機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

ケトン食がてんかんに効く理由はケトン体ではない

2015-11-30 06:06:59 | 
New diet provides hope for treating patients with drug resistant epilepsy

November 25, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151125083815.htm

ロイヤル・ホロウェイロンドン大学ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの科学者は、
てんかんが制御できない患者の治療を助けるために使うことが可能な特別な食品を同定した
Brain誌で発表された今回の研究結果は、ケトジェニック・ダイエットがどのような作用により薬が効かないてんかん患者の発作を抑えるのかについて明らかにする


てんかんは世界で5000万人が苦しむ疾患であり、てんかんと診断された患者の約3分の1が現在の治療法では適切にコントロールできないままである

イギリスの研究チームは、MCT(medium chain triglyceride; 中鎖脂肪)によるケトジェニック・ダイエットによって生じる『デカン酸decanoic acid』という特定の脂肪酸が強力な抗てんかん効果を持つことを明らかにした
ケトジェニック・ダイエットは脂肪が非常に多く、炭水化物を含む食品が少ない食事である

※MCT: 炭素数がC8からC14の中鎖脂肪酸からなる中性脂肪のこと。特にC10以下の脂肪酸から構成される脂肪酸は肝臓で消化されやすい


「ケトジェニック・ダイエットによって生じる脂肪を分析することにより、我々はデカン酸が現在てんかんに用いられる薬よりも優れており、さらに副作用も少ないかもしれないことを明らかにした」
ロイヤル・ホロウェイ生物科学校School of Biological Scienceの生物科学センターCentre for Biomedical Sciences
で教授のRobin Williamsは言う

ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの神経学研究所で教授のMatthew Walkerは次のように付け加えた
「この発見により、我々はてんかん治療を著しく改善するであろう新たな処方を開発できるようになる
 これは子供から大人までのてんかんを管理するためのまったく新しいアプローチを提供する」

Williams教授は言う
「ケトジェニック・ダイエットの治療メカニズムはデカン酸という脂肪であり、
一般に信じられているようにケトン体の生成によるものではない
この発見により我々はケトジェニック・ダイエットの改善を進めることが可能になる
さらに、我々の発見はこのダイエットを単純に『MCTダイエット』と改名すべきであることを示している」


http://dx.doi.org/10.1093/brain/awv325
Seizure control by decanoic acid through direct AMPA receptor inhibition.


<コメント>
ケトン食の抗てんかん効果はケトン体によるものではなかったようです
特定の脂肪酸だけでいいなら、わざわざ脂肪80%にしてケトン体を作る必要はありませんね



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/26dc841dbc7d25c72156dffba447ac93
G1Dで唯一証明された治療は高脂肪のケトン誘発食だけだが、患者のおよそ3分の2にしか効果がない。加えてケトン食は腎結石と代謝性異常のような長期リスクがある。
本研究の結果によれば、トリヘプタノインはケトン誘発食と同程度に効果的なようである
 

テストステロンはパーキンソン病リスクの性差を説明するか

2015-11-29 06:20:59 | 
Male hormone testosterone cause of sex differences in parkinson's disease risk, study suggests

November 18, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151118101922.htm

男性は女性の2倍パーキンソン病になりやすいが、テストステロンがその原因かもしれない

ラットのドーパミンニューロンでは酸化ストレスによる損傷をテストステロンが悪化させ、それはCOX2というタンパク質を通じてだった
COX2の作用を阻害すると、テストステロンの影響はなくなった

これらのデータは、テストステロンが酸化ストレスによるドーパミンニューロンの損傷と細胞死を促進する可能性を示すという

 テストステロン─(COX2)→酸化ストレス↑→ドーパミン細胞死↑→パーキンソン病↑



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/07/130726191522.htm
テストステロンの急激な減少は男性にパーキンソン病の症状を引き起こすかもしれない

一酸化窒素nitric oxide (NO) は脳と体にとって重要な分子だが、iNOSによって過剰に作られるとニューロンは死に始める

実験でマウスを去勢したところ、脳内のiNOSレベルと一酸化窒素レベルが劇的に上昇した
iNOS遺伝子を欠損させたマウスでは、去勢してもパーキンソン病のような症状を引き起こさなかった
これはテストステロンの喪失がNOの増加により症状を引き起こすことを示す

 テストステロン─┤iNOS↓→NO↓→パーキンソン病様の症状↓


<コメント>


 

小細胞肺癌の循環腫瘍細胞を培養することに成功

2015-11-28 06:06:53 | 
Circulating small cell lung cancer cells successfully cultivated for the very first time

November 19, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151119103547.htm

小細胞肺癌/SCLCのほとんどは、腫瘍が既に転移を形成した後で診断される
なぜSCLCがこれほど急速に転移するのかはこれまで不明だったが、その理由は患者から十分な量の腫瘍の素材materialが得られないことにあった
今回の研究でウィーン医科大学外科部のGerhard Hamilton率いる研究チームは組織培養を無制限に増殖させることに成功した
研究成果はOncoImmunology誌に掲載される


オーストリアでは毎年約4000人が肺癌で死亡し、そのほぼ90%が喫煙歴数十年のヘビースモーカーである
この悪性腫瘍は特に女性で増加しつつあり、今では乳癌を抜いて女性の癌での死因1位になった

肺癌の15%は小細胞肺癌/SCLCである
ほとんどの症例で診断時に既に転移が形成されており、相応してcorrespondingly予後は悪い
治療は細胞毒性による化学療法と放射線療法で、転移したステージでは手術は効果がないため実施されない

初めのうちはSCLC患者のほとんどが治療の組み合わせにとてもよく反応するが、ほぼ1年以内に腫瘍は再発し、それらは治療抵抗性であるために生存率は劇的に減少する
なぜこの癌はこれほどまでに悪性なのかを調べることはこれまで不可能だったが、その理由は集められて得られる生検がほんのわずかで、生体分子的分析で利用できるほどの十分な細胞素材が存在しなかったためである
研究の開始時点でわかっていたのはSCLC患者の血中には非常に多数の循環腫瘍細胞/CTCが存在するということだけだった


Gerhard Hamiltonを中心とする研究グループは、分子腫瘍学グループのRobert Zeillinger、オットー・ワーグナー病院のMaximilian Hochmairらと協力して
進行SCLC患者の循環腫瘍細胞を永続的に培養するための手法を確立しようと努力してきた
彼らはその手法を使い、永久に増殖できる4つの細胞系統の開発に成功した

これにより彼らは腫瘍細胞がどのようにして免疫系を操作するのかを説明できるようになった
単球はマクロファージに分化させられ、化学的メッセンジャー物質がその極性polarityを変化させる
このマクロファージは腫瘍細胞と戦う代わりに炎症性の微小環境を作り出し、癌細胞の転移をさらに刺激する
さらに、主なリスク集団には肺癌の発症前に慢性閉塞性肺疾患/COPDが既に存在したという兆候もあり、これも循環腫瘍細胞の形成を促進していた

このまったく新しい発見は一流誌のOncoImmunology誌に発表された
この研究はSCLC腫瘍の転移の説明に役立ちgo a long way towards explaining、おそらく他の悪性腫瘍にも関連性があるだろう

Hamiltonたちの次の目標は、再発したSCLCがなぜ化学療法に抵抗するのかについての理由を明らかにすることである


http://dx.doi.org/10.1080/2162402X.2015.1093277
Small cell lung cancer: recruitment of macrophages by circulating tumor cells.

