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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

癌の転移が高脂肪食で増加することを示す革新的なエビデンス

2016-12-13 06:06:59 | 
Cancer spread is increased by a high fat diet, ground-breaking evidence shows

Researchers discover new cancer spreading protein

December 7, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/12/161207132117.htm



イギリスの慈善団体/UK charityである『世界がん研究/Worldwide Cancer Research』から一部資金提供を受け、バルセロナ研究所/Institute for Research in Barcelona(IRB)の教授であるSalvador Aznar Benitahが率いる研究チームは、転移する能力を持つ癌細胞上にCD36というタンパク質を初めて特定した
腫瘍細胞の細胞膜内に見られるCD36は細胞が脂肪酸を取り込むためのタンパク質である
この独特なCD36の活性ならびに脂肪酸への依存は、他の腫瘍細胞とは異なり、転移を開始する細胞の本質的特徴である
研究は本日Nature誌で発表される


癌が致死的となるのは転移を始めた時であり、治療の成功は難しくなる
したがって世界中の科学者たちが転移のプロセスがどのようにして起きるのかを理解しようと努力しており、それを止めるための方法を開発しようとしている

Benitah教授の研究チームは、様々な腫瘍の患者から得られた転移癌細胞の表面にCD36が存在することを発見した
調査された腫瘍には口腔癌、メラノーマ皮膚癌、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、乳癌が含まれる

CD36が癌の転移に必須となる役割を演じていることを確認するためにCD36を『転移しない癌細胞』に加えたところ、その細胞は転移するようになったのである

「我々はまだ腫瘍の全てのタイプでテストしてはいないが、CD36は転移する細胞の大部分に共通するマーカーgeneral markerであると言える
これは私が知る初めての転移全体に特異的な特徴である」
IRBバルセロナの幹細胞・癌研究室/Stem Cell and Cancer Labの代表/HeadであるBenitah教授は言う

「我々はこの研究が科学界/scientific communityに大きな衝撃を与え、転移の研究にさらなる進歩をもたらすと予想している
また、我々は転移に対する治療法としてのCD36の潜在性を実証できればと思っている
このようなことは毎日そうそう起きるものではない」


研究チームは続いて、脂肪の取り込みが癌の転移にどのように関与するのかを調べた
マウスへ高脂肪食を与えた後にヒトの口腔癌タイプの癌細胞を注入すると、高脂肪食は50パーセント多いマウスで転移を大きくし、転移の頻度を増加させた

彼らは次に、パルミチン酸palmitic acidという特定の飽和脂肪酸をテストした
パルミチン酸は動物脂肪や植物油の主な要素であり、特にパーム油に高濃度で含まれている
パーム油はピーナッツバターや加工食品から歯磨き粉に至るまで、日常的な家庭用品house hold productsの多くで使われる油である

研究チームがヒトの口腔腫瘍をパルミチン酸で二日間処理し、それを通常食を与えていたマウスに注入すると、CD36を持つマウスの全てが転移を生じた
しかし、パルミチン酸で処理しなかった場合は半分しか転移が起きなかった


Benitah教授が警告する
「ヒトの腫瘍細胞を接種されたマウスでは、脂肪の取り込みと、CD36による転移の潜在能力potentialの増加との間には、直接のつながりが存在するように思われるappear
この興味深い関連を解明するためには、さらなる研究が必要である
その理由は特に、工業化された国々では飽和脂肪や砂糖の消費が驚くほどの増加を示しているからである」

「脂肪は人体の機能に必要である
しかし、制御不能の脂肪摂取は健康に影響を与えうる
それは既に結腸癌のようないくつかの腫瘍で示されており、また我々が今回転移で示したようにである」


さらに研究チームはヒトの口腔癌を持つマウスを使い、CD36の阻害が転移を完全に阻止することを示した
既に転移した癌細胞を持つマウスでは、CD36を阻害する抗体により20パーセントのマウスで転移が完全に除去された一方で、残りのマウスでも転移を80パーセントから90パーセントも劇的に減少させ、腫瘍のサイズを縮小させた
重要なことに、それらは全て、深刻な副作用が全くなく達成された

研究者たちは現在CD36に対する抗体をベースとした新たな治療法を開発中である
将来それは潜在的に、幅広い癌の治療に適する可能性がある


Worldwide Cancer ResearchのScience Communications ManagerであるLara Bennett博士は次のように言う
「我々は何年もの間Benitah教授の研究をサポートしてきたが、今回このような真に革新的な結果を目にすることはとても素晴らしいことだ
もし研究チームがヒトの治療に使える抗体を開発できれば、毎年何千何万という命が救われるだろう」




http://dx.doi.org/10.1038/nature20791
Targeting metastasis-initiating cells through the fatty acid receptor CD36.
脂肪酸受容体CD36を通じて転移開始細胞を標的にする


Abstract
転移を開始する細胞のアイデンティティがヒトのほとんどの癌で不明であるという事実は、転移に対する治療法の開発を妨げている

今回我々はヒト口腔癌におけるサブ集団のCD44bright細胞について記述する
それは間葉系遺伝子を発現せず、細胞周期が遅く/slow-cycling、脂肪酸受容体CD36ならびに脂肪代謝遺伝子を高レベルで発現し、そして転移を開始する能力は唯一無二uniqueである

パルミチン酸または高脂肪食は、CD36陽性の転移開始細胞の転移の潜在能力を明確に加速し、それはCD36に依存的なやり方である/CD36-dependent manner

CD36を阻害する中和抗体を使うことにより、免疫不全immunodeficientまたは免疫応答immunocompetentのどちらでも、ヒト口腔癌の同所(移植)マウスモデル/orthotopic mouse modelsにおいて転移はほとんど完全に阻止され、副作用はない

※orthotopic graft: 同所移植(正常に存在すべき解剖学的部位に移植すること)

臨床的には、非常に多くのタイプの癌でCD36陽性の転移開始細胞の存在は予後の悪さと相関があり、
CD36を阻害することは、少なくともメラノーマと乳癌由来の腫瘍では転移を抑制する

合わせて考えると、我々の結果は、転移開始細胞は転移を促進するために食事の脂質に特に依存することを示す



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/d154739077ac5b5a0903a0ff027e7387
体が燃焼するよりも多くの脂肪酸を摂取すると、過剰な脂肪はセラミドに変換される
セラミドはPKCζの活性化を促進し、肝臓でCD36による脂肪取り込みを増加させる



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/56f388798d065b7830e4e7c300ccef81
高脂肪食は非幹細胞に幹細胞の性質を獲得させて、腫瘍形成の増大につながる



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/40a1659f8b47d4725ea2ad4c2583e549
脂肪を蓄積した癌は悪性化する



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肥満は癌幹細胞を増大させる



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転移する癌はミトコンドリアを使う



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癌幹細胞はミトコンドリアを使う



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グルコースが欠乏すると食事の好みをグルタミンへと変化させる癌細胞がいる



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グルコースが不足した癌細胞ではURIがOGTを阻害し、OGTによるc-Mycの安定化が抑制されて、グルコースの消費が減少する



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抗血管新生薬のチロシンキナーゼ阻害剤 (TKI) は癌細胞のグルコース代謝を阻害するが、癌細胞はエネルギー源をミトコンドリア呼吸に逆戻りさせて抵抗する



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悪性の神経膠腫細胞の呼吸と増殖には、脂肪酸の酸化が必要



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白血病のCD36+癌幹細胞は脂肪組織に隠れる



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癌はどのようにして脂肪に依存するようになるのか



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https://www.sciencedaily.com/releases/2013/12/131220121046.htm
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前立腺癌細胞はアンドロゲンに応答して、解糖系だけでなくミトコンドリアによる脂肪代謝も上昇させる



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トリプルネガティブ乳癌はアミノ酸のシスチンに依存する



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https://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151110082556.htm
CD44は膵臓癌の転移を誘導し、METやVEGFR-2はその活性化をCD44に依存する
CD44v6を阻害するペプチドは転移を抑制する

http://dx.doi.org/10.1053/j.gastro.2015.10.020
v6エキソンを含むCD44アイソフォームは、チロシンキナーゼ受容体のMETおよびVEGFR2の共受容体である



関連記事
http://ta4000.exblog.jp/18404873/
脂肪酸輸送タンパク質のCD36は、骨格筋への脂肪酸の取り込みを促進する



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

はぁ?
 

トリプルネガティブ乳癌を飢えさせて殺す方法

2016-11-25 06:06:00 | 
Cellular starvation kills treatment-resistant breast cancer

November 21, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/11/161121162442.htm


(癌組織の顕微鏡画像
紫色の癌細胞が、ピンク色で示されるリボン状の結合組織の中に収まっているnestled様子を示す

Credit: Dr. Cecil Fox, National Cancer Institute, NIH)

癌は腫瘍細胞の代謝を配線し直して、無駄がなくlean、ケチなmean、増殖するための機械にする
しかし、特別な食事に頼って高い成績を出すオリンピックのアスリートと同様に、腫瘍細胞の盛り上げられた代謝amped-up metabolisもまた、特別な栄養素に頼るのである


長年の間、科学者たちは腫瘍の細胞が渇望するものを理解して突き止めようと努力してきた
その目的はといえば、必要な栄養素へのアクセスを阻止して腫瘍を飢えさせ、癌細胞を死に至らしめるという新たな治療法を産み出そうとしてのことである

今回の研究でデューク大学の研究者は、悪質viciousな治療抵抗性の乳癌である『トリプルネガティブ乳癌/triple negative breast cancer (TNBC)』は、鍵となる重要な栄養素のシスチンcystineが欠乏すると死に絶えるということを報告する

細胞死の原因を詳しく調査したところ、この『シスチンへの依存/耽溺cystine addiction』は、腫瘍細胞が元の場所から逃げ出して別の場所へ移動するために使うメカニズムによって引き起こされることが明らかになった

「このプロセスはよく知られているもので、転移する癌細胞で観察される
我々はまさにそのプロセスが癌細胞をシスチンに依存させることを発見した」
分子遺伝学と微生物学の準教授associate professorで、研究の首席著者senior authorでもあるJen-Tsan Ashley Chiは言う

「これは素晴らしい知らせだ
なぜなら、この癌細胞こそ我々が本当に取り除きたいと望んでいる細胞だからだ」

この研究結果が示すのは、シスチンの取り込みを阻害することが
トリプルネガティブ乳癌だけでなく他の悪性の癌、特に転移する間にこの経路を使う癌を治療するための有効な方法になるかもしれないということだ
彼らの研究は11月21日にOncogene誌のオンライン版で発表された


トリプルネガティブ乳癌は乳癌の約10パーセントから20パーセントを占める
トリプルネガティブには手術か化学療法以外にはほとんど治療の選択肢がないが、そのわけは乳癌の治療で最も成功しているのが腫瘍細胞上の受容体、つまりエストロゲン受容体やプロゲステロン受容体、Her2/neu受容体を標的にするものだからだ
トリプルネガティブ乳癌はそれら3つの受容体を全て持っていない


過去のいくつかの研究で、トリプルネガティブ乳癌の細胞はシスチンcystineがなければ生き残れないことが暗示されていた
シスチンはアミノ酸のシステインが互いに結合してできている分子である

今年早くにChiの研究グループは
悪性のタイプの腎臓癌の細胞がシスチンに依存することを示す研究を発表していた

それがトリプルネガティブ乳癌にも当てはまるかどうかを明らかにするため、以前Chiのラボでポスドクpostdoctoral fellowだったXiaohu Tangはトリプルネガティブ乳癌とエストロゲン受容体が陽性の乳癌の細胞に栄養素を欠乏させるテストを実施し、細胞を様々な培養地で育成した
それらの培地はそれぞれが15のアミノ酸の内1つだけを欠くものだった
細胞のほとんどはそのような小さな変化に対してほんのわずかな反応しか示さなかったが、1つだけ顕著な例外が存在した

「トリプルネガティブ乳癌の細胞は、シスチンに対して非常に感受性が高かった
シスチンを取り除くとトリプルネガティブ乳癌は急速に死に絶えた一方で、他の乳癌細胞は影響を受けなかった」

彼らは原因を突き止めるべくそれらの細胞を一連の遺伝学的な分析にかけたところ、シスチンへの依存は『上皮間葉転換/epithelial to mesenchymal transition (EMT) 』というプロセスと関連があることが明らかになった
上皮細胞epithelial cellsは静止した細胞で通常は頑丈なジッパーのような分子によって一ヶ所に留まっているが、
EMTというプロセスは遺伝子の発現をわずかに変化させて上皮細胞を間葉系細胞mesenchymal cellsに転換し、動き回るroveことを可能にする


トリプルネガティブ乳癌細胞は他の様々なタイプの癌と同じく、このプロセスを利用tap intoして元の場所から逃げ出して全身に転移する
しかしこのプロセスは、シスチンが使えなくなるとすぐに急速な死につながるような細胞のシグナル伝達の経路の引き金も引くようである

「この上皮と間葉系の転換が基本的にはシグナル伝達の違いを広げ、細胞をシスチン欠乏に対して脆弱にすることで細胞死につながることを我々は明らかにした」
Chiは言う

「これは治療としても役立つ可能性がある
なぜなら実際にそれを阻害する化合物が存在するからだ」

Chiによるとチームは現在シスチンを阻害する分子を腫瘍に対して実際に試し、癌がこの治療法にうまく反応しそうかどうかを明らかにするためのバイオマーカーを探す過程にあるという

