記録装置の(actigraphic)記録を2年毎に受けていた。

彼らは7~10日間、小型腕時計タイプの装置を利き手でない方の腕(non-dominant arm)につけていた」、トロント大学のアンドリューS. P.リム博士は説明する。

防水の挙動記録装置は一日24時間着用され、それにより大小あらゆる運動を15秒間隔でモニターする。

「我々の以前の研究は、これらの挙動記録装置の記録が睡眠の量と質の優れた基準であることを明らかにした」、リムは付け加える。



著者は45人の研究被検者(死亡年齢中央値、89.2)の脳を調べた。そして、神経伝達物質ガラニンで脳を染色することにより腹外側視索前野ニューロンを特定した。

次に彼らは、45人が死ぬ前の年の挙動記録装置の「静止・活動状態(rest-activity behavior)」を、剖検の腹外側視索前野ニューロンの残りの数と相関させた。



「アルツハイマー病ではない老人では、腹外側視索前野ニューロンの数は睡眠の分断化の量と逆相関していた」、Saperは言う。

「ニューロンが少ないほど、睡眠はより断片的になった。」



腹外側視索前野ニューロンが最も多い(6,000以上)被検者は、総「静止」時間の50パーセント以上を睡眠に使った。

(ここでいう「睡眠」は、長い間「動いていない」時間のこと。the prolonged periods of non-movement, extended periods of rest)

一方、腹外側視索前野ニューロンが最も少ない(3,000未満)被検者は、総「静止」時間の40パーセント未満しか睡眠に使わなかった。

アルツハイマー病患者では、ほとんどの睡眠障害は失われた腹外側視索前野ニューロンの数と関連するようだった。

学術誌参照:
1.アルツハイマー病またはそうではない老人において、睡眠は、腹外側視索前野/中間核のニューロンの数と関連する。

Brain、2014年8月;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140820091052.htm

<コメント>
老化やアルツハイマー病の睡眠障害は、視床下部の腹外側視索前野(hypothalamic ventrolateral preoptic nucleus; VLPO)に存在するガラニン作動性(galaninergic)の抑制性ニューロンの数と関連するという記事です。

眠りが浅くなったからといってアルツハイマーの徴候とは限りませんが、神経の発生と喪失のバランスが崩れているというサインにはなりそうです。


2014年8月20日

2014-08-23 12:27:30 | 

乳癌の再発と化学療法に対する応答を両方とも予測する遺伝子
Novel gene predicts both breast cancer relapse, response to chemotherapy



早い段階の乳癌患者の30パーセントは、転移による再発または他の器官への浸潤を経験する。

また、一部の患者は化学療法に十分に反応を示さない。



A*STAR分子細胞生物学研究所(IMCB)と、国立シンガポール大学(NUS)のシンガポール癌科学研究所(CSIシンガポール)の研究者たちは、それらを予測する遺伝子DP103を発見してJCI誌で報告した。

DP103は転移の乳癌で活性化されるマスター調節因子であり、それは2組の不利なタンパク質を発現する。

1つは転移の原因となり、もう1つは化学療法への感受性を低下させる。



「医師は、治療して6ヵ月たつまで乳癌患者が化学療法に反応を示すかどうかわからない。それは非常に厄介である。なぜなら、化学療法に反応しない者はたいてい、転移による再発に苦しむからである。

我々が発見したDP103遺伝子はこのようなつながりを説明し、医師が適切な治療を選択することを容易にするだろう」、IMCB主任研究員のTergaonkar博士は言う。

研究ではさらに、DP103のレベルを低下させることは癌を封じ込め、腫瘍を縮小し、化学療法に敏感に反応しやすくする可能性があることを明らかにした。

学術誌参照:
1.DEAD(Asp-Glu-Ala-Asp)-ボックスヘリカーゼDP103は、ヒトの乳癌の転移の可能性を明らかにする。

JCI、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140820110624.htm

<コメント>
DP103(DDX20)遺伝子は、NF-κBを活性化してMMP-9を発現させることで乳癌の生存と浸潤を促進することか判明したという記事です。



DP103は乳癌においてポジティブフィードバックで発現が促進されますが、NF-κBを誘導するTNF-αやLPSによっても新規に(de novo)発現が上昇しました(Figure6E)。

MMP-9の発現はAEG-1とFoxO3aにより調節されることが知られています。

http://ta4000.exblog.jp/18120202

>AEG-1のノックダウンは、FoxO3aの濃度上昇およびMMP-9の発現減少と相関した。

2014年8月14日

2014-08-20 16:45:42 | 代謝

糖尿病の発症のために必要な、たった一つの酵素
Single enzyme necessary for development of diabetes



12-LOという酵素は肥満により誘導される膵臓細胞の酸化ストレスを促進し、糖尿病前症と糖尿病につながる。

インディアナ医科大学の研究チームによれば、12-LOの酵素作用は細胞を害する小分子の産生の最後の段階である。

「高脂肪食を多く食べて過体重になると、膵臓のベータ細胞は充分なインスリンを産生する機能が失われると我々は推測した」、主任研究員Raghavendra Mirmiraは言う。



