機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

RNAの運命を決定するタンパク質が同定される

2015-08-30 15:00:19 | 医学
Research identifies a protein that helps determine the fate of RNA

This 'reader' molecule recognizes a chemical instruction tag affixed to RNA

August 27, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150827130208.htm


(青が細胞の核、緑がHNRNPA2B1)

40年以上前、N6-メチルアデノシン/N6-Methyladenosine/m6AというタグがRNA上に発見された
m6Aはアデノシンに付加されるメチル基methyl groupであり、アデノシンはRNA配列の一部である

m6AはマイクロRNAの生成にも関与することが今では判明している

「しかし、この化学的なタグを細胞の核内で読み取るリーダーreaderは何なのかが疑問として残り続けた」
ロックフェラー大学のAlarcónは言う

スプライシングに必要なm6Aを書き込む「ライターwriter」のタンパク質は既に判明しているが、
最近の実験で新たに「リーダーreader」のタンパク質HNRNPA2B1が発見された
HNRNPA2B1はRNA上のm6Aタグを認識して、RNAをニつの方向に運命づける
一つはマイクロRNAになるようトリミングする運命であり、もう一つはタンパク質を適切に作るようスプライシングする運命である

HNRNPA2B1がマイクロRNA前駆体にm6Aタグを認識すると、
前駆体を切断する機構cutting machineryをリクルートしてプロセシングを促進する


研究者が細胞内でHNRNPA2B1レベルを低下させると、マイクロRNAの発現が全体的に変化し、多くのマイクロRNAは減少した
m6Aタグに依存的にスプライシングされるはずのRNAにも著しい影響が見られた

HNRNPA2B1はm6Aを核内で読み取ることが確認された初めてのリーダーであり、
さらに実験によるエビデンスはm6Aタグを認識する別のリーダーが核内に存在することを示唆している


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.08.011
HNRNPA2B1 Is a Mediator of m6A-Dependent Nuclear RNA Processing Events.


Highlights
・HNRNPA2B1は、核内の転写物で、m6Aを含む箇所ならびにアルギニン-グリシン-アラニン-システインモチーフ/RGAC motifに結合する
・HNRNPA2B1は、m6A依存的なプライマリーマイクロRNA/primary miRNA/pri-miRNAのプロセシングイベントを仲介する
・HNRNPA2B1とMETTL3の調整は、選択的スプライシングalternative splicingに同様の変化を引き起こす

Summary
我々はRNA結合タンパク質のHNRNPA2B1がm6Aで修飾されたRNAにin vivoならびにin vitroで結合することを発見した
その生化学的な足跡footprintはm6Aのコンセンサスモチーフと一致する

HNRNPA2B1は核内の転写産物に直接結合して、m6AのライターwriterであるMETTL3と同様の効果を選択的スプライシングに対して発揮する

HNRNPA2B1はprimary miRNA/pri-miRNAのm6Aに結合して、マイクロRNAのmicroprocessor複合体を構成するタンパク質であるDGCR8と相互作用し、primary miRNAのプロセシングを促進する


2015年3月12日

2015-03-18 23:42:38 | 医学

心臓の細胞が骨に変わることを防ぐ
Preventing heart cells from turning to bone



グラッドストーン研究所の研究者はヒトの細胞を使った実験で、心臓の血流がどのようにして弁が硬くなる心血管疾患から保護するのかを発見した。彼らはさらに、異常が起きたときにほんの一握りの遺伝子のスイッチを入れてこのプロセスを修正する潜在的な方法を特定した。これらの発見は、血流が関係する病気、例えば心臓発作と脳卒中を引き起こす動脈硬化のような病気に影響する可能性がある。

石灰化大動脈弁疾患(calcific aortic valve disease; CAVD)は心疾患の3番目に多い原因である。アメリカだけで約150万人が罹患し、10万人が人工弁置換手術を受けている。CAVDは年を取ると共に発症し、心臓弁がカルシウムを作り始めて骨のように堅くなる。科学者は長い間心臓の血流が弁と動脈の石灰化で役割を果たすことは知っていたが、それがどのようにして起きるのかは理解していなかった。

Cell誌でグラッドストーン研究所により発表される新しい研究は、健康な弁を骨のようにする原因となる一連の出来事を明らかにする。論文の首席著者のDeepak Srivastava医学博士はグラッドストーンの心血管・幹細胞研究のディレクターであり、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の小児科学心臓病専門医でもある。彼は以前、NOTCH1というマスター遺伝子の2コピーのうちの1つの破損は弁の先天性異常とCAVDを引き起こすことを発見した。

今回の研究で彼はNOTCH1が内皮細胞上でセンサーのように働くことを報告する。内皮細胞は弁と血管の内側を覆う細胞である。NOTCH1は細胞外の血流を検出して、その情報を細胞内の遺伝子ネットワークに伝える。血流によるNOTCH1の活性化はドミノ効果を引き起こし、ネットワーク内の他の多くの遺伝子をオンにするかオフにする。それにより炎症と石灰化は抑制される。しかしながら、このプロセスがNOTCH1の減少によって阻害されると、細胞は混乱して骨細胞のようにふるまい始める。弁はカルシウムをたくわえて、致命的なまでに硬くなる。

彼はグラッドストーン・ラボのBenoit Bruneau博士、Katherine Pollard博士たちとの協力で幹細胞テクノロジーを使ってCAVDの患者から大量の内皮細胞を作り、それらを健康な細胞と比較して弁細胞に育つ過程における遺伝子およびエピジェネティックな変化を明らかにした。研究者は遺伝子シーケンシングとコンピュータによりヒト内皮細胞の「ソース・コード」を開放して、そのコードがどのように疾患で阻害されるかについて研究した。

