機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

癌の血液検査は静脈より動脈の方が良い

2015-09-30 06:21:24 | 癌の治療法
Arteries better than veins for liquid biopsy

September 24, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150924101906.htm

循環腫瘍細胞/CTCsは他の血球よりも大きく、通常の血球とは性質が異なるので現代技術で検出可能だが、
複雑で入り組んだふるいである狭い毛細血管intricate sieve of narrow capillariesを通った後の静脈よりも、動脈の方が検出できる数が多い
動脈からの血液採取は技術的に難しいが、循環する腫瘍細胞の数を評価して転移を検出する正確な方法かもしれない


乳癌ではCTCの数が多い(静脈血7.5mlあたり5個よりも多い)と、悪性の転移性疾患であり、治療への反応が止まることを示す
「もしこのアプローチがブドウ膜黒色腫uveal melanomaで確認validateされれば、転移するようになる前に癌を検出できるようになることが期待できる」
トマスジェファーソン大学のTakami Sato, M.D.は言う

Mizue Terai, PhDたちがブドウ膜黒色腫の血液サンプルを比較したところ、静脈からよりも動脈からの方が循環腫瘍細胞/CTCsの数は多かった
肝臓に複数転移したブドウ膜黒色腫の患者では動脈血液の全てにCTCsが存在したが、静脈血液からは53%しかCTCsが検出されなかった


http://dx.doi.org/10.1016/j.ebiom.2015.09.019
Arterial Blood, Rather Than Venous Blood, is a Better Source for Circulating Melanoma Cells.
 

高圧酸素療法は臍帯血移植を改善する

2015-09-30 06:21:06 | 癌の治療法
Oxygen treatment boosts the success of umbilical cord blood transplants

September 23, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150923182952.htm

過去27年間、臍帯血移植cord blood transplantsは多くの白血病(non-Hodgkins lymphoma, Hodgkins disease, myelodysplastic disorders)の患者の命を救う治療だった
その成功にもかかわらず、研究者たちは移植プロセスを改善し治癒率を向上させる方法を継続して探し続けている

カンザス大学メディカルセンターで癌生物学プログラムの一員であるOmar Aljitawi, M.D.は、臍帯血移植umbilical cord blood transplantの結果を改善するために高圧酸素療法hyperbaric oxygen therapyを使ったパイロット臨床試験pilot clinical trialをちょうど終えたところである
予備試験データpreliminary dataは肯定的なものであり、臍帯血移植をより効果的なものにする簡単で安全な方法への道を開くものになるだろう

「多くの研究の後、私は移植プロセスに伴う大きな問題が『生着engraftment』ということに気付いた」
彼は言う
生着は、移植された幹細胞が骨髄へ移動する道を見つけて、新しく健康な血球を作り始めることである

「私はそのプロセスを改善する方法を理解して移植をより成功させる方法を知りたいと考えた」


臍帯血には検体サイズsample sizeが小さいために幹細胞が少なく、幹細胞を人工的に操作して増殖させるための研究がこれまで行われてきた
しかしDr. Aljitawiによる今回の研究は幹細胞が骨髄に取り込まれるのを促進しようとするものだ

今回の研究のヒントになったのは赤ちゃんの生後の血流で幹細胞が急激に減少するという論文だった
この減少は幹細胞が血流から消えるclearanceことによるもので、それはホーミングというプロセスによって骨髄に移動するためである

研究者は、腎臓から分泌されるホルモンのエリスロポエチン/erythropoietin/EPOも、まさに生後に低下することにも言及する
(EPOは血中の酸素レベルが低下するにつれて赤血球産生速度を増加させるホルモン)

この新しい情報を元にDr. Aljitawiは、EPOがホーミングプロセスに関与しているという仮説を立てた
つまり「EPOレベルが低いほど血球細胞は骨髄に引き寄せられる」。

EPOレベルは酸素レベルによって変動するようなので、Dr. Aljitawiは酸素レベルを上げる方法を発見しなければならなかった

その答えは、高圧酸素療法hyperbaric oxygen therapyという既に利用可能で安全な治療法の中に存在した
興味深いことに、酸素レベルを上昇させるだけではEPOは低下せず、高圧状態だけがEPOを低下させた
 

アルツハイマー病の3つのサブタイプ

2015-09-29 06:49:57 | 
Alzheimer's disease consists of three distinct subtypes, according to study

September 16, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150916165404.htm

アルツハイマー病には3つのサブタイプがある

・炎症性/Inflammatory
 CRPや血清アルブミン/グロブリン比のようなマーカーが上昇する

・非炎症性/Non-inflammatory
 炎症性マーカーは上昇しないが代謝異常は存在する

・皮質性/Cortical
 比較的若い患者を冒し、脳内の分布は他よりも広範囲である


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26343025
Metabolic profiling distinguishes three subtypes of Alzheimer's disease.

