機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

2015年1月28日

2015-01-29 23:45:32 | 癌の治療法

新しい癌治療としての抗生物質? 女子学生との対話が考えをスパークさせる
Antibiotics as new cancer treatments? Conversation with schoolgirl sparks idea



一般に使われている抗生物質の『副作用』を用いて癌幹細胞を根絶する方法が、マンチェスター大学の研究者が娘と会話することによって発見された。

研究を指揮したのは、ブレークスルー乳がんユニットのディレクターであるMichael P. Lisanti教授である。彼は自分の娘との会話から、癌幹細胞のミトコンドリアに対する抗生物質の影響を見るようヒントをもらった。Oncotargetで発表される彼の新しい論文は癌治療の新しい可能性を開く。それは非常に効果的であり、そして何十年も安全に用いられてきた薬を再利用する。



ミトコンドリアは細胞の『エンジン』であり、突然変異した幹細胞が分裂して腫瘍を生じる際のエネルギー源である。癌幹細胞は全ての癌の増殖と再発に強く関連し、通常の治療では根絶するのが特に困難であるために腫瘍は他のタイプの治療にも抵抗するようになる。

Lisanti教授は以下のように述べた:

「私が癌を治療する方法について娘のCamillaと会話していたとき、娘はこう尋ねた。『どうして私たちは他の病気のように抗生物質を使わないの?』と。私は抗生物質がミトコンドリアに影響し得ることを知っていて、そして最近の私は腫瘍の増殖に対するミトコンドリアの重要性について多くの研究をしていた。しかしこの会話は、それらを直接つなげるために役立った。」

Lisanti教授は、ニューヨークのアルバート・アインシュタイン医科大学、フィラデルフィアのキンメルがんセンターと共に研究を開始した。研究チームはにきびを治療するために用いられるドキシサイクリンなど5種類の抗生物質を、8タイプの腫瘍細胞系列に対して使用した。

その結果、5種類の抗生物質のうち4つは、あらゆる試験で癌幹細胞を根絶した。癌の中には脳腫瘍で最も悪性である神経膠芽腫が含まれ、他は肺癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、非浸潤性乳管癌(DCIS)、膵臓癌、皮膚癌だった。

ミトコンドリアは、生命の進化の初期に細胞に取り込まれた細菌に由来すると考えられている。そういうわけで細菌を破壊するために用いられる抗生物質のいくつかがミトコンドリアにも作用するが、人体に危険という程ではない。

幹細胞に存在するミトコンドリアは増殖のためのエネルギーを供給するが、重要なことはそれが細胞分裂のためのエネルギーだということである。分裂のプロセスが間違った方向に進むと癌につながる。

これらの抗生物質は研究室の試験では通常の細胞に対する有害な影響はなく、そして薬としてすでに承認されている。臨床試験は簡潔なものになると思われ、それは時間とお金を節約する。



重要なことに、以前にも抗生物質による臨床試験が実施されている。それは癌細胞に対してではなく、癌と関連する感染の治療を目的としたものだったが、それらは癌患者に対する肯定的な治療効果をすでに示している。これらの試験は進行している患者か治療抵抗性の患者に対して実施された。

肺癌患者に対してアジスロマイシンを用いた試験では、患者の1年生存率を45%から75%まで増加させた。『細菌に感染していなかった』リンパ腫の患者でさえ恩恵があり、ドキシサイクリンの3週間1クール投与により完全寛解を示した。これらの結果は、抗生物質の治療効果が実際に感染から独立していたことを示唆する。

記事出典:
上記の記事は、マンチェスター大学に提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.抗生物質は効果的にミトコンドリアを標的にして、複数の腫瘍タイプにわたって癌幹細胞を根絶する:
感染症のように癌を治療する。

Oncotarget、2015年1月

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150128081957.htm

<コメント>
細菌を殺すために使われる抗生物質の「副作用」が、もともとは細菌だったミトコンドリアに作用して癌の幹細胞も殺すという記事です。

Abstractによると、研究に使われた薬剤はエリスロマイシン(erythromycins)を改良したアジスロマイシン(azithromycin)、テトラサイクリン系(tetracyclines)のドキシサイクリン(doxycycline)、グリシルサイクリン系(glycylcyclines)のチゲサイクリン(tigecycline)、抗寄生虫剤(anti-parasitic drug)のパモ酸ピルビニウム(pyrvinium pamoate)、そしてクロラムフェニコール(chloramphenicol)の5種類です。

Wikipediaのクロラムフェニコールの項には「ミトコンドリアのリボソームが阻害される」と書かれていますが、英語版のChloramphenicolの項にはReferenceが一つ挙げられていて、パラ位の二酸化窒素基(p-NO2)が代謝により置換(metabolic transformation)されることで有害な中間体を生じるとあります。

過去にもいくつか同様の記事がありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/10d4194b9596925844c27c67a317975a
>ミトコンドリアは癌幹細胞のエンジンであり、ケトンとL-乳酸は癌の成長を促進するハイオク燃料

http://www.sciencedaily.com/releases/2011/04/110405084928.htm
>メトホルミンが、子宮内膜癌の予防に効くかもしれない

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c3124edbd023ba26daebb2aaa35f2939
>ニトログリセリン(狭心症)、イトラコナゾール(抗真菌薬)、ジクロフェナク(鎮痛剤)、クラリスロマイシン(抗生物質)の潜在的な抗がん剤としての作用

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2534679e8f1f367e92c83d2a62d453ff
>ビスホスホネートがマウスの腫瘍で微小なカルシウム沈着(tiny calcifications)に付着し、これらのカルシウムと薬の複合体はマクロファージによって貪食される

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8aaf41f7667a0bbe7bcd4f546da9af00
>頭頚部癌の治療を受けて診断後に制酸薬を服用した患者は、服用しなかった患者よりも全生存期間が著しく優れていた


2015年1月26日

2015-01-28 23:37:28 | 

癌が善良な細胞をダークサイドに変える方法
How cancer turns good cells to the dark side



ライス大学の研究者によると、癌はこれまでほとんど知られていない細胞シグナルを用いて細胞間コミュニケーションのプロセスを乗っ取り、そして転移するという。ライス大学を拠点とする理論生物学医学センターの研究者による新しいコンピュータ研究は、癌細胞がどのように隣の細胞とコミュニケーションするシステムを利用するかを示す。癌細胞はシステムを乗っ取り、次のようなメッセージを伝える。

「私のようになれ。」

「私のようになるな。」



ライス大学の生物物理学者Eshel Ben-JacobとJose Onuchicを中心とする研究者は、癌細胞がNotchシグナル伝達Notch signaling)という細胞間の相互作用メカニズムを用いて転移を促進する方法を解読する。このメカニズムは胚の発達と創傷治癒において重要な役割を果たし、一方の側のDeltaリガンドまたはJaggedリガンドが、隣接するもう一方の細胞のNotch受容体と相互作用すると活性化される。彼らの研究は癌転移に関与する遺伝子回路を経由する情報の流れを示した2014年の研究に続くものであり、今月のPNASにオープンアクセスで発表される。

「我々の新しい研究の核心は、転移を引き起こす主な因子が『上皮細胞(移動しない)』と『間葉系細胞(移動する)』のハイブリッドな集団であるということである」、Ben-Jacobは言う。

「完全に間葉系ではないこれらの細胞は癌進行の『悪い役者たち』であり、最も高いリスクを有する。これらのハイブリッドな細胞は一緒に行動することによって免疫システムを回避する可能性が高く、血管を循環している間はうまく生き残ることが可能である。」

Notch-Delta-Jaggedシグナルが癌の進行を促進する多面的なメカニズムはこれまで謎だったが、最近の実験的研究はJaggedリガンドが腫瘍進行において重要な役割を果たすことを明らかにした。今回の新しい研究は、細胞の運命を研究する科学者に新しい理論的な枠組みを与える。

Jaggedリガンドの存在によって、発信者でもあり受信者でもあるというハイブリッドな細胞集団が生じ、「私のようになれ(be like me)」というシグナルを送るようになる。それは胚の発達と治癒に役立つが、癌細胞によって乗っ取られることもあり得る。

「我々は、ハイブリッドな癌細胞がその特徴を利用して、安定な相互作用を確立することができることを理解した。それは彼らを『攻撃チーム』に変化させ、転移の間は一緒に移動する」、Onuchicは言う。



Notchシグナルの研究の焦点は、これまでNotch-Deltaシグナルについてだけだった。以前の研究によれば、発信者(sender)の細胞はNotch受容体の発現が低く、Deltaリガンドの発現は高い。他方、受信側(receiver)の細胞はNotch受容体の発現が高く、Deltaリガンドの発現が低い。この状況は正反対の運命を採用するように2つの細胞を導く。つまり、「私のようになるな(be not like me)」と発信する細胞と、それを受信して「あなたのようにはならない」と決める細胞である。

生物学者がNotch-Deltaシグナルを最初に知ったのは1世紀前、ショウジョウバエの翼の形成に関する研究においてだった。ある細胞が隣の細胞に「私のようになるな」と伝えると、細胞は互いに正反対の色を採用する。その時の視覚的な現れ方はチェス盤やゴマ塩のようなパターンである。

