研究者はダーク・マターからのシグナルを検出した可能性がある
Researchers detect possible signal from dark matter
結局、ダーク・マターが存在する具体的な証拠はこの宇宙に存在するのだろうか?
EPFLの素粒子物理学宇宙論研究所(LPPC)とライデン大学の科学者はおびただしい量のX線データを厳密に調査し、ダーク・マターの粒子のシグナルを特定した可能性があると考えている。ダーク・マターは現在は全くの仮説であり、重力を除く物理学の標準的なモデルの何によっても作用を受けない。彼らの研究は次週のフィジカル・レビュー・レターズで発表される。
http://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.113.251301
銀河の力学と星の運動を研究する物理学者は、謎に直面する。彼らが目に見える物質だけを考慮する時、彼らの方程式は単純な合計にはならない。観察されうる要素は物体の回転と既存の重力を説明するためには不十分であり、そこには失われた何かが存在する。
このことから彼らは「光とは相互作用しないが全体としては重力と相互作用する見えない物質があるにちがいない」と推論した。この「ダーク・マター」と呼ばれる物質は、宇宙の少なくとも80%を構成するようである。
最近、Oleg RuchayskiyたちEPFLの科学者と、オランダのライデン大学の教授Alexey Boyarskyは、ペルセウス座銀河団とアンドロメダ銀河が発するX線を分析することによりずっと探し求められてきたシグナルを検出したと発表した。
ESA(欧州宇宙機関)のXMM-ニュートンX線衛星から得られた何千というシグナルから既知の粒子と原子に由来するすべてのシグナルを消去し、さらに機器と測定の誤差の可能性を考慮した後に検出された異常が、彼らの注目をとらえた。そのシグナルは弱く、そして非典型的な光子の放出としてX線スペクトルで現れ、これまで知られているどんな種類の物質にも由来しない。
とりわけ「それらの銀河の中のシグナル分布は、我々がダークマターを予測していたものとまさしく対応するものだ。つまり天体の中央にシグナルは強く集中し、縁に近いほど弱くなり拡散する」、Ruchayskiyは説明する。
「我々は次に我々自身の銀河である天の川のデータを分析して、同じシグナル分布を観察した」、Boyarskyは言う。
このシグナルは宇宙できわめてまれな出来事、つまり仮説の粒子である「ステライルニュートリノ」の崩壊によって発された光子であると思われる。もしこの発見が確認されれば、粒子物理学の研究に新しい道が開けるだろう。
「この発見が確定すれば、ダークマター粒子のシグナルを研究する望遠鏡の新しい構造の設計に通じるかもしれない」、Boyarskyは言う。
ビデオ:
https://www.youtube.com/watch?v=aogKkzESbgs&feature=youtu.be
記事供給源:
上記の記事は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校によって提供される素材に基づく。
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141211115520.htm
<コメント>
ダークマターの候補とされる「ステライルニュートリノ」が崩壊するシグナルを捕らえたかもしれないという記事です。
去年6月のNASAとESAからの発表を訳して要約したAstroartsさんの記事の中に、
>ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのEsra Bulbulさんらの論文公開を受けて他の研究者からも同様の輝線を見つけたとの報告があり、誤検出の可能性は小さくなった。
とありますが、この「他の研究者」が今回の記事のAlexey Boyarsky氏です(Bulbul氏の論文の公開を受けて報告したというわけではないと思いますが)。
>Only a week after Bulbul et al. placed their paper on the arXiv, a different group, led by Alexey Boyarsky of Leiden University in the Netherlands, placed a paper on the arXiv reporting evidence for an emission line at the same energy in XMM-Newton observations of the galaxy M31 and the outskirts of the Perseus cluster. This strengthens the evidence that the emission line is real and not an instrumental artifact.