機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

CB2アゴニストのNTRX-07はアルツハイマー病の治療薬として有望

2016-10-25 06:06:28 | 
Experimental drug shows promise in treating Alzheimer’s disease

October 25, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161025201713.htm

2016年アメリカ麻酔学会/ANESTHESIOLOGY(R) 2016で発表されるマウスの実験結果によると、NTRX-07という実験薬は神経の炎症を防ぎ、アルツハイマー病と関連する異常なタンパク質の凝集を取り除くことにより疾患の治療薬として有望であることが示唆されたという

アルツハイマー病の鍵となる重要な特徴は脳内のアミロイドプラークという異常なタンパク質凝集と、繊維のもつれた束tangled bundles of fibersである
これらの変化は脳に炎症を引き起こしてニューロンを傷つけてゆき、損傷の進行が記憶の喪失や混乱、そして認知症へとつながる
NTRX-07という新薬はそのような炎症を減少させる一方でニューロンを保護し、細胞の再生を保つようである

「NTRX-07はアルツハイマー病と関連する脳内の炎症を減少させる」
中心となった研究者lead researcherのMohamed Naguib M.D.は言う
彼はクリーブランド・クリニック・ラーナー医科大学/Lerner College of Medicineの一般麻酔科Department of General Anesthesiologyで麻酔科医physician anesthesiologistである

「NTRX-07は他の現在利用可能な薬剤とは異なるメカニズムで作用し、単なる対症療法ではなく疾患の原因を標的にする」


研究者たちはNTRX-07の記憶を回復する能力を明らかにしただけでなく、神経因性疼痛neuropathic painという複雑な慢性痛を治療する潜在能力についても研究している

「神経因性疼痛の患者は慢性的な神経の炎症が起きている」
Naguib博士は言う

「この化合物は、そのような炎症を抑制する」


今回の研究ではアルツハイマー病で見られるのと同様の神経変性を発生するようにしたマウスに対してNTRX-07をテストした

マウスを詳しく調べると、疾患に応じて生じた炎症は 脳内の免疫細胞であるミクログリアに変化を引き起こしていた
通常、この免疫細胞はアミロイドプラークというタンパク質の凝集を取り除く細胞である
アミロイドプラークがマウスの脳内に蓄積するにつれてミクログリアはそれらを除去することができなくなり、結果として炎症が起きて神経細胞が損傷し、認知能力の低下が引き起こされた

ミクログリアはその表面にカンナビノイド受容体2/cannabinoid receptor 2(CB2)という受容体が存在し、CB2が活性化されると炎症に対抗する応答/抗炎症応答が生じる
NTRX-07はCB2受容体を標的とするアゴニストであり、炎症を抑制して脳組織へのダメージを防ぐ
加えて、異常なアミロイドプラークの除去を改善し、記憶能力memory performanceや他の認知機能cognitive skillsを改善する

さらに、NTRX-07はSOX2というタンパク質のレベルを増大させる
SOX2は新たな脳細胞の発生を助け、アルツハイマー病患者の脳を保護することがこれまでに示されている
NTRX-07を投与したマウスはSOX2のレベルが正常レベルまで回復した一方で、プラセボを投与したマウスはSOX2レベルの低下を示し、
脳内の炎症が活性化し、アミロイドプラークの除去が悪化して、記憶能力は低下した


<コメント>
元の記事ではNTRX-07とNRTX-07が混在してますが、開発元のサイトを見るとNTRX-07の方が正しいようです
サイトにはNTRX-07が以前はMDA7と呼ばれていたとあります



関連記事
http://fface.exblog.jp/21526492/
Aβによる神経炎症はニューロリギン1/Neuroligin-1(NLGN1)をエピジェネティックに抑制してシナプスネットワークを破綻させるが、この神経炎症プロセスは新規に発見されたMDA7という化合物によって阻止された
クリーブランド・クリニックでは近い将来フェーズI試験を開始する予定である



関連記事
https://alzheimersnewstoday.com/2016/09/28/alzheimers-drug-targeting-cannabinoid-receptor-given-almost-2-million-to-move-to-clinical-testing/
NeuroTherapiaは既に治験薬/investigational new drug(IND)の申請を可能にするための研究を始めており、2017年半ばにはNTRX-07のヒトでの臨床試験を開始することを目標としている



関連サイト
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%82%AE%E3%83%B3
ニューロリギンはシナプス後部に存在する1回膜貫通型タンパク質であり、シナプス前末端に存在するニューレキシン(Neurexin: NRXN)の内因性リガンドであり、シナプスの成熟や機能を調整している




関連サイト
http://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%83%93%E3%83%8E%E3%82%A4%E3%83%89
カンナビノイド受容体として、7回膜貫通、Gタンパク質(Gi/Go)共役型のCB1受容体とCB2受容体の2つがある。
CB1受容体は脳などで多量に発現しており、神経伝達の抑制的制御に関与していると考えられている。
CB2受容体は脾臓や扁桃腺など、免疫系の臓器や細胞に多く発現しており、炎症反応や免疫応答の調節に関与していると考えられている。



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c5430d8634bdca32080281683490f6fd
α細胞によって作られたカンナビノイドは膵島に局在するCB1というカンナビノイド受容体を活性化し、細胞機能の分化に影響を与えることでβ細胞がグルコースに応じてインスリンを作る能力を増大させる



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/44dd380eae54a796f94b7b5fb5d93849
Aβオリゴマーは補体分子のC1qとC3を活性化し、C3はミクログリアの受容体CR3を通じてシグナルを伝達して、ミクログリアが脆弱なシナプスを飲み込むように刺激する
 

鏡写しの逆向き分子を届けてAβのオリゴマーを捕捉する

2016-10-22 06:06:50 | 
Treatment approach used in cancer holds promise for Alzheimer's disease

October 20, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161020103528.htm

アルツハイマー病の発症を防ぐための新たな治療法が開発された
これは薬剤を脳に運ぶ顕微鏡レベルの脂肪滴を使うのだという
この治療法は元々は癌細胞を標的にするために使われるが、今回初めてアルツハイマー病の治療として応用し、マウスの記憶を回復することに成功した
ランカスター大学の研究者を中心とした今回の研究はアルツハイマー病協会Alzheimer's Societyの出資によるもので、学術誌のNanomedicine: Nanotechnology, Biology and Medicineで発表された


この治療法で使われる微細な脂肪滴はナノリポソームnanoliposomeと呼ばれ、低濃度のアミロイドベータでも集積してプラークになるのを止めることが可能な『タンパク質の断片』によって覆われている
アミロイドプラークは有害なペプチドが凝集したもので、アルツハイマー病患者の脳内で神経細胞を損傷させる

今回の研究では遺伝子操作によりアルツハイマー病を発生させたマウスにナノリポソームを3週間注入した
実験の結果、薬剤を投与されたマウスは長期記憶を回復し、見慣れた物体familiar objectsを24時間後も認識できた
対照的に、プラセボを注入されたマウスは前日に見せられた物体を覚えていなかった

主な研究者Lead researcherであるDavid Allsop教授は次のようにコメントする
「今年夏の成功をうけて、体内の免疫系を利用してアミロイドを標的とする抗体薬への楽観的な見方が出てきた
しかしながら、もしうまくいくことが証明されても実際の治療はクリニックで点滴/IV dripによって投与しなければならないだろうし、潜在的に有害な副作用の可能性もある」

「ナノリポソームの使用は、有害なアミロイドプラークの形成を阻害するための代替手段を提供する
そしてそれは脳内の免疫応答を活性化することはない
我々の希望は、いつの日かこれが点鼻スプレーぐらい単純で非侵襲的な方法によって、患者が家にいながらにして/in the comfort of their own home投与可能になることだ」


ナノリポソームは既に、有害な化学療法薬を癌細胞に対してうまく差し向けるbetter targetために使われている
最近の研究では脂肪滴が鼻から脳内へ直接通過することも示されており、これはアルツハイマーのような脳の疾患に点鼻スプレーを使った治療の可能性への道を開く

痴呆の治療への革新的なアプローチの必要性について、アルツハイマー協会で研究開発のディレクターであるDoug Brown博士は次のようにコメントする
「痴呆症の新しい薬は15年近く出ておらず、我々は痴呆症の研究で重要な時期にいる
脳内へ薬剤を届ける新たなアプローチを探し出すsniff-out努力を続けることが不可欠だ
現在進行中の臨床試験を我々は期待して待っているが、アルツハイマー病協会は認知症に正面からhead-on取り組む革新的な研究にこれからも出資を続けていくだろう」

「ナノテクノロジーは様々なタイプの癌の患者に大きな利益を約束するが、いつの日かそれが最も一般的な認知症の人々にも同じ希望をもたらすというのはとてもエキサイティングなことだ」

イギリスには85万人の認知症患者がおり、現在利用可能な薬は進行を遅くすることはできず、対症療法だけである
ランカスター大学の研究チームは現在、彼らの新たな治療を患者で試験するために企業からの投資を探しているところである


http://dx.doi.org/10.1016/j.nano.2016.10.006
Retro-inverso peptide inhibitor nanoparticles as potent inhibitors of aggregation of the Alzheimer's Aβ peptide.
逆向き-逆異性体ペプチドによる阻害剤のナノパーティクルはアルツハイマー病と関連するAβペプチド凝集の強力な阻害剤である

※PEG: ポリエチレングリコール

Abstract
アミロイドベータペプチド/Amyloid-β peptide (Aβ) の凝集はアルツハイマー病 (AD) の病理発生において鍵となる重要なイベントである

我々は逆向き逆異性体/retro-inversoのペプチドであるRI-OR2-TAT (Ac-rGffvlkGrrrrqrrkkrGy-NH2) で修飾されたナノリポソームがAβの凝集と毒性に与える効果を調査した
in vitroでAβのオリゴマーと原繊維の形成を阻止するために必要な『ペプチド阻害ナノパーティクル/peptide inhibitor nanoparticles (PINPs)』の濃度は顕著に低く、Aβに対するリポソーム結合RI-OR2-TATのモル比が~1:2000で50%の阻止が生じた

PINPsはAβに高い親和性で結合し (Kd = 13.2–50 nM)、
前もって凝集したAβ/pre-aggregated Aβの有害な影響からSHSY-5Y細胞を保護rescueした