ABSTRACT
腫瘍関連マクロファージ/TAMは腫瘍の進行ならびに抗腫瘍免疫の抑制、そして播種性転移disseminationにおいて重要な役割を演じる

血液中の単球は腫瘍領域に浸潤し、腫瘍の局所的な微小環境によってプライミングされて腫瘍増殖と浸潤を促進する

腫瘍とマクロファージは多くのサイトカインやファクターによって相互作用することが知られているが、
想定される循環腫瘍細胞/CTCの寄与はこれまで知られていない

CTCの特徴は移動の増加ならびに細胞外マトリックス/ECMを分解して血流に入り二次的な病巣を形成する能力だが、この転移形成が癌患者の大半の主な死因である

我々は進行SCLC患者の血液サンプルからBHGc7とBHGc10という2つの永続的CTC細胞系統を確立し、それによりCTCと免疫細胞の相互作用を調べることが可能になった


末梢血単核球/peripheral blood mononuclear cells (PBMNCs)とCTCとの共培養、またはCTCならし培地conditioned medium/CTC-CMを添加した結果、
単球からマクロファージへの分化 ならびに TAMのマーカーを発現するCD14+ CD163weak CD68+マクロファージを生じた

さらに、CTCによってプライミングされたマクロファージの上清を約100種のサイトカインに関してスクリーニングし、
局所転移性の細胞系統であるSCLC26Aによって誘発されたそれと比較した


SCLC26A-CM(conditioned medium/ならし培地)によってリクルートされたマクロファージは、以下のような発現を示した
オステオポンチン/osteopontin (OPN)、
ケモカインのMCP-1、IL-8、
キチナーゼ様タンパク質のchitinase3-like 1 (CHI3L1)、
血小板因子4 (Pf4)、IL-1ra、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9 (MMP-9)

対照的にBHGc7-CMは、
補体因子D (CFD)/アディプシンadipsin、ビタミンD結合タンパク質 (VDBP) の著しい過剰発現を誘導し、
オステオポンチン、リポカリン2 (LCN2)、CHI3L1、uPAR、MIP-1、GDF-15/MIC-1の分泌を増加させた

再発SCLC非依存的に由来するBHGc10は、ENA-78/CXCL5の発現を加えたほぼ同一のパターンを示した

非腫瘍HEK293細胞系統のCMはマクロファージを誘導せず、一方で末梢血単核球/PBMNCsと組み換えCHI3L1はポジティブな結果を生じた

したがって、SCLC患者CTCの特異的な寄与は
CFD/adipsinに影響し(おそらく免疫/悪液質に関与する)、
他にもVD-BP(マクロファージ活性化因子のGc-MAFを生じる)、GDF-15/MIC-1(腫瘍細胞の悪性表現型を促進する)、ENA-78/CXCL5(血管形成性の好中球を引き寄せる)に影響を与える


結論
循環腫瘍細胞/CTCは特に腫瘍関連マクロファージ/TAMを操る能力があり、
侵襲性invasiveness、血管形成angiogenesis、免疫抑制、そしておそらく脂質異化作用lipid catabolismを増大させる
 


<コメント>
GcMAFを免疫療法と称して使うところもあるようですが。



関連サイト
http://aasj.jp/news/navigator/navi-news/1821
マサチューセッツ総合病院とハーバード大学が転移性乳癌細胞のCTCを培養することに成功



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141222111651.htm
CHI3L1はメラノーマを肺に転移しやすくする
セマフォリン7aはインテグリンβ1またはプレキシンC1と相互作用することによってCHI3L1を調節する
インテグリンβ1はCHI3L1を促進し、プレキシンC1はCHI3L1を抑制する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f772188fee77e2fb3f738a8b070b6382
Aiolosという転写因子はアノイキスを抑制して肺癌細胞の転移を促進する
 

ビタミンC点滴療法について検索してみた

2015-11-27 06:14:49 | 癌の治療法

たまにはブログっぽい記事も書いてみます


つい最近「抗酸化剤は悪性メラノーマの転移を加速する」「抗酸化剤は癌の転移を促進するかもしれない」という記事がたて続けに一流誌に発表されましたが、
記事中の抗酸化物質はビタミンEなどであってビタミンCではありませんでした
ビタミンCはどうなんだろう?と思ってちょっと調べてみました

ビタミンCが癌に効くと主張する人たちの根拠は、過酸化水素が発生して癌を殺すということのようです
例えば次のページには「赤血球はカタラーゼで過酸化水素を無効化するので癌細胞だけに効く」という、
なんだかテキトーな説明があります
http://murakaminaika.com/treatment/treatment_2.html

腫瘍がカタラーゼを発現しない根拠でもあるんだろうか? と思って検索するといきなりこんなのが引っかかって吹きました
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22551313
"Natural resistance to ascorbic acid induced oxidative stress is mainly mediated by catalase activity in human cancer cells and catalase-silencing sensitizes to oxidative stress."

>Fifty-five percent of the human cancer cell lines tested were unable to protect themselves against oxidative stress mediated by ascorbic acid induced hydrogen peroxide production.
(ヒト癌細胞系統の55%はアスコルビン酸を介する酸化ストレスから自らを保護できなかった)

ということで、実験ですら半分にしか効かないようです
一気にうさんくさくなりました

少し検索しただけで「クズの実情を暴く」的な記事が山ほど出てきてウンザリしますが、
http://asia11.hatenablog.com/entry/2013/04/07/170432

調べもしないであまり疑うのも良くないかなと思い、Sciencedailyで過酸化水素と癌の記事を検索してみました


・過酸化水素はシグナルとして使われる
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141218103211.htm
>過酸化水素が発生するとすぐにペルオキシレドキシンに捕捉されるが、それは単に酸化を防ぐためではない
>ペルオキシレドキシンはSTAT3を酸化してシグナルを伝える
>STAT3の酸化状態は、転写因子として遺伝子の活性をどれだけ効率的に調節できるかを左右する
>「腫瘍細胞は大量のH2O2を作り出し、通常の細胞よりも高レベルの酸化シグナルを使って腫瘍の増殖を促進する」

Nature Chemical Biology誌に掲載された2014年の論文についての記事ですが、
(Peroxiredoxin-2 and STAT3 form a redox relay for H2O2 signaling. Nature Chemical Biology, 2014; 11 (1): http://dx.doi.org/10.1038/nchembio.1695

なんと過酸化水素は腫瘍が自前で大量生産しているそうです(笑)
いきなりメッキがはがれて地金まで見えてしまったようですが、気を取り直して次に行ってみましょう


・過酸化水素は癌の転移を促進する
http://www.sciencedaily.com/releases/2009/09/090916090911.htm
>正常な細胞は活性酸素を使って増殖と移動のシグナルを伝え、好中球のような免疫細胞は活性酸素で細菌を殺す
>今回我々は活性酸素が浸潤突起invadopodiaの形成に必要であることを発見した
>浸潤突起により癌細胞は転移することができるようになる

Science Signalingに掲載された論文についての記事で、活性酸素は癌細胞の転移に必要だそうです
ビタミンCは大量の活性酸素を出すそうですが、大丈夫なんでしょうか


こんな記事しかないのかと思っていたところ、なんとビタミンCを直接注射することで腫瘍の成長を遅らせたという2008年の記事がありました
さっそく見てみます

・高濃度のビタミンCは過酸化水素を介して腫瘍の増殖と転移を抑制する
http://www.sciencedaily.com/releases/2008/08/080804190645.htm
>43の癌細胞系統と5つの正常な細胞系統で実験したところ、高濃度のビタミンCは癌細胞系統の75%で抗癌作用があり、
>転移性の卵巣癌、膵臓癌、膠芽腫を移植した免疫不全マウスでは、腫瘍の増殖と重量が約50%減少し、転移が抑制された


これはPNASに掲載された論文で、記事の発表はNIHから
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18678913
"Pharmacologic doses of ascorbate act as a prooxidant and decrease growth of aggressive tumor xenografts in mice."