「腫瘍の細胞はEMTというプログラミングを使うことでより早く移動し、体中を動き回る」
Chiは言う

「我々はその同じ経路を利用して癌を治療したいと考えている」


http://dx.doi.org/10.1038/onc.2016.394
Cystine addiction of triple-negative breast cancer associated with EMT augmented death signaling.
トリプルネガティブ乳癌のシスチン耽溺はEMTと関連し、細胞死のシグナル伝達を強める

アミノ酸を欠乏させるスクリーニングにより、シスチン欠乏はトリプルネガティブ乳癌でほとんど見られる基底細胞様の乳癌細胞basal-type breast cancer cellsに対してアポトーシスではなく、急速なプログラムネクローシスを引き起こすことが明らかになった
対照的に、管腔タイプの乳癌細胞luminal-type breast cancer cellsはシスチンに依存せず、シスチンが欠乏していてもほとんど細胞死を示さない
シスチン依存の表現型はシスチン欠乏の徴候の高さと関連し、それは基底細胞様の乳癌細胞と腫瘍で顕著notedだった

我々は
シスチン依存の乳癌細胞と腫瘍ではTNFαならびにMEKK4-p38-Noxaの経路が強く活性化していることを発見した
それらの経路はシスチン欠乏によって誘発されるネクローシスに対して細胞を感受性susceptibleにする

このモデルと一致して、TNFαとMEKK4のサイレンシングはシスチン欠乏による細胞死を劇的に減少させる

加えて、シスチン依存の表現型はmiR-200cによって無効化することができる
miR-200cというマイクロRNAは、間葉系様の細胞に対して、上皮細胞の特徴を採用するように変換させる

反対に、シスチンに依存しない乳癌細胞に上皮間葉転換/epithelial-mesenchymal transition (EMT) の誘導物質inducerを導入するとシスチン依存の表現型がもたらされ、
それはシスチン依存のシグナル伝達コンポーネントを調整modulatingすることによるものだった

合わせて考えると、我々のデータは、腫瘍進行の間のシスチン依存が乳癌細胞のEMTと関連することを明らかにするものだ
これらの研究結果は、シスチンの欠乏がどのようにして『突出した間葉系の特徴を持つトリプルネガティブ乳癌細胞』に既存の発癌経路oncogenic pathwaysによってネクローシスを引き起こすのかを説明するための、遺伝学的な、そして機構的な基礎を提供する


関連サイト
http://www.jci.org/articles/view/76711
miR-200a/miR-200b/miR-200c、miR-141とmiR-429は、EMTを促進する転写因子ZEB1/2を標的にすることで浸潤を抑制する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/3d33483b5a0c8f43e18bb563c9101da1
VHLが失われた腎細胞癌はアミノ酸のシスチンが欠乏するとネクローシスする



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a42f46f190c4e408448d70b0cd3aa91e
マトリックスから離れた癌細胞は強い酸化ストレスを経験する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/7375811853bf97f841338ba990da2cb5
転移するメラノーマ細胞は強い酸化ストレスを経験する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/11/161101093257.htm
悪性度の低い腫瘍でMnSODのレベルを上昇させると、悪性度の高い腫瘍の特徴であるビメンチンが現れた
ビメンチンはしばしばEMTのマーカーとして使われる
癌細胞は高い酸化ストレスにさらされており、そしてMnSODは抗酸化タンパク質である



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

は?
 

免疫療法が作用する患者は腸内細菌が異なる

2016-11-08 06:06:04 | 
Gut microbes linked to immunotherapy response in melanoma patients

November 7, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/11/161107113012.htm

英国国立がん研究所/National Cancer Research Institute (NCRI) がリバプールで開催するがんカンファレンスで発表された研究によると、悪性で転移性のメラノーマ患者は、腸内細菌の多様性が高いほど免疫療法に反応する可能性が高いことが判明したという

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの科学者は、進行したメラノーマ患者200人以上の口腔と100を越える腸から微生物叢/マイクロバイオームmicrobiomeのサンプルを採取して調査した

分析の結果、免疫療法に反応した患者は腸内に見られる細菌の種類の多様性が高いことが明らかになった
また、癌が免疫療法に応答した人とそうでない人では腸内細菌の種類に著しい違いがあることもわかった
しかし、口腔内の細菌の種類には患者間の違いはなかった

マウスを使った以前の研究では腸に住む細菌の種類を変化させると免疫療法への応答を改善できることが示されていたが、今回発表されたのはヒトの癌患者でそれらの関連性を調べた初めての研究の一つである


免疫療法は人体の免疫系が癌細胞と戦うのを利用するという、とてもエキサイティングなアプローチの癌治療法である
しかしながら、全ての患者が免疫療法に反応するわけではないため、研究者たちはその理由を解明しようと努力してきた
現在既に複数のタイプの癌を治療するために新たな免疫療法薬が使われているが、今回の研究から示唆されるのは、免疫療法で獲得された利益をさらに増すために免疫療法の前に抗生物質antibioticsやプロバイオティクスprobiotics、糞便移植faecal transplantなどで患者の細菌叢を改造adaptするといいかもしれないということである
しかしながら、それが実用化されるには臨床試験でテストされなければならないだろう


メラノーマはイギリスで5番目に多い癌である
イギリスでは毎年約15000人がメラノーマと診断され、2300人がメラノーマで死亡する

テキサス大学の主任研究員/lead researcherであるJennifer Wargo博士は次のように言う
「我々の研究はまったく興味深いつながりを示している
免疫系が免疫療法薬に反応している時、それは腸内の細菌によって手助けされていることを今回の研究は意味する」

「全ての癌患者が免疫療法薬に反応するわけではなく、治療を開始する前にうまくいくかどうかを知るのは非常に難しい
腸の微生物叢は多くの異なる戦略を通じて変化させることが可能であるため、免疫療法の応答を加速するために腸の細菌叢を調整することは大きな可能性を秘めている」


英国NCRI皮膚癌臨床研究グループの議長ChairであるPippa Corrie博士は次のように言う
「疾患を退けたり栄養を吸収したりする際に、腸の細菌が不可欠な役割を演じるという証拠が増えつつある
腸内細菌は我々の免疫系の正常な機能を維持するためにも重要である」

「腸の微生物は古典的な化学療法の役割にも影響することがこれまで示されており、臨床で使われるようになった新たな免疫療法にもそれらが影響を与えることはおそらく驚くべきことではないだろう
腸の微生物フローラを操作することは、免疫療法薬の作用を促進するための、そして現在は解決の難しい免疫療法の毒性を管理するための、新たな戦略になる可能性がある」



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2782b03bb2f67db143c4360477fa07f0
腸内細菌は癌への免疫療法を劇的に増強する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/11/161107110639.htm
一般的な食品添加剤である乳化剤は腸内微生物の構成を変化させ、細菌のトランスロケーションを促進し、腸での低レベルの炎症を促進して結腸直腸癌を促進する
 

膠芽腫はコレステロール取り込みのスイッチを切れないようにする

2016-10-15 06:06:54 | 
How a brain tumor's greed for cholesterol could be exploited for cancer therapy

October 13, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161013130100.htm

ルートヴィヒがん研究所/Ludwig Cancer Researchの研究者は、膠芽腫/glioblastoma (GBM) の代謝的な脆弱性を明らかにし、それがどのように治療として利用可能になりうるのかを示した
膠芽腫は悪性の脳腫瘍で、現在の医学で治癒することはない
この研究を主導したのはルートヴィヒ・サンディエゴ支部のPaul Mischelと、スクリップス研究所/The Scripps Research Institute (TSRI)のBenjamin Cravattである
彼らはGBM細胞が生き残るために大量のコレステロールを取り込むことを実証し、その取り込みのメカニズムが現在開発中の薬剤のような分子で特異的specificallyかつ効果的effectivelyに攻撃undermineできることを示した
彼らの論文はCancer Cell誌の今号で発表される

※1971年にDaniel K. Ludwigによってルートヴィヒがん研究所が設立され、2006年にはアメリカに6箇所のセンターが設立された
支部はサンディエゴの他、ブリュッセル、ローザンヌ、メルボルン、オックスフォード、ストックホルム、ウプサラに存在する


これまでGBMのドライバとなるゲノムや変異した遺伝子(癌遺伝子oncogene)が徹底的に研究されてきたものの、そのような分析を基にして選別された薬剤がGBMの患者に有益だと証明されたことはない
これまでの臨床試験で評価されてきた標的治療の多くは血液脳関門をほとんど通過せず、薬剤が届かないことによる用量の不足が腫瘍の薬剤抵抗性を促進する

「研究者たちはこの問題に対処する方法について考えてきた」
Mischelは言う

「癌遺伝子は生化学的な経路を配線し直し、癌遺伝子そのものがコードしないタンパク質に依存するようになる
そのような観察からアプローチの一つが生まれた」

そのようにして『癌遺伝子によって誘導される共依存性/oncogene-induced co-dependencies』を標的にすることは、薬局方pharmacopeiaへの道を広く開いた
例えば、伝統的には抗癌剤の伝達経路pipelineの一部とはされていなかったが、より効果的な薬理学的性質を持つ薬剤を使うことなどである

脳はコレステロールを調節する独特のシステムを持つことから、そのような標的を探し始めるにはもってこいの場所good placeだと思われた
体内の総コレステロールの約20パーセントが脳内に存在するが、それが外からやってくることはない
アストロサイトという脳細胞が脳内のコレステロールのほとんどを作り、神経細胞の細胞膜や髄鞘という絶縁体の重要な構成要素となったり、様々なシグナル伝達分子の材料となる


今回の研究では、GBM細胞が外から取り込まれるコレステロールに極端に依存することが示された
なぜならGBM細胞は自らコレステロールを作ることはなく、そして細胞が増殖するためにはコレステロールが必要だからである
GBM細胞は確実にコレステロールを手に入れるため、取り込みのコントロールimport controlsを停止させてスイッチが切れないようにする

正常な細胞は十分なコレステロールがある時、そのいくらかをオキシステロールoxysterolという分子に変換する
オキシステロールは細胞の核内で肝臓X受容体/liver X receptor (LXR) という核内受容体を活性化させ、コレステロールの取り込みuptakeを止めるのを助ける

「そのため、正常な細胞は十分なコレステロールが手に入ると、コレステロールを作るのも取り込むのも止めて、外へと汲み出し始める」
Mischelは言う

「GBM細胞ではこのメカニズムが完全に中断disruptedされていることを我々は発見した
GBM細胞は脳内の寄生虫のようにコレステロールを盗み、それをオフにするスイッチがない
コレステロールをひたすら飲み込み、食い尽くすgobble up」

MischelたちはGBM細胞がオキシステロールの産生を抑制することを示した
そうすることで確実にLXRを活性化しないままにするのである


彼らはAndrew Shiauたちを中心とするルードヴィヒ小分子開発チームとの共同研究で、代謝疾患用の実験薬の候補であるLXR-623がLXRを活性化することを突き止めた
LXR-623がマウスの血液脳関門を容易に通過したことを確認した後、ヒトの患者に由来するGBM腫瘍をマウスに移植してLXR-623の効果を調査した

「LXR-623でGBM細胞によるコレステロールの取り込みを中断させると、癌には劇的な細胞死が引き起こされて腫瘍は著しく縮小し、マウスの寿命は延長された」
Mischelは言う

「この戦略は我々が調べたGBM腫瘍のそれぞれ全てで作用し、脳に転移した他のタイプの腫瘍に対してさえ作用した
また、LXR-623はアストロサイトや体内の他の組織には最小限の影響しかなかった」

Mischelによると、彼らが考案したGBMの治療戦略は現在開発中または臨床試験に入っている関連薬剤を使った試験で実施される可能性があるという


http://dx.doi.org/10.1016/j.ccell.2016.09.008
http://www.cell.com/cancer-cell/abstract/S1535-6108(16)30443-3
An LXR-Cholesterol Axis Creates a Metabolic Co-Dependency for Brain Cancers.
LXR-コレステロール経路は脳腫瘍のための代謝的な共依存を作り出す



Highlights
・膠芽腫 (GBM) の細胞は生存のために外来性のコレステロールに依存する
・GBM細胞は、コレステロールの合成、LXRのリガンドの合成を抑制する
・脳に浸透するLXRアゴニストはコレステロール依存的なやり方でGBM細胞を殺す


Summary
増殖因子の受容体を標的とする小分子阻害剤は、脳腫瘍に効能を示すことに失敗してきた
それはもしかするとpotentially、中枢神経系(CNS)における十分な薬剤レベルを達成できないためかもしれない

腫瘍の癌遺伝子以外の共依存を標的とすることは、代わりとなるアプローチを提供する
脳への高い浸透性を持つ薬剤を突き止めることができた場合は特にそうである

今回我々は非常に致命的な脳腫瘍である膠芽腫(GBM)が生存のためコレステロールに著しくremarkably依存し、それにより腫瘍がLXRアゴニスト依存的な細胞死に対して脆弱になることを実証する

我々は臨床的に利用可能なLXR-623が脳への浸透性が高いLXRαパーシャルアゴニスト/LXRβフルアゴニストであることを示す
LXR-623はLXRβに依存的かつコレステロールに依存的なやり方でGBM細胞を選択的に殺し、マウスモデルで腫瘍の退縮を引き起こして生存を延長した

ゆえに、代謝的な共依存は、成長因子が活性化した中枢神経系の癌を殺すための薬理学的な手段を提供する



関連サイト
http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2013_1/131203_2.htm
コレステロール↑→LXR↑→ABCA1,ABCG1↑



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f38eb9a3516173d01b6e079f2103c6e5
肺に転移した乳癌は代謝を変化させる



