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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

高脂肪食が炎症を引き起こすにはマクロファージの脂肪酸合成が必要

2016-11-04 06:06:26 | 代謝
Cause of inflammation in diabetes identified

November 2, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/11/161102080309.htm


(食事中の多すぎる脂肪は慢性炎症を刺激することによりインスリン抵抗性を促進する
上の図は、免疫細胞(緑色)が脂肪酸を合成し、糖尿病に関する炎症に寄与することを示している
ワシントン大学医学部の研究者は免疫細胞で脂肪酸の産生を阻害する方法をマウスで開発し、そのマウスは高脂肪食によって誘発される糖尿病から保護された

Credit: Semenkovich lab/ Washington University)

糖尿病の患者が心臓発作heart attackや脳卒中stroke、腎疾患などの関連する合併症complicationを経験する主な理由の一つは炎症inflammationである
ワシントン大学セントルイス校医学部の研究者は今回発表された驚くべき研究の中で、慢性的な炎症の引き金となる可能性のある原因を特定した

食事中の多すぎる脂肪fatは、慢性的な炎症に拍車をかけるspurことによりインスリン抵抗性を促進する
しかしワシントン大学の研究者たちはマウスを使った研究で、特定の免疫細胞が脂肪fatを作れないようにしたマウスは高脂肪食high-fat dietを食べても糖尿病も炎症も起きないことを明らかにした
この研究はNature誌のオンライン先行版advance online publicationで11月2日に発表された


「世界の糖尿病患者の数は過去20年で4倍になっている」
首席研究者senior investigatorのClay F. Semenkovichは言う
彼は教授職のIrene E. and Michael M. Karl Professorであり、セントルイス校の内分泌・代謝・脂質研究学部/Division of Endocrinology, Metabolism & Lipid Researchの学部長directorである

「我々は糖尿病の人々が心臓発作や脳卒中にならないようにする予防についてはそれなりの進歩をしてきた
しかしながら、適切な治療を受けている人々でも慢性的な炎症によって刺激される合併症で死ぬ可能性は今なお高く、そのような炎症は少なくとも部分的には免疫細胞によって引き起こされる」

「しかし、免疫細胞の内部で作られる脂肪を阻害することによって、炎症を防ぐことが可能かもしれない
それは糖尿病の患者だけでなく慢性的な炎症が関与する他の病態、例えば関節炎や癌でも当てはまる
これは健康に深い影響を与えうる」


Semenkovichのチームは遺伝子を操作したマウスを作成し、マクロファージという免疫細胞で『脂肪酸合成酵素/fatty acid synthase (FAS) 』という酵素を作れないようにした
この酵素がないマウスは、細胞の正常な代謝の一部である脂肪酸合成が不可能になる


「驚いたことに、このマウスは高脂肪食によって誘発される糖尿病から保護されることが判明した」
内科学の専任講師/instructor of medicineで、筆頭著者first authorの Xiaochao Wei, PhDは言う

「このマウスは、通常なら高脂肪食によって誘発されるインスリン抵抗性や糖尿病を発症しなかった」


マウスと培養細胞の一連の実験から、内部で脂肪酸を合成できないマクロファージは、その外側の細胞膜が細胞外側から来る脂肪に反応できないことが判明した
それによりマクロファージは炎症の一因となることができなかったのである


しかし、炎症の完全な消去は糖尿病合併症の予防の答えではない
なぜなら炎症は体内から感染の病原体を除去するためにも必要不可欠であり、同時に傷の治癒を助けもするからである
それでも、Semenkovichは今回の新たな研究結果が臨床的に深い意味を持つかもしれないと言う

彼は次のように説明する
「脂肪酸合成酵素の阻害剤は実際に癌の治療法として現在臨床試験中である
糖尿病でも、脂肪酸合成強訴を阻害する他の薬剤が開発されている
我々の研究が示唆する一つの可能性は、細胞膜の脂肪の量を変化させることが癌の転移や糖尿病の合併症の阻止を助けるかもしれないということだ」


脂肪酸合成を阻害するために現在使われている薬剤や、そして他の開発中の戦略も、マクロファージが病原体と戦うための能力を完全には消さずに慢性的な炎症を阻害できるようにする可能性がある


研究者たちは細胞の脂質の構成を変化させる既存の薬剤の化合物を調べる計画である
そのような薬剤は臨床試験には失敗しているが、マクロファージの細胞膜に影響を与えることにより糖尿病の合併症リスクを低下させるかもしれないとSemenkovichは言う


http://dx.doi.org/10.1038/nature20117
Fatty acid synthesis configures the plasma membrane for inflammation in diabetes.
脂肪酸合成酵素は糖尿病における炎症のための細胞膜を修正する

食事中の脂肪は慢性炎症を通じて病的なインスリン抵抗性を促進する(1, 2, 3
マクロファージによって作られる炎症性タンパク質の不活性化は、そのような食事によって誘発される糖尿病を改善するが(4、しかし栄養の密な食事/nutrient-dense dietsがどのようにして糖尿病を誘発するのかは不明である

細胞膜の脂質は自然免疫応答に影響を与え(6、
それには『(コレステロールが豊富な)ドメイン』が必要である(7
このドメインは高脂肪食によって誘発される慢性的な炎症に影響し(8,9、リン脂質の構成を基盤とする細胞機能を変化させる(10

脂肪酸合成酵素 (FAS) によって仲介される(11 内因性の脂肪酸合成は、膜の構成に影響する
今回我々はマクロファージのFASが食事によって誘発される炎症に絶対必須indispensableであることを示す

FASをコードするFasn遺伝子をマクロファージで消去すると、食事によって誘発されるインスリン抵抗性が阻止され、マクロファージの脂肪組織へのリクルートと慢性炎症が防がれた

FASの欠損は膜秩序と膜構成/membrane order and compositionを変化させ、細胞膜コレステロールの保持を損ない、Rho GTPアーゼの輸送を妨害するdisrupt
Rho GTPアーゼの輸送は、細胞の接着、移動、活性化に必要なプロセスである

構成的に活性化するRho GTPアーゼを発現させると、炎症性シグナルは回復した
外からのパルミチン酸/exogenous palmitateを投与しても、内部からの脂質/endogenous lipidsとは異なるプールに区分けされてpartitioned、炎症性シグナル伝達を回復しなかった


しかしながら、外からのコレステロール/exogenous cholesterolや、他の平たんなステロール/planar sterolsは、シグナル伝達を回復した
コレステロールは、FASによって誘導される膜秩序の混乱を回復した

我々の結果は、マクロファージ内部の内因性の脂質の産生が、外因性の脂質によって誘発されるインスリン抵抗性の発生に必須であることを示す
そしてそれは、コレステロール依存的なシグナル伝達ネットワークを組み立てるための『受容的な環境/receptive environment』を細胞膜に作り出すことを通じてである


http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/fig_tab/nature20117_SF10.html

Figure 10

※coprostanol: コプロスタノール。コプロステロールcoprosterolとも

a, 一般化された『平たんな構造のステロール』と『平たんではない構造のステロール』。マクロファージに負荷するために使う

b, 細胞膜でのFAS依存的なコレステロール保持がJNK活性化につながる様子を図にしたもの
FASが欠損した状態ではリン脂質環境の不飽和脂肪酸レベルが高いことが特徴であり、
FASが完全repleteな状態ではリン脂質に飽和脂肪酸が豊富である
このリン脂質の図は概要を表現したものであり/depicted schematically、不飽和脂肪酸の構造を真に表すことを意図していない



※Rho(Ras Homolog)、Rac(Ras-related C3 botulinum toxin substrate)
低分子量Gタンパク質は『Ras、Rho、Rab、Ran、Sar/Arf』という5つのファミリーに分類され、
Rhoファミリーは『Rho、Rac、Cdc42』という3つのサブファミリーからなる
Rhoファミリーの活性は『Rhoグアニンヌクレオチド交換因子 (Rho GEF)、Rho GTPase活性化タンパク質 (Rho GAP)、Rhoグアニンヌクレオチド解離阻害因子 (Rho GDI) 』により制御される



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/3787e596bc6ddff6d2af0918968ced08
コレステロールは細胞の移動で重要な役割を果たす

 

インスリン抵抗性とインスリン敏感性

2016-06-27 06:06:46 | 代謝
Insulin-sensitive fat leads to obesity

Cellular sorting protein disrupts fat metabolism by recycling molecular receptors for insulin

June 21, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160621111214.htm


(SORLAレベルの上昇とともに脂肪細胞のサイズが大きくなる

Credit: Vanessa Schmidt/MDC)

SORLAは細胞内のタンパク質が どのような処理を受けるかを分類sortする機構の一部である
そこでタンパク質は分解されるか、または再利用されるための目印をつけられる

アルツハイマー病の場合、SORLAはアミロイドβという危険な蓄積物を生じるタンパク質のレベルを低下させる
しかし、脂肪細胞ではSORLAにもう一つの役割があり、脂肪細胞をインスリンに過剰に敏感にして脂肪を過度に蓄積させる

この代謝的な機能の詳細が今回Thomas Willnow教授らが率いる研究チームによって突き止められた
この研究結果はJournal of Clinical Investigation誌で発表される

その中で科学者たちはSORLAがどのようにして機能するかを詳しく記述している
研究はヒトのサンプル、マウスモデル、細胞培養で行われた

これまでSORLAの特定の遺伝型と、腹部径の大きさ、体脂肪レベルの増大との間のつながりが知られていたが、それらは遺伝学的な研究によるものだけだった

研究者は362人の脂肪組織を分析し、脂肪にSORLAが多いほど過体重の度合いが強くなるであろうことを発見した

彼らはさらに、SORLAの遺伝子が脂肪組織だけでSORLAタンパク質を多く作るようにしたマウスの実験により因果関係を確立した
このマウスが高カロリーのエサを食べ始めると急速に太ったのとは対照的に、
SORLAの遺伝子を不活化されたマウスは同じエサを食べても、SORLAが通常レベルのマウスと比べてさえ顕著に痩せていた

SORLAが過剰な細胞は、明らかに強くインスリンに反応していた
培養細胞の研究により研究者はSORLAとインスリン受容体分子を追跡し、それらが途中で細胞の『分類ステーション/sorting station 』を通過することを明らかにした
そこでSORLAはインスリン受容体に再利用されるように目印をつけ、リソソームという区画で分解されないようにしていた
SORLAが高レベルであるほど、細胞の表面に到達するインスリン受容体は増加した
受容体の数が多いということはより多くのインスリンが細胞に結合できることを意味し、
細胞はインスリンに対して過剰に敏感になる
これにより細胞が本来なら分解すべき脂肪を分解する量が減少する


インスリンによって引き起こされる代謝プロセスの乱れは糖尿病の特徴である
今回の研究結果からWillnowたちはインスリンシグナルが細胞内で通過するまったく新しい経路を明らかにした
この経路は糖尿病を治療する人々で顕著である可能性が高いだろう

「2型糖尿病にはインスリンが効きにくいというインスリン抵抗性
も含まれているが、それだけが問題なのではない」
Willnowは言う

「代謝が乱れうるもう一つの原因は、脂肪組織がインスリンに対して過剰に敏感になることである」

マウスの実験では、通常のエサを食べている時はSORLAの量が多くても少なくても体重は変わらなかった
しかし、SORLAが多すぎるマウスだけが『ファーストフード』、つまり高脂肪かつ高炭水化物のエサを食べて極端に体重が増えたのである

Willnowは言う
「このことが示唆するのは、インスリンに対して過剰に敏感な脂肪組織だけが、不健康な食事を食べる時に問題となるということである」


http://dx.doi.org/10.1172/JCI84708
SORLA facilitates insulin receptor signaling in adipocytes and exacerbates obesity.

細胞内に内在化されたインスリン受容体は、SORLAによってエンドソームから細胞膜に戻される



関連サイト
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=SORL1
Aliases for SORL1 Gene
SORLA
LR11



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5410eb0f0900f4f19d875c843cfb6ab9
可溶性LR11/SorLAは脂肪組織の熱発生を抑制し、ヒトのBMIと相関する



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/9857
SorLAはアミロイドβペプチドのような凝集を起こしやすい性質をもつ様々なペプチドを幅広く認識して分解系へと輸送する役割をもつ


<コメント>
論文のReference 18が
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5410eb0f0900f4f19d875c843cfb6ab9

ただし論文中では影響が見られなかったという


>Recently, a role for the soluble ectodomain of SORLA (called sLR11) in control of thermogenesis in mice has been reported.
>Specifically, sLR11 is proposed to act via the BMP receptor pathway to suppress browning of WAT (18).
>Possibly, SORLA may assume different roles in control of systemic metabolism, including action as a humoral factor.