パッと見の内容は良いですが、論文を見ると腹膜腔内注射injection into the peritoneal cavityで、点滴ではありません
腫瘍内の血管は漏れていることが多いため、点滴では論文のような必要濃度まで到達しないでしょう

しかも体重1kgあたり4g/日という超高濃度(60kgのヒトでは毎日240g(え
そこまでしないと効かないなら、むしろ「ビタミンCは点滴ですら効かない」と主張するための根拠にできます

中途半端な濃度では上記のNature Chemical Biology誌の論文のようにペルオキシレドキシンにあっという間に捕捉され、かえって転移や増殖を促進しかねません
加えて最近の記事「抗酸化剤は転移を促進する」に出てきた肺癌やメラノーマの系統がありませんね


他にも「過酸化水素は外傷の治癒を促進する」という記事も引っかかりました
http://www.sciencedaily.com/releases/2009/06/090603131431.htm
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/05/110524171251.htm
治癒を促進する、つまり細胞の増殖を促進するということで、これも癌に有利な環境を作りそうです

マクロファージなどの免疫細胞を引き寄せるというのは、外傷治癒には役立ちそうですが、
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/04/120409164515.htm

癌はむしろそれを利用してマクロファージなどを引き寄せて増殖するようです
http://www.sciencedaily.com/releases/2010/12/101214181916.htm
>腫瘍細胞は過酸化水素を作り、免疫細胞を濃度勾配により引き寄せる
>過酸化水素を制限すると癌細胞の増殖は低下した


ということでビタミンC点滴療法に有利な記事は一つも見つからず、やっぱりというかロクなものではないようです
また何か思いついたら検索してみることにします
 

NK細胞による新しい免疫療法

2015-11-26 06:42:56 | 癌の治療法
New target for immuno-oncology therapies

Discovery could have an impact on cancer treatment

November 16, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151116181340.htm

NK細胞の表面にあるDNAM-1受容体(CD226)はNK細胞の機能を刺激して、癌細胞を消去する能力を増す

反対に、TIGIT受容体は癌細胞と相互作用してNK細胞の能力efficiencyを低下させるが、
DNAM-1受容体はそうした受容体と競合する


最近、抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体のような癌への免疫療法が開発されているが、
「我々の発見はTIGIT受容体への抗体が新たな免疫療法になりうることを明らかにする」
とモントリオール臨床医学研究所/Institut de recherches cliniques de Montreal (IRCM) のAndré Veillette, MDは言う

「そのような抗体はDNAM-1の機能を改善し、NK細胞が癌を破壊する能力を改善する
この種の治療法は次世代の癌治療に強いインパクトを与えるだろう」


http://dx.doi.org/10.1084/jem.20150792
DNAM-1 controls NK cell activation via an ITT-like motif.
DNAM-1はITT様モチーフを介してNK細胞活性化を制御する

DNAM-1 (CD226) はNK細胞やCD8+T細胞などに発現する活性化受容体である
リガンドであるCD155やCD112との結合により、DNAM-1はNK細胞を介した形質転換細胞ならびにウイルス感染細胞の消去を促進する
また、ウイルス特異的メモリーNK細胞の増殖expansionならびに維持にも重要である

今回我々は、DNAM-1がNK細胞を介して発揮する細胞傷害性ならびにサイトカイン産生のメカニズムを明らかにする


DNAM-1によって引き起こされる細胞傷害性ならびにサイトカイン産生は、
DNAM-1のチロシンならびにアスパラギンをベースとする保存された細胞質内モチーフによって仲介される

このモチーフがSrcキナーゼによりリン酸化されると、DNAM-1がアダプタータンパク質のGrb2に結合できるようになる
その結果として、Vav-1酵素、ホスファチジルイノシトール3′キナーゼ、ホスホリパーゼC-γ1の活性化につながった
さらに、ErkとAktの活性化、ならびにカルシウムの流れfluxesも促進した

しかし、報告されていた通りDNAM-1は接着を促進したものの、
この(接着促進の)機能は(DNAM-1の)シグナルに依存せず、細胞傷害性を促進するには不十分だった

DNAM-1シグナル伝達は細胞傷害性を促進するためにも必要だったが、
それはアクチンの重合化actin polymerizationならびに顆粒の極性化granule polarizationによるものだった


我々はDNAM-1がimmunoreceptor tyrosine tail (ITT) 様のモチーフを介してNK細胞の活性化を促進することを提案する
それはDNAM-1からGrb2への結合coupleならびに下流のエフェクター分子に作用することによる



関連サイト
http://dx.doi.org/10.1038/nri3799

CD112やCD113、CD155と相互作用することで、ITT様モチーフを持つTIGITはチロシン225がリン酸化され、細胞質のアダプタをGRB2に結合する
GRB2はSHIP1をリクルートして、PI3KとMAPKシグナル伝達を阻害する
さらに、リン酸化したTIGITはβ-アレスチン2を通じてSHIP1をリクルートし、TRAF6の自己ユビキチン化を阻害することによりNF-κB活性化を損なう



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151113051121.htm
TRAILで武装したリポソームをNK細胞に結合させると「スーパーNK細胞」に変化し、リンパ節の腫瘍細胞を殺して転移を防ぐ



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151019154115.htm
急性リンパ芽球性白血病/ALLの細胞をアゴニスト抗体を使ってNK細胞に変換すると、IFN-γなどを分泌して他の白血病細胞を殺す
 

アルツハイマー病: APPとGABA

2015-11-25 06:06:32 | 
Alzheimer research: new findings

November 16, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151116084858.htm

現在のアルツハイマー病に関する研究は、プラーク形成の原因となるアミロイド前駆体タンパク質/APPに焦点を当てている
ドイツ・ルール大学ボーフム/Bochumの研究者は、APPがプラークの形成に加え、もう一つ別のメカニズムによりアルツハイマー病の発症に影響する可能性を実証した


細胞膜のタンパク質
Protein in the cell membrane

ある状況下で、APPは細胞核内で核スフィア/nuclear sphereという『球状の構造』の形成を促進する
このスフィアはいくつかの遺伝子活性に影響し、神経伝達物質の活性が調整される可能性が生じる
神経伝達物質とは神経細胞から他の細胞へ興奮excitationを伝える生化学的な伝達物質である

APPそれ自体は細胞膜に固定されたタンパク質だが、他のタンパク質が結合できる複数の固定箇所を細胞質内に持ち、多くの様々なプロセスを引き起こす
そのようなタンパク質の一つがFE65というアダプタータンパク質であり、
特定の状況下でそれはAPPの助けを借りて細胞核の中へと移動して、核内で他のタンパク質と共に上記の『球状の構造』を形成する
それがどのようにして細胞に影響するのかはこれまで不明だった


様々な細胞培養間の比較
Comparison between different cell cultures

医療プロテオーム研究センター/Medizinisches Proteom-CenterのThorsten Müller博士は、スフィアが潜在的に脳に与える影響を理解するための研究について説明している
彼らはスイッチがオフの状態ではスフィア形成を示さない細胞と、スイッチがオンになった細胞とでその変化を比較した
「我々は特定のスフィア形成を促進する細胞培養モデルを確立し、スイッチの入った細胞がスフィアを形成するようにした
そのプロセスにおいて、スフィアを形成する細胞ではbestrophin 1という遺伝子が高い発現を示すことが明らかになった」


神経伝達物質とアルツハイマー病
Biochemical transmitters and Alzheimer's disease

bestrophin 1は最近、アルツハイマー病において神経伝達物質の活動が損なわれた状況において特徴が記述されているdescribed

「アルツハイマー病の脳脊髄液において、神経伝達物質のGABAのレベルが上昇することが既に報告されている
我々の研究は、神経伝達物質の調整がどのようにしてAPPと相関するのかについて明らかにする」

Thorsten Mülller博士は彼らの研究と医科学との関連についてそのように述べるelaborate


将来の治療への出発点
Starting point for future therapies

したがって、これまでの想定に反して、
APPは最初にプラーク形成の前駆体として関与するのではなく、
まず神経伝達物質の活動を阻害するゆえにinasmuch as、アルツハイマー病の発症に影響する

「この仮説はアルツハイマー病の治療の開発にとって興味深い出発点を提供する」
Thorsten Müllerはそう考えている


http://dx.doi.org/10.1016/j.cellsig.2015.10.019
Nuclear spheres modulate the expression of BEST1 and GADD45G.