「CAVDで阻害されている遺伝子ネットワークを理解することで修正すべき箇所を特定し、疾患のプロセスを補正するための新しい療法を発見する」、グラッドストーン研究所の医学博士でUCSFの博士課程学生である筆頭著者のChristina Theodorisは言う。

大量のデータを厳密に調べることで科学者は3つの重要な遺伝子を明らかにした。それらはNOTCH1の突然変異によって変更され、その上マスター調節因子としてふるまうことで、通常は炎症と石灰化を防いでいる重要な経路をオフにする。注目すべきことに、研究者がこれらの3つの遺伝子の活動を操作すると、ネットワーク内の他のほとんど全ての遺伝子が修正された。これはCAVDの新しい治療の標的を示す。科学者たちは現在、その正常な状態に遺伝子ネットワークを回復する薬をスクリーニングしている。

「これらのマスター調節因子の特定は、CAVDの治療における大きな一歩である。
NOTCH1の突然変異をもつ人々だけでなく、弁と動脈の石灰化を経験する患者においてもである」、Srivastava博士は言う。

「石灰化がどのように発生し、そして重要な中核が何であるかを知った今、我々はどんな遺伝子を探すべきかについて知っている。それは他の関連する心血管疾患でも変異する可能性がある。」

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150312123317.htm

学術誌参照:
1.ヒト疾患モデル化は、NOTCH1ハプロ不全に関する転写・エピジェネティックな統合的メカニズムを明らかにする。

Cell、2015;

<コメント>
石灰化大動脈弁狭窄(calcified aortic stenosis)のように大動脈弁が石灰化する疾患の原因についての記事です。

Abstractによると、NOTCH1は血流によるずり応力(shear stress)を感知することで、NOTCH1が結合するエンハンサーのH3K27アセチル化を維持し、MMPs、GREM1、DKK1、CYGB、TXNRD1の転写を促進して、SOX7、TCF4、SMAD1による骨形成(BMP、TGF-β、WNT)と炎症(STAT、IRF)と酸化ストレスを抑制しています。

運動不足や筋力の低下により血流が低下すると血管や弁が石灰化しやすくなるということのようです。



2014年12月16日

2014-12-17 21:58:43 | 医学

白皮症の謎を明らかにする新しい研究
New research unlocks a mystery of albinism



「パッチクランプ法」を使った研究により、白皮症albinism)におけるメラニン産生の欠乏の根底にはメラノソームのイオンチャネルに関する問題があることが示唆された。新しく発表された研究は、よくある種類の白皮症と関連する遺伝子突然変異がどのようにメラニンの欠乏に通じるかという最初の証拠を提供する。

世界では約40,000人に1人が2型の眼皮膚白皮症(type 2 oculocutaneous albinism)である。彼らは異常に明るい毛髪と皮膚の色合い、そして視力の問題があり、日光に関連する皮膚や眼の癌になりやすい。この病態がOCA2という遺伝子の突然変異と関連することは約20年前から知られていたが、その突然変異がどのようにメラニンの欠損につながるかについては理解されていなかった。

今回の新しい研究でブラウン大学の生物学者Nicholas BellonoとElena Oanceaの研究チームは、メラノソーム上に存在するイオンチャネルが適切に機能するためにOCA2タンパク質が必要であることを示した。メラノソームはメラニンが作られて貯蔵される細胞内の小器官である。

このイオンチャネルは、帯電した塩素イオン分子をメラノソームから出入りさせる通路のようである。メラノソームにOCA2が存在しないか、OCA2に白皮症と関連する突然変異があると、塩素イオンの流れが生じない。それによりおそらく酸性度の高さが持続して、メラノソームはメラニンを産生しなくなる。



これまでメラノソームの適切な機能にとってイオンチャネルが重要であることは不明だった。その理由はメラノソームが一般にあまりに小さく、「パッチクランプ法」により電気的性質を正確に計測することができなかったためである。OanceaとBellonoはメラノソームと同類のエンドリソソーム(エンドソーム+リソソーム)のような小器官から研究を開始したが、それはパッチクランプ法で研究するには十分なくらいまで大きくできるからである。

彼らはエンドリソソームにOCA2を発現させて、塩素イオンの通過に関する電流を測定した。この実験は、OCA2タンパク質がイオンチャネルと関連するという最初の重要な証拠を提供した。

エンドリソソームを使った実験ではさらに、OCA2の突然変異V443I(443番目のバリンがイソロイシンに変わる変異)が特にイオンチャネルに影響した。その突然変異は、タンパク質の正常なバージョンと比較して塩素イオンの電流を85パーセント減少させた。

エンドリソソームは酸性の小器官だが、正常なOCA2を発現させると酸性度は減少してpHは6を超えた。この数字は、チロシナーゼtyrosinase)というタンパク質がメラノソームでメラニンを産生するために必要とされるpHである。



白皮症でOCA2のV443I突然変異の役割を本当に理解するためには直接メラノソームを見る必要があったため、彼らは有能な同僚に助けを求めた。

ペンシルベニア大学の共著者マイケル・マークスは、異常に大きいメラノソームを生じる突然変異のマウス皮膚細胞を彼らに紹介した。同じブラウン大学で研究する(works down the hall)医科学教授のAnita Zimmermanは、ウシガエルの網膜は特に大きいメラノソームを持つという情報を提供した。大きいメラノソームを使ったパッチクランプ実験により、彼らは塩素イオンチャネルが機能しないV443I突然変異の役割を確認した。