>However, our data unambiguously document a cell-autonomous function for the full-length receptor in control of body weight and the incidence of obesity.
>This conclusion is supported by unchanged rates of transcription of genes proposed to act downstream of sLR11 in control of thermogenesis (18) in experimental conditions described here (Supplemental Figure 10)
(今回の実験の状態では、熱発生の制御においてsLR11の下流で働くと提案されている遺伝子の転写レートには変化がなかった) 
 

VLDLを調節するタンパク質はミリスチン酸で活性化する

2016-06-20 06:06:52 | 代謝
Damage to Tiny Liver Protein Function Leads to Heart Disease, Fatty Liver

June 10, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160610140704.htm

セントラルフロリダ大学(UCF)医学部の研究者は、肝臓のタンパク質の一つが乱されるとアメリカの死因の第一位である心血管疾患や、脂肪肝疾患につながることを初めて明らかにした
脂肪肝疾患は肝臓癌の前兆precursorである
そしてこのタンパク質の繊細な仕組みmechanicsを無力化する主犯the chief culpritは、赤身肉やバターに含まれている脂肪酸だという
今回のShadab Siddiqi博士による発見は、Journal of Biological Chemistry誌の6月10日版のカバーストーリー(表紙と関連する特集記事)になっている

医学部の生物医科学バーネットスクールで助教授であるSiddiqiの研究の焦点は、超低密度リポタンパク質(VLDL)の肝臓による分泌を調節することによってどのようにして心疾患を防ぐかということである
VLDLというリポタンパク質はコレステロールレベルを増すことが知られており、そしてコレステロールレベルは動脈にプラークが蓄積するリスク要因である
彼の以前の研究では、新しく形成されたVLDLがどのようにして血流に輸送されてプラークを形成するのかが明らかにされている

肝臓が健康に機能するためには、正常なVLDL分泌がほどよく保たれなければならない
肝臓からのVLDL分泌が少なすぎると脂肪肝になり、肝臓癌につながる可能性があるpotentially
(VLDL分泌の調節に必要な)タンパク質と、何がそれを活性化するのかを明らかにすることは、その不調と疾患を防ぐ方法を発見するための第一歩である

食事を変えることはとても難しいので、Siddiqiはもっと簡単な代案を発見したいと考えた

NIHの出資による研究で、Siddiqiは『バロシン含有タンパク質と相互作用する小分子タンパク質/Small Valosin-Containing Protein Interacting Protein (SVIP)』という小さなtinyタンパク質がVLDL分泌に関与することを明らかにした
SVIPはVLDLがどれぐらい血液中に分泌されるのかを調節する
最適な健康状態を確保するためには肝臓のSVIPが適切に調節されなければならない、とSiddiqiは言う

彼はこの小さなタンパク質をマニュアル車manually operated carにたとえている
スムースに走らせるためにドライバーはアクセルペダルとクラッチを正確にシンクロさせる必要がある
もし両者がシンクロしないと車は簡単には動かず、けいれんを起こしたように不規則に走り出しhave fits and starts、やがて止まってしまう

※by fits and starts: 発作的な不規則さで、断続的に


SVIPを同定した後、Siddiqiのラボはそれがミリスチン酸myristic acidの結合箇所を含むことを発見した
ミリスチン酸はバターの脂肪や動物性脂肪に含まれる14の炭素からなる脂肪酸で、特に赤身肉に多い

この発見を元にセントラルフロリダ大学の研究者は様々な食事の脂肪がSVIPの機能に与える影響を研究し、ミリスチン酸だけがSVIPを活性化させて過剰なVLDLを血中に分泌させることを発見した
しかし、ミリスチン酸が存在しないと肝臓はVLDLの分泌に失敗し、脂肪が肝臓内に蓄積した
そのような蓄積は癌につながる可能性がある

この研究結果は食事中の過剰なミリスチン酸、つまり動物性脂肪や乳製品の脂肪を通じての過剰な摂取は、SVIPが適切に肝臓のVLDL分泌を調節できないようにすることを示唆する


「我々の食事は複雑な分子プロセスを調整し、我々の健康と寿命に深い影響を与えることをこれらの発見は示唆している」
Siddiqiは説明する

「目標challengeは、肝臓の他の多くの機能には影響を与えないような治療法を作り出すことだろう」


http://dx.doi.org/10.1074/jbc.M115.705269
Silencing of Small Valosin-containing Protein-interacting Protein (SVIP) Reduces Very Low Density Lipoprotein (VLDL) Secretion from Rat Hepatocytes by Disrupting Its Endoplasmic Reticulum (ER)-to-Golgi Trafficking.
SVIPのサイレンシングは、ERからゴルジへの輸送を乱すことにより、ラットの肝細胞からのVLDL分泌を低下させる

Abstract
発生しようとするnascent/初期のVLDL粒子のERからゴルジ装置への輸送は肝臓によるVLDL分泌を支配determineし、その輸送は『VLDL輸送小胞/VLDL transport vesicle (VTV) 』という特殊化されたER由来の小胞によって仲介される

我々の以前の研究で、ER由来のVTVの形成にはcoat complex II proteinsに加えて、タンパク質が必要なことが示されている

VTVのプロテオーム から、SVIPという9kDaのタンパク質がこれらの特殊化された小胞に独特に存在することが明らかになった
我々の生化学的かつ形態学的なデータは、VTVがSVIPを含むことを示す

共焦点顕微鏡と共免疫沈降法/co-immunoprecipitation assay(Co-IP)を用いて、SVIPがアポリポタンパク質B-100(アポB100)と共局在し、特にVLDLのアポB100ならびにcoat complex II proteinsと相互作用することを我々は示す

細胞質の存在するところでER膜をミリスチン酸で処理すると、SVIPのERへのリクルートを濃度依存的に増大させる
さらに、肝細胞をミリスチン酸で処理することで、VTVの発芽buddingとVLDLの分泌が両方とも増加することを我々は示す

VTV形成におけるSVIPの役割を決定するため、我々は特異的な抗体を使うかまたは肝細胞でsiRNAによってSVIPがサイレンシングすることにより、SVIPタンパク質を阻害した
我々の結果は、SVIPの阻害ならびにSVIPサイレンシングは両方ともVTV形成が有意に減少する結果につながることを示す

加えて、我々はSVIPのサイレンシングがVLDL分泌を減少させることを示す
これは細胞内のVLDL輸送ならびに分泌においてSVIPが果たす生理学的な役割を示唆する

我々の結論はSVIPがカーゴならびにコートタンパク質との相互作用によりVTV形成の新たな調節因子として働き、肝細胞によるVLDL分泌に重要な関係があるということである



<コメント>
SVIPは、VCPと相互作用するタンパク質。
NCBIには「ERADというミスフォールドされたタンパク質分解経路をSVIPは阻害し、細胞のタンパク質分解が過剰に活性化しないようにする」とある



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12529442
VCP/p97は、膜との融合やユビキチン依存的なタンパク質分解など様々なプロセスに関与する
p47やUfd1pのようなアダプタータンパク質は、機能的な多用途性versatilityをVCP/p97にもたらすことが示唆されてきた
我々は新たなアダプターを探索し、SPIVを発見した
SVIPと以前発見されたアダプターのp47とufd1pは、排他的にVCP/p97と相互作用する
完全長のSVIPの過剰発現、または切り詰めたtruncated変異体はゴルジ装置の構造に著しい影響は与えなかったが、
広範囲の細胞の空胞形成vacuolationを引き起こし、それは神経細胞におけるVCP/p97変異体の発現またはポリグルタミンタンパク質の発現を思い出させるreminiscentものだった
この空胞vacuoleはER膜に由来するように思われた



参考サイト
http://beslimbody.com/blog/
>2015年02月22日
>ヤフーニュースで「食事性コレステロール摂取量、政府指針案から上限値撤廃 米国」という記事が発表されていました。
>これは糖質制限をオススメしている身としては嬉しい話ですね。
>僕はダイエットでは炭水化物の代わりに肉や卵などを積極的に食べることを薦めていますが、そういう話をすると「コレステロールが・・・」と心配する人が結構な割合でいます。

ヤフーニュース(笑)

実際のニュースはこちら

http://www.afpbb.com/articles/-/3040196
>2015年版ガイドラインでは、食事から摂取のコレステロールと血清コレステロールの間に明確な関連を示す証拠がないとして、コレステロール摂取の上限値が撤廃される可能性が出てきた。
>一方、コレステロールとセットで語られることの多い飽和脂肪については、より厳しい摂取量の制限が求められた。
>レベッカ・ソロモン氏(臨床栄養学)は、「長い間、体内のコレステロールレベルについては、食事性のコレステロールではなく遺伝や飽和脂肪の過剰摂取が主要な原因であることは分かっていた」と述べ、このような形で認識されて嬉しいと続けた。



関連記事
http://ta4000.exblog.jp/18303888
ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質 (MTP) の発現促進は、VLDLの産生と分泌の増加につながる。



関連記事
http://ta4000.exblog.jp/18328835/
肝細胞において、FoxO1はMTPのプロモーターに結合して活性を刺激する。
 

カロリーの取り過ぎが満腹感を阻害する

2016-06-17 06:06:08 | 代謝
Broken calorie sensing pathway: How overeating may lead to more eating

June 15, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160615134450.htm

トマス・ジェファーソン大学/Thomas Jefferson Universityの研究者は、余分な体重がなかなか落ちにくい理由についてとうとう解明し始めた
彼らは今回の新たな研究で、その人がどれぐらいの食物を食べたのかを腸が感知してそれを脳に中継する方法の一つを明らかにした
それによると、カロリーが多すぎることを腸が感じ取ると、満腹感feeling of fullnessを促進する経路がブロックされるという
この研究はNatureが発行する学術誌のNutrition & Diabetes誌で発表される

結腸癌についての以前の研究で、ジェファーソンのシドニーキンメル医学部で薬理学と実験治療学のChairであるScott Waldman, M.D., Ph.D.を中心とする研究者たちは、ウログアニリンuroguanylinというホルモンが肥満にも関与するようだということに気付いたnotice

※グアニリンguanylin: 15のアミノ酸(PGTCEICAYAACTGC)からなるペプチドホルモン

※ウログアニリンuroguanylin: 16のアミノ酸(NDDCELCVNVACTGCL)からなるホルモン。受容体やシグナル伝達はグアニリンと同じで、C型グアニル酸シクラーゼ/guanylate cyclase type-C(GC-C)のアゴニスト。胃の腸クロム親和様細胞/enterochromaffin-like cell (ECL) や腸のクロム親和細胞 (EC)、膵β細胞、腎尿細管細胞で産生される。Cl-分泌とNa利尿作用はグアニリンより強く、経口のNa負荷で合成と分泌が亢進する

以前の研究では肥満ではないマウスでウログアニリンが脳まで移動し、そこで満腹感を生み出すことが示された
しかし、肥満の状態でこのシグナル伝達に何が起きるのかはわかっていなかった

今回の研究で研究者は過剰に食べさせたマウスを調べ、そのマウスの小腸がウログアニリンの産生を止めることを観察した
脳内に存在するウログアニリンの受容体は完全であり、その数が増加してさえいたが、もはやホルモン自体が作られていなかった
これは食べ過ぎovereatingがウログアニリンの産生を妨害することを示唆する
しかしながら、マウスの食事を制限すると/put on a (restricted) diet、グアニリンの産生は再開した

Waldman博士は言う
「興味深いのは、痩せているマウスが食べ過ぎるか、太っているマウスが食べ過ぎるか、それは問題ではなかったということだ
ウログアニリンの産生はカロリーを摂り過ぎるとどちらのグループでも止まった」

これは肥満と関連する別のホルモン、インスリンやレプチンとはまったくの正反対である
それらは体重が増えるにつれて作られる量がさらに増えていく

「ウログアニリンの問題を引き起こすのは肥満の状態ではなく、むしろカロリーだ」

過食がどのようにしてウログアニリンの産生を停止させるのかを明らかにするため、研究者はこのホルモンを作る小腸の細胞を調査した
彼らは小胞体(ER)ストレスが関与する可能性を疑った
ERは体内のタンパク質やホルモンの多くを作る細胞内の小器官で、ストレスがかかると機能を止めてしまうからである