Highlights
・FE65/TIP60を誘導できるinducible安定した細胞系統を確立した
・FE65/TIP60による核スフィアは、議論されている標的遺伝子を一貫して調節することはない
・FE65/TIP60による核スフィアはBEST1ならびにGADD45G遺伝子発現を調節する


Abstract
核スフィア/nuclear spheresは、FE65, TIP60, BLMと他のまだ未知のタンパク質から構成される
アミロイド前駆体タンパク質/APPは、これらの非常に毒性の強い蓄積物が細胞核内において形成される際に重要な役割を演じる
したがって、核スフィアはアルツハイマー病/ADに重要な役割を演じるかもしれない

しかしながら、スフィアについての研究は、スフィアが形成されると細胞死が増大するために妨害される
今回我々は、ドキシサイクリンDoxycycline刺激後のFE65とTIP60の誘導的な発現をベースとする安定した核スフィアモデルを初めて確立した

我々はこれまでhitherto異論の多かったcontroversially標的遺伝子を研究し、
それらが論争controversyされてきた理由について手がかりを与え、さらに、
新たにbestrophin 1ならびにGADD45G/growth arrest and DNA-damage-inducible protein gammaが非常に確かな標的遺伝子であることを報告する

さらに定量的PCR/qPCRの研究により
これら標的遺伝子の調節はFE65またはTIP60のみの誘導には依存せず、核スフィア生成に強く依存することが明らかになった

bestrophin 1イオンチャネルは最近GABAの異常なリリースに関与することが記述された
我々の研究は、アルツハイマー病と関連する神経伝達物質の変化とAPPとの間のミッシングリンクを明らかにする可能性がある



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5d8b0a95df45851a5ab18f8741186fd3
アルツハイマー病モデルマウスの脳では反応性アストロサイトがプトレシンからモノアミンオキシダーゼBによってGABAを産生し、Bestrophin-1チャネルを通してGABAをリリースしてシナプス伝達の間の正常な情報の流れを抑制する



関連サイト@ルール大学ボーフム
http://www.ruhr-uni-bochum.de/mpc/functional_proteomics/morbus_alzheimer/projects/index.html.en
Figure 1
(E) Hypothetical model of the APP signal transduction relevant for this proposal.
今回の提案と関連するAPPシグナル誘導の仮説モデル


手短に言うと、APPは細胞質内ドメインのスレオニン668リン酸化の結果として核へシグナルを送りsubmit、
続いてsubsequently、APPとFE65の結合を減少させる

FE65は核内に移動してTIP60と相互作用し、それは核スフィアの生成として目に見えるようになるvisualized

BLMと推定上の未知のタンパク質もスフィアの要素である

FE65ノックダウンにより
核内タンパク質でありDNA修復にも関与するBLMタンパク質ならびにMCMファミリーは、著しく調節を外れたde-regulation

FE65ノックダウン細胞における増殖の減少ならびにDNA複製速度の低下に加えて、これらの発見は、
DNA修復におけるFE65ならびに核スフィアの関連性relevanceを指し示す


有糸分裂後post-mitoticのニューロンは典型的には最終分化して静止状態にあるが、
そのニューロンが細胞周期に再び入るre-entryすると細胞死を引き起こす可能性がある

我々が詳細な研究と実証を目指しているこの示唆される経路は、認知症における神経変性の一因であるかもしれない



http://jcs.biologists.org/content/126/11/2480
Figure. 7
神経変性におけるFE65の役割に関するメカニズム
Suggested mechanism for the role of FE65 in neurodegeneration.


FE65はDNA複製において重要な役割を演じ、アルツハイマー病においてニューロンが細胞周期に再び入る原因であると推定される

FE65はAPPと結合する重要なタンパク質である
FE65のPTB2ドメインはAPPのYENPTYモチーフと相互作用するが、
この相互作用はAPPのVTPEモチーフ内にあるスレオニン688/T668のリン酸化状態に依存する(もちろんAPP切断にも依存する)

結果としてFE65のAPPへの結合は弱まり、解放されたFE65は核内に移行して『Bloom症候群タンパク質/BLM』を安定化させる
この相互作用はDNA複製ならびに細胞増殖的変化と関連する

※BLM: Bloom症候群の原因とされるヘリカーゼ


関与すると推定されるタンパク質はTERF2であり、さらにMCMタンパク質ファミリーとも関与すると思われる

対照的に、FE65のノックダウンは、BLMならびにPRDX4を含めたERタンパク質の蓄積につながる

ニューロンにおいてDNA複製が再び開始される(ニューロンが細胞周期に再び入る)ことで結果としてアポトーシスすることが知られている

ゆえに、ニューロンにおける高レベルのFE65(アルツハイマー病の脳にも存在することが知られる)、または核内でのFE65の上昇は、結果として神経変性を生じる
 

ココナッツオイルはカンジダ菌をコントロールする

2015-11-24 06:22:53 | 腸内細菌
Coconut oil can control overgrowth of a fungal pathogen in GI tract, study in mice suggests

November 18, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151118125325.htm

タフツ大学/Tufts Universityの研究者を中心とした学際的な研究により、ココナッツオイルは真菌病原体のカンジダ・アルビカンス/Candida albicans (C. albicans) の過剰な増殖を効果的にコントロールすることがマウスの実験で明らかになった
ヒトの胃腸でカンジダ菌が過剰に増殖すると血流による感染につながり、侵襲性カンジダ症invasive candidiasisなどを引き起こす
mSphere誌で発表された今回の研究は、カンジダ菌による感染リスクを低下させるために抗真菌剤の代わりとして使える食品によるアプローチを示唆する


カンジダ菌は一般的な真菌病原体であり、胃腸の正常な微生物叢floraの一部である
普段は免疫系によって抑えられているが、免疫系が弱まると胃腸管を越えて広まり疾患を引き起こす日和見病原体である
カンジダ菌による全身感染は侵襲性カンジダ症を引き起こし、カンジダ感染は未熟児や高齢の患者など免疫の弱い患者で最も多い
CDCによるとこの感染はアメリカの入院患者で4番目に多い血液感染症である

抗真菌剤は腸管のカンジダ菌を抑えるために使われる
この薬剤はカンジダ菌が血流に拡散するのを阻止するが、繰り返し使うことで薬剤抵抗性の真菌病原体株が出現する
しかしカンジダ菌による感染を防ぐためには、胃腸管のカンジダ菌の量を減らす必要がある

微生物学者のCarol Kumamoto、栄養科学者のAlice H. Lichtensteinを中心とする研究チームは、油脂がカンジダ菌の量に与える影響をマウスの腸で調査した
研究に使われた油はココナッツオイル、牛脂、大豆油の三種類で、対照群のマウスには通常の食餌が与えられた
ココナッツオイルが選ばれた理由は、研究室の実験で真菌を抑える性質があったという以前の研究に基いている

実験の結果、ココナッツオイルが豊富なエサは牛脂や大豆油のそれと比較して腸のカンジダ菌を減少させた
ココナッツオイル単独、またはココナッツオイルと牛脂の組み合わせは、牛脂が豊富なエサと比較して腸のカンジダ菌を90%以上も減少させた

「ココナッツオイルは、牛脂からココナッツオイルへ切り替えたり、牛脂とココナッツオイルを同時に摂取させた時でさえ、
カンジダ菌のコロニー化を抑制した
この発見は既存の患者の食事へのココナッツオイルの添加がカンジダ菌の腸での増殖をコントロールする可能性を示唆し、
おそらくカンジダ菌による真菌感染リスクも低下させるだろう」
タフツ大学医学部の分子生物学と微生物学の教授であるKumamoto, Ph.D.は言う


http://dx.doi.org/10.1128/mSphere.00020-15
Manipulation of Host Diet To Reduce Gastrointestinal Colonization by the Opportunistic Pathogen Candida albicans.


<コメント>
mSphereという雑誌は初めて知りましたが、アメリカ微生物学会の新しいオープンアクセス・ジャーナルのようです
上の記事はタフツ大学のプレスリリースからですが、アメリカ微生物学会によるプレスリリースも別にありました
実験の内容が少し詳しく書かれています

http://www.asm.org/index.php/journal-press-releases/93865-coconut-oil-shows-promise-in-the-prevention-of-deadly-bloodstream-infection

こちらでKumamoto博士が言っているように、どのようなメカニズムなのかは気になるところです

>“There are two directions that we would like to take with this research now,” said Dr. Kumamoto.
>“One of them is finding out the mechanism of how this works. That is a big question we would like to answer.
> The second question is whether this can have any impact on humans.”
 