「JaggedはDeltaと似たような役割を演じると思われたため、研究の焦点はNotch-Deltaに集中してきた」、Ben-Jacobは言う。

「我々は、これらのリガンド間の違いとその影響についてより深く研究しようと考えた。」



「癌はJaggedタンパク質の影響を利用して、ハイブリッドな癌幹細胞から成る根っからの移動ユニットを形成する」、Ben-Jacobは言う。

Notch-Jaggedシグナルは癌細胞が化学療法と放射線治療に抵抗性を生じるのを助け、さらに新しい場所での癌とストロマ細胞(結合組織)との間のコミュニケーションを促進することにより転移形成を容易にする。

最近、腫瘍環境のストロマ細胞はJaggedリガンドを分泌することが発見された。ライス大学の研究者は癌細胞が近くのストロマ細胞を乗っ取り、Jaggedリガンドの産生を加速するように促すことを発見した。それは癌の生存の可能性を補強する。加えて、癌細胞が内部でJaggedを発現すると治療抵抗性の癌幹細胞の産生と維持が増加する可能性を研究者は示唆した。

「Jaggedを発現する癌細胞は幹細胞のような特性を獲得する可能性が高く、遠い臓器に到達するとその可塑性を利用して分化し、転移先の新しい状態に適応する」、筆頭著者であり以前はライス大学の客員研究員だったMarcelo Boaretoは言う。

研究者はこのモデルが、癌細胞が免疫システムと治療を回避するために用いるシグナル伝達メカニズムのより深い理解に向かう一歩であると言う。

「単一の細胞を研究しても、全ての答えは得られない」、Onuchicは言う。

「我々は互いにシグナルを送る細胞による判断を理解する必要がある。」

学術誌参照:
1.Notchシグナル伝達のJagged-Delta非対称性は、送信者Sender/受信者Receiverハイブリッドな表現型を生じ得る。

PNAS、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150126095715.htm

<コメント>
Notch-Deltaシグナルはトグルスイッチのように送信者と受信者を切り替えることが知られていましたが、Notch-Jaggedシグナルは送信者でもあり受信者でもある(medium ligand, medium receptor)第三の状態を生じるという記事です。

Abstractによると、活性化したNotchは細胞内ドメイン/NICDを切り離して標的遺伝子を活性化しますが、リガンドの産生に対しては非対称的に(asymmetrically)影響し、Deltaの産生は抑制してJaggedの産生を活性化するとあります。

NotchはDeltaとJaggedをどのように見分けているかという研究が最近Scienceに報告されました



2015年1月21日

2015-01-27 14:20:52 | 感染症

エボラ・タンパク質の断片の毒性が特定される
Toxic Ebola protein fragment identified


ルイジアナ州立大学ヘルスサイエンスセンター・ニューオリンズ医学部で微生物学と免疫学、寄生生物学の名誉教授であるWilliam Gallaher博士は、細胞に有毒なエボラウイルス蛋白質の断片を発見した。この断片はウイルスの感染と疾患に寄与する可能性がある。この発見はオープンアクセス誌のVirusesのオンライン版で2015年1月20日に発表された。

エボラウイルスが細胞と接着する際にGP(glycoprotein)というタンパク質が関与する。今回発見された断片は、そのタンパク質と並列して作られるひと固まりのアミノ酸の中から発見された。このいわゆる「デルタ・ペプチド」はエボラウイルスが既に感染した細胞との接着を阻害することが最近明らかにされているが、今回の新しい発見はデルタ・ペプチドがおそらく細胞膜の透過性を変化させることにより作用することを示唆する。

この発見の後にGallaher博士は長年の共同研究者であるロバート・ギャリー博士に連絡した。チューレイン医科大学の微生物学と免疫学の教授である彼に構造モデルを作製してもらい、作用の潜在的メカニズムを推測するためである。モデリングの成果は論文にされてこの分野の専門家によって厳しい査読を受け、承認されて初めてViruses誌の特別号「エボラウイルス・マールブルグウイルス・Cuevavirusに関する2014-2015年の研究における前進」で公開される予定である。

断片の潜在能力は合成ペプチドを用いた予備的な研究により確かめられたが、感染細胞内の自然な環境でのその特異的な役割と潜在能力はまだ確認されていない。しかしながら、Gallaher博士たちはエボラ・タンパク質断片の有毒な特性を(研究所の環境ではあるが)不活性化する方法を発見した。彼らは有毒なメカニズムの阻害剤も開発しており、それは最終的に薬として役立つかもしれない。エボラウイルス疾患におけるデルタ・ペプチドの役割は、今後の研究によって確立されるはずである。

学術誌参照:
1.エボラウイルス・デルタ・ペプチドのモデル化は、潜在的な細胞溶解の配列モチーフを明らかにする。

Viruses、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150121103304.htm



<コメント>
エボラウイルスのsGP(soluble GP)が作られる際に切断されて生じるデルタペプチド(delta peptide)は、感染した細胞にチャネルを形成することで毒性を発揮するという記事です。

デルタペプチドはアミノ酸40残基の短いペプチドで、両親媒性(amphipathic)のα-ヘリックスを形成して細胞膜に埋め込まれるような形でチャネルとして作用するとのことです。


2015年1月22日

2015-01-25 23:46:05 | 腸内細菌

ウイルスは、炎症性腸疾患において予想外の役割を果たすかもしれない
Viruses may play unexpected role in inflammatory bowel diseases



炎症性腸疾患(Inflammatory bowel diseases; IBD)は腸における細菌の多様性の減少と関連する。しかし、セントルイスワシントン大学の医学部を中心とする新しい研究によれば、同疾患はウイルスの多様性の増加とも関連づけられた。炎症性腸疾患の患者は、健康なボランティアよりも消化器系のウイルスの種類が多かった。これはおそらくウイルスが疾患に関与することを示唆する。この研究は1月22日にCellのオンライン版、1月29日の印刷版で発表される。



科学者がマイクロバイオーム、つまり体内と皮膚のすべての細菌とその遺伝子の疾患における役割を認識し始めたのはほんの最近のことである。例えば腸マイクロバイオームの変化は、肥満、糖尿病、メタボリックシンドローム、そして炎症性腸疾患と関連づけられてきた。今回の研究はバイローム(virome)、つまり体内のウイルスとその遺伝子の変化を腸の疾患と初めて関連づける。研究者によれば、この研究結果はウイルスが肥満と糖尿病、そして2つの最も一般的な炎症性腸疾患であるクローン病と潰瘍性大腸炎に関与する可能性を上げるものだという。

「これは、氷山の一角である」、シニア著者のHerbert W. Virgin IV医学博士は言う。

「これらの患者で特定したウイルスDNAのかなりの割合が、我々にとって未知である。それは我々がほとんど知らない新しく特定されたウイルスに由来する。バイロームの変化がこれらの病態を引き起こしているのか、それとも病態の結果としてバイロームの変化が起きているのかを確定するためには、我々にはまだ多くのやるべきことがある。例えばこれらのウイルスの遺伝子の配列決定、そしてウイルスがどのように腸や腸の細菌と相互作用するかを研究しなければならないだろう。」

Virginたち研究グループは、シカゴ、ボストン、イギリスに住むクローン病または潰瘍性大腸炎の患者グループを調査した。彼らは研究の参加者とその家族やボランティアの便から精製されるウイルスDNAを比較した。

「炎症性腸疾患で増加していたウイルスの多様性の多くはバクテリオファージだった。バクテリオファージは細菌に感染して、自分自身を細菌の遺伝物質へと組み込むことができるウイルスである」、病理学のEdward Mallinckrodt教授職であり、病理免疫学部のトップでもあるVirginは言う。

炎症性腸疾患において細菌を排除するような腸の変化は、死んだ細菌からバクテリオファージを開放するかもしれないとVirginは推測する。または食事による新しいバクテリオファージの移入が消化器系やマイクロ・バイオームの反応を誘発して障害を引き起こす可能性があると彼は言う。炎症性腸疾患の治療を改善するためには、科学者は腸マイクロバイオームと腸バイロームがどのようにして患者の遺伝子と相互作用するかをもっと学ぶ必要があるという。

学術誌参照:
1.炎症性腸疾患における腸バイロームの疾患特異的な変化。

Cell、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150122132738.htm


<コメント>
炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease/IBD)は細菌の多様性の低下だけでなく、ウイルスの多様性の増大とも関連するという記事です。

関連記事にも同様の内容があります。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/03/140310090919.htm
>The most common viruses in the gut are the bacteriophages. These rapidly-evolving viruses can outnumber bacteria by a factor of 10 to one;

>they infect and destroy bacterial cells and have the ability to transfer genetic material from one bacterium to another, with potentially profound implications for GI health and disease.
(ウイルスのバクテリオファージは急速に進化し、そして細菌よりも非常に数が多い。バクテリオファージは細菌に感染して破壊し、遺伝物質を細菌から細菌へと伝えることができるため、腸管の健康と疾患に深く関連する可能性がある。)

>"There is a predator-prey relationship between bacteriophages and bacteria that may play a role in altering the bacterial microbiota in conditions such as inflammatory bowel diseases (IBD)," says Prof. Wu.
(バクテリオファージと細菌の間には捕食者と獲物の関係があり、それはIBDのような病態における細菌叢の変化と関連する。)

"The fact that bacteriophages induce immune responses in bacteria and may also transmit genomic material into bacteria that may alter their function makes these viruses extremely important and we need to know much more about them."
(バクテリオファージは細菌における免疫応答を誘発し、遺伝物質を細菌に伝えてその機能を変化させるという事実を考えれば、ウイルスは非常に重要な存在である。我々はもっとウイルスについて知る必要がある。)

英語版Wikipediaのviromeの項目には、食事とviromeの関連についての記述があり、Referenceとして報告が一つ挙げられています。

http://genome.cshlp.org/content/21/10/1616
>Here, we investigate viromes from human subjects on a controlled feeding regimen.
>The dietary intervention was associated with a change in the virome community to a new state, in which individuals on the same diet converged.

