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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

腫瘍の形状は転移するかどうかに影響する

2016-04-30 06:06:13 | 
Shape of tumor may affect whether cells can metastasize

April 28, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160428132608.htm


(Illinois researchers found that the shape of a tumor may play a role in how cancer cells become primed to spread.

From left: materials science and engineering professor Kristopher Kilian, graduate student Junmin Lee and veterinary medicine professor Timothy Fan.

Credit: Photo by L. Brian Stauffer)

癌の腫瘍ではほんのわずかな細胞だけが離脱して体内の他の場所へ転移するが、この腫瘍の種をまくseeding細胞が活性化される際に腫瘍の端edgeの湾曲した部分curveが大きな役割を果たすかもしれないことがイリノイ大学の新たな研究によって明らかになった
様々な輪郭shapeと図形patternの組織環境を工学的に作成して研究したところ、皮膚癌細胞の培養を湾曲curvedさせるほど、幹細胞の性質を示す癌細胞がその端edgeに増加した
幹細胞的な性質は他の組織に転移するための鍵となる要素である

この研究結果は潜在的に我々の癌細胞への理解を深める可能性があり、さらには個別化されたpersonalized治療計画の開発にも役立つかもしれない
材料科学materials science工学engineeringの教授であるKristopher Kilianと獣医学の教授Timothy Fanを中心とする科学者たちによる今回の研究結果はNature Materials誌で発表された


「癌の最も危険な部分は転移である」
Kilianは言う

「癌幹細胞cancer stem cellと呼ばれる細胞は、血流を通じて他の組織へと移動して新たな腫瘍を形成することができるという致命的な性質を獲得する
そのような細胞を見つけて研究するための方法が必要だが、もっと重要なことはそれらを標的にする薬剤の開発である
なぜなら腫瘍の大部分を標的とする化学療法薬に対して癌幹細胞は抵抗するからであり、それにより再発が生じて癌は元通りになる」


Kilianのグループは組織工学が専門であり、より正確に癌のプロセスを培養皿上で研究するための腫瘍モデルを作成している
今回の研究で彼らは様々な2次元と3次元の環境で異なる輪郭と図形を持つ皮膚癌コロニーを培養し、腫瘍の形状が癌幹細胞の活性化に寄与するかどうか、そして腫瘍のどの場所に癌幹細胞が現れるかを調査した

研究の結果、癌幹細胞は工学的な腫瘍環境の『端edge』に沿って最も多く現れ、特に曲がった部分の角cornerと凸状の曲線convex curveに見られた

「これには本当に驚かされた」
Kilianは言う

「通常の幹細胞は柔らかくてsoftぐにゃっとしたsquishy内部の位置を好む
それで癌についても誰もが癌幹細胞は腫瘍の中心に存在するのだと憶測してきたassume
しかし、腫瘍が柔らかい組織に接触する箇所にできるような幾何学的な制約geometric constraintsが作る境界線perimeterがこれらの癌幹細胞を活性化するように思われることを我々は発見した」


研究者たちは腫瘍が転移する能力を確認するために、工学的に作成した環境で遺伝学的分析のような試験を数多く実施した
彼らは皮膚癌だけでなくヒトの子宮頸癌、肺癌、前立腺癌などの細胞系統でも試験を行い、形作られたpatterned腫瘍環境に対してそれらが同様に反応することを発見した

次にKilianのグループは獣医学のTimothy Fanのグループとチームを組んで、生きているマウスで皮膚癌の癌幹細胞を使った試験を行い、形作られた環境から得られた癌幹細胞は古典的な平たい培養皿から得られた癌幹細胞よりもずっと腫瘍を形成しやすいことを明らかにした


Kilianは言う
「これらの幹細胞的な性質を工学的に持たせた細胞を与えられたマウスではずっと多くの腫瘍が成長することを我々は発見した
そして肺への転移の発生率も高かったのである
実際の腫瘍でも同様にこのような種類の形状が生じる領域が細胞を活性化する可能性があり、その細胞が逃げ出してさらに多くの腫瘍を形成する
これにより外科医は成長する腫瘍の境界線/外辺部perimeterに注意を向けてlook at、腫瘍のどの部分の周囲をより多く切り取る必要があり、どの部分はその必要が無いかを評価するために形状shapeを使って判断を導くことが可能になるかもしれない」


Kilianはこの工学的に形作られた組織環境が研究者たちに癌幹細胞を発見し、培養するための新しい方法をもたらすだろうと思っている
癌幹細胞はこれまでの古典的な培養では非常にとらえどころがないelusiveもので、全細胞の1パーセント未満でしかなかったという

Kilianはさらに、この工学的な腫瘍環境は癌を転移させる細胞の発見と理解についての基礎科学を越え、個別化医療personalized medicineにおける治療にも応用できると考えている

「患者の腫瘍を培養皿で工学的に操作し、薬剤を試してみるtest outための特定の腫瘍モデルを患者自身の腫瘍の細胞を使って作れるかもしれない
患者の細胞を採取して数日以内に小さな腫瘍microtumorを手に入れて、利用可能なあらゆる薬をスクリーニングできれば、腫瘍学者は腫瘍細胞に加えて見つけにくいelusive癌幹細胞を両方とも標的とするテーラーメイドな治療を処方できるようになるだろう」

"There's a lot more work to be done,
but we're very excited about how a very simple materials property of a growing tumor might be a culprit of the disease spreading.

We think it opens up a new avenue of investigation for
drug development, guiding surgery, and understanding progression and spreading of cancer,"
Kilian said.

「癌は非常に複雑であるため、その実際の状況に置くことが鍵となる
もし微小環境がそのような癌を転移させる細胞活性化の状況をもたらすのなら、それこそが理解するために重要である」


http://dx.doi.org/10.1038/nmat4610
Interfacial geometry dictates cancer cell tumorigenicity.
界面の幾何学的構造は癌細胞の造腫瘍性を決定する

腫瘍組織の不均質な構造の中には捉えどころがない幹細胞のような細胞の集団が存在し、再発と転移のどちらにも関与する (1, 2

今回我々は細胞外マトリックスを工学的に作成し、腫瘍組織の境界線perimeterの幾何学的geometricな特徴が幹細胞様の表現型を持つ細胞集団を刺激するprimeであろうことを示す

これらの細胞はin vitroで癌幹細胞の特徴を示し、加えて原発腫瘍の成長と肺への転移のネズミ科モデルにおける造腫瘍性tumorigenicityが促進されている

また、界面の幾何学的構造interfacial geometryは細胞の形状shapeを変化させmodulate、インテグリンα5β1を通じて細胞の接着を調整し、MAPKとSTAT活性、多分化能シグナル伝達の開始に影響することを我々は示す

複数のヒト癌細胞系統での我々の結果は、界面の幾何学構造が癌細胞の運命を調節する全体的generalなメカニズムの引き金を引くことを示唆する

成長する腫瘍が可溶性のシグナル伝達経路を勝手に用いるco-opt方法(3 と同様に、
我々の研究結果は癌がどのようにして幾何学構造geometryを利用exploitして腫瘍形成oncogenesisを調整するorchestrateのかを実証する



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https://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150420130555.htm
細胞外マトリックスの硬さと癌

ハイドロゲルで硬さを変化させると、硬くなるほどTWIST1はアンカーのG3BP2から離れて核へと移行した
G3BP2を欠損させると、細胞は浸潤して転移するようになった
ヒトの乳癌サンプルでは、G3BP2が少なく硬い腫瘍ほど予後が悪かった
コラーゲンのorganizationは予後を予測し、disorganized collagenであるほど予後は良い



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/3a1c961faaef3b083a1550767793e75f
アルギン酸ゲルを使用したモデルがその最も柔らかい状態の時、正常で良性の乳房上皮細胞はその中で通常通りふるまった
しかしアルギン酸ゲルが硬くなると上皮細胞は癌関連の遺伝子の発現を上方調節し始め、細胞増殖と浸潤を引き起こすPI3K経路の活性が増大した



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https://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141217131441.htm
組織の硬さと卵巣癌の悪性化

過去の研究によれば、卵巣癌はやわらかい組織上で、より悪性化する
それは例えば腸に沿って存在する脂肪組織であり、それはこの環境が持つ機械的性質による
これは「硬い組織を好む」と思われる他の悪性癌で見られる性質とは異なる

新しい研究によると、SNAILが過剰発現するとEMTにより周囲の組織の構造/力学mechanicsとは独立して行動できるようになる

[MCF-7/Luminalタイプ]
 SNAIL発現→EMT/上皮間葉転換→細胞骨格の遺伝子発現が変化してやわらかくなる→転移↑

ただし着いた先では逆にMETをする必要がある
なぜなら、二次腫瘍を形成できるほど頑丈sturdyではないからである

TGF-βを阻害された癌細胞はさらに悪性化する

2016-04-29 06:20:06 | 
Breast cancer progression: the devil is in the details

April 27, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160427103634.htm


(Detail of breast cancer cells in 3-D culture, collectively invading into the surrounding extracellular matrix.