矮小銀河からのガンマ線でダークマターを調べる

2015-11-23 06:21:45 | 天文
Dark matter dominates in nearby dwarf galaxy

November 18, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151118155444.htm


(矮小銀河は星の数は少ないがダークマターは多い
上の画像はカリフォルニア工科大学 (Caltech) の 『現実的環境におけるフィードバック/Feedback in Realistic Environments (FIRE)』によるシミュレーション画像で、
左はそこから示される銀河系のような銀河の周囲に予想される星の分布、右図がダークマターの分布である
画像中の赤い円はさんかく座II/Triangulum IIのような矮小銀河を示す
矮小銀河は多くのダークマターを持つにもかかわらず、星の数は非常に少ない
さんかく座矮小銀河IIのようにダークマター優位の銀河は、ダークマターの自己消滅self-annihilationから放出されるガンマ線シグナルを検出をするための有力な候補excellent prospectsである)


ダークマターが『ダーク/暗い』と呼ばれるのはもっともな理由good reasonがある
ダークマターは通常の物質より10倍以上/by a factor of 10も多いが、その粒子が具体的に何なのかは不明であるelusive

※by a factor of ~:「~倍」。動詞がdecreaseなどの場合は「~分の一」の意

その存在は銀河における重力の影響によって推測されているが、これまで直接ダークマターからのシグナルを観察した者は一人もいない
天文学の助教授であるEvan Kirbyは、銀河に近い『さんかく座矮小銀河II/Triangulum II』の質量を計測することにより既知の銀河で最も高濃度のダークマターを発見した可能性がある


2015年に発見されたさんかく座IIは我々の銀河系の近くに存在する小さくて不鮮明な矮小銀河であり、その星の数はわずか1000個ほどに過ぎない
今回Kirbyは矮小銀河の中心を動きまわる6つの星の速度velocityを検討することでさんかく座IIの質量を計測した

Kirbyは「この銀河は観察するのが非常に難しいchallenging」という
「ハワイのケック望遠鏡で観察するのに十分明るい星は6つしかない」

Kirbyは6つの星の速度を計測して星にはたらく重力を推測し、銀河の質量を決定した
「この銀河の総質量は、目に見える星の総質量よりも本当に非常に大きかった
このことは、多くのダークマターが密集して詰め込まれた状態で存在し、莫大な総質量に寄与していることを意味する」

「この銀河の通常の物質に対するダークマターの比率は我々が知るどんな銀河よりも高く、
計測結果を見た私は声を出すのも忘れて驚くばかりだった(After I had made my measurements, I was just thinking--wow.)」


この結果から、さんかく座IIはダークマターのシグネチャーを直接検出するための最も有力な候補になりうるという
あるダークマターの粒子は超対称性WIMP (weakly interacting massive particles)と呼ばれ、それが互いに衝突して対消滅するannihilate際にガンマ線を生じて地球から検出できる可能性がある

現在の理論ではダークマターが宇宙のいたるところでガンマ線を生じていると予測されるが、パルサーから放出されるガンマ線のような宇宙のノイズの中からこれら特定のシグナルを検出するのは難題である
一方でさんかく座IIはとても静かな銀河であり、星を形成するためのガスや他の物質が存在しないため『死んでいる』銀河である
ダークマター粒子が衝突して生じるガンマ線シグナルは理論的に観察が容易である


しかしながら、Kirbyが計測したものが銀河の総質量であるかどうかが完全に確認されているわけではない
フランス・ストラスブール大学/University of Strasbourgの研究グループがさんかく座矮小銀河IIのちょうど外側の星の速度を計測し、
それらの星が予測に反して矮小銀河の中心に向かって近づく星the stars closer into the galaxy's centerよりも速く動いていることを明らかにしている
このことは、矮小銀河が銀河系の重力によって引き裂かれpulled apartつつあることを示唆する(『潮汐力で破壊される/tidally disrupted』)

※tidal disruption: 潮汐破壊

「次のステップは他の研究グループの結果を計測して確認することだ」とKirbyは言う
「もし外側の星が内側よりも速く動いていなければ、矮小銀河はいわゆる『動的平衡/dynamic equilibrium』状態にある可能性がある
であれば、ガンマ線でダークマターを検出するための最も優れた候補となりうるだろう」

この研究についての論文は11月17日号のAstrophysical Journal Lettersに掲載される


http://dx.doi.org/10.1088/2041-8205/814/1/L7
TRIANGULUM II: POSSIBLY A VERY DENSE ULTRA-FAINT DWARF GALAXY.


<コメント>
Triangulum IIの日本語訳が見つかりませんでしたが、他の矮小銀河の呼び方からとりあえず『さんかく座II/さんかく座矮小銀河II』としておきます




関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b90af671e5f7ca0075e8c8d3dd31c5fd
ダークマターの候補「ステライルニュートリノ」が崩壊したと思われるX線シグナルを捕らえる



関連サイト
http://www.astroarts.co.jp/news/2015/03/13reticulum2/index-j.shtml
「ダークマターを探すにあたり、矮小銀河からのガンマ線は、強力な証拠の1つと長い間考えられてきました。どうやら私たちは初めてその証拠を検出したようです」
ダークマターの正体はわかっていないが、ほとんど相互作用を起こさない粒子「WIMP」はダークマター候補の1つとされる。
 

4型糖尿病の発見

2015-11-22 06:04:57 | 代謝
Blocking immune cell treats new type of age-related diabetes

November 18, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151118155132.htm


(ソーク研究所の新しい研究は、年老いて痩せたマウスの糖尿病が脂肪組織の免疫細胞過剰によって引き起こされることを示す
上の図ではオレンジ色が脂肪組織中のTregを表し、年老いた糖尿病マウス(右図)では脂肪組織にTregが過剰に蓄積してインスリン抵抗性を引き起こす
Tregが阻害されるとマウスは再びインスリンに感受性になる)


糖尿病はしばしば肥満や悪い食生活の結果として起きるが、年老いた人の中には単に加齢の結果として発症する人がいるのかもしれない
11月18日にNatureで新たに発表された研究によると、年老いて痩せているマウスで発症する糖尿病/インスリン抵抗性は、肥満から発症するいわゆる2型糖尿病とは異なる原因から生じるようだ
共に研究に参加した主な科学者のRonald EvansとYe Zhenはこの新しい病態を『4型糖尿病』と呼んでいるが、今回の研究結果はその潜在的な治療法に向けた道を指し示す

「老人の糖尿病の多くは診断されていないが、その理由は彼らが2型糖尿病の古典的なリスク要因を持っていない、つまり肥満ではないからである」
ソーク研究所の遺伝子発現研究室のディレクターであり今回の論文の首席著者でもあるEvansは言う
「我々の発見が治療法につながるだけでなく、4型糖尿病が異なる疾患であるという認識につながることを期待している」


これまで糖尿病は、まれな『1型糖尿病』とほとんどが肥満が原因の『2型糖尿病』、そしてアルツハイマー病に似たような症状になる『3型糖尿病』に分類されてきた
しかしEvansは彼の家族ぐるみのより年老いた友人older family friendが痩せていながら糖尿病を発症した後、なぜ体重が増えていないのに年老いて糖尿病を発症する人がいるのかについて不思議に思うようになった


Evansは助教授のZhengたちとともに、健康なマウス、肥満と関連する糖尿病のマウス、加齢と関連する糖尿病のマウスで、それぞれの免疫系を比較した
その結果、加齢後に糖尿病を発症するマウスでは制御性T細胞(Treg)という免疫細胞が異常に高いレベルで脂肪組織に存在していた
一方、肥満と関連する糖尿病マウスは脂肪組織の量はより多かったものの、脂肪組織中のTregは通常レベルだった

「我々はこれらのマウスの脂肪組織中の免疫細胞の全数調査censusをした」
EvansとZhengのラボの大学院生graduate studentで筆頭著者のSagar Bapatは言う
「単に細胞の種類を数えるだけで、我々はすぐTregが他のグループよりも多く存在することに気付いた」


Bapatの説明によると、通常Tregは炎症の抑制を助ける細胞である
脂肪組織はエネルギーを蓄積しては放出しているため、常に分解され、そして再構築されている
脂肪組織は常に自身を作り直し、そのため、低レベルの炎症を必要とする

しかし、年老いていくにつれてTregが徐々に脂肪組織に蓄積する人がいるということが今回の研究で示唆された
もし細胞が『転換点tipping point』に到達すると脂肪組織の炎症は完全に阻止される
それは肝臓などの気付かれないunseen場所に脂肪沈着の形成を引き起こし、インスリン抵抗性につながりうる

「通常のTregは人体に有益だと考えられているので、この結果には驚いた」
Zhengは言う


免疫細胞が必要とする分子を標的とすることで脂肪組織でのTregの蓄積を阻止すると、マウスはもはや年老いても4型糖尿病にならなかった
しかしマウスが肥満になると、脂肪組織のTregを阻害しても2型糖尿病のインスリン抵抗性は予防しなかった

「この種の糖尿病に関しては、治療は体重減少ではないことが判明した」
Evansは言う
「実際には、治療はTregを減らすことである
我々はそれが実行可能possibleであることを示す」


現在、研究者たちはTregが脂肪組織と相互作用する方法や、免疫細胞が正常な加齢中に他の臓器にも蓄積するのかを正確に調べようとしている
また、彼らはこの研究結果がヒトにも適用されるのかについて調べるための研究を計画している


http://dx.doi.org/10.1038/nature16151
Depletion of fat-resident Treg cells prevents age-associated insulin resistance.