PINPsはin vitroの血液脳関門モデル (hCMEC/D3 cell monolayer)
を通過し、
C57/BL6系統のマウスの脳内に入り、
新規の対象認識テスト/novel object recognition testではAPPSWEトランスジェニックマウスを記憶の喪失から保護した

これまで我々がテストしてきた中で最も強力な凝集阻害剤であることから、我々はPINPsをアルツハイマー病の疾患を調整する潜在的な治療法/potential disease-modifying treatmentとして提案する


※RI-OR2-TATについて

※OR2: アミロイドβオリゴマーの形成を阻害する配列。Aβ(16-20)、つまりKLVFFのこと。Aβによるβシート形成は16-20残基から開始されるという。KLVFFを可溶化するために末端をRG-残基と-GR残基で挟む。OR1(RGKLVFFGR)とOR2(RGKLVFFGR-NH2)があり、OR1とOR2は共に原繊維の形成を阻害するが、OR2だけがオリゴマー化も阻害し、しかそれは神経芽腫由来のSH-SY5Yのみで阻害されたと報告されている
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18189413

※RI: Retro-Invertedの略で、意味は「逆向きの逆異性体」。アミノ酸の配列の方向が逆向きで、かつ各アミノ酸残基の鏡像対称性が反転されたもの

※RI-OR2: OR2を安定させるためにRI化したもので、配列はrGffvlkGr。体内で分解されにくくなるという
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20230062

※TAT: HIVウイルスのTATタンパク質(transactivation and transcription の略)。RI-OR2にTAT配列を付け加えた

Aβ(1-42)
DAEFRHDSGYEVHHQ KLVFF AEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA

Aβ(16-20)
KLVFF

Aβ(16-20)の逆配列
FFVLK



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ad6a0c46cb697f889d1d1df378c8058a
Aβ(25-35) はSH-SY5Y細胞にレヴィ小体の形成などパーキンソン病と関連する変化を引き起こす
 

Aβの断片がどのようにしてパーキンソン病を引き起こすのか

2016-10-19 06:06:40 | 
How protein fragments associated with Alzheimer's could trigger Parkinson's

October 12, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161012132529.htm

アルツハイマー病とパーキンソン病は異なる病態の神経変性疾患だが、時にはsometimes同じ人が両方に罹患することがある
その観察から科学者たちは二つの疾患の間にどのようなつながりがあるのかについての可能性を調査してきた
今回テキサス大学エルパソ校の研究チームは、アルツハイマー病と強い関連があるアミロイドベータというタンパク質の断片がどのようにしてパーキンソン病につながるような細胞の変化を誘発しうるのかを突き止め、ACS Chemical Neuroscience誌で報告した


これらの神経変性疾患の原因が何なのかはまだ完全には理解されていないが、調査によっていくらかの洞察が明らかになっている
例えば、これらの疾患の発症に際して、特定の分子の変化が要因として出現するemerged
そのような変化の一つに『プロテインジスルフィドイソメラーゼ/protein disulfide isomerase (PDI) 』という酵素の変化mutationがあり、PDIは通常ニューロンを保護している

そしていくつかの研究では、一方の疾患に関連するバイオマーカーが、他方の疾患につながる分子プロセスを刺激しうることが暗示されているhinted
テキサス大学エルパソ校のMahesh Narayanたちは、アミロイドベータの特定のタイプがどのようにしてパーキンソン病を誘発するような細胞の変化を引き起こすのかを調べたいと考えた

※プロテインジスルフィドイソメラーゼ: 次のような反応を触媒して分子内または分子間のS-S結合(ジスルフィド結合)の形成を促進する酵素
Pr-SH + X-S-S-X
↓↑
Pr-S-S-X + X-SH


彼らはAβ(25-35) という特定のアミロイドベータの断片をSH-SY5Yという細胞と共に培養incubateした
SH-SY5Yはしばしばパーキンソン病の研究で使われる細胞系統である(神経芽腫由来)
実験の結果、PDIの化学的な変化mutationやレヴィ小体の形成など、パーキンソン病と関連する一連の分子的変化が細胞に誘発された

この結果はアルツハイマー病の人がどのようにしてパーキンソン病にも罹患するのかに関する説明を提供する
加えて、このような状態が生じないよう防ぐための方法の発見を助けるかもしれない


http://dx.doi.org/10.1021/acschemneuro.6b00159
An 11-mer Amyloid Beta Peptide Fragment Provokes Chemical Mutations and Parkinsonian Biomarker Aggregation in Dopaminergic Cells: A Novel Road Map for “Transfected” Parkinson’s.
アミロイドベータの11分子ペプチド断片は化学的な変化ならびにパーキンソン病のバイオマーカーである凝集をドーパミン作動性細胞に引き起こす



Abstract
アミロイドベータ (Aβ) の凝集は一般にアルツハイマー病の発症と関連する
今回我々はドーパミン作動性細胞のSH-SY5YとAβペプチド断片(Aβの25番目から35番目のアミノ酸残基11からなる分子; Aβ (25–35))を共に培養し、
その結果として細胞内のニトロソ化ストレス/nitrosative stressが上昇し、
プロテインジスルフィドイソメラーゼ/protein disulfide isomerase (PDI) の化学的な変化/chemical mutationが誘発されることを実証する
PDIは小胞体/endoplasmic reticulum(ER)に局在し、
酸化還元反応を触媒する酵素のオキシドレダクターゼ・シャペロン/oxidoreductase chaperoneである

さらに、Aβ (25–35) はパーキンソン病のバイオマーカーであるシンフィリン1/synphilin-1やα-シヌクレイン/α-synucleinの凝集を両方とも刺激する

重要なことに、蛍光タンパク質を使った研究ではAβ (25–35) がこれらのパーキンソン病のバイオマーカーを共に局在colocalizationさせ、レヴィ小体様の凝集物が形成される引き金を引くことが実証された
レヴィ小体はパーキンソン病につながるニューロンの代謝カスケードneurometabolic cascadeにおいて重要かつ不可逆な節目である

加えて、蛍光アッセイではAβ (25–35) とPDI、そしてα-シヌクレインが直接の相互作用により凝集の核となることが明らかになった/direct, aggregation-seeding interactions
このことはニューロンの病理発生が プリオンと同様の『交差による移行性/cross-transfectivity』を介して生じることを示唆する

これらのデータは、ドーパミン作動性細胞におけるアルツハイマー病関連バイオマーカーの誘導が『増殖性/proliferative』であり、
浸透性の効果percolative effectを伴い、その効果は二重かつ独立したパーキンソン病の病理経路を介して行使されるexercisedことを示す
二つの内の一つはストレスに由来する経路で、もう一方はプリオン様の経路である

この結果はアルツハイマー病の負荷burdenを介するパーキンソン病の移行性transfectivityに関する新たな分子ロードマップを定義し、
アミロイドベータによって誘発されるパーキンソン病におけるPDIの関与を明らかにするものである


Aβ(1-42)
DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA

Aβ(25-35)
GSNKGAIIGLM


関連サイト
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20568731
The oxidoreductase behavior of protein disulfide isomerase impedes fold maturation of endoplasmic reticulum-processed proteins in the pivotal structure-coupled step of oxidative folding: implications for subcellular protein trafficking.
(PDIの酸化還元酵素としての振る舞いは、その構造と連結した酸化的折りたたみの中枢段階において、ERでプロセシングを受けるタンパク質の折りたたみ成熟を妨げる: 細胞下タンパク質輸送との関連)



関連サイト
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15890345
Abeta(31-35) and Abeta(25-35) fragments of amyloid beta-protein induce cellular death through apoptotic signals: Role of the redox state of methionine-35.
(アミロイドベータタンパク質断片のAβ(31-35)とAβ(25-35)はアポトーシスシグナルを通じて細胞死を誘導する: 35番目メチオニン残基の酸化還元状態の役割)



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b42d9618ca1ed178759eeabb2ed70437
APPからはβ-アミロイドとη-アミロイドが切り抜かれ、前者は神経細胞を過剰に活性化し、後者はその影響と拮抗する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4f45339247c461908bced75811084a23
短いAβは長いAβと比べて銅と結合する能力が1000倍も強く、フリーラジカルを生じないように包み込む



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2d16bcb0230e8b4d238eced8f25fe006
Aβ(1-42)は凝集して形を変えてから細胞内に取り込まれる



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160613090719.htm
Aβ(1-42)やAβ(1-6)N末端断片と細胞膜との相互作用を調査する
 

カスパーゼによって切断されたタウが神経変性につながる

2016-10-16 06:06:13 | 
How protein tangles accumulate in brain, cause neurological disorders

The appoptosin protein initiates a path that leads to the accumulation of tau, a key component of brain lesions

September 2, 2015

https://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150902134925.htm

サンフォード・バーナム・プレビス医学研究所/Sanford Burnham Prebys Medical Discovery Institute (SBP) による新たな研究は、お互いに類似しているが遺伝学的には関連のない神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、前頭側頭型認知症/frontotemporal dementia(FTD)、進行性核上性麻痺/progressive supranuclear palsy(PSP)がどのようにしてタウタンパク質によって引き起こされるのかについての理解を一歩前進させる
Neuron誌で発表された今回の研究結果は、この鍵となる重要なタンパク質を標的とするための新たな機会をもたらす
タウは運動機能の低下や認知症患者の脳の病巣lesionsで見られるタンパク質である

「我々の研究は『アポプトシンappoptosin』というタンパク質がどのようにしてタウの凝集物である『もつれtangle』を増やすのかを示す
もつれたタウは脳に有害であり、中枢神経系を徐々に劣化progressive deteriorationさせていく」
サンフォード・バーナム・プレビスで変性疾患プログラムの教授であるHuaxi Xuは言う

「アポプトシンがどのようにしてこのプロセスを促進するのかを理解することにより、プロセスを引き起こす重要なポイントを阻害するための方法を調べることができる
それはもしかするとこの種の神経変性疾患、いわゆるタウオパチーtauopathyの進行を遅くすることが可能かもしれない」


タウオパチーとは何か?
What are tauopathies?