さらに彼らは、正常なメラノソームと、干渉RNAでOCA2産生を阻害したメラノソームとで塩素イオン流を比較して、OCA2の存在しないメラノソームでは塩素イオンの流れが非常に小さく、メラニンの産生も少ないことを発見した。彼らが正常なOCA2またはOCA2のV443I変異体を加えると、正常なOCA2タンパク質だけがイオンの流れとメラニン産生を回復した。

メラノソームのイオンチャネルでのOCA2タンパク質の役割の多くの詳細は依然として不明だが、この研究はメラノソームの産生を維持するための重要なメカニズムを示していると著者は言う。

記事出典:
上記の記事は、ブラウン大学によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.色素形成のために重要な、細胞内の陰イオン・チャネル。

eLife、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141216100636.htm


<コメント>
アルビノの一種ではメラニンを生成するメラノソーム内部のpHを保つために必要なOCA2が機能していないという記事です。

数年前、メラノサイト内のpHを酸性にすることでチロシナーゼ活性を低下させる化粧品がポーラから発売されていたようです。


2014年10月28日

2014-10-29 23:34:47 | 医学

新たな臨床試験データ:
多発性硬化症の候補薬は、潰瘍性大腸炎でも有望

New clinical trial data:
Multiple sclerosis drug candidate also shows promise for ulcerative colitis



潰瘍性大腸炎の候補薬RPC1063に関する新しい臨床データが本日発表された。RPC1063はスクリップス研究所(The Scripps Research Institute; TSRI)で最初に発見されて合成された新薬であり、スフィンゴシン-1-リン酸の受容体1(S1P1)に対するアゴニストである。

RPC1063は現在、中度から重度の活動性潰瘍性大腸炎の患者199例で第2相試験中である。最新の結果によれば、RPC1063を1mgで8週間投与した患者の16.4パーセントが臨床的寛解に至った(プラセボ群は6.2パーセント)。

「RPC1063はすでに多発性硬化症で著しい効能と安全性を示しているが、潰瘍性大腸炎の患者でも有望さを示したことに我々は喜んでいる」、TSRIの教授であるヒュー・ローゼンは言う。彼はEdロバーツ教授と共に、RPC-1063を発見した研究チームを指揮してきた。

RPC1063を開発するReceptos社(サンディエゴ)のスポンサーによる臨床試験は、おおむね良好な忍容性を示した。



候補薬RPC1063は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)分子ライブラリをTSRIフロリダの分子スクリーニング・センターで分析する中から得られた。用いたアッセイ・テクノロジーはラ・ホーヤにあるローゼン研究室によるものである。TSRIはReceptos社に化合物のライセンスを供与し、米食品医薬品局(FDA)の承認を受けるべくRPC1063を開発している。

今回のポジティブな結果から、Receptos社は潰瘍性大腸炎の第3相試験、クローン病の第2相試験を開始する予定である。加えて、RPC1063は多発性硬化症の第3相試験中である。

記事出典:
上記の記事は、スクリップス研究所によって提供される素材に基づく。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141028082135.htm

<コメント>
RPC1063というスフィンゴシン-1-リン酸Sphingosine-1-Phosphate; S1P)の作用を調節する新薬がIBD治療薬として開発中という記事です。

今年9月には多発性硬化症に対する第2相試験の結果も出ています。同様の機序を持つフィンゴリモドFingolimod)が既に多発性硬化症の治療薬として国内での承認を受けています


2014年10月21日

2014-10-28 23:28:29 | 医学

関節リウマチに関与する新しいシグナル経路の特定
Rheumatoid arthritis: Researchers identify new signaling pathway thought to play role



関節リウマチ(RA)は全身性の炎症を伴う自己免疫疾患であり、関節内の骨の侵食はRA患者における障害の主な原因である。

Hospital for Special Surgery(HSS)の関節炎・組織変性プログラムを担当するBaohongチャオ博士たちは全く新しいシグナル経路を発見し、RAの骨破壊に関与する可能性がある根本的なメカニズムを解明した。



近年、RA発症に関連する遺伝子を特定するためにGWASが実施され、RBP-Jという遺伝子のバリアントがRAの発症と関連することが判明した。しかし、その役割は未知のままだった。

「RA患者は健康な人と比較して、このリスク遺伝子の発現レベルがかなり低いことが明らかになった」、チャオ博士は説明する。

また、彼らはRBP-Jタンパク質が新しく特定されたシグナル経路により過剰な骨侵食を制御するメカニズムを解明した。

「我々は今回の結果にきわめて興奮している。なぜなら、この新しく特定されたRBP-Jにより制御されるシグナル経路が、RAの予防と治療のための新たな標的を提供するからである。これは基礎研究と臨床治療の両方に新しい道を開く」、チャオ博士は言う。



科学者たちはネクスト・ジェネレーション・トランスクリプトーム塩基配列決定という強力な技術を使用した。それは何千というヒトの遺伝子それぞれの発現レベルに関する情報を提供することが可能である。

「この技術は今回の新しいシグナル経路の重要な構成要素の解明につながった」、チャオ博士は言った。

学術誌参照:
1.RBP-Jは、破骨細胞形成のITAMによって媒介される共刺激に関して条件を課す。

JCI、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141021101616.htm

<コメント>
破骨細胞の形成(osteoclastogenesis)を調節するRBP-Jというタンパク質の発現が関節リウマチでは減少しているため、破骨細胞が増大して関節の破壊が促進されるという記事です。

本文によれば、破骨細胞の分化にはRANKシグナルに加えて、共刺激として主にDAP12やFcRγ受容体に伴うITAMシグナルが必要です。このITAMシグナルの必要性は、RBP-Jが適切に発現しているおかげである、というのが今回の研究の内容です。