2015年1月20日

2015-01-23 23:11:57 | 代謝

肥満の手掛かりを与える新しいシグナル経路
New signaling pathway provides clues to obesity



ヴァンダービルト大学を中心とする研究チームは、脳の食欲コントロール・センターで「可変抵抗器」として働く分子を発見した。この発見は我が国に蔓延する肥満に対して新しい洞察を提供するかもしれない。

ネイチャー誌で報告されるこの新しい細胞シグナル経路の発見は「食欲をコントロールする『オン/オフ』スイッチについてのこれまでのモデルを修正する」とMasoud Ghamari-Langroudi博士と共に研究チームを率いるRoger Cone博士は言う。

今回の発見は、脳の食欲コントロール・センターであるメラノコルチン-4受容体(MC4R)に焦点を合わせる。MC4Rは神経細胞膜に固定されるGタンパク質共役受容体(GPCR)である。

「これはGPCRがどのようにシグナルを出すかについて理解するための、まったく新しいやり方である」、分子生理学・生物物理学部の教授であり、生物医科学のJoe C. Davis教授でもあるConeは言う。

「ほとんどのGPCRは、短い時間枠の間ではオン/オフ動作のスイッチのように動作する。しかし今回の発見は、『オン/オフのスイッチ』から『可変抵抗器』へと切り換えるための分子メカニズムを特定する」、Coneは言う。

「それは日焼けやダイエット後のリバウンドのような遅れて起きる持続性の生物学的プロセスの説明を助ける可能性がある。オン/オフのスイッチ、可変抵抗器、そのどちらもGPCRによって仲介される。」

MC4Rは長い間、GPCRとしては典型的な「オン/オフ」のスイッチとして特徴づけられてきた。α‐メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)とアグーチ関連ペプチド(AgRP)は、MC4R受容体の同じ結合箇所で競合する。α-MSHによるMC4Rの活性化は食欲をオフにするが、AgRPによるMC4Rの阻害は食欲を刺激する。

この一般的な機序において、GPCRが刺激を受けるのは『シャットダウン』するまでである。この現象を脱感作(desensitization)と呼ぶ。GPCRの脱感作はしばしば急速に生じ、それは多くの生理的なシステム、例えば視力や嗅覚が機能するために必要である。

しかし脱感作は、恒常性への復帰を説明しない。例えば体重には『セットポイント』があり、いったんダイエットするのを止めると体重は数ヶ月の間にもとに戻ることがしばしばある。

その答えは「過感作(hypersensitization)」、つまり脱感作の反対かもしれない。それはMC4RがKir7.1というカリウムチャネルと「共役する」ときに生じ、このプロセスはGタンパク質シグナルから独立している。動物における研究では「ペプチドAgRPの単回投与(single dose)は最大で10日間の食料摂取を刺激することができる」ことを示した。

「この観察は従来のGPCRシグナルとは単純に適合しなかった」、Coneは言う。

今回の研究は、AgRPはMC4R受容体との結合をα-MSHと競合するだけでなく、Kir7.1を開くようにMC4Rを誘導する「バイアスアゴニスト(biased agonist)」でもあることを示したという。AgRPはカリウムチャネルを開き、食欲の阻害に関与するニューロンを「過分極化」して阻害することで、飢餓感を増加させる。この発見は、肥満を治療する新しいアプローチにつながるかもしれない。

「現在の課題は、より小さいMC4Rバイアスアゴニストを見つけ出すことである」、Coneは言う。

Kir7.1は、腎臓や子宮筋、腸など、他の多くの組織で発現している。Kir7.1のようなイオンチャネルにより直接シグナルを伝えるような他のGPCR候補も他の組織で調査されていると言う。

記事ソース:
上記の記事は、ヴァンダービルト大学メディカル・センターによって与えられる素材に基づく。

学術誌参照:
1.視床下部ニューロンにおける、MC4RのGタンパク質からは独立したKir7.1との共役。

Nature、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150120121306.htm


※DMV(dorsal motor nucleus of the vagus): 迷走神経背側運動核ニューロン

<コメント>
視床下部の室傍核(paraventricular nucleus)にあるGPCR共役受容体のメラノコルチン4受容体(melanocortin-4 receptor/MC4R)に対してα-MSHとAgRPは競合するだけでなく、異なる機序でニューロンを活性化/阻害することが判明したという記事です。


α-MSH→MC4R→Gαs→cAMP─┤Kir7.1/K+排出
AgRP→MC4R→Kir7.1/K+排出/過分極

2015年1月13日

2015-01-20 23:49:01 | 代謝

甲状腺機能低下症の治療に対する新しい洞察
New insights into treatment of hypothyroidism



ラッシュ大学メディカル・センターの医師と科学者によって指揮される国際研究チームは、アメリカで約1000万人が罹患する甲状腺機能低下症に対する新しい洞察を得た。今回の研究結果は特に標準的な治療の効果がない約15パーセントの患者にとって新しい治療手順につながる可能性がある。この研究は新年の初めにJournal of Clinical Investigation(JCI)とJournal of Clinical Endocrinology & Metabolism(JCEM)で発表された。
http://www.jci.org/articles/view/77588
http://press.endocrine.org/doi/abs/10.1210/jc.2014-4092


甲状腺機能低下症は、甲状腺がサイロキシン(T4)とそれが活性化した状態のトリヨードサイロニン(T3)を十分に産生しないときに生じる。この病態は多数の健康問題を引き起こす可能性がある。例えば体重の増加や疲労、そして「もうろうとした頭(foggy brain)」などである。

何十年もの間、標準的な治療はレボチロキシン(levothyroxine)という合成T4サプリメントを毎日摂ることだった。いったん体内に吸収されればT4は脱ヨード反応(deiodination)によってT3に変化し、理論上はT3の血中濃度を完全に正常化する。

しかしながら、この治療法で患者の約15パーセントは全ての症状が改善されない。医師たちはその理由に長い間頭を悩ませてきた。この混乱が続く理由は主に、甲状腺機能低下症の治療が効くかどうかという効能は「患者がどのように感じるか」という主観的な報告に依存するためでもある。正常な甲状腺を有する人でも、他の病態、例えば閉経後症候群や臨床的うつ病などにより甲状腺機能低下症と似たような症状を経験するかもしれない。



JCIで発表される研究は甲状腺が除去されたラットで実施され、T3の循環血中のレベルがレボチロキシンだけでは完全に正常化されない理由について細胞レベルでの基礎を説明する。

加えて、レボチロキシンの処方にT3を追加することで、循環血中のT3レベルと甲状腺機能低下は完全に修正できることを明らかにする。レボチロキシンだけを投与されたラットのいくらかは、T4とT3を組み合わせて投与されたラットよりも、血液中のコレステロール濃度が高かった。

それらのラットは脳でも甲状腺機能低下症の徴候を示した。これは甲状腺機能低下症の一般的な症状である「もうろうとした頭」を潜在的に説明できる可能性がある。したがって、併用療法は一般に甲状腺機能低下症で影響を受ける臓器(脳、肝臓、骨格筋)において正常な甲状腺ホルモン作用を確立したと言える。

「もちろん、臨床的に本研究を確認することは重要である」、ラッシュの内分泌代謝学部のトップであり、両方の論文のシニア著者であるAntonio Bianco医学博士は言う。Bianco博士が共同議長を務めるアメリカ甲状腺学会タスクフォースは甲状腺機能低下症の治療ガイドラインも更新し、12月にThyroid誌で発表した。

「甲状腺機能低下性患者は全て同一であるというわけではない。併用治療でうまくいく人もいるし、そうでない人もいるだろう。したがって課題は、これらの個々人を特定して、その違いがなぜ存在するかについて理解することである」、Bianco博士は言う。

この点についてはJCEMでの研究で探究された。研究者は、T4をT3に変換する酵素であるD2(deiodinase)の一般的な多型性(polymorphism; 頻度が高い遺伝子的な突然変異)を調査した(Thr92Ala)。先行研究では、この多型性を有する甲状腺機能低下症の患者は併用治療の効果が高く、そこからBianco博士たちはこの多型性と標準治療が失敗する関係を探究するに至った。

研究者は約100人の遺体ドナーの脳を研究し、この多型のD2が、通常はD2を含まない細胞区画(ゴルジ装置)に蓄積する傾向があることを発見した。D2のこの異常な蓄積は、ハンティングトン病のような神経変性疾患の脳で観察されるのと同じように細胞の機能を阻害する。

「D2の多型性は、甲状腺機能低下症を発病するときに神経変性疾患が悪化しうる危険因子であると考えられる」、Bianco博士は言う。

幸いにも、この病態のための治療が使用可能かもしれない。

「多型D2に影響を受ける遺伝子のいくつかは、酸化ストレスを表した」、Bianco博士は言う。

「酸化ストレスを中和する物質(N-アセチルシステイン)でD2の多型を持つ細胞を処理すると、それらの遺伝子の発現は正常化した。」

「認知が低下する危険因子を示す要素を1つまたはそれ以上持つにもかかわらず、甲状腺機能低下性の患者の全てが同じではない理由をこのD2多型は説明する。さらなる研究によって確かめられればだが」、Bianco博士は言う。