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25511375
乳癌細胞は脳に転移するとグルコースに依存しない増殖を獲得する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f50bb32f65b1eb6f7631444c596ae88f
ヒトのアストロサイトの機能が初めて調査される
 

肺に転移した乳癌は代謝を変化させる

2016-10-14 06:06:15 | 
Scientists uncover how spreading cancer adapts to its environment

October 11, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161011125642.htm

転移する腫瘍細胞は、自らの代謝を特定の臓器に適応させることが可能である
この結論はベルギーのルーヴェン・カトリック大学/Katholieke Universiteit Leuven 内にあるフランダース・バイオテクノロジー研究機関/Flanders Institute for Biotechnology(VIB-KU Leuven)がCell Reports誌で発表した論文の骨子gistである
VIB-KU Leuvenの研究者たちは乳癌の腫瘍から転移した肺癌を分析し、それら二つの腫瘍が異なる方法で栄養素をバイオマス材料biomass building blocksへと変換することを発見した
この発見により、癌細胞の代謝を標的として腫瘍の成長を止めるための新たな治療法の開発が可能になるかもしれない

Sarah-Maria Fendt教授の研究グループがこのプロジェクトを始めた時、肺に転移した乳癌を調べることに決めたのは偶然ではない
スクリーニングの増加と治療の改善により乳癌そのもので亡くなる人の数はだんだん減少しているにもかかわらず、乳癌から他の臓器への転移は乳癌による死亡の90パーセントという途方もないwhopping割合を占めている
加えて、乳癌が転移した患者の中で生き残るのはわずか22パーセントに過ぎない


環境は遺伝よりも優先される
Environment overrides genetics

現在のモデルによれば、癌細胞が環境から取り込んだ栄養素を 成長するためのバイオマス材料へとどのように変換するのかを規定するのは『遺伝子の異常/genetic aberrations』である
その帰結として転移した乳癌の治療は元となった腫瘍の遺伝的な背景を基にして行われるが、それらの治療はしばしば失敗する
Sarah-Maria Fendt教授たちはこの問題の鍵となる要素を明らかにしたのかもしれない

Fendt教授は次のように説明する
「細胞がバイオマス材料biomass building blocksを作り出すために利用する主な代謝経路には、二つの経路が存在する
乳癌の原発性腫瘍primary tumorsから肺へと転移した二次性腫瘍secondary tumorsの『in vivoの癌細胞』は、元の腫瘍と比較して二つの内の別の経路を使う傾向があることを我々は発見した
これは肺の微小環境内のわずかな変化への応答であり、癌に特異的な遺伝子の影響よりも優先されるoverride」


テーラーメイドな新薬
Tailored new medicines

癌の治療のいくつかは直接に腫瘍細胞の代謝を標的とするが、今回の研究は転移した癌は元の腫瘍とは異なる薬剤で治療すべきであることを暗示するimply

Sarah-Maria Fendt教授は次のように説明する
「将来我々の発見は、進行した乳癌の患者に利用されるようになるかもしれない
しかしまず我々は基本的な路線を守り、腫瘍の微小環境によって他のどの代謝経路が影響を受けるのかを調査するつもりだ
また、我々は癌が転移を始めた時点での微小環境の役割を調査しようと思う
そうして我々は腫瘍の成長のあらゆる要素/変数parameterにもっと光を当てていく
それはより正確で効果的な癌に対する治療を開発するために必要な、決定的な情報である」


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.09.042
Breast Cancer-Derived Lung Metastases Show Increased Pyruvate Carboxylase-Dependent Anaplerosis.
乳癌由来の肺転移は、ピルビン酸カルボキシラーゼに依存的な補充反応の増加を示す


※ピルビン酸カルボキシラーゼ/pyruvate carboxylase (PC): 糖新生の律速酵素で、ピルビン酸とオキサロ酢酸の相互変換反応を触媒する。アセチルCoAにより促進される


Highlights
・肺転移は原発乳癌よりもピルビン酸カルボキシラーゼ(PC)に依存的な補充反応anaplerosisが高い
・PCに依存的な補充反応は、in vivoの微小環境の機能functionである
・in vivoの肺微小環境では、グルタミンよりもピルビン酸の利用可能性availabilityが増大する
・区画に特異的なピルビン酸の配分は、13Cラベリングパターンにより推量することが可能である

※anaplerosis/ anaplerotic reaction: アナプレロティック反応。補充反応


Summary
細胞の増殖はトリカルボン酸回路/tricarboxylic acid (TCA) cycleからの補充refillingに依存し、TCA回路はバイオマス産生を支える(補充反応anaplerosis)

細胞の補充反応の経路には主に二つあり、『グルタミンからα-ケトグルタル酸への変換』と、ピルビン酸カルボキシラーゼ/pyruvate carboxylase (PC) を介する『ピルビン酸からオキサロ酢酸への変換』がある
癌はしばしば臓器特異的にそれぞれの経路への依存を示すが、異なる組織に転移した際に補充反応のやり方を臓器に適応させるのかどうかは知られていない

我々はin vivoで13Cトレーサーを使った分析を実施し、乳癌由来の肺転移においてPC依存的な補充反応を計測して原発腫瘍と比較した
調査の結果、肺転移は原発乳癌と比較してPC依存的な補充反応が高いことが明らかになった

我々はin vitroの分析と数学モデルを元に『区画compartmentに特異的な代謝産物の濃度』を定量化determinationし、ミトコンドリアのピルビン酸濃度が 酵素反応速度enzyme kineticsを介して PC依存的な補充反応を促進しうることを発見した

結論、肺転移として増殖する乳癌細胞は肺の微小環境に応じてPC依存的な補充反応を活性化させることを我々は示す



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25511375
乳癌細胞は脳に転移するとグルコースに依存しない増殖を獲得する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f2c26e0f57a3ab816dc42885092e26cc
非小細胞肺癌はグルコースが欠乏するとPEPCKでグルタミンを使う




関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/24a6d50bbf1153b6a5ea9a1200a9c6c3
癌はなぜ肺に転移しやすいのか



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

はぁ?


転移する癌はどのようにして免疫を回避するのか

2016-09-29 06:06:09 | 
How cancer’s 'invisibility cloak' works

September 26, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/09/160926111323.htm



ブリティッシュコロンビア大学(カナダ・バンクーバー)の研究者たちは、癌細胞がどのようにして免疫系から見えなくなるのかを明らかにした
これは腫瘍が転移して体中に拡散できるようになるために重要な段階である

「免疫系は最初の腫瘍primary tumorsの出現と広がりを識別identifyして止めるには有能だが、転移する腫瘍が現れると免疫系はもはや癌細胞を認識recognizeして止めることはできないのである」
首席著者senior authorのWilfred Jefferiesは言う
彼はブリティッシュコロンビア大学で遺伝医学Medical Genetics、微生物学Microbiology、免疫学Immunologyの教授professorである

「我々は転移する腫瘍がどのようにして免疫系の裏をかくoutsmartことができるのかを説明する新しいメカニズムを発見した
腫瘍を再び免疫系に認識させるためにこのプロセスを覆すことが可能になりつつある」


癌細胞は遺伝子を変化させ、やがて進化していく
研究者は癌細胞が進化するにつれてインターロイキン33(IL-33)というタンパク質を作る能力を失うかもしれないことを明らかにした
腫瘍内のIL-33が消失すると免疫系は癌細胞を認識する方法がなくなり、癌細胞は転移し始めることが可能になる

研究者はIL-33の喪失が上皮性の癌epithelial carcinoma、つまり臓器の表面をおおう組織で始まる癌で生じることを発見した
そのような癌としては前立腺癌、腎癌、乳癌、肺癌、子宮癌、子宮頸癌、膵臓癌、皮膚癌などがある

彼らはバンクーバー前立腺センターとの協力で数百人の患者を調査し、前立腺癌または腎癌の患者で腫瘍がIL-33を喪失していると、5年間で より急速に癌が再発することを明らかにした
彼らは現在、IL-33に関するテストが特定の癌の進行をモニターするために有効な方法かどうかを調べる研究を始めようとしているところである

「IL-33は前立腺癌の初めての免疫的なバイオマーカーの一つとなりうる
近い将来我々はより大きな患者のサンプルのサイズで調査することを計画している」
微生物学・免疫学の博士課程学生/PhD studentであり筆頭著者first authorのIryna Saranchovaは言う


研究者たちは長い間人体が持つ自らの免疫系を使って癌と戦おうとしてきた
しかし、その治療が実際に能力を示すことを突き止めたのは最近のほんの数年のことである

今回の研究でSaranchovaとJefferiesたちは、転移した癌にIL-33を戻すことが免疫系の腫瘍を認識する能力の再開を助けることを突き止めた
これからの研究でこれがヒトの癌の治療でも有効になりうるかどうかを調査することになるだろう

この研究はカナダ健康研究所/Canadian Institutes for Health Researchの出資によるものである


IL-33はどのようにして作用するのか?
How does IL-33 work?

癌細胞は遺伝子を変化させて進化し、細胞が進化するにつれてIL-33というタンパク質を作る能力を失う
IL-33は主要組織適合遺伝子複合体/major histocompatibility complex (MHC) という別のタンパク質複合体に影響する
MHCは、ある細胞が良い細胞か悪い細胞かを識別するのを助けるための目印beaconとして働く

最初の原発腫瘍の細胞primary tumour cellはこれらのタンパク質が働いているので、細胞の外側に『警告フラグwarning flag』を出して、免疫系が認識して破壊できるようにする
腫瘍からIL-33が消失すると 警告フラグを表示する経路は分解し、免疫系は癌細胞を認識する方法がなくなってしまい、癌細胞は転移し始めることが可能になる


http://dx.doi.org/10.1038/srep30555
Discovery of a Metastatic Immune Escape Mechanism Initiated by the Loss of Expression of the Tumour Biomarker Interleukin-33.

Abstract
免疫による監視と、癌による監視の回避に関する新たなパラダイムを我々は記述する

転移性の癌は 同一遺伝子syngeneicの原発腫瘍primary tumoursと比較して IL-33の発現の減少を示し、
抗原プロセシング機構/antigen processing machinery(AMP)のレベルが低下する

※抗原はプロセシングされてからMHCクラスI分子/クラスII分子によって提示される(抗原提示/antigen presentation)

転移性腫瘍においてIL-33の発現を補うcomplementationと、APMの発現とMHC分子の機能が上方調節され、
その結果として腫瘍の成長速度が抑制され、循環腫瘍細胞(CTC)の頻度が低下する

※complementation: 相補性

ヒトでの並行研究で、IL-33発現の低さは 前立腺癌・腎臓淡明細胞癌kidney renal clear cell carcinomaの再発と関連する免疫性バイオマーカーであることが実証された

したがって、IL-33は原発腫瘍に対する免疫による監視において重大な役割があり、
IL-33は転移性へと推移transitionする間に失われ、癌の免疫回避を発動させるactuate


Introduction
IL-33には二重の機能があり、核内での因子として、また炎症性サイトカインとして働く

核への局在とヘテロクロマチンとの結合はN末端ドメインによって仲介され、それによりNF-κB複合体p65サブユニットの転写を調節する新たな因子としてIL-33が機能できるようにする
C末端ドメインはST2受容体への結合に十分であり、分極化polarizedしたヘルパーT細胞2型(Th2)やタイプ2自然リンパ球(ILC2)からのタイプ2のサイトカイン(IL-5とIL-13)産生を活性化させる

腫瘍発生tumorigenesisへのIL-33の関与について、最近の文献では論議の的となっており、
 免疫保護的な影響がある(26,27
 腫瘍促進的な影響がある(27,28,29,30,31,32,33
という両方を、原発腫瘍の箇所または臨床ステージに依存して表面的には示している



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/721150eedec7d4d56d4052bddc90f2be
メラノーマはIFN-γに反応しないよう進化してイピリムマブに抵抗する



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23528820
マスト細胞はIL-6とTNF-αによりHSV-2ウイルス感染から防御し、それは角化細胞のIL-33によって仲介される



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/13c36bcb505181ccda2d0ceb39931a18
IL-33は呼吸器ウイルス感染に脆弱にするが、IL-33を標的とすることでウイルス感染による喘息の発症を抑える



関連サイト
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/research/papers/post_64.php
マスト細胞はIL-33で活性化されると制御性T細胞を選択的に増やし、その結果気管支喘息を抑制する



関連サイト
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150128093549.htm
肥満の脂肪組織にIL-33を投与すると脂肪組織に独特な制御性T細胞が回復して炎症は減少し、血糖が低下する
 

癌はどのようにして脂肪に依存するようになるのか

2016-09-19 06:06:36 | 
Taste for Fat: Scientists discover molecular handle behind some cancers' preference for fat

September 15, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/09/160915133058.htm

癌はブドウ糖に耽溺することで有名であり、PETによるスキャンでブドウ糖を大量に取り込む腫瘍細胞を光らせて探し出すことが可能なほどである
しかし一部の癌はブドウ糖よりも脂肪を好むように見えるため、そのような傾向propensityは長い間科学者たちを悩ませてきた

今回Molecular Cell誌で発表されたハーバード・メディカルスクール(HMS)の研究により、一部の腫瘍がどのようにして生命維持の燃料として脂肪を好むようになるのかが明らかになった
この研究では、通常は脂肪の燃焼を止めているシグナル伝達経路がどのようにして癌で異常を生じ、それが脂肪の消費を加速して腫瘍の増殖を刺激する過程を示す