タウオパチーは不規則irregularにもつれtangleて凝集したタウタンパク質が脳内に存在し、疾患が進行するにつれて蓄積していくことを特徴とする神経変性疾患である
タウのもつれはアルツハイマー病や進行性核上性麻痺(PSP)のような多くの疾患で現れるため、タウはニューロンや脳の機能不全を引き起こす重要な要素であるように思われる
しかしながら、PSPのような疾患がどのようにして起きるのか、そしてタウのもつれが似たような原因で生じるのかどうかはよく分かっていない

タウは微小管という中空hollowで長い筒状の構造物の完全性を維持するタンパク質であり、微小管は細胞の構造を支えるための主な構造要素major structural elementsである
ニューロンからは微小管によって軸索axonが長く突き出し、それによりニューロンは長距離のシグナルを迅速に伝えてお互いに通信することが可能になる

タウが過剰リン酸化hyperphosphorylationによって異常な修飾を受けたり、カスパーゼ3のような酵素によって切断されると(カスパーゼそれ自体が過剰リン酸化も促進しうる)、タウはその生物学的な活性を失って立体構造が変化conformational changesして、蓄積してもつれを形成するようになる

カスパーゼ3がどのようにしてもつれたタウの凝集tau aggregation in tanglesを誘発するようになるのかはほとんどわかっていなかったため、タウの切断と凝集につながる一連のイベントを特定することはタウオパチーの予防と治療にとって最も重要な目的の一つである


論文の重要な発見
Key findings of the paper

今回の論文では進行性核上性麻痺(PSP)のような神経学的なタウオパチー疾患におけるアポプトシンの全く新しい役割に光を当てている
PSPは脳内にタウが凝集する神経疾患であり、患者はバランス、眼球運動、思考に関して深刻な問題を経験する
PSPの遺伝学的、生物学的な原因は不明である

今回の研究でPSP患者を調査した結果、DNA配列の一塩基の変化、いわゆる一塩基多型/single nucleotide polymorphism (SNP) が疾患と関連し、アポプトシンのレベルの上昇と相関することが明らかになった
アポプトシンレベルの上昇はカスパーゼを介するタウ切断を増加させ、タウ凝集とシナプス機能不全を増大させた

神経変性を引き起こす要因のアポプトシンならびにカスパーゼ3によって切断されたタウはアルツハイマー病と前頭側頭型認知症(FTD)の患者の脳サンプルでも過剰に活性化していることが明らかになっており、これらの神経変性疾患でもそれらが重要な要因であるという考えを支持する


「神経原線維のもつれneurofibrillary tanglesを引き起こすメカニズムのさらなる理解は臨床的に重要であり、タウオパチーを予防し、治療するための治療戦略を開発するために役立つ」
Xuは言う

「我々の研究結果はアポプトシンとカスパーゼ3のどちらかまたは両方が、これらの神経変性疾患の治療において潜在的な標的かもしれないことを示唆している」


http://dx.doi.org/10.1016/j.neuron.2015.08.020
Appoptosin-Mediated Caspase Cleavage of Tau Contributes to Progressive Supranuclear Palsy Pathogenesis
アポプトシンを介してタウがカスパーゼによって切断されることは、進行性核上性麻痺の病理発生に寄与する
Yingjun Zhao et al.


Highlights
・SNP (rs1768208) のTアレルはPSPならびにアポプトシンレベル上昇と関連する
・アポプトシンレベルはカスパーゼ3活性化ならびにカスパーゼによるタウの切断と相関する
・アポプトシンの上方調節は運動障害と病理悪化につながる
・アポプトシンに依存的な病理発生は主にカスパーゼ活性とタウに依存する


Summary
進行性核上性麻痺/progressive supranuclear palsy (PSP) はタウ神経病理tau neuropathologyを特徴とする運動障害だが、その根底のメカニズムは不明である
SNP (rs1768208 C/T) はPSPの強いリスク要因であることが確認されている

今回我々はPSP患者においてTアレルの割合が著しく高いことを突き止め、アポトーシスを促進pro-apoptoticするタンパク質のアポプトシンappoptosinのレベルが上昇していることを明らかにした
アポプトシンの上昇はカスパーゼ3の活性化ならびにカスパーゼによって切断されたタウレベルと相関する
アポプトシンの過剰発現はカスパーゼを介するタウの切断とタウの凝集、シナプス機能不全を増加させた一方で、アポプトシンの欠乏はタウの切断と凝集を減少させた
アポプトシンの形質導入transductionはタウ・トランスジェニックマウスにおいて複数の運動機能を損ない、神経病理を悪化させ、それはカスパーゼ3とタウに依存的だった/in a manner dependent on caspase-3 and tau
アポプトシンならびにカスパーゼ3によって切断されたタウの増加は、アルツハイマー病とタウ封入体があるFTD患者の脳サンプルでも観察された

我々の研究結果は、タウ神経病理を持つ神経変性疾患におけるアポプトシンの新規の役割を明らかにすると共に、カスパーゼ3を介するタウ切断をシナプス機能不全ならびに行動/運動障害へとつなげるものである



関連サイト
http://www.alzforum.org/news/research-news/killer-cleavage-appoptosin-stokes-tauopathy-through-caspase-3
A Slow Death.


>In this model, increasing appoptosin expression driven by a PSP risk allele triggers a caspase cascade that promotes synaptic dysfunction and neurodegeneration through cleavage of tau.
[Courtesy of Zhao et al., Neuron, 2015.]
(このモデルでは、rs1768208のPSPリスクアレルTによって促進されるアポプトシンの増大がカスパーゼカスケードの引き金を引き、それがタウの切断を通じてシナプス機能不全と神経変性を促進する)

アポプトシンが増加→グリシンからデルタ-アミノレブリン酸(δ-ALA)が合成される→ヘムの合成が増加→アポシトクロムcにヘムが挿入されて成熟型のホロシトクロムcが増加→シトクロムcとAPAF-1が結合して七量体化したアポプトソームappoptosomeによりプロカスパーゼ3がカスパーゼ3に成熟→タウタンパク質がカスパーゼ3によって切断され、断片が凝集し、神経原線維変化(NFT)やシナプス機能不全につながる

※アポプトソーム: アポトーシスプロテアーゼ活性化因子1(APAF-1)とシトクロムcの複合体が七量体化したもの。ミトコンドリアから放出されたシトクロムcとAPAF-1が結合してコンフォメーションが変化し、七量体が形成される。アポプトソームはカスパーゼ9をリクルートして活性化し、基質を切断してアポトーシスを引き起こす



関連サイト
https://pdbj.org/mom/177
シトクロムc(赤)が別のタンパク質APAF-1(青・紫)と結合し、集まって7回対称の環状構造を作る。シトクロムcはアポトソームのCARDドメイン(紫)と結合して活性化される




関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2f69e68999aaf91e1daa22758545d605
タウの凝集による核膜の乱れが脳細胞を殺す



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2012/11/121109111509.htm
アポプトシンappoptosinはヘム合成を促進してROSを増加させ、神経変性と細胞死を促進する

http://dx.doi.org/10.1523/JNEUROSCI.3668-12.2012
Appoptosin is a Novel Pro-Apoptotic Protein and Mediates Cell Death in Neurodegeneration.
新規のアポトーシス促進タンパク質であるアポプトシンは神経変性における細胞死を仲介する

https://www.researchgate.net/figure/232745849_fig7_Figure-9-Scheme-of-appoptosin-mediated-apoptotic-pathway-in-neurodegeneration
アポプトシン→ミトコンドリアがグリシンを取り込む→グリシンからデルタ-アミノレブリン酸(δ-ALA)を生成→2分子のδ-ALAが脱水縮合されて最終的にプロトポルフィリンIXが作られ、フェロキラターゼによって鉄が挿入されてヘム合成→ROS↑


 

膠芽腫はコレステロール取り込みのスイッチを切れないようにする

2016-10-15 06:06:54 | 
How a brain tumor's greed for cholesterol could be exploited for cancer therapy

October 13, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161013130100.htm

ルートヴィヒがん研究所/Ludwig Cancer Researchの研究者は、膠芽腫/glioblastoma (GBM) の代謝的な脆弱性を明らかにし、それがどのように治療として利用可能になりうるのかを示した
膠芽腫は悪性の脳腫瘍で、現在の医学で治癒することはない
この研究を主導したのはルートヴィヒ・サンディエゴ支部のPaul Mischelと、スクリップス研究所/The Scripps Research Institute (TSRI)のBenjamin Cravattである
彼らはGBM細胞が生き残るために大量のコレステロールを取り込むことを実証し、その取り込みのメカニズムが現在開発中の薬剤のような分子で特異的specificallyかつ効果的effectivelyに攻撃undermineできることを示した
彼らの論文はCancer Cell誌の今号で発表される

※1971年にDaniel K. Ludwigによってルートヴィヒがん研究所が設立され、2006年にはアメリカに6箇所のセンターが設立された
支部はサンディエゴの他、ブリュッセル、ローザンヌ、メルボルン、オックスフォード、ストックホルム、ウプサラに存在する


これまでGBMのドライバとなるゲノムや変異した遺伝子(癌遺伝子oncogene)が徹底的に研究されてきたものの、そのような分析を基にして選別された薬剤がGBMの患者に有益だと証明されたことはない
これまでの臨床試験で評価されてきた標的治療の多くは血液脳関門をほとんど通過せず、薬剤が届かないことによる用量の不足が腫瘍の薬剤抵抗性を促進する

「研究者たちはこの問題に対処する方法について考えてきた」
Mischelは言う

「癌遺伝子は生化学的な経路を配線し直し、癌遺伝子そのものがコードしないタンパク質に依存するようになる
そのような観察からアプローチの一つが生まれた」

そのようにして『癌遺伝子によって誘導される共依存性/oncogene-induced co-dependencies』を標的にすることは、薬局方pharmacopeiaへの道を広く開いた
例えば、伝統的には抗癌剤の伝達経路pipelineの一部とはされていなかったが、より効果的な薬理学的性質を持つ薬剤を使うことなどである

脳はコレステロールを調節する独特のシステムを持つことから、そのような標的を探し始めるにはもってこいの場所good placeだと思われた
体内の総コレステロールの約20パーセントが脳内に存在するが、それが外からやってくることはない
アストロサイトという脳細胞が脳内のコレステロールのほとんどを作り、神経細胞の細胞膜や髄鞘という絶縁体の重要な構成要素となったり、様々なシグナル伝達分子の材料となる