「個人用にカスタマイズされた薬剤は、甲状腺機能低下症を捕えていたようだ。それは100パーセントの患者に効くことを確実にできるかもしれない。」

記事ソース:
上記の記事は、ラッシュ大学メディカル・センターによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.視床下部の2型脱ヨウ素酵素のユビキチン化における違いは、サイロキシンへの局所的な感度を説明する。

JCI、2015;

2.甲状腺ホルモンを活性化する酵素の優勢な多型は、相互に関連する臨床的な症候群の根底にある遺伝子的なフィンガープリントを残す。

Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150113153952.htm

<コメント>
甲状腺機能低下症(hypothyroidism)についての記事です。

甲状腺ホルモンのサイロキシン(T4)を脱ヨード反応(deiodination)によってトリヨードサイロニン(T3)に変換するII型脱ヨード酵素(type 2 deiodinase/D2)は、T4への曝露によって不活化してしまい、さらにD2には遺伝的な多型が存在するため、合成T4のレボチロキシンを補うだけでは完全には効かない人もいるという内容です。


Figure 5
この図は、視床下部-脳下垂体-甲状腺の流れを説明する。『T4によって誘発されるD2のユビキチン化』は甲状腺ホルモンの恒常性に関与するが、そのバランスは臓器によって異なる。
TRHを発現するニューロンは下垂体門脈(hypophyseal portal blood)にTRHを分泌し、TRHは下垂体前葉(anterior pituitary)へと輸送される。下垂体前葉ではベータ細胞からTSHが分泌され、TSHは甲状腺を刺激してT3とT4を作らせる。
体内のほとんどの組織では、T4への曝露はユビキチン化によるII型脱ヨウ素酵素(D2)の不活化を促進し、D2はプロテアソーム系によって分解される。ユビキチン化したD2(UbD2)は脱ユビキチン化酵素(deubiquitinase/DUB)によってプロテアソーム分解から逃れることができる。
末梢での脱ヨウ素化は『T4への曝露によって誘導されるD2のユビキチン化』にきわめて影響を受けやすく、したがって、血清T4/T3比の上昇は軽度でもD2の不活化を促進し、その分画でのT4からT3への変換を低下させて、末梢のT3産生を抑制する。
同様の状況は脳の別の領域でも観察され、血清のT4/T3比が上昇すると、甲状腺機能低下症に典型的な遺伝子発現プロファイルにつながる。

それらとは対照的に、視床下部のD2は『T4曝露によるユビキチン化』による影響を受けにくい。さらに、視床下部では脱ユビキチン化が非常に効率的であるため、T4によるD2不活化は意味をなさない。
その結果、視床下部ではD2によるT3産生を経由するT4シグナルはきわめて効率的であるが、末梢ではD2によるT3産生は容易に阻害される。以前発表されたデータ(18)によれば、下垂体の向甲状腺細胞(thyrotroph;下垂体ベータ細胞)における状況は、おそらく、この視床下部と末梢という両極端の間の中間(intermediary)である。
これは、甲状腺切除(thyroidectomized/Tx)ラットにレボチロキシン(L-T4)を投与した際に観察された「TSH分泌の正常化」と「末梢でのT3産生(の低下)」との間の矛盾を説明する。

※tanycyte: タニサイト。脳室壁を構成する上衣細胞の中でも、細胞体から突起が神経実質内に伸び出して突起が脳表面にまで達しているような上衣細胞を特にタニサイトと呼ぶ。第三脳室壁によくみられる



脳や甲状腺にはFoxOが発現しているため、にきびの治療薬で影響を受ける人もいるようです。

http://ta4000.exblog.jp/17942429/
>FoxOは哺乳類の組織に広く発現しており、特に脂肪組織、脳、心臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、骨格筋、脾臓、甲状腺、そして精巣に多い。

http://ta4000.exblog.jp/18487331/
>Karadagらが47人のにきび患者を3ヶ月間イソトレチノインで治療したところ、遊離トリヨードサイロニン (T3)、甲状腺刺激ホルモン (TSH)、抗甲状腺刺激ホルモン受容体抗体の濃度、黄体化ホルモン (LH)、プロラクチン (PRL)、総テストステロン、そして朝のコルチゾールならびにACTHが減少したことを最近証明した。

2015年1月13日

2015-01-18 23:26:51 | 癌の治療法

腫瘍微細環境は、ナノ粒子抗がん剤にとっての無法地帯である
Tumor micro-environment is a rough neighborhood for nanoparticle cancer drugs



ナノ粒子ドラッグはがんに対する『銀の弾丸』であると考えられてきた。ナノ粒子は薬剤が詰め込まれた小さい入れ物であり、腫瘍へと直接届けることができる潜在能力を持つためである。

しかしながら、ナノ粒子に基づく新しい抗がん剤はがん患者の全生存率をあまり改善しなかった。ノースカロライナ大学チャペルヒル校の科学者は、この失敗は薬や腫瘍とはあまり関係がなく、むしろ腫瘍の周囲の環境と関係があるかもしれないと考えている。

Clinical Cancer Researchで発表される彼らの研究は、がん治療における比較的古い考えと新しい考えを統合する。それは一方ではパーソナライズされた薬剤の重要性を強調し、そして他方では腫瘍の微小環境が腫瘍への薬の送達に影響を与え、個々の人/癌/腫瘍によってドラッグデリバリーを変化させる要因であるという比較的新しい考えを補強する。

「腫瘍は治安の悪い区域を生み出す」、研究のシニア著者であり、ノースカロライナ大学エシェルマン薬学部で准教授のWilliam Zamboniは言う。

「腫瘍は、漏れやすく、そして無秩序な血管を作る。それはまるでデコボコのストリートや袋小路、破壊された下水道のようである。そこには『空き地』があり、雑草のようにコラーゲン線維が一面に生い茂っている。ストリートをパトロールしていた免疫システム細胞はもともとは善人だったかもしれないが、今では悪人となって腫瘍のために働く。我々は、そのような中を通り過ぎてトラック1台分の大きな薬剤を運ぼうとしている。」



今回の研究ではノースカロライナ大学の医学部とラインバーガー総合がんセンターが協力して標準的な小分子抗がん剤のドキソルビシンとそのナノ粒子バージョンのDoxilについて研究を実施し、それらが実際にどれくらい2種類のトリプルネガティブ乳癌腫瘍モデルに届くかを観察した。トリプルネガティブ乳癌は症例の10~17パーセントを占める予後の悪い癌である。

最初彼らが観察したことは特に驚くことではなかった: 標準的な小分子薬のドキソルビシンと比較して、ナノドラッグのDoxilは両方のトリプルネガティブ乳癌腫瘍に著しく多く到達した。彼らは両方の腫瘍でドキソルビシンの量が同一であることを観察した。

彼らを驚かせたのは、ナノドラッグDoxilが届いた量は、T11トリプルネガティブ乳癌腫瘍よりもC3-TAgトリプルネガティブ乳癌腫瘍の方が2倍多いということだった。

「これらの腫瘍は1種類のがんが元になったサブタイプで、比較的密接に関連がある」、Zamboniは言った。

腫瘍と微細環境のより優れたプロファイルを得ることにより、ナノ粒子に基づくがん治療から最も利益を得る患者を特定できるだけでなく、新しいナノ粒子薬を処方する前に患者の腫瘍についてより多く知る必要があるかもしれないことをZamboniたちの研究は示唆する。

「腫瘍微小環境は、がん治療において大きい役割を果たす可能性がありそうだ」、Zamboniは言う。

「それはトリプルネガティブ乳癌だけでなく、どんなタイプの癌でも、パーソナライズ治療の正しい方向へと我々を指し示す要素であるのかもしれない。」

学術誌参照:
1.腫瘍微小環境の不均質性が与えるナノ粒子の性質への影響と、乳癌腫瘍モデルにおける効能。

Clinical Cancer Research、2014年12月;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150113184143.htm

<コメント>
ナノ粒子を使った抗がん剤は、腫瘍の周囲の状態に影響を受けるという記事です。

Abstractを見ると、同じトリプルネガティブ乳癌モデルのT11とC3-TAgという2種類で比較した場合、T11はCCL2とVEGF-aの発現が高く(VEGF-cの発現は低い)、血管の量も多かったとあります。

2015年1月12日

2015-01-15 22:33:32 | 代謝

薬がどのように肥満や糖尿病を打ち消すかについての手掛かり
More clues to how drug reverses obesity, diabetes, fatty liver disease



ミシガン大学の研究者は、肥満と関連する代謝異常の有望な治療薬、アンレキサノクスamlexanox)がどのように脂肪細胞と肝臓との間にシグナルを伝えて糖代謝を改善するのかを特定した。彼らの研究はアンレキサノクスが糖尿病や脂肪肝を打ち消す方法を明らかにすることに加えて、今後の治療のための新しい経路を示唆する。彼らの研究は1月12日にNature Communicationsで発表された。