この研究では特に『プロリン水酸化酵素3/prolyl hydroxylase 3 (PHD3)』というタンパク質が、脂肪の燃焼を抑制する細胞内の繊細なバランスを調節するための鍵となる重要な因子であるようだということを突き止めた

PHD3は急性骨髄性白血病や前立腺癌を含めた特定のタイプの癌で異常に少ないことが研究で示された
今回の発見は 腫瘍の燃料を枯渇させるような新たな治療法を開発するための基礎を築くのを助ける可能性がある


「これは癌の代謝の研究における新たなフロンティアを真に象徴する」
HMSで細胞生物学の準教授associate professorであり首席著者senior authorのMarcia Haigisは言う

「この経路の分子的な『操作handle』を理解することは、基礎研究を臨床へとトランスレートするための第一歩となる」


生物学者たちは以前から、栄養の不足した細胞は機能維持のための燃料源をブドウ糖から脂肪へと切り替えることを知っていた
細胞のエネルギーが少なくなるとAMPKというタンパク質がACCという酵素を標的にすることで脂肪の酸化を活性化し、細胞が脂肪を燃焼してエネルギーを作るのを助ける

しかし、十分な資源resourcesがある時の細胞はエネルギーのバランスを維持しようとするseek
科学者たちは細胞が正確にはどのようにして脂肪を酸化するスイッチを切るのかを探求してきた

HMSの研究チームはこの繊細なバランスに関与しそうな要素possible playersを探し求める中で、PHD3というタンパク質に着目した
これまでの数少ない研究でPHD3が細胞の代謝に関与することは示唆されていたが、その正確な役割は不明のままだった

HMSのチームは一連の実験でPHD3が脂肪の燃焼を抑制することを示し、それはACC2を化学的な修飾で活性化することによると実証した
ACC2は、細胞の脂肪燃焼を止めておくのと同じ酵素のバージョンの一つである

 PHD3↑→ACC2↑→脂質生成↑,脂肪燃焼↓


癌におけるPHD3の役割を突き止めるため、研究チームはヒトの全ての癌のデータベースの記録を通して徹底的に探したcomb
ブドウ糖を渇望する腫瘍はこの脂肪燃焼を阻止するブロッカーであるPHD3を高レベルに持ち、甘味を力とするエネルギーの流れを保っておくのだろうと研究者は推測しているsurmise
一方で、エネルギー源として脂肪に依存する腫瘍はPHD3レベルの低さを示すだろうという
2つのタイプの癌、急性骨髄性白血病と前立腺癌は、PHD3レベルが明らかに最も低いことが分析で示された


『いくつかの癌は生存のために脂肪を必要とする』『腫瘍増殖に燃料を供給する脂肪燃焼プロセスにおいて、鍵となる調節因子はPHD3である』という仮説をテストするため、研究者たちが癌細胞系統とマウスモデルでPHD3レベルを正常レベルまで回復させたところ、腫瘍は成長を止めただけでなく、死に絶えた

「これは本当にエキサイティングだった」
Haigisは言う

「我々は多くの代謝経路を癌で変化させてきたが、今回の結果は我々が経路を調整して本当に腫瘍が死ぬことを観察した例の一つだ
それらは脂肪の酸化にとても依存しているので、変化させると死ぬ」」


この発見を臨床に応用するには、なぜ特定の腫瘍が脂肪に依存するのかを理解するために動物モデルや患者からの癌細胞を使ってさらに多くの基礎研究をする必要があるとHaigisは言う

「脂肪は何を腫瘍に供給しているのか? それは他の燃料では供給されないのか?
それは未解決の問題open questionの一つであり、そしてこれは物語の第一章に過ぎないのである」


http://dx.doi.org/10.1016/j.molcel.2016.08.014
PHD3 Loss in Cancer Enables Metabolic Reliance on Fatty Acid Oxidation via Deactivation of ACC2.
癌におけるPHD3の喪失はACC2の不活化を介して脂肪酸酸化への代謝的な依存を可能にする


 PHD3↓→ACC2↓→アセチルCoA→マロニルCoA↓─┤CPT1↑→脂肪酸酸化↑


Highlights
・プロリン水酸化酵素3/Prolyl hydroxylase 3 (PHD3) は、代謝酵素のACC2を水酸化hydroxylateして活性化する
・栄養が豊富な間、PHD3/ACC2という経路は脂肪酸酸化/fatty acid oxidation (FAO) を抑制する
・PHD3はAMLで少なく、それが脂肪への依存を加速し、そしてそれはFAO阻害剤の標的になりうる
・PHD3を再び発現させるとACC2を介してFAOを制限し、培養細胞ならびにin vivoでAMLを抑制する


Summary
腫瘍細胞によるグルコースとグルタミンの利用についての研究が多く実施されてきたが、多くの癌はグルコースの代わりに脂肪を代謝するのを好む
脂肪を好む表現型が広く見られるpervasivenessにもかかわらず、癌の脂肪酸酸化(FAO)を促進する経路についての知識は限られている

プロリル・ヒドロキシラーゼ・ドメイン/prolyl hydroxylase domainというタンパク質は、プロリン残基を基質として水酸化hydroxylateし、燃料の切替えと関連付けられている
今回我々はPHD3が栄養素の豊富さに応じて急速にFAOの抑制を引き起こし、それはアセチルCoAカルボキシラーゼ2/acetyl-coA carboxylase 2 (ACC2) の水酸化hydroxylationを介することを明らかにする
我々は急性骨髄性白血病/acute myeloid leukemia (AML) を含む癌サブセットでPHD3の発現が強く低下することを発見した
そしてPHD3の発現は 外因的な栄養の合図external nutrient cuesにもかかわらず 脂肪の異化作用catabolismへの依存と関連する

PHD3を過剰発現させるとACC2の調節を介してFAOが制限され、その結果としてconsequently白血病細胞の増殖を妨害するimpede

したがって、PHD3の喪失はより多くの脂肪酸の利用を可能にするが、それはFAO阻害に対する癌細胞の脆弱性を示すことにより、代謝的なmetabolic、そして治療法的なtherapeutic不利な点liabilityとしても働く



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141125074828.htm
PHD3はEps15とEpsin1のようなセントラル・アダプタータンパク質と結合し、EGFRの取り込みを促進することによりEGFRを制御する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/991a30f257378e25e2ce5b7d9b0a0bf7
癌細胞は血液中の脂肪に頼って生きることが可能



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/910a0223f30d3b68e39d6905f1c05820
乳癌は増殖するために脂質を取り込む



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4056326cf9626ead69dd90ab0886df52
白血病の癌幹細胞は脂肪組織に隠れる



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

はぁ?
 

癌細胞はミトコンドリアで乳酸を使う

2016-09-16 06:06:12 | 
'Tracking bugs' reveal secret of cancer cell metabolism

Instead of throwing away valuable nutrients, the cells wring out every last drop of energy

September 12, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/09/160912161023.htm

癌の特徴の一つは細胞の代謝の変化である
細胞の代謝という一連の化学反応は生命にとって非常に基本的であるため、その変化は癌細胞を『ぞっとするほど邪悪creepily malevolent』にするようだ


健康な細胞は血液からブドウ糖(グルコース分子)を取り込み、それを分解してエネルギーを取り出す
その反応は2つの段階に分けられ、最初の段階は細胞質で生じ、次の段階はミトコンドリアで起きる
癌細胞はミトコンドリアの段階をほとんどスキップしてしまうため、それによって得られるはずだったエネルギーは最初の段階を活性化rev upしてグルコースを急速に分解することによって補われると考えられている
結果としてグルコースが部分的に分解された乳酸が大量に生じ、それは『廃棄物waste product』であると長い間見なされてきた

この『仮説』のいくらかは確かに真実である
なぜなら癌細胞は実際に通常よりも多くのグルコースをがぶ飲みsoak upするからである
このグルコース取り込みの増加は非常に著しいものであり、臨床で癌を診断する際に使われる画像化技術の基盤となるほどである

一方で、癌細胞がどのようにしてグルコースから作られうるエネルギーや物質のほとんどを廃棄discardしうるのかという問題は、理解するのが困難な問題であり続けた
(それはまるで王室の毒見役royal poison testerが料理を一口だけかじるようである)

「癌細胞にはとても無駄が多いというのは、癌の研究において非常に困惑させる論題だった
それは道理に合わないように見えるseemingly paradoxicalからだ」
ワシントン大学セントルイス校の化学部で準教授associate professorのGary J. Patti, PhDは言う

PattiとAmanda (Ying-Jr) Chenたちは2016年9月12日にNature Chemical Biology誌のオンライン先行出版号advance online issueで、一見すると簡単な実験によってもたらされた驚くべき結果を記述する
元々は新しい方法論methodologyをテストするために企画されたundertakenはずだった彼らの研究は、癌の代謝についてのこれまでの考え方に対して意図せずunexpectedly疑いを投げかけるものとなった
彼らは乳酸を研究することにより、癌細胞がこれまで考えられていたのとは異なるやり方でエネルギーを作り出すことを示したのである
癌細胞は『廃棄物waste product』であるはずの乳酸をミトコンドリアに取り込む能力があり、そこでグルコースのエネルギーの残りを取り出すことが可能である

「乳酸について学部学生undergraduateの生化学のテキストで調べると、そこには『乳酸は廃棄物として排泄される』と書かれている」
Pattiは言う
「しかし我々の研究で、必ずしもそうではないことが示された
乳酸は生産的に使われうるのである」


ワールブルクのパズル
The Warburg puzzle

細胞が生きるために必要とするエネルギーのほとんどは細胞の発電所powerhouseと呼ばれるミトコンドリアで作られる
細胞質ではグルコースが持つエネルギーのわずか5パーセントが取り出されるに過ぎず、残りの95パーセントがミトコンドリアで取り出される

ミトコンドリアでエネルギーを作るためには酸素が必要であり、そのことはなぜ運動すると筋肉が疲労するのかを説明する
肺が酸素を供給するのよりも速く筋肉を速く動かすexert musclesと、グルコースからはわずか5パーセントしかエネルギーを取り出せないからである


ドイツの生理学者オットー・ワールブルクは1924年、癌細胞は酸素が存在してもグルコースを乳酸へ発酵fermentさせることを発見した

癌細胞は(表面的には)ミトコンドリアでのグルコースの代謝から細胞質でのグルコースの分解へと切り替わるshift
非常に悪性の癌細胞は、驚くべきことに通常よりも200倍も早く細胞質での代謝を実行する
この観察結果はワールブルク効果と呼ばれ、長い間癌の研究者たちを悩ませてきたpuzzle

なぜ急速に増殖し続ける細胞は、作り出すエネルギーが少ない代謝へと切り替わるのか?
それがどのような利点をもたらすのか?
この問題を解決すべく多くの努力が費やされてきたが、真に解決したとは言えない状況である

「文献で代謝の地図を見ると、たいていは乳酸が細胞の外に出ていくことを示す矢印しかない」
Pattiは言う
「それは一本の矢印に過ぎないが、しかしそれが大きな違いなのである」


行き止まりは行き止まりではない
A dead end that wasn't

バイアスのない方法で代謝を研究すべく、Pattiのラボは栄養素に同位体isotopeの標識labelで目印tagを付けて、栄養素が細胞によって代謝された時にそれがどうなるのかwhat become ofを追跡できるようにした

「我々がこの技術を開発した時、こう考えた
『よし、じゃあテストするためにまず何をしよう?』」
Pattiは言う
「そこで我々は、テストに適した『わかりきった』実験は乳酸だと決めた
乳酸はよく行き止まりdead endと呼ばれる
癌細胞にこの行き止まりの目印tagを与えて、(癌細胞の内部に)目印を付けたものが他に何も見られなくなることで、我々の技術がうまくいくことが実証されるだろうと期待した」

しかし彼らが実験を行うと、期待したようにはならないことがわかった
「我々は標識化されたシグナルlabeled signalsを大量に観察した」
彼女は言う
「癌細胞の中に存在する脂質のほとんど全てが目印のついた状態になっていたend up tagged
これはまったく予想もしなかったこので、そして興奮させるものだった」

細胞は乳酸から余分なエネルギーを取り出しただけでなく、乳酸の原子を使って癌細胞の増殖に必要となる他の重要な構築材料を作り出していたのである


「これは大きな変遷transitionだ」
Pattiは言う
「癌細胞は何かを無駄にしているのではなく、全く新しいクラスの分子を効率的に作っていると言われるようになるだろう」

この発見は非常に驚くべきstartlingものだったため、研究チームは乳酸が実際にはミトコンドリアによって使われるということを確認するために一連の実験を実施した
実験の結果、乳酸がミトコンドリアに取り込まれうることが確認されただけでなく、ミトコンドリア内部の酵素が乳酸を代謝してエネルギーと細胞の構築材料を作り出すことも実証された


ケーキを食べてもケーキがなくならない
Having your cake and eating it too

では、どうせanywayミトコンドリアへと輸送されるしかないのだとしたら、なぜ癌細胞は『グルコースから乳酸へと変換する努力』を無駄にするのだろう?