今回の研究では、GBM細胞が外から取り込まれるコレステロールに極端に依存することが示された
なぜならGBM細胞は自らコレステロールを作ることはなく、そして細胞が増殖するためにはコレステロールが必要だからである
GBM細胞は確実にコレステロールを手に入れるため、取り込みのコントロールimport controlsを停止させてスイッチが切れないようにする

正常な細胞は十分なコレステロールがある時、そのいくらかをオキシステロールoxysterolという分子に変換する
オキシステロールは細胞の核内で肝臓X受容体/liver X receptor (LXR) という核内受容体を活性化させ、コレステロールの取り込みuptakeを止めるのを助ける

「そのため、正常な細胞は十分なコレステロールが手に入ると、コレステロールを作るのも取り込むのも止めて、外へと汲み出し始める」
Mischelは言う

「GBM細胞ではこのメカニズムが完全に中断disruptedされていることを我々は発見した
GBM細胞は脳内の寄生虫のようにコレステロールを盗み、それをオフにするスイッチがない
コレステロールをひたすら飲み込み、食い尽くすgobble up」

MischelたちはGBM細胞がオキシステロールの産生を抑制することを示した
そうすることで確実にLXRを活性化しないままにするのである


彼らはAndrew Shiauたちを中心とするルードヴィヒ小分子開発チームとの共同研究で、代謝疾患用の実験薬の候補であるLXR-623がLXRを活性化することを突き止めた
LXR-623がマウスの血液脳関門を容易に通過したことを確認した後、ヒトの患者に由来するGBM腫瘍をマウスに移植してLXR-623の効果を調査した

「LXR-623でGBM細胞によるコレステロールの取り込みを中断させると、癌には劇的な細胞死が引き起こされて腫瘍は著しく縮小し、マウスの寿命は延長された」
Mischelは言う

「この戦略は我々が調べたGBM腫瘍のそれぞれ全てで作用し、脳に転移した他のタイプの腫瘍に対してさえ作用した
また、LXR-623はアストロサイトや体内の他の組織には最小限の影響しかなかった」

Mischelによると、彼らが考案したGBMの治療戦略は現在開発中または臨床試験に入っている関連薬剤を使った試験で実施される可能性があるという


http://dx.doi.org/10.1016/j.ccell.2016.09.008
http://www.cell.com/cancer-cell/abstract/S1535-6108(16)30443-3
An LXR-Cholesterol Axis Creates a Metabolic Co-Dependency for Brain Cancers.
LXR-コレステロール経路は脳腫瘍のための代謝的な共依存を作り出す



Highlights
・膠芽腫 (GBM) の細胞は生存のために外来性のコレステロールに依存する
・GBM細胞は、コレステロールの合成、LXRのリガンドの合成を抑制する
・脳に浸透するLXRアゴニストはコレステロール依存的なやり方でGBM細胞を殺す


Summary
増殖因子の受容体を標的とする小分子阻害剤は、脳腫瘍に効能を示すことに失敗してきた
それはもしかするとpotentially、中枢神経系(CNS)における十分な薬剤レベルを達成できないためかもしれない

腫瘍の癌遺伝子以外の共依存を標的とすることは、代わりとなるアプローチを提供する
脳への高い浸透性を持つ薬剤を突き止めることができた場合は特にそうである

今回我々は非常に致命的な脳腫瘍である膠芽腫(GBM)が生存のためコレステロールに著しくremarkably依存し、それにより腫瘍がLXRアゴニスト依存的な細胞死に対して脆弱になることを実証する

我々は臨床的に利用可能なLXR-623が脳への浸透性が高いLXRαパーシャルアゴニスト/LXRβフルアゴニストであることを示す
LXR-623はLXRβに依存的かつコレステロールに依存的なやり方でGBM細胞を選択的に殺し、マウスモデルで腫瘍の退縮を引き起こして生存を延長した

ゆえに、代謝的な共依存は、成長因子が活性化した中枢神経系の癌を殺すための薬理学的な手段を提供する



関連サイト
http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2013_1/131203_2.htm
コレステロール↑→LXR↑→ABCA1,ABCG1↑



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f38eb9a3516173d01b6e079f2103c6e5
肺に転移した乳癌は代謝を変化させる



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25511375
乳癌細胞は脳に転移するとグルコースに依存しない増殖を獲得する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f50bb32f65b1eb6f7631444c596ae88f
ヒトのアストロサイトの機能が初めて調査される
 

肺に転移した乳癌は代謝を変化させる

2016-10-14 06:06:15 | 
Scientists uncover how spreading cancer adapts to its environment

October 11, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161011125642.htm

転移する腫瘍細胞は、自らの代謝を特定の臓器に適応させることが可能である
この結論はベルギーのルーヴェン・カトリック大学/Katholieke Universiteit Leuven 内にあるフランダース・バイオテクノロジー研究機関/Flanders Institute for Biotechnology(VIB-KU Leuven)がCell Reports誌で発表した論文の骨子gistである
VIB-KU Leuvenの研究者たちは乳癌の腫瘍から転移した肺癌を分析し、それら二つの腫瘍が異なる方法で栄養素をバイオマス材料biomass building blocksへと変換することを発見した
この発見により、癌細胞の代謝を標的として腫瘍の成長を止めるための新たな治療法の開発が可能になるかもしれない

Sarah-Maria Fendt教授の研究グループがこのプロジェクトを始めた時、肺に転移した乳癌を調べることに決めたのは偶然ではない
スクリーニングの増加と治療の改善により乳癌そのもので亡くなる人の数はだんだん減少しているにもかかわらず、乳癌から他の臓器への転移は乳癌による死亡の90パーセントという途方もないwhopping割合を占めている
加えて、乳癌が転移した患者の中で生き残るのはわずか22パーセントに過ぎない


環境は遺伝よりも優先される
Environment overrides genetics

現在のモデルによれば、癌細胞が環境から取り込んだ栄養素を 成長するためのバイオマス材料へとどのように変換するのかを規定するのは『遺伝子の異常/genetic aberrations』である
その帰結として転移した乳癌の治療は元となった腫瘍の遺伝的な背景を基にして行われるが、それらの治療はしばしば失敗する
Sarah-Maria Fendt教授たちはこの問題の鍵となる要素を明らかにしたのかもしれない

Fendt教授は次のように説明する
「細胞がバイオマス材料biomass building blocksを作り出すために利用する主な代謝経路には、二つの経路が存在する
乳癌の原発性腫瘍primary tumorsから肺へと転移した二次性腫瘍secondary tumorsの『in vivoの癌細胞』は、元の腫瘍と比較して二つの内の別の経路を使う傾向があることを我々は発見した
これは肺の微小環境内のわずかな変化への応答であり、癌に特異的な遺伝子の影響よりも優先されるoverride」


テーラーメイドな新薬
Tailored new medicines

癌の治療のいくつかは直接に腫瘍細胞の代謝を標的とするが、今回の研究は転移した癌は元の腫瘍とは異なる薬剤で治療すべきであることを暗示するimply

Sarah-Maria Fendt教授は次のように説明する
「将来我々の発見は、進行した乳癌の患者に利用されるようになるかもしれない
しかしまず我々は基本的な路線を守り、腫瘍の微小環境によって他のどの代謝経路が影響を受けるのかを調査するつもりだ
また、我々は癌が転移を始めた時点での微小環境の役割を調査しようと思う
そうして我々は腫瘍の成長のあらゆる要素/変数parameterにもっと光を当てていく
それはより正確で効果的な癌に対する治療を開発するために必要な、決定的な情報である」


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.09.042
Breast Cancer-Derived Lung Metastases Show Increased Pyruvate Carboxylase-Dependent Anaplerosis.
乳癌由来の肺転移は、ピルビン酸カルボキシラーゼに依存的な補充反応の増加を示す


※ピルビン酸カルボキシラーゼ/pyruvate carboxylase (PC): 糖新生の律速酵素で、ピルビン酸とオキサロ酢酸の相互変換反応を触媒する。アセチルCoAにより促進される


Highlights
・肺転移は原発乳癌よりもピルビン酸カルボキシラーゼ(PC)に依存的な補充反応anaplerosisが高い
・PCに依存的な補充反応は、in vivoの微小環境の機能functionである
・in vivoの肺微小環境では、グルタミンよりもピルビン酸の利用可能性availabilityが増大する
・区画に特異的なピルビン酸の配分は、13Cラベリングパターンにより推量することが可能である

※anaplerosis/ anaplerotic reaction: アナプレロティック反応。補充反応


Summary
細胞の増殖はトリカルボン酸回路/tricarboxylic acid (TCA) cycleからの補充refillingに依存し、TCA回路はバイオマス産生を支える(補充反応anaplerosis)

細胞の補充反応の経路には主に二つあり、『グルタミンからα-ケトグルタル酸への変換』と、ピルビン酸カルボキシラーゼ/pyruvate carboxylase (PC) を介する『ピルビン酸からオキサロ酢酸への変換』がある
癌はしばしば臓器特異的にそれぞれの経路への依存を示すが、異なる組織に転移した際に補充反応のやり方を臓器に適応させるのかどうかは知られていない

我々はin vivoで13Cトレーサーを使った分析を実施し、乳癌由来の肺転移においてPC依存的な補充反応を計測して原発腫瘍と比較した
調査の結果、肺転移は原発乳癌と比較してPC依存的な補充反応が高いことが明らかになった

我々はin vitroの分析と数学モデルを元に『区画compartmentに特異的な代謝産物の濃度』を定量化determinationし、ミトコンドリアのピルビン酸濃度が 酵素反応速度enzyme kineticsを介して PC依存的な補充反応を促進しうることを発見した

結論、肺転移として増殖する乳癌細胞は肺の微小環境に応じてPC依存的な補充反応を活性化させることを我々は示す



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25511375
乳癌細胞は脳に転移するとグルコースに依存しない増殖を獲得する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f2c26e0f57a3ab816dc42885092e26cc
非小細胞肺癌はグルコースが欠乏するとPEPCKでグルタミンを使う




関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/24a6d50bbf1153b6a5ea9a1200a9c6c3
癌はなぜ肺に転移しやすいのか



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

はぁ?