ミシガン大学ライフサイエンス研究所の『Mary Sue Colemanディレクター』であるAlan Saltielのラボは以前、喘息の治療で用いられてきたこの薬が肥満マウスの体重を減少させ、糖尿病を改善する能力も持つことを発見した。

彼らは今回の研究で、アンレキサノクスが特定の脂肪細胞のcAMPというセカンド・メッセンジャー分子を増加させることによりその効果を発揮することを明らかにした。cAMPは脂肪細胞が脂肪を「燃焼」する割合を増加させて、マウスの体重を減少させる。

さらに、アンレキサノクスは脂肪細胞からのインターロイキン-6の分泌を引き起こし、それは血流に乗って肝臓へと移動する。インターロイキン-6は糖尿病モデルマウスの肝臓でブドウ糖の産生を低下させ、全体的に血糖は減少する。

「アンレキサノクスは、慢性炎症を消炎し、脂肪細胞でのエネルギー消費を増加させることによって肥満とインスリン抵抗性を打ち消す。しかしそれは薬の作用の一部であって、全てではない」、筆頭著者のShannon Reillyは言う。

「肥満のモデルマウスにおいてアンレキサノクスがどのように脂肪細胞と肝臓との間のクロストークを可能にするかを理解することで、我々はアンレキサノクスについてより多くを知ることができるようになる。それはさらに体内の異なる組織間のコミュニケーションを明らかにする。」



肥満は、肝臓と脂肪組織において軽度の慢性炎症につながる。この炎症はIKK-εTBK1という2つのキナーゼのレベルを増加させる。2009年、Saltielのラボは肥満の発症におけるIKK-εとTBK1の重要な役割を明らかにした。

2013年、彼らは喘息などの治療に処方されるアンレキサノクスがマウスの肥満と糖尿病、そして脂肪肝を打ち消すことを発見した

2013年12月に発表された研究では、高レベルのIKK-εとTBK1は肥満マウスの脂肪細胞のカテコールアミンの受容体が反応できないようにすることを突き止めた。交感神経系によって分泌される神経伝達物質のカテコールアミンは「脂肪の燃焼」を促進するが、それが不可能になる。

高レベルのIKK-εとTBK1はcAMPのレベルを低下させることでカテコールアミンへの反応を弱めるが、アンレキサノクスはIKK-εとTBK1のレベルを低下させ、結果としてcAMPは増加する。カテコールアミンに対する感度は増大し、脂肪細胞によるエネルギー消費は増加する。

今回のミシガン大学の研究は、脂肪細胞のcAMPの増加がどのようにインターロイキン-6の分泌を促進するかを説明する。インターロイキン-6は肝臓にブドウ糖を産生するのを止めるように合図し、したがって肥満糖尿病のモデルマウスで全体的な血糖値を改善する。

学術誌参照:
1.皮下脂肪組織から肝臓へのシグナル伝達は、肝臓の糖新生を制御する。

Nature Communications、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150112133921.htm

<コメント>
肥満に伴って起きる全身での軽度の慢性炎症は脂肪組織でのIKK-εとTBK1を増加させ、cAMPは抑制されてカテコールアミンへの応答が低下しますが(カテコールアミン抵抗性)、アンレキサノクス(ソルファ)はIKK-εとTBK1を抑制してcAMPレベルを回復し、カテコールアミンへの感度が増大するという記事です。

アンレキサノクスはさらに皮下脂肪組織からのIL-6分泌を促進し、肝臓でのStat3リン酸化によるG6pcプロモーターへの結合を増加させて糖新生を抑制するとのことです。

 アンレキサノクス→(皮下脂肪組織)IKK-ε/TBK1↓PDE3B↓cAMP↑IL-6↑→(肝臓)Stat3リン酸化↑G6pc↓糖新生↓

以前にも高脂肪食によるカテコールアミン抵抗性についての記事がありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6229ce246d3b7e0370b421d730087089
>栄養分が豊富な時、脂肪細胞はシグナルに抵抗して代わりに脂肪を貯めこむようになる。

2015年1月8日

2015-01-14 11:44:05 | 感染症

新しく発見された抗生物質は、抵抗性なしで病原体を殺す
Newly discovered antibiotic kills pathogens without resistance



長い間、病原体の抗生物質への耐性は研究者の一歩先を行った。そしてそれは公衆衛生上の危機を引き起こしている。

しかし今、科学者は病原体を排除する新しい抗生物質を発見した。それはどんな抵抗性も検出されない。

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150108124854.htm

<コメント>
グラム陽性に対する「抵抗性を生じない」抗生物質teixobactinが発見されたという記事です。

高度に保存されたモチーフであるLipidII(ペプチドグリカン/peptidoglycanの前駆体)とLipidIII(壁タイコ酸/wall teichoic acidの前駆体)に結合して、細胞壁の合成を阻害するとされています。


Extended Data Figure 7
teixobactinによる細胞壁合成の阻害


Lipid II(ペプチドグリカンの前駆体)は、細胞質の中で合成されて、MurJ48またはFtsW49によって内膜の表面に反転される(flipped)。

Lipid III(壁タイコ酸/WTAの前駆体)は細胞内で同じように形成される。そして、WTA Lipidが結合された前駆体は、ABC輸送体TarGH50によって細胞質の膜の反対側にトランスロケーションされる。

Teixobactin(TEIX)は、細胞壁の前駆体であるLipid IIとLipid IIIとの化学量的な(stoichiometric/反応に関与する物質量(モル数)の関係を指す用語)複合体を形成する。

これら基礎単位の奪取(abduction)は、ペプチドグリカン(右側)とWTA(左側)の生合成、ならびに前駆体のリサイクルを同時に妨げる。細胞壁の合成経路内の複数の標的に対する結合は、機能的な細胞エンベロープの形成を妨げる。

左のパネルは、下がteixobactinの標的となるグラム陽性菌、上はteixobactinに抵抗するグラム陰性菌。teixobactinの生産者はグラム陰性菌であり、外膜(OM)、つまり透過できない障壁の外に排出することによってこの化合物から保護される。teixobactinの標的となるグラム陽性細菌は外膜を持たない。

CM、細胞質膜; CW、細胞壁; OM、外膜; LTA、リポタイコ酸; WTA、壁タイコ酸

2015年1月7日

2015-01-13 23:45:55 | 癌の治療法

驚愕: 高用量テストステロン治療は、前立腺癌が進行した患者を救う
Surprise: High-dose testosterone therapy helps some men with advanced prostate cancer



男性ホルモンであるテストステロンは、概して前立腺癌の供給装置(feeder)であると考えられてきた。しかし逆説的だが、テストステロンは進行した前立腺癌を抑制することが明らかになった。さらに、テストステロンは前立腺癌の治療に用いられるテストステロン遮断薬に対する抵抗性も覆すかもしれない。このジョンズ・ホプキンス・キンメルがんセンターの科学者による発見は、Science Translational Medicineの1月7日号で報告される。

16例の転移性前立腺癌患者の小規模な試験を指揮した医学腫瘍学者Samuel Denmeade博士は、次のように警告する。テストステロン投与のタイミングは決定するのが非常に困難であるため、薬局で買えるテストステロン・サプリメントでの勝手な治療を試みるべきでないと言う。先行研究では、特に活動性の進行がんの患者が間違った時にテストステロンを服用し、そしてテストステロン遮断治療を受けていない場合、疾患が悪化する可能性が示されている。



前立腺癌が転移する患者に対して、医師は概してテストステロン産生を阻害する薬を処方するが、がん細胞はこのホルモンを低下させる手段に最終的に抵抗性になる。すると医師は、前立腺癌のテストステロン受容体を阻害する薬(例えばエンザルタミド)へと切り替える。

しかし、このアンドロゲン遮断治療(androgen deprivation therapy)と呼ばれるテストステロン産生とテストステロン受容体を阻害する薬の併用は、時間とともに前立腺癌をより悪性化させるかもしれない。前立腺癌は、テストステロン受容体を多く作ることにより阻害療法をくつがえすことができるようになるからである。

このような背景のもと、研究者は前立腺癌細胞にテストステロンを殺到させるとホルモン・ショックによって死ぬ可能性があるという考えに基づくアプローチを検証した(supraphysiologic testosterone; 超生理学的テストステロン)。癌細胞はテストステロン受容体を作らなくなることで反応するかもしれないが、それにより再び前立腺腫瘍細胞はアンドロゲン遮断療法に対して脆弱になるかもしれない。



Denmeadeたちは、ジョンズ・ホプキンスで転移性前立腺癌のテストステロン低下治療を受けていた16人の人間を登録した。全員が以前アンドロゲン遮断療法の少なくとも1つのタイプで治療されていた。彼らは前立腺特異抗原(PSA)レベルが増加し、前立腺癌の血液マーカーならびに抵抗性を生じたというx線写真によるエビデンスがあった。

彼らはテストステロンの筋肉注射の28日サイクルを3回と、化学療法薬エトポシドを2週間受けた。3サイクル後にPSA値が減少を示した患者は、テストステロン注射だけを継続した。

16人のうち、2人は研究を完了しなかった:1つはエトポシドに起因する肺炎と敗血症で死亡した。もう1人はテストステロンの副作用である遷延性勃起(prolonged erection)を経験した。

試験で残った14人のうち、7人はPSA値が30%から99%低下し、癌の徴候は安定するか、もしくは重症度が低下した。7人はPSAが減少を示さなかった。7人のうちの4人は、12~24ヵ月の間、より低いPSA値のままテストステロン治療を継続した。