三番目のサブタイプは、低亜鉛血症hypozincemiaと、ApoE4との関連がないことが共通する
このことから他の二つのサブタイプとは根本的に異なる疾患であることが示唆される
 



古い薬をアルツハイマーに再利用する

2015-09-29 06:32:19 | 
Old drug offers new hope to treat Alzheimer's disease

By repurposing a prescription drug used to treat rheumatoid arthritis, researchers successfully reversed tau-related symptoms in an animal model of dementia

September 21, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150921133646.htm

グラッドストーン研究所のLi Gan博士の研究チームがアルツハイマー病患者の死後の脳を調べたところ、
タウタンパク質のもつれtanglesが検出される前でさえ、タウタンパク質の(リン酸化ではなく)アセチル化が初期の徴候の一つであることを発見した
タウのアセチル化は疾患の進行を特徴づけるだけでなく、タウの蓄積と毒性を促進するドライバとしてはたらいていた

さらに、FTDのマウスモデルでは、タウがアセチル化するとニューロンのタンパク質を分解する能力が減少し、脳内の蓄積を引き起こした
このことが領域の萎縮と様々な記憶テストでの認知障害につながった

グラッドストーンの研究者は、サルサラート/サザピリンが脳内でp300という酵素を阻害することを発見した
p300はアルツハイマーで上昇し、アセチル化を引き起こす
サルサラートでタウのアセチル化を阻害するとタウのターンオーバーが促進され、脳内のタウレベルを効果的に減少させて、
タウによる記憶障害と脳細胞の減少は抑制された

※サルサラートsalsalate/サザピリンはサリチル酸2分子が結合した構造をもつ


http://dx.doi.org/10.1038/nm.3951
Critical role of acetylation in tau-mediated neurodegeneration and cognitive deficits.



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150324084339.htm
アルツハイマー病で認知低下の発症年齢、疾患の期間、精神の荒廃を予測するのは、アミロイドではなくタウの蓄積度である



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/bfc3251679b9cb45dce66398a618c12d
マウスにヒトのFTDと関連する変異(V337M)を持つタウタンパク質を発現させると、腹側線条体(ventral striatum; 側坐核と嗅結節)ならびに島(insula)において選択的にシナプスが障害され、
さらにタウの変異によりPSD-95が枯渇してシナプス後肥厚が縮小し、シナプスでのNMDARの局在が障害された
PSD-95はシナプス後肥厚を構成する足場タンパク質で、NMDARのカルボキシル末端に結合する
 

WWOXはグルコースをエネルギーとして使わせる

2015-09-28 06:10:12 | 
Role of cancer-suppressing gene uncovered

September 22, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150922104651.htm

WWOXタンパク質レベルの低い人は癌を発症しやすく、
WWOXレベルが低い癌は悪性になる傾向があり、治療にも応答しにくい

ショウジョウバエで研究したところ、WWOXレベルが低い細胞は他の細胞と競合して打ち勝つことができるようになることがわかった
その結果として癌は悪性化して患者の予後を悪化させる

ショウジョウバエでのさらなる研究により、WWOXは癌細胞の代謝の変化に関与することが判明した
癌細胞はグルコースの利用の仕方が通常とは異なり、グルコースをエネルギーよりもむしろ『建築材料building blocks』として使うことで分裂と増殖が促進されると考えられている
WWOXはグルコースを癌細胞の増殖ではなく、エネルギーとして使うようにバランスを保つのを助ける

この代謝の違いが癌細胞が通常の細胞と競合して打ち勝つために重要である
WWOXレベルの低さはグルコースを癌細胞の『建築材料』として使えるようにする

アデレード大学のRichards教授は言う
「癌抑制遺伝子のWWOXがどのようにして癌を抑制するのかを知った今、我々はWWOXを標的にしてその活性に影響し、癌細胞の性質を変化させることができるかもしれない」


http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0136356
Tumor Suppressor WWOX Contributes to the Elimination of Tumorigenic Cells in Drosophila melanogaster.
腫瘍抑制因子のWWOXはショウジョウバエにおいて腫瘍形成性/発癌性細胞の消去に寄与する

 


PARP14はワールブルク効果を促進する

2015-09-28 06:06:29 | 
New discovery offers cure by starving cancer cells

September 21, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150921091308.htm

PARP14はほとんど全ての癌細胞で過剰発現している
PARP14はアポトーシスを制御するキナーゼに作用する
PARP14はグルコースを通常の細胞とは異なる方法で利用できるようにする


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26258887
PARP14 promotes the Warburg effect in hepatocellular carcinoma by inhibiting JNK1-dependent PKM2 phosphorylation and activation.

Abstract
PARP14は、ワールブルク効果の重要な調節因子であるピルビン酸キナーゼM2/PKM2の活性を低く保つことにより、ヒト肝細胞癌/hepatocellular carcinoma/HCCにおいて好気的解糖を促進する
PARP14はHCCの原発腫瘍で強く発現し、患者の予後の悪さと関連する

機構的には、PARP14はアポトーシス促進性キナーゼのJNK1を阻害する
その結果、PKM2はスレオニン365のリン酸化を通じて活性化する

 PARP14─┤JNK1─(リン酸化)→PKM2→グルコースからピルビン酸への変換

 PARP14↑─┤JNK1↓─(リン酸化↓)→PKM2↓⇒ワールブルク効果↑,代わりの生合成経路(NADPH,グルタチオン)↑,抗酸化応答↑

 PARP14↓─┤JNK1↑─(リン酸化↑)→PKM2↑→グルコースからピルビン酸への変換↑,抗酸化応答↓,アポトーシス↑


さらに、PARP14を標的にすることはHCC細胞の抗HCC薬剤への感受性を増大させる
我々の発見はPARP14-JNK1-PKM2という調節経路は腫瘍細胞のワールブルク効果の重要な決定要素であることを示し、アポトーシスと代謝との間の機構的つながりを提示するprovide

http://www.nature.com/ncomms/2015/150810/ncomms8882/fig_tab/ncomms8882_F9.html
Figure 9: Mutation of Thr365 inhibits PKM2 and promotes PARP14-mediated HCC cell survival.