逆に言うと、RBP-Jが発現していなければITAMシグナルという共刺激がなくてもTFN-αにより破骨細胞に分化しやすくなり、実際、関節リウマチ患者ではRBP-Jの発現が低下しています。

具体的には、RBP-JはTGF-βR1の発現を抑制しています。TGF-βR1の刺激はカルシウムシグナルにつながり、ITAMシグナルもPLCγ2を介してカルシウムシグナルにつながるため、TGF-βとITAMはお互いに破骨細胞の分化を促進します。RBP-JがTGF-βシグナルを抑制している(そしてRANKLシグナル後にはRBP-Jは低下してTGF-βシグナルを維持する)ので、破骨細胞は適切に分化することができます。
(RBP-J restrains expression of TGF-βR1 and thereby modulates cell responsiveness to TGF-β, which in turn regulates expression of PLCγ2 at the transcription level through binding of Smad2/3 to its upstream regulatory region.
Our results provide direct evidence that Plcg2(PLCγ2) is a target of SMAD2/3.)

他にも、例えばNotchシグナルは破骨細胞の形成に影響しますが、NotchもTGF-βシグナルとクロストークします。RBP-Jは、Notch、Wnt/βカテニン、NF-κB、TLR、TNFシグナル等の様々な要素の入力を受けて破骨細胞の形成を調節し、関節リウマチの発症と進行に影響を及ぼしているようです。

関節リウマチとTLRとTNFに関しては以前にも記事がありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8f334bb9fe856f6e1d461bc9fe30ec2f
>TLR5受容体はTNF-αという強力な炎症性分子を上方制御することが発見された。TNF-αはさらにより多くの骨髄性細胞を関節にリクルートして、そこで骨髄性細胞は破骨細胞(osteoclast)に変わる。

2014年10月24日

2014-10-27 22:23:11 | 医学

背中に問題がある女性の性生活を改善する新しい発見
New findings will improve the sex lives of women with back problems



ワーテルロー大学による新しい発表は、腰を痛めた女性のより良好な性生活に対して新たな望みを与える。その発表ではセックスの間の脊椎がどのように移動するかを初めて実証し、異なるタイプの腰痛症(low-back pain)で苦しむ女性にとってどのセックス・ポジションが最善かについて概説する。

この新しい勧告は、先月リリースされた男性用のガイドラインに続くものである。



腰痛の女性は後側位でのセックス(spooning)が最善のセックス・ポジションであるという考えが世間では一般的だが、ヨーロピアン・スパイン・ジャーナルで発表される今回の発見は、その偽りを暴く。

「後側位でのセックスは神経の伸張と組織への荷重を低下させると考えられてきたため、医師は伝統的に背痛の人たち全てに後側位を推奨してきた」、ワーテルローの博士候補であるナタリーSidorkewiczは言う。

「しかし我々が脊椎モーションと筋肉活性を調べたところ、後側位でのセックスは実際にはある種の背中痛の人にとって最悪なポジションの1つである可能性がある。」



今回の先駆的な研究ではCGキャラクタアニメーションの映画製作者によって用いられるような赤外線・電磁気モーション・キャプチャ・システムを組み合わせて、10組のカップルの脊椎が5つの一般的なセックス・ポジションでどのように移動するかを追跡した。

どんな運動が患者の痛みを引き起こすかという情報も加えて作られたガイドラインによれば、「伸び」に耐性がない女性、つまり背中をアーチ形にするか、うつぶせで痛くなる女性は、例えば後側位のセックスを正常位と取り替えると良い。加えて、枕は脊椎をニュートラルなのポジションに保つのを助ける。

「屈曲」に耐性がない女性、つまり足の指に触るか長期間座ることによって悪化する女性は、後側位、または犬のようなスタイルのセックスが推奨される(上体を手で支持する形態。肘ではない)。

「我々が今知っていることは、あるタイプの背中の痛みにふさわしいセックス・ポジションは、別の種類の痛みにもふさわしいとは限らないということである」、Sidorkewiczは言う。

記事出典:
上記の記事は、ワーテルロー大学によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.性交の間の女性の脊椎モーションの実証と、腰痛患者への影響の解説。

ヨーロピアン・スパイン・ジャーナル、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141024142015.htm

<コメント>
同じ腰痛でも、そのタイプによって適切な体位は異なるという記事です。モーションキャプチャを使うという本気度に惚れました。

関連記事は先月に発表されたという男性用のガイドラインについてです。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140910093215.htm

2014年10月5日

2014-10-06 23:59:55 | 医学

新しい骨粗鬆症薬の有益性を2倍にする細胞
'Unsung' cells double benefits of a new osteoporosis drug



「我々は、この薬が前破骨細胞(preosteoclasts)に影響を及ぼすことを知らなかった。そして、前破骨細胞が健康な骨を維持する際にどれほど重要であるかをまったく理解していなかった」、ジョンズ・ホプキンスの整形外科教授であるXu Cao博士は言う。



破骨細胞(osteoclasts)は骨に付着してカルシウムや他のミネラルを溶かす。

その近くで『特殊な血管』はカルシウムを受け取ってそれを体の至る所に送り、また、新しい骨形成に必要とされる栄養分をもたらす。

通常の条件下では骨吸収(こつきゅうしゅう。bone resorption)は骨再生(bone rebuilding)と慎重にバランスが取られて骨の強さを維持しているが、閉経期に入った女性はエストロゲンの減少により骨吸収が骨再生を圧倒する可能性がある。それは骨粗鬆症と頻繁な骨折につながる。



「市場の大部分の骨粗しょう症の薬は骨の吸収を遅くするが、骨の再生を促進しない」、Caoは言う。

ヒトでの臨床試験を含めた以前のデータによれば、オダナカチブ(odanacatib)という薬は、骨の再吸収に使われる酵素であるカテプシンK(CTSK)を妨害することによって骨吸収を減少させる。