Credit: Diana Dragoi / Helmholtz Zentrum München)

ヘルムホルツ・ミュンヘンセンター(Helmholtz Zentrum München/Helmholtz center Munich)の研究者は、浸潤性を標的とする特定の阻害剤にさらされた乳癌の細胞がどのようにして『代わりの作用機序/alternative mode-of-action』へと切り替えてさらに悪性になるのかを説明する
Oncotarget誌で発表されたこの研究結果は、TGF-β経路に対する将来の治療アプローチを損なうものになるかもしれない


乳癌が進行するにつれ、腫瘍の細胞は乳腺を形作る組織の区画compartmentを破って進み始め、周囲の組織へと活発に浸潤invadeして拡散するようになる
Christina Scheel博士を中心とする研究チームは、I型TGF-β受容体/TGF-beta Receptor Type I (TGFBR1) を標的とする小分子阻害剤を使ってこのプロセスを阻害しようと試みた
TGFBR1は乳癌細胞に浸潤する能力を与えるシグナル伝達カスケードを中継する重要なタンパク質である

事実、そうすることで幹細胞研究所/Institute of Stem Cell Research/Institut für Stammzellforschung (ISF)の科学者はこのプロセスに関与する遺伝子のマスター調節因子master regulatorが『癌細胞の浸潤する振る舞いを引き起こす細胞プログラム』を開始できないように妨げることが可能になった
このTwist1というマスター調節因子は乳癌の進行に関与することが長く知られているが、現在のところTwist1自体を治療標的とすることは容易ではないnot amenable
したがって、研究者はTwist1が浸潤性を仲介するために依存する標的化可能な他のシグナル伝達経路を阻害することを目標にした

※「TGFβRI受容体→Twist1転写因子→ZEB1転写」という経路


乳癌細胞の適応性を明らかにする驚くべき結果
Surprising results reveal the adaptiveness of breast cancer cells

「最初、in vitroの伝統的な組織培養テクニックを使った結果は成功を示すものだった
同時にTGFBR1を阻害することによりこれまでに記述されてきたTwist1活性化による影響の多くは妨害された」
論文の筆頭著者first authorであり幹細胞研究所(ISF)のDiana Dragoi, PhD studentは言う

しかしながら、乳癌細胞をより生理的な状況に近い3次元の培養環境に移し替えたところ、驚いたことにTwist1はTGFBR1シグナル伝達が阻害されているにもかかわらず乳癌細胞を浸潤性にすることが可能になった


乳癌細胞は単一の細胞ではなく『より糸strand』のように結合cohesiveすることにより、3次元環境を浸潤して転移するもう一つの状態modeへと単純に切り替わった
加えてこれらの細胞は増殖の速度が著しく高く、離れた箇所にまき散らされたdisseminating後で二つ目の腫瘍を開始することが上手くできるようになっているequippedことが示唆される

この転移というプロセスは乳癌患者の主な死因である
転移では全身に播種disseminationが生じ、脳や骨髄、肝臓などの生命に必要な臓器で乳癌細胞が増殖して、やがて臓器は破壊される

「まとめると、TGFBR1を阻害してもマスター調節因子のTwist1が乳癌細胞を悪性にする能力を単に阻止するのではなく、さらに悪性の乳癌細胞を生み出すようにTwist1の作用を向き直させるだけであることを我々の研究は示唆する」
共著者co-authorであるAnja Krattenmacherは言う

「これらのデータは、in vivoの状態にできるだけ近いapproximateことを目指して多くの様々なパラメータをテストする入念diligentな前臨床試験の重要性を強調する
これは転移のような複雑で多段階のプロセスに干渉することを目指す時に特に重要である」
Scheel博士はそのように結論づけた

乳癌進行の複雑さにおいて、『悪魔は細部に宿る』のである
In the complexity of breast cancer progression, the devil is in the detail.


http://dx.doi.org/10.18632/oncotarget.8878
Twist1 induces distinct cell states depending on TGFBR1-activation.
Twist1はTGFBR1活性化に依存して異なる細胞状態を引き起こす

Abstract
塩基性 helix-loop-helix (bHLH) 転写因子のTwist1は、上皮間葉転換/Epithelial-Mesenchymal Transition (EMT) のマスター調節因子である
EMTは様々な発達ステージや転移性の播種に関与する細胞プログラムである

今回我々はTwist1が下流のエフェクターであるZEB1のエンハンサー領域に結合するためにはTGF-beta type-I receptor (TGFBR1) の活性化が必要であることを示す
このエンハンサーへの結合はZEB1の転写を誘発してEMTを引き起こす

TGFBR1リン酸化が阻害されると、Twist1は異なる細胞状態を作り出す
その状態の特徴は、集団的浸潤collective invasion、同時増殖simultaneous proliferation、内皮マーカーの発現expression of endothelial markersである

対照的に、TGFBR1の活性化はEMTを通じてTwist1を安定した間葉系分化転換mesenchymal transdifferentiation
へと方向づけ、それにより単一細胞による浸潤性single-cell invasionは示すが増殖能を失った細胞を作り出す

結論
Twist1によって誘発されるEMTをTGFβシグナル伝達の阻害によって阻害しても、浸潤性の獲得を全体的には阻害せず、
『単一細胞で浸潤するが増殖しないsingle-cell/non-proliferative』という状態から『集団的に浸潤して(同時に)増殖もするcollective/proliferative』という状態へと切り替えさせる

まとめると、これらのデータは一時的transientなTwist1活性化はシグナル伝達の背景contextに依存して異なる細胞状態を引き起こすことを明らかにするものであり、
浸潤性を標的とするための治療戦略としてTGFβの阻害剤を使用することに対して慎重になるべきである



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https://www.sciencedaily.com/releases/2012/09/120904121436.htm
卵巣癌細胞はTGF-β2により周囲の組織を乗っ取り腫瘍増殖を促進する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a634de2c32256ddde7e64a3859950fcb
周囲のストロマ細胞のHSF1の活性化は、TGF-βとSDF1を介して悪性化を進行させる



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https://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150408160645.htm
Id4の発現は膠芽腫の患者の生存と正の相関を示し、Id4の発現はMMP2の発現とは逆相関した
Id4─┤Twist1→MMP2→膠芽腫の浸潤



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c89e847d6ea50b57bda32e5adf76a37e
http://dx.doi.org/10.1038/nature16064
Epithelial-to-mesenchymal transition is dispensable for metastasis but induces chemoresistance in pancreatic cancer.
EMTは膵臓癌の転移に必須ではないが、化学療法への抵抗性は誘導する

EMTの原因とされる2つの鍵となる転写因子TwistとSnailを欠損させたPDACマウスモデルを作成したところ、
そのようなEMTの抑制によって、PDACでの浸潤の出現、全身への転移は変化しなかった
EMTの抑制は癌細胞の増殖の増大につながり、腫瘍のヌクレオシドトランスポーターの発現が促進される
これはゲムシタビン治療への感受性の増大につながり、マウスの全生存率が上昇する



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https://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150109093559.htm
研究チームは、皮膚の腫瘍の発癌、癌幹細胞の機能、腫瘍の進行を制御するTwist1の様々な機能を調節するメカニズムを明らかにした
正常な皮膚でTwist1は発現していないが、Twist1を消去すると皮膚癌の形成は抑制される
Twist1が低いと良性腫瘍になり、逆にその発現の高さは腫瘍の進行に必要である
Twist1は腫瘍の維持と癌幹細胞の機能の調節に必須である
Twist1の機能は様々な分子メカニズムによって調節され、癌幹細胞の機能調節におけるp53から独立した役割を同定した

http://dx.doi.org/10.1016/j.stem.2014.12.002
Different Levels of Twist1 Regulate Skin Tumor Initiation, Stemness, and Progression.

 

膵臓癌を形成する最初の段階が明らかにされる

2016-04-26 06:06:51 | 
First steps in formation of pancreatic cancer identified

November 10, 2014

https://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141110110106.htm



Shown is a region of a pancreas with preneoplastic lesions.

Red labeling indicates macrophages, green labeling indicates pancreatic acinar cells that dedifferentiate, and grey labeling indicates further progressed pancreatic lesions.

Credit: Image courtesy of Mayo Clinic)


メイヨークリニック・ジャクソンビルキャンパスの研究者によると、彼らは膵臓癌の源となる最初のステップを明らかにしたという
Cancer Discovery誌のオンライン版で彼らは、膵臓が消化酵素を分泌する『腺房細胞acinar cell』が癌の前の段階となる病巣lesionを形成するために欠くことのできないnecessary分子的なステップを記述する
それらの病巣の中から、やがて癌へと変わるものが現れる

新たな治療・予防戦略が早急にpressing必要であるとStorz博士は言う
膵臓癌はヒトでは最も悪性な癌の一つであり、癌がかなり進行するまで症状が現れない
診断から1年後に生き残るのは2割に過ぎず、アメリカでは癌での死因の4番目である

科学者たちはKrasという遺伝子が突然変異を起こした膵臓癌を研究した
Krasは細胞分裂を調節するタンパク質をコードし、多くの癌でしばしば突然変異を生じる
膵臓癌の症例の95パーセント以上がKrasに突然変異を持つ

研究者はKrasに突然変異を持つ腺房細胞acinar cellが『幹細胞的な性質を持つ管のような細胞duct-like cell』へと形質転換transformationしていくステップを詳細に説明する
幹細胞は自由自在at willに分裂することが可能で、しばしば癌に関係する

その研究によると腺房細胞のKrasタンパク質はICAM-1という分子を発現させ、マクロファージという免疫細胞を引き寄せるのだという
その炎症性のマクロファージは様々なタンパク質を分泌し、細胞の構造を崩してloosen、腺房細胞が異なるタイプの細胞へと変身させるmorph
これらのステップが癌の前段階となる膵臓の病巣をもたらす

「我々はKras突然変異と炎症性環境との間の直接の関係を示す
それが膵臓癌の開始を刺激する」
Storz博士は言う

しかし、研究室のマウスではこのプロセスを止めることができると彼は付け加える

「それは2つの方法で可能である
それはマクロファージを枯渇させるか、または形質転換した細胞に対してICAM-1を抑制するための抗体を投与することによる
そのどちらかで前癌病巣の数は減少した」

Storz博士はICAM-1を阻害する中和抗体が既に開発されていることに言及する
この抗体は脳卒中strokeや関節リウマチrheumatoid arthritisなど様々な疾患で試験される予定である

「Kras突然変異を生じた腺房細胞とそれらの細胞周囲の微小環境との間のクロストークを理解することは、膵臓癌を予防して治療する標的戦略targeted strategiesを開発するための鍵である」と博士は言う


http://dx.doi.org/10.1158/2159-8290.CD-14-0474
Mutant Kras-induced expression of ICAM-1 in pancreatic acinar cells causes attraction of macrophages to expedite the formation of precancerous lesions.