イースタンバージニア医科大学による先行研究では、12-LO(12-リポキシゲナーゼ)が過体重の人々の細胞だけに存在することが示された。

12-LOにより生じる有害な小分子はHETE(hydroxyeicosatetraenoic acid; ヒドロキシエイコサテトラエン酸)として知られる。

HETEはミトコンドリアを障害するため、膵臓細胞がインスリンを製造するための充分なエネルギーを発生するのに失敗する。



研究者は膵臓細胞だけで12-LOをノックアウトしたマウスを遺伝的に設計し、コントロール・マウスと共に低脂肪食と高脂肪食を与えた。

コントロール・マウスと高脂肪食ノックアウト・マウスは肥満とインスリン抵抗性を発病した。

コントロール・マウスの膵β細胞は酸化損傷を示したが、ノックアウト・マウスのβ細胞は完全で健康だった。このことは12-LOとその結果として生じるHETEがβ細胞不全を引き起こしたことを示唆した。



Mirmiraは研究で使われた高脂肪食が西洋型の食事であった点を強調する。それは大部分が飽和脂肪、つまり「悪い」脂肪から成る。

最近の部分的に関連する代謝経路の研究に基づいて、彼は「不飽和脂肪および一価不飽和脂肪では同じことは起きそうにない」という。それらは健康とされる比較的高脂肪な地中海食のほとんどの脂肪を構成する。



「我々は、高脂肪食後に糖尿病前症を発症する原因がβ細胞の12-LOであることを初めて示す」、Mirmiraは言う。

「また、我々の研究はほとんどあらゆる種類の糖尿病と糖尿病前症において最初に障害を受ける細胞はβ細胞であるという概念に、重要な信用を添える。」

学術誌参照:
1.12-リポキシゲナーゼは、膵島で肥満によって誘発された酸化ストレスを促進する。

分子および細胞の生物学、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140814192352.htm

<コメント>
肥満のために12-LOが高発現している人は、高脂肪食によりβ細胞が障害されやすいという記事です。12-LOはアラキドン酸(AA)を酸化してヒドロキシエイコサテトラエン酸(12-HETE)を生じる酵素です。

Abstractを見ると、12-LOノックアウトマウスの膵島ではSod1とグルタチオンペルオキシダーゼ1(Gpx1)の発現が上昇し、さらに核内ではそれら抗酸化酵素の発現を活性化する転写因子Nrf2が増加していました。

そのまま行くと肥満と過剰なAAが良くないという結論になると思うのですが、記事中のMirmira氏は「西洋食の飽和脂肪酸が良くない」と言っています。おそらく、12-LOの発現には過剰な飽和脂肪酸が関連するということなのでしょう。

もちろん過剰な飽和脂肪酸が代謝に悪影響を与えるのは確かだと思います。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8c466dbe001ed33942069a20e768b43e



ところで、イースタンバージニア医科大学による先行研究はおそらくこれのことでしょう。
BMIが39以上の病的肥満(morbidly obese)で糖尿病の人々とそうでないグループの内臓脂肪(VAT)における12/15-リポキシゲナーゼ(ALOX; arachidonate lipoxygenase)の発現を比較しています。
ALOX 12の発現は、IL-6、IL-12a、CXCL10、リポカリン-2の発現と正の相関が見られたとあります。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24955608

2014年8月14日

2014-08-20 15:14:00 | 

ビタミンAによる癌治療を妨害するタンパク質
Protein found to block benefits of vitamin A cancer therapy



レチノイン酸は種々の癌の治療と再発防止を助けるために使われるビタミンAの一種だが、一部の患者では効果がない。

バージニア州立大学(VCU)マッシー癌センターの研究者は、AEG-1というタンパク質が白血病と肝癌でレチノイン酸の作用を妨害することを証明した。

AEG-1はほとんどすべての癌で過剰発現するため、この発見は無数の癌患者の治療に影響を与える可能性がある。



Devanandサルカール博士たちの研究チームは、AEG-1がレチノイドX受容体(RXR)に結合することを証明した。RXR受容体は細胞の成長と発達を調整するのを助ける。

通常、RXRはレチノイン酸によって活性化される。しかし、癌細胞で過剰発現するAEG-1タンパク質はこれらのシグナルを妨害して、腫瘍の増殖を促進する。

学術誌参照:
1.AEG-1はレチノイドXレセプタを調整して、レチノイド・シグナル伝達を阻害する。

Cancer Research、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140814124539.htm

<コメント>
腫瘍で過剰発現するAEG-1(astrocyte elevated gene-1 / Metastasis Adhesion Protein)がRXRを介してレチノイドシグナルを阻害するという記事です。