驚いたことに、同じ薬が骨再生も増加させた。

それがなぜかを追求するため、Caoたちは遺伝子工学により破骨細胞とその前駆体である前破骨細胞を持たないマウスを研究した。

予想通りマウスの骨の内側は異常だったが、骨の外側の層も薄いことが判明した。さらに、骨の構築に必用な物質を輸送するために必要な『特殊な血管』がそのマウスでは十分に作られなかった。

このことは破骨細胞とその前駆体が骨の構築と骨吸収を調節していることを示唆する。



研究チームは2つの細胞タイプを別々に成長させ、その周囲で液体を集めて細胞によってリリースされるタンパク質を分析した。

その結果、前破骨細胞はPDGF-BB(platelet-derived growth factor-BB)と呼ばれるタンパク質を分泌することを彼らは発見した。それは骨を構築する細胞と特殊な血管を作る細胞の強力なアトラクターである。

予想されたように、マウスの前破骨細胞がPDGF-BBを作れないようにすると、マウスの骨は弱くなった。

「新しい建物を建設する前には、器材を持ち込むことができるように道を整える必要がある」、Caoを言う。

「同様に、骨を作る細胞が新しい骨を作り始める前に、前破骨細胞は血管を呼ぶ。」



マウスにオダナカチブの動物版であるL-235を与えると、前破骨細胞と破骨細胞の数は増加し、PDGF-BBの分泌は増加した。PDGF-BBは血管と骨を作る細胞を多く呼び寄せ、特殊な血管は増加し、骨はより厚くなった。

この薬が閉経後の骨粗しょう症で見られる骨吸収の増加と血管形成の減少を回復できるかどうか観察するため、研究者はメスのマウスで卵巣を除去して閉経期をシミュレーションした。

初めはマウスの骨が薄くなり、血管の減少が認められた。しかし薬による治療は血液中のPDGF-BBの濃度を上昇させ、骨の内側と外側の特殊な血管の数と骨全体の厚さと密度を増大させた。

Caoによれば、この薬は破骨細胞の「武器」であるカテプシンKを阻害して骨吸収を遅らせることに加えて、前破骨細胞の成熟を遅くすると思われる。それにより破骨細胞になる前の前破骨細胞がPDGF-BBを分泌する時間が長くなる。

PDGF-BBの増加により「特殊な血管」は増大し、骨を作る細胞の到着も増加する。そして骨吸収と骨再生の間の釣合いは回復する。

メルク社によって開発されたオダナカチブは、既にフェーズIII臨床試験を優れた結果で通過した。

記事供給源:
上記の記事は、ジョンズ・ホプキンス・メディシンにより提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.前破骨細胞によって分泌されるPDGF-BBは、骨形成の際に血管形成を誘導する。

Nature Medicine、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141005133652.htm



<コメント>
オダナカチブ(odanacatib)は、破骨細胞のカテプシンKを阻害するだけでなく、前破骨細胞のPDGF-BB分泌を促進して骨と血管の形成を増大させるという記事です。

上の画像はL-235を投与された卵巣除去マウスの画像で、左が未治療、右が治療後です。黄色が「特殊な血管」を表しています。

記事中の「特殊な血管」は、AbstractによればCD31とエンドムチン(endomucin)を強く発現する血管サブタイプだということです。


2014年10月1日

2014-10-03 03:15:23 | 医学

新しい鎮痛剤に向けた第一歩となる医学的な発見
Medical discovery first step on path to new painkillers



ノッティンガム大学の科学者による大きな医学的な発見は、鎮痛剤の完全に新しいタイプの開発につながる可能性がある。今回の研究から開発される薬は、現在は効果的な鎮痛剤が存在しない外傷性の神経損傷のような慢性的な痛みに苦しむ人に新しい望みを提供するだろう。



ライフサイエンス学部のルーシー・ドナルドソン博士は、癌生物学ユニットの腫瘍学教授であるディヴィッド・ベイツと共に血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor; VEGF)と呼ばれるシグナル・タンパク質に焦点を合わせた。

VEGFは外傷によって損傷を受けた組織で血管の再成長を制御する。その阻害剤は、癌や眼の病気などの異常な血管成長が生じる疾患で広く目標とされる化合物である。

ベイツ教授たちは2002年、VEGFが2つの形態を取り、スイッチのように作用することを発見した。一方は血管の成長をオンにするが、もう一方は成長を阻害する。



今回の最新の研究では、VEGFの2つの形態が血管に作用するだけでなく、痛みを制御する感覚神経にも異なる影響を与えることを初めて示した。研究によれば、血管成長を促進するVEGFは痛みを引き起こす一方で、血管成長を阻害するVEGFは痛みを抑制する。

研究者が注目したのは、このVEGFの2つのタイプはどのように機能し、そして人体はなぜどちらか1つの形態を選んで作るのかという点である。

研究者は動物モデルで「痛みを促進するVEGF」から「痛みを阻害するVEGF」へと切り替えることが可能であった。彼らは現在、その切り替えをヒトでも再現するための化合物を調査している。

その化合物は新薬のための基礎となり、ヒトの臨床試験でテストされることになるだろう。

記事供給源:
上記の記事は、ノッティンガム大学によって与えられる資料に基づく。

学術誌参照:
1.VEGF-A mRNAの選択的スプライシング(alternative splicing)の調節は、鎮痛剤に向けた治療的な標的である。

Neurobiology of Disease、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141001102637.htm