ERストレスを引き起こすことが知られている化学物質のツニカマイシンtunicamycinを投与したところ、マウスのウログアニリンの産生は過食時と同じように停止した

過食させた肥満のマウスに、今度はERストレスを解放することが知られている化学物質を与えると、そのマウスは再びウログアニリンを作り始めた

「合わせて考えると、これらの実験は『過剰なカロリー』、つまりそれが炭水化物からでも脂肪からでも、小腸の細胞にストレスを与えてウログアニリンの産生を止める
ウログアニリンは食後の満腹感を促すので、それがなくなれば満腹になりにくくなる」
Waldman博士は言う

「わからないのは、どれぐらいが過剰になるのか、そしてどのような分子センサーがそのような決定をするのかということである」

「癌と同様、簡単には回復しないほどの肥満になるまでには多くの段階が存在する
ウログアニリンというホルモンの経路はそのような段階の一つであるようには見えるものの、
それが段階の早期で重要なのか後期でなのか、そしてどれほどの役割を演じているのかは不明である」
Waldman博士は言う

「しかし、ウログアニリンホルモン補充は、他のアプローチとを組み合わせることで肥満を回復するための重要な要素となるかもしれない」


http://dx.doi.org/10.1038/nutd.2016.18
Calorie-induced ER stress suppresses uroguanylin satiety signaling in diet-induced obesity.
食事による肥満において、カロリーによって誘発されるERストレスはウログアニリン満腹シグナル伝達を抑制する

要旨
Abstract

背景/目的
Background/Objectives:
ウログアニリンとその受容体GUCY2C、そして腸と脳とのつながりaxisは、摂食、エネルギー恒常性homeostasis、体容積body mass、代謝を調節する要素の一つであることが明らかになってきているemerge
今回我々は、食事によって誘発される肥満/diet-induced obesity (DIO) の根底にあるメカニズムにおいて、このつながりaxisが果たす役割を調査した


対象/方法
Subjects/Methods:
腸のウログアニリン発現と分泌、ならびに視床下部のGUCY2C発現と食欲不振誘発性シグナル伝達anorexigenic signalingを、高カロリー食を14週間与えたマウスで定量化した

DIOにおけるウログアニリンの抑制で小胞体(ER)ストレスが果たす役割を調査するため、ERストレスを誘発するツニカマイシン/tunicamycinと、ERストレスを防ぐ化学シャペロンのタウロウルソデオキシコール酸/tauroursodeoxycholic acid (TUDCA) を使用した

ウログアニリン発現に対する消費カロリーの影響を、食事の操作manipulationによって調査した

肥満の根底にあるメカニズムにおいてウログアニリンが果たす役割を調査する際に使用したのはCamk2a-Cre-ERT2-Rosa-STOPloxP/loxP-Guca2bのマウスで、タモキシフェンを投与することによりマウスの脳内にトランスジェニックなホルモン発現を誘導する


結果:
食事によって誘発される肥満(DIO)は腸のウログアニリン発現を抑制し、食後の血液循環への分泌を喪失させた

DIOがウログアニリンを抑制したのはERストレスを通じてであり、ツニカマイシンによって同様の効果が得られ、TUDCAによって阻害された

DIOによるウログアニリンホルモン抑制は、病態生理学的な肥満の環境milieuよりもむしろ消費カロリーを反映した
なぜならas、炭水化物による高カロリー食は痩せたマウスでもウログアニリンを抑制した一方で、カロリー制限は肥満のマウスでウログアニリンの発現を回復したからである

しかしながら、視床下部のGUCY2C(特に弓状核で発現が高い)は
外からのアゴニスト投与により満腹感を仲介する食欲不振誘発性シグナルanorexigenic signalsを生じた
そしてDIOはこれらの応答を損なうことはなかった

脳内でのトランスジェニックの発現によるウログアニリンの補充replacementは
DIOとその関連する病態comorbidity(内臓脂肪visceral adiposity、グルコース不耐性、脂肪肝)にもかかわらずopposing、
ホルモンの不足を回復repairし、満腹の応答を復元reconstituteした

結論:
これらの研究は肥満に寄与する新たな病態生理学的メカニズムを明らかにする
そのメカニズムとは、腸のウログアニリンがカロリーによって抑制されることが
食欲不振誘発性の内分泌シグナル伝達を失わせて
摂食を調節する視床下部のメカニズムを損なうというものである

その相補的な治療枠組みcorrelative therapeutic paradigmが示唆するのは、
ホルモンは不足しているが受容体の感受性は維持されているという状況において
肥満はGUCY2C受容体のリガンドとなるホルモン補充によって阻止または治療できるかもしれないということである


Materials and methods
Diets

Diet 5010 (LabDiet, St Louis, MO, USA)
低カロリー食
(3.1 kcal g−1, カロリー比率は脂肪12.7%, 炭水化物58.5%、タンパク質28.8%)

Diet 58Y1
高カロリー、高脂肪食
(5.1 kcal g−1, 脂肪61.6%、炭水化物20.3%、タンパク質18.1%)

Diet 58Y2
中カロリー、高炭水化物食
(3.8 kcal g−1, 脂肪10.2%、炭水化物71.8%、タンパク質)

随意の摂食で6週齢から20週齢まで維持

可逆的なウログアニリン喪失の研究では、マウスは低カロリー食の5010または高カロリー食の58Y1のどちらかで18週間維持、または高カロリー食の58Y1で14週間維持
そして次に低カロリー食の5010に戻されて4週間

ob/ob系統での研究では、随意摂食、または低カロリー食の5010を1日3グラムに制限させ、6週間維持



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/bfd19fa7951ad286a8a1a4165424c086
マウスの肥満はグアニリンという腸上皮で作られるホルモンの喪失と関連し、グアニリンは増殖を制御する腫瘍抑制因子として働く



<コメント>
飢餓に備えて満腹感を低下させる仕組みなのかもしれない

関係ないが、トーマス・ジェファーソン大学の設立者はトーマス・ジェファーソンさんじゃなかった

https://en.wikipedia.org/wiki/Thomas_Jefferson_University
>History
>a group of Philadelphia physicians led by Dr. George McClellan
 

古いミトコンドリアの除去が1型糖尿病の予防に重要

2016-05-20 06:06:57 | 代謝
Genetic risk for type 1 diabetes driven by faulty cell recycling

June 19, 2014

https://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140619124909.htm

ミシガン大学の糖尿病研究者は、β細胞のインスリンを作る能力を破綻させて1型糖尿病の発症につながると考えられる遺伝子を明らかにした

それによると、β細胞の機能喪失はClec16aという遺伝子の機能不全によって促進drivenされる可能性があるという
Clec16aは古くなったミトコンドリアの除去に関与する遺伝子であり、新しいミトコンドリアのために場所をあける役割がある
正常なミトコンドリアはβ細胞がインスリンを作り血糖レベルを制御するために重要である

『糖尿病に関与する遺伝子』の多くはどのようにして作用するのかはほとんど知られていないが、
Cell誌で発表された今回の研究は
1型糖尿病の遺伝的なリスク要因に光を当てるものであり、β細胞の強さを維持するための新たなアプローチにつながるだろう

「糖尿病の治療diabetes careにおいて、β細胞を維持することは最優先事項the top priorityである」
ミシガン大学のBrehm Diabetes Research Centerの研究者である筆頭著者lead authorのScott Soleimanpour, M.D.は言う

「この新たな経路の発見により、
我々は1型と2型両方の糖尿病を治療して予防するためにβ細胞の正常なミトコンドリアを維持するという新しい治療法に注目できるようになるだろう」

ミシガン大学医療システムHealth Systemで患者を治療している内分泌学者のSoleimanpourは、1型糖尿病患者として30年間生きてきた
彼は生涯ずっと糖尿病の研究をしてきたmade a career of studying diabetes
ペンシルベニア大学ペレルマン医学部では特別研究員fellowshipを努め、そこで彼のラボはClec16aを理解するための研究を始めた

糖尿病とは血液中のグルコース/ブドウ糖の濃度が異常に高くなると診断される病名であり、そして1型糖尿病は防ぐことができないタイプの糖尿病である
通常は子供または若い成人を冒す疾患で、加齢や肥満が原因とされる2型糖尿病に比べると少ない

一般に1型糖尿病では免疫系が膵臓のβ細胞を破壊すると考えられている
β細胞はインスリンを作る細胞であり、インスリンがなければ体は食べたものをエネルギーに変えることができないとされる

しかし、そのようなモデルは、今回発表されたようなClec16aの突然変異の研究によって変わってしまうかもしれない

「なぜ1型糖尿病が起きるのか?
科学者たちはそれを理解する際に、β細胞そのものの重要性を評価し始めている」
ミシガン大学で内科学の助教授でもあるSoleimanpourは言う

「免疫系の機能不全に対する『無罪の傍観者innocent bystanders』というよりもむしろ、β細胞は1型糖尿病の発症の中心的な役割を演じることを我々の研究は示している」


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2014.05.016
The Diabetes Susceptibility Gene Clec16a Regulates Mitophagy.
糖尿病感受性遺伝子のClec16aはマイトファジーを調節する


Highlights
・1型糖尿病の感受性遺伝子susceptibility geneとされるClec16aは、E3ユビキチンリガーゼのNrdp1と相互作用する
・Clec16aはNrdp1を調節し、さらにNrdp1の標的であるパーキン/Parkinと、そのエフェクター・ポリンeffectors porinのMfn1Mfn2(Mitofusin/マイトフュージン)も調節する
・Clec16aはNrdp1を介してマイトファジー後期のオートファゴソーム輸送を調節する
・Clec16aはマイトファジーの制御を通じて膵臓β細胞の機能を調節する


Summary
Clec16aは1型糖尿病・多発性硬化症・副腎機能不全adrenal dysfunctionの疾患感受性遺伝子であることが明らかにされてきたが、その機能は不明のままである

今回我々はClec16aが膜結合エンドソームタンパク質/membrane-associated endosomal proteinであり、E3ユビキチンリガーゼのNrdp1と相互作用することを報告する

Clec16aの喪失は、E3ユビキチンリガーゼNrdp1の標的であるパーキンの増加につながる
パーキンはマイトファジーのマスター調節因子である

膵臓特異的にClec16aを欠損させたマウスの膵島はミトコンドリアの異常を示し、酸素消費が減少してATP濃度が低下した
そのどちらも正常なβ細胞の機能に必要である

事実、膵臓のClec16aはグルコースによって刺激される正常なインスリン分泌/glucose-stimulated insulin releaseにとって必要である

さらに、
Clec16a遺伝子における糖尿病誘発性diabetogenicの一塩基多型(SNP)を持つ患者の膵島ではClec16a発現が低下し、インスリン分泌が減少している

このようにthus、Clec16aはマイトファジーの制御によってβ細胞の機能を制御し、糖尿病を予防する

この経路は糖尿病を予防してコントロールするための標的となりうるものであり、
それに加えてClec16a/パーキンと関連する他の疾患の病理発生pathogenesisにも拡張される可能性がある



関連サイト
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=CLEC16A
Entrez Gene Summary for CLEC16A Gene
この遺伝子はC型レクチンドメインを含むファミリーのメンバーをコードする(C-Type Lectin Domain Family 16, Member A)
この遺伝子のイントロンのSNPは糖尿病・多発性硬化症・関節リウマチと関連付けられている

GeneCards Summary for CLEC16A Gene
CLEC16Aと関連する疾患には、IL-7受容体α欠損、グルコース代謝疾患などがある

UniProtKB/Swiss-Prot for CLEC16A Gene
RNF41/NRDP1-PARK2経路の上流を調節することにより、マイトファジーの調節因子として働く
マイトファジーは選択的なオートファジーであり、ミトコンドリアの質をコントロールするために必要である
RNF41/NRDP1-PARK2経路は、マイトファジー後期のオートファゴソームとリソソームの融合を調節する
CLEC16AはRNF41/NRDP1をプロテオソームによる分解から保護する可能性があり、E3ユビキチンリガーゼのRNF41/NRDP1は PARK2のプロテオソーム分解を調節する
CLEC16Aはマイトファジー/オートファジーを調節して正常なミトコンドリアを維持することによりβ細胞の機能において重要な役割を演じる



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b6db327c85f490033e248ad4533d1786
腸内細菌による短鎖脂肪酸はβ細胞のカテリシジン関連抗菌ペプチド (CRAMP) の発現を促進し、膵臓の免疫細胞を炎症性から調節性へ変換する
 

肥満を治療するための新たな薬剤送達アプローチ

2016-05-06 06:06:40 | 代謝
New drug-delivery approach holds potential for treating obesity

May 2, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160502161116.htm


(Top) Stimulating the growth of new blood vessels (angiogenesis) in adipose tissue transforms the tissue from fat-storing white tissue to fat-burning brown tissue.

