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たった一つのタンパク質が自閉症の発症に広く影響を与える

2016-12-23 04:44:40 | 
Autism breakthrough: One protein's sweeping influence on development of autism revealed

December 15, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/12/161215143402.htm


(動物実験では、nSR100タンパク質のレベルを半分に低下させることは自閉症のようなふるまいを引き起こすのに十分だった

Credit: Mathieu Quesnel Vallieres)

自閉症の三分の一もの症例は脳内の単一のタンパク質が欠乏することによって説明されうることを、トロント大学の科学者は明らかにした
この研究結果は『遺伝的欠陥の多様な集団a motley crew of genetic faultsに根ざした疾患』である自閉症の治療法を開発するための、これまでに類のない機会をもたらす

※a motley crew: いろいろな人間の一団

トロントの研究者は脳の正常な発達に重要なnSR100というタンパク質(SRRM4としても知られる)のレベルを低下させることによって、マウスに自閉症様のふるまいを誘発させた
12月15日号のMolecular Cell誌で発表された今回の研究は、自閉症の人々の脳内ではnSR100タンパク質が減少していることを示した以前の研究を基にしている

※nSR100: Neural-Specific Serine/Arginine Repetitive Splicing Factor Of 100(ニューロン特異的セリン/アルギニン反復スプライシング因子100)
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=SRRM4

研究チームを率いるのはトロント大学ドネリーセンターのBenjamin Blencowe教授と、同じくトロント大学分子遺伝学のSabine Cordes教授である
Cordesはサイナイ医療システム/Health SystemのLunenfeld-Tanenbaum Research Instituteにも所属している

Cordesは次のように言う
「我々は以前nSR100タンパク質レベルと自閉症との間の関連を報告した
しかし今回我々は、nSR100レベルの低下が実際に原因causativeとして作用することを示す
これは非常に重要なことだ
ただ単にnSR100レベルを50パーセント低下させることにより、自閉症的なふるまいの特徴が観察されるのである」

また、今回のデータからはnSR100が『自閉症に寄与する様々な分子的エラー』を伝えるための中核hubとして働くことが示唆される


自閉症は一般的な神経疾患であり、人口の1パーセント以上が罹患している
自閉症は『変わった社会的行動/altered social behaviours』をすることでよく知られ、その程度は途方もなく多様でありうるために『自閉症スペクトラム障害/autism spectrum disorder (ASD)』とも呼ばれる
その発端は遺伝であるとしても原因が特定されているのは症例のほんの一部だけであり、疾患の背後にある原因はわかっていない

今回のトロント大学の研究では、nSR100タンパク質が社会的行動や自閉症の他の特徴に広範囲な影響を与えるというエビデンスがもたらされる
選択的スプライシング/alternative splicingというプロセスからは著しく多様なタンパク質が生み出されるが、nSR100は脳内で選択的スプライシングの鍵となる調節因子として働く

細胞の材料であるタンパク質は遺伝子のDNA配列にコードされているが、有用なコードは何もコードしていないDNA(ノンコーディングDNA)によってバラバラになっている
選択的スプライシングではそのような何もコードしないスペーサーが除去され、タンパク質をコードする部分が接合されて(※splice「重ね継ぎをする」「接合する」)、タンパク質のテンプレートが完成する
しかしつなぎ合わされたコードの指示書は変化することがあり、途中がいくつか抜け落ちたりすることで、単一の遺伝子から様々なタンパク質が生まれうる
このようにして細胞は、遺伝子の数よりも途方もなく多いタンパク質のツールボックスを持つことができるのである

なので、選択的スプライシングが特に脳で際立っているのは驚くべきことではない
脳の驚くべき複雑さの背後にある駆動力は、タンパク質多様性の急激な増加によると考えられているからである


nSR100を発見したのはBlencoweのチームであり、自閉症の人々の多くの脳でnSR100が減少していることも示している

今回の研究結果は自閉症が(部分的には)間違ってスプライシングされたタンパク質が脳細胞に蓄積して生じうることを示唆する
それが脳内の配線の間違いにつながり、やがて自閉症的な行動という結果になりうるのだという


今回の研究ではnSR100の不足が実際に自閉症を引き起こすかどうかを真正面からhead-onテストしようと決め、BlencoweとCordesが共同で監督/jointly superviseした大学院生graduate studentのMathieu Quesnel-VallieresがnSR100を欠くミュータントマウスを作成してその行動を研究した
その結果、驚いたことにnSR100タンパク質レベルが半分低下するだけで自閉症の行動的な特徴、つまり社会的相互作用の回避/avoidance of socialinteractionsや、雑音に対する感受性の高さを引き起こすのに十分であることを発見した
nSR100変異マウスはヒトの自閉症患者が持つ他の多くの特徴、例えば選択的スプライシングの変化や、脳内のシグナル配線の変化のような特徴を共有していた

大学院生のZahra Dargaeiやトロント大学細胞システム生物学部のMelanie Woodin教授、バルセロナゲノム調節センターのManuel Irimia博士らとの共同研究では、nSR100レベルがニューロンの活動とリンクしていることを示すことも可能だった


Quesnel-Vallieresは言う
「ニューロンの活動が上昇すると(それは自閉症の多くのタイプに当てはまるが)、nSR100がコントロールする選択的スプライシングのプログラムが乱れ、それが自閉行動/autistic behaviourの発端となる」