(e) Schematic illustration depicting metabolic changes in the presence (left) or absence (right) of PARP14 in HCC cells.
 


タモキシフェンへの抵抗性を説明するフィードバックループ

2015-09-27 06:38:04 | 癌の治療法
Molecular 'feedback loop' may explain tamoxifen resistance in patients with breast cancer

September 23, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150923103304.htm

タモキシフェンはエストロゲン受容体αを阻害する
しかし、癌細胞がエストロゲン受容体αを発現し続けているにもかかわらず、多くの患者はタモキシフェンに抵抗性になる
今回の研究でジョンズ・ホプキンス・キンメルがんセンターの科学者たちは、複雑な分子経路を追跡することによりタモキシフェンへの抵抗性がどのように生じるのかを(少なくとも部分的には)説明する


エストロゲン受容体/ERが陽性の乳癌患者ではタモキシフェンが腫瘍の受容体を阻害し、それによってthereby、癌を促進する他の分子を活性化する
キンメルがんセンターのSaraswati Sukumar, Ph.D.たちは、エストロゲン受容体がタモキシフェンを回避するのを促進する『フィードバックループfeedback loop』に、HOXB7というタンパク質が加わるparticipateことを発見した

研究者は乳癌の15の細胞系統を分析し、HOXB7とエストロゲン受容体が協力してMYCというタンパク質の産生を促進することを明らかにした
癌細胞での多過ぎるMYCはマイクロRNA196a/miR-196aを抑制するが、miR-196aは通常はHOXB7の産生にブレーキをかける分子である

タモキシフェンに抵抗性の癌細胞では、HOXB7タンパク質はエストロゲン受容体/ERと結合してERの標的遺伝子の活性化を促進する
その標的遺伝子にはHER2が含まれ、そしてHER2タンパク質を多く生じる乳癌は悪性化して増殖が早い傾向がある(近年はHER2陽性の早期ステージ乳癌はハーセプチンで生存が30%改善する)
タモキシフェンに抵抗性の癌細胞において、HER2タンパク質はMYCを安定化させ、癌と関連する機能をより長い間継続させるover longer periods of time

MYC, HOXB7, ER, HER2を結びつけるこの分子フィードバックループはすべて治療標的となりうるが、現在のところ、MYCに干渉する方法を開発するのが最も役立つ戦略だろうとSukumarは言う

「MYCを標的にすることはHOXB7を攻撃するget atための強力な方法になる可能性がある
HOXB7は多くの経路を制御するので、
乳癌と関連する多くの経路を一撃のもとにin one fell swoop崩壊collapseさせることができるだろう」
ジョンズ・ホプキンス医科大学で腫瘍病理学の教授でもあるSukumarが説明する


研究チームはタモキシフェン抵抗性の癌細胞でMYC遺伝子をサイレンシングすることによりタンパク質レベルを低下させ、癌細胞を再びタモキシフェンに反応させることができることを示した
さらに、MYCを阻害する2つの分子を使った実験によりHOXB7とHER2レベルを抑制し、
また、それら阻害剤とハーセプチンとの組み合わせによりマウスに移植した腫瘍を著しく縮小させることに成功した

「多くの女性が最終的にはタモキシフェンに抵抗性になるため、
今回の結果はそもそもの最初からright from the start、抵抗性が生じるのを未然にfrom happening防ぐためにMYC阻害剤を使い始めるのが良いという可能性を示唆する」

現在のところ、MYCを標的とする阻害剤や分子フィードバックループに干渉する薬剤を組み合わせた臨床試験は存在しないが、SukumarはMYC-HOXB7-HER2経路がタモキシフェンで治療する患者の転帰を予測する際にも役立つと言う
彼女と研究チームがHOXB7レベルを1,208人の癌データベース(Molecular Taxonomy of Breast Cancer International Consortiumによって作られた)で調べたところ、HOXB7タンパク質レベルが高い患者は全生存率が1.3倍悪かった
HOXB7, MYC, HER2ではさらに関連が強く、3つ全てのタンパク質の量が多いと生存率が悪い可能性が2.8倍高かった


http://dx.doi.org/10.1158/2159-8290.CD-15-0090
HOXB7 Is an ERα Cofactor in the Activation of HER2 and Multiple ER Target Genes Leading to Endocrine Resistance



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2010/12/101210204139.htm
HOXB7遺伝子はタモキシフェン抵抗性を促進する



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141125101739.htm
MACROD2遺伝子はタモキシフェン抵抗性を促進する

http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1408650111
MACROD2はERによって調節される遺伝子サブセットにおいてエストロゲン応答配列へのp300の結合を増加させる



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/10/121031125033.htm
癌関連線維芽細胞でリン酸化ERK/pERKレベルが低い女性はタモキシフェンに応答しない
 

タモキシフェンへの抵抗性を克服する

2015-09-26 06:26:15 | 癌の治療法
New approach found to tackle breast cancer hormone therapy resistance

September 17, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150917130455.htm

マンチェスター大学の研究者は、なぜエストロゲン受容体陽性/ER+の乳癌がホルモン療法に抵抗性を生じるのかについての新しい説明を発見した


乳癌の80%はER+であり、タモキシフェンやアロマターゼ阻害剤のような抗エストロゲン療法により治療される
しかし、これらの患者の約5分の1が10年以内に再発し、進行癌の患者ではほぼすべてが抵抗性を生じる

マンチェスター大学の研究によると、短期間の抗エストロゲン薬は腫瘍の増殖を減少させるものの、それはNOTCH4というシグナルがドライバの乳癌幹細胞の活性を増大させるという