成人が発症する糖尿病において、加齢関連インスリン抵抗性と肥満関連インスリン抵抗性は生理学的に異なる
肥満関連インスリン抵抗性の中心的なドライバはマクロファージによって促進される炎症だが (1, 2, 3, 4, 5, 6、
肥満には依存しないが一般的に広く見られる加齢関連インスリン抵抗性 (7 の根底にあるメカニズムはあまり研究されていない

ST2抗体の投与により選択的に脂肪組織のTreg/fTregを枯渇させると、脂肪組織のインスリン感受性は増大する

※ST2: IL1RL1



関連サイト
http://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/56236
IL-33の受容体であるST2は腸の制御性T細胞で選択的に発現されていて、
腸炎マウスモデルにおける制御性T細胞の機能と炎症組織環境への適応を促進する



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150128093549.htm
脂肪細胞には独自のタイプの制御性T細胞/Tregがいるが、肥満になるとTregは脂肪組織から消える
脂肪組織にIL-33を投与するとTregが回復して炎症は減少し、血糖は低下する
 

癌細胞はインスリン抵抗性を回避する

2015-11-21 06:02:17 | 
Cancer cells poised for growth when opportunity knocks

November 17, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151117093209.htm


(ヒトに癌を引き起こす遺伝子をハエで活性化させると、高糖食を与えたハエの腫瘍は通常食よりも大きく育った)

※poise: ~を平衡状態にする。~の用意をさせる(for~)※再帰的または受身


インペリアル・カレッジ・ロンドンのMRC臨床科学センターで代謝・細胞増殖研究グループを率いる平林 享(Susumu Hirabayashi)と、マウント・サイナイ・アイカーン医科大学/Icahn School of Medicine at Mount SinaiのRoss Caganたちは、
血中のブドウ糖レベルが上昇した時、それに対して癌細胞が応答して急速に増殖するメカニズムを同定した
eLife誌で発表された今回の研究は、なぜ肥満のように慢性的に高血糖になる人がある種の癌を発症するリスクが上昇するのかを説明する


我々が食べたものは消化されてグルコースのような小さい分子になり、血液によって全身の細胞に届けられて成長のための燃料として使われる
グルコースが効率よく吸収されるためにはインスリンが必要であり、インスリンは細胞表面の受容体に結合してチャネルを開き、グルコースを細胞に吸収させる

肥満の人々はしばしば持続的に血液中のグルコースとインスリンが多く、多過ぎるそれらはやがて『暗騒音background noise』となり無視tune outされるようになる(インスリン抵抗性)
インスリンが作用しなくなるとチャネルが開かなくなり、グルコースは細胞に吸収されずに血液中に蓄積する

しかし全ての細胞がインスリンとグルコースを無視tune outするわけではない
事実、平林たちは以前ショウジョウバエの腫瘍細胞は積極的に注意を払うtune inことを示している


2年前に発表された研究で彼らはショウジョウバエのRasとSrcという遺伝子を活性化させた(※)

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23911328

RasとSrcはヒトの様々な癌で活性化している遺伝子である
ハエは代謝と細胞増殖を制御する遺伝子の多くをヒトと共有しているため、この研究は我々ヒトにも関係あるrelevant可能性はある

科学者はRasとSrcをハエの発達中の目の組織で活性化させ、それらの細胞を蛍光ライトの下で緑に発光するよう目印をつけた
通常のエサを与えたハエの腫瘍は小さくて良性だったが(画像左)、高糖食を与えると大きく悪性の腫瘍を生じた(画像右)

平林は高糖食を与えたハエの通常の細胞がインスリン抵抗性になる一方で、腫瘍細胞はそうならないことを発見した
腫瘍は余分なインスリン受容体を作るための『代謝のスイッチ』を入れて、インスリンに対して感受性を増大させていた
インスリンが通常より多く受容体に結合してより多くのグルコースのチャネルが開いた腫瘍細胞は、ハエのインスリン抵抗性の体内で他に行き場がないグルコースの『下水溝/sink』のようになった

しかし、2年前の研究では腫瘍細胞がどのようにして『代謝のスイッチ』を入れるのかは不明だった


平林とCaganは同じハエを詳細に研究し、腫瘍はSalt-inducible kinase (SIK)というタンパク質によってグルコースが手に入るかどうかavailabilityを間接的に検出することを示した
SIKはグルコースレベルが高いと『Hippoシグナル伝達経路』というルートに沿ってシグナルを送る

Hippo経路は細胞増殖の制御に関与することが知られている
Hippo経路がオンの時は増殖は制御されているが、オフになると細胞は増殖を続けcarry on、最後にはultimately腫瘍の発症につながるのかもしれない

平林とCaganはSIKが糖のセンサーのように働き、グルコースレベルに応じてHippoシグナル伝達経路をオフにすることを発見した
これは腫瘍細胞が増殖し続けることを可能にする


「RasとSrcをともに活性化した腫瘍は、SIKを使って細胞外に利用可能なグルコースが多く存在することを感知し、それを利用するよう細胞に伝えるtell」
平林は言う
これらの腫瘍はHippoシグナル伝達経路の変化に対して特に感受性が高く、その変化に急速に応答する用意をしているpoised to

「RasとSrcの変異した腫瘍はSIKを使って効率的にグルコース利用可能性に応答し、肥満のように栄養が豊富な状態で腫瘍が確実に増殖できるようにするensure
ただし、他の遺伝子変異による腫瘍がグルコースに対して同様に応答するかは不明である」

「我々の研究結果が示唆するのは、SIKを標的にする薬剤を開発できればインスリン抵抗性の環境で癌細胞が生き残るのを止めて、肥満と癌の関連を断ち切ることができるかもしれないということである」

科学者たちはSIK阻害剤を開発する前に、ヒトでも同様のメカニズムが生じるのかを確認しなければならないだろう


http://dx.doi.org/10.7554/eLife.08501
Salt-inducible kinases mediate nutrient-sensing to link dietary sugar and tumorigenesis inDrosophila.
eLife 2015


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23911328
Transformed Drosophila cells evade diet-mediated insulin resistance through wingless signaling
Cell 2013




関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/7584
高糖質食の摂取による糖代謝の異常が腫瘍の悪性化に及ぼす影響
平林 享・Ross L. Cagan

>最近,ヒトの線維芽細胞を用いた解析により,Wntシグナルが転写因子Tcfを介してインスリン受容体の発現を亢進することが報告され,古典的Wntシグナル伝達経路とインスリンシグナル伝達経路とのクロストークはヒトにおいても保存されていることが示された7).



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150406133613.htm
ショウジョウバエの腫瘍はImpL2(ヒトIGFBPsのホモログ)を分泌して、インスリンの働きを阻害してグルコースを使えないようにする



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151109140121.htm
膠芽腫でのEGFR活性化はグルコース取り込みを増やしてSCAPの翻訳後修飾/N-グリコシル化を促進し、SCAPとSREBPはゴルジへ移動、SREBPが活性化して脂質産生に関与する遺伝子を活性化する
 

カンジダ菌がマクロファージを殺す方法

2015-11-19 06:13:51 | 腸内細菌
How a deadly fungus evades the immune system

March 31, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150331074350.htm

カンジダアルビカンスCandida albicansは、
単一の丸い形状a single, round cellから細長い線維状a long string of cells, or filamentsへと形を変えることで、血中へ移動して、フィラメントを貫通させて免疫細胞/マクロファージを殺すと考えられていた

しかし、カンジダは死んでもマクロファージを殺すので、形を変えること自体per seが原因ではない

カンジダのグリコシル化したタンパク質glycosylated proteinsの糖鎖を切断すると、マクロファージを殺す能力は消えた


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms7741
Global analysis of fungal morphology exposes mechanisms of host cell escape

エルゴステロールの生合成/ergosterol biosynthesisとN-グリコシル化/N-linked glycosylationが重要


C. albicansのfilamentationは、ホスト免疫細胞からの回避には不要

マクロファージのピロトーシスpyroptosisは、
マクロファージのファゴソームに応じた(貪食後の)真菌細胞壁のリモデリングと、グリコシル化されたタンパク質によって引き起こされる


貪食されて既に死んでいる細菌killed, previously phagocytized cellsがマクロファージの溶解lysisを引き起こす能力は、
カンジダと(分類学的に)遠い関連がある真菌病原体クリプトコッカス・ネオフォルマンスでも観察される



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151109110610.htm
Dead bacteria used to kill colorectal cancer

死んだ細菌で結腸癌を殺す

スポロゲネス菌/Clostridium sporogenesは、死んでいても癌を殺す
化学療法は酸素が必要だが、C. sporogenesは酸素の不足した微小環境の癌を殺す

http://dx.doi.org/10.1038/srep15681
Effect of Heat-Inactivated Clostridium sporogenes and Its Conditioned Media on 3-Dimensional Colorectal Cancer Cell Models.
 