転移癌を画像化スキャンで評価された10人のうち、5人は半分以上の腫瘍収縮を経験し、1人は腫瘍が完全に消えた。

「驚くべきことに、我々は合計で10人のPSA減少を観察した。そのうち4人は、試験の間PSAが変化しなかった。彼らはテストステロン治療後にテストステロン遮断薬を与えられていた」、Denmeadeは言う。

科学者はこれらの結果が、エンザルタミドのようなテストステロン遮断薬に対して最終的に生ずるテストステロン抵抗性を、テストステロン治療が覆す可能性があることを示唆するという。

研究が2010年から始まってから参加者の3人が死亡したが、残りは今もなお生存している。エトポシドのサイクルの間、その多くは化学療法の通常の副作用を経験した(悪心、疲労、毛髪喪失、腫脹、血球の減少)。しかし、テストステロン注射だけを受けた参加者の副作用はまれであり、常に低グレードだった。

Denmeadeは、より多くの研究がジョンズ・ホプキンスと他の病院で計画されていると言う。

記事ソース:
上記の記事は、ジョンズ・ホプキンス・メディシンによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.去勢抵抗性の前立腺癌の無症候性の人間に対する、双極性の男性ホルモン療法の影響:
パイロット臨床研究からの結果。

Science Translational Medicine、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150107204449.htm

<コメント>
テストステロンを欠乏させる療法に抵抗する前立腺癌に対して、テストステロンを大量に投与する療法が効いたという記事です。

癌細胞の不安定さとそれによる脆弱性について言及した記事がつい最近もありました。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141202093630.htm
癌細胞に化学療法が効かなくなるのは、染色体が不安定で、増殖のたびに増えたり減ったりしているためである(染色体不安定性chromosomal instability)。そのため癌細胞には「ストレス」があり、ほんのわずかな代謝的の変化で癌細胞は死ぬ。

癌細胞を殺すために必要なのは、代謝的なひと押しだけである(it only takes a small metabolic push to kill them)。
今の化学療法は、癌細胞だけでなく、分裂する細胞すべてに毒である。


http://www.adelaide.edu.au/news/news75102.html
これは「極端な食事を続ける」ような代替療法に正当性を与えるものだろうとGregory博士は言う。

「化学療法に反応しないような進行がんの患者は、しばしば極端な食事療法のような様々な代替療法に救いを求める。」

「ある状況では、それは実際にうまくいくかもしれない。しかし我々は、より標的を絞ったアプローチ(more targeted approach)の方向を指し示すことができればと思う。最良の結果を生むであろう代謝的プロセスにおける介入への、最も適した行程を見つけたい。」

2015年1月7日

2015-01-11 23:31:00 | 

多過ぎるガスと少なすぎる食料は、脳の傷害または疾患と関連する記憶力低下の主な因子のようである
Too much gas, too little food appear major factors in injury, disease-related memory loss



脳の傷害や疾患が原因の学習障害と記憶力低下には、炎症が関与している。そのようなニューロンは多すぎるガスと食料の少なさに苦しんでいるかもしれないという証拠を研究者は発見した。

免疫細胞のインターロイキン1β(IL-1β)は硫化水素ガスの産生を促し、脳細胞が食料(ブドウ糖)を使うための能力に影響を与える。最終的にシナプスは破壊され、神経細胞間の接続と保存された記憶は失われる。

「PSD95が消失すると、ニューロン間の連絡は阻害される」、ジョージア・リージェンツ大学ジョージア医学部の神経科学者、Nilkantha Sen博士は言う。

「それが脳内で起き続けると、我々の記憶はシャットダウンされるだろう。」

Molecular Cellで発表された研究の責任著者であるSenは、最終的に生じるタンパク質PSD95へのダメージについて説明する。PSD95DLG4)は脳細胞を接続するシナプスの骨組みに必須であり、そして硫化水素ガスによって修飾される。PSD95の喪失は、認知症、鬱病、不安障害、そして耽溺(addiction)に関連付けられてきた。



脳でのIL-1βシグナルは学習と記憶において重要な役割を果たすが、脳の傷害後にIL-1βが急速に蓄積すると、それは正反対の影響を持つようである。

Senたちは2年前、少なくともマウスにおいては、ストレスや脳の傷害がニューロン上のIL-1β受容体の発現を上向き調節することを突き止めた。活性化した受容体は、基本的には直ちに、もう一つの伝達物質である硫化水素ガスを上向き調節する。硫化水素ガスは血管を拡張することが知られているが、しかし、IL-1βと同様に、高レベルの硫化水素はむしろ細胞を破壊する傾向がある。

「我々の体のあらゆる組織において、それは閾値レベルで維持されている」、Senは言う。

「しかし、いったん増加すると有害な反応をもたらす。」

脳内で増加した硫化水素はGAPDHを修飾する。GAPDH(グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素)は脳細胞の主要な『食料』、つまり栄養素のブドウ糖を使うための解糖系に必須の酵素である。

修飾されたGAPDHは、次にSiahと結合する。Siahは不適切に折りたたまれたタンパク質の分解にとって重要なタンパク質である(E3ユビキチンリガーゼ)。この状況において、SiahはPSD95に結合して分解させる。PSD95はシナプスの足場として必要な分子である。

PSD95へのSiahの攻撃は、炎症と関連するシナプスおよび記憶損傷にとって一般的なメカニズムだろうとSenたちは記している。

「それは、シナプスの可塑性にとってきわめて重要なタンパク質を殺す」、Senは言う。

「これはまったく新しいメカニズムである。」



研究者はさらに、硫化水素を合成する酵素のシスタチオニンβシンターゼ(Cystathionine beta synthase; CBS)が失われたマウスでは、PSD95が保護されることも突き止めた。それはCBSまたはIL-1βの受容体が失われたニューロンでも同じだった。CBSを失ったマウスはシナプスの破壊が著しく減少し、その結果として生じる記憶障害も抑制された。

脳傷害や多数の神経変性疾患におけるIL-1βの明白な役割から、彼はその機能の理解を追求するに至ったとSenは記している。

彼のラボはワシントン州大学と協力して、短命である硫化水素ガスを緑の蛍光色へと変換することによって細胞内レベルを検出するアッセイを開発した。

記事出典:
上記の記事は、ジョージア・リージェンツ大学でジョージア医学部によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.サイトカインIL-1βによって誘発されるGAPDHのスルフヒドリル化(Sulfhydration)は、PSD95の分解ならびに記憶に影響する。

Molecular Cell、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150107101147.htm

<コメント>
脳内での炎症で生じるIL-1βは、シスタチオニンβシンターゼ(Cystathionine beta synthase; CBS)からの硫化水素の産生を増加させて、解糖系に必須のGAPDHをスルフヒドリル化(sulfhydration/システイン残基-SHの修飾-SSH)により修飾し、最終的にシナプスの構造にとって重要な足場タンパク質のPSD95をユビキチン化して分解してしまうという記事です。

IL-1βはアミロイドベータ(Aβ42)による炎症で増加することが知られています。



Siahは、Siah1のgenecardsを見ると次のように書かれています。

>Upon nitric oxid (NO) generation that follows apoptotic stimulation, interacts with S-nitrosylated GAPDH, mediating the translocation of GAPDH to the nucleus.
(アポトーシス刺激後にNOが生成されると、SIAH1はS-ニトロシル化(nitrosylated)されたGAPDHと相互作用して、GAPDHの核への移動を仲介する)

>GAPDH acts as a stabilizer of SIAH1, facilitating the degradation of nuclear proteins.
(GAPDHはSIAH1を安定させ、核タンパク質の分解を促進する)

2015年1月6日

2015-01-09 22:56:11 | 代謝

概日リズムは皮膚幹細胞の代謝と増殖を調節する
Circadian rhythms regulate skin stem cell metabolism and expansion, study finds



カリフォルニア大学アーバイン校の科学者は、皮膚幹細胞の『時計』が、日々の代謝サイクルと細胞分裂の調節において重要な役割を果たすことを明らかにした。1月6日にCell Reportsで発表される研究で、彼らは体内の昼と夜のサイクル、つまり概日性リズムが、どのようにして幹細胞の分化を保護して維持するかについて初めて示す。さらに本研究は、同期した概日時計の狂いが皮膚の加齢と発癌を促進する一因となるメカニズムに対して、新しい洞察を提供する。

生化学と医学の教授Bogi Andersenと生体工学の教授Enrico Grattonは、表皮の特に幹細胞の研究に集中した。表皮は長命の幹細胞によって維持され回復する皮膚の保護層である。摂食と絶食に関連するプロセス、例えば睡眠や摂食行動、代謝などにおける概日時計の役割は十分に知られているが、概日時計が幹細胞の機能も調節するのかについてはほとんど知られていない。

研究者たちはアーバイン校生体工学部蛍光ダイナミクス研究所の新しい二光子励起(two-photon excitation)蛍光寿命画像顕微法(fluorescence lifetime imaging microscopy)を用いて、生きた組織の自然のままの微細環境(microenvironment)で、たった一つの細胞の代謝状態を高感度かつ定量的に測定した。