A schematic of the nanoparticle (bottom left) that MIT and Brigham and Women’s Hospital researchers used to deliver angiogenesis drugs to adipose tissue.

(Bottom right) The nanoparticles imaged by transmission electron microscopy.

Credit: Courtesy of the researchers)

マサチューセッツ工科大学(MIT)とブリガム・アンド・ウィメンズ病院/Brigham and Women's Hospital(BWH)の研究者は、複数の抗肥満薬antiobesity drugsを脂肪組織に直接送り届けるナノパーティクルを開発した
このナノパーティクルを過体重のマウスに投与すると25日で体重の10パーセントが減り、そして何も副作用を示さなかった

この薬剤は脂肪を蓄える細胞から構成される白色脂肪組織を、脂肪を燃焼する褐色脂肪組織へと変換することによって作用する
加えてこの薬剤は脂肪組織で新しい血管が成長するのを刺激する
血管形成はナノパーティクルによる標的化を増強reinforceし、白色から褐色への変換を手助けする

これらの薬剤は以前から存在するものであり、肥満の治療目的ではFDAによって承認されてはいない
しかし研究チームは脂肪組織だけに蓄積するように送り届ける新たな方法を開発し、体の他の場所に望ましくない副作用が出るのを回避するのを助ける

「今回の方法の利点は、特定の領域にのみ標的を絞ることで全身には影響を与えないということである
それは肥満に対して望ましいプラスの影響を発揮するが、マイナスの影響はもたらさない」
Robert Langerロバート・ランガー)は言う
彼はMITのDavid H. Koch "Institute Professor"であり、David H. Koch総合がん研究所の一員でもある
Langerは、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院ナノメディシン・バイオマテリアル・ラボのディレクターであるOmid Farokhzadと共に今回PNASで発表された論文の首席著者である
論文の筆頭著者lead authorsはそれぞれ以前MITとBMHのポスドクだったYuan XueとXiaoyang Xuである


脂肪組織を標的にする
Targeting fat

Langerたちは以前、血管新生angiogenesisと呼ばれる新しい血管の成長を促進することがマウスの脂肪組織の変換を助け、体重減少につながることを示している
しかしながら、血管新生を促進する薬剤は体内の残りの部分にとって有害となりうる

この問題を克服するためにLangerとFarokhzadは癌などの疾患を治療するために彼らが最近開発したナノパーティクル/微小粒子nanoparticleで薬剤を送り届ける方法に着目した
このパーティクルparticleを疾患の箇所へ向かわせることにより効果的な用量を送ることが可能となる一方で、他の領域への薬剤の蓄積は最低限になる

研究者はパーティクルのデザインとして中心の疎水性領域で薬剤を運べるように設計し、他の多くの薬剤送達パーティクルなどで使われるPLGAというポリマーを結合させた

※PLGA: Poly(Lactic-co-Glycolic-acid)、乳酸-グリコール酸共重合体

彼らはそのパーティクルの中にロシグリタゾンrosiglitazoneまたはプロスタグランジンE2prostaglandin E2(PGE2)という2つの異なる薬剤のどちらかをパッケージングした(ロシグリタゾンは糖尿病の治療用として承認されたものの副作用のために広く使われることはなかった)
この薬剤はどちらも細胞のPPARという受容体を活性化させて、血管新生と脂肪の変換を刺激する

ナノパーティクルの外側の殻はPLGAとは別のポリマーであるPEGから構成され、そこに正しい目的地へパーティクルをガイドするための『標的化分子targeting molecules』が埋め込まれるembedded
この標的化分子は、脂肪組織を囲む血管の内層で見られるタンパク質に結合する

※PEG: polyethylene glycol、ポリエチレングリコール。酸化エチレンと水が縮重合したもの。HOH2C(CH2OCH2)nCH2OH
※[中心部] 薬剤 - PLGA - PEG - 標的化分子 [外側]


高脂肪食を与えられて肥満になっていたマウスでこのパーティクルをテストしたところ、体重は約10パーセント減少し、コレステロールとトリグリセリド(ヒトの体脂肪を主に構成する分子)のレベルも低下した
肥満では2型糖尿病のリスク要因であるインスリンへの感受性低下がしばしば生じるが、実験したマウスではインスリン感受性も上昇した
ナノパーティクルは1日おきに25日間投与されたが、マウスに副作用はまったく見られなかった


デレバリー・チャレンジ
Delivery challenges

このパーティクルは現行のシステムでは静脈内に注射されるが、それは肥満関連疾患の著しいリスクに晒されている病的な肥満患者にとってさらに適したものになる余地がありうるcouldとFarokhzadは言う

「これをより広く肥満の治療に適したものにするため、我々はこの標的化されたナノパーティクルを投与するためのより簡単な、例えば経口投与のような方法を提供しなければならない」

ナノパーティクルを経口投与で送り届ける際の難題challengeは、それらが腸の上皮を通り抜けるのが難しいということである
しかしながら、以前の研究でLangerとFarokhzadは抗体でコーティングされたナノパーティクルを開発した
この抗体は腸の上皮細胞の表面に存在する受容体に結合し、ナノパーティクルが消化管を通じて吸収されることを可能にする

さらに最近の研究でFarokhzadたちは別の経口デリバリーナノパーティクルを開発した
これは体内で鉄の輸送に関与するトランスフェリンというタンパク質を使い、腸の壁を越えてナノパーティクルが能動的に輸送されるのを促進する

彼らはナノパーティクル用のさらに特異的な脂肪組織の標的を見つけたいとも考えており、それは副作用の可能性をさらに低下させうるものになるだろう
また、より毒性の低い他の薬剤の利用も調べることになるかもしれない

Farokhzadは言う
「今回の研究結果は、白色脂肪組織を選択的に標的化することで『褐色化』して体が脂肪を多く燃やせるようにするための概念実証proof-of-concept的なアプローチである
この技術はこれから開発されるかもしれない他の薬剤分子や、いずれ現れるcome upかもしれない他の標的で使われる可能性があるだろう」


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1603840113
Preventing diet-induced obesity in mice by adipose tissue transformation and angiogenesis using targeted nanoparticles.

Significance
今回我々は標的化されたナノパーティクルによるアプローチを記述する
これはPPARγを活性化させる薬剤またはプロスタグランジンE2アナログのどちらかを封じ込めencapsulateたものであり、それぞれ脂肪組織の転換transformationと血管新生を誘発し、白色脂肪組織から褐色脂肪組織への転換を促進する
標的化ナノパーティクルは、そのままの薬剤や、標的化されていない対照ナノパーティクルと比較して、マウスモデルで抗肥満効果を示す

Abstract
脂肪組織の拡大expansionと転換transformationには能動的activeな心血管の成長を必要とすることを考えれば、血管新生angiogenesisは肥満関連疾患を治療するための潜在的な標的をもたらす

今回我々はPPARγ活性化因子のロシグリタゾンまたはプロスタグランジンE2アナログ(16,16-ジメチルPGE2)を脂肪組織の血管に送り届けるための、ペプチドにより機能的なものにされたfunctionalizedナノパーティクル・プラットフォームを構築した

これらのナノパーティクルは、生分解性biodegradableの3つの単位blockからなるポリマーの自己集合self-assemblyにより設計され、PLGAとPEG(PLGA-b-PEG)と上皮を標的とするペプチドの末端同士が結合end-to-end linkageしたものから構成される

※PLGA: poly(lactic-coglycolic acid)
※PEG: poly(ethylene glycol)

このシステムでは放出されたロシグリタゾンが褐色脂肪組織への転換と血管新生を両方とも促進promoteするが、血管新生は『標的化ナノパーティクル』が脂肪組織で形成された血管angiogenic vesselへとホーミングされるのを容易にしてfacilitate、それによりさらにデリバリーを増幅させる

我々はこれらのナノパーティクルの静脈内投与が白色脂肪組織の血管を標的にすることが可能であり、加えて脂肪組織の転換に必要な血管新生を刺激し、白色脂肪組織を褐色様の脂肪組織へと転換できることを、
血管新生と褐色脂肪組織のマーカーmarkerが上方調節されることにより示す

(高脂肪食の)食餌による肥満マウスモデルにおいて、これらの血管新生-標的化ナノパーティクルは対照群と比較して体重増加を阻止し、コレステロール・トリグリセリド・インスリンを含む複数の血清学的マーカーを調整した

これらの研究結果は、血管形成の刺激因子を積み込んだナノパーティクルを用いた血管新生-標的化の部分moietiesが、肥満とその他の代謝疾患metabolic diseasesの臨床的な治療のための効果的な処方計画regimenに組み入れられうることを示唆する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160412132029.htm
VEGFB/VEGFR1による脂肪組織の毛細血管の拡張は2型糖尿病を緩和する

 

なぜテストステロンと糖尿病リスクが関連するのか

2016-05-03 06:06:08 | 代謝
How low testosterone raises diabetes risk

April 28, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160428132612.htm


(Dr. Franck Mauvais-Jarvis, Price-Goldsmith professor in the Department of Medicine at Tulane University School of Medicine.

Credit: Paula Burch-Celentano, Tulane University)

血中テストステロンが低い男性は2型糖尿病を発症するリスクが高いことが以前から知られている
テュレーン医科大学の研究者は、テストステロンが膵臓でインスリンを作る細胞の重要なシグナル伝達メカニズムの引き金を引くことにより男性の血糖調節を助けることを初めて明らかにした
Cell Metabolism誌で発表される今回の発見は、加齢や前立腺癌の治療のためにテストステロン濃度が低い男性たちの2型糖尿病の新たな治療につながる可能性がある

「我々はテストステロンが欠乏する男性における2型糖尿病の原因と、そして潜在的な治療への道筋を発見した」
首席著者senior authorのFranck Mauvais-Jarvis博士は言う

「我々の研究はテストステロンが男性の糖尿病に拮抗するホルモンであることを示す
その作用を副作用なく調整できれば、それは2型糖尿病の治療への新しい道を開く」


テュレーンの研究者は、膵臓のβ細胞がテストステロンの受容体(アンドロゲン受容体)を持たない特別なマウスを使った
マウスに脂肪fatsと砂糖sugarが豊富な西洋食を与えてグルコースglucoseへの反応をテストしたところ、
通常のマウスと比較してアンドロゲン受容体を持たないマウスは全てインスリン分泌が低下し、耐糖能障害/グルコース不耐性glucose intoleranceを生じた

テストステロンがどのようにして膵臓のインスリン産生と相互作用するのかを理解するため、研究者はアンドロゲン受容体の阻害剤で処理したヒトの膵臓細胞とアンドロゲン受容体を持たないマウスから取り出した膵臓細胞に、テストステロンとグルコースを直接投与した

実験の結果、テストステロン受容体が阻害されていないか失われていない膵臓の細胞と比較して、どちらの膵臓細胞もインスリン産生の低下を示した
培養されたマウスとヒトの膵島細胞でさらに実験したところ、テストステロンによるインスリン産生を促進する効果はGLP-1の阻害により無効化されることが示された

今回の研究ではGLP-1ホルモンの膵島への影響をテストステロンが増幅することが示唆される
GLP-1は現在糖尿病の治療で使われている薬剤である


http://dx.doi.org/10.1016/j.cmet.2016.03.015
http://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/S1550-4131(16)30118-8
Extranuclear Actions of the Androgen Receptor Enhance Glucose-Stimulated Insulin Secretion in the Male.
アンドロゲン受容体の核外作用は、グルコースによって刺激されるインスリン分泌を男性で促進する


Highlights
・アンドロゲン受容体(AR)をノックアウトしたオスのマウスのβ細胞では、グルコースによって刺激されるインスリン分泌(GSIS)が減少する
・テストステロンは培養されたマウスとヒトのβ細胞からのGSISを促進し、それはARを介するものである
・β細胞でのARは核外で、cAMP依存的なやり方でGSISを促進する
・活性化されたARは、GLP-1のインスリン分泌効果insulinotropic effectを増幅する