なぜ膵臓癌にはゲムシタビンが効かないのか

2015-11-18 06:29:18 | 
Study reveals why chemotherapy may be compromised in patients with pancreatic cancer

November 11, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151111143233.htm

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの新たな研究は、なぜゲムシタビンgemcitabineのような化学療法薬が多くの膵臓癌患者に効果がないのかを説明する
そしておそらく、ゲムシタビンの腫瘍増殖を止める能力を促進する新しい治療アプローチについても指し示すpoint

MDアンダーソンのマウスでの研究は、細胞の可塑性/適応のプロセスplasticity processである上皮間葉転換/epithelial-to-mesenchymal transition (EMT) の抑制とゲムシタビンとの組み合わせが薬の効果を加速することを示唆する
研究成果は11月11日のNatureオンライン版で発表される

「現在の治療法の有効性availabilityにもかかわらず、膵臓癌の診断は予後の悪さと関連する」
癌生物学の教授で筆頭著者のRaghu Kalluri, M.D., Ph.D.は言う
「新たな治療戦略が至急必要である」

Kalluriの研究チームは胚細胞の可塑性プログラムembryonic cellular plasticity programであるEMTに注目した
EMTは癌細胞によって乗っ取られており、癌細胞が他の臓器に移動するのを助けると考えられている

癌細胞は『広がるspread』疾患であり、分裂して増殖するか、または移動して転移することによって体内に拡散するが、
癌細胞がEMTプログラムを採用して移動を促進させると、一般に癌細胞は分裂を止める
今回の研究結果は、EMTが癌細胞の増殖を止めることにつながり、それにより化学療法への感受性が損なわれることを示す

「ゲムシタビンは主にprimarily分裂して増殖する癌細胞に作用する」
Kalluriは言う
「癌細胞がEMTプログラムを開始するなどして増殖を停止させると、ゲムシタビンのような増殖を止めるための抗癌剤は十分に作用しない」


「EMTプログラムは薬剤の輸送体を抑制することも明らかになった
これも意図せずinadvertently癌細胞を抗癌剤から保護する」

「膵臓癌患者の生存率の減少とEMTプログラムの増大とが相関する理由は、EMTにより患者の化学療法に応答する能力が損なわれるためである
それにより全体的な予後が悪化し、転移する率が高くなる」

※concentrative: 集中的な、専念する

EMTプログラムを阻害すると、腫瘍のゲムシタビンに対する応答は高まった

「まとめると、我々の研究は化学療法の効力、そしておそらく標的治療の効力を高めるためにEMTプログラムを標的にするという方法の潜在性を評価する機会をもたらす」


http://dx.doi.org/10.1038/nature16064
Epithelial-to-mesenchymal transition is dispensable for metastasis but induces chemoresistance in pancreatic cancer.
EMTは膵臓癌の転移に必須ではないが、化学療法への抵抗性は誘導する


EMTの原因とされる2つの鍵となる転写因子TwistとSnailを欠損させたPDACマウスモデルを作成したところ、
そのようなEMTの抑制によって、PDACでの浸潤の出現、全身への転移は変化しなかった

EMTの抑制は癌細胞の増殖の増大につながり、腫瘍のヌクレオシドトランスポーターの発現が促進される
これはゲムシタビン治療への感受性の増大につながり、マウスの全生存率が上昇する
 

アルツハイマー病は別々に分類されるべき疾患の集合である

2015-11-17 06:06:30 | 
Alzheimer's is probably a collection of diseases that should be classified and treated separately

November 3, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151103112804.htm

エルサレム・ヘブライ大学の新たな研究によると、アルツハイマー病は少なくとも二つ以上のメカニズムから生じる疾患であり、実際には別々に分類して治療すべき疾患の集合であることが示唆されるという

アルツハイマー病の効果的な治療の開発に失敗するのは『最終的にはアルツハイマー病の症状を発症する、異なる疾患』の患者が臨床実験で集まっていることpoolingから生じるという
ゆえに、関連する疾患サブタイプに応じてそれぞれの患者に処方されるような新たな治療法の開発に備えるallow forために、
アルツハイマー病の根底にあるメカニズムを注意深く特徴付けをして分類することが必要である
この新たな洞察は、アルツハイマー病の様々なサブタイプに対する新しい治療の開発に向けた努力を促進する



特定の家族で発症する家族性アルツハイマー病の根底にあるメカニズムを明らかにしたエルサレム・ヘブライ大学医学部の研究者は、この病気が実際には様々なアプローチで治療をするべき疾患の寄せ集めcollectionであると提案している

神経変性疾患は治癒することなく消耗させ衰弱させる病気であり、神経系の細胞は変性するか死ぬ

プリオン病(最も有名なのは『狂牛病』である)やアルツハイマー病、パーキンソン病は2つの重要な特徴を共有する
すなわち、異常なタンパク質折りたたみとその蓄積の結果として生じ、その発症は人生後期である
そして、これらの疾患は散発性sporadicallyか家族性として生じ、家族性の場合は遺伝子変異と関連する疾患である
(ある種のプリオン病は伝染性infectiousでもありうる)

散発性の患者のほとんどは70代かそれ以降に診断され、家族性は50代か60代に症状が現れるのが典型的である
遺伝子変異と関連するケースは比較的まれではあるが、発症の根底にあるメカニズムを明らかにするヒントを与えてくれるので非常に重要である


複数の異なる神経変性疾患に典型的な遅発性late onsetという特徴、そして発症の時間経過的なパターンの共通性は、重要な問題を提起する
一つは、なぜ疾患と関連する遺伝子変異を持つ人々は50か60代になるまで臨床的な兆候を示さないのか?
加えて、なぜ明らかに異なる疾患が時間経過的に共通する発症パターンを共有するのか?

可能性のある説明として、若い人を有害なタンパク質の蓄積から守るメカニズムの効率が年をとると低下して、それにより病気にかかりやすくなるというものがある

実際、以前の研究では、
人生後半の神経変性疾患の発症において加齢というプロセスが重要な役割を演じることが明確に示されている
そのような研究結果は、加齢によって負に調節されるのはどんなメカニズムで、年を取って神経変性疾患を発症させる要因は何なのかという別の疑問を生じた

神経変性疾患は異常なタンパク質折りたたみfoldingから生じるのでヘブライ大学医学部のイスラエル医科学研究所・カナダ (IMRIC) に所属するEhud Cohen教授とTziona Ben-Gedalya博士を中心とする国際的な研究チームは、
他のタンパク質が適切に折りたたまれるのを助けるタンパク質の活性が加齢に伴って低下し、それが高齢者を神経変性疾患にかかりやすくさせるメカニズムの一つかもしれないと仮定した

そのようなメカニズムの存在を確かめるため、
異なるタンパク質に存在して異なる神経変性疾患の発症と関連するが、互いに似ている同じような遺伝子変異パターンを
研究者は探した
研究の結果、ある家族での家族性アルツハイマー病の発症と、別の家族での家族性プリオン病の発症は、非常に似ている遺伝子変異パターンから生じることが示された

この発見を基に、彼らは『シクロフィリンB』というタンパク質の異常を同定した
シクロフィリンBは翻訳されたばかりのタンパク質を適切な空間構造に折りたたむのを助けるが、
家族性アルツハイマー病とプリオン病の両方の原因である

研究者がこの家族性アルツハイマー病の発症の根本にあるメカニズムを包括的に特徴付けた結果、
他のアルツハイマーと関連する遺伝子変異の疾患発症とは関連性relevanceがまったくないことを発見した


Ehud Cohen教授は言う
「この研究は重要で新しい洞察をもたらす
一つは、異なる神経変性疾患の発症が似たようなメカニズムから生じることを示すということだ
さらに重要なことに、アルツハイマー病は2つ以上のメカニズムから生じうることも示し、
実際には別々に分類されるべき疾患の集合であることを示唆する」


http://dx.doi.org/10.15252/embj.201592042
Alzheimer's disease-causing proline substitutions lead to presenilin 1 aggregation and malfunction.