乳癌患者由来のマウス異種移植と培養細胞での実験結果は、癌幹細胞はNOTCH4の存在によって抗エストロゲン療法を回避することを示した
治療前の患者の腫瘍でのNOTCH4のレベルの高さは、乳癌の転移ならびに予後の悪さと関連があった

今回の結果は、抗エストロゲン療法への抵抗性がNOTCH阻害剤と組み合わせて癌幹細胞を標的にすることにより克服できる可能性を示唆する
この癌幹細胞はNOTCH4に依存するため、それはアキレスの踵として利用できる

研究のチームリーダーであるRob Clarke博士は言う
「タモキシフェンは腫瘍の増殖を抑え、NOTCH阻害剤は癌幹細胞の数を減らす
標準療法とNOTCH経路の阻害剤の組み合わせはER+乳癌の治療を改善して、抵抗性による再発を防ぐだろう」


重要なことに、NOTCH4とALDH1に関するテストはどの乳癌が抗エストロゲン療法に抵抗し、そしてどの患者が組み合わせ療法によって最も利益を得るかを予測できるという

「今回の発見を確認するには時間が必要だが、NOTCH阻害剤general inhibitorsは既に乳癌で臨床試験中である」


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2015.08.050
Anti-estrogen Resistance in Human Breast Tumors Is Driven by JAG1-NOTCH4-Dependent Cancer Stem Cell Activity.
ヒト乳癌における抗エストロゲン療法への抵抗性は、JAG1-NOTCH4に依存的な癌幹細胞活性によって駆動される


Highlights
・抗エストロゲン療法は、選択的に乳癌幹細胞BCSCsを増大させ、Notchシグナル伝達を活性化する
・Notch経路の活性化とALDH1は、抗エストロゲン療法の失敗を予測する
・Notch4を標的にすることは乳癌幹細胞の集団を減少させる
・Notch阻害剤は、ER+腫瘍の再発を阻害するか抵抗性を克服する可能性がある

Summary
今回我々は、短期の抗エストロゲン療法/タモキシフェンまたはフルベストラントは細胞増殖を抑制するが、JAG1-NOTCH4受容体の活性化を通じて癌幹細胞の活性を増大させることを細胞サンプルならびに異種移植で示す
このメカニズムを支持するものとして、高レベルのALDH1はタモキシフェンで治療した女性の抵抗性を予測し、NOTCH4/HES/HEY遺伝子の徴候は応答/予後の悪さを予測することを、我々は2つのER+患者コホートにおいて実証する


Figure 1
ALDHの発現が低い場合はタモキシフェンが有効だが、ALDHが高い場合はタモキシフェンが効いていない

Figure 5
タモキシフェンがER+癌細胞を全滅させて、あとにはALDH+JAG1+NOTCH4+ER-の乳癌幹細胞が残ってそれが再発につながる



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b83fcd1f83b816bd98dc2ddaa06e1693
乳癌の幹細胞/BCSCには、EMT(CD24-CD44+)とMET(ALDH+)という2種類の状態がある
 


ミトコンドリアとNKT細胞の活性化

2015-09-25 06:28:56 | 免疫
Novel role of mitochondria identified in immune function

September 18, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150918083115.htm

スクリップス研究所/The Scripps Research Institute (TSRI) の研究者は、RIPK3というキナーゼの新しい役割を発見した
RIPK3はネクロプトーシスという細胞死に関与することが知られているが、ミトコンドリアと免疫系との間のシグナルも中継する
今回の研究は、このクロストークが腫瘍への免疫応答を開始するために重要であるだけでなく、自己免疫疾患につながるような炎症応答の調節にとっても重要であることを示す


RIPK3はネクロプトーシス/necroptosisと呼ばれる細胞死を制御し、ネクロプトーシスは有害な変異や感染から人体を守っている
しかしながら、RIPK3の免疫系における役割を完全には理解されていなかった

RIPK3を欠損するマウスで実験したところ、RIPK3はNKT細胞の活性化を調節することがわかった
NKT細胞は自己免疫疾患の発症と癌の破壊の両方に関わる免疫細胞である

RIPK3はネクロプトーシスを直接は引き起こさず、
代わりにRIPK3はミトコンドリアの酵素であるPGAM5の活性を調節してNKT細胞で炎症性サイトカインの発現を引き起こす

科学者たちの知る限り、これはミトコンドリアとNKT細胞との間の経路を示す初めての研究である
この経路を理解することでNKT細胞をうまく制御して腫瘍を攻撃する方法を開発できるかもしれない

また、今回の研究はこの経路に介入interveneして炎症を抑制する方法の存在を示唆する
実際、RIPK3を欠損させたマウスまたは阻害したマウスは急性肝臓障害の誘導から保護された


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms9371
Regulation of NKT cell-mediated immune responses to tumours and liver inflammation by mitochondrial PGAM5-Drp1 signalling.

