Major complication of Parkinson's therapy explained
September 10, 2015
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150910131928.htm
コロンビア大学メディカルセンター/CUMCの研究チームはパーキンソン病マウスモデルで新たな方法を使い
線条体から黒質への遠心性結合striatonigralのニューロンが抑制性の神経伝達物質であるGABAに応答しなくなると運動障害が生じることを発見した
これは運動を障害する副作用を妨げるか遅らせるためにこれらのニューロンの活性を調整することが有効である可能性を示唆する
研究の論文はNewron誌のオンライン版に掲載された
パーキンソン病は、特に黒質substantia nigraのニューロン細胞死によって起きる
黒質のニューロンでは神経伝達物質のドーパミンが作られていて、このドーパミンがなくなるとニューロンの発火に異常が起きて運動を制御する能力が損なわれる
それに対してL-DOPA補充療法は脳でドーパミンに変換されて治療効果を発揮するが、しかし多くの患者では結局は運動が制御不能になる
過去の多くの研究では、パーキンソン病の運動障害の原因としてドーパミン受容体に注目してきた
ドーパミン受容体は脳に残っていて、L-DOPA療法に対してやがて過剰に反応するようになる
しかしCUMCチームは
ドーパミンがない時に大脳基底核ニューロンがどのようにして動きを調節するのかを調べようとした
「ドーパミンニューロンは、大脳基底核basal ganglia(線条体・淡蒼球・視床下核・黒質緻密部/網様部)を調整する」
Anders Borgkvist, PhDが説明する
「パーキンソン病患者では回路がまだ機能しているため、この回路の他の部分の動作が異常なのだろうと長く考えられてきた」
しかしながら、これまでは大脳基底核の特定の部分を選択して刺激する方法がなく、ドーパミンがなくなった時に何が起きるのかを調べることができなかった
今回の研究でCUMCチームは光を使ってニューロンを制御する光遺伝学optogeneticsというまったく新しい方法を利用した
これにより、長い間ドーパミンが失われると線条体から黒質へ接続するstriatonigralニューロンはGABAに応答する能力を失うことが判明した
この影響は短期間のドーパミン喪失では見られなかった
「線条体から黒質へ接続するstriatonigralニューロンが正常に働いていると、
それは大脳基底核へのブレーキとして作用して、不要な動きを停止させる」
Dr. Sulzerは言う
「しかし、ドーパミンが失われると、線条体から黒質へ接続するstriatonigralニューロンはそれを補おうとして最終的にGABAへの応答性を失う
我々の仮説は、L-DOPAがシステムに加えられると不要な動きを濾過filterする/不要な動きのスイッチを切る能力が失われるということである」
「我々の発見はGABAとGABA受容体が線条体から黒質へ接続するstriatonigralニューロンにまだ存在することを示唆する」
Dr. Borgkvistは言う
「そこで疑問が生じる。なぜそれが機能していないのか?」
「我々か、他の研究室が、その答えを見つけるだろうと私は考えている
いずれにしてもIn any case、その意味はこの欠陥defectが修正可能correctableであるということだ
患者がL-DOPAを使い続けることができるように我々は運動障害を防ぐか少なくとも遅らせることができるだろう」
「パーキンソン病患者は初めは運動障害を生じないが、それもわずか数年間のことである」
Stanley Fahn, MDは言う
「患者がL-DOPAの開始を遅らせたい主な理由は、できるだけ長く運動障害dyskinesiasを避けたいからである
今回の発見はこの運動障害dyskinesiasを治療するか妨げる方法の可能性への道を開く
もしそのような方法が発見されれば、患者はおそらく早く治療を受けてより早く生活の質を改善しようとするだろう」
http://dx.doi.org/10.1016/j.neuron.2015.08.022
Loss of Striatonigral GABAergic Presynaptic Inhibition Enables Motor Sensitization in Parkinsonian Mice.
Highlights
・ドーパミン脱神経/ドーパミン神経支配の喪失dopamine denervationは、 線条体から黒質への接続striatonigralを介した運動活性化の感受性増大を可能にするenables sensitized striatonigral-mediated motor activation
・ドーパミン脱神経は、線条体から黒質への接続striatonigralによるシナプス活性の増大につながる
・線条体から黒質への接続striatonigralでのGABA放出は、GABAB自己受容体autoreceptorsによって制御される
・ドーパミン脱神経は、GABABを介した線条体から黒質への接続striatonigralの活動の正常な制御を妨げる
※striatonigral: 線条体黒質の。線条体から黒質への遠心性結合についていう
※nigrostriatal: 黒質線条体の。黒質(特に緻密部)から線条体に向かう結合についていう
※striatonigral fibers: 線状体黒質線維。尾状核や被殻から出て主に中脳黒質の網様体に終わる線維。主にGABAとサブスタンスPが神経伝達物質として使われる
Summary
パーキンソン病においてドーパミンニューロンの変性は運動減少hypokinesiaを引き起こすが、ドーパミン補充療法/DA replacement therapyは、自発的/非自発的振る舞いを悪化させうるcan elicit exaggerated voluntary and involuntary behaviors
その理由は、 線条体に存在する投射ニューロンstriatal projection neuronsにおけるドーパミン受容体の感受性sensitivityが促進されるためである
線条体でドーパミン受容体D1を発現する中型有棘ニューロン/striatal D1 receptor-expressing medium spiny neurons (MSNs) は黒質網様部/substantia nigra reticulata (SNr)に直接投射しているが、
今回我々は半パーキンソン症候群マウスhemiparkinsonian miceではこのMSNsニューロンがGABAB受容体による緊張性/持続性tonicのシナプス前阻害presynaptic inhibitionを失うことを明らかにした
前シナプスGABAB応答がなくなると、線条体中型有棘ニューロン遠心性神経MSN efferentsから黒質網様部SNrへのGABAリリース刺激が強められpotentiates evoked GABA release、運動増感motor sensitizationを促進する
このオルタナティブなメカニズムは、パーキンソン病の薬理療法PD pharmacotherapyにおいてシナプスが標的synaptic targetになる可能性を示唆する
直接路
[黒質緻密部]─(ドーパミン)→[線条体]<D1受容体>中型有棘ニューロン/MSNs─(GABA)─┤[黒質網様部/SNr]─(GABA)─┤[視床]