繊維形成desmoplasiaと炎症性の環境は、膵臓癌の決定的な特徴である
発癌性の形質転換をした膵臓癌がどのようにして免疫細胞とクロストークし、それが膵臓病巣の発展にどう寄与するのかはまったく不明である

今回我々は、突然変異KRASを発現する膵臓の腺房細胞が局所的な炎症を誘発することにより管状表現型duct-like phenotypeへの形質転換を早めるexpediteことを実証する

我々は特に、KRASのG12D変異は細胞間接着分子/intercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1) の発現を誘導し、それがマクロファージへの化学誘引物質chemoattractantとして作用することを示す

浸潤するマクロファージは細胞外マトリックスをリモデリングしたりTNFのようなサイトカインを分泌することにより、KRASG12D変異が引き起こす異常な膵臓構造の形成を増幅する

腺房細胞に特異的なプロモーター下で発癌性Krasを発現するマウスに対して、マクロファージを枯渇させるかICAM-1中和抗体を投与すると、どちらも異常構造の形成を減少させ、『腺房細胞から管状への化生(かせい)acinar-to-ductal metaplasia』から『膵臓上皮内intraepithelial新生物病巣neoplastic lesion』への進行を抑制した



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2013/08/130805092314.htm
Origin of inflammation-driven pancreatic cancer decoded

http://dx.doi.org/10.1083/jcb.201301001
Macrophage-secreted cytokines drive pancreatic acinar-to-ductal metaplasia through NF-κB and MMPs.
マクロファージが分泌するサイトカインはNF-κBならびにMMPを通じて膵臓の腺房から管状への化生を促進する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2012/11/121129130309.htm
Study sheds light on how pancreatic cancer begins

http://dx.doi.org/10.1016/j.ccr.2012.10.025
Identification of Sox9-Dependent Acinar-to-Ductal Reprogramming as the Principal Mechanism for Initiation of Pancreatic Ductal Adenocarcinoma.
腺房から管状へのSox9依存的な再プログラムは膵管腺癌(PDAC)開始の主なメカニズムであることを明らかにする
 

悪性の膵臓癌は細胞死メカニズムで生き残る

2016-04-24 06:06:40 | 
Cell death mechanism may, paradoxically, enable aggressive pancreatic cells to live on

New findings could lead to anti-cancer drug developments that reverse immunosuppressive environments
April 22, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160422141216.htm


(共焦点顕微鏡によるヒトPDAC腫瘍の画像
PDACはCXCL1(赤色)、CK19(緑色、PDACのマーカー)を両方発現する

Credit: NYU Langone Medical Center)

膵管腺癌(PDAC)は最も悪性の膵臓癌であり、診断と治療が最も困難な悪性腫瘍の一つとしばしば言われる
Nature誌で最近発表された注目に値する研究major studyによると、この癌は腫瘍の周囲で『調整された細胞死/orchestrated cell death』という特定の種類の死に方をする細胞が存在する時に成長するという

今回の研究結果は『注意深く調整された細胞死メカニズム』に焦点を合わせる
このメカニズムは欠陥のある細胞やウイルスに感染した細胞を殺すためのものであり、しばしば重要な細胞の防御メカニズムである

ニューヨーク大学ランゴンメディカルセンター/NYU Langone Medical Centerとローラ・アイザック・パールマターがんセンター/Laura and Isaac Perlmutter Cancer Centerの研究者は膵管腺癌/pancreatic ductal adenocarcinoma (PDAC) のマウスモデルを研究することにより、ネクロプトーシスnecroptosisという調整された細胞死が実際にはCXCL1という小さなタンパク質の産生を誘発し、PDACの腫瘍細胞の増殖を刺激することを明らかにした
CXCL1は骨髄由来免疫抑制細胞/myeloid-derived suppressor cell(MDSC)という特別な免疫抑制性の細胞を呼び寄せることが知られ、癌細胞を認識して破壊する免疫系の能力をMDSCは低下させる
さらに、研究者は同様の出来事がヒトのPDACでも起きているようだと言う

※プレスリリース記事ではCXCL1が呼び寄せるのはTAMと書かれているが、論文ではCXCL1が呼び寄せるのはMDSC(Reference 15)とあるので修正した


「我々の発見はネクロプトーシスを介する癌細胞の死が実際には腫瘍の増殖を促進しうることを初めて示す
このプロセスは癌に対する免疫応答を抑制して腫瘍を成長させる」
今回の研究で首席研究者senior investigatorのGeorge Miller, MDは言う
彼はパールマターがんセンターの外科・細胞生物学科の準教授associate professorであり、がん免疫プログラムでは共リーダーである

「それと等しく重要なのは、これらの発見が他のタイプの腫瘍にも関連があるかもしれないということだ」


研究チームは最初の発見に続いて、ネクロプトーシスによるCXCL1だけでは腫瘍細胞の周囲に作られる腫瘍に保護的な環境の説明として十分ではないことも明らかにした
さらなる研究の結果、死んだ腫瘍の細胞はSAP130という別のタンパク質も放出し、腫瘍の環境内に存在する炎症性の免疫細胞上でMincleという受容体に結合することが判明した
Mincleの活性化はマウスで腫瘍の形成を加速した

研究者によると、今回の研究で重要なのはネクロプトーシスとMincleシグナル伝達が新たな抗癌剤の標的となりうることだという
これらの経路を阻害することでMDSCや腫瘍関連マクロファージによって作られた免疫抑制的な環境を無効化し、他のタイプの免疫細胞である癌を殺すT細胞に力を与え、腫瘍を攻撃させられる可能性がある

「我々の研究は、癌が成長する実際の状況actual contextの中で癌を調べることの重要性を実証する」
研究の共筆頭著者であるGregor Werba, MDは言う

「我々の最初の研究では、組織培養のPDAC細胞におけるネクロプトーシスを阻害すると、その増殖能は増大した
しかしながら、同じプロセスをマウスで研究し始めると全く正反対の影響が見られたことに我々はとても驚いた
これは主に腫瘍の周囲に存在する細胞による免疫応答のためだった」


Miller博士たちのチームはこれらの手がかりを追跡調査follow up on these leadsするために医学科の助教授であるDierdre Cohen, MDらと協力して、ネクロプトーシスだけを阻害し潜在的な抗癌作用を持つ化合物を探して免疫療法との組み合わせを調査する予定である


http://dx.doi.org/10.1038/nature17403
The necrosome promotes pancreatic oncogenesis via CXCL1 and Mincle-induced immune suppression.
ネクロソームはCXCL1ならびにMincleによる免疫抑制を介して膵腫瘍形成を促進する


Abstract
新生物の膵上皮細胞はカスパーゼ8依存的なアポトーシス細胞死によって死に、化学療法は腫瘍のアポトーシスを促進すると考えられている(1
反対に、癌細胞はしばしばアポトーシスを中断させて生き残る(2, 3

別のタイプのプログラム細胞死はネクロプトーシスnecroptosis (プログラムされたネクローシス/programmed necrosis) だが、その膵管腺癌(PDAC)における役割は不明である

PDACでネクロプトーシスを誘導する物質potential inducerは多数存在し、例えばTNFR1・CD95・TRAILのような受容体への結合、TLR受容体や活性酸素種(ROS)、化学療法薬などがある(4, 5

今回我々が報告するのはネクロソームの主要な要素のRIP1RIP3(receptor-interacting protein)である
それらはPDACで強く発現し、さらに化学療法薬のゲムシタビンによって上方調節される

in vitroではネクロソームを阻害すると、癌細胞の増殖を促進し悪性の発癌性oncogenicの表現型を誘発した

それに反して、in vivoでのマウスからのRIP3の削除またはRIP1の阻害は、発癌性の進行から保護し、強い免疫原性immunogenicの骨髄細胞の発達ならびにT細胞の浸潤と関連した

完全なRIP1/RIP3シグナル伝達と関連する免疫抑制性の腫瘍微小環境は、部分的にはネクロプトーシスによるケモカイン誘引物質CXCL1発現に依存し、CXCL1の阻害はPDACから保護した

さらに、PDACでは細胞質のSAP130 (a subunit of the histone deacetylase complex) がRIP1/RIP3に依存的なやり方で発現し、
その同系の受容体cognate receptorであるMincleが腫瘍に浸潤する骨髄細胞で上方調節されていた

SAP130のMincleへの結合は発癌oncogenesisを促進する一方で
Mincleの削除は発癌から保護し、
RIP3削除によって誘導される『腫瘍微小環境が免疫原性へと再プログラムされる表現型』をコピーした

抑制性マクロファージはPDACにおける腫瘍形成tumorigenesisを促進するが、
それらマクロファージはRIP3またはMincleが削除されると免疫抑制的な影響を失うことが、
細胞からの(遺伝子やタンパク質の)枯渇で示唆された


それらと一貫して、
完全なRIP3またはMincleシグナル伝達が存在するマウスでのT細胞はPDAC進行に対して保護的ではないが、
RIP3またはMincleが存在しない状態では抗腫瘍免疫の必須メディエーターへと再プログラムされる

我々の研究は、マクロファージによる適応免疫の抑制を促進することによりPDAC進行を可能にする『ネクロプトーシスによるCXCL1ならびにMincleシグナル伝達』の並列ネットワークparallel networksを記述する