<コメント>
VEGF-Aは血管新生だけでなく、神経の保護や痛みの抑制にも関与しているという記事です。

ベバシズマブ(bevacizumab)のようなVEGF-A阻害剤や、バンデタニブのようなVEGF受容体阻害剤は痛みを引き起こしやすいという臨床的な観察があり、今回の研究につながったようです(ベバシズマブの副作用には神経痛や関節痛、背部痛、筋骨格痛、四肢痛、側腹部痛などがあります)。

本文によれば、VEGF-AにはVEGF-A165aとVEGF-A165bという2つのスプライシングバリアントが存在し(数字はアミノ酸の数)、両者のバランスはSRPK1キナーゼによるSRSF1(Serine/Arginine-Rich Splicing Factor 1)のリン酸化によって調節されています。

DRG(dorsal root ganglion; 後根神経節)ニューロンでは、VEGF-A165aはVEGFR2受容体(KDR遺伝子)に結合するとともに、(エキソン7と165bには存在しないエキソン8aにより)neuropilin-1(NRP1遺伝子)と相互作用することでPKCの活性化を介してTRPV1をリン酸化させ、チャネルからのカルシウム流入(influx)を促進し、痛みの閾値(threshold)を低下させて痛覚過敏(hyperalgesia)にするとあります(実験ではvon Frey hairにより計測)。


2014年9月22日

2014-09-24 06:32:09 | 医学

マイクロRNAの模造品により肺線維症の影響を覆す
Reversing the effects of pulmonary fibrosis with a microRNA mimic



エール大学の研究者は肺線維症の新しい治療法を研究している。その治療ではマイクロRNA(miR-29)の模造品を使用し、それは静注により肺組織に送られる。

疾患のマウス・モデルでmiR-29は肺線維症を抑制するだけでなく、数日後に線維症から回復させた。



「このマイクロRNAの模造品(mimicry)は血液に注入すると肺まで届き、その影響は持続する。それが線維症を予防するだけでなく回復させることができたので、我々はきわめて感銘を受けた」、エール大学医学部の教授であるNaftaliカミンスキー博士は言う。

今回の研究はエール大学とmiRagenセラピューティクス社(コロラド州ボールダー)の共同研究である。miRagen社は心臓線維症の治療薬としてmiR-29を開発していた。

カミンスキーの研究グループは肺線維症とマイクロRNAについての研究を開拓し、miR-29の可能性を見出した。エヴァ・バンRooijは心臓線維症におけるmiR-29の役割を発見した科学者であり、論文のシニア共著者である。

オランダのHubrecht研究所で働くバンRooijは言う。

「全ての証拠は、miR-29が肺線維症のマスター調節因子であることを示している。」



かつてはまれな疾患とみなされた特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis; IPF)は現在米国で20万人以上が罹患し、毎年およそ3万人がIPFで死亡する。

診断からの生存期間の中央値は3年から5年である。そして疾患を取り消す治療は存在しない。

学術誌参照:
1.マイクロRNA模造品は、肺線維症を阻止する。

EMBO Molecular Medicine、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140922181333.htm

<コメント>
マイクロRNAの模造品(mimicry)を投与することで実際にマウスの体内のマイクロRNAレベルが上昇し、ブレオマイシン(bleomycin)による肺線維症(pulmonary fibrosis)から回復したという記事です。

論文によると、気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage)液中の炎症性サイトカインIL-12、IL-4、G-CSF、さらにIGF-1のレベルが低下し、好中球、リンパ球、マクロファージの数が抑制されたようです。

ブレオマイシンによって発現が増加したコラーゲン合成に関与する遺伝子(Col1a1、Col3a1)の発現も抑制されました(Col1a1はmiR-29の直接の標的)。

抗癌剤として使われるブレオマイシンの副作用の間質性肺炎は予後が悪く、半数以上が死亡すると医学大辞典にあります。

2014年6月10日

2014-09-17 17:10:22 | 医学

光を使って非侵襲的にブドウ糖、脱水、脈拍をモニターする新しい腕時計型生物測定器
New biometric watches use light to non-invasively monitor glucose, dehydration, pulse



散乱光(scattered light)を利用して生体計測(biometrics)をモニターする新しいウェアラブル・デバイスが開発された。

1つはブドウ糖と脱水を追跡し、もう1つは脈拍をモニターする。

このブドウ糖センサーは、直接的だが非侵襲的にブドウ糖濃度を測定することができる、最初の着用可能なデバイスである。

脈拍モニターは、現在の腕時計型モニターを越えるよう改善された。現在のモニターは、着用者が動いているときはエラーにより感度が高くなかった。



2つの論文で記述される腕時計は、両方ともいわゆる「スペックル」効果を利用する。スペックルはレーザー光が粗い表面で反射するか、あるいは不透明な素材から散乱する時の像に生じる粒状の干渉波であり、それは干渉により斑点状の模様を生じる。

「スペックルパタンは流れの変化により変化する」、オランダDelft工業大学でオプティクス・リサーチ・グループの院生である生物医学エンジニアのMahsa Nematiが説明する。

それらの光の変動は有益な情報源であると彼女は言う。



腕時計様のデバイスはレーザーとカメラから構成され、レーザー光は手首の動脈の近くで皮膚を照らして光の波面(wavefront)を生成し、カメラは皮膚から後方散乱される(backscattered off)光の経時的な変化を測定する。

そして血液に存在する他の化学物質とは異なり、ブドウ糖はいわゆるファラデー効果(Faraday effect)を示す。このことは、デバイスに取り付けられる磁石によって生じる外部の磁場が存在する場合、ブドウ糖分子は波面の偏光(polarization)を変化させ、したがって、結果として生じるスペックルパターンに影響することを意味する。