アポE4を『良い』タンパク質に変える方法

2016-10-12 06:06:18 | 
Enzyme treatment of gene may reverse effects of Alzheimer's

October 5, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161005162446.htm

過去20年間、研究者たちはアルツハイマー病の脳内で生まれるsproutアミロイドベータ・ペプチドと『プラーク』を研究の主な標的として焦点を当ててきた
しかし、患者を衰弱debilitatingさせていくこの神経変性疾患の治療における進歩のペースは悲惨なほどに遅く、完全な治癒などは言うまでもなくありえないことだった

先月Journal of Alzheimer's Disease誌で発表されたテルアビブ大学(TAU)の研究で、アルツハイマー病研究の新たな標的遺伝子が示された
このAPOEという遺伝子はジキル博士とハイド氏のように二つの顔を持ち、健康なタイプのアポE3遺伝子(APOE3)と、疾患と関連するアポE4遺伝子(APOE4)がある
今回の研究で彼らは『悪い』APOE4を『良い』APOE3へと変換する全く新しいメカニズムとアプローチを開発したのだという
この研究はDaniel M. Michaelson教授を中心とするもので、彼はアイヘンバウム・アルツハイマー病研究所/Eichenbaum Laboratory of Alzheimer's Disease Researchの所長directorであり、テルアビブ大学生命科学部/TAU's Faculty of Life Sciencesの神経変性分子学科/Molecular NeurodegenerationではMyriam Lebach Chairの在職者incumbentでもある


新しいアプローチに焦点を合わせる
Focus on a new approach

Michaelson教授は言う
「APOE4は非常に重要な標的であり、ずっと研究されてきている
アルツハイマー病患者の60パーセント以上がAPOE4を発現するため、APOE4に対する治療は患者に大きなインパクトがあると予想されている」

「通常のAPOE遺伝子は脂質lipidsを移動させるための相互伝達の手段/インターフェースinterfaceを提供し、自然に生じる分子、例えば脂肪、コレステロール、脂溶性ビタミンや細胞の機能に必要な要素を細胞の内外に出し入れする
健康なAPOE3はそれを効率的に行うが、悪いAPOE4ではうまくいかない」


Michaelson教授たちは以前の研究で、APOE4とAPOE3は『脂質の積荷lipid cargo』との相互作用が異なることを発見している
例えばAPOE3はAPOE4よりもかなり多くの脂質と結合するassociatedのだという

彼らはAPOE4の『悪い』特徴を計測するための実験アプローチを考案deviseし、『良い』APOEか『悪い』APOEのどちらかを発現するように遺伝子を操作したマウスを作成した
APOE4を持つマウスは学習と記憶の障害を示し、脳のシナプスが損なわれており、アルツハイマー病の病理学的な特徴であるリン酸化したタウとアミロイドベータ分子が蓄積していた


悪い遺伝子を良い遺伝子に変える
Turning a bad gene to good

「このモデルを確立してAPOE4の病理学的な影響をマウスで再現できるようにした我々は、治療アプローチをテストしてAPOE4そのものに取り組むことができるようになった」
Michaelson教授は言う

「APOE4の脂質を運ぶ量が少ないことを知っていた我々は、『脂質化の不足/lipidation deficiency』を相殺counteractするための手段を探索し、APOE4に『脂質の積荷/lipid cargo』を積み込むloadための酵素であるABCA1という酵素の仕組みに焦点を当てた
研究の結果、APOE4の脂質化の欠陥/impaired lipidationは、ABCA1を活性化することによってうまく相殺reverseできることがわかった
さらに重要なことに、APOE4の脂質化の増加/increased lipidationは、何も処置していないAPOE4マウスで観察される行動の欠陥と脳の損傷を無効化reverseすることが判明した」

実験前は失見当識な振る舞いdisoriented behaviorを示し、文字通りの意味で『迷って』いたマウスは、一連の処置の結果、人工の池の真ん中に沈んだ水中の島submerged islandを探し当てることが可能になった
APOE4マウスはありふれた物体(コカコーラのボトルのような)でも忘れてしまうが、処置後のマウスは突然物体をはっきり認識するようになった


「一つの治療でアルツハイマー病の全ての面をカバーできるような、そんな魔法の弾丸は本当に存在するのか?
そんなものはありえない」
Michaelson教授は言う

「したがって、アルツハイマー病患者の集団populationの半分以上に悪影響を与えるAPOE4のような、アルツハイマー病の遺伝的なリスク要因を持つ特定の下位集団subpopulationsを確定し、それを標的とする治療を開発する必要がある」


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27567858
ABCA1 Agonist Reverses the ApoE4-Driven Cognitive and Brain Pathologies.
ABCA1アゴニストは、アポE4によって促進される認知と脳の病理を無効化する

Abstract
アポリポタンパク質Eのɛ4アレル(apoE4)はアルツハイマー病(AD)の遺伝的なリスク要因としては最も広く見られ、したがって有望な治療の標的である

ヒトと動物モデルによる研究では、apoE4の脂質付加の低さhypolipidatedが示唆されている

我々は以前、レチノイドX受容体/retinoid X receptor (RXR) のアゴニストであるベキサロテンbexaroteneが、ABCA1を上方調節することを示した
ABCA1は apoEに脂質を付加lipidateする主なタンパク質でもある
ベキサロテンがABCA1を上方調節する結果としてapoE4の脂質付加lipidationが増加し、その後apoE4の病理学的な影響(Aβ42の蓄積と過剰リン酸化タウ、シナプス数を示すマーカーレベルの減少、認知障害)が無効化reversalされる

RXR系には多数の標的があるため、ABCA1だけを選択的に活性化する手段を編み出すdeviseことが重要である
今回我々はin vitroでABCA1を直接活性化することが示されているCS-6253というペプチドを使い、これがapoE4の脂質化の程度にどれぐらい影響し、そして関連する脳と行動の病理を相殺counteractしうるのかという範囲をin vivoで調査した
実験の結果、apoE4を標的として置き換えた若いマウス/young apoE4-targeted replacement miceに対してCS-6253を投与すると、apoE4の脂質化lipidationは増大することが明らかになった
apoE4は海馬ニューロンにおけるAβ42の蓄積とタウタンパク質の過剰リン酸化、シナプス損傷と認知障害を促進driveするが、apoE4の脂質化の増大はそれらの無効化reversalと関連した

これらの研究結果は、apoE4のin vivoでの影響は ABCA1の活性化の低下 ならびに apoE4の脂質化の欠陥 と関連することを示唆し、その下流の脳関連病理と認知障害はABCA1アゴニストのCS-6253を投与することで相殺されうることを暗示するsuggest
これらの結果には重要な臨床的副産物ramificationsがあり、apoE4と関連するAD治療にとって有望な標的としてABCA1を提唱するものである



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b17271081045552783a35515421b8015
脳内のコレステロール排出が認知症に重要



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160628114612.htm
抗HIV薬のエファビレンツは低用量でCYP46A1を活性化して脳内のコレステロールを除去し、Aβによるプラーク形成をマウスで抑制する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/39fb7580cfaf1dd51d0ac23e6cc2bd55
TREM2はアポリポタンパク質に結合し、ミクログリアによるAβの取り込みを促進する
リポタンパク質はアミロイドベータ凝集物と複合体を形成し、LDLとAPOJが存在するとミクログリアのAβを飲み込む効率はさらに上昇する
ミクログリアによるリポタンパク質-Aβ複合体の取り込みはTREM2に依存していた



関連サイト
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25817253
VEGF Mediates ApoE4-Induced Neovascularization and Synaptic Pathology in the Choroid and Retina.
(VEGFはアポE4による血管新生とシナプス病理を仲介する)
アポE4マウスはアポE3マウスと比べて網膜でのVEGFが低く、シナプスや機能に障害が見られる
レーザーで脈絡叢を損傷させるとアポE4マウスはE3マウスよりもVEGFが多くなり、血管新生が強く見られる



関連サイト
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27372644
Reversal of ApoE4-Driven Brain Pathology by Vascular Endothelial Growth Factor Treatment.
(アポE4による脳の病理はVEGF処置により覆る)
 

シナプスのストレス対処の異常がパーキンソン病につながる

2016-10-10 06:06:02 | 
Research uncovers a new disruption at the root of Parkinson's disease

October 7, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161007123251.htm

ルーヴェン・カトリック大学/Katholieke Universiteit Leuven(KU Leuven)フランダース・バイオテクノロジー研究所/Flanders Institute for Biotechnology(VIB)のPatrik Verstreken教授(VIB-KU Leuven)の研究チームは、脳内のストレスに対処するメカニズムstress-coping mechanismsの機能不全がパーキンソン病の根本であることを最先端の研究で初めて示した
パーキンソン病を引き起こす遺伝子変異は、激しい脳の活動によるストレスにシナプスが対処するのを妨げる
これがシナプスにダメージを与え、そして脳のシグナルの伝達を中断する

彼らはこの発見を基に、機能不全を修正して正常なシナプス間コミュニケーションを再確立するための戦略を発見できるのではと考えている
今回の研究結果は一流専門誌leading trade journalのNeuron誌で発表される

※VIB: Flanders Institute for Biotechnology。Flanders = Vlaanderen。フランダース、フランドル、フランデレン

Patrik Verstreken教授は脳研究が専門で、特に興味があるのはシナプスである
シナプスはニューロン同士がお互いに接続して電気的なシグナルを通じてシグナルが伝達する場所であり、パーキンソン病など様々な脳疾患でシナプスでのコミュニケーションが損なわれる

Patrik Verstrekenは次のように説明する
「シナプスは莫大な量の電気的シグナルを伝えなければならず、ニューロンの中にはわずか1秒間の間にそのようなシグナルを800回以上も発するfireものがある
我々はシナプスの接続が そのようなシグナルの『弾幕barrage』に対処するための特別なメカニズムを発達させることを発見した
しかしながら、もしもそのメカニズムの一つが適切に機能しなければ神経細胞のストレスは蓄積し、シナプスにダメージを引き起こして最終的には神経変性につながる」


シナプス機能の維持
Maintaining synaptic function

Verstreken教授のチームは様々なタイプの対処メカニズムを調査し、その内の一つがパーキンソン病では破綻していることを明らかにした
この異常は特にシナプスに影響を与え、既知の様々な遺伝的要因を伴う