※CXCL1以下とMincle以下が並列する


http://www.nature.com/nature/journal/v532/n7598/fig_tab/nature17403_SF10.html
Extended Data Figure 10:
膵管腺癌(PDA)におけるRIP3ならびにMincleシグナル伝達はマクロファージによるT細胞免疫の抑制に必須である




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細胞の代謝はin vitroとin vivoで異なる



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8c4f2053e55ed484c872909b1e781086
遺伝学的に決定される腫瘍の代謝的な好みは細胞の環境によってくつがえされうる



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癌関連線維芽細胞をアポトーシスさせると腫瘍関連マクロファージが増加して転移リスクが上昇する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160404221001.htm
TAMの前駆細胞である単球のCCR2を阻害するPF-04136309と化学療法の組み合わせが膵臓癌に有効



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8b2f4115e30e99b7b6e8eecb632fb94e
肥満→胎盤成長因子→VEGFR-1→炎症↑免疫抑制性TAM浸潤↑→癌進行↑体重増加↑→肥満↑↑



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2b6a0b9d42d00c2015af68cfd346593d
低酸素,シアル酸→CD45フォスファターゼ二量体化↓CD45活性化↑STAT3脱リン酸化↑STAT3活性↓→MDSCからTAMへ分化



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c89e847d6ea50b57bda32e5adf76a37e
ゲムシタビンは分裂する癌細胞に作用するが、EMTを開始するなどして増殖が止まると効果がない



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/9449
RIPK3はネクローシスに非依存的にサイトカインの産生および組織の修復を促進する
 

癌細胞は健康な細胞を『ダークサイド』へと変える

2016-04-21 06:06:07 | 
Cancer cells turn healthy cells to the 'dark side'

April 14, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160414144213.htm

癌細胞は突然変異の遺伝子を使って周囲の正常な組織に無理やりcoerce癌細胞の成長と転移を手伝わせることが、Cell誌で新たに報告された
正常な細胞は説得persuadeされて独特な成長シグナルを出し、癌細胞はそれを使って増殖するが、癌細胞自体がそのシグナルを出すことはない
彼らの研究は癌細胞と正常な細胞がどのようにしてお互いにコミュニケーションするのかに光を当て、癌の治療への新しいアプローチへの道を開く


ロンドンのInstitute of Cancer Researchとマンチェスター大学のCancer Research UK Manchester Instituteの科学者たちは、突然変異を起こしたKRASの欠陥バージョンが正常な組織に対して重要な影響を与えることを明らかにした
通常のKRASが細胞に分裂するように伝えるのは時折でしかないが、突然変異のKRAS遺伝子は過剰に活性化し、癌細胞の急速で制御不能な増殖を促進する

今回の研究で、突然変異のKRASは正常な『ストロマ細胞』を癌細胞の味方allyに引きこむ際に重要な役割を演じることが明らかになった
研究では癌遺伝子が正常なストロマ細胞を通じて癌をコントロールするという『コミュニケーション・ループ』の存在が初めて示された

研究者は膵管腺癌(PDAC)というタイプの膵臓癌で細胞のコミュニケーション・ネットワークを調査した
PDACは最も致命的な癌の一つであり、イギリスでは毎年9000人がPDACで死亡する

KRASは膵臓癌の90パーセント以上で突然変異しており、全ての癌でも20パーセントが変異している

研究チームは膵管腺癌の細胞で何千という様々な成長因子やタンパク質、受容体を調べ、シグナル伝達がどのようにして伝えられるかを観察した
彼らはKRASが周囲の正常な細胞とコミュニケーションするために使う既知の経路の存在を認めたが、しかし何か異常が起きていることにも気付いた

2つの細胞のタンパク質を同時にモニターした結果、癌細胞からのコミュニケーションに対して正常な細胞が『全く新しいメッセージ』で応答することが判明した
この『メッセージ』は、KRASが癌細胞の悪性な振る舞いを加速する能力をさらに倍加するものだった

論文著者のChris Tape博士(Institute of Cancer Research, London)は次のように言う
「我々の研究が強調するのは、癌細胞の増殖と転移は腫瘍単独で促進されるわけではないということだ
癌細胞は周囲の正常な細胞を脅してbully手伝わせることができる
膵臓癌の中には腫瘍内部に癌細胞よりも多く正常なストロマ細胞を持つ場合があるため、癌細胞がどのようにして周囲の細胞を仲間に引き込むかを理解することは重要である
我々は癌細胞がどのようにしてストロマ組織を説得persuadeして成長シグナルを出させるのかを正確に明らかにした
そうすることでエキサイティングで新しい治療の可能性を開く」

以前はInstitute of Cancer Research, Londonのチームを率い、現在はCancer Research UK Manchester Instituteのjunior group leaderでもあるClaus Jorgensen博士は言う
「我々は今や腫瘍が様々な癌細胞や多くの種類の正常な細胞から成る遺伝的に複雑な混合体であることを知っており、それらは入り組んだintricate相互作用の網webで全てお互いにコミュニケーションしている
この網を解きほぐしuntangle、個々のシグナルを解読decodeすることは、数多くコミュニケーションの一体どれが腫瘍の成長と拡散を制御するために最も重要なのかを識別するために重要である
我々は癌細胞で最も広く突然変異している遺伝子が正常な細胞とコミュニケーションする際に演じる重要な役割を明らかにした
その影響を阻止することは癌の効果的な治療となりうるだろう」


OPEN
http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2016.03.029
Oncogenic KRAS Regulates Tumor Cell Signaling via Stromal Reciprocation.



Highlights

・KRASG12D establishes a reciprocal signaling axis via heterotypic stromal cells
・Reciprocal signaling further regulates tumor cell signaling downstream of KRASG12D
・Reciprocal signaling regulates tumor cell behavior via AXL/IGF1R-AKT
・Heterocellularity expands tumor cell signaling beyond cell-autonomous pathways


Summary

Oncogenic mutations regulate signaling within both tumor cells and adjacent stromal cells.

Here, we show that oncogenic KRAS (KRASG12D) also regulates tumor cell signaling via stromal cells.

By combining cell-specific proteome labeling with multivariate phosphoproteomics, we analyzed heterocellular KRASG12D signaling in pancreatic ductal adenocarcinoma (PDA) cells.

Tumor cell KRASG12D engages heterotypic fibroblasts, which subsequently instigate reciprocal signaling in the tumor cells.

Reciprocal signaling employs additional kinases and doubles the number of regulated signaling nodes from cell-autonomous KRASG12D.

Consequently, reciprocal KRASG12D produces a tumor cell phosphoproteome and total proteome that is distinct from cell-autonomous KRASG12D alone.

Reciprocal signaling regulates tumor cell proliferation and apoptosis and increases mitochondrial capacity via an IGF1R/AXL-AKT axis.

These results demonstrate that oncogene signaling should be viewed as a heterocellular process and that our existing cell-autonomous perspective underrepresents the extent of oncogene signaling in cancer.


精製炭水化物は前立腺癌のリスク上昇と関連

2016-04-20 06:09:33 | 
Cancer link offers another reason to avoid highly processed carbs

April 5, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160405182105.htm

精製炭水化物は前立腺癌のリスク上昇と関連がある

そうでない炭水化物(豆類、非デンプン質の野菜、果物、全粒粉)は前立腺癌リスク低下と関連

FASEB、Experimental Biology 2016での発表



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160125114243.htm
細胞外の高い酸性度は通常の細胞には有害だが、腫瘍細胞には増殖の利点となる
果物と野菜の豊富な低塩分食はアルカリ性によって腫瘍による『pHの濃度勾配の逆転』を最小限に抑え、悪性度を低下させて治療抵抗性を抑える



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f0899b6e86a9f2eba1897d5922a96e33
癌細胞は腫瘍内の酸性環境でも増殖することが可能だが、免疫細胞のような普通の細胞にとって酸性は有害
酸性の腫瘍環境を中和することにより、免疫を標的とする治療法の効能が増加する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160414114159.htm
膠芽腫にケトジェニックダイエット・改が有効
ケトン食は普通の人には難しいが、ココナッツオイル(中鎖脂肪酸)でケトンを補うようにしたところ、腫瘍の成長が抑制され、mTORが低下した
マウスモデルで有効、これから臨床試験を予定



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24728273
再発膠芽腫におけるケトジェニック食のパイロット・スタディ
20人中3人(15%)が脱落
13人中12人(92%)に尿中ケトーシス
1人が弱い応答、2人が6週後に安定
マウスでは、ケトン食は単体ではmedian survivalに効果なし
ベバシズマブと一緒に使うと効果があり、52日から58日になった
結論として、再発神経膠腫でのケトジェニック食はもっともらしくfeasible、そして安全ではあるが、それ単独での明らかな臨床的作用はまったくない



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25806103
神経膠腫をケトジェニック食で治療
カロリー制限ケトン食療法(ERKD)にもかかわらず、2人の患者で腫瘍は進行した
免疫組織化学での反応を調べたところ、腫瘍では2つの重要なミトコンドリアのケトン体分解酵素ketolytic enzymeのうち少なくとも1つが発現していた (succinyl CoA: 3-oxoacid CoA transferase、beta-3-hydroxybutyrate dehydrogenase 1)
文献で調べたところ、他の30人の患者ではいくつかのケトン食プロトコルを実施して様々な応答があった
長期の寛解は5年以上から4ヶ月までのケースが報告されているが、そのうち1つだけがケトン食を単独療法monotherapyとして用いていた
より最近の報告で最も良かった反応は、約6週間の安定だった
 

飽和脂肪酸は前立腺癌の悪性度と関連

2016-04-20 06:06:53 | 
Increased saturated fat intake linked to aggressive prostate cancer