Summary
テストステロンの欠乏した男性は2型糖尿病(T2D)リスクが増大するが、以前の研究では膵臓β細胞におけるテストステロンとアンドロゲン受容体(AR)の役割が無視されてきた

我々はβ細胞にARを持たない(βARKO)オスのマウスがグルコースによって刺激されるインスリン分泌(GSIS)の減少を示しexhibit、耐糖能障害につながることを示すshow

ARアゴニストのジヒドロテストステロン(DHT)は培養したオス/男性の膵島からのGSISを促進し、その効果はマウスのβARKO−/y膵島ならびにARアンタゴニストで処置したヒト膵島では無効化された

β細胞ではDHTにより活性化されたARは主に核外に存在し、膵島cAMPを増加させてPKAを活性化することによりGSISを促進する

マウスとヒトの膵島ではDHTのインスリン分泌効果はGLP-1受容体の活性化に依存し、したがってDHTはGLP-1のインクレチンincretin効果を増幅する

今回の研究はARをβ細胞機能を促進する新たな受容体として同定するものであり、この発見は年老いた男性におけるT2Dの予防にとって潜在的な重要性implicationを持つ



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160308091110.htm
β細胞にはニコチン性アセチルコリン受容体があり、正常なインスリンの分泌に影響する
この受容体の遺伝子変異はβ細胞上の機能する受容体の数に影響して糖尿病リスクになる
β細胞内のMafAはニコチン性受容体の数に影響する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c5430d8634bdca32080281683490f6fd
α細胞とβ細胞はカンナビノイドで会話する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2011/02/110225122912.htm
α細胞はグルタミン酸を分泌し、グルタミン酸はβ細胞に毒性を発揮する
 

BETの選択的阻害はインスリン分泌を改善する

2016-04-03 06:06:45 | 代謝
New proteins discovered that link obesity-driven diabetes to cancer

March 23, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160323151852.htm

ボストン大学医学部/メディカルセンターの研究者は、2型糖尿病においてブロモドメイン(BRD)を持つタンパク質(BET)がどのようにして働くのかを初めて明らかにした
これは成人で発症する糖尿病と特定の癌との間の関連についてのより良い理解へとつながるかもしれない

※BET: bromodomain and extra-terminal(ブロモドメイン繰り返し配列および特異的末端配列)

BETタンパク質は以前癌との関連が示されているが、PLOS ONE誌で発表された今回の研究結果は
膵臓β細胞における個々のBETタンパク質のレベルを低下させることが肥満ならびに糖尿病患者を助けるという可能性もあることを示す

この研究はボストン大学医学部の準教授associate professorのGerald V. Denis, PhDを中心としたもので、
彼はBETタンパク質の機能が癌の発症において重要であることを初めて示した人物である
そして成人で発症する糖尿病adult-onset diabetesは特定の癌のリスクを上昇させることが数十年前から知られている

BETタンパク質ファミリーの主なメンバーは3つ(BRD2, BRD3, BRD4)存在し、お互いに密接な関連がありしばしば協力して働く
しかしながら時々at times独立して働くこともあり、時にはsometimes互いに反対の作用をすることもある

研究者によると、これまで新たな小分子BET阻害剤は癌細胞の全てのBETタンパク質を阻害するように開発され、しかしそれらはあまりに多くの機能に干渉するという

「BETタンパク質は成人で発症する糖尿病と癌とをつなげる新しい経路をもたらす
そのため、BETタンパク質を適切に標的とすることは癌と糖尿病のどちらにとっても助けになる可能性がある」
責任著者のDenisはそのように説明する

彼は肥満の成人でインスリン分泌を促進して膵臓の代謝を改善するという今回の発見を初めとして、全ての細胞タイプにおける個々のBETタンパク質をより深く分析する必要性が示されたと考えている

「癌に対するBET阻害剤の臨床試験がいくつか進行中だが、より標的を明確にした薬剤がなければ時期尚早であるpremature
今回の新たな研究結果はこれまで失敗してきた薬剤治療への役立つ洞察をもたらし、BETファミリーにおける複雑さを認識させる」

※BET↑→癌↑糖尿病↑
 BET↓→癌↓糖尿病↓(β細胞のインスリン分泌改善)


http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0151329
BET Bromodomain Proteins Brd2, Brd3 and Brd4 Selectively Regulate Metabolic Pathways in the Pancreatic β-Cell.
BETブロモドメインタンパク質のBrd2・Brd3・Brd4は膵臓β細胞の代謝経路をそれぞれ選択的に調節する


Abstract
Bromodomain and Extra-Terminal(BET)というタンパク質のクロマチンからの排除displacementは癌や炎症性疾患の治療にとって有望であるが、代謝性疾患におけるBETタンパク質の役割は探求されないままである

JQ1のような低分子BET阻害剤はBETタンパク質がアセチル化リジンに結合するのを阻害するが、BETファミリー(Brd2, Brd3, Brd4, Brdt)の中での選択性を欠くために、
それらファミリーメンバーが転写の結果ならびに細胞での結果にそれぞれどのように寄与するのかを解明するのは難しい

今回我々はJQ1またはBET特異的siRNAによるBET阻害での膵臓β細胞における多くの改善を実証する

BET阻害剤のJQ1 (50–400 nM) は、濃度依存的にINS-1細胞からのインスリン分泌を増大させる

JQ1はINS-1細胞のインスリン量を増加させ、これがラットとヒト膵島の両方での分泌増大の理由である

JQ1濃度の高さはINS-1細胞内のトリグリセリド蓄積を減少させ、これは脂肪酸の酸化が増大した結果である

Brd2とBrd4を特異的に阻害するとどちらもインスリン転写を促進し、これはインスリン量の増大につながる
しかし、Brd2の阻害だけが脂肪酸酸化を増大させる

代謝調節における個々のBETタンパク質の役割は重複しつつも個々に別々であり、
これはアイソフォーム選択的な新たなBET阻害剤がインスリン抵抗性/糖尿病患者の治療に役立つ可能性があることを示唆する

研究結果は、癌と慢性炎症疾患または代謝異常がクロマチン調節メカニズムの共有を通じて関連することを暗示するimply



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/efa9b37871681a6a0d8a0b3bf923aa85/
白血病ではMYCがBRD4によって制御され、BRD4阻害剤はMYCを停止させて白血病細胞は死ぬ



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151008142246.htm
膠芽腫のEGFRvIII変異は活性化エンハンサーのエピジェネティックなランドスケープを変化させ、SOX9とFOXG1の発現を加速した
SOX9とFOXG1はBRD4の発現を制御し、BRD4はcMycの発現と活性を制御する

ShiauたちはBRD4とその関連タンパク質を標的とするために血液脳関門を越えることができるBETブロモドメイン阻害剤のJQ1を選択した
研究者がJQ1を投与すると、EGFRvIIIによって刺激される膠芽腫細胞は死に、膠芽腫のマウスモデルで腫瘍は縮小した

http://dx.doi.org/10.1016/j.molcel.2015.09.002
EGFR Mutation Promotes Glioblastoma through Epigenome and Transcription Factor Network Remodeling.
 

mTORは寒さによる脂肪細胞のベージュ化に重要

2016-02-24 06:04:00 | 代謝
'Beiging' white fat cells to fight diabetes

Penn Study reveals a signaling pathway required for beige fat formation

February 16, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160216181706.htm


(Credit: Cassie Tan , PhD, Perelman School of Medicine, University of Pennsylvania)

研究者はどのようにして白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞へと変換するのか、その答えへと徐々に近づきつつある
その目的は白から褐色へ変化させる『ベージュ化beiging』というプロセスで血糖レベルを低下させて糖尿病と戦うためである
ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院で生理学の助教授assistant professorであるJoseph Baur, PhDが率いる研究チームは、その研究結果を今月号のDiabetesで報告した


「白色脂肪のベージュ化は、過剰なカロリーを燃焼して血糖を低下させることで糖尿病と戦うために利用できるかもしれない」
Baurは言う

「我々の研究はmTOR経路の活性化がこのプロセスで重要な役割を演じることを示唆する」

ベージュ脂肪細胞の誘導は肥満と戦うための有望な戦略であると考えられている
なぜならベージュ脂肪細胞にはグルコースと脂質を代謝する能力があり、その結果生じたエネルギーを熱として消失dissipateさせるからである

褐色・白色脂肪細胞は体内での役割が異なる
白色はエネルギーを巨大な脂肪滴として貯蔵するが、褐色の脂肪滴は小さく、脂肪を燃焼して熱を作ることに特化されている
そのため褐色脂肪細胞には鉄が多いミトコンドリアが詰め込まれ、鉄の多さから色が褐色になる
実際、赤ん坊は体温を維持するために上背部upper backと肩に褐色脂肪が多い状態で生まれ、
成人では褐色脂肪細胞の集積depotsが体重の少なさと関連することが明らかになっている

褐色細胞状の脂肪細胞は『ベージュ脂肪細胞beige adipocyte』と呼ばれ、寒冷や他のシグナルに応じて白色脂肪細胞の堆積depositする中に見られる
体内のエネルギーバランスは褐色/ベージュ脂肪細胞の影響を受ける
それらは気温の低さや他のシグナルによって作用を開始するように刺激され、脂肪や炭水化物を燃焼する


今回の研究で使われた主なツールはラパマイシンである
この薬剤はmTORというタンパク質を阻害し、mTORは『ラパマイシンの機構的標的/mechanistic target of rapamycin』の略である
mTORはmTORC1とmTORC2という二つの異なるタンパク質複合体で共通して見られる

ラパマイシンは初めて発見されたのが『ラパ・ヌイ島/Rapa Nui(イースター島/Easter Islandの別名)』であることからその名がついた
現在は臓器移植の免疫抑制剤immunosuppressantとして使われているが、最近マウスで寿命を延長することが発見されたことから注目を集めている

興味深いことに、2012年にBaurのラボはラパマイシンがインスリン抵抗性を引き起こすことを発見し、それはmTORC1とmTORC2複合体によって制御されるmTORシグナル伝達経路を両方とも阻害するためだった
彼らは原則としてin principleこれらの二つの経路が区分されうることを動物モデルで示し、どちらの経路が寿命への影響を制御するのかを(内分泌への影響に対して)切り離した

生理学の点から見ると、mTORシグナル伝達は血糖レベルとコレステロールレベルの制御に関与し、その阻害は糖尿病リスクを増大させる
以前の研究でmTORC1の阻害は白色脂肪細胞のベージュ化を促進することが示唆されていたが、Baurの今研究はmTORC1の活性が実際には寒冷によって誘導される白色脂肪細胞のベージュ化に必要であるという概念を支持する
もしmTORC1の活性化が直接同じ結果を引き起こすなら、このアプローチは潜在的に糖尿病との戦いに応用できるかもしれない


寒冷やある種の薬剤は特定の神経伝達物質の経路を活性化してベージュ脂肪細胞の出現を誘導する能力を持つが、Diabetes誌の研究で研究チームはラパマイシンがそのような能力を阻害することを示す
それゆえに、ラパマイシンを投与されたマウスは寒冷に対して不耐性になり、より寒い環境に移動すると体温と体重を維持することに失敗する

この研究結果は、白色脂肪細胞の集積する中にベージュ脂肪細胞をリクルートすることにおけるmTORC1のポジティブな役割を実証する
これはmTOR阻害による代謝的にネガティブな影響のいくつかについて説明になりうる


「我々の研究は、mTORシグナル伝達と代謝との間の複雑な相互接続を強調する」
Baurのラボでpostdoctoral fellowである筆頭著者のCassie Tran, PhDは言う

「将来、ネガティブな代謝的影響を引き起こすmTOR下流の標的を特定することが重要だろう
より良い薬剤を、そしていつかは寿命healthspanを延長する薬剤を作るために」

※ラパマイシンでマウスの寿命は伸びるが、代謝的な悪影響があるためこんなことを書いているようだ

「今回のベージュ脂肪形成にとって重要なシグナル伝達経路の発見は、この経路を標的にする好機であることも示唆する
熱を作る細胞の数を増やして、肥満または糖尿病患者を治療するために」


http://dx.doi.org/10.2337/db15-0502
Rapamycin blocks induction of the thermogenic program in white adipose tissue

ラパマイシンはマウスの寿命を伸ばすが、逆説的に脂質調節不全とグルコース不耐性を引き起こす
しかしそのメカニズムは完全には理解されないままである

全身のエネルギーバランスはベージュ脂肪細胞/ブライト脂肪細胞(brite: brown in white)によって影響されうる
それらは寒冷や他の刺激によってβ-アドレナリン作動性シグナル伝達を通じて白色脂肪の貯蔵所depotsにおいて誘導可能であるinducible