その答えはこうだ
細胞が細胞質でグルコースを代謝する時、その過程で電子が生まれる

細胞は電子をどこかに置いてputおかなければならない
さもなくば、厳密に調節された代謝反応は継続することが不可能になる

健康な細胞は電子をミトコンドリア内部に移動させるが、癌細胞は電子を作るのが早すぎるために保持しておくことができない
このことが癌細胞に電子を乳酸にくっつけて排出せざるを得ないようにさせるのであると、そう考えられるのである/or so it was thought

「我々が今回発見したのは予備手段work-aroundだと考えている」
Pattiは言う
癌細胞は乳酸に電子をくっつけるが、それは貴重な栄養素を無駄にしなければならないということを意味しない

「ケーキを食べたらケーキはなくなる/you can't have your cake and eat it too
しかし今回の場合、ケーキを食べてもケーキはなくならないのである/it's a case of having your cake and eating it too」


http://dx.doi.org/10.1038/nchembio.2172
Lactate metabolism is associated with mammalian mitochondria.
乳酸の代謝は哺乳類のミトコンドリアと関連する

Abstract
グルコースの発酵後に分泌された乳酸が他の細胞や組織によって酸化されたり、糖新生の基質として利用可能なのは十分確立されている
しかしながら、発酵する細胞の内部それ自体では乳酸がNAD+を補充するために作られて後に外へと分泌されると一般に憶測されている
今回我々は、発酵から生じた細胞質の乳酸が哺乳類の細胞それ自体のミトコンドリアによって代謝される可能性を探求した
その結果、発酵を行うHeLa細胞とH460細胞はその脂質の大部分large percentageを合成するために、外因性の乳酸の炭素を利用することを我々は発見した
高解像度の質量分析を用いることにより、豊富な乳酸からの13Cと2-2H標識labelの両方ともミトコンドリアに入ることを我々は発見した

乳酸脱水素酵素/lactate dehydrogenase (LDH) の阻害剤であるオキサミン酸oxamateは、乳酸中でインキュベートした単離ミトコンドリアの呼吸を低下させたが、ピルビン酸中でインキュベートした単離ミトコンドリアの呼吸は低下させなかった

※乳酸脱水素酵素: NADHを補酵素としてピルビン酸から乳酸を生成する反応を可逆的に触媒する酵素

加えて、透過型電子顕微鏡/transmission electron microscopy (TEM) では 乳酸脱水素酵素B(LDHB)がミトコンドリアに局在することが示された

合わせて考えると、我々の結果は 乳酸の代謝 と 発酵する哺乳類細胞のミトコンドリア との間のつながりを実証する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/41d21c8ebda202f1c0bc582fec4aa5d6
細胞が増殖するためにはアスパラギン酸の合成と、それにより余った電子をミトコンドリアの呼吸で消費しなければならないが、
アスパラギン酸を補うかアスパラギン酸輸送体の過剰発現により細胞はミトコンドリアの電子伝達系がなくても増殖できるようになる



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/991a30f257378e25e2ce5b7d9b0a0bf7
癌細胞は血液中の脂肪に頼って生きることが可能である



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癌細胞は解糖系を阻害するとミトコンドリアに依存するようになる



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。



参考サイト
http://blog.goo.ne.jp/kfukuda_ginzaclinic/e/726e3003fb519fcd2cb85f55e86226c9



<コメント>
乳酸からの矢印、細胞外に一本線ですね

 

膵臓癌ではγδT細胞とαβT細胞がお互いに争う

2016-09-13 06:06:41 | 
Immune system infighting explains pancreatic cancer's aggression

August 25, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160825130612.htm

なぜ免疫系は、膵臓癌を認識して攻撃するのに悪戦苦闘するのか?
その理由を説明するのは細胞同士の『内輪もめinternal conflict』かもしれない

ニューヨーク大学ランゴンメディカルセンターとパールマターがんセンターを中心とする研究によれば、この内輪もめinfightingを抑えることが膵臓癌の治療をより効果的にするかもしれないという

Cell本誌で8月25日に発表された研究では、免疫細胞の強力なサブセットである『ガンマデルタT細胞(γδT細胞)』がどのようにして『腫瘍を攻撃するT細胞』を妨害するのかについて説明する
γδT細胞による干渉がなければ、αβT細胞のCD4+T細胞とCD8+T細胞は増殖し、ウイルスや細菌を攻撃するのと同じようにして腫瘍を積極的に攻撃する
しかし不幸なことに、免疫系は腫瘍を進行させるγδT細胞を大量に作り出し、それらは膵臓癌の腫瘍に浸潤する

最近の進歩した免疫療法では患者自身の免疫系を活性化させて癌と戦わせるというアプローチが用いられ、CD4+T細胞やCD8+T細胞の影響を加速する
今回新たに発表された研究結果は、膵臓癌では、この種の免疫療法はより厳密に標的を定める必要があることを証明するものだ
γδT細胞を阻止しなければ、CD4+T細胞もCD8+T細胞も機能することはできず、癌の増殖を阻止することもできない

「標準的な免疫療法は膵臓癌ではうまくいかない
それが一体なぜなのか、今回我々はその理解を助ける情報を得た」
首席著者senior authorのGeorge Miller, MDは言う
彼はパールマターの免疫学プログラムの部長headであり、外科部では副部長vice chairで、ランゴンの細胞生物学部では準教授associate professorである

「腫瘍に対する主な防御メカニズムは、膵臓癌では完全に無力化される」


Millerの研究では膵管腺癌/pancreatic ductal adenocarcinoma (PDA) に焦点を当てた
過去20年間に次々と新たな治療が現れてきたことで全ての癌の生存率は劇的に改善したが、どんなタイプの膵臓癌でも診断から5年後に生存しているのは約8パーセントに過ぎない

γδT細胞はヒトのPDA腫瘍で数が多くprolific、T細胞の約40パーセントを占める
このことから、Millerと、そしてランゴンで外科研修医surgery residentのDonnele Daley, MDたちはγδT細胞が膵臓癌の促進において独特な役割を演じるという仮説を立てた

複数のテストの結果、γδ細胞が単独では腫瘍の成長を促進しないことが明らかになった
γδ細胞は腫瘍と戦う他の免疫細胞の作用を妨害していたのである

この発見は免疫系の複雑さをも強調するものだとMillerは言う
膵臓癌の腫瘍がノーチェックで増殖することを可能にするγδT細胞は他の癌、例えばメラノーマやいくつかの腎癌、結腸癌とは戦うことが示されている
様々な癌において全ての免疫細胞が同じ役割を持つわけではなく、時折それらはお互いに邪魔をする


この研究は膵臓癌の診断と治療の開発にとって重要な意義を持つが、Millerは研究結果をヒトに当てはめるのは簡単ではないと警告する
なぜなら、ヒトのγδT細胞を阻害することが可能な既知の薬剤や他の方法が現在まったく存在しないからである

今回の研究でMillerのチームは、膵臓癌を生じさせたマウスの腫瘍のサイズと免疫細胞の量を時間を追って分析した
通常のγδT細胞よりも数を減らした膵臓癌マウスは、通常のγδT細胞を持つマウスよりも平均で1年近くも長く生存し続けた


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2016.07.046
γδ T Cells Support Pancreatic Oncogenesis by Restraining αβ T Cell Activation
γδT細胞はαβT細胞の活性化を抑制することにより膵臓の腫瘍形成を補助する



Highlights
・γδT細胞はヒトの膵臓癌で非常に優勢highly prevalentである
・γδT細胞を消去するかリクルートを妨害することは膵臓癌において保護的である
・膵臓癌に浸潤するγδT細胞はチェックポイントリガンド(PD-L1)を高レベルで発現する
・γδT細胞はαβT細胞の活性化を不可能にするが、それはチェックポイント受容体(PD-1)との結合ligationを介する


Summary
炎症は膵臓の腫瘍形成で中心的paramountである

我々は独特に活性化したγδT細胞の集団を突き止めた
γδT細胞はヒトの膵管腺癌(PDA)において腫瘍に浸潤するT細胞の40パーセントまでを占める

γδT細胞のリクルートと活性化は、様々なケモカインシグナルによって決まるcontingent
γδT細胞の消去、枯渇、またはリクルートの阻害はPDAに対して保護的であり、Th1に分化polarizationしたαβT細胞の浸潤と活性化が増大するという結果になった
αβT細胞はPDAの結果に対して重要ではないdispensableが、γδT細胞を除去した際の腫瘍からの保護を仲介するものとしては必須indispensableである

PDAに浸潤するγδT細胞は高レベルの『疲弊リガンド/exhaustion ligands』を発現し、それにより腫瘍に対する適応免疫を無効化するnegate
γδT細胞のPD-L1を阻害すると、CD4+T細胞とCD8+T細胞の腫瘍浸潤infiltrationと免疫原性immunogenicityが促進され、腫瘍からの保護が誘導された
このことはγδT細胞がPDAにおける免疫抑制性チェックポイントリガンド(PD-L1)の決定的に重要な源であることを示唆する

我々は新たなクロストークを介して癌におけるT細胞活性化を調節する中心的な因子central regulatorsとしてγδT細胞を記述する



参考サイト
http://www.space-arch.com/medicalcost.html
ガンマ・デルタT細胞療法は1回の投与で33万円が目安です。1セットを6回とした場合、それに初診料と相談料を合わせると、合計で200万円程度になります。



参考サイト
http://www.j-immunother.com/gdt/
実際の治療では、患者さんの血液中に存在する少量のガンマ・デルタT細胞を取り出して、その数を莫大に増やし、攻撃力を強化してから、身体に投与します。


<コメント>
莫大に増やしちゃっていいんですか?



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150330122354.htm
腫瘍によってγδT細胞を介して活性化した好中球は、CD8+T細胞を抑制する
 [腫瘍]─(IL-1β)→[γδT細胞]IL-17─(G-CSF)→好中球─┤CD8+T



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8e8d593bb231a0d168333508e582e009
膵臓癌を形成する最初の段階でマクロファージが呼び寄せられる



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/1492f3dda4c9626a8a679ee8afb11de2
悪性の膵臓癌はマクロファージによる細胞死メカニズムで生き残る



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/241d3b5cee4b852d69f2437d9ce7da18
高脂肪食によってTh1、CD8+T、IL-17産生γδT細胞は増加し、TregとNKp46+CD4-ILCは減少し、Th17は変化がなかった



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150416112826.htm
21歳から41歳の健康な成人52人に4週間の乾燥シイタケを1日4オンス(120グラム)食べさせたところ、γδT細胞の機能が向上し、炎症タンパク質は減少した



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https://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140908121504.htm
鵞口瘡(がこうそう)/口腔カンジダ症(thrush)を防ぐには、γδTCRを持つナチュラルTh17とIL-17が必要
 

元の腫瘍がER+/HER-でも循環腫瘍細胞はHER2+が混在するようになる

2016-09-11 06:06:00 | 
Breast cancer cells found to switch molecular characteristics

Spontaneous interconversion between HER2-positive and HER2-negative states could contribute to progression, treatment resistance in breast cancer

August 24, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160824135041.htm

マサチューセッツ総合病院/Massachusetts General Hospital (MGH) の研究者は、腫瘍の分子的な特徴における自発的な変化spontaneous changesがどのようにして複数の細胞の集団が混合した腫瘍tumors with a mixed population of cellsへとつながりうるのかを明らかにした
その治療には複数のタイプの治療薬が必要になる

Nature誌9月1日号の報告によると、元々はエストロゲン受容体 (ER) が陽性でHER2が陰性と診断され、後に転移が生じた乳癌患者の血液中を循環する腫瘍細胞/circulating tumors cells (CTCs) の中には、HER2が陽性のCTCとHER2が陰性のCTCが混合して観察されたという


「我々はER陽性でHER2が陰性だった乳癌腫瘍患者においてHER2陽性の獲得を観察しただけでなく、
この腫瘍細胞の集団は自発的にHER2陽性とHER2陰性との間を揺れ動き、それが腫瘍の進行と抵抗性に寄与することを発見した」
MGH癌センターのShyamala Maheswaran, PhDは言う

「また、我々は対処が難しいこれらの腫瘍の治療に役立つ可能性がある治療法の組み合わせをマウスモデルで示した」


腫瘍内の分子的な不均一性molecular heterogeneityは近年の癌治療における交絡因子confounding factorになってきており、
腫瘍の成長を刺激する様々な細胞集団のそれぞれ全てを特異的に標的とする、複数の薬剤を必要とするようになっている

今回の研究は、患者個々人の腫瘍で生じるHER2の発現の違いと、その違いがどのようにして腫瘍の成長や治療に影響するのかをさらに調査するためにデザインされた

研究チームは、MGH医用工学センター/Center for Engineering in Medicineが開発したCTC-iChipというマイクロ流体デバイス/microfluidic deviceを使って血液サンプルからCTCを分離した
CTCを分析した結果、ER陽性/HER2陰性と診断されて治療を受けた後に転移が生じた18人の患者のうち16人のサンプルで、HER2陽性CTCとHER2陰性CTCの両方が見つかった

ER陽性/HER2陰性の乳癌患者から単離されて培養されたCTCもHER2発現に関して同様のパターンを示し、腫瘍細胞の中にはHER2を発現する細胞と、HER2を発現しない細胞の両方が存在した


このHER2陽性の腫瘍細胞を詳しく調べたところ、複数の成長シグナル伝達経路でタンパク質の発現が上昇を示した
しかしHER2の発現レベルは『HER2が増幅された原発腫瘍/HER2-amplified primary tumor』で観察されるほど高くはなかった

HER2陰性のCTCはHER2阻害剤に感受性がなかったが、それと同じく、HER2陽性のCTCもHER2阻害剤に反応しなかった

しかし、HER2阻害剤とIGFR1阻害剤(インスリン様成長因子受容体1)とを組み合わせると、HER2陽性CTCに対して毒性を発揮した
対照的に、HER2陰性のCTCでは、Notchという発達経路のタンパク質と、DNA損傷に応答する経路のタンパク質の発現が上昇していた