April 19, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160419081941.htm

脂身の多い牛肉やチーズのように飽和脂肪酸の豊富な食事は前立腺癌の悪性度の高さと関連することが、ノースカロライナ大学(UNC)ラインバーガー総合がんセンターの研究によって明らかになった
この予備的な実験結果は、ニューオリンズで開かれるアメリカ癌学会(AACR)の年次総会で4月18日に発表された

「我々は食事に含まれる飽和脂肪酸の量の多さが前立腺癌の悪性度と関連することを示す」
UNC Gillings School of Global Public Healthで特任助教research assistant professorのEmma H. Allott, PhDは言う

「これは食事中の飽和脂肪酸の量を制限することが前立腺癌にも関係があることを示唆するのかもしれない
この種の制限は全体的な健康や心血管疾患の予防にとって重要であることが知られている」

この研究結果はノースカロライナ州とルイジアナ州で2004年から2009年までの間に前立腺癌と診断された1854人の調査から引き出されたものだ(前立腺癌プロジェクト/North Carolina-Louisiana Prostate Cancer Project)
この調査で男性は前立腺癌の診断時に食事や他の要因について様々な質問を受け、そこから研究者は飽和脂肪酸の摂取と診断時の腫瘍の悪性度との間の関連を分析した
飽和脂肪酸の摂取量を脂肪の総摂取量に合わせて統計モデルで調整し、さらにPSAとグリーソンスコアで悪性度を計測したところ、飽和脂肪酸の摂取量は悪性度と関連することが明らかになった

食事中の飽和脂肪酸の量の多さは血液中のコレステロールレベルの上昇の一因であり、それが関係するのかもしれないとAllottは言う
実際、コレステロールをコントロールするためにスタチンを服用していた男性では飽和脂肪酸と悪性度との関連が弱まっていた

これらの結果は、スタチンが飽和脂肪酸が前立腺癌の悪性度に与える影響と(完全には打ち消さないにしても)拮抗することを示唆するのかもしれない
加えて、魚やナッツに多く含まれる多価不飽和脂肪酸の多さは前立腺癌の悪性度の低さと関連することも研究者は明らかにした

Allottによるとこれからの研究目標はこの関連の背後にあるメカニズムを調べていくことだという



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/d4243c7692de86f1764779457605d15b
スタチンが癌の転移と薬剤抵抗性に有効な理由



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/3b5969ccb3b69e27b3f8ff4f1891a4f6
コレステロール合成の阻害剤が前立腺癌に有効



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6089be975c0cf32996447e33323a6ece
癌はLDLのコレステロールをエサにして増殖する



関連サイト
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2014/022236.php
赤身肉に含まれる偶数鎖の飽和脂肪酸は糖尿病リスク上昇と関連
 

乳癌は増殖するために脂質を取り込む

2016-04-19 06:06:42 | 
Breast cancer tumor growth is dependent on lipid availability, researchers discover

April 5, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160405093922.htm


(LIPGタンパク質の三次元構造

Credit: F Slebe, IRB Barcelona)

バルセロナ生物医学研究所/Institute for Research in Biomedicine (IRB) Barcelonaはスペインの病院やロビラ・イ・ビルジリ大学/Universitat Rovira i Virgili (URV) と協力した研究で、乳癌の脂質への依存性を明らかにした
Nature Communicationsで発表された今回の発見は癌と戦うための新たな治療戦略への道を開くものになりうるだろう


研究者たちは乳癌が増殖を続けるために細胞外の環境から脂質を取り込む必要があることを報告する
このプロセスに関与する主なタンパク質は細胞膜上に存在するLIPGで、LIPGがないと腫瘍細胞の増殖は抑制される
様々な乳癌腫瘍の患者から提供された500以上の臨床サンプルの分析から、腫瘍の85パーセントでLIPGの発現が高いことが明らかにされた

スペインで乳癌は女性で最も多い腫瘍であり、男性女性合わせると4番目に多いタイプの腫瘍である (SEOM, 2012のデータ)
WHOの計算figuresによると世界で毎年138万人が新たに乳癌と診断され、45万8000人が乳癌のために死亡する (IARC Globocan, 2008).


アキレスのかかと
Achilles Heel

癌細胞は増殖するために細胞外のグルコースを必要とし、大量の脂質を作り出せるように細胞内部の機構を再プログラムすることが既に知られていた
それとの関連で、今回の研究で腫瘍細胞が増殖するためには細胞外の脂質も運び入れなければならないmust importことが初めて明らかにされる

「この代謝に関する新たな知識は乳癌のアキレスのかかとになりうる」
ICREA(スペイン)の研究者であり、IRBバルセロナのグループリーダーでもあるRoger Gomisは言う

彼らは動物モデルと培養癌細胞を使い、LIPGの活性を阻害することが腫瘍の増殖を抑えることを実証した

「この新たな治療標的について有望なのは、LIPGの機能が生命の維持にとって必須ではないように思われることである
そのため、LIPGの阻害による副作用は他の治療よりも少ない可能性がある」
筆頭著者first authorのFelipe Slebeが説明する

研究の共リーダーであり、IRBバルセロナのディレクターでバルセロナ大学の教授でもあるJoan J. Guinovartは次のようにコメントする
「LIPGは膜タンパク質であるため、活性を阻害するための薬理学的な薬剤デザインが容易かもしれないpotentially easier」


LIPGは標的として多くの長所virtuesがある
「もし、その活性を阻害する薬剤が見つかれば、現在利用可能なものよりも毒性が低く、より効果的な化学療法の開発に使われうるだろう」

彼らは現在LIPG阻害剤の開発パートナーを国際的に探しているところである


http://dx.doi.org/10.1038/NCOMMS11199
FoxA and LIPG endothelial lipase control the uptake of extracellular lipids for breast cancer growth.
FoxAならびに内皮リパーゼLIPGは乳癌が増殖するための細胞外脂質の取り込みを制御する

Abstract
乳癌の細胞が急速な増殖を代謝的に維持できるようにするためのメカニズムはほとんど理解されていない

今回我々は、乳癌が細胞外の源を由来とする細胞内の脂質を作り出すために必要な前駆体を供給するためのメカニズムに依存し、この機能を満たすのが内皮リパーゼ/endothelial lipase(LIPG)であることを報告する

LIPGの発現により脂質の前駆体を運び入れることが可能になり、それが乳癌の増殖の一因となる

乳癌細胞が高い増殖速度を支えるために経験する脂質代謝的な適応にとっての必須要素としてLIPGは突出しているstand outが、正常な組織ではそうではない

LIPGはすべての乳癌サブタイプにおいて、FoxA1またはFoxA2の制御下で、広くubiquitouslyそして高くhighly発現する

形質転換transformedした細胞においてLIPGまたはFoxAのどちらかを下方調節すると、増殖は抑制され、細胞内の脂質合成が損なわれる結果になる



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/991a30f257378e25e2ce5b7d9b0a0bf7
癌細胞は本当にグルコースで増殖するのか?



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6089be975c0cf32996447e33323a6ece
癌はLDLをエサにする
 

スタチンが癌の転移と薬剤抵抗性に有効な理由

2016-04-18 06:06:53 | 
How a metabolic pathway promotes breast cancer metastasis

April 6, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160406165425.htm


(Rab11bはメバロン酸経路の活性によりArf6(緑色)を細胞膜へ送る
細胞膜で活性化されたArf6は、癌細胞の浸潤と薬剤抵抗性を促進する

Credit: Hashimoto et al., 2016)

特定の乳癌で上方調節される代謝経路は、Arf6というシグナル伝達タンパク質を活性化することにより癌の進行を促進することがJournal of Cell Biology誌に報告された
オンライン版で先行発表された橋本あり/Ari Hashimotoたちによる今回の研究は、腫瘍でArf6シグナル伝達タンパク質の発現が高い乳癌患者にとってスタチンのような薬が有効な治療である可能性を示唆する


メバロン酸経路/mevalonate pathway (MVP) は、コレステロールから長鎖脂質基/long-chain lipid groupsまで広範囲な生物学的分子の材料を作り出す代謝経路である(長鎖脂質基はタンパク質を細胞膜に固定するために必要)
腫瘍抑制因子p53の変異はMVPを上方調節する可能性があり、すべてではないものの乳癌細胞系統のいくつかで浸潤性invasivenessを促進する

日本の札幌にある北海道大学・医学研究院の佐邊壽孝/Hisataka Sabeを中心とするチームは、MVPが浸潤性を促進するのはArf6シグナル伝達経路の活性化によるものであり、この経路は癌細胞が運動できる状態motile stateへと移行するのを促進することで癌細胞の浸潤と転移を高めるのだろうと推測した

それを受けて橋本ありたちが研究を進め、MVPがArf6の細胞膜へのリクルートを促進し、そこでArf6はチロシンキナーゼによって活性化されうることを明らかにした
この経路/MVPは脂質基lipid groupを作り出し、Rab11bというタンパク質を細胞膜に固定する
それによりRab11bはArf6が活性化される箇所である細胞膜へと送り届けることができるようになる

Rab11bを阻害すると乳癌細胞のMDA-MB-231という系統の浸潤性を低下させた
研究者たちはMDA-MB-231がArf6シグナル伝達タンパク質を大量に発現することを明らかにした

このArf6経路は乳癌細胞の薬剤抵抗性も加速する可能性がある
Rab11bの阻害、またはArf6経路の要素の一つEPB41L5の阻害は、細胞毒性のある2つの化合物へのMDA-MB-231の感受性を増大させることを橋本たちは発見した

スタチンはMVPの鍵となる酵素の一つ、HMG-CoA還元酵素/reductaseを阻害する
スタチンは元々コレステロールレベルを低下させるために開発されたが、潜在的な抗癌剤としても調査されてきた
しかしこれまでの臨床試験の結果は相反する混乱mixedしたものだった