Abstract
RIPK3キナーゼはNKT細胞のサイトカイン産生機能にとって重要だが、それはPGAM5ミトコンドリアホスファターゼの活性化を介する

RIPK3: receptor-interacting protein kinase 3
PGAM5: mitochondrial phosphatase phosphoglycerate mutase 5
※PGAM5はムターゼmutaseという名称だが、ムターゼとしての活性はなくホスファターゼとして機能する

RIPK3によって仲介されるPGAM5の活性化は、NFATの核への移行ならびにDrp1の脱リン酸化によってサイトカインの発現を促進する
(Drp1はミトコンドリアの恒常性homoeostasis/homeostasisにとって重要なGTPアーゼ)

Ripk3−/−マウスは転移腫瘍細胞に対するNKT細胞の反応が低下し、
RIPK3の欠失deletionならびにDrp1の薬理学的阻害はどちらもNKT細胞を介する急性肝障害の誘導からマウスを保護する

※実験ではα-ガラクトシルセラミド/α-galactosyl ceramide/α-GalCerによってNKT細胞を活性化させて、サイトカイン(IFN-γ, TNF, IL-4)を発現させている

まとめると、今回の研究はNKT細胞の活性化においてRIPK3-PGAM5-Drp1/NFATシグナル伝達に関する重要な役割を同定するものであり、
さらに、RIPK3-PGAM5シグナル伝達がミトコンドリア機能と免疫シグナル伝達との間のクロストークを仲介することを示唆する


Results
TCR signalling regulates RIPK3-mediated NKT cell activation

T細胞受容体/TCRを介するPLCγとVav-1シグナル伝達は、TGF-β-activated kinase 1 (TAK1) を活性化させる
TAK1は、T細胞の発達と活性化の調節に関してTCRシグナル伝達を統合する際に関与する
TAK1はRIPK3の上流に作用してその活性を調節し(47、そしてTAK1の活性化にはアダプタータンパク質のTAK1-binding protein 2 (TAB2) が必要である(48, 49


まとめると、今回の結果はT細胞受容体に依存的なRIPK3-PGAM5-Drp1シグナル伝達がNKT細胞を介する免疫応答に深く関与する (Fig. 9i) ことを示す
このシグナル伝達の中心軸/axisにはPLCγ, Vav-1, TAB2が必要であり、このシグナル伝達はNFATの核移行とDrp1の脱リン酸化を促進することにより炎症性サイトカインの発現を誘導する

PGAM5はミトコンドリアの外膜に局在することを考慮すれば、我々の研究結果はこのホスファターゼが
癌や急性の炎症性疾患のような疾患における
NKT細胞のミトコンドリア機能とサイトカイン産生との間のクロストークの調整において
重要な役割を演じることを示唆する



Figure 9

(i) A model of RIPK3-PGAM5-Drp1-mediated NKT cell activation.

[NKT細胞]
 T細胞受容体→カルシニューリン,RIPK3→NFAT,Drp1→サイトカイン産生
 


関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4229f11c7beae7aa3401732c2526dc74
高脂肪に加えてコリンが不足した食生活を続けていると、NKT細胞が分泌するLIGHT(TNFSF14)が脂肪肝を引き起こし、CD8T細胞とNKT細胞が肝細胞を傷害して炎症が起きる



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/9449
RIPK3はネクローシスに非依存的にサイトカインの産生および組織の修復を促進する
 

関連サイト(pdf)
http://www.astellas.com/jp/byoutai/other/reports_h21/pdf/14_imai.pdf
パーキンソン病原因遺伝子産物PGAM5がミトコンドリアの機能を維持する分子メカニズムの研究
 

ミトコンドリアが抗癌剤への抵抗性と関連する

2015-09-24 06:26:52 | 癌の治療法
Drug resistance in cancer patients linked to oxygen-bearing molecules in body, study finds

September 14, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150914102933.htm

ジョージア州立大学の研究によると、抗癌剤への抵抗性とミトコンドリアによる活性酸素種/ROSに直接のつながりが発見された
持続的sustainedに化学療法を受けた患者ではROSのレベルが高くなり、それは薬剤抵抗性と相関するという
ジョージア州立大学のOkonたちは、患者が抗癌剤に抵抗性になりそうかどうかを調べるために『正常』な状態でのROSレベルを計測する必要があると提案する


ROSは人体の酸化還元システムによって調節され、正常なレベルでは有益であり必要だが、癌のような病的状態下では調節のバランスは変化する
古典的な化学療法や放射線療法はROSによって癌細胞を破壊するように意図されているdesignedが、持続的に高いROSレベルは有害にもなり、それによって細胞の変化を促進して正常な細胞にさえ遺伝子の異常を引き起こしてやがて変異させるという


腫瘍は抗癌剤に応答しなくなるが、その理由は癌細胞が代謝を変化させて適応し、生存して増殖するからである
ミトコンドリアは細胞の代謝を制御しているが、抗癌剤のような外因にさらされると正常な機能をそれに適応させ、薬剤への抵抗性を促進する異常な機能を開始する


JBCで最近発表された彼らの研究では、肺癌細胞のgefitinib(イレッサ)への抵抗性はミトコンドリアの機能異常ならびにROSの増加と相関することが証明された

抗癌剤への抵抗性に寄与する他の要因も存在するが、ROSはこのプロセスの中心となる代謝的イベントにおいて重要であるとOkonは言う


http://dx.doi.org/10.1016/j.phrs.2015.06.013
Mitochondrial ROS and cancer drug resistance: Implications for therapy.


Abstract
Firstly, ROSは癌の表現型に著しく影響する
Secondly, 癌細胞を殺すROSの性質は、シグナルネットワークにも影響する
Thirdly, ROSと遺伝子不安定性の間には強い相関が存在し、不安定性は変異を促進する可能性がある
Finally, ミトコンドリアのROSは抗癌剤への抵抗性に関与することが示唆する観察が増えつつある

ミトコンドリアは癌細胞の代謝的酸化還元の変化を調節する重要な要因である
それはまるで諸刃の剣であり、ミトコンドリアのROSによる混乱は有益でもあり有害にもなりうる
しかしながら、ROS特異的な癌治療の利用の利益は主要な挑戦のままである


Graphical abstract
抗癌剤への抵抗性に寄与するプロセスの中心にはミトコンドリアROSがある
ミトコンドリアROSは、酵素の活性と機能、遺伝的不安定性、シグナル伝達ネットワークに影響する



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25681445
Gefitinib-mediated reactive oxygen specie (ROS) instigates mitochondrial dysfunction and drug resistance in lung cancer cells.