以前にもAEG-1はFoxO3aの発現を阻害することが示されています。

http://ta4000.exblog.jp/18522310

>さらに、臨床上の前立腺癌ではAEG-1の発現が促進され得ることが示されている。
>前立腺腫瘍細胞でのAEG-1の促進はAktの活性化につながり、FoxO3aを抑制してアポトーシスを阻害するのかもしれない。

http://ta4000.exblog.jp/18120202

>AEG-1をノックダウンするとFoxO3a活性が促進され、細胞のアポトーシスを引き起こし、FoxO3aの濃度上昇およびMMP-9の発現減少と相関した。

2014年8月14日

2014-08-20 13:20:38 | 

遺伝的ALS/FTDと戦うための戦略
Researchers develop strategy to combat genetic ALS, FTD



メイヨー・クリニックとフロリダのスクリップス研究所は、神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis; ALS)ならびに前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia; FTD)にとって最も広く見られる遺伝的な危険因子と戦うための、新しい治療方針を開発した。

また、ニューロン誌の8月14日号で彼らは疾患の進行と治療法の効き目を追跡するための潜在的なバイオマーカーの発見を報告する。



科学者たちは、C9ORF72遺伝子の突然変異によって引き起こされる異常な細胞のプロセスを妨害するための小分子薬化合物を開発した。

今回の発見は、C9ORF72突然変異が異常な反復遺伝子の配列を生じ、脳細胞と脊髄で異常なRNAの蓄積を引き起こすという、メイヨー・クリニックの研究者による以前の発見の直後である。

C9ORF72関連疾患(c9FTD/ALS)では有毒なタンパク質の凝集が神経変性に関係することが示されてきたが、この新しい戦略は異常タンパク質の前に形成される異常RNAを狙う。

新化合物はc9FTD/ALSの細胞培養モデルでテストされ、他の重要なタンパク質と相互作用するRNAと結合して、その能力を妨害した。それにより『有毒なRNA凝集塊』と『c9RANタンパク質』の形成を防止する。

c9RANタンパク質は、反復関連非ATG翻訳(repeat-associated non-ATG; RAN)というプロセスから生じる異常RNAである。



さらに、異常なRNAによって産生されるc9RANタンパク質はALS患者の脊髄液で測定できることも示された。

研究者は現在、これらのタンパク質がFTD患者の脊髄液に存在するかどうかを評価している。

ALSでは主に運動ニューロンが侵され、運動能、会話、嚥下、呼吸機能が障害される一方、FTDは高次認知機能を維持するための脳領域が侵される。しかし一部の患者は、その症状を両方とも持つ(FTD/ALS)。



「c9FTD/ALSの確実でアクセスしやすいバイオマーカーの開発は、疾患の診断と経過の追跡を助けるだけでなく、実験的な治療への応答を評価するためのより直接的な方法を提供できるだろう」、メイヨー・ジャクソンビルALSセンターのケビン・ボイラン医学博士は言う。

例えば、治療に応じたc9RANタンパク質のレベルの減少は、薬が望ましい作用を持っていることを示唆する。

学術誌参照:
1.c9FTD/ALSにおけるバイオマーカーの発見と、repeat(GGGGCC)関連障害を標的にするリード小分子。

Neuron、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140814123434.htm

<コメント>
C9ORF72(chromosome 9 open reading frame 72)遺伝子の5'非翻訳領域におけるGGGGCCという6塩基反復配列の異常伸長(expanded repeat)が異常RNAを蓄積させてALS/FTDの原因となり、それを標的とする化合物が開発され、またバイオマーカーとして脊髄液で計測できることが確認されたという記事です。

Abstract他の記事を見ると、GGGGCCの異常伸長RNAはATGと関係なく翻訳が開始され、異常タンパク質(Repeat-Associated Non-ATG; c9RAN)がヌクレオリンのようなリボ核タンパク質(RNP)と結合してしまうということのようです。

GGGGCCは読み枠によって、
  GGG + GCC + GGG + GCC …
  GGG + CCG + GGG + CCG …
  GGC + CGG + GGC + CGG …
 GGG: グリシン(G)
 GCC: アラニン(A)
 CCG: プロリン(P)
 GGC: グリシン(G)
 CGG: アルギニン(R)
の3通りの読み方がありますが、Scienceに掲載された研究では、封入体に最も多く見られるのはポリGA(グリシン-アラニン)だったそうです。

http://first.lifesciencedb.jp/archives/6559



>Here we found that most of these characteristic inclusions contain poly-(Gly-Ala) and to a lesser extent poly-(Gly-Pro) and poly-(Gly-Arg) dipeptide-repeat proteins presumably generated by non-ATG-initiated translation from the expanded GGGGCC repeat in three reading frames.


しかし今回の研究では脊髄液から検出できたマーカーはポリGP(グリシン-プロリン)でした。

http://www.cell.com/neuron/abstract/S0896-6273(14)00673-4

>we show that poly(GP) c9RAN proteins are specifically detected in c9ALS patient cerebrospinal fluid.