橋本たちのデータは将来Arf6シグナル伝達タンパク質の発現が高い腫瘍の乳癌患者に焦点を合わせた研究努力をすることになるかもしれないという可能性を示唆する
そのような腫瘍は、Rab11bの活性を低下させる薬剤に影響されやすい可能性がある

事実、彼らはシンバスタチンがMDA-MB-231細胞の薬剤感受性を高め、この細胞がマウスに注入された際の転移能力を阻害することを明らかにした

「MVPの阻害は、特に他の薬剤と組み合わせた場合にArf6経路を過剰発現する癌細胞を殺すのに有効であるかもしれない」と佐邊は言う
この治療アプローチの開発は極めて重要でありうる
なぜなら、MVP経路の要素とArf6シグナル伝達タンパク質の発現が両方とも高い腫瘍の患者は長期生存率が低いことが示されたからだ


http://dx.doi.org/10.1083/jcb.201510002
P53- and mevalonate pathway–driven malignancies require Arf6 for metastasis and drug resistance.
p53とメバロン酸経路をドライバとする悪性腫瘍は、転移と薬剤抵抗性にArf6を必要とする

薬剤抵抗性、転移、間葉系転写プログラム/mesenchymal transcriptional programは、乳癌悪性腫瘍の中心的な特徴である

しばしば腫瘍で過剰発現するGTPアーゼArf6は、上皮間葉転換/epithelial–mesenchymal transition(EMT)ならびに浸潤性の促進にとって極めて重要である

メバロン酸代謝経路/metabolic mevalonate pathway (MVP) は腫瘍の浸潤性と関連し、タンパク質をプレニル化prenylateすることが知られている

※prenylation: プレニル化。プレニル基やポリプレニル基を共有結合で付け加えること


ここに我々はMVPがArf6依存的な間葉系プログラムに必要であることを示す

MVP酵素の一つであるゲラニルゲラニル転移酵素II型/geranylgeranyl transferase II (GGT-II) と、その基質substrateであるRab11bは、Arf6の細胞膜への輸送に極めて重要である
Arf6は細胞膜で受容体チロシンキナーゼ/receptor tyrosine kinase(RTK)によって活性化される

それと一致して、MVPを介して腫瘍発生tumorigenesisをサポートすることで知られるp53突然変異は、GGT-IIならびにRab11bを介してArf6活性化を促進する

MVPとGGT-IIの阻害は癌細胞の浸潤と転移を阻止し、化学療法薬に対する抵抗性を低下させたが、しかしそれはArf6ならびに間葉系プログラムを過剰発現する細胞においてのみだった

Arf6ならびに間葉系タンパク質の過剰発現、そしてMVP活性の促進は、患者の生存率の低さと相関した

これらの結果は、MVPをドライバとする悪性腫瘍の分子的な基盤への洞察をもたらす



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/735d3e7de5b11b1efa84ce4c20e84d37
正常なLRRK2キナーゼはリン酸化により特定のRabタンパク質(Rab3/8/10/12)を不活化することで細胞内輸送を調節する
 

コレステロール合成の阻害剤が前立腺癌に有効

2016-04-17 06:06:23 | 
Potential cholesterol-lowering drug molecule has prostate cancer fighting capabilities

April 14, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160414170034.htm


前立腺癌の標準的な治療には癌細胞上の受容体を標的とする化学療法が含まれる
しかしながら、化学療法の間に薬剤抵抗性の癌細胞が現れることがあり、その抗がん剤としての有効性を限定する

ミズーリ大学の研究者は、元々コレステロールを抑えるために開発された化合物が前立腺癌の進行を止めるだけでなく、癌細胞を殺せることを証明した

「コレステロールは動物の細胞膜の構成要素として働く分子である
腫瘍の細胞が増殖するとき、普通より多くのコレステロールが合成される」
生医科学の教授であるSalman Hyderは言う

「癌の患者はしばしば毒性の高い化学療法を受けるが、我々の研究では癌細胞のコレステロールに着目した
コレステロールの合成を減らすことで癌細胞は死ぬ可能性があり、
有害な化学療法の必要性を減らせるかもしれない」

前立腺癌の主な治療は癌細胞上のアンドロゲン受容体を標的とした化学療法薬の全身への投与などがある
通常のアンドロゲン受容体はテストステロンのようなホルモンに結合する

抗ホルモン療法、つまり化学的な去勢も前立腺癌への治療で使われる

「腫瘍の細胞がこれらの治療に反応するのは最初だけでほとんどは最終的に抵抗性を生じ、そこから前立腺癌細胞は増殖して転移するようになる」
Hyderは言う

「コレステロールも抗ホルモン療法への抵抗性の一因になりうる
なぜなら、コレステロールは腫瘍の細胞内でホルモンに変換されるからである
したがって、このようなコレステロール合成経路は前立腺癌の治療にとって魅力的な標的である」

Roche Pharmaceuticalsの開発した高コレステロール治療用の化合物であるRO 48-8071をヒトの前立腺癌の細胞に投与したところ、細胞増殖の抑制に有効であることが明らかになった
その後の研究でRO 48-8071が癌細胞を殺すことも明らかにされた

この情報を基にHyderたちはヒトの前立腺癌の細胞を持たせたマウスで研究結果をテストした
RO 48-8071を注入したところ、実際に腫瘍の増殖の抑制に有効であることが明らかになった

これらの研究結果が示唆しているのは、コレステロール低下薬は
一般的な化学療法薬と組み合わせることで前立腺癌に対する新たな治療アプローチになりうることだとHyderは言う


http://?
Cholesterol biosynthesis inhibitor RO 48-8071 suppresses growth of hormone-dependent and castration-resistant prostate cancer cells.
コレステロール生合成の阻害剤RO 48-8071はホルモン依存性・去勢抵抗性の前立腺癌細胞の増殖を抑制する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6089be975c0cf32996447e33323a6ece
癌はLDLのコレステロールをエサにして増殖する



関連サイト
http://pdbj.org/eprots/index_ja.cgi?PDB%3A1W6J
コレステロールの生合成経路でオキシドスクアレンからラノステロールを生成する反応においてステロイド骨格の形成がされる。この反応はオキシドスクアレンシクラーゼ(OSC、別名ラノステロール合成酵素)という酵素によって触媒されている。ゆえに、OSCを阻害することで血中のコレステロール濃度を下げることができる可能性がある。
ここに示すタンパク質の結晶構造は、OSCとその阻害剤であるRo 48-8071の複合体である。



関連サイト
http://www.nature.com/articles/srep09054/figures/1
酢酸→HMGCoA─[HMGCoAレダクターゼ(スタチンで阻害)]→メバロン酸→プレニル中間体→スクアレン─[スクアレンモノオキシゲナーゼ(テルビナフィンで阻害)]→2,3-エポキシスクアレン─[オキシドスクアレンシクラーゼ(Ro 48-8071で阻害)]→ラノステロール─[C-14脱メチル化酵素(イトラコナゾールで阻害)]→コレステロール

 

癌の転移を促進する糖尿病薬

2016-04-16 06:06:50 | 
Antioxidants in antidiabetic drugs may fuel cancer spread, mouse study shows

April 13, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160413151101.htm

以前の別の研究で癌の転移を促進する抗酸化剤の潜在能力が明らかにされたexposeが、
今回は糖尿病の特定の薬に含まれる抗酸化剤に関してである


マウスの癌モデルによる研究で、糖尿病薬のいくつかは既存の腫瘍、例えば結腸癌や肝臓癌が転移するのを促進することが明らかになった
もしヒトでも裏付けborne outがされれば、今回の研究結果はこの種の薬を癌のある糖尿病患者へ投与することに警告することになるだろう

動物を使った抗酸化剤の研究から
、その癌の増殖や転移を加速する潜在性についてのエビデンスが積み重なりつつあり注目を集めている
抗酸化剤とは活性酸素種から細胞を保護する化合物であり、酸化ストレスによって促進される疾患である糖尿病の治療で一般に使われている

糖尿病は様々な癌のリスクを上げると疑われており、糖尿病で癌にも罹患している患者の数は増えつつある
しかしながら、糖尿病の薬が癌にどのような影響を及ぼすのかはほとんど理解されていない


Hui Wangたちは一般に使われている糖尿病薬で抗酸化剤的な性質を持つ二つについて、結腸癌と肝臓癌のマウスモデルに与える影響を研究した

※DPP-4阻害薬(サクサグリプチンsaxagliptin, シタグリプチンsitagliptin)と、糖尿病性神経障害の治療薬(α-リポ酸lipoic acid)

研究の結果、それらの薬は癌の発症リスクは上げなかったものの、既存の腫瘍が転移するのを加速した
薬剤中の抗酸化剤は癌を酸化ストレスから保護するようであり、癌細胞が移動して浸潤する能力を加速したboost

細胞を使った実験から
それらの薬はNRF2というシグナル伝達経路を活性化することが明らかになった
この経路は転移を促進するタンパク質の発現の引き金を引く
事実、NRF2を削除するか阻害すると癌細胞の移動は著しく低下した
肝腫瘍の患者サンプルを分析したところ、NRF2の発現は腫瘍の転移と相関することが判明した

これらの結果から研究者は、抗酸化剤を含む薬剤の糖尿病の癌患者への安全性を評価するさらなる研究の必要性を呼びかけている
彼らの研究結果はマウスでのものであり、臨床的に応用する前にヒトで確認する必要があるだろう


http://dx.doi.org/10.1126/scitranslmed.aad6095
NRF2 activation by antioxidant antidiabetic agents accelerates tumor metastasis.
酸化を抑制する抗糖尿病薬によるNRF2の活性化は腫瘍の転移を加速する