Patrik Verstreken教授が説明する
「我々の研究は、シナプスの機能不全をパーキンソン病と非常に深く関連付ける初めてのものだ
今回の研究のほとんどでは疾患メカニズムを理解するためにショウジョウバエを使った
今は同一のストレス対処メカニズムがヒトの患者でも破綻しているかどうかを調べることに興味がある
ヨーロッパ神経科学研究所/European Neuroscience Institute(ドイツ・ゲッティンゲン/Göttingen)のIra Milosevicを中心とする共同研究者たちは、既にマウスのニューロンで非常に似た発見をしている
どのケースでも、パーキンソン病の治療でシナプス機能を維持するための戦略を見つけることが決定的に重要であることを今回の研究は我々に伝えている」


将来の研究
Future research

この研究結果を基に彼らは、パーキンソン病においてストレス対処メカニズムの破綻がどれほど普遍的かということを発見したいと考えている
Patrik Verstrekenは次のように言う

「我々が次に望むのはパーキンソン病の変異によって引き起こされる機能不全を修正し、正常なシナプス間コミュニケーションを再び確立できる可能性がある戦略を突き止めることだ
例えば、対処メカニズムを再び活性化することで損傷したシナプスを修復できるかもしれない
もちろん、それにはさらなる研究が必要である」


http://dx.doi.org/10.1016/j.neuron.2016.09.037
http://www.cell.com/neuron/pdfExtended/S0896-6273(16)30638-9
A LRRK2-Dependent EndophilinA Phosphoswitch Is Critical for Macroautophagy at Presynaptic Terminals
LRRK2依存的なエンドフィリンAリン酸化スイッチはシナプス前終末でのマクロオートファジーにとって重要である


Highlights
・シナプスのオートファゴソームは、全く異なる形態構造morphologyを持つ
・エンドフィリンAはエンドサイトーシスで働くが、シナプスではオートファジーでも働いて、Atg3をリクルートする
・パーキンソン病の原因となるキナーゼLRRK2はエンドフィリンAの75番目のセリン残基(S75)をリン酸化し、オートファジーを促進する
・エンドフィリンAの不安定なリン酸化は、ドーパミン作動性ニューロンの変性を引き起こす


Summary
シナプスはしばしば神経細胞の本体である細胞体somaから遠く離れているため、激しいニューロン活動によって引き起こされるプロテオパチーなストレス/proteopathic stressに対して独立して対処しなければならない
しかしながら、シナプス前の区画ではどのようにしてタンパク質proteinsがターンオーバーturn overされているのかはほとんど理解されていない

我々はエンドサイトーシスで非常に研究されてきたエンドフィリンAがシナプスで豊富なタンパク質であり、シナプス前終末presynaptic terminalではマクロオートファジーを誘導することを示す
エンドフィリンAはマクロオートファジーという予想もしなかった機能を実行する際、少なくとも部分的にはシナプス小胞のエンドサイトーシスsynaptic vesicle endocytosisにおけるその役割からは独立している

エンドフィリンAによって誘導されるマクロオートファジーはLRRK2キナーゼがエンドフィリンAのBARドメインをリン酸化した時に活性化され、
エンドフィリンAがリン酸化されないようにした実験動物では阻害された

エンドフィリンAのリン酸化は高度に曲がった膜highly curved membranesの形成を促進し、この湾曲した膜が Atg3を含めたオートファジー因子autophagic factor のドッキング・ステーションとして働くことが再構築実験によって示された

機能的に見ると、エンドフィリンAのリン酸化状態の調節の異常は 神経活動に依存的な神経変性を加速する

エンドフィリンAが少なくとも3つのパーキンソン病疾患遺伝子(LRRK2, パーキン/Parkin, シナプトジャニン/Synaptojanin)と結合connectedすることを考慮すれば、エンドフィリンA依存的なシナプスマクロオートファジーの機能異常はパーキンソン病で一般的commonである可能性がある

※Synaptojanin :SYNJ1 (PARK20)


関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160808172209.htm
パーキンソン病では線条体の投射ニューロンの電気活動が異常



関連サイト
http://www.natureasia.com/ja-jp/clinical/review/37014
カルシウムチャネル遮断薬はパーキンソン病のリスクを低下させる



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/da60d798a69b4436b35dc94e20655438
変異体α-シヌクレインを過剰発現するマウスモデル(A53T-SNCA)では中脳ドーパミンニューロンにおける黒質選択的な発火頻度の増大が観察された
このA53T-SCNAを過剰発現する黒質ドーパミンニューロンの選択的かつ加齢依存的な機能獲得の表現型は、Aタイプ Kv4.3カリウムチャネルの酸化還元に依存的な損傷によって引き起こされる『ペースメーカー頻度の内因的な増加』によって部分的には仲介されていた



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/800fdf13417f9b0a80859ee62a0f6f31
パーキンソン病の異常行動を示し始めた年老いたMitoParkマウスでは、ドーパミンニューロンで電気活動を増加させる遺伝子発現が高まった
このマウスではインパルス活性と関連するイオンチャネルのサブユニット(Cav1.2, Cav1.3, HCN1, Nav1.2, NavB3)の発現が上方調節される



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/01/140107215351.htm
α-シヌクレインはLRRK2の除去を遅くして除去されにくくするため、LRRK2は封入体に詰め込まれる
LRRK2のキナーゼ活性ではなくLRRK2の凝集そのものが細胞死の直接の原因であり、変異体LRRK2のニューロンにおける毒性はLRRK2レベルとα-シヌクレインレベルに依存し、キナーゼ活性または封入体には依存しない



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a4902d74b36c77397faa3adba5b7717d
損傷したミトコンドリアにLRRK2がリクルートされ、Miroを除去してミトコンドリアの運動を停止させる
 


アルツハイマー病の『ミッシング・リンク』が発見される

2016-10-08 06:06:52 | 
Alzheimer's 'missing link' found: Promising target for new drugs

September 4, 2013

https://www.sciencedaily.com/releases/2013/09/130904130328.htm


(イェール大学の科学者は既存の薬剤でタンパク質を阻害することによりアルツハイマー病を模した脳障害を持つマウスの記憶を回復できることを発見した

Credit: Image courtesy of Yale University)

イェール大学医学大学院/Yale School of Medicineの研究者はアルツハイマー病につながる複雑な一連のイベントの中で見つかっていなかった『ミッシング・リンク』となるタンパク質を発見し、Neuron誌の2013年9月4日号で報告した
また、彼らは既存の薬剤でそのタンパク質を阻害することによりアルツハイマー病を模した脳の障害を持つマウスの記憶を回復できることも発見した

「今回の発見がとてもエキサイティングなのは、一連の分子的なつながりの中でこのタンパク質が非常に簡単に薬剤の標的になるかもしれないということだ」
神経学の教授職Vincent Coates Professorで首席著者のStephen Strittmatterは言う

「このことは、実際に作用してアルツハイマー病の負荷を軽くする薬剤を見つけられるかもしれないという強い希望を我々にもたらす」


科学者たちは既にアルツハイマー病がどのようにして脳細胞を破壊するのかについての分子的な概略図を、部分的にではあるが提供してきた
Strittmatterのラボは以前の研究で、アルツハイマー病の特徴であるアミロイドベータのペプチドが、ニューロン表面上のプリオンタンパク質/prion protein(PrP)と結合することを示していた
この結合がFynキナーゼという細胞内の分子的なメッセンジャーを活性化させるが、そのプロセスは未知のままだった

今回のNeuron誌の論文でイェールのチームは一連のイベント中のミッシング・リンクとして、細胞膜に埋め込まれた代謝調節型の受容体metabotropic receptorの一つである『代謝型グルタミン酸受容体5/metabotropic glutamate receptor 5(mGluR5)』を明らかにした

※受容体は『代謝調節型受容体/metabotropic receptor』と『イオンチャネル型受容体/ionotropic receptor』に大きく分類される

脆弱X症候群/Fragile X syndromeのために開発された薬剤と似た化合物でこのタンパク質を阻害すると、アルツハイマー病マウスモデルの記憶と学習の障害、シナプス密度は回復した


Strittmatterは、アミロイドベータ-プリオンとmGluR5の分断disruptionをヒトのアルツハイマー病の症例で正確に標的とするには、新たな薬剤を設計しなければならないかもしれないことを強調する
彼のラボは既にそれを達成すべく新たな方法を探索し始めたところである


http://dx.doi.org/10.1016/j.neuron.2013.06.036
Metabotropic Glutamate Receptor 5 Is a Coreceptor for Alzheimer Aβ Oligomer Bound to Cellular Prion Protein.
代謝型グルタミン酸受容体5は、細胞プリオンタンパク質と結合したアルツハイマー病Aβオリゴマーの共レセプターである

Highlights
・シナプス後肥厚部/postsynaptic density(PSD)の細胞膜貫通タンパク質の内、mGluR5だけが、アミロイドベータオリゴマー(Aβo)と細胞プリオンタンパク質(PrPC)の複合体をFynキナーゼへとつなぐcouple
・mGluR5は Aβo-PrPC をカルシウムシグナル伝達ならびにタンパク質翻訳制御へとつなぐlink
・アルツハイマー病の脳の抽出物によって誘発されるニューロンカルシウムの調節異常dysregulationには、PrPC-mGluR5を必要とする
・トランスジェニックマウスの記憶障害ならびにシナプス喪失はmGluR5アンタゴニストによって覆される


Summary
可溶性のアミロイドベータオリゴマー/soluble amyloid-β oligomers (Aβo) はアルツハイマー病の病態生理pathophysiologyを引き起こし、細胞プリオンタンパク質/cellular prion protein (PrPC) に高い親和性で結合する

シナプス後肥厚部/postsynaptic density (PSD) では、脂質に固定されたlipid-anchored細胞プリオンタンパク質に対して細胞外のAβoが結合し、細胞内のFynというキナーゼを活性化してシナプスを破綻disruptさせる

Aβo-PrPCをFynへとつなげる能力に関して、細胞膜を貫通するPSDタンパク質を異種由来heterologously的にスクリーニングしたところ、
代謝型グルタミン酸受容体5/metabotropic glutamate receptor 5(mGluR5)を共に発現させた場合のみ、PrPCと結合したAβoがFynを活性化できるようになった