[小胞体]
 プレセニリン1─(264と267プロリン残基を介したシクロフィリンBによる折りたたみ)→成熟

タンパク質を成熟させる折りたたみメカニズムの失敗から、異なる神経変性疾患が生じるか?

我々はこの疑問に答えるべく、それぞれ異なる神経変性疾患の現れを関連付ける遺伝子変異パターンを比較し、
神経変性と関連する同様のプロリン置換substitutionsを同定した
一つはプリオン病の根底にあるプリオンタンパク質のプロリンの置換であり、
もう一つは家族性アルツハイマー病の根底にあるプレセニリン1のプロリンの置換である

プロリンから別のアミノ酸への置き換えは、ERに存在するシャペロンであるシクロフィリンBがプレセニリン1をアシストして適切にフォールディングするのを妨げる
その結果としてプレセニリン1は凝集してERに蓄積し、γ-セクレターゼ活性化は低下し、ミトコンドリアの分布distributionと機能は損なわれる

シクロフィリンBノックアウトマウスの脳でも同様に『プロセスを経て活性化したプレセニリン1』の量の減少が観察された

これらの発見はシクロフィリン活性の低下が異なる神経変性疾患の発症に寄与することを意味するimply
それにより特定の家族性ADの発症についての新たなメカニズムを提唱し、
プレセネリン1の異常機能に由来する可能性があるこの疾患について浮かび上がりつつあるテーマを支持するものである

この研究は、ERシャペロンが神経変性疾患に対抗する治療法の開発にとって標的となることについても指し示すものである



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150304130911.htm
プレセニリン1の変異/γ-セクレターゼの機能低下変異が家族性アルツハイマーを引き起こす



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/da5b1460551c4cedbd472dd8037649d4
アルツハイマー病の3つのサブタイプ



関連サイト
http://www.nanbyou.or.jp/entry/247
我が国では、遺伝性プリオン病の中では、V180Iの家族性CJDが最も多く(45.3%)、それに次いでP102LによるGSS102(16.3%)、E200Kによる家族性CJD(13.1%)、M232Rによる家族性CJD(13.5%)と続く(2014年9月)。
 

アミロイド症を引き起こす異常なアポA-Iの研究

2015-11-16 06:39:32 | 代謝
Molecular mechanism at root of familial amyloidosis and other diseases

November 12, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151112123926.htm

家族性アミロイド症ならびに他の疾患の根本にある分子メカニズム


ボストン大学医学部/BUSMの研究チームteam of local researchersは、アミロイド症という致命的な疾患の原因となる分子メカニズムを提案する

※local: このプレスリリースはボストン大学のPR/パブリック・リレーションズで発表された

アミロイド症で最も知られているのはアルツハイマー病/ADだが、他の多くのアミロイド疾患についても精密な調査scrutinyが増えつつある
その理由の一部は、それらの疾患をアテローム硬化症や加齢と関連付けるエビデンスが蓄積しつつあるためである
Molecular Biologyで発表された今回の研究は、最終的にこれらの疾患のいずれかについて治療標的の開発につながる可能性がある


アミロイド症には多くの疾患が含まれるが、それらはタンパク質が様々な臓器で異常な凝集を形成して蓄積するために生じる
例えばアルツハイマー病やパーキンソン病では脳、心アミロイドーシスcardiac amyloidosisでは心臓が冒され、他にも腎臓や肝臓などの重要な臓器で起きる

凝集するタンパク質の一つがアポリポタンパク質A-1/アポA-1である
アポA-1はいわゆる『良いコレステロール』であるHDLの足場scaffoldを形成し、正常な場合アポA-1/HDLは過剰なコレステロールなどの脂質を体から除去して心血管疾患から保護する

しかし、アポA-Iに変異または何らかのエラーが生じるとアポA-Iは凝集する可能性があり、それは家族性アミロイド症という治癒することのない生命にかかわる疾患として表れる
アポA-Iは動脈にも蓄積し、それによりアテローム硬化症の一因になる

互いに凝集する脆弱な『ホットスポット』の露出exposedが原因で異常タンパク質が疾患を引き起こしうることは以前から医学会で知られていたが、
HDLという『良い』タンパク質がどのようにして『悪い』タンパク質になるのかについての理解、特に分子レベルでの理解がこれまで不足していた


ボストン大学とノースイースタン大学の研究者たちが最先端の技術を使って
アポA-Iの様々な変異体の動的なふるまいdynamic behaviorと分子的な形状molecular shapeについて分析したところ、
アミロイド症を引き起こすのが常にアポA-Iの露出した『ホットスポット』であるわけではないことが明らかになり、研究者を驚かせた

いくつかの変異は『他の部分の脆弱性』における保護を低下させ、その脆弱性はタンパク質が凝集する前に人体がそれを取り除くのを助けるものだった
アポA-Iにおけるこれらの変異は、ヒトではアミロイド症を引き起こさなかった

驚くべきことに、タンパク質の一方の末端に起きた変異のいくつかは、まるで『分子レベルのリモコン』のように、正反対側の末端の構造と活性を変化させた

研究者は今回の発見がアポA-Iに限らず、おそらく他のアミロイド形成タンパク質にも適応できることを示唆する
研究者たちによると、このアミロイド疾患を引き起こす分子レベルでの変化のパズルを解き明かすことは、治療法の開発にとって重要な意味を持つという

「どんなタンパク質であれ、それがアミロイドを形成するようになる要因が何なのかを予測可能なら、病原性のプロセスが始まるのを遅らせたり、阻害することさえできるツールを設計し始めることができるだろう」
ボストン大学医学部の生理学と生物物理学の教授で責任著者/corresponding authorのOlga Gursky, PhDはそのように説明した


http://dx.doi.org/10.1016/j.jmb.2015.10.029
Structural Stability and Local Dynamics in Disease-Causing Mutants of Human Apolipoprotein A-I: What Makes the Protein Amyloidogenic?
ヒトアポA-Iの疾患誘発的な変異体の、構造的安定性ならびに局所的ダイナミクス: 何がアポA-Iをアミロイドジェニックにするのか?
 

コネキシン46は脳腫瘍を促進する

2015-11-15 06:57:01 | 
In lab tests, new therapy slows spread of deadly brain tumor cells

July 27, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150727130818.htm

コネキシン46/connexin 46は、ギャップ結合の一部

膠芽腫glioblastomaの癌幹細胞でギャップ結合gap junctionを止めると、腫瘍形成能力が減少した

[膠芽腫の癌幹細胞]
 ギャップ結合↑→腫瘍形成能力↑


ギャップ結合阻害剤の1-octanolと化学療法のテモゾロミドtemozolomideを組み合わせると、マウスで腫瘍の増殖は遅くなった
ギャップ結合を阻害されたマウスは100日たっても全て生きていたが、ギャップ結合が阻害されなかったマウスは2ヶ月で全て死んだ

 ギャップ結合↓→腫瘍形成能力↓


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2015.04.021
Differential Connexin Function Enhances Self-Renewal in Glioblastoma.


膠芽腫の癌幹細胞CSCsはコネキシン46/Cx46を発現するが、それ以外の膠芽腫はコネキシン43/Cx43を主に発現する
CSCsが分化する間にCx46は減少してCx43が増大する
Cx46を標的とすることでCSCの維持を抑制した

Cx46とCx43の違いは、CSCの細胞間コミュニケーション上昇ならびに休止状態の膜電位低下によって反映される


我々の研究は、ギャップ結合の発癌を促進する役割を明らかにする
そしてギャップ結合はコネキシンの発現に依存する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/77e047acb925e06ff43d4e941ab1ded2
コネキシン50は癌を抑制する