研究の結果、概日時計はこれらの幹細胞で酸化的リン酸化と呼ばれる中間代謝(intermediary metabolism)を調節することが明らかになった。酸化的リン酸化による代謝は活性酸素を生み出し、DNAや細胞の構成要素に損傷を与える。実際、加齢に関する理論の1つでは、幹細胞での代謝の結果として生じる活性酸素による損傷の蓄積が加齢の原因であるとしている。

AndersenとGrattonの研究はさらに、酸化的リン酸化が最も活発な間は、DNAが最も損傷しやすい細胞分裂サイクルの段階(S期)を回避するように概日時計が細胞分裂のタイミングを移すことも明らかにした。動物での他の研究も概日リズムの破綻と加齢とを関連づけており、Andersenは「幹細胞の代謝と増殖のサイクルにおける同期の狂い(asynchrony)によって加齢が促進される可能性がある」と言う。

「我々の研究はマウスで実施されたものだが、この研究が示唆するところは概日リズムの破綻がヒトの現代社会でもきわめて一般的であるという事実と関係がある。そしてそのような破綻の結果として、幹細胞の異常な機能と加速した加齢が起きるのかもしれない」、彼は言った。

記事出典:
上記の記事は、カリフォルニア大学アーバイン校によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.単一の幹細胞におけるin vivoでの代謝性変動の検出。

Cell Reports、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150106154607.htm



<コメント>
マウスの表皮の幹細胞で、概日リズムと代謝、そして細胞周期との関係について調べたという記事です。

Abstractによると、マウスが夜に起きている間は表皮幹細胞での解糖系が促進されてNADHの割合が増加し、それは細胞周期のS期への移行と協調的に進行します。

逆に昼の間は酸化的リン酸化が促進されてNADHが使われ(活性酸素が多く発生し)、それにともないS期(DNAの複製)へは進行しなくなりました。Bmal1という概日リズムを調節する遺伝子をノックアウトすると、この概日的な周期変化は消失したとあります。

幹細胞でこのような周期が観察される理由として、研究者は「おそらく酸化ストレスによる傷害から遺伝子を保護するためだろう(perhaps as a protective mechanism against genotoxicity)」と推測しています。

関連記事には今回の記事と関係がありそうなタイトルが並んでいます。

http://www.sciencedaily.com/releases/2013/10/131010124557.htm
Circadian rhythms in skin stem cells protect us against UV rays
肌の幹細胞における概日リズムは紫外線から我々を守る

http://www.sciencedaily.com/releases/2011/11/111110092354.htm
Biological clock controls activation of skin stem cells
生物時計は肌の幹細胞の活性化を制御する

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140624110714.htm
Cell division discovery could optimize timing of chemotherapy, explain some cancers
細胞分裂での発見は化学療法のタイミングを最適化し、いくつかの癌を説明する可能性がある

http://www.sciencedaily.com/releases/2013/12/131219134453.htm
Nutrition influences metabolism through circadian rhythms, study finds
栄養/高脂肪食は概日リズムにより代謝に影響する

最後の記事の元となった研究には、今回の記事にも登場したBMAL1の制御が高脂肪食により抑制され、代わりにPPARγが取って代わるとあります(CLOCK:BMAL1↓ PPARγ↑)。PPARγは炎症の応答と脂肪組織の形成に関与するとされています。

・高脂肪食は概日リズムによる転写と代謝を全体的に再プログラムする
A high-fat diet reprograms the circadian transcriptome and metabolome

・高脂肪食はBMAL1の染色体標的箇所へのリクルートを(肝臓で)抑制する
A high-fat diet impairs BMAL1 recruitment to target chromatin sites

・転写の再プログラムにはPPARγによる遺伝子発現の変動が含まれる
Transcriptional reprograming involves PPARγ-driven oscillation in gene expression

・栄養による概日時計のリモデリングは急速だが可逆的である
Remodeling of the circadian clock by nutrients is rapid and reversible



2015年1月6日

2015-01-07 23:00:29 | 

研究者は、癌を促進する重要な遺伝子を発見する
Researchers uncover key cancer-promoting gene



癌生物学の謎の1つは、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-beta)がどのようにして癌の形成を止めたり、増殖を促進できるかということである。ミシガン大学総合がんセンターの研究者は、このパラドックスを説明して潜在的な治療目標を提供するかもしれない重要な遺伝子を発見した。

TGF-betaは腫瘍サプレッサー遺伝子として知られ、細胞が正常に成長するよう抑えておくために必要である。しかし、ある時点でその機能は反転して腫瘍プロモーターとなり、癌の悪性の増殖と浸潤を促進する。今回、研究者はTGF-beta受容体の調節に関与する重要な遺伝子としてBub1を特定し、Science Signalingで発表した。

「Bub1が受容体レベルで関与するというデータは完全に予想外である」、研究ディレクターのAlnawaz Rehemtulla博士は言う。彼は放射線腫瘍学と放射線医学のRuth Tuttle Freemanリサーチ・プロフェッサーであり、ミシガン大学メディカルスクール分子画像化診断センターの共同ディレクターでもある。

「Bub1は細胞分裂での役割で有名だが、今回の発表はそれをTGF-betaと結びつける最初の研究である。我々は、これが腫瘍プロモーターであり腫瘍サプレッサーでもあるというTGF-betaのパラドックスを説明するかもしれないと考えている」、彼は付け加えた。



ミシガン大学研究者チームのShyam Nyati博士とBrian D. Ross博士たちは、TGF-beta受容体を調節する遺伝子をスクリーニングする方法を開発した。肺癌と乳癌細胞についてヒトゲノムの720の遺伝子がスクリーニングされ、TGF-betaシグナルにおいて有力な役割を果たす遺伝子としてBub1が現れた。Bub1はTGF-beta受容体と結合して、悪性の細胞増殖のスイッチを入れる。研究者がBub1を阻害すると、TGF-beta経路は完全にシャットダウンされた。

悪性のがん細胞の特徴を示す細胞では、TGF-betaが関与することが知られている。研究者は、Bub1が様々なタイプの癌細胞で強く発現することも知っていた。Bub1は様々な種類の癌で見られるため、それを標的にする薬は多くのがんに影響を与える可能性がある。

Bub1を標的にする化合物は開発されてはいるが、患者で試験する準備はまだできていない。ラボの実験では、Bub1阻害剤が他の細胞に害を引き起こすことなくBub1のみを標的にできることが示唆される。

「癌での遺伝子の発現でBub1はトップ5に入る。加えて、Bub1発現レベルは肺癌と乳癌患者の転帰と相関する。しかしそれがなぜかはこれまで不明だった。その関連が判明した今、我々はこのサイクルのシャットダウンに一歩近づいた」、Rehemtullaは言う。

記事出典:
上記の記事は、ミシガン大学健康システムによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.セリン/ThrキナーゼBUB1のキナーゼ活性は、TGF-βシグナルを促進する。

Science Signaling、2015年1月;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150106140820.htm

<コメント>
TGF-βシグナルは癌の抑制と悪性化の両方に関与しますが、そのシグナルを調節する遺伝子としてBub1を特定したという記事です。

Abstractにはこう書かれています。

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TGF-βと結合すると、TGF-βI型受容体/TGFBRIは、TGFBRIIと結合して、転写因子SMAD2とSMAD3を活性化する。

BUB1キナーゼは、TGF-βが存在すると、TGFBRIと相互作用して、TGFBRIIとのヘテロ二量体化を促進し、さらにTGFBRIIとも相互作用して三量体を形成することが示唆される。

BUB1ノックダウンは、受容体複合体へのSMAD3のリクルート、SMAD2とSMAD3のリン酸化、そのSMAD4との相互作用、SMAD依存的な転写、TGF-βによる細胞表現型における変化(上皮間葉転換EMT/移動/浸潤)を阻害する。

BUB1ノックダウンは、非古典的なTGF-βシグナル(AKTキナーゼ、p38 MAPKキナーゼ)を抑制する。

BUB1のTGF-βシグナルの促進はキナーゼ活性に依存する。BUB1のキナーゼ活性の阻害剤2OH-BNPP1またはキナーゼが失活する変異は、TGF-βシグナルならびに受容体の三量体形成を抑制した。

2OH-BNPP1を肺癌異種移植lung carcinoma xenograftマウスへ投与すると、腫瘍組織でのSMAD2リン酸化は減少した。

これらの発見は、TGF-β経路におけるBUB1のキナーゼとしての機能を示す。細胞周期と染色体の接着chromosome cohesionにおけるその確立された機能を超えた役割において。
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TGF-βが初期の癌は抑制するものの後期にはEMTを誘導するということは以前からよく知られています。


http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a634de2c32256ddde7e64a3859950fcb
>周囲のストロマ細胞によるHSF1の活性化が、TGF-βとSDF1により悪性化を進行させる。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b825f66ef0fd430b04ceec445e4acf32
>基底細胞型の乳癌では、ZEB1遺伝子の状態は、抑制化と活性化のマーカーが遺伝子上に共存していて曖昧である。
>これらの細胞がTGF-βのようなシグナルに触れると、抑制マークは取り除かれて、ZEB1が発現する。それにより基底細胞型の非CSCはCSC(癌幹細胞)に変化する。

http://www.jci.org/articles/view/76711
>TGF-β signaling acts as an oncogene in basal breast tumors, in which it promotes EMT and metastasis, and acts as a tumor suppressor in luminal tumors, in which it is downregulated (54, 55).