PrPCとmGluR5は物理的に相互作用し、細胞質のFynはmGluR5と複合体を形成する

ニューロンならびにアフリカツメガエル属Xenopusの卵母細胞において、Aβo-PrPCはmGluR5を介して細胞内カルシウムを増大させる
また、前者はヒトアルツハイマー病の脳抽出物によっても促進されたdriven

加えて、Aβo-PrPC-mGluR5複合体によるシグナル伝達は、eEF2のリン酸化ならびに樹状突起棘dendritic spineの喪失を仲介する

家族性アルツハイマー病導入遺伝子transgeneを発現するトランスジェニックマウスに関して、mGluR5への拮抗antagonismは学習障害、記憶障害、シナプス密度の低下を覆す

したがって、ニューロン表面上のAβo-PrPC複合体はmGluR5を活性化してニューロン機能を破綻させる


Rusults
▼mGluR5はAβoには結合しないが、物理的にPrPCとFynとは結合する

▼Aβoによって培養ニューロンに誘発される急速なカルシウムシグナルにはmGluR5とPrPCが必要である
mGluR5のアンタゴニストであるMPEPとMTEPは、AD脳抽出物による反応を阻害した (Figure 4I)
対照的に、mGluR1のアンタゴニストであるMPMQは、AD脳抽出物による反応を阻害しなかった (Figure 4I)

MPEP: 2-Methyl-6-(phenylethynyl)pyridine
MTEP: 3-((2-Methyl-4-thiazolyl)ethynyl)pyridine


Discussion
▼mGluRの特異性と局在
mGluR受容体の内、mGluR1とmGluR5だけがFyn・PrPCと相互作用するが、特にmGluR5だけがAβoによって誘発されるFyn刺激ならびにカルシウムシグナル伝達を仲介する


▼AD治療でmGluR5を標的にする
Aβo-PrPC-mGluR5-Fyn経路という図式delineationは、AD介入への潜在的な標的をもたらす
AβoがPrPCに結合するのを阻害する抗体は、トランスジェニックADマウスの記憶障害を覆す (Chung et al., 2010)
我々はmGluR5のネガティブなアロステリック調節因子が同様の効果を持つことを示した
しかしながら、完全にmGluR5と拮抗antagonismさせることは、ニューロンの機能に対して有害な影響があるかもしれず、基礎的な注意力baseline attentionに障害を生じる可能性がある (Lüscher and Huber, 2010, Simonyi et al., 2010)



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アミロイドベータの蓄積とタウの病理的な変換が両方とも必要なマウスモデル



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/44dd380eae54a796f94b7b5fb5d93849
Aβのオリゴマーは補体分子のC1qとC3を活性化し、C3はミクログリアの受容体CR3を通じてシグナルを伝達して、ミクログリアが脆弱なシナプスを飲み込むように刺激する



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Aβペプチドには抗菌作用があり、Aβのオリゴマー化はAβペプチドの抗菌作用に必須である



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Aβは凝集して形を変えてから細胞内に取り込まれる
 

パーキンソン病で保護的なタンパク質を突き止める

2016-10-05 06:06:00 | 
Scientists identify new lead in search for Parkinson's cure

October 5, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/10/161005084313.htm


[ストレスを受けたドーパミン作動性ニューロン]
 PK2↑→細胞外へ分泌→パラクリン・オートクリンでPKR2↑
 PKR2↑→TFAM,PGC-1α→ミトコンドリア生合成↑
 PKR2↑→ERK↑→AKT↑→ニューロン生存↑
※PKR2はGPCR

(疾患早期の神経に有害なストレスの間、どのようにしてプロトキネチシン2(PK2)が急速に誘導されて細胞外の空間に分泌されるのかを示した図
アイオワ州立大学(ISU)生物医科学の研究者たちは新たな研究で、ニューロンがパーキンソン病に対処するのを助けるための保護的なメカニズムとしてPK2が作用することを突き止めた

Credit: Anumantha Kanthasamy)


アイオワ州立大学(ISU)から最近発表された研究は、パーキンソン病の新たな治療法のヒントになるかもしれない

ISUの科学者たちがオンライン学術誌のNature Communications誌で発表した論文によると、パーキンソン病の早期に高い頻度で発現し、脳細胞を保護している可能性があるタンパク質として『プロトキネチシン2/Prokineticin-2 (PK2)』 を突き止めたという

「ニューロンはストレスに対処するためにPK2を使う
これは生まれつき組み込まれたin-built保護的なメカニズムである」
Anumantha Kanthasamyは言う
彼は獣医学の特別教授職Clarence Hartley Covault Distinguished Professorであり、神経毒物学ではEugene and Linda Lloyd Endowed Chair、そしてアイオワ州立大学の生物医科学の学科長chairである
今回の研究の主な執筆者lead authorsの一人であるKanthasamyはパーキンソン病の複雑なメカニズムを理解して治療法を見つけ出すために過去20年間研究を続けてきた

研究によると、プロトキネチシン2はニューロンがミトコンドリアを生産するように刺激し、細胞のエネルギーを作り出させるのだという
結果として改善されたエネルギー産生はニューロンがパーキンソン病による損害を耐え抜くのを助ける
パーキンソン病は脳内のドーパミンレベルが不十分になる神経疾患である
この疾患は進行性で、発症するまでに何年もかかる

プロトキネチシン2をさらに理解することは、疾患の進行を遅くする手段や新たな治療法の発見につながる可能性があるとKanthasamyは言う
例えば、このタンパク質やタンパク質のアナログをもっと多く作るように刺激して、ニューロン上の受容体に結合させるような方法があるという


彼の研究チームはパーキンソン病を研究するために学際的multidisciplinaryで統合的なアプローチを選択した
研究資金はKanthasamyと彼の配偶者spouseであるArthi KanthasamyへのNational Institutes of Healthからのグラントによるものだった
Arthi Kanthasamyは生物医科学の教授である

彼らが培養した脳細胞とげっ歯類、そして患者の死後の脳を調査してパーキンソン病によってもたらされる変化を追跡したところ、それぞれの全てでプロトキネチシン2の高い発現が確認された

この発見から、研究チームはさらに徹底的に調べようという刺激を受けたprompted

「我々が実験で追跡した数千、数万という要素の中で、なぜこのタンパク質がこれほどまでに高い発現を示したのか?」
Arthi Kanthasamyは言う

その問いへの答えを見つけることはとても時間のかかるであろう難題だが、しかし潜在的な可能性は重大であるようだと彼女は言う


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms12932
Prokineticin-2 upregulation during neuronal injury mediates a compensatory protective response against dopaminergic neuronal degeneration.
ニューロン損傷中のプロキネチシン2の上方調節はドーパミン作動性ニューロン変性に対する補償的な保護的応答を仲介する


Abstract
プロトキネチシン2/Prokineticin-2 (PK2) は最近発見された分泌タンパク質で、嗅覚の生合成olfactory biogenesisや中枢神経系の概日リズムcircadian rhythmsなどの重要な生理学的機能を調節する

興味深いことに、黒質系nigral systemでのPK2の発現は低いにも関わらず、その受容体は黒質線条体ニューロンnigrostriatal neuronsで構成的constitutivelyに発現する

今回我々はPK2レポーターマウスreporter miceならびにMitoParkマウスを含むパーキンソン病の複数のモデルにおいて、ニューロン変性の早期段階でPK2の発現が黒質ドーパミン作動性ニューロンnigral dopaminergic neuronsで強く誘導されることを実証する

機能的な研究functional studiesによりPK2がミトコンドリアの生合成を促進し、
ERKとAktによる生存シグナル伝達経路を活性化してそれにより神経保護を駆動することが実証された

重要なことに、PK2の過剰発現は保護的である一方で、PK2受容体への拮抗は実験的パーキンソン病においてドーパミン作動性の変性を悪化させる

さらに、パーキンソン病患者の脳で生存していた黒質ドーパミン作動性ニューロンsurviving nigral dopaminergic neuronsにおいて、PK2の発現は増大していた
このことはPK2の上方調節がヒトのパーキンソン病でも臨床的に関連があるrelevantことを示す

まとめると、我々の結果は黒質ドーパミン作動性ニューロンにおけるPK2による補償的な神経保護シグナル伝達に関する理論的枠組みparadigmを明らかにするものであり、パーキンソン病の治療に関して重要な意味を持ちうる


Introduction
ドーパミン作動性細胞/dopaminergic (DAergic) cellが死ぬ間の遺伝子発現の変化をPCRアレイを使って調査したところ、驚いたことに、TNFαによってドーパミン作動性細胞が死ぬ間、PK2のmRNAが強く誘導された(10
我々はPK2がドーパミン作動性の変性中に分泌される全く新しいシグナル伝達メディエーターであるという仮説を立てた
この考えを支持するように、我々のPDマウスモデルでは、変性する間の早期にPK2が黒質のドーパミン作動性ニューロン/nigral dopaminergic neuronsで誘導され、それは運動の欠陥が現れる前だった

また、我々はPK2の発現がPD患者の黒質/substantia nigra (SN) で上昇することを発見した
これはマウスモデルだけでなくヒトのPDでもPK2の臨床的な関連性があることを裏付けるcorroborate


Discussion
PK2のプロモーターは複数のE-ボックス配列 (CACGTG) が豊富repleteであり、ここには転写因子のbasic helix-loop-helix (bHLH) 、例えばHIF1αが結合して、血管新生angiogenesisの間のPK2発現を調節する(12
他のグループによる報告では、黒質ドーパミン作動性ニューロンならびにPDの細胞培養モデルにおいてMPTPによる酸化ストレス後にHIF1αの活性化が報告されている
このことは、PK2の転写的な上方調節が 保護的応答としての候補であるという可能性を示す(42,43,44
我々のラボは現在、ドーパミン作動性ニューロンにおけるPK2上方調節を調節する転写的メカニズムを研究中である



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b649d34f25f6e9b47b023cae7fe1105a
アルツハイマー病で保護的なニューログロビンのスイッチを入れる方法



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/05/160519130242.htm
p62は、NRF2, mTORC1, c-Mycを活性化することで癌を促進する
これらはストレスのかかった細胞が生き残るのを助ける



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160418120716.htm
PI3K/AKT経路はグルタチオン産生を促進し、それにより癌は化学療法を生き残る



関連サイト
http://ytmd.blog.fc2.com/blog-entry-6.html
KRASやBRAFなどの癌遺伝子はNRF2経路を活性化して抗酸化物質を誘導する



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16551619
GSK-3βは転写因子Nrf2を直接リン酸化して核から排除することにより細胞の生体異物応答xenobioticならびに抗酸化応答を阻害するが、AKTはGSK3βをリン酸化して不活性化する



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25110549
アンジオテンシンIIは樹状細胞に酸化ストレスと炎症応答を引き起こすが、アトルバスタチンはPI3K/Akt/Nrf2経路を介してそれを抑制する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160608120614.htm
フマル酸ジメチル(DMF)と代謝産物フマル酸モノメチル(MMF)はNrf2の活性を上昇させるが、DMFはグルタチオンを枯渇させて酸化ストレスを生じ、MMFはより直接Nrf2を活性化するので、パーキンソン病の治療としてはMMFの方がいいかもしれない



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150901134946.htm
尿酸はアストロサイトのNrf2経路を活性化し、グルタチオンの分泌を高めて神経保護効果をもたらし、パーキンソン病リスクを低下させる
 



α-シヌクレインの凝集物が細胞間を伝わる仕組みを発見

2016-10-02 06:06:27 | 
New treatment strategy could cut Parkinson's disease off at the pass

September 29, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/09/160929142756.htm


(α-synuclein aggregates in the brain cells of mice with (top) and without (bottom) the LAG3 protein.