これらの変化したパターンを分析することでブドウ糖濃度を直接的に測定できるようになる。



Zalevskyたちはデバイスの読み取りの誤りを減少させるよう改良を研究している。

「生体での測定の約96パーセントは、医療基準グルコメーター・デバイスの読み出しと比較して15パーセントの偏差の範囲内にあった」、Zalevskyは強調した。

「エラーの主因は、使用者の手首上でのデバイスの安定性である。我々は、この感度を低下させうる正確なキャリブレーションとモーション・キャンセル法を導き出すために現在努力している。」

研究チームは、デバイスの商業的なバージョンが2~3年以内に市場に届くと予想している。

学術誌参考文献:
1.ブドウ糖濃度と脱水レベルを検出する非接触光学センサーの改善。

生物医学的光学エクスプレス、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140610122012.htm


<コメント>
スペックル(speckle)というレーザーが反射する材質に応じた干渉パターンを計測することで、非侵襲的に血糖値等を計測できるデバイスが開発中であるという記事です。

写真を見る限りでは数年以内にウェアラブルになるのは無理そうな印象ですが、家庭用の据え置き装置でも十分過ぎるほど使えると思います。


2014年9月15日

2014-09-17 10:35:02 | 医学

脊髄性筋萎縮症の新しい治療薬の開発と、その効果の証明
Researcher develops, proves effectiveness of new drug for spinal muscular atrophy


「我々の研究室が脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy; SMA)と戦うために使用する戦略は、『リプレッサーを抑制する』ことである」、ボンド生命科学センターの研究者でミズーリ-コロンビア大学獣病理生物学部の教授であるクリスLorsonは言う。

「SMAを治療する新しい化合物、アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、疾患により影響される遺伝子の発現を修復する。」



SMAに冒された人は、SMN1遺伝子が変異して、筋肉ニューロン機能を助ける重要なタンパク質を処理する能力が欠如している。

幸いなことに、ヒトはSMN2というほとんど同一のコピー遺伝子を持つ。

Lorsonたちが開発した飛躍的な治療化合物は、不完全な遺伝子を回避して、SMN2遺伝子が筋肉ニューロン機能を助けるタンパク質を処理することを可能にする。

彼らの化合物は4月に特許権を得た。

マウスの研究では、薬は生存率を500~700パーセント改善し、重症のSMA症例で90パーセント改善した。

学術誌参照:
1.イントロン・リプレッサー・エレメント1を目標とするモルフォリノ・アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、SMAマウス・モデルで表現型を改善する。

Human Molecular Genetics、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140915165256.htm

<コメント>
脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy)で欠失しているSMN1遺伝子の代わりに、SMN2遺伝子の発現を増加させる化合物の開発についての記事です。

Abstractによると、モルフォリノ環を含むモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチドにより、SMN2イントロンの抑制性エレメント1を介した選択的スプライシングによるSMN2エキソン7スキッピングを回避することで作用するようです。


2014年9月11日

2014-09-17 04:57:10 | 医学

筋肉が萎縮する病気との戦いで発見された新しい遺伝子の標的
New genetic targets discovered in fight against muscle-wasting disease



レスター大学を中心とする国際研究チームは、不治の筋肉-萎縮病であるエメリ-ドレフュス型筋ジストロフィー(EDMD)の遺伝子の原因の一部を初めて特定した。

これまでEDMDと関連づけられた遺伝子は6つである。

厳密なスクリーニングにもかかわらず、EDMD患者の少なくとも50%は、6つの既知の遺伝子には検出可能な突然変異がない。

今回の画期的な研究により、疾患との関連がある2つの遺伝子が発見された。



シャクルトン博士によれば、EDMDの一部は細胞の核内で構造サポートネットワークを形成する「足場」タンパク質を産生する遺伝子の突然変異によって引き起こされる。

これらの遺伝子の突然変異によって疾患が起きる理由は完全には理解されていないが、1つの理論として突然変異が「足場」構造を弱めることが挙げられる。それにより筋肉細胞が絶えず収縮して弛緩するにつれて、筋肉は損傷して死んでいく。

しかしこれまで、EDMDの患者の50%ではどんな突然変異も特定されなかった。



シャクルトン博士は以下のように述べた:

「我々は、EDMDを引き起こす原因である2つの新しい遺伝子、SUN1とSUN2を特定した。これらの遺伝子によって産生されるタンパク質も、核の構造的な足場を形成する。」

変異したSUN1SUN2タンパク質は核と細胞質との連結に干渉して、筋肉細胞の中での核の異常なポジショニングにつながる。

筋肉細胞の核は通常、細胞の端の部分に「固定」されている。それはおそらく筋収縮に関与する主要な構造の邪魔にならないようにするためだろう。

核の誤ったポジショニングは核に損害を与え、筋収縮をそこなう可能性もある。それはEDMD患者で見られるような筋肉の萎縮と衰弱につながる。

記事供給源:
上記の記事は、レスター大学により提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.筋ジストロフィに関連するSUN1とSUN2バリアントは、核-細胞骨格の連結と、筋肉-核の編成を破綻させる。

PLoS Genetics、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140911135442.htm

<コメント>
エメリ-ドレフュス型筋ジストロフィー(Emery-Dreifuss muscular dystrophy; EDMD)という、筋肉の萎縮と心筋症などを特徴とする良性の遺伝性疾患についての記事です。

手持ちの医学大辞典には原因遺伝子として、EMD(核ラミナ/nuclear laminaを構成するタンパク質)とLMNAが記載されていますが、今回それに2つ加わったことになります。

SUN1とSUN2は筋芽細胞(myoblast)から筋管(myotube)への融合において、微小管(microtubule)の核である(nucleation)中心体(centrosomes)を細胞核の表面に位置設定するために重要であるということのようです。