それらの違いを反映して、HER2陽性CTCはより急速に増殖し、標準的な化学療法薬の治療に応答したが、HER2陰性のCTCは化学療法薬に対して抵抗性だった
しかし、Notchシグナル伝達を抑制することが知られる『ガンマセクレターゼ阻害剤』は有効だった


HER2陽性またはHER2陰性の乳癌腫瘍細胞のどちらかをマウスの胸部に注入したところ、両方のタイプを持つ腫瘍が発達した


HER2陽性の細胞が優勢な腫瘍に対して化学療法薬のパクリタキセルを投与すると腫瘍は急速に縮小したが、その後に多数のHER2陰性の細胞によって再発が生じた
一方、HER2陰性の細胞の方が多い腫瘍にパクリタキセルを投与しても全く効果がなかった

※パクリタキセルpaclitaxel: 微小管重合を促進することで細胞分裂を抑制する


HER2陽性とHER2陰性の腫瘍細胞を混合mixtureさせたもので腫瘍を発生させたマウスに パクリタキセルとガンマセクレターゼ阻害剤を組み合わせて投与すると、腫瘍の再発は著しく遅くなった
このことは、組み合わせによる治療戦略が腫瘍細胞の混合した集団を排除するために潜在的に有用であることを示唆する


「この2つの腫瘍細胞の集団が相互に変換convert back and forthする能力は、両方の集団を同時に治療することの重要性を強調する」
ハーバード・メディカルスクールの外科部で準教授のMaheswaranは言う

「我々はこの相互変換interconversionのメカニズムをすぐに調査する必要がある」


http://dx.doi.org/10.1038/nature19328
HER2 expression identifies dynamic functional states within circulating breast cancer cells.
HER2発現は、乳癌の循環腫瘍細胞の内部に存在する動的な機能状態を明らかにする



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/606dc709be1c901d9b3a52674b3a422a
小細胞肺癌の循環腫瘍細胞は巨大な集合体を自発的に形成し、中心部の酸素が乏しく化学療法に抵抗する



関連サイト
http://dx.doi.org/10.1016/j.trecan.2015.07.006
En Route to Metastasis: Circulating Tumor Cell Clusters and Epithelial-to-Mesenchymal Transition


Tumor-Antigen-Independent Purification of CTCs
しかしながら、このCTC-iChipの限界はその流体動力学が個々の細胞または小さなCTCクラスター(2~4個)を単離することに最適化されていることにあり、さらに大きなCTCクラスターまたは腫瘍微小塞栓tumor microemboliは デバイスには入らない可能性がある
この難題challengeに対処すべく、CTCクラスターを捉えるために特にデザインされた別の微小流体デバイスmicrofluidic deviceが開発された[47]
このクラスターチップはCTCクラスター内の細胞間の結合の強さに依存し、特別にデザインされた微小流体孔に、グループ化された細胞をくさびのように締めつけて動けなくするwedge

EMT in Circulating Tumor Cells
CTCによる間葉系の転写の発現は、患者一個人の癌から得られた癌細胞でも一致しない
そうではなく、上皮対間葉系 の 構成の劇的な移行 は連続的な治療計画sequential treatment regimensに対する応答または進行の機能として明らかである
患者個人から分離されたCTCでは、癌が治療計画に抵抗性になるにしたがって 間葉系が優勢な細胞画分が生じ、出し抜けにprecipitously新しい効果的な治療が導入された時にのみ減少して腫瘍の縮小につながる [3]
これらの観察は、CTCにおけるEMT的な特徴は単にその内因的な浸潤性を反映したものではなく、治療介入によって開始される生存経路ならびに薬剤抵抗性経路によって修飾を受けるmodulatedという可能性を示す
 

p53の突然変異は凝集とアミロイド変換を引き起こす

2016-09-09 06:06:12 | 
Computer simulation reveals p53 weak spots, opens new avenues against cancer

September 7, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/09/160907081721.htm

p53は多くの癌と関連する重要なタンパク質であることが以前から知られている
その主な機能は体内の腫瘍形成を抑制することであり、したがって人体を癌の発症から保護している

しかしながら、p53はファミリータンパク質のp63やp73と比較するとかなり『不安定』であり、それら3つの中でp53は祖先となる無脊椎動物のバージョンから最も逸脱deviatedしている

それら3つのタンパク質は全て、標的となる遺伝子の配列を認識して結合するための領域、つまりDNA結合ドメイン/DNA binding domain (DBD) を遺伝子の配列内に持つ
p53の機能喪失は『不安定さを増すDBDの突然変異』によって引き起こされることがほとんどで、そのようなp53は凝集してアミロイド原繊維/amyloid fibrilを形成する傾向がある
そのような結果はp53の高い不安定性によって説明できるかもしれない

加えて、p53の凝集物はプリオンのようなふるまいをする
つまり、p53の突然変異体は正常なp53分子をハイジャックしてしまい、活性のないアミロイドへと変換する

癌の発症につながるp53突然変異の90パーセント以上はDBDの中に生じるため、それは癌の治療法の開発にとって重要な標的である
しかしながら、p53の凝集してアミロイドを形成する傾向は新たな治療戦略を開発する際の障害である


p53 DBDの安定性、アミロイド形成、凝集の根底にある分子的な特徴をより深く理解するため、リオデジャネイロ連邦大学/Federal University of Rio de Janeiro(ブラジル)のJerson Lima Silvaが率いる研究グループは、マイクロ秒のタイムスケールで分子動力学/molecular dynamics (MD) をシミュレーションした
これは時間経過による原子の正確な動きを研究するために用いられるコンピューターによる手法である

分子動力学によって従来の実験では研究が難しかった生物学的なプロセスを詳細に研究することが可能となり、タンパク質がどのようにして作用するのかについての新たな洞察をもたらし、機能に異常が起きた原因を予測する


Scientific Reports誌で発表された今回の研究で研究グループはp53ファミリー(p53, p63, p73)のDBDの配列と構造を調査し、それらがそれぞれのDBDに同様の配列と構造を持っているにもかかわらず、p53だけが他の2つよりも凝集しやすい傾向があることを示した
研究によると、p53に固有innateの構造的な弱点は 水waterによる攻撃に脆弱な『主鎖の水素結合/backbone hydrogen bonds』が高頻度で外側に露出exposedしていることにより説明されることが示された
対照的に、p63とp73は水素結合がうまく保護されており、水による侵略water invasionに抵抗することが可能で、結果として凝集しにくい

「我々の研究はp53 DBDの不安定性の根底にある分子的な特徴に光を当てた
この新たな洞察は、p53を安定化することでアミロイドを形成しやすい傾向を低下させるという新たな戦略の開発に利用可能である」
研究の筆頭著者であるElio A. Cinoは言う


研究グループは現在、一般的なp53の突然変異によって誘発されるアミロイド形成がどのようにして乳癌や膠芽腫などの悪性腫瘍と関連するのかを調査するための研究を実施しており、p53の凝集とアミロイド原繊維形成を減らす方法として特定の小分子やペプチドをテストしているところである


http://dx.doi.org/10.1038/srep32535
Aggregation tendencies in the p53 family are modulated by backbone hydrogen bonds.
p53ファミリーの凝集する傾向は、主鎖の水素結合によって調整される


Abstract
p53ファミリーのタンパク質はp53, p63, p73からなる

p53のDNA結合ドメインは生まれつき不安定であり、アミロイドを形成しやすい配列amyloidogenic sequenceを持っているため、機能喪失を引き起こすアミロイド原繊維を形成しやすい傾向がある
p53を利用した治療を開発するためには、p53の不安定性と凝集の分子的な基盤を理解する必要がある

光散乱/light scattering・チオフラビンT/thioflavin T(ThT)・高静水圧法/high hydrostatic pressure(HHP)による研究から、
p53 DBDはp63 DBDとp73 DBDよりも早く、そしてより多くの割合が凝集し、
そして変性denaturationに対してより脆弱であることが示された

p53 DBD、p63 DBD、p73 DBDの凝集しやすい傾向は、それらの熱的な安定性thermal stabilitiesと強く相関した

分子動力学/Molecular Dynamics (MD) のシミュレーションでは、p53に独特な『構造的不均質性structural heterogeneity』を持つ特定の領域が指し示され、
それは『露出した主鎖水素結合/exposed backbone hydrogen bonds (BHBs)』の頻度の上昇によって促進される可能性がある

この結果はp53 DBDの内部に存在する構造的な脆弱性を持つ領域を指し示すものであり、p53の安定性と凝集を調整するために標的化が可能であることが判明した新たな箇所が 潜在的な癌治療アプローチになりうることを示唆する


Introduction
DBDの突然変異の多くは 既に不安定labileなDBDの 構造的な不安定化destabilizationを引き起こし、37℃でアンフォールドunfoldしやすくする (6

<コメント>
温熱療法はガンには逆効果?


参考サイト
http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-11932676465.html
数年前、大学病院に在籍中に温熱療法を放射線科医に依頼したことが数件あります。



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160823141616.htm
TGF-βとRasは変異したp53を抑制するが、それによって別のp53ファミリーであるΔNp63を促進し、腫瘍の成長と転移を刺激する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/aeaba807e851194228c8705fff017340
最初にp53の『構造化された領域』であるDNA結合領域がBAXに結合し、次に『無秩序な領域』が結合することでBAXを活性化させてアポトーシスを引き起こす



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/34e5b27e92e8d4983240c30d8d5400f2
卵巣癌で変異して凝集したp53を回復するペプチド




関連サイト
http://www.natureasia.com/ja-jp/nchembio/pr-highlights/1168
構造的に不安定化した変異型p53で露出している一部分はタンパク質凝集の核となり、正常なp53のみならず、別の関連タンパク質の機能にも干渉する。



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2eed1af5a640a3c03687d4ce78607041
ベータアミロイドプラークとタウの病的な変換が両方とも必要なマウスモデル



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4489cc5b1e62d53015ae6308cff85370
α-シヌクレインの凝集しやすい領域はどのようにして保護されるのか



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f9b6db10eb549c924494cb2a6f74cca2
α-シヌクレインの伝わり方はプリオンとは異なる



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ae5451edbe22e1082bef73eac57a4181
リソソーム内のα-シヌクレイン原繊維はチューブを通じて伝わる
 

ヘテロクロマチンの主な機能はトランスポゾンの抑制

2016-09-07 06:06:48 | 
Tight DNA packaging protects against 'jumping genes,' potential cellular destruction

September 1, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/09/160901125055.htm

ノースカロライナ大学(UNC)医学部の研究者たちは、発達時のヘテロクロマチンの主な機能を明らかにした(ヘテロクロマチンとは染色体内のDNAが固く凝縮した部分のことである)
それによると、ヘテロクロマチンは『トランスポゾンtransposon』と呼ばれるウイルス状のDNA配列の活動を抑えるようだ
トランスポゾンはゲノム中に自己をコピー・アンド・ペーストしながら移動する『ジャンプする遺伝子』であり、重要な遺伝子を破壊して癌などの病気を引き起こすことがある

Genes & Development誌のオンライン版で発表された今回の発見は、この細胞生物学の基本的な特徴の役割を明確にするとともに、ヘテロクロマチンが形成される様々な段階different stepsについての科学的な理解を深めるものだ
そして、その形成段階は癌など多くの疾患と関連がある

細胞がヘテロクロマチンを形成するために使うメカニズムを細かく分析することは、それらの疾患で影響を受けた段階、例えば疾患を引き起こすトランスポゾンがどのようにして細胞内で活性化するのかという段階を、治療として標的にするのを助ける


「トランスポゾンの移動を抑圧することはゲノムの安定性を維持するために必要であり、そのような抑圧は発達時にヘテロクロマチンが果たす主な機能であるかもしれないと今の我々は考えている
これまでヘテロクロマチンは遺伝子の発現や細胞の増殖に関与すると考えられてきたが、むしろトランスポゾンの抑圧がヘテロクロマチンの機能であるようだ」
Robert Duronio, PhDは言う
彼は生物学と遺伝学の教授であり、研究の首席著者senior authorでもある

「この発見は誰も予想していなかった」


クロマチンは本来essentially、細胞内に詰め込まれる際にDNAが形作る『巻かれた構造/spooled structure』である

クロマチンの状態には大きく分けてユークロマチンeuchromatinとヘテロクロマチンheterochromatinという2種類がある
前者の緩んだ構造loose structureは遺伝子の活性とタンパク質のコード化が許された状態であると一般にnormally考えられており、
後者のヘテロクロマチンはそれよりも固く密集した構造で、DNAが凝縮されて詰め込まれているため、遺伝子の活性を抑制すると主にprincipally考えられている

ヘテロクロマチンの中でも最も固くtight最も安定した形態は構成的ヘテロクロマチンconstitutive heterochromatinとして知られ、ほとんどは染色体のくびれた領域/constricted region of chromosomesで観察される(一次狭窄primary constriction)
このくびれた領域は細胞分裂の間の染色体の動きに重要である(動原体。セントロメアcentromereとキネトコアkinetochore)


ヘテロクロマチンには様々な機能があると考えられているが、それらの機能を決定的な実験definitive experimentsによって確かめるのは難しかった
これまでのスタンダードな実験アプローチは「ヘテロクロマチン形成を阻害すると何が起きるのか」を観察することだったが、ヘテロクロマチン形成の引き金を引くプロセスを正確に阻害するのは難しい


今回のモデルでは、ヒストンH3というタンパク質の特定の重要な箇所を化学的に修飾(メチル化)して、ヘテロクロマチンを形成する
原理上、特定の箇所をメチル化できないようにしたヒストンH3変異体mutantで 正常なヒストンH3遺伝子を置き換えればヘテロクロマチン形成は阻害されるはずであり、今回のモデルの重要なテストである