>gefitinibを介するROSはEMTと相関し、ミトコンドリアの形態と機能にも顕著な混乱striking perturbationが見られた

>抵抗性だったクローンからのgefitinibの除去は、EMT遺伝子の発現の正常化と相関した

腫瘍の免疫回避をエピジェネティックに阻害する

2015-09-23 06:50:39 | 癌の治療法
Switched before birth: Study shows protein creates tumor-fighting cells

September 14, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150914102738.htm

腫瘍はFoxp3+の制御性T細胞/Tregを作るよう刺激して、キラーT細胞を抑制して免疫系を回避する

その解決策の一つが細胞表面のタンパク質、グルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体/glucocorticoid-induced tumor necrosis factor receptor/GITRである
GITRはFoxp3+Treg細胞を作らせないように妨害し、同時に未成熟なT細胞から腫瘍を殺す活性化Th9細胞へ分化するように促進して、Th9は腫瘍と戦うためのIL-9を発現させることが知られていたが、そのメカニズムは不明だった


Houston Methodist Hospital、シカゴ大学、コーネル大学の共同研究により、GITRシグナル伝達は未成熟なT細胞/ナイーブT細胞のゲノムのヒストンタンパク質からアセチル基が除去されるかどうかを制御することが判明した

脱アセチル化が生じるとゲノムのFoxp3+産生を調節する部分は抑制される
これによりTh9細胞になるように細胞は運命づけられ、同時にIL-9の産生も刺激する


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms9266
GITR subverts Foxp3 Tregs to boost Th9 immunity through regulation of histone acetylation.
GITRはヒストンアセチル化の調節を通してFoxp3+制御性T細胞/Tregsを覆してTh9免疫を促進する
 

PD-1免疫療法に反応するかどうかのマーカー

2015-09-23 06:12:01 | 癌の治療法
Researchers identify protein to help predict who will respond to PD-1 immunotherapy for melanoma

September 16, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150916112436.htm

Bimはアポトーシスの調整coordinateを助けるタンパク質であり、アポトーシスはT細胞を含めて多くの細胞で起きるプロセスである

T細胞上のPD-1はPD-L1と相互作用することによりBimを活性化させ、T細胞のアポトーシスを誘導する
腫瘍はPD-L1を過剰発現させて、このプロセスを利用してT細胞を殺す


Mayo Clinicの研究によると、
pembrolizumabによるPD-1阻害療法に応答した転移性メラノーマ患者は、応答しなかった患者よりも
腫瘍を標的としながらBimとPD-1を発現するT細胞が治療前から多かった

この傾向は治療の数週後に反対になることも観察された
これはどの患者をPD-1阻害療法で治療すべきかの決定を助けるためにこのような細胞の割合が計測することができることを示唆する

また、PD-1阻害療法に応答した患者respondersは、可溶性solubleのPD-L1が治療前から血中に多かった
このことはPD-1阻害療法がPD-1とPD-L1の相互作用が疾患に強く関与する際に最も有効であることを示唆する
 


脳内のコレステロール排出が認知症に重要

2015-09-22 06:49:14 | 
Modulation of brain cholesterol: New line of research in Alzheimer's disease treatment?

September 14, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150914114643.htm

アルツハイマー病の特徴の一つはアミロイドプラークで、もう一つはタウタンパク質の変性である
そしてアルツハイマーで病態生理学的に重要なのはコレステロールである

フランスの複数の研究チーム (Inserm/ CEA/ University of Lille/ University of Paris-Sud) は、脳内の過剰なコレステロールを除去する酵素の過剰発現がアルツハイマー病のタウタンパク質に対して有益な作用があり、疾患を完全に治療correctできるかもしれないことをげっ歯類を使った2つの研究で示した


脳内の過剰なコレステロールはBBBを自由に越えることはできない
このコレステロールを排出するためには
CYP46A1遺伝子がコードするコレステロール-24-ヒドロキシラーゼ/cholesterol-24-hydroxylaseという酵素によって
24-ヒドロキシコレステロール/24-hydroxycholesterol (24-OHC) に変換される必要がある


研究では初めに
ウイルスベクターのAAV-CYP46A1により
アミロイド病変amyloid pathologyのマウスモデルであるAPP23マウスを治療correctした
ゆえに、CYP46A1はアルツハイマーの治療標的であるように思われる

それとは反対に、
AAVウイルスベクターにより
マウスの海馬でCYP46A1をアンチセンスRNAで阻害したところ、
 Aβペプチドの産生、
 異常タウタンパク質、
 神経細胞死、
 海馬萎縮
の増加が誘導されて記憶障害が生じた


これらの結果は疾患におけるコレステロールの役割を実証するものであり、CYP46A1の治療標的としての関連性/妥当性relevanceを確認する
今回の研究から研究チームはアルツハイマー病への遺伝子治療アプローチ、脳内へのAAV-CYP46A1ウイルスベクター投与を提案する


http://dx.doi.org/10.1093/hmg/ddv268
Cholesterol 24-hydroxylase defect is implicated in memory impairments associated with Alzheimer-like Tau pathology.