トロント大学で分子遺伝学の教授でもあるBlencoweは言う
「nSR100欠陥マウスの持つ大きな価値は自閉症の他の原因について説明できることであり、それらの原因がnSR100タンパク質へと収束することによってどのようにして神経生物学に影響を与えるのかの理解を助けるのである」

「我々のマウスモデルは、自閉症で不足するnSR100を回復できるような小分子をテストするための有用な実験の場/testing groundとしても役立つだろう」


Cordesは言う
「自閉症と関連する個々の変異に注目する代わりに、nSR100のような『調節の中核/regulatory hubs』を突き止めることは非常に強い影響があるpowerful
将来、自閉症患者でこのタンパク質をわずかに強めるturn upことで行動障害のいくつかを改善できるかもしれない」


http://dx.doi.org/10.1016/j.molcel.2016.11.033
Misregulation of an Activity-Dependent Splicing Network as a Common Mechanism Underlying Autism Spectrum Disorders
自閉症スペクトラム障害の根底にある共通のメカニズムとしての、ニューロンの活動に依存的なスプライシング・ネットワークの調節不全


Highlights
・nSR100/Srrm4のハプロ不全haploinsufficientのマウスは複数の自閉症様の特徴を示す
・nSR100変異マウスはシナプスの伝達ならびにニューロンの興奮性が変化する
・ニューロンの活性化は、自閉症の個々人で観察されるスプライシングの変化を誘発する
・ニューロンの活性化は、nSR100レベルを低下させることによりスプライシングを変化させる


Summary
自閉症の脳をトランスクリプトーム・プロファイリングで分析したところ、分析した人たちの3分の1以上で、ニューロン・スプライシング調節因子のnSR100/SRRM4の調節不全と、その標的であるマイクロエクソン・スプライシング・プログラムとの相関が明らかになった

nSR100の調節不全と自閉症とに因果関係があるのかどうかを調査すべく、nSR100タンパク質レベルならびにその標的スプライシング・プログラムが低下する変異マウスを我々は作成した

実験の結果、際立っていたのはこれらのマウスが複数の自閉症様の特徴(社会行動の変化、シナプス密度とシグナル伝達の変化)を示したことである

ニューロンの活動の上昇はしばしば自閉症と関連するが、それはnSR100の急速な減少、ならびに、マイクロエクソンのスプライシングという結果になる
それらは自閉症の脳で調節不全を起こしているものと著しく重複する

まとめると、我々の結果はnSR100に依存的なスプライシング・ネットワークの調節不全が自閉症の症例のかなりの割合と因果関係があるというエビデンスを提供する
このスプライシングネットワークはニューロンの活動の変化によってコントロールされる



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150401093631.htm
自閉症患者の脳ではnSR100のレベル低下とマイクロエクソンのスプライシングが相関する




関連サイト
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20150424-3/
自閉症患者の脳内ではPTPδのミニエクソンペプチドA及びB配列を含むスプライシング調節に異常がある




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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/502eb26129d1acd3872624e380fbd02b
核内でスプライシングに関与するRbfox1は自閉症やてんかん等と関連するが、細胞質のRbfox1バリアントはmRNAに結合して翻訳を調節し、Rbfox1が失われると翻訳の調節が失われて癌化する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4f9b9ec8e2dbbf4fc50e0a4097a83e31
自閉症患者から作られたミニチュア脳では、FOXG1遺伝子発現の増大により抑制性ニューロンが過剰に産生された
細胞増殖・ニューロン分化・シナプス形成に関与する遺伝子が上方調節され、細胞周期は加速し、GABA作動性の抑制性ニューロンが過剰産生された



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a09b1b207c031eeb1a6939ed733c6f07
自閉症ではオートファジー/刈り込みが抑制されている



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160211142012.htm
ADNP遺伝子の突然変異は自閉症と関連する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/dc706e6e2204d0f3b8c534f205abb7f2
カルモジュリン・MYC・代謝調節型グルタミン酸受容体に代表される3つの遺伝子ファミリーのコピー数多型が、自閉症スペクトラム障害の発症に影響する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/05c3fe31c2803ff395c2c1bf7cfd41e4
UBE3Aはリン酸が結合するとスイッチがオフになるが、自閉症と関連する変異はこの調節スイッチを破壊して常に活性化したままにする



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https://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150130092921.htm
自閉症スペクトラム障害と関連付けられた遺伝子の多型はドーパミン輸送機能を障害する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f1d4a500b4d4d020b4450fd2a87e6a35
CHD8遺伝子の突然変異がある人々は、自閉症と胃腸障害、そしてより大きな頭部と広い眼が特徴である可能性が高い
自閉症スペクトラム障害の6,176人の小児の研究では15人にCHD8の突然変異があり、これらの症例すべてに同様の外見と、そして睡眠障害と胃腸問題の問題があった。



関連サイト
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%82%AE%E3%83%B3
ニューレキシンの内因性リガンドであるニューロリギンはシナプスの成熟や機能を調整し、遺伝子改変マウスは自閉症様行動を示す。



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161028161729.htm
自閉症とミトコンドリア障害に関連
自閉症の一部にミトコンドリア遺伝子欠失の異常などが見られた




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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160107094747.htm
脊髄小脳失調症1型(SCA1)マウスのプルキンエ細胞では、シナプスの足場タンパク質であるHomer-3が低下しており、そのHomer-3はmTORC1によって調節される
「興味深いことに、mTORC1のシグナル伝達の変化は自閉症様の行動ならびに知的障害と関連する」
 


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