ベージュ脂肪細胞の誘導は肥満と戦うための有望な戦略であると考えられている
なぜなら、グルコースと脂質を代謝して結果として生じたエネルギーをUCP1により熱として四散させる能力を持つためである


今回我々は、β-アドレナリン作動性シグナル伝達が白色脂肪の貯蔵所でベージュ脂肪細胞ならびに熱発生遺伝子thermogenic geneの発現を誘導する能力を、ラパマイシンが阻害することを報告する
ラパマイシンは、β3-アドレナリン作動性受容体に対する転写的ネガティブフィードバックを高める

しかしながら、細胞透過性のcAMPアナログを使ってこの受容体をバイパスしても、熱発生遺伝子の発現は損なわれたままだった
このことはアドレナリン作動性受容体とは別の二つ目の阻害メカニズムが存在することを明らかにする

それらに応じて、ラパマイシンを投与したマウスは寒冷不耐性であり、4℃にすると体温と体重の維持に失敗する

mTORC1サブユニットのRaporを脂肪細胞特異的に欠損させると、β-アドレナリン作動性シグナル伝達の阻害による結果を再現した

我々の研究結果はベージュ脂肪細胞のリクルートにおけるmTORC1のポジティブな役割を実証し、
ラパマイシンによるβ-アドレナリン作動性シグナル伝達の阻害がその生理的影響の一因である可能性を示唆するものである



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8f35e64b9ac20c72c7b2960e8a0d78a9
寒冷は腸内微生物を変化させて脂肪細胞のベージュ化を引き起こす



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141110110104.htm
寒冷→[褐色脂肪細胞]交感神経β3-アドレナリン作動性受容体→2つの経路→

 1→cAMP→GLUT1転写↑→GLUT1によるグルコース取り込み↑↑
 2→mTORC2→GLUT1トランスロケーション↑→GLUT1によるグルコース取り込み↑↑

※2は PI3K-Akt経路には依存しない

http://dx.doi.org/10.1083/jcb.201403080
Glucose uptake in brown fat cells is dependent on mTOR complex 2–promoted GLUT1 translocation.


<コメント>
mTORC1はインスリン/IGF-1等の下流

 

α細胞とβ細胞はカンナビノイドで会話する

2016-02-23 06:06:52 | 代謝
Cells chat via cannabinoids, about your future diabetes

February 1, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160201085000.htm

ヒトの血液中のグルコースレベルは膵臓の2種類の細胞が絶え間なく協力することにより維持されている
α細胞はグルカゴンを分泌してグルコースを増加させ、β細胞はインスリンを分泌してグルコース濃度を低下させる

ポーランド科学アカデミー(ワルシャワ)のNencki実験生物学研究所の科学者は、α細胞とβ細胞がお互いにコミュニケーションすることを明らかにした
そのコミュニケーションで中心的な役割を演じるのはカンナビノイドcannabinoidsであり、これは大麻cannabisの花から自然に取れるものと同じ有機化合物である
スゥエーデン、オーストリア、イタリア、アメリカとの最近の共同研究でカンナビノイドはβ細胞のアイデンティティにも影響することが示されており、ヒトの胎児ではそれらが膵島形成の構造architectureの著しい変化につながる可能性があるという

「我々の発見は2型糖尿病を発症する原因となるメカニズムの理解に必須である
この疾患は成人で生じ、しばしば体重増加と関連がある
さらなる研究で予想通りの結果がもたらされた場合、それはおそらく近い将来、継続的なインスリン注射という悪夢から患者の何割かを解放するために使うことができるだろう」
Agnieszka Dobrzyn教授は言う


PNAS誌で発表された最新の研究において、Nencki研究所の科学者はカンナビノイドを含む化学的シグナルの経路がα細胞とβ細胞との間のコミュニケーションにおいて重要な役割を演じるだけでなく、β細胞のアイデンティティを保つことにも関与することを示した
事実、α細胞によって作られたカンナビノイドは、膵島に局在するCB1というカンナビノイド受容体を活性化する可能性がある
この受容体は細胞機能の分化に影響を与え、β細胞がグルコースに応じてインスリンを作る能力を増大させるのだという

「マウスの胚やラボで作成した擬似膵島が発達する間に観察される膵島構造の変化も非常に興味深かった
カンナビノイドの濃度依存的に、そして二つの異なるカンナビノイド受容体の活性依存的に、膵島は大きくも小さくもなった
一方、通常は膵島の外側に位置するα細胞は内側に移動することが可能だった」
筆頭著者のKatarzyna Malenczyk博士は説明する


この研究は既に実践的な応用に入っている
妊娠期間中にカンナビノイドを含む物質を使用すると膵島の構造が損なわれた子どもを出産する可能性が高くなり、したがったその子どもは2型糖尿病を発症しやすくなると彼らは示唆する

「どんなことがあってもunder no circumstance、我々の研究からマリファナmarijuanaの使用が糖尿病の治療法になりうるという結論を出すべきではない」
Dobrzyn教授は警告する

「血中グルコース濃度は膵島のα細胞とβ細胞、そしてインスリンの標的組織である骨格筋や脂肪組織の活動バランスによって決定される
成人では大量のカンナビノイドがβ細胞に激しく働くことを強要するだろうが、それは同時にもう一方のα細胞の効率を弱める
結果として血中グルコースは変化しないか、またはかなり増大することさえあるかもしれない」

カンナビノイドがα細胞とβ細胞間のコミュニケーションで果たす役割の発見は、膵島移植によるより効率的な糖尿病の治療法に対する希望をもたらす
そのような同種異系移植allograftは既に実施されており、死亡したドナーから臓器を再生recoverしてレシピエントの胃粘膜の下に配置する
しかしその効果は完全ではなく、移植されたβ細胞はしばしばそのアイデンティティを失う
細胞は生きているが、もはやインスリンを作らない
外来組織の移植後は免疫抑制剤を服用する必要があり、そのような治療によって起きる障害はしばしば利益を上回る

Nencki研究所の科学者は、カンナビノイド経路の理解がβ細胞の稼働期間を著しく延長することができるだろうと期待している
この想定がさらなる研究で立証されれば、膵島移植は完全に成熟fledgedした糖尿病治療法になりうる
さらに、現在では患者の脂肪細胞に由来する幹細胞からβ細胞を育てることが可能であり、将来は移植された膵島に対する拒絶を防ぐ薬を服用する必要がなくなるだろう


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1519040112
Fetal endocannabinoids orchestrate the organization of pancreatic islet microarchitecture.



Significance
エンドカンナビノイド(オメガ-6)はCB1カンナビノイド受容体を介して、エンドバニロイドリガンドはTRPV1受容体を介して、
加えて食事によるオメガ-3多価不飽和脂肪酸も、組織発達中の膵島細胞組織化に影響することを我々は示す

ゆえに、脂質シグナル伝達は組織編成の重要な決定要因であることが明らかになり、生涯を通じてホルモン分泌をプログラムする可能性がある


Abstract
エンドカンナビノイドは膵臓ホルモン分泌を調整することによりグルコース利用ならびにエネルギー恒常性の制御に関与する
さらに、いくつかの細胞ニッチではエンドカンナビノイドが細胞の増殖、運命決定、移動を調節する
にもかかわらず、エンドカンナビノイドがどのように内分泌膵臓の発達に寄与するのかは不明なままである

今回我々はマウスの胎児とヒト膵島において、
α細胞がエンドカンナビノイドの2-アラキドノイルグリセロール/2-arachidonoylglycerol (2-AG) を産生し、
2-AGはCB1カンナビノイド受容体(CB1R)の連結engagementによりβ細胞のリクルートを刺激することを示す

我々はsubtractive pharmacologyを使うことでこれらの研究結果を
アナンダミドanandamide、エンドカンナビノイドendocannabinoid/エンドバニロイドendovanilloidの入り混じったpromiscuousリガンドにまで拡張する
それは細胞増殖によって膵島サイズの決定に影響を与え、TRPV1とCB1Rの異なった活性化によりα細胞/β細胞の分類sortingを左右する

※N-アラキドノイルエタノールアミン(アナンダミドanandamide)と2-アラキドノイルグリセロール/2-arachidonoylglycerolは、どちらもアラキドン酸の誘導体


したがって、TRPV1チャネルの遺伝子破壊genetic disruptionは膵島サイズを増大し、
CB1Rのノックアウトは細胞の不均一性heterogeneityを促進して、グルカゴン放出よりもインスリン放出を容易にするfavor over

マウスにおいて妊娠中と授乳中のオメガ3脂肪酸が豊富な食事は、
永続的に仔マウスのエンドカンナビノイドレベルを低下させ、
CB1R-/-ノックアウト膵島の微小構造を表現型模写phenocopyして、調和的なホルモン分泌を改善する

まとめると、我々のデータは
エンドカンナビノイドを膵島形成中の細胞増殖ならびに分類sortingへと機構的に結びつけ、
グルコース恒常性の生涯にわたるホルモン的な決定要因のプログラミングにも関連付けるものである



関連サイト
http://www.cosmobio.co.jp/aaas_signal/archive/ra_20120320_2.asp
カンナビノイドはインスリン受容体活性化を直接抑制することによって膵β細胞死を誘導する



関連サイト
http://syodokukai.exblog.jp/19549905/
内因性カンナビノイドによるβ細胞消失は、膵島浸潤マクロファージのNlrp3インフラマソーム活性化を介する
 

高血圧薬を使っている糖尿病患者は血糖値が低い

2016-02-16 06:06:21 | 代謝
Diabetics who use verapamil have lower glucose levels, data show

February 12, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160212093652.htm

Diabetes Research and Clinical Practice誌で発表されたアラバマ大学バーミングハム校(UAB)の新たな研究により、ヒト糖尿病患者のベラパミルverapamilの使用と空腹時グルコースレベルの低さとの間の関連が初めて示された
これは現在UAB総合糖尿病センターがJDRFの資金提供によるベラパミルを使ったこれまでに類を見ない臨床試験を実施している中で得られた有望な結果である
ベラパミルはUAB医学部がマウスモデルで糖尿病を完全に一変reverseさせることを示した薬剤である

UABの予防医学部ではresearch associateかつpostdoctoral scholarであり総合糖尿病センターではjunior memberでもあるYulia Khodneva M.D., Ph.D.は、
REGARDS研究に参加した約5000人の成人糖尿病患者で、カルシウムチャネル遮断薬、ベラパミルの使用、空腹時血清グルコースの関連を検討した
REGARDS(Reasons for Geographic and Racial Differences in Stroke)という研究プロジェクトはNIHをスポンサーとするアメリカ国内の研究であり、心血管疾患のリスクを増大する要因について研究することに焦点を合わせている
参加者の中には成人糖尿病のサンプルとしてカルシウムチャネル遮断薬を服用する1484人が含まれ、その中の174人がベラパミルを服用していた
分析の結果、カルシウムチャネル遮断薬を服用する糖尿病患者は、そうでない患者と比較して血清グルコースが5mg/dL低いことが示された
ベラパミルを服用する患者は、カルシウムチャネル遮断薬を使わない患者と比較して平均10mg/dL低かった

さらに、インスリンを使っていてベラパミルも服用している患者の間で非常に大幅な数の違いが示された
ベラパミルの服用者で、インスリンを使っていて経口薬も組み合わせて使っている患者は血清グルコースが24mg/dL低く、
ベラパミルの服用者で、糖尿病の管理にインスリンのみを使っている患者は37mg/dLという低い血清グルコース値を示した


「これは横断的な観察研究であり、現在UABが実施している前向きprospectiveでランダム化されたベラパミルの臨床試験とは異なる
よって我々はベラパミルの服用とグルコースレベルの低さとの間の因果関係を推論することはできないが、
しかしグルコースレベルの低さと関連があると言うことはできる
それは非常に励みになるabsolutely encouraging」
Khodnevaは言う

そしてKhodnevaは、ほとんどの1型糖尿病患者と重症の2型糖尿病患者が含まれる『インスリンだけを使う最後のサブグループ』での研究結果が非常に印象的quite strikingであると言う