関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/7375811853bf97f841338ba990da2cb5
抗酸化剤は癌の転移を促進するかもしれない



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抗酸化剤は悪性メラノーマの転移を加速する



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年老いたメラノーマ患者の治療にはN-アセチルシステインという抗酸化物質が有効かもしれない



関連サイト
https://www.sciencedaily.com/releases/2011/06/110605191506.htm
老化したメラノーマはPARP-1とNF-κBを発現してCCL2を分泌し、化学療法に抵抗しやすくなる

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21646373
Figure 8
DNAダメージ(PARP-1,ATM)→NF-κB→CCL2→浸潤↑,老化↓
 

癌はLDLをエサにする

2016-04-15 06:06:51 | 
Controlling 'bad cholesterol' production could prevent growth of tumors, study finds

Cancerous cells expand by controlling the body's lipid metabolism

April 8, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160408132457.htm

いくつかの研究で、肥満と癌とのつながりが確認recognizeされてきた
アルバータ大学・医科歯科学部の小児学教授であるRichard Lehnerは、腫瘍細胞がどのようにしてVLDLやLDLを取り込んでscavenge成長するのか、そして悪性細胞の成長を抑制するためにどのようなメカニズムが使えるのかを理解すべく研究を進めた
LDLは一般に『悪玉コレステロール』として知られている

Cell Reports誌で発表された今回の革新的な研究はLehnerのグループが2年以上かけてグラーツ医科大学(オーストリア)のGerald Hoeflerと協力して実施したものだ
今回の実験で集められたデータは、フィードフォワード・ループの存在を示唆している
つまり腫瘍は脂質を『構築材料building blocks』として使って成長するだけでなく、脂質産生を増大させるために宿主の脂質代謝をも調節するようだ

『悪玉コレステロール』は肝臓のLDL受容体に結合する
肝臓はコレステロールを分解し、そして胆汁として生体外へ分泌する
結合しなければ血液中に留まって排出されないままである

「癌細胞が増殖するためには脂質が必要だが、
その脂質を自分自身で作ることも、宿主から得ることもありうる
なぜなら癌細胞の増殖は非常に早いからだ」
Lehnerはそのように説明する

「腫瘍は肝臓に向かって『私が成長するためにはもっとコレステロールが必要だ』という合図を出す
肝臓はプログラムし直され、それらの脂質を分泌するようになる」

この過程の間で鍵となる要素の一つは、我々の誰もが持つタンパク質が通常よりも多くなると
コレステロールを排泄するためのLDL受容体の量が減少するということである
血液中からのコレステロールの除去を低下させるタンパク質に対して腫瘍が影響を与え、
癌がLDLをエサにするfeed offために残しておくようにさせる

この発見からLehnerとHoeflerは
興味深い仮説に至った
それは肝臓のLDL産生を最小化することで腫瘍への定常的な供給を枯渇させ、したがって増殖の可能性を低下させるだろうというものである

実際、彼らの前臨床モデルでの実験は成功したことが証明された
腫瘍の発達は抑制され、VLDL(LDLの前駆体)の産生ならびに肝臓からの受容体によるLDL取り込みに影響するタンパク質が調節されることが確認された

Lehnerたちの次のステップは、
コレステロール産生の低下を促進する既存の薬剤を、癌の患者が受けている治療に加えてテストすることになるだろう

「我々がテスト可能な承認済みの薬剤が既に存在する」
Lehnerは言う

「それらは癌治療のために開発されたものではなく、高コレステロール血症の患者のために作られていた
しかしそれを癌の患者でテストして改善するかを調べることになるのは興味深いことだ」


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.03.020
Tumor-Induced Hyperlipidemia Contributes to Tumor Growth.


Highlights
・リポタンパク質コレステロールは腫瘍の成長を支える
・腫瘍はVLDL/LDLレベルを増大させる
・Ces3/TGHを欠損させると、腫瘍による高脂質血症tumor-induced hyperlipidemiaが抑制されるが、それはPCSK9の阻害を介する
・腫瘍の成長はCes3/Tgh−/− マウスでは抑制される

Summary
BCR-Abl-形質転換された前駆体B細胞による腫瘍は、VLDL生産を刺激しつつVLDL/LDL代謝回転turnoverを鈍らせることにより、高脂質血症を誘導する

腫瘍による高脂質血症に腫瘍の進行が依存するかどうかを評価するために我々はVLDL産生を欠くノックアウト・モデルを利用した
このマウスはカルボキシルエステラーゼ3/carboxylesterase3(Ces3)、トリアシルグリセロールヒドロラーゼ/triacylglycerol hydrolase(TGH)を欠く

機構的に見ると、Ces3/Tgh−/−マウスにおける腫瘍成長の低下は、
腫瘍によって誘導されるPCSK9を介する 肝臓LDLR分解 ならびに LDL代謝回転の低下、それらの無効化による

 腫瘍→HNF1α→PCSK9↑─┤LDLR↓─┤LDL↑



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150316102028.htm
PCSK9を阻害するEvolocumabはLDLを低下させる
この薬剤は心血管疾患を低下させたが、今回の試験では心血管疾患自体が少なかった



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151110083034.htm
LDLを低下させるワクチン
PCSK9を標的とするモノクローナル抗体のAlirocumabとEvolocumabが最近FDAによって承認されたが、モノクローナル抗体は一般に非常に高価である
PCSK9を標的とする今回のワクチンは、抗体よりも効果的でしかも安価だ



関連サイト
http://diabetologistnote.blog119.fc2.com/blog-entry-349.html
セリンプロテアーゼであるPCSK9は、肝臓から血液中に分泌され、LDL受容体のEpidermal growth factor (EGF)-like repeat にbindする。細胞内にinternalization された後、 PCSK9とLDL受容体の結合は強くなり、LDL受容体が細胞外へリサイクルされるのを抑制する。2)
PCSK9のloss-of-function mutation は、低コレステロール血症となる。 gain-of-function mutation では、高コレステロール血症 となる。
REGN722は、PCSKに特異的なモノクローナル抗体で、LDL受容体のdegradation を抑制する1)。スタチンはLDL受容体遺伝子発現を増強するが、PCSK9の産生も促進する。1)



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

は?

 

加齢がメラノーマの治療に与えるインパクト

2016-04-11 06:06:08 | 癌の治療法
Aging impacts therapeutic response of melanoma cells

April 4, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160404134025.htm

癌のリスクは加齢により上昇するが、それは年を取るにつれて細胞にダメージが蓄積して慢性的な炎症が生じるようになるからである
今回ウィスター研究所を中心とする科学者の国際チームがNature誌で発表した研究結果によると、年老いたメラノーマの腫瘍細胞は、若い腫瘍細胞とは振る舞いが異なるという
微小環境microenvironmentの変化は、年老いた腫瘍細胞をより転移しやすく、そして標的治療に対して抵抗しやすくする
この研究結果の観点からin light of these findings、科学者たちは年老いたメラノーマ患者にとって抗酸化物質がどのようにしてより良い戦略として働くのかを実証した

「遺伝子変異を特に標的とする治療への応答ならびに転移、その両方に微小環境が深い影響を与えるという研究結果はとても魅力的だ
これは腫瘍が決して『島』ではなく/no tumor is an island、それだけで独立した存在ではないことを我々に教える
ドライバ変異に対する標的治療でさえ、腫瘍細胞がその微小環境とコミュニケーションすることにより影響を受ける」
ウィスターで腫瘍微小環境転移プログラムの準教授associate professorである筆頭著者lead authorのAshani Weeraratna, Ph.D.は言う

※No man is an island, entire of itself.(いかなる人も島ではなく、それ自体で独立してはいない; 人はみな持ちつ持たれつ(John Donne, 1624)


メラノーマは最も致死的なタイプの皮膚癌であり、進行した症例の患者が診断後に5年生き残れる可能性は20パーセントしかない
過去数年でメラノーマに対して複数の標的治療が承認されたが、これらの治療を受けた患者は結局は再発し、治療に抵抗するようになる


加齢と関連する癌の増加には複数の要因が寄与する可能性があるが、Weeraratnaのラボは特に腫瘍細胞の微小環境に生じる加齢に関する変化を初めて指摘した

皮膚の線維芽細胞dermal fibroblastは傷からの回復を助ける一方で、メラノーマ細胞の増殖と浸潤の一因ともなりうる
研究者は25歳~35歳または55歳~65歳の健康なドナーから得られた皮膚の線維芽細胞を使い、年老いた細胞集団におけるメラノーマ進行の違いにどのような要因が寄与するのかを理解しようとした


研究の結果、Weeraratnaたちは分泌される因子secreted factorの一つ、sFRP2が年老いた細胞中に存在することを特定した
sFRP2はβ-カテニンという別のタンパク質を負に調節し、通常β-カテニンはメラノーマ細胞の浸潤を妨げる

加えてβ-カテニンの喪失はいくつかのタイプの細胞で酸化ストレスを促進することがこれまで示されている
年老いた微小環境には遊離した酸素ラジカルを捕捉するスカベンジャーscavengerが少なく、活性酸素種(ROS)の活性が高くなることを研究者は示した

同時に、加齢によるβ-カテニンの喪失はメラノーマ細胞がROSを処理する能力を低下させ、遺伝子的に不安定な腫瘍になる

年老いたメラノーマ患者が経験するBRAF阻害剤のような薬剤への治療抵抗性は、ROS活性の増加ならびにβ-カテニンレベルの低下の両方とも抵抗性の増大に寄与することが判明した(BRAFはメラノーマ症例のほぼ半分で変異する遺伝子である)

また、ウィスターの科学者は抗酸化物質がどのようにして年老いたメラノーマ患者の治療にとって有効な戦略となりうるかを示した
N-アセチルシステイン/N-acetylcysteine (NAC) という抗酸化物質は、年老いた皮膚線維芽細胞の中にいるメラノーマ細胞を殺した

「我々の発見は加齢に適したやり方でメラノーマを治療することがどれほど重要かについて強調する」
Weeraratnaラボの大学院生graduate studentであり研究の筆頭著者first authorのAmanpreet Kaurは言う

「BRAFが変異した癌の治療に抗酸化物質が有効であることを確認した他の研究と一致して、この新たな治療戦略が年老いた集団にとってどれほど有益かというさらなるエビデンスを我々は得た」

ウィスターのビジネス開発チームは、標的治療に対する腫瘍微小環境の応答を包括的に問いただすためにバイオテクノロジー・製薬パートナーとの有意義なコラボレーションを積極的に探しているところである


http://dx.doi.org/10.1038/nature17392
sFRP2 in the aged microenvironment drives melanoma metastasis and therapy resistance

http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/fig_tab/nature17392_F3.html
Figure 3: Loss of APE1 renders melanoma cells more sensitive to oxidative stress in an aged microenvironment.
h, Schematic of sFRP2 effects in melanoma cells exposed to aged or young fibroblasts.