Credit: Xiaobo Mao)

ジョンズホプキンスの研究者は『哺乳類の脳内で自然に生じる有害な凝集物』が細胞から細胞へと拡散することを可能にする原因のタンパク質としてLAG3を突き止めたことを報告する
また、彼らはLAG3の働きを阻害する方法も明らかにした

彼らの研究はマウスと培養細胞でのものだが、今回の結果は既に臨床試験に入っている免疫療法がパーキンソン病の進行を遅くする方法としてもテストされるに違いないことを示唆していると研究者は言う
この報告は9月30日にScience誌で発表される


研究のリーダーの一人、Ted Dawson, M.D., Ph.D.はジョンズ・ホプキンス大学医学部細胞工学研究所の科学顧問scientific directorである
彼によると、今回の新しい発見は『α-シヌクレインの凝集物』がどのようにして脳細胞の中に入るのかについて注目hinge onしたものだという
α-シヌクレインの異常な凝集はしばしばパーキンソン病患者の病理解剖autopsyで観察され、ドーパミンを産生する脳細胞が死んでいく原因と考えられている


数年前、ゲーテ大学(ドイツ)の研究者の一人がパーキンソン病の進行についての新しい理論に関するエビデンスを発表した
それによると、α-シヌクレインの凝集物は脳内の細胞から細胞へと広がり、それまで正常だったα-シヌクレインタンパク質を凝集させながら、動きと基本機能を担当する脳構造の『低いlower』場所から記憶や推論のような高度なプロセスに関与する『高い』場所へと徐々に移動していくのだという

「多くの懐疑論が出されたものの、やがて別のラボからもα-シヌクレインが細胞から細胞へと広がる可能性が示された」とDawsonは言う
興味を抱いた彼の研究グループは神経学の教授であるValina Dawson, Ph.D.と助教授のHan Seok Ko, Ph.D.らと共に、この凝集物がどのようにして細胞に入るのかについて調査を開始した

彼らは自分たちが探しているのが『膜を貫通する受容体/transmembrane receptor』という特定の種類のタンパク質であると知っていた
膜貫通受容体は細胞の外側でドアの『錠/lock』のような働きをしており、それに合う正しい『鍵/key』だけを通すのである

彼らが最初に発見したのは、α-シヌクレインの凝集物が入れない細胞だった
研究室で培養されている特定の脳腫瘍の細胞系統に凝集物は入れなかった

この細胞系統に膜貫通受容体をコードする遺伝子を一つ一つ加え、凝集物を細胞に入れるようにする受容体があるかどうかを調べたところ、3つの受容体が該当した
その内の一つのLAG3という受容体は、凝集していないα-シヌクレインよりも凝集したα-シヌクレインに結合する傾向が特に強かった


次に研究チームはLAG3を持たないマウスを育てて、α-シヌクレインの凝集物を注入した

「典型的なマウスは注入後すぐにパーキンソン病のような症状を発症し、そのマウスのドーパミンを作るニューロンの半分が6ヶ月以内に死ぬ」
Dawsonは言う
「しかし、LAG3を持たないマウスはそのような影響からほとんど完全に保護された」

培養ニューロンにLAG3を阻害する抗体を投与しても同様の保護的な効果が見られた


「α-シヌクレインの凝集物がどのようにして脳内を拡散するのかを発見しただけでなく、その進行が既存の抗体によって阻害されうるとわかったことに我々はとても興奮している」
Dawsonのラボで助教/research associateであり研究の筆頭著者のXiaobo Mao, Ph.D.は言う


Dawsonは、LAG3を標的とする抗体が既に 化学療法中に免疫系を強化できるかどうかを調べる臨床試験 に入っていることに言及する
もしそれらの試験で薬剤の安全性が実証されれば、パーキンソン病の治療薬として使うための臨床試験のプロセスが加速されるかもしれないという
さしあたって研究チームはLAG3抗体のマウスでのテストの継続と、LAG3の機能のさらなる調査を計画中である


アメリカでは100万人以上がパーキンソン病である
この疾患は徐々に運動能力を失わせ、具体的には遅くぎごちない足取りslow and awkward gait、四肢の強剛rigid limbs、振戦tremors、足の引きずりshuffling、バランスの欠如が症状として現れる
疾患の原因は十分理解されていない


http://dx.doi.org/10.1126/science.aah3374
Pathological α-synuclein transmission initiated by binding lymphocyte-activation gene 3.
病理学的なα-シヌクレイン伝達はLAG3との結合によって開始される



(LAG3の削除または抗LAG3抗体は、α-シヌクレインの『既に形成された原繊維preformed fibrils (PFF)』の伝達を遅らせる
野生型ニューロンと比較すると、抗LAG3抗体またはLAG3削除により、α-シヌクレインの既形成原繊維(PFF)の結合ならびにエンドサイトーシスは劇的に低下し、結果として病的なα-シヌクレインの伝達ならびに毒性は遅れる
Illustration credit: I-Hsun Wu)


構造化抄録/Structured Abstract


論理的根拠/RATIONALE
病的なα-シヌクレインが細胞から細胞へと伝達される原因となる根底のメカニズムならびに分子的な実在entityは知られていないが、病的なα-シヌクレインがニューロンに入ることはアクティブなクラスリン依存的なエンドサイトーシスプロセスを通じて起きると考えられている


結果/RESULTS
ミスフォールドしたα-シヌクレインのニューロン間の伝達を研究するモデル系として我々は組み換えα-シヌクレイン既形成原繊維(PFF)を使い、ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ/alkaline phosphatase(AP)の検出を介して、α-シヌクレイン-ビオチンPFFとの結合候補に関して 膜貫通タンパク質をコードするライブラリをスクリーニングした

※ストレプトアビジンはビオチンに対して強い親和性を持つ

結果、α-シヌクレインPFFに結合する陽性クローンが3つ同定された
・リンパ球活性化遺伝子3/lymphocyte-activation gene 3 (LAG3)
・ニューレキシン1β/neurexin 1β
・アミロイドベータ前駆体様タンパク質1/amyloid β precursor-like protein 1 (APLP1)

これら3つの膜貫通タンパク質の内、LAG3が最も高い比率でα-シヌクレイン単量体に対するα-シヌクレインPFFへの高い選択性を持つことが実証された

α-シヌクレインPFFはLAG3に対して飽和可能であるsaturable(高濃度で飽和する)ように結合する(解離定数dissociation constant = 77 nM)
一方でα-シヌクレイン単量体はLAG3には結合しなかった

共免疫沈降では、病的なα-シヌクレインPFFは特にLAG3と結合する

タウのPFF、βアミロイドのオリゴマー、βアミロイドのPFFはLAG3には結合しない
これはLAG3がα-シヌクレインPFFに対して特異的であることを示す

α-シヌクレインPFFの取り込み/内在化internalizationにはLAG3を必要とするinvolve
なぜなら、LAG3を削除するとα-シヌクレインPFFのエンドサイトーシスが減少するからだ
α-シヌクレインPFFによるLAG3への結合は、α-シヌクレインPFFのエンドサイトーシスと伝達、毒性を開始させる

LAG3は、エンドソーム・グアノシントリホスファターゼのRab5とRab7と共に局在し、病的なα-シヌクレインと共にエンドサイトーシスする

病的なα-シヌクレインのニューロン間の伝達と、それに随伴するaccompanying病理かつ神経毒性は、LAG3の削除またはLAGへの抗体によって大幅に緩和される
LAG3を欠如させると、α-シヌクレインPFFによって誘発されるin vivoでのドーパミンニューロンの喪失は大幅に遅れ、生化学的な欠陥ならびに行動的な欠陥も遅れる



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https://www.sciencedaily.com/releases/2014/04/140409093945.htm
患者の脳の抽出物をマウスとサルに注入すると数ヶ月後にドーパミン産生細胞が変性し、離れた箇所にも拡散した



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f9b6db10eb549c924494cb2a6f74cca2
α-シヌクレインの伝わり方はプリオンとは異なりシーディングを伴わない



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ae5451edbe22e1082bef73eac57a4181
リソソーム内のα-シヌクレイン原繊維はチューブを通じて伝わる




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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5dc8d2df5cf3c367e14b14a84eac884e
GBA1突然変異はα-シヌクレインのリサイクルを妨害し、蓄積されたα-シヌクレインは脳内に放出される




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https://www.sciencedaily.com/releases/2016/08/160808163628.htm
パーキンソン病では運動症状が出る数年前から嗅覚の喪失などの前駆症状が見られるが、今回開発されたモデルはそのような状態を再現した
嗅球の領域はα-シヌクレインの拡散に対して脆弱であり、運動症状が出る前にα-シヌクレインは嗅球に沿って移動し、結果として嗅覚が失われる
α-シヌクレインの凝集は最終的にドーパミン産生細胞の存在する脳幹など複数の脳領域に到達する