「ベラパミルを服用しないグループと比較した際の、そのグループでのグルコースの変化は37mg/dLという大きなものであり、
この違いは成人の糖尿病サンプル全体を見た時よりもほぼ4倍も高い
そこから我々は、ベラパミルはβ細胞が本当にダメージを受けている1型糖尿病や2型糖尿病の患者で主に有効であると考えるようになった
構造レベルで作用する何かsomethingが存在し、それは特にβ細胞のダメージが強い人ほど顕著であるようだ」


「Khodneva博士はこれらの大規模なデータセットを分析し、ベラパミルの服用が糖尿病患者のグルコースレベルの低さと関連することを初めて発見したという非常に素晴らしい仕事を成し遂げた」
UABの総合糖尿病センターのディレクターでありベラパミル臨床試験の主任研究員/治験責任者principal investigatorでもあるAnath Shalev, M.D.は言う

「印象的なことに、今回観察されたグルコースレベルの違いはHbA1cでいえば約1%の低下に匹敵し、承認糖尿病薬を追加することから期待される変化と同等である
さらに、特にインスリンを使っているグループで見られたグルコースレベルの大きな差は、機能するβ細胞の量functional beta-cell massをベラパミルが促進するという我々の根本的な仮説と一致する」


UABはベラパミルの臨床試験を2014年の11月に告知announceし、2015年1月に患者の登録を開始した
1型糖尿病に対するベラパミルの有効性を評価する最初の結果はまだ約18ヶ月先である

この試験は現在のどんな治療とも異なるアプローチをテストするもので、血糖を制御するために必要なインスリンを作る膵臓β細胞の機能を促進することに焦点を合わせている
UABの科学者たちは長年の研究を通じて、高血糖によりTXNIP(チオレドキシン相互作用タンパク質)というタンパク質が過剰に作られることを証明してきた
TXNIPは糖尿病に応じてβ細胞の内部で増加するが、それがβ細胞にとって生物学的に重要であることはこれまで知られていなかった
β細胞内の過剰なTXNIPは細胞死につながり、体がインスリンを作る努力を妨害して糖尿病の進行の一因となる

しかしUABの科学者は、高血圧や不整脈irregular heartbeat、偏頭痛migraine headacheを治療するために広く使われているベラパミルが、β細胞内のカルシウム濃度を低下させることによりTXNIPレベルを低下させることも発見している
糖尿病を確立したマウスモデルで血糖が300mg/dLを越えたものをベラパミルで治療すると、糖尿病は根絶された


http://dx.doi.org/10.1016/j.diabres.2016.01.021
Calcium channel blocker use is associated with lower fasting serum glucose among adults with diabetes from the REGARDS study.



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6bbad84c33e591dce00ed134dc7f8c87
高血糖はTXNIPというタンパク質の過剰生産を引き起こす。膵臓β細胞内の過剰なTXNIPは細胞死につながり、インスリンの分泌を妨害して糖尿病の進行に関与する。ベラパミルはβ細胞内のTXNIPレベルを低下させる。
臨床試験では1型糖尿病の診断を受けて3ヵ月以内の19歳から45歳の間の52人を登録する予定である。登録された患者はインスリン・ポンプ療法は継続し、ベラパミルまたはプラセボのどちらかの1年間の投与にランダムに割り振られる。



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160208112603.htm
2型糖尿病の特に血糖コントロールが悪い人は、TXNIP遺伝子のメチル化が低下する

http://dx.doi.org/10.1093/hmg/ddv493
Epigenome-wide association study identifies TXNIP gene associated with type 2 diabetes mellitus and sustained hyperglycemia.
 

ベータトロフィンはストレスと脂肪代謝とを結びつける

2016-01-13 06:18:02 | 代謝
New details linking stress, fat metabolism revealed

January 6, 2016

http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160106125046.htm

もしあなたが絶え間ないストレスにさらされていて、そして体重が落ちないなら、それには原因となるタンパク質が存在するかもしれない

細胞とマウスモデルによる実験により、フロリダ・ヘルス大学の研究者は慢性的なストレスがベータトロフィンというタンパク質の産生を刺激し、
続いてこのタンパク質が脂肪代謝に関与する酵素のトリグリセリドリパーゼを阻害することを発見した
これらの研究結果は今月号のBBA Molecular and Cell Biology of Lipids誌で発表される

※ベータトロフィン: アンジオポエチン様タンパク質8/angiopoietin-like protein 8(ANGPTL8)
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=C19orf80


この発見はそのストレス関連タンパク質としての役割に新たな注目をもたらす
このタンパク質はかつて糖尿病治療のブレイクスルーとして歓迎hailされたが、後に効果がないとされた

最新のベータトロフィンの性質はまだ臨床的な環境でテストされていないものの、ある研究者はこの研究結果がヒトにも意味を持つ可能性があると言う
「アンジオポエチン様タンパク質8は、体の脂肪を分解する能力を低下させる
これは慢性的なストレスと体重現象との間の関係を強調する」
フロリダ大学医科大学の病理学部・免疫学部・臨床検査医学部laboratory medicineの教授であり主任研究者lead investigatorのLi-Jun Yang, M.D.はそのように言う

今回の研究では代謝ストレスを経験するマウスモデルがベータトロフィンを有意に多く産生し、正常な脂肪燃焼プロセスが著しく遅くなった
このような観察結果が重要である理由は、これはストレスとベータトロフィンと脂肪代謝とを結びつける生物学的なメカニズムに光を当てるからである

ベータトロフィンはハーバード大学から糖尿病患者のβ細胞の数を増やす可能性を示唆する研究が発表され、2013年の科学界で盛んに騒がれていたabuzzが、後に別の研究者がそのような効果はないと結論付けた

さて、前より歓迎はされないとしても、ベータトロフィンはやはり重要な役割を持つようだ
今回の研究結果はストレスが脂肪分解を困難にするという実験上のエビデンスを提供する


Yangの研究グループはいくつか新しい発見をした
例えばベータトロフィンはストレス関連タンパク質であるということや、なぜベータトロフィンが増えるほど脂肪燃焼が低下するのかについて明らかにした
蓄えられた脂肪を分解する脂肪組織トリグリセリドリパーゼ/adipose triglyceride lipaseを、ベータトロフィンは抑制する

 ストレス→ベータトロフィン─┤脂肪組織トリグリセリドリパーゼ

体の脂肪の調節におけるベータトロフィンの役割を確認するためにマウスとヒトに由来する細胞実験が初めて使われ、さらに
マウスモデルが環境ストレスならびに代謝ストレスを経験するにつれてベータトロフィンレベルがどれくらい増加するのかが調査された
研究の結果、どちらのストレスも脂肪組織と肝臓におけるベータトロフィンの産生を加速し、ベータトロフィンがストレス関連タンパク質であることが確認された

ベータトロフィンが脂肪代謝に与える影響はまだヒトでテストする必要があるが、Yangは今回の研究結果がストレスの低下が有益でありうる理由を説明すると言う
短期間の適度なストレスは難しい状況を切り抜けて上手くやるのを助ける一方で、長期のストレスは非常に有害になる可能性がある

「ストレスは脂肪の蓄積を引き起こすか、または少なくとも脂肪代謝を遅らせる
これはなぜストレスの多い状況を解決してバランスの取れた人生を求めるのが最良であるかについてのもう一つの理由である」
Yangは言う


http://dx.doi.org/10.1016/j.bbalip.2015.11.003
Angiopoietin-like protein 8 (betatrophin) is a stress-response protein that down-regulates expression of adipocyte triglyceride lipase.
アンジオポエチン様タンパク質8(ベータトロフィン)は、脂肪組織トリグリセリドリパーゼの発現を下方調節するストレス応答タンパク質である

Highlights
・ANGPTL8はストレス応答タンパク質である
・RAS/c-RAF/MAPKシグナル伝達経路は、ANGPTL8転写を仲介する
・ANGPTL8は、ERK信号交換伝達/signal transductionの経路を活性化する
・ANGPTL8は、Egr1発現の情報調節を介して脂肪組織トリグリセリドリパーゼ/adipose triglyceride lipase (ATGL)の発現を抑制する

Abstract

Results
ANGPTL8は、in vitroでアミノ酸が枯渇した培養細胞において有意に上方調節される
ANGPTL8遺伝子転写の活性化は、通常generalのGCN2/ATF4経路よりもむしろ、RAS/c-RAF/MAPKシグナル伝達経路によって仲介される

ANGPTL8は肝細胞、脂肪細胞、膵臓β細胞においてERK信号交換伝達経路を活性化させ、
初期増殖応答転写因子1/early growth response transcription factor (Egr1) を上方調節し、
脂肪組織トリグリセリドリパーゼ/adipose triglyceride lipase (ATGL) を下方調節した

※Egr1: http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=EGR1


Conclusion
ANGPTL8はストレス応答タンパク質であり、ATGL遺伝子発現を抑制することにより脂肪代謝を調節する
このことは哺乳類の細胞におけるANGTPL8と脂質恒常性との間の機構的な関係を明らかにする



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150723111359.htm
脂肪組織が発現する糖質コルチコイド受容体が脳のストレスと代謝の制御の仕方に影響する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5410eb0f0900f4f19d875c843cfb6ab9
太れば太るほど痩せなくなる理由は脂肪細胞が作るsLR11というタンパク質



関連サイト
http://syodokukai.exblog.jp/18652586/
2013-04-27
膵β細胞増殖を調節するホルモン・ベータトロフィンについて


http://diabetologistnote.blog119.fc2.com/blog-entry-459.html
2013-04-29
β細胞を特異的に増加させるホルモン、Betatrophinの報告です。マウスの結果で肝臓に強発現させると8日後にはβ細胞面積が3倍になったという強力な効果が示されている。


http://nsmcuriosity.hatenablog.com/entry/2014/04/05/192515
2014-04-05
昨年発表されたハーバードのMelton教授のラボで発見された、膵β細胞の複製を強力に活性化するホルモンであるbetatrophin(ベータトロフィン)。このbetatrophinがヒトで有効であるかを検証した論文がDiabetesで報告された。
この結果はもしかするとbetatrophinはマウスのβ細胞は増やすがヒトのは増やさないかもしれないことを示唆する結果となった。
しかし忘れてはいけないことは、betatrophinはどうやってβ細胞を増やしているのか全くそのメカニズムがブラックボックスであるということだ。


http://fm7.hatenablog.com/entry/2015/09/09/221236
2015-09-09
すい臓のβ細胞を増やす新規ホルモンとして報告されたベータトロフィンであるが、後にAngiopoietin-like protein 8 (ANGPTL8) であることが明らかになった。
 

太れば太るほど痩せなくなる理由

2015-12-01 06:06:27 | 代謝
Stored fat fights against the body's attempts to lose weight

November 24, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151124112140.htm

我々は太れば太るほど、脂肪が燃えるのを阻害するタンパク質を多く作るようである
Nature Communication誌で発表された今回の研究結果は、肥満や代謝疾患の治療に関係があるかもしれない


体の脂肪細胞のほとんどを占める白色脂肪細胞は、余分なエネルギーを蓄えるように働いてそれが必要になった時に放出する
しかし褐色脂肪細胞という細胞は主に熱を作るプロセスのために働き、体温を保っている(熱発生thermogenesis)

しかしながら、イギリスのケンブリッジ大学と日本の東邦大学の『ウェルカムトラスト - 医学研究評議会 代謝科学研究所』の国際研究チームは、体内のsLR11というタンパク質がこのプロセスを抑制するように作用することを示した


研究者たちは、なぜこのタンパク質を作る遺伝子を持たないマウスが非常に体重が増加しにくいのかの理由について調査した

全てのマウスは(そしてヒトも)、低カロリー食から高カロリー食に切り替わっても代謝率metabolic rateはわずかしか増加しないが、sLR11の遺伝子を持たないマウスは代謝率が大きく増加する
これはカロリーを素早く燃やせることを意味する

さらなる実験により、このマウスでは通常は褐色脂肪組織に関連する遺伝子が白色脂肪細胞で活性化していることが明らかになった
この観察と一致して、sLR11を持たないマウスは実際に体熱をより多く生じthermogenic、特に高脂肪食後のエネルギー消費が増加していた

分析の結果、sLR11は脂肪細胞の特定の受容体に結合し、熱発生thermogenesisを活性化する能力を阻害することが明らかにされた
sLR11は脂肪の効率を増加させるシグナルとして働き、熱発生を制限することによりエネルギーを蓄えて過剰なエネルギー喪失を防ぐ