 [加齢線維芽細胞]sFRP2─┤Wnt↓─(Frizzled)→β-カテニン↓→TCF↓→MITF↓→APE1↓─┤ROS↑→DNAダメージ応答(DDR)→PPM1D,ATF2,ING1,p21,53BP1,γ-H2AX

 [若い線維芽細胞]SOD3─┤ROS



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/7375811853bf97f841338ba990da2cb5
抗酸化剤は癌の転移を促進するかもしれない



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/40e93d7550ffd29a7cf3d92a5aa7bcd2
抗酸化剤は悪性メラノーマの転移を加速する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ea5ba44b52c59d77bafb2571edfc908e
MEK阻害剤はT細胞の免疫応答を妨害する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a42f46f190c4e408448d70b0cd3aa91e
マトリックスから離れた通常の細胞はPPP低下によりROSが増大してアポトーシスする
 

血液脳関門を突破する方法が報告される

2016-04-10 06:06:59 | 
Blood-brain barrier breakthrough reported by researchers

April 8, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160408132649.htm


(FDA承認薬のLexiscanはアデノシン受容体を活性化させることが明らかになった
アデノシン受容体はBBB細胞上に発現している

Credit: Dr. Margaret Bynoe, College of Veterinary Medicine at Cornell University)

コーネル大学の研究者は、血液脳関門/blood brain barrier(BBB)を突破penetrateする方法を発見した
これは近いうちにアルツハイマー病や化学療法抵抗性の癌のような疾患を治療する薬剤を脳内へ直接送り届けることを可能にするかもしれない


BBBは内皮細胞endothelial cellの層であり、脳の機能に必要な分子、例えばアミノ酸や酸素、グルコース、水などが進入することを選択的に許可し、それ以外は中に入れないようにするための関門barrierである
コーネルの研究者の報告によると、FDAに承認されたLexiscanという薬はBBB細胞上に発現するアデノシン受容体を活性化させるという

※Lexiscan: レガデノソン/Regadenoson

「これにより我々は短い時間の間だけBBBを開くことが可能である
それは治療を脳に届けるには十分長く、しかし脳を害するほどには長くない
我々はこれが将来様々な神経疾患の治療に使われることを期待している」
コーネルの獣医学大学で微生物学・免疫学部の準教授associate professorであるMargaret Bynoeは言う
BynoeはJCIで発表される今回の論文の首席著者senior authorである

論文によると、Bynoeのチームは化学療法薬をマウスの脳内に送るだけでなく、アルツハイマー病のプラークに結合する抗体のような巨大な分子すら送達可能だったという

Bynoeのラボはヒトの脳の初代内皮細胞を使ってBBBのモデルを工学的に作り上げ、Lexiscanがマウスにおける作用と同様のやり方でヒト細胞モデル上のBBBを開くことを観察した

Lexiscanは既にFDA承認薬であり、「アルツハイマー病やパーキンソン病、自閉症、脳腫瘍、化学療法抵抗性の癌のような疾患に対して薬剤を送るシステムにおける飛躍的な前進への可能性potentialは、遠い未来の話ではないnot far off」とBynoeは言う


http://dx.doi.org/10.1172/JCI76207
A2A adenosine receptor modulates drug efflux transporter P-glycoprotein at the blood-brain barrier.
アデノシンA2A受容体は血液脳関門の薬剤排出トランスポーターP糖蛋白質を調整する

Abstract
BBBは脳を末梢循環内の有害な物質から保護している
BBBは脳の恒常性を維持すると同時に、アルツハイマー病や脳腫瘍などの神経変性疾患の治療薬を中枢神経系(CNS)へ送達する際のハードルでもある
薬剤排出トランスポーターのP糖蛋白質(P-gp)は脳の内皮細胞に強く発現し、脳に送達される薬剤のほとんどの進入を妨害する

今回我々はFDA承認薬のA2Aアデノシン受容体アゴニストであるレガデノソン(Lexiscan)による受容体の活性化が、急速rapidlyかつ強力potentlyにP-gp発現と機能を低下させることを示す
これは時間依存的time-dependentで、そして可逆的なやり方reversible mannerである

我々はP-gp発現と機能の下方調整downmodulationが化学療法薬の脳内での蓄積と同時に起きることを、野生型マウス、マウスとヒトの脳の初代内皮細胞で実証する
これらの細胞はin vitroのBBBモデルとして働く

また、LexiscanはBCRP1(ABCG2)の発現を下方調節downregulateする
BCRP1はCNSの血管系vasculatureならびに他の組織で強く発現する排出トランスポーターである

最後に我々は、P-gpの下方調整を仲介するのがMMP9による切断やユビキチン化を含む複数の経路であることを特定した

これらのデータを基に、我々はBBB内皮細胞上のA2Aアデノシン受容体の活性化が治療薬を送り届ける時間帯を生じることを提案する
それは脳内への薬剤送達にとって微調整fine-tunedされたものであり、CNSへの薬剤送達技術としての潜在性を持つ


https://www.jci.org/articles/view/76207/figure/9
Figure 9
A2Aアデノシン受容体のシグナル伝達が細胞透過性を調節するメカニズム


(a) 基底状態では、脳内皮細胞の単一の層がP-gpを含む輸送体を強く発現している
(b) アデノシン受容体が、アデノシンまたはLexiscanによって活性化されると、
(c) それは脳内皮細胞上のP-gpを下方調節し、
(d) 細胞透過性を増大させてP-gpの基質を脳内へ送達する
その後P-gpの基質substrateが脳内皮細胞を越える時、最終的にどの輸送体が分子を脳内の側へ送り届けるのかは不明である



関連サイト
http://astamuse.com/ja/published/JP/No/2013540748
出願人 コーネルユニバーシティー
血液脳関門の透過性を調節するためのアデノシン受容体シグナル伝達の使用法



関連記事
https://blog.goo.ne.jp/news-t/e/cce233b5cfcfa9bc5ab09af62ccdcff6
低酸素ならびにアデノシンが多い微小環境で、T細胞はA2Aアデノシン受容体を介して阻害される


<コメント>
カフェイン/Caffeinはアデノシン受容体(A1、A2A、A2B、A3)のアンタゴニスト

 

癌細胞がマトリックスから離れて生き残る方法(補足)

2016-04-09 06:06:23 | 
Antioxidant and oncogene rescue of metabolic defects caused by loss of matrix attachment.
抗酸化物質と癌遺伝子はマトリックス付着の喪失によって引き起こされる代謝的な障害を救済する

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19693011
Nature. 2009
Joan Brugge et al.

Abstract
正常な上皮細胞は生存するためにマトリックスへの付着attachmentを必要とするが、腫瘍細胞は細胞外マトリックス(ECM)というニッチの外側で生き残ることが可能である
その能力は『足場への非依存性anchorage independence』の獲得に依存する

アポトーシスは、適切なECM付着を欠く細胞を消去するための最も迅速なメカニズムである
しかし最近の報告では、マトリックスを欠乏させた細胞においてアポトーシスが阻害されると、非アポトーシス的な細胞死プロセスが生存を妨げることが示唆されている


今回我々はECMから分離した乳腺上皮細胞mammary epithelial cellがグルコース輸送の喪失によりATP欠乏を引き起こすことを実証する

※グルタチオンの合成にはATPが必要、還元にはNADPHが必要

ERBB2(HER2)の過剰発現は、EGFRの安定化ならびにPI3K活性化を通じてグルコース取り込みを回復することによりATP欠乏から救う
そしてこの救出は、グルコースによって刺激される『抗酸化物質を生成するペントースリン酸経路(PPP)』を通じた流れに依存する


特に注目に値するのはnotably、このATP欠乏はグルコース取り込みによる救出がなくても、抗酸化物質の投与によって救出されうるということである

この救出は脂肪酸酸化の刺激に依存することが判明した
脂肪酸の酸化は、分離detachmentによって誘発される活性酸素種(ROS)によって阻害される


これらの発見の意義significanceは、乳腺腺房mammary aciniの管腔スペースにおけるマトリックス欠乏細胞でROSが増加するというエビデンス、そして抗酸化物質がマトリックス欠乏細胞の生存を助長し、足場に依存しないコロニー形成を促進するという発見によって支持された

これらの結果は、代謝活性の調節におけるマトリックス付着の重要性、そしてマトリックス環境の変化において細胞が生存するための思いがけないメカニズム(ATP生成からの抗酸化物質の回復によるメカニズム)を示す