脂肪の蓄積を調節する受容体
Discovery explains how receptor regulates fat accumulation in obesity
スウェーデンのカロリンスカ研究所(Karolinska Institutet)の研究によれば、脂肪の分解を増加させるシグナルに対する脂肪細胞の感度は、受容体ALK7との関連がある。
ALK7受容体は、代謝の制御に関与する脂肪細胞と組織で主に見られる。
ALK7に突然変異があるマウスはALK7が機能するマウスより脂肪の蓄積が少ないが、これまでその理由は不明だった。
研究者は脂肪細胞だけがALK7を持たないマウスを作製して、ALK7受容体がない脂肪細胞はアドレナリンとノルアドレナリン・シグナルへの感受性が高まることを明らかにした。
通常、アドレナリンとノルアドレナリンは脂肪の分解を促進する。
しかし栄養分が豊富な時、脂肪細胞はシグナルに抵抗して代わりに脂肪を貯めこむようになる。
研究者は、ALK7を阻害することによって肥満の防止が可能かどうか調査した。
現時点ではALK7の阻害剤は存在しないが、ALK7の特定の突然変異をマウスを生じさせることによってこれを解決した。
この突然変異は化学物質による阻害に対して感受性にするため、いつでもマウスの受容体を妨害することが可能になった。
「このアプローチにより我々は、高脂肪食を与えても化学物質を投与するだけでマウスをより痩せているようにすることができた。これは、ALK7受容体の急性の阻害が成体の動物で肥満を防止できることを示唆する」、神経科学部のTingqing Guoは言う。
研究者はさらに、ヒトの脂肪細胞でも、ALK7受容体がマウスと似たような方法で働くことを示した。
記事供給源:
上記の記事は、カロリンスカ研究所により提供される材料に基づく。
学術誌参照:
1.脂肪細胞のALK7は、肥満において栄養の過負荷とカテコールアミン抵抗性を関連づける。
eLife、2014;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140826085726.htm
<コメント>
脂肪細胞のALK7という受容体をノックアウトすると、高脂肪食でもアドレナリン・ノルアドレナリンに抵抗性が起きず、太りにくくなったという記事です。
具体的には、ノックアウトによりβ-アドレナリン受容体の発現、β-アドレナリンシグナル、ミトコンドリア生合成、脂肪の分解と酸化が促進されたとAbstractにあります。
アドレナリン等のホルモンへの抵抗性の仕組みは、より具体的には高脂肪食によるALK7シグナルを介してβ-アドレナリン受容体(ADRB2、ADRB3)やホルモン感受性リパーゼ(HSL)等の発現が減少し、さらにRGS2(Regulator of G protein signaling 2)の発現が上昇して、アデニル酸シクラーゼ(とcAMP/PKA)が阻害されるためであるようです。
http://elifesciences.org/content/3/e03245
>In addition, expression of the negative regulator of adrenergic signaling Rgs2, an inhibitor of adenylate cyclase, was elevated after a high fat diet in the adipose tissue of wild type mice but not in Alk7 knock-out mice (Figure 5G) or fat-specific Alk7 knock-out mice (Figure 5H,I).
RGS2はさらにCrtc3(CREB Regulated Transcription Coactivator 3)のような調節因子と協力すると本文にあります。
>possibly by cooperating with intermediate regulators, such as Crtc3.
研究で使われているALK7のリガンドのアクチビンBはインヒビンβBサブユニットのホモダイマーで、構造的にTGF-βに類似しています。
アクチビンBと、もう一つのリガンドGDF-3は、高脂肪食/肥満により脂肪細胞で発現が増加することが明らかになっています。
>A high fat diet and obesity increase adipocyte expression of the two main ALK7 ligands activin B and GDF-3, suggesting enhanced ALK7 signaling in obesity.
最近は高脂肪食でおなかいっぱい食べても痩せるというダイエットが広まっているようですが、今回の記事はそのような珍説に疑いを抱かせるには十分だろうと思います。
アドレナリンは熱の産生も促進するため、高脂肪食により「アドレナリン抵抗性」が褐色脂肪細胞でも起きるとすれば、体温が低下しやすくなるのではと思います。
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b7d30af07b3db4b916c15070e4044793
>褐色脂肪は寒冷やエピネフリンなどのホルモンによってスイッチがオンになり、熱発生遺伝子(thermogenic gene)という遺伝子グループの作用により熱を発生させる。