アルツハイマー病患者では、血漿中ならびに脳脊髄液中の24-ヒドロキシコレステロール/24S-hydroxycholesterolの濃度が健康な対照群よりも低い


http://dx.doi.org/10.1093/brain/awv166
CYP46A1 inhibition, brain cholesterol accumulation and neurodegeneration pave the way for Alzheimer’s disease.

我々はshort hairpin RNA/shRNAをコードするAAVベクターを直接マウスのCyp46a1に対して使い、通常のマウスの海馬のニューロンでCyp46a1の発現を減少させた
これによりニューロンでのコレステロール濃度は増加し、その後、ニューロンの死によって認知障害と海馬萎縮が生じた

ニューロンが死ぬ前、
アミロイドタンパク質前駆体の脂質ラフトlipid rafts へのリクルートは促進され、
β-C-末端断片とAβペプチドの産生につながった
タウの異常リン酸化ならびにERストレスも観察された

アルツハイマー病のマウスモデルの一つであるAPP23マウスにおいて
Cyp46a1発現の阻害後にAβペプチドの量は増加した
そしてニューロンの死は通常のマウスよりも広範囲だった

今回の結果は
脳内でニューロンのコレステロールは
アルツハイマー病の誘発または悪化の一因である可能性を示唆する



関連サイト
http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&view=article&id=4858:2014120&catid=20&Itemid=98
>コレステロール異常でアルツハイマー病リスク増大
>被験者のアミロイド値を評価した結果、空腹時のLDLコレステロール値が高く、HDLコレステロール値が低いほど、脳内のアミロイド斑の蓄積が多かった。



関連サイト
http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&task=view&id=2878&Itemid=37
>HDLコレステロールは数値よりも機能が重要
>HDLコレステロール値が高いことよりも、それがどのくらい機能しているか、つまり体内の過剰なコレステロールを効率よく排除できるかどうかが重要
 

L-DOPA療法により運動障害が起きる理由

2015-09-22 06:16:18 | 
Major complication of Parkinson's therapy explained

September 10, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150910131928.htm

コロンビア大学メディカルセンター/CUMCの研究チームはパーキンソン病マウスモデルで新たな方法を使い
線条体から黒質への遠心性結合striatonigralのニューロンが抑制性の神経伝達物質であるGABAに応答しなくなると運動障害が生じることを発見した
これは運動を障害する副作用を妨げるか遅らせるためにこれらのニューロンの活性を調整することが有効である可能性を示唆する
研究の論文はNewron誌のオンライン版に掲載された


パーキンソン病は、特に黒質substantia nigraのニューロン細胞死によって起きる
黒質のニューロンでは神経伝達物質のドーパミンが作られていて、このドーパミンがなくなるとニューロンの発火に異常が起きて運動を制御する能力が損なわれる

それに対してL-DOPA補充療法は脳でドーパミンに変換されて治療効果を発揮するが、しかし多くの患者では結局は運動が制御不能になる


過去の多くの研究では、パーキンソン病の運動障害の原因としてドーパミン受容体に注目してきた
ドーパミン受容体は脳に残っていて、L-DOPA療法に対してやがて過剰に反応するようになる
しかしCUMCチームは
ドーパミンがない時に大脳基底核ニューロンがどのようにして動きを調節するのかを調べようとした


「ドーパミンニューロンは、大脳基底核basal ganglia(線条体・淡蒼球・視床下核・黒質緻密部/網様部)を調整する」
Anders Borgkvist, PhDが説明する
「パーキンソン病患者では回路がまだ機能しているため、この回路の他の部分の動作が異常なのだろうと長く考えられてきた」

しかしながら、これまでは大脳基底核の特定の部分を選択して刺激する方法がなく、ドーパミンがなくなった時に何が起きるのかを調べることができなかった
今回の研究でCUMCチームは光を使ってニューロンを制御する光遺伝学optogeneticsというまったく新しい方法を利用した
これにより、長い間ドーパミンが失われると線条体から黒質へ接続するstriatonigralニューロンはGABAに応答する能力を失うことが判明した
この影響は短期間のドーパミン喪失では見られなかった


「線条体から黒質へ接続するstriatonigralニューロンが正常に働いていると、
それは大脳基底核へのブレーキとして作用して、不要な動きを停止させる」
Dr. Sulzerは言う

「しかし、ドーパミンが失われると、線条体から黒質へ接続するstriatonigralニューロンはそれを補おうとして最終的にGABAへの応答性を失う
我々の仮説は、L-DOPAがシステムに加えられると不要な動きを濾過filterする/不要な動きのスイッチを切る能力が失われるということである」


「我々の発見はGABAとGABA受容体が線条体から黒質へ接続するstriatonigralニューロンにまだ存在することを示唆する」
Dr. Borgkvistは言う

「そこで疑問が生じる。なぜそれが機能していないのか?」


「我々か、他の研究室が、その答えを見つけるだろうと私は考えている
いずれにしてもIn any case、その意味はこの欠陥defectが修正可能correctableであるということだ
患者がL-DOPAを使い続けることができるように我々は運動障害を防ぐか少なくとも遅らせることができるだろう」


「パーキンソン病患者は初めは運動障害を生じないが、それもわずか数年間のことである」
Stanley Fahn, MDは言う

「患者がL-DOPAの開始を遅らせたい主な理由は、できるだけ長く運動障害dyskinesiasを避けたいからである
今回の発見はこの運動障害dyskinesiasを治療するか妨げる方法の可能性への道を開く
もしそのような方法が発見されれば、患者はおそらく早く治療を受けてより早く生活の質を改善しようとするだろう」


http://dx.doi.org/10.1016/j.neuron.2015.08.022
Loss of Striatonigral GABAergic Presynaptic Inhibition Enables Motor Sensitization in Parkinsonian Mice.