2014年9月9日

2014-09-10 21:32:43 | 医学

摂食には習慣性があるが、砂糖や脂肪には薬のような習慣性はない
Eating is addictive but sugar, fat are not like drugs, study says



研究によれば、人々は摂食それ自体には耽溺することはできるが、高糖質または高脂肪のような特異的な食品には耽溺しない。

科学者の国際チームは、人々が食品に含まれる化学的な物質に耽溺するという強い証拠を発見しなかった。

脳はヘロインやコカインには依存するが、それと同じようには栄養分に反応を示さない。

その代わりに、人々は食べたいという心理的衝動を高めることができる。それはポジティブな感情によって引き起こされ、それを脳が摂食と結びつける。

これは行動障害であり、賭博の常習者のような状態と一緒に分類することができるとエジンバラ大学の科学者は言う。



エディンバラ大学統合生理学センターのリサーチ・フェロー、ジョン・メンジーズ博士は以下のように述べた:

「人々は過体重であることの合理的な説明を発見しようとする。そして、食品を非難することは容易である。」

「ある種の個人は特定の食品と中毒性の様の関係を持つ。彼らは健康リスクを知っているにもかかわらず食べすぎる場合がある。

我々がこの状態を物質的な中毒(substance-based addiction)というよりもむしろ行動に関する中毒(behavioural addiction)として考えるならば、治療のためのより多くの道が開かれるかもしれない。」



イェーテボリ大学の教授でNeuroFASTプロジェクトのコーディネータであるスーザン・ディクソンは、以下のように付け加えた:

「糖に習慣性があるかどうかについて多くの議論があった。しかし、どんな成分、食品、、添加物、または成分の組合せであれ、中毒性の特性を持つという意見を支持する証拠は、現在のところ非常に少ないのである。」

記事供給源:
上記の記事は、エジンバラ大学により提供される材料に基づく。

学術誌参照:
1.中毒のような摂食行動を適切に表現するのは、「食料中毒」よりもむしろ「摂食中毒」である。

神経科学及び生物行動学のレビュー(2014);

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140909093617.htm

<コメント>
糖質に依存性があるという考え方は、ネズミではともかく、ヒトでは否定的なようです。

詳しくはレビューの本文を見てください。


2014年8月21日

2014-08-27 08:26:32 | 医学

スイスへの『自殺観光旅行』、4年で2倍に
'Suicide tourism' to Switzerland has doubled within four years



自分自身の生命を奪うためにスイスへ行く『自殺観光客』の数は、4年間で2倍になったことを研究は報告する。

2008~2012年の間に合わせて31の国からの入所者がスイスでの死亡を助けられた。

ドイツ(268)と英国(126)国民が3分の2を占め、トップ10の他の国はフランス(66)、イタリア(44)、米国(21)、オーストリア(14)、カナダ(12)、スペインとイスラエル(8)である。

大半を占めるドイツと英国民は神経障害にかかっていて、例えば麻痺、運動ニューロン疾患、パーキンソン病、多発性硬化症が症例のほぼ半分を占めた。

スイス人ではない611人が2008~2012年に死亡を助けられ、その内4人を除く全てがディグニタスへ行った。

記事供給源:
上記の記事は、BMJ-ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルにより提供される材料に基づく。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140821090647.htm

<コメント>
スイスへの『自殺観光』についての記事です。

細かい内容は記事を直接ご覧になってください。

2014年8月14日

2014-08-20 06:14:18 | 医学

血液脳関門を透過する分子サイズを制御する非侵襲性の新技術
New non-invasive technique controls size of molecules penetrating the blood-brain barrier



コロンビア大学工学部の生物医学工学・放射線医学教授のエリサKonofagouは、血液脳関門(BBB)を透過する分子サイズは、音圧(acoustic pressure)、つまり超音波ビームの圧力により制御できることを初めて証明した。



現在、ほとんどの小分子薬は血管と脳組織の間にある血液脳関門を通過できない。

タンパク質または脂質シェルでコーティングされたガス入りのバブル(ミクロバブル)と、焦束超音波(focused ultrasound)の併用は、安全かつ非侵襲的にBBBに浸透できる唯一の技術である。

超音波ビームがミクロバブル(microbubble)に衝突するとそれらは振動を始め、圧力の大きさに応じて、振動を続けるか、崩壊する。



研究者たちはミクロバブル空洞形成と組み合わせた焦束超音波がBBB内への治療薬運搬に使えることを発見していたが、以前のほとんどすべての研究は1つの特異的なサイズの薬剤に限られていた(市販され臨床的に広く使われている超音波造影剤等)。

Konofagouと彼女のチームは、BBB開放のサイズを制御できる方法があることを確信していた。

Konofagouは海馬を標的として様々な大きさのデキストランを投与し、音圧を高くするほどより大きな分子が海馬に蓄積されることを発見した。

低い圧力では小さい分子が通過し、より高い圧力ではより大きな分子が通過した。

学術誌参照:
1.焦束超音波によって誘導される血液脳関門の開放のサイズは、音圧によって制御される。

脳血流及び代謝ジャーナル(2014);

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140814123614.htm

<コメント>
超音波の音圧(acoustic pressure)を変えることにより、異なる大きさの分子を海馬に届けることができたという記事です。

最大で2000kDa(200万ダルトン)、54.4ナノメートルが通過したとあります。ヒアルロン酸ぐらいでしょうか。

音圧の意味ですが、ステッドマンには「超音波において全圧力から周囲圧を差し引いた瞬時値で、単位はパスカル(Pa)。有音時の最大圧力から無音時の圧力を差し引いたもの」とあります。