ヒトで調べたところ、血中のsLR11レベルは総脂肪量と相関することが判明した
言い換えると「sLR11が多いほど総脂肪量は多かった」

肥満手術後の体重減は直接sLR11レベル低下と比例したproportional
これはsLR11が脂肪細胞によって作られていることを示唆する

論文の中で著者は、sLR11が他の代謝シグナル、つまり大食いlarge mealや短時間の気温低下のようなシグナルの『急上昇spikes』の間、脂肪細胞が脂肪を燃やしすぎないよう抵抗するのを助けることを示唆する
これにより脂肪組織は長期にわたってより効率的にエネルギーを貯蔵できるようになる


肥満や糖尿病、心疾患などを治療するための熱発生thermogenesisを標的にする薬剤への関心が増しつつある
その理由は、過剰な脂肪を比較的安全な方法で処理するメカニズムになるからである
そうして熱発生や熱発生できる脂肪細胞の数を増やすことが可能な分子が既に多く同定されてきたが、
熱発生を減少させることができる分子はほとんど発見されていない

今回の研究結果は、人体がその蓄えられたエネルギーを保ち続けるhold ontoために利用するメカニズムの一つに光を当てた
sLR11のレベルは蓄積された脂肪の量と一致して増加し、脂肪が熱発生のために『無駄遣いwasted』されないように防ぐのである


Andrew Whittle博士は次のように言う
「我々の発見はなぜ太った人々は痩せるのが信じられないほど難しいのかを説明するかもしれない
蓄えられた脂肪は、脂肪を燃やし尽くすburn offための努力に対して、分子レベルで積極的に戦うのである」


Toni Vidal-Puig教授は以下のように付け加えた
「我々は『脂肪を燃焼する能力を高める』のを助けるだけでなく、『脂肪を燃焼しないようにする』ために標的とすることができる重要なメカニズムを発見した
このメカニズムを調節することで神経性食欲不振症/anorexia nervosaのような『エネルギーの節約が重要』となるような病態の人々も助けることができるかもしれない」


研究に出資した英国心臓病財団/British Heart Foundation(BHF)でAssociate Medical DirectorのJeremy Pearsonは言う
「sLR11/SorLAの作用を阻害することにより肥満を減らすのを助けたり、sLR11/SorLAの作用を真似ることで体重が減らないようにコントロールするような新薬の開発を今回の研究は刺激するだろう
この有望な発見を元にしたケンブリッジの研究チームによる将来の発見を我々は期待している」

「しかし、安全に体重を減少させる肥満の治療に有効な薬ができるまで、まだ少し時間がかかるだろうsome way off
それまでin the meantime、体重を健全に減らして心臓の健康を促すためのアドバイスを我々BHFのウェブサイトbhf.org.ukで見つけることができる」


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms9951
Soluble LR11/SorLA represses thermogenesis in adipose tissue and correlates with BMI in humans.
可溶性LR11/SorLAは脂肪組織の熱発生を抑制し、ヒトのBMIと相関する

Affiliations
東邦大学
千葉大学大学院医学研究院
つくば研究所
千葉大学病院



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150115134824.htm
レプチンとインスリンはPOMCニューロンに作用して白色脂肪の褐色化を促進する



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http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140807145940.htm
Notchシグナル伝達の阻害は白色脂肪組織の褐色化を促進して肥満を緩和する
 

4型糖尿病の発見

2015-11-22 06:04:57 | 代謝
Blocking immune cell treats new type of age-related diabetes

November 18, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151118155132.htm


(ソーク研究所の新しい研究は、年老いて痩せたマウスの糖尿病が脂肪組織の免疫細胞過剰によって引き起こされることを示す
上の図ではオレンジ色が脂肪組織中のTregを表し、年老いた糖尿病マウス(右図)では脂肪組織にTregが過剰に蓄積してインスリン抵抗性を引き起こす
Tregが阻害されるとマウスは再びインスリンに感受性になる)


糖尿病はしばしば肥満や悪い食生活の結果として起きるが、年老いた人の中には単に加齢の結果として発症する人がいるのかもしれない
11月18日にNatureで新たに発表された研究によると、年老いて痩せているマウスで発症する糖尿病/インスリン抵抗性は、肥満から発症するいわゆる2型糖尿病とは異なる原因から生じるようだ
共に研究に参加した主な科学者のRonald EvansとYe Zhenはこの新しい病態を『4型糖尿病』と呼んでいるが、今回の研究結果はその潜在的な治療法に向けた道を指し示す

「老人の糖尿病の多くは診断されていないが、その理由は彼らが2型糖尿病の古典的なリスク要因を持っていない、つまり肥満ではないからである」
ソーク研究所の遺伝子発現研究室のディレクターであり今回の論文の首席著者でもあるEvansは言う
「我々の発見が治療法につながるだけでなく、4型糖尿病が異なる疾患であるという認識につながることを期待している」


これまで糖尿病は、まれな『1型糖尿病』とほとんどが肥満が原因の『2型糖尿病』、そしてアルツハイマー病に似たような症状になる『3型糖尿病』に分類されてきた
しかしEvansは彼の家族ぐるみのより年老いた友人older family friendが痩せていながら糖尿病を発症した後、なぜ体重が増えていないのに年老いて糖尿病を発症する人がいるのかについて不思議に思うようになった


Evansは助教授のZhengたちとともに、健康なマウス、肥満と関連する糖尿病のマウス、加齢と関連する糖尿病のマウスで、それぞれの免疫系を比較した
その結果、加齢後に糖尿病を発症するマウスでは制御性T細胞(Treg)という免疫細胞が異常に高いレベルで脂肪組織に存在していた
一方、肥満と関連する糖尿病マウスは脂肪組織の量はより多かったものの、脂肪組織中のTregは通常レベルだった

「我々はこれらのマウスの脂肪組織中の免疫細胞の全数調査censusをした」
EvansとZhengのラボの大学院生graduate studentで筆頭著者のSagar Bapatは言う
「単に細胞の種類を数えるだけで、我々はすぐTregが他のグループよりも多く存在することに気付いた」


Bapatの説明によると、通常Tregは炎症の抑制を助ける細胞である
脂肪組織はエネルギーを蓄積しては放出しているため、常に分解され、そして再構築されている
脂肪組織は常に自身を作り直し、そのため、低レベルの炎症を必要とする

しかし、年老いていくにつれてTregが徐々に脂肪組織に蓄積する人がいるということが今回の研究で示唆された
もし細胞が『転換点tipping point』に到達すると脂肪組織の炎症は完全に阻止される
それは肝臓などの気付かれないunseen場所に脂肪沈着の形成を引き起こし、インスリン抵抗性につながりうる

「通常のTregは人体に有益だと考えられているので、この結果には驚いた」
Zhengは言う


免疫細胞が必要とする分子を標的とすることで脂肪組織でのTregの蓄積を阻止すると、マウスはもはや年老いても4型糖尿病にならなかった
しかしマウスが肥満になると、脂肪組織のTregを阻害しても2型糖尿病のインスリン抵抗性は予防しなかった

「この種の糖尿病に関しては、治療は体重減少ではないことが判明した」
Evansは言う
「実際には、治療はTregを減らすことである
我々はそれが実行可能possibleであることを示す」


現在、研究者たちはTregが脂肪組織と相互作用する方法や、免疫細胞が正常な加齢中に他の臓器にも蓄積するのかを正確に調べようとしている
また、彼らはこの研究結果がヒトにも適用されるのかについて調べるための研究を計画している


http://dx.doi.org/10.1038/nature16151
Depletion of fat-resident Treg cells prevents age-associated insulin resistance.

成人が発症する糖尿病において、加齢関連インスリン抵抗性と肥満関連インスリン抵抗性は生理学的に異なる
肥満関連インスリン抵抗性の中心的なドライバはマクロファージによって促進される炎症だが (1, 2, 3, 4, 5, 6、
肥満には依存しないが一般的に広く見られる加齢関連インスリン抵抗性 (7 の根底にあるメカニズムはあまり研究されていない

ST2抗体の投与により選択的に脂肪組織のTreg/fTregを枯渇させると、脂肪組織のインスリン感受性は増大する

※ST2: IL1RL1



関連サイト
http://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/56236
IL-33の受容体であるST2は腸の制御性T細胞で選択的に発現されていて、
腸炎マウスモデルにおける制御性T細胞の機能と炎症組織環境への適応を促進する



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150128093549.htm
脂肪細胞には独自のタイプの制御性T細胞/Tregがいるが、肥満になるとTregは脂肪組織から消える
脂肪組織にIL-33を投与するとTregが回復して炎症は減少し、血糖は低下する
 

アミロイド症を引き起こす異常なアポA-Iの研究

2015-11-16 06:39:32 | 代謝
Molecular mechanism at root of familial amyloidosis and other diseases

November 12, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151112123926.htm

家族性アミロイド症ならびに他の疾患の根本にある分子メカニズム


ボストン大学医学部/BUSMの研究チームteam of local researchersは、アミロイド症という致命的な疾患の原因となる分子メカニズムを提案する

※local: このプレスリリースはボストン大学のPR/パブリック・リレーションズで発表された

アミロイド症で最も知られているのはアルツハイマー病/ADだが、他の多くのアミロイド疾患についても精密な調査scrutinyが増えつつある
その理由の一部は、それらの疾患をアテローム硬化症や加齢と関連付けるエビデンスが蓄積しつつあるためである
Molecular Biologyで発表された今回の研究は、最終的にこれらの疾患のいずれかについて治療標的の開発につながる可能性がある


アミロイド症には多くの疾患が含まれるが、それらはタンパク質が様々な臓器で異常な凝集を形成して蓄積するために生じる
例えばアルツハイマー病やパーキンソン病では脳、心アミロイドーシスcardiac amyloidosisでは心臓が冒され、他にも腎臓や肝臓などの重要な臓器で起きる

凝集するタンパク質の一つがアポリポタンパク質A-1/アポA-1である
アポA-1はいわゆる『良いコレステロール』であるHDLの足場scaffoldを形成し、正常な場合アポA-1/HDLは過剰なコレステロールなどの脂質を体から除去して心血管疾患から保護する

しかし、アポA-Iに変異または何らかのエラーが生じるとアポA-Iは凝集する可能性があり、それは家族性アミロイド症という治癒することのない生命にかかわる疾患として表れる
アポA-Iは動脈にも蓄積し、それによりアテローム硬化症の一因になる

互いに凝集する脆弱な『ホットスポット』の露出exposedが原因で異常タンパク質が疾患を引き起こしうることは以前から医学会で知られていたが、
HDLという『良い』タンパク質がどのようにして『悪い』タンパク質になるのかについての理解、特に分子レベルでの理解がこれまで不足していた


ボストン大学とノースイースタン大学の研究者たちが最先端の技術を使って
アポA-Iの様々な変異体の動的なふるまいdynamic behaviorと分子的な形状molecular shapeについて分析したところ、
アミロイド症を引き起こすのが常にアポA-Iの露出した『ホットスポット』であるわけではないことが明らかになり、研究者を驚かせた

いくつかの変異は『他の部分の脆弱性』における保護を低下させ、その脆弱性はタンパク質が凝集する前に人体がそれを取り除くのを助けるものだった
アポA-Iにおけるこれらの変異は、ヒトではアミロイド症を引き起こさなかった

驚くべきことに、タンパク質の一方の末端に起きた変異のいくつかは、まるで『分子レベルのリモコン』のように、正反対側の末端の構造と活性を変化させた

研究者は今回の発見がアポA-Iに限らず、おそらく他のアミロイド形成タンパク質にも適応できることを示唆する
研究者たちによると、このアミロイド疾患を引き起こす分子レベルでの変化のパズルを解き明かすことは、治療法の開発にとって重要な意味を持つという

「どんなタンパク質であれ、それがアミロイドを形成するようになる要因が何なのかを予測可能なら、病原性のプロセスが始まるのを遅らせたり、阻害することさえできるツールを設計し始めることができるだろう」
ボストン大学医学部の生理学と生物物理学の教授で責任著者/corresponding authorのOlga Gursky, PhDはそのように説明した


http://dx.doi.org/10.1016/j.jmb.2015.10.029
Structural Stability and Local Dynamics in Disease-Causing Mutants of Human Apolipoprotein A-I: What Makes the Protein Amyloidogenic?
ヒトアポA-Iの疾患誘発的な変異体の、構造的安定性ならびに局所的ダイナミクス: 何がアポA-Iをアミロイドジェニックにするのか?