Highlights
・ドーパミン脱神経/ドーパミン神経支配の喪失dopamine denervationは、 線条体から黒質への接続striatonigralを介した運動活性化の感受性増大を可能にするenables sensitized striatonigral-mediated motor activation
・ドーパミン脱神経は、線条体から黒質への接続striatonigralによるシナプス活性の増大につながる
・線条体から黒質への接続striatonigralでのGABA放出は、GABAB自己受容体autoreceptorsによって制御される
・ドーパミン脱神経は、GABABを介した線条体から黒質への接続striatonigralの活動の正常な制御を妨げる

※striatonigral: 線条体黒質の。線条体から黒質への遠心性結合についていう
※nigrostriatal: 黒質線条体の。黒質(特に緻密部)から線条体に向かう結合についていう

※striatonigral fibers: 線状体黒質線維。尾状核や被殻から出て主に中脳黒質の網様体に終わる線維。主にGABAとサブスタンスPが神経伝達物質として使われる


Summary
パーキンソン病においてドーパミンニューロンの変性は運動減少hypokinesiaを引き起こすが、ドーパミン補充療法/DA replacement therapyは、自発的/非自発的振る舞いを悪化させうるcan elicit exaggerated voluntary and involuntary behaviors
その理由は、 線条体に存在する投射ニューロンstriatal projection neuronsにおけるドーパミン受容体の感受性sensitivityが促進されるためである

線条体でドーパミン受容体D1を発現する中型有棘ニューロン/striatal D1 receptor-expressing medium spiny neurons (MSNs) は黒質網様部/substantia nigra reticulata (SNr)に直接投射しているが、
今回我々は半パーキンソン症候群マウスhemiparkinsonian miceではこのMSNsニューロンがGABAB受容体による緊張性/持続性tonicのシナプス前阻害presynaptic inhibitionを失うことを明らかにした

前シナプスGABAB応答がなくなると、線条体中型有棘ニューロン遠心性神経MSN efferentsから黒質網様部SNrへのGABAリリース刺激が強められpotentiates evoked GABA release、運動増感motor sensitizationを促進する

このオルタナティブなメカニズムは、パーキンソン病の薬理療法PD pharmacotherapyにおいてシナプスが標的synaptic targetになる可能性を示唆する


直接路
 [黒質緻密部]─(ドーパミン)→[線条体]<D1受容体>中型有棘ニューロン/MSNs─(GABA)─┤[黒質網様部/SNr]─(GABA)─┤[視床]

 

スーパーコンピューターで阻害剤を探し出す

2015-09-21 06:31:41 | 癌の治療法
New drug-like compounds may improve odds of men battling prostate cancer, researchers find

New drug-like compounds have low toxicity to noncancerous cells, but inhibit the human protein often responsible for chemotherapy failure

September 8, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150908133313.htm


(ヒトP-gpに結合して、培養前立腺癌細胞の化学療法への抵抗性を無効化する化合物)

サザンメソジスト大学の研究者は、P-gpを阻害するように思われる300の化合物を高性能メインフレームにより選び出し、
その内38をラボでテストして、4つがP-gpを生化学的機能を阻害することを発見した

次に、パクリタキセルに比較的感受性がある前立腺癌の系統において4つの化合物のそれぞれがどのように影響するかをテストした
また、既に多剤耐性になっている細胞系統でもテストした
実験の結果、4つの内3つが、多剤耐性の癌細胞の感受性を、多剤耐性ではないそれと同レベルまで戻せることがわかった

動画
https://www.youtube.com/watch?v=QHiCCveuAF0#t=61




http://dx.doi.org/10.1002/prp2.170
In silico identified targeted inhibitors of P-glycoprotein overcome multidrug resistance in human cancer cells in culture.

以前の研究で (Brewer et al., Mol Pharmacol 86: 716–726, 2014)、我々は超高性能コンピューターを使って4つの薬のような分子を発見した
これらは基質輸送の特にエネルギー利用段階に干渉し、P-gpによって触媒されるATP加水分解を阻害する

今回の研究では、これらの化合物の3つが培養前立腺癌細胞のP-gpを介した多剤耐性を無効化しreverse、
薬剤での治療をしていないnaïveな前立腺癌細胞に匹敵するまでに化学療法薬パクリタキセルへの感受性を回復した



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150908144140.htm
Drugs behave as predicted in computer model of key protein, enabling cancer drug discovery


(ベラパミル (緑色) はP-gpポンプを阻害するが、これまでポンプの働きを観察できなかったためにベラパミルがP-gpのどこに結合するのか正確には知られていなかった
サザンメソジスト大学/SMUの研究者はシミュレーションにより結合箇所を明らかにしたことを報告する)

動画1
https://www.youtube.com/watch?v=HpYR23j7lsU


動画2
https://www.youtube.com/watch?v=980FhjYotOA


画像1

タリキダル(オレンジ)によるP-gp阻害の開始

画像2

タリキダルによるP-gp阻害の終了

画像3

ベラパミル(緑色)によるP-gp阻害


http://dx.doi.org/10.1021/acs.biochem.5b00018
Multiple Drug Transport Pathways through Human P-Glycoprotein.