2015年1月1日

2015-01-05 23:33:33 | 生命

教科書の科学に逆らうタンパク質の新しい役割
Defying textbook science, study finds new role for proteins



どんな生物学の入門書でもいいから開いてみよう。あなたが最初に学ぶことの1つは、我々のDNAにはタンパク質を作るための『指示(instructions)』が明確に記されているということである。

Scienceで1月2日に発表される研究結果は、そのような教科書のサイエンスに反抗する。研究が明らかにしたのは、タンパク質の基礎単位であるアミノ酸は設計図、つまりメッセンジャーRNA(mRNA)がなくても組み立てることができるということである。研究者チームは、Rqc2というタンパク質が、どのアミノ酸を加えるかを指定する事例を観察した。



「この驚くべき発見は、生物学についての我々の理解がどんなに不完全かを反映する」、ユタ大学生化学部のポストドクターで筆頭著者のPeter Shen博士は言う。

細胞を工場であると仮定すると、リボソームはタンパク質組立てライン上の機械である。リボソームはDNAという遺伝子コードにより決められた順序で、アミノ酸をタンパク質に結合していく。

もし何かが間違った方向に進んだ場合、リボソームは立ち往生するかもしれない。するとそこへ品質管理の作業員が呼び出される。混乱を片付けるためにリボソームは解体されて設計図であるmRNAは廃棄され、既に一部が作られたタンパク質はリサイクルされる。

しかし、今回の研究はその品質管理チームのメンバーの驚くべき役割を明らかにする。そのメンバーはRqc2と呼ばれ、酵母から人間まで保存されているタンパク質である。不完全なタンパク質がリサイクルされる前に、Rqc2はリボソームに20種類のアミノ酸のうちたった2種類、アラニンとスレオニンだけを加えさせるよう促す。そして2つはどんな順序でも良い。

『指示』を失ったにもかかわらず動き続けるクルマの自動組立てラインを考えてみよう。その組み立てラインはできることを適当に見つけて、ひたすら組み立て続ける: ホーン-ホイール-ホイール-ホーン-ホイール-ホイール-ホイール-ホイール-ホーン。

余計なホーンとホイールがたくさん取り付けられた出来損ないの車のように、アラニンとスレオニンの明らかにランダムな配列が組み込まれた省略タンパク質は一見して奇妙であり、おそらく正常に機能しないだろう。

しかし、この無意味な配列はおそらく、特異的な目的のために役立つ。そのコードは、破壊されなければならない不完全なタンパク質であることを合図しているのかもしれないし、またはリボソームが適切に動作しているかを確認するためのテストの一部である可能性がある。

これらのプロセスのどちらか(または両方とも)は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病のような神経変性疾患において不完全である可能性をエビデンスは示唆する。



研究者は活動中の品質管理機構を急速に冷凍(flash freeze)し、低温電子顕微鏡法という技術を微調整して視覚化した。新しいRNAシーケンシング技術により、Rqc2/リボソーム複合体には立ち往生したタンパク質にアミノ酸を加える能力があることが示された。理由はRcq2がtRNAも結合したからである。彼らが観察した特異的なtRNAは、アミノ酸のアラニンとスレオニンを運ぶtRNAだけだった。

研究の決め手は、立ち往生したタンパク質には多くのアラニンとスレオニンから成る鎖が加えられると認められた時である。

記事出典:
上記の記事は、ユタ大学健康科学によって提供される素材に基づく。


学術誌参照:
1.Rqc2pと60Sリボソーム・サブユニットは、mRNAから独立したアミノ酸の伸長を仲介する。

Science、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150101142314.htm

<コメント>
いわゆるセントラルドグマを完全に無視する「タンパク質がタンパク質を作る」という流れが明らかになったという記事です。

下図の黄色がRqc2タンパク質、ダークブルーと青緑がそれぞれtRNAです。緑色で表された作りかけのタンパク質に、中央の明るい点の位置でアミノ酸が付加されている様子です。



2015年1月2日

2015-01-04 23:21:46 | 代謝

すべての太った人が過剰な体重と関連する代謝的な問題を生じるわけではない
Not all obese people develop metabolic problems linked to excess weight



ワシントン大学医学部のSamuel Klein医学博士たちの新しい研究によれば、肥満は必ずしも糖尿病や心疾患、脳卒中などにつながるような体内の代謝性変化と関連するわけではない。肥満者の中には肥満と関連する代謝的な異常がない人たちがいる。異常とは例えば、インスリン抵抗性、血中脂質の異常(高トリグリセリドと低HDLコレステロール)、高血圧、肝臓脂肪の過剰などである。

加えて、研究が開始したときにこれらの代謝的な問題がなかった人々は、体重がさらに増加したあとでさえ問題は発生しなかった。この研究結果は1月2日にJCIで発表される。



研究には20人の肥満者(BMI35前後、体重約100キロ)が参加し、数ヵ月間で体重を約15ポンド(6.8キログラム)増やすように求められた。余分な体重がどのように代謝機能に影響するかを確かめるためである。

「我々の目的は、参加者が毎日1,000キロカロリー余分なカロリーを消費してそれぞれの体重が6パーセント増えるまで研究することだった」、筆頭著者のElisa Fabbrini医学博士は言う。

「これは容易ではなかった。体重を減らすのと同じくらい、増やすのも困難である。」

被験者は全員、栄養士の管理下でファストフード店で食べることによって体重を増やした。研究者は、厳密に調節された一人前のサイズと栄養の情報を提供するファーストフード・チェーン・レストランを選択した。研究者は、被験者の体重増加の前後にそれぞれの体組成、インスリン感受性、血糖を調節する能力、肝臓の脂肪などの代謝的な健康状態を慎重に調べた。

その結果、研究が開始したとき正常範囲だった肥満被験者は、体重が増えた後も代謝性プロファイルは正常なままだった。しかし、研究が進む中で代謝性プロファイルがすでに異常だった肥満の被験者は、体重が増えた後の代謝性プロファイルが著しく悪化した。

「肥満の人々の中には中程度の体重増加による有害な代謝的影響から保護される人たちがいる一方で、それらの影響を受けやすい人もいることを我々の研究は証明する」、ワシントン大学ヒト栄養学センターのディレクターであるSamuel Klein医学博士は言う。

「この観察は臨床的に重要である。なぜなら肥満の人の約25パーセントには代謝性合併症(metabolic complications)が存在しないからだ」、彼は付け加えた。

「我々のデータは、彼らは体重が増えた後でさえ代謝的に正常なままであることを示す」、老人病医学部と栄養学部、そしてアトキンス肥満医学一流センター(Atkins Center of Excellence in Obesity Medicine)を管理するKleinは言う。

研究者は、代謝的に問題を持つ肥満者と正常な被験者を識別するためのいくつかの重要な測定値を特定した。1つは、肝臓内の脂肪(intrahepatic triglyceride)の存在である。異常代謝を持つ人々の肝臓には脂肪が多く蓄積した。

もう一つの違いには、脂肪組織の遺伝子の機能が含まれる。太っているにもかかわらず正常な代謝の人々は、脂肪の産生と蓄積を調節する遺伝子をより多く発現した。そして代謝的に正常な人々は、体重が増えたときでさえそれらの遺伝子の活性は増加した。それは代謝異常のある被験者には当てはまらなかった。

「これらの結果が示唆しているのは、健康なやり方で体脂肪が拡張して増加できれば、肥満と体重増加に関する代謝的な問題から保護されるという可能性である」、Kleinは言う。



研究が進む中、HBOのドキュメンタリー「国の重さ」で特集された。研究にフォーカスした10分間の特集は、以下のHBOビデオ中の42:10から始まる:

https://www.youtube.com/watch?v=-pEkCbqN4uo

記事出典:
上記の記事は、ワシントン大学医学部によって提供される素材に基づく。


学術誌参照:
1.代謝的に正常な肥満の人々は、体重増加の後でも有害な影響から保護される。

JCI、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150102172716.htm

<コメント>
太っている人の中には、血液検査などで異常が見られない代謝的に正常な人がいます。その正常な人と異常な人との違いは、皮下(subcutaneous)脂肪組織での脂肪生成(lipogenesis)に関する生物学的経路と遺伝子発現が増加するかどうかによるという記事です。

代謝的に問題がない人は、腹部などの皮下脂肪組織(abdominal adipose tissue)での脂肪生成やグルコース取り込みが増加して肥満による影響から守られますが、そうでない人は肝臓内の中性脂肪(intrahepatic triglyceride; IHTG)が蓄積して、インスリン抵抗性などの数字が悪化しました。

具体的な数字はというと、正常群では平均2.4%だったIHTGが体重増加後は3.9%になり、異常群では15.2%から22.8%に増大しました。肝臓の重量/体重比を3.0%程度とすると、被験者たちの体重は約100kgなので、肝臓内の中性脂肪の量は研究開始時で70g対450gと6倍以上も異なっていたことになります。

以前にも、肥満ながら代謝が正常な群と異常な群についての記事がCellに掲載されていました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/0944228ce81312199f7a259264b435d8
>肥満であるとされる人の4分の1は代謝的に健常で、2型糖尿病を発症する危険が高くない。肥満は糖尿病の重大なリスク因子だが、2つの条件は必ずしも連鎖していない。
>Cellで7月3日に発表される研究によれば、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)という分子のレベルが高い肥満の人は代謝性健康が劣っており、2型糖尿病のリスクの増加と関連がある。