しかしながら、この実験をマウスのような高等動物higher animalで行うことは実際にはほとんど不可能である

「マウスやヒトのヒストン遺伝子には3つの異なるクラスターが異なる染色体上に存在し、特にそれらのヒストン遺伝子クラスター内には他のきわめて重要な遺伝子も存在するという理由もあって、異なる箇所のそれらを遺伝子操作することは非常に難しい」
Duronioラボの大学院生graduate studentであり筆頭著者first authorでもあるTaylor J. R. Penkeは言う


幸運なことに別のスタンダードな研究動物としてショウジョウバエがあり、このハエではヒストン遺伝子のセットがずっと標的にしやすい

「我々が変化させたいと考えるヒストンH3遺伝子はショウジョウバエのゲノムでは1箇所にクラスター化しており、他の重要な遺伝子がクラスター内に存在するということもない
そのため、それら全てを一度で取り除き、変異体のヒストンH3遺伝子で置き換えることが可能である」
Penkeは言う


今回の新たな研究でPenkeとDuronioたちは彼らが去年開発した高度なショウジョウバエ遺伝学プラットフォーム/advanced Drosophila genetics platformを使い、正常なヒストンH3遺伝子からヘテロクロマチン形成を引き起こさせない変異体遺伝子で置き換えた

まず最初に驚いたことは、ショウジョウバエの変異体mutantは成体になる前に全て死ぬことはなく、約2パーセントが生き残ったということである
生き残ったハエの染色体chromosomesではヘテロクロマチンの徴候signsが急激な低下sharp dropを示し、それは特に、通常ならメチル化したヒストンH3タンパク質が集中している箇所だった

さらに、長い間ヘテロクロマチンは遺伝子の活性を調節すると想定assumptionされてきたにもかかわらず、変異体の遺伝子発現はほとんど変化していなかった
ヘテロクロマチンによるDNAのきつい凝縮/tight heterochromatin packaging of DNAが緩んでいた領域でさえ、発現に変化はなかった


しかしながら、変異体では一つの大きな変化が見られた
通常なら強くヘテロクロマチンの状態を示す染色体の領域で、トランスポゾンの活性が急激な上昇jumpを示したのである

トランスポゾンというDNA配列は(トランスポゾンの進化的な起源は曖昧だが植物や動物のゲノムの大部分を占めている)自分自身のコピーを作るというウイルスのような傾向を持ち、元いた場所から自己を切り出してsnip、ゲノムのどこか別の場所に自己を再び挿入する

トランスポゾンの活性増大に加えて、トランスポゾンに対して防御するための鍵となるメカニズムが活性化されているという徴候を研究チームは発見した
つまり、トランスポゾンに結合してその活性を阻害するpiRNAというRNA分子の、前駆体となる転写産物レベルが急激に増加していた

※piRNA: PIWI-interacting RNA「PIWIタンパク質と相互作用するRNA」


トランスポゾンも特定の状況では宿主に有益であると考えられているものの、ほとんどの場合は明らかに有害である
ショウジョウバエ変異体の死亡率が98パーセントであり、生き残ったハエの死亡率も高いことの理由として、DuronioとPenkeたちはゲノムに自己を挿入して重要な遺伝子を分断するトランスポゾンの影響が大きいと考えている

「この種のヘテロクロマチンを引き起こすヒストンH3メチル化の大きな役割は、トランスポゾンが動き回ってゲノムを壊してしまわないようにすることらしい」
Duronioは言う


ヒトのヒストンH3遺伝子はショウジョウバエのそれと非常に似ており、進化によるハエとヒトとの間の大きな隔たりgulfにもかかわらず、その機能は高度に保存されていることが示唆される
これはハエがヒトのヒストンの機能を研究するための良いモデルであることを示唆する

ゲノムが一般にどのようにしてトランスポゾンから自己を守っているのかを理解することは、トランスポゾンと関連する疾患をもっと理解するget a better handleための助けになるはずである

トランスポゾンは細胞に癌性の変化を直接引き起こし、それは例えば腫瘍抑制遺伝子tumor-suppressor geneを分断disruptさせたり、DNAを切断breakして染色体の大部分を不安定にすることによる
血友病hemophiliaなど他の多くの疾患の症例が トランスポゾンによる重要な遺伝子の分断と関連付けられている

「胚や胎児の発達の間はゲノムが正確に複製されており、それは癌などの疾患を抑制するための重要なメカニズムである
ヘテロクロマチンがどのようにしてそのような複製の正確さに関与するのかを、今回のような研究で我々は理解していくだろう」


Duronioのラボは、ショウジョウバエのヒストン遺伝子の研究をさらに進めることを計画している
特に、中心的なクラスターから離れた場所に存在している わずかに異なるヒストンH3遺伝子ファミリーについて調査する予定であり、それらは構成的ヘテロクロマチンconstitutive heterochromatinとは別の役割を持つようである


http://dx.doi.org/10.1101/gad.286278.116
Direct interrogation of the role of H3K9 in metazoan heterochromatin function.
後生動物のヘテロクロマチン機能におけるヒストン3リジン9の役割を直接尋問する

Abstract
ヘテロクロマチンの決定的な特徴defining featureはヒストンH3リジン9のメチル化(H3K9me)であり、ここはヘテロクロマチンタンパク質1/heterochromatin protein 1 (HP1) が結合する箇所である
HP1とH3K9メチルトランスフェラーゼはヘテロクロマチンが適切な構造を取るために必要だが、H3K9がヘテロクロマチンの機能ならびに動物の発達に対して具体的specificにどのように寄与するのかは不明である

ショウジョウバエのヒストン遺伝子を操作するために我々が最近開発したプラットフォームを用いて、H3K9R、つまりリジン(K)をアルギニン(R)に置き換えた変異体のハエを作成し、
H3K9の機能と H3K9メチルトランスフェラーゼのヒストン以外の基質とを 分離した

動原体周辺のヘテロクロマチンpericentromeric heterochromatinでの ヌクレオソームの占有nucleosome occupancy ならびに HP1aの結合 はH3K9R変異体では著しく減少する

※ヌクレオソーム占有の減少: ヌクレオソーム(ヒストンとDNA)が占有する割合が低下する=ヘテロクロマチンのようなヌクレオソームの凝縮した構造が減少する

染色体の構造architectureにおけるこれらの変化にもかかわらず、H3K9R変異体で完全に発達したのはわずかな割合だった
この結果と一致して、タンパク質をコードする遺伝子のほとんどでは、ヘテロクロマチン内の遺伝子も含めて、H3K9R変異体とコントロール群との間で遺伝子発現は同じようなものsimilarだった
対照的に、H3K9R変異体は開放型クロマチンopen chromatinの増加を示し、piRNAクラスターとトランスポゾンからの転写が増加しており、トランスポゾンが移動するという結果になった

したがって、H3K9の発達中の主な機能はトランスポゾンのサイレンシングである



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160225135219.htm
http://first.lifesciencedb.jp/archives/3672
http://first.lifesciencedb.jp/archives/12190
トランスポゾンからゲノムを守るpiRNAはどのようにして作られるか




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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160510143700.htm
結腸癌患者10人を調べると1人でレトロトランスポゾンのL1(LINE-1)が癌抑制遺伝子APCを不活性化しており、その患者は強い家族歴があった
しかし、周囲の組織にはL1がAPCを不活化した証拠はなかった



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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160122170934.htm
p53はトランスポゾンを抑制する
 

癌はなぜ肺に転移しやすいのか

2016-09-04 06:06:02 | 
Insights on lung micro-environment explain why cancer spreads to the lungs
Discovery could help overcome metastasis as major obstacle to curative treatment
August 25, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160825130446.htm

Oxygen can impair cancer immunotherapy in mice
August 25, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160825130436.htm

アメリカ国立衛生研究所/National Institutes of Health(NIH)の研究者たちは、肺の内部で癌への免疫応答が阻害されるメカニズムをマウスの実験で突き止めた
肺は多くの癌で転移が共通して起きる箇所である

このメカニズムでは、酸素がT細胞の抗癌免疫作用を抑制する
免疫細胞の酸素を感知する能力を遺伝学的または薬理学的に阻害することにより肺への転移は阻止された

研究を実施したのは国立癌研究所/National Cancer Institute (NCI) の癌研究センター/Center for Cancer Researchに所属する Nicholas Restifo, M.D.と、NCIの同僚、そして同じくNIHの一つの国立アレルギー感染症研究所/National Institute of Allergy and Infectious Diseasesの同僚たちである
この研究結果はCell誌で8月25日に発表された


転移は癌による死因の主な原因である
長い間、癌の転移プロセスには癌細胞の拡散spreadと、拡散する先の環境との間の協力が必要であるという仮説が立てられていた
その環境の鍵となる要素は局所的な免疫系であり、免疫系は侵攻してくる癌細胞を排除するために働くことが可能である

研究者たちは免疫細胞の一種であるT細胞が酸素を感知するタンパク質を持ち、それが肺の内部の炎症を制限するように作用することを明らかにした
しかしながら、酸素は炎症だけでなくT細胞による癌への攻撃も抑制することが示された
それにより肺へと拡散した癌細胞は免疫による攻撃を逃れ、転移のコロニーを形成する


「肺は癌が最も頻繁に転移する箇所の一つなので、
肺には独特な免疫学的プロセスが存在しており、腫瘍細胞が肺に転移を確立する能力をそのプロセスが助けるのかもしれないという仮説を立てた
酸素は肺の局所的な環境要因として一般的pervasiveであり、
我々は酸素が免疫の調節においてどのような役割を演じているのかを調べたいと考えた」
Ph.D. candidateとして Restifoのラボで訓練していたDavid Cleverはそのように言う


研究チームは、酸素を感知するタンパク質のプロリルヒドロキシラーゼドメインタンパク質/prolyl hydroxylase domain (PHD) が
頻繁に肺に入ってくる無害な粒子に対してT細胞が強い過度の免疫応答を起こさないように働くことを発見した
この保護的なメカニズムは、循環する癌細胞が肺に足場を得ることも許容する

さらに、彼らはPHDタンパク質が制御性T細胞の発達developmentを促進することも明らかにした
制御性T細胞は他の免疫を抑制するタイプのT細胞である

PHDタンパク質は炎症性T細胞の発達をも制限し、この種のT細胞が癌の殺傷に関わる分子を作る能力を制限する


PHDタンパク質が腫瘍細胞の肺での成長を促進するのかをテストするため、研究者たちはT細胞がPHDタンパク質を持たないノックアウトマウスを作成した
このノックアウトマウスと通常のマウスにメラノーマ細胞を注入したところ、
通常のマウスには大量の癌性のメラノーマ細胞が見られたが、
T細胞にPHDタンパク質を持たないマウスの肺にはメラノーマがほとんど全く見られなかった

PHDタンパク質が肺での炎症性の免疫応答を抑制するという発見から、
研究者たちはPHDの阻害が『養子細胞移入/adoptive cell transfer』という免疫療法の効能を改善するのかを知りたいと考えた
養子細胞移入とは、患者自身のT細胞が癌を認識して攻撃する能力を利用したものである
養子細胞移入では患者の腫瘍組織からT細胞を抽出して大量に増殖させ、それをT細胞の成長因子と共に患者の静脈内に注入する
T細胞が癌の場所まで戻って除去するのを期待してのことである

研究チームは抗腫瘍T細胞を増殖させる際に『ジメチルオキサログリシン/dimethyloxaloylglycine (DMOG)』というPHDの活性を抑制する薬剤と共に培養した
ラボの実験でDMOGはT細胞の癌殺傷能力を改善し、
転移が確立したマウスへ投与すると薬剤を投与されたT細胞はそうでないT細胞よりも遥かに効率的に癌を除去した

DMOGは、ヒトのT細胞を使った別の研究でも癌殺傷能を改善することが明らかにされている
これらの研究結果をヒトの養子細胞移入による免疫療法に応用した臨床試験がRestifoのグループによって調査される予定である

Restifoは言う
「我々の発見はマウスでのものだが、T細胞の酸素を感知する機構を薬剤、遺伝学、環境的な酸素の調節のいずれかで乱すdisruptionことがT細胞による免疫療法の効能をヒトでも促進するのかどうかをテストしたいと我々は切望eagerしている」


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2016.07.032
Oxygen Sensing by T Cells Establishes an Immunologically Tolerant Metastatic Niche.
T細胞による酸素感知は免疫学的に寛容な転移ニッチを確立する





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低酸素ならびにアデノシンが多い微小環境ではT細胞はA2Aアデノシン受容体を介して阻害される


<コメント>
酸素が多くても少なくても



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低酸素は腫瘍DNAの過剰メチル化を引き起こす



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癌への複数の防御を同時に回復するためのメカニズム



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PHD1はp53による結腸直腸癌の化学療法抵抗性を調節する



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https://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141125074828.htm
PHD3は足場タンパク質であり、通常はEps15とEpsin1のようなセントラル・アダプタータンパク質と結合してEGFRの取り込みを促進することによりEGFRを制御する
健康な細胞では低酸素になるとPHD3がEGFRを細胞内に取り込むために低酸素下での増殖は抑制されるが、
PHD3が失われた腫瘍細胞では低酸素でもEGFRが取り込まれなくなり増殖は制御を失う
膠芽腫glioblastomaの増殖にとって、PHD3の消去/サイレンシング/プロモーターメチル化は重要な段階


Figure 7
[通常]
 低グルコース/低酸素/成長因子不足 →PHD3↑でEGFR取り込み↓→成長抑制

[腫瘍]
 PHD3遺伝子がエピジェネティックにサイレンシングされる→低酸素でもEGFRは取り込まれない→成長促進
 

癌細胞はアミロイド前駆体タンパク質で血管を殺す

2016-08-17 06:06:28 | 
Loophole for cancer cells found

Cancer cells kill blood vessel cells so that they can slip through the vascular wall, form metastases

August 10, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160810104248.htm


(Diagram of the mechanism by which metastatic cancer cells exit blood vessels.
The APP molecule on cancer cells activates the DR6 receptor on vascular wall cells (endothelial cells).
As a result, the endothelial cell is selectively killed (through a process called necroptosis).
In this way, the cancer cell creates an escape route from the bloodstream.
It then either slips directly through the resulting gap (1) or interferes with chemical messengers from neighbouring cells around the dead endothelial cell, causing a gap to form between them (2).)

