重要な免疫タンパク質の二面性の基礎が明らかになる
Study unlocks basis of key immune protein's two-faced role
ブリガム・アンド・ウィメンズ病院主導の研究チームは、長い間求められていた重要な免疫性タンパク質であるTIM-3のパートナーを特定した。このパートナーの存在は、免疫システムでのTIM-3の二面性を説明するのを助ける。
TIM-3は時には免疫を低下させ、別の時には免疫を刺激する。この新しく特定されたTIM-3のパートナーはHIVや自己免疫、癌のような疾患における免疫システムの内部の働きを明らかにするだけでなく、TIM-3を標的にする新しい治療薬の開発への道を開く。
「TIM-3に関する多くの混乱があった。TIM-3はどのようにして免疫システムを阻害しながら、活性化もするのか」、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(BWH)の胃腸病学・肝臓学・内視鏡検査部のチーフで、論文のシニア・オーサーのRichard Blumbergは言う。
薬の標的としてのTIM-3に対する重要性は、ほとんどがその免疫を抑制する役割から生じる(特に癌において)。
免疫細胞は長い間刺激されるとTIM-3のようなシグナルのスイッチを入れて、自分自身の活性を低下させるのを補助する。この慢性的な活性化状態とそれによる「疲弊(exhaustion)」は、HIVのような慢性的なウイルス感染によって生じる免疫学的特質である。
そして「疲弊」は、癌にも共通である。もし薬理学的にTIM-3を阻害する方法があれば、それは免疫システムを解放して腫瘍を攻撃させることができるかもしれない。
このような重要性にもかかわらず、TIM-3がどのように作用するかについての詳細はこれまで不明だった。
Blumbergと、ハーバード医科大学院とBWHの免疫疾患EvergrandeセンターのディレクターであるVijay Kuchroo博士、そしてファースト・オーサーのYu- Hwa Huangによって指揮される同僚たちは、TIM-3の重要なパートナーであるCEACAM-1を特定した。
CEACAM-1の存在はTIM-3がどのようにふるまうかを決定する。CEACAM-1が存在すると、TIM-3は免疫を阻害するように作用する。CEACAM-1が存在しなければ、TIM-3は活性化因子としての特性を帯びる。
これらの2つの分子は協力して、これまで知られていなかった完全に新しい構造を形成する。加えてそれらは構造的にも機能的にもお互いにきわめて類似している。そして事実、この類似性によって、CEACAM-1は長い間探し求められていたTIM-3のパートナーであるとHuangが初めて提唱するに至った。
Blumbergと彼の研究チームは様々なアプローチを使用して、CEACAM-1の役割の本質を明らかにした。重要なことに、CEACAM-1を欠失するように設計された免疫細胞は炎症の増加を示す。結腸直腸癌のマウス・モデルにおいてCEACAM-1とTIM-3を両方とも同時に阻害すると、腫瘍に対する免疫応答が強化された。
「我々のデータはどのようにTIM-3を標的にするべきかについて示す。これは非常にエキサイティングだ」、Blumbergは言う。
「これは癌を治療するための完全に新しいパラダイムへと至る真の道筋を指し示す。もちろん、HIVのような他の疾患もである。」
記事出典:
上記の記事は、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院によって提供される素材に基づく。
学術誌参照:
1.CEACAM1は、TIM-3によって媒介される寛容(tolerance)と疲弊(exhaustion)を調節する。
Nature、2014;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141126094246.htm
<コメント>
TIM-3(T-cell immunoglobulin domain and mucin domain-3)が慢性的な感染でT細胞の疲弊(T-cell exhaustion)を引き起こして免疫を阻害したり、別の状況では免疫を活性化するようにも見えたのは、パートナーであるCEACAM-1(carcinoembryonic antigen cell adhesion molecule 1)の調節によることが明らかになったという記事です。
Abstractによると、CEACAM1はTIM-3とヘテロ二量体を形成して相互作用することでT細胞膜の表面にTIM-3を表出させ、炎症を抑制するように作用します。癌や慢性的なウイルス感染で疲弊したT細胞は細胞表面のCEACAM1とTIM-3が特徴であるようです。
逆にCEACAM-1とTIM-3を欠失させると過剰な炎症が生じて、癌に対する免疫が強化されます。