多くの癌が致死的なほど危険になるのは、体内のどこかに転移を形成した時だけである
そのような二つ目の腫瘍は個々の細胞が元の腫瘍から逃れ、血流を通じて遠くまで移動すると形成され、移動するためにはまず血管の壁を通り抜けなければならない

バート・ナウハイムのマックス・プランク心肺研究所とゲーテ大学フランクフルトの研究者たちは、腫瘍細胞が血管壁の細胞を殺すことを研究で示した
これにより腫瘍細胞は血管から離れて転移を確立することが可能になり、このプロセスはAPPとDR6という分子によって促進される


癌で死ぬ最も大きな原因は元の腫瘍それ自体ではなく、その後に形成される転移である
ほとんどの腫瘍細胞は血流を通じて広がるため、個々の腫瘍細胞は血管に入り、元の腫瘍から離れた場所で血流から外へ出なければならない


ケルン大学University of Cologneとハイデルベルク大学University of Heidelbergの研究者たちと共に、
マックス・プランク心肺研究所の薬理学部の部長でありゲーテ大学フランクフルトの教授でもあるStefan Offermanns率いる研究グループは、血管を通じた転移の根底にあるメカニズムを明らかにすることに成功した

彼らは細胞培養を使った研究で、個々の腫瘍細胞がどのようにして血管壁の内皮細胞endothelial cellを殺すのかを初めて観察した
このネクロプトーシスnecroptosisとして知られるプロセスは、癌細胞が内皮細胞の層を越えることを可能にした

「我々は次に、同じプロセスが生体内でも起きることをマウスで示すことができた」
筆頭著者first authorのBoris Strilicは言う


また、科学者たちは内皮細胞それ自体が自らの死についてのシグナルを発することを発見した
血管壁の細胞はその表面に『死の受容体/Death Receptor 6 (DR6)』という受容体を持ち、癌細胞の表面には『アミロイド前駆体タンパク質/amyloid precursor protein(APP)』というタンパク質が存在する

Strilicが次のように説明する
「癌細胞が内皮細胞と接触すると、癌細胞のAPPが内皮細胞のDR6を活性化する
これが癌細胞による血管壁への攻撃の開始の合図となりmarks the start、最終的にネクロプトーシスという血管壁の細胞死によって終わる」


細胞膜の『死の受容体』
Death Receptor in the cell membrane

次にマックス・プランクの研究者は、死の受容体6/Death Receptor 6が使えないように遺伝子を操作したマウスでは内皮細胞のネクロプトーシスが少なく、転移の発生も少ないことを示した

「この影響はDR6を阻害、またはAPPを阻害した後にも見られ、したがって我々の以前の観察を裏付けるものである」
Strilicは言う


しかし、結果として生じた血管壁の割れ目gapを通じて直接癌細胞が移動するのか、それとも他に間接的な影響が存在するのかどうかはまだ完全には明らかではない

「血管壁の細胞が死ぬ時にさらに多くの分子が放出され、それらが周囲の領域を通過しやすくするという証拠evidenceを我々は持っている」
Offermannsは言う

「このメカニズムは、転移の形成を防ぐための治療の有望な出発点になりうる」

しかしながら、DR6の阻害が望ましくない副作用を引き起こすかどうかをまず確定しなければならない
また、この観察がどの程度までヒトに移し替えることができるかについても確かめる必要があるだろう


http://dx.doi.org/10.1038/nature19076
Tumour-cell-induced endothelial cell necroptosis via death receptor 6 promotes metastasis.
腫瘍細胞によって誘発されるDR6を介する内皮細胞のネクロプトーシスは転移を促進する

Abstract
転移は癌関連死の主な原因である
転移は複雑で多段階のプロセスであり、遠隔臓器に定着するcolonizeために個々の腫瘍細胞は主に循環系を通じて広まる (1, 2, 3.
いったん循環に入ると、腫瘍細胞は脆弱vulnerableなままであり、その転移ポテンシャルは内皮バリアを通過することによって血流から逃れるための急速かつ効率的な方法に強く依存する (4, 5, 6, 7, 8, 9.

腫瘍細胞の血管外遊出extravasationは、白血球の内皮細胞を通過する移動transendothelial migrationに似ているというエビデンスが提供されてきた (7, 8, 9.
しかしながら、腫瘍細胞が遊出する間どのようにして内皮細胞と相互作用し、これらのプロセスがどのようにして分子レベルで調節されるのかは不明のままである

今回我々はヒトとネズミmurineの腫瘍細胞が内皮細胞に『プログラム化されたネクローシス/programmed necrosis (ネクロプトーシスnecroptosis) 』を誘発し、それが腫瘍細胞の遊出と転移を促進することを示す

マウスに対してRIPK1阻害剤のnecrostatin-1を投与するか、内皮細胞特異的にRIPK3を削除すると、腫瘍細胞による内皮細胞のネクロプトーシスは減少し、腫瘍細胞の血管外遊出と転移も抑制された

※RIPK1: 受容体と相互作用するセリン/スレオニンタンパク質キナーゼ1/ receptor-interacting serine/threonine-protein kinase 1

対照的に、薬理学的なカスパーゼ阻害、または内皮細胞特異的なカスパーゼ8の欠損は、これらのプロセスを促進した

我々はさらに、遊出と転移につながる腫瘍細胞誘発ネクロプトーシスには 腫瘍細胞が発現するアミロイド前駆体タンパク質/amyloid precursor protein(APP)と、その受容体であるdeath receptor 6 (DR6) が内皮細胞上に存在することが これらの効果の主なメディエーターとして必要であることをin vitroとin vivoで示す

我々のデータは腫瘍細胞の遊出と転移の根底にある新たなメカニズムを同定し、そして内皮細胞のDR6を介するネクロプトーシスのシグナル伝達経路が転移を抑制する治療標的であることを示唆するものである



References
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19225519
APP binds DR6 to trigger axon pruning and neuron death via distinct caspases.
(APPはDR6に結合し、異なるカスパーゼを介して軸索の刈り込みとニューロンの細胞死を引き起こす)



Extended data figures and tables
http://www.nature.com/nature/journal/v536/n7615/fig_tab/nature19076_SF9.html
Extended Data Figure 9: APP is expressed in different murine and human TCs.


http://www.nature.com/nature/journal/v536/n7615/fig_tab/nature19076_SF10.html
Extended Data Figure 10: Effects of loss of APP on TCs and on metastasis formation.

h,
モデル:
腫瘍細胞はAPP-DR6を介して RIPK1/RIPK3/MLKLに依存するネクロプトーシスを内皮細胞に誘発し、腫瘍細胞は内皮細胞の死後に生じた割れ目gapを直接通過する
代わりにalternatively、または並行してin parallel、傷害関連分子パターン/damage-associated molecular pattern molecules (DAMPs) の分子がネクロプトーシスを起こした内皮細胞から分泌され、
それが腫瘍細胞と、ネクロプトーシスを起こしていない内皮細胞などの他の細胞のどちらかまたは両方に作用し、腫瘍細胞の遊出と転移を促進する



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腫瘍はどのようにして低酸素に適応するのか

2016-08-15 06:06:16 | 
Low oxygen, high risk: How tumors adapt to become more aggressive

August 8, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160808124042.htm

腫瘍の治療が非常に難しいとされる理由の一つは、いつどんな時に不利な状況にさらされても腫瘍がそれに適応できるからであり、そのような例の一つが低酸素、つまり酸素の欠乏である
しかし、この腫瘍を弱体化するはずの現象を悪性の細胞は相殺compensateすることが可能であり、それはより悪性の疾患としてのふるまいを刺激する


ウィスター研究所の科学者たちは、低酸素の腫瘍内で選択的に働く全く新しいメカニズムを突き止めた
それにより腫瘍細胞は低酸素の環境にもかかわらず盛んに成長thriveして増殖し続けることが可能になる

ウィスターの所長Presidentであり最高経営責任者/Chief Executive Officer(CEO)でもある筆頭著者lead authorのDario C. Altieri, M.D.と同僚たちは、
この経路の活性化がどのようにして神経膠腫/グリオーマglioma患者の好ましくない予後につながるのか、
そしてこの経路がどのようにして癌の治療標的として役立つ可能性があるのかを示した
この研究結果はCancer Cell誌で発表された

「低酸素状態は悪性腫瘍の成長のほぼ全てに共通する特徴であり、
これまで我々はこのふるまいの原因となる経路に焦点を合わせることがまったくできなかった」
Altieriは言う
彼はウィスター研究所がんセンターの所長directorでもあり、特別教授職のRobert & Penny Fox Distinguished Professorでもある

「我々の研究は腫瘍細胞が低酸素の環境下にもかかわらず生き残るだけでなく、それどころか分裂を続けるための新たな方法を指し示す
本質的には、これはずっと待ち望まれてきた正確な答えを提供する
不利な状態に直面した際の存続するために必要なエネルギーを、腫瘍細胞はどのようにして獲得するのか?という問いに対する答えを」


ミトコンドリアは細胞のエネルギーを作ることから『発電所powerhouse』として知られるが、低酸素によって誘発される腫瘍再プログラムの主な源はそのミトコンドリアである

Aktというタンパク質は細胞のシグナル伝達と代謝において鍵となる重要な役割を演じるが、AltieriのラボはAktが低酸素の間ミトコンドリア内に蓄積することを明らかにした
Aktの蓄積が起きると、PDK1というタンパク質の特定の箇所がリン酸化され、細胞の呼吸に必要な複合体は停止させられる
この経路はグルコースを分解する腫瘍の代謝を使い、そのエネルギーを使って細胞死を減少させて増殖を維持する


PDK1(Pyruvate Dehydrogenase Kinase 1): PDHを不活化する

PDPK1(3-Phosphoinositide Dependent Protein Kinase 1): Aktを活性化する


このミトコンドリア内のAktとPKD1との間のシグナル伝達は、神経膠腫の患者116名のコホートで分析された
シグナル伝達経路の活性化は様々なタイプの神経膠腫で徐々に増大しており、最も高い活性は膠芽腫glioblastomaの患者で見られた
膠芽腫は全脳腫瘍の約15パーセントを代表する、特に治療が難しいタイプの脳腫瘍である


Altieriのラボのassociate staff scientistで筆頭著者first authorでもあるYoung Chan Chae, Ph.D.は次のように言う
「我々は自らの研究結果にとても興奮している
なぜなら癌のAktを特異的に標的とする薬剤が既に存在するからだ
それらの薬剤はこれまで限られた臨床的な応答しかもたらさなかったが、さらなる調査により腫瘍が低酸素に適応する能力を損なうための実用的viableなアプローチとして再利用repurposeできるかもしれないと我々は考えている」


http://dx.doi.org/10.1016/j.ccell.2016.07.004
Mitochondrial Akt Regulation of Hypoxic Tumor Reprogramming.
ミトコンドリア内Aktによる低酸素腫瘍の再プログラムの調節

Highlights
・低酸素の間、活性化したAktのプールが腫瘍ミトコンドリアにリクルートされる
・低酸素においてミトコンドリアAktはPDK-1のスレオニン346(T346)をリン酸化する
・Akt-PDK1経路の活性化は、低酸素での腫瘍細胞の増殖を維持する
・AktによるPDK1のリン酸化は神経膠腫のネガティブな予後因子prognostic factorである


Summary
低酸素hypoxiaは悪性腫瘍的ふるまいを促進する普遍的なドライバだが、根底にあるメカニズムについては完全には理解されていない

我々はリン酸化プロテオミクスphosphoproteomicsによるスクリーニングを実施し、活性化したAkt/active Aktが低酸素の間ミトコンドリア内に蓄積し、ピルビン酸脱水素酵素キナーゼ1/pyruvate dehydrogenase kinase 1 (PDK1) のスレオニン346の箇所をリン酸化して活性化し、ピルビン酸脱水素酵素複合体を不活性化することを示す

続いて、この経路は腫瘍の代謝を解糖系の方向へと切替えてswitch、アポトーシスとオートファジーに拮抗し、酸化ストレスを低下させ、厳しい低酸素に直面しても腫瘍細胞の増殖を維持する

ミトコンドリアのAkt-PDK1シグナル伝達は神経膠腫患者の好ましくない予後マーカーならびに生存の短さと相関し、癌における『すぐに使用可能なactionable』治療標的を提供する可能性がある



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乳癌細胞は低酸素に曝露するとtRNAの断片を作り、特定のアミノ酸のtRNA断片(グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、チロシン)が多い癌細胞は転移しにくくなる
さらに、この断片を癌細胞に加えると増殖と進行が減少した