Researchers mine the epigenome to identify likely origins of childhood brain tumor subtype
January 27, 2016
http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160127141948.htm
セントジュード子ども研究病院/St. Jude Children's Research Hospitalの研究者は、髄芽腫medulloblastomaのサブタイプの一つである『グループ4』が生じる源であるらしい細胞を明らかにした
この発見は脳腫瘍の髄芽腫で最も一般的なサブタイプに対する今より効果的な標的治療開発への障壁を取り除く
セントジュード子ども研究病院を中心とする今回の国際的な研究結果は、Natureオンライン版で先行出版される
髄芽腫は乳児infants、子どもchildren、成人adultsのいずれでも発症するが、小児で最も多く見られる悪性の脳腫瘍である
この疾患に含まれる生物学的・臨床的に異なる4つのサブタイプの中で最も多いのが『グループ4』で、子どもでは髄芽腫の約半分がグループ4である
患者の転帰、特にグループ4のハイリスク患者の転帰を改善するためのあらゆる努力にもかかわらず、これまで正確な動物モデルが存在しないためにその試みはうまくいかなかった
今回の研究から得られたエビデンスからグループ4は発達中の小脳cerebellumの『上菱脳唇(じょうりょうのうしん)/upper rhombic lip』という領域から生まれる神経幹細胞から発生することが示唆された
小脳は調和的な運動を助ける脳の一部で、髄芽腫が発生する場でもある
※菱脳: 発生中の神経管の一部で、後に小脳・橋・延髄に分化する領域
「髄芽腫グループ4の源となる細胞を特定することは正常な小脳発達の理解を助け、そして遺伝学的に忠実な前臨床マウスモデルを開発する見込みchancesを劇的に改善する
そのようなモデルは髄芽腫グループ4を生物学的に詳しく理解し、患者の転帰を改善するための合理的な分子標的治療を評価するために切望desperately neededされている」
セントジュードの発達神経生物学のPaul Northcott, Ph.D.は言う
腫瘍の増殖を加速する異常misstepに関する今回の発見はエピゲノムの研究によるものだ
エピゲノムというのはDNAに結合するタンパク質や化学物質のことで、それらは組織特異的なやり方で遺伝子発現の制御を調整するために協力して働く
DNAはゲノムをコード化し、ゲノムは生命の計画書である
エピゲノムは様々な細胞の種類ごとにゲノム中の指示がどのように実行されるかを決定する
研究者たちはクロマチン免疫沈降法/chromatin immunoprecipitation(ChIP)と次世代シーケンシング(next generation sequencing)を組み合わせたChIP-seqという分析ツールを使い、
エピジェネティックな調節因子の活性に基いて髄芽腫のサブタイプごとの違いを特定して追跡した
この調節因子regulatorsにはマスターレギュレーター転写因子master regulator transcription factorsという転写因子の一種が含まれ、それらはエンハンサーやスーパーエンハンサーというDNA配列に結合する
マスターレギュレーター転写因子とスーパーエンハンサー配列は、細胞のアイデンティティを決定するような重要遺伝子の発現を調節するために働く
そうした分析ツールなどの助けを借りて研究者は28の髄芽腫サンプルから3000を超えるスーパーエンハンサーを同定し、
加えてスーパーエンハンサー活性がサブタイプごとに異なることも明らかにした
スーパーエンハンサーはよく知られる癌遺伝子を活性化しており、その中には髄芽腫と関連するALK、MYC、SMO、OTX2が含まれていた
サブタイプごとのスーパーエンハンサーについての知識から彼らはそれらの活性を調節する転写因子を明らかにした上で、
コンピューターを使ってそれらの情報を応用することにより、髄芽腫サブタイプの多様性とアイデンティティの原因となる転写因子ネットワークを再構築した
それは様々な髄芽腫サブタイプの調節因子に関するランドスケープならびに転写的な産生についての新たな洞察をもたらした
これらのアプローチからLmx1Aが髄芽腫グループ4のマスターレギュレーター転写因子であることが発見され、
ここからグループ4の源が上菱脳唇/upper rhombic lip(uRL)である可能性が明らかにされた
Lmx1Aは上菱脳唇と小脳細胞の正常な発達に関与する
Lmx1Aを持つマウスまたは持たないマウスを使った研究からも、上菱脳唇の細胞がグループ4の源である可能性が支持された
「エピゲノムの研究から我々は新たな経路と分子的な依存性も明らかにした」
Northcottは言う
「この発見は新たな治療への道を開くものであり、
特に、患者の転帰が他よりも良くないサブタイムのグループ3とグループ4の治療につながる」
例えば研究者はTGFβ経路を標的とするエンハンサー活性が上昇することを明らかにしたが、この発見はTGFβ経路がグループ3を促進するというこれまでの証拠を補強するものだ
現在、グループ3の予後は最も悪い
TGFβ経路は細胞増殖と細胞死などの癌でしばしば妨害されている機能を調節するが、その髄芽腫における役割はほとんど理解されていない
今回の分析では4つのサブタイプを代表する28の髄芽腫サンプルが含まれる
これは単一の癌のタイプに関するエピジェネティックな分析としては過去最大のものであり、
重要なことにこれは研究室で培養した細胞系統ではなく、患者の腫瘍組織に由来する大規模なコホートを使った初めてのものである
以前の研究で細胞系統が腫瘍のエピゲノムの研究には限定的にしか役立たないことが示唆されていた
今回の研究ではグループ3髄芽腫の3つの細胞系統も分析され、エピジェネティックな調節因子の作用が細胞系統と腫瘍サンプルで著しく異なることが浮き彫りになったhighlight
http://dx.doi.org/10.1038/nature16546
Active medulloblastoma enhancers reveal subgroup-specific cellular origins.
Abstract
我々は28のプライマリーな髄芽腫の標本に対して
ヒストン3リジン27アセチル基とBRD4のクロマチン免疫沈降とシーケンシングを組み合わせ (ChIP-seq) 、
それをDNAメチル化と転写全体/トランスクリプトームのデータと統合して
アクティブなシス-調節的ランドスケープcis-regulatory landscapeを記述する
異なって調節されるエンハンサー・スーパーエンハンサーの分析から
サブグループ間の不均一性heterogeneityの違いが補強され、
髄芽腫の生物学への新しくかつ臨床的に関連がある洞察が明らかにされた
中心的な調節回路をコンピュータによって再構築することにより、転写因子のマスターセットを明らかにしてそれをChIP-seqで確認validateした
それらマスターセットは各サブグループの相違の原因であり、グループ4の源となる細胞の候補に影響する
大規模な初代腫瘍サンプルprimary tumour samplesにおけるエンハンサー配列についての統合的な分析から、
シス-調節的な構造cis-regulatory architectureならびにこれまで認識されていなかった依存性、そして細胞の源についての洞察が明らかになった
※St. Jude: 聖ユダ(タダイThaddeusのユダ)。セントジュード子ども研究病院はマロン派カトリック教徒だったDanny Thomasが1962年に設立した病院。コメディアンでその日暮らしpaycheck to paycheckだった彼は第一子が生まれる前にデトロイトでミサに参加し、最後の7ドルを献金箱に投じて新しい家族を迎える準備をしたいとSt. Jude Thaddeusに祈り、それが「叶った」ことからその名がついたとされる
関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160111152825.htm
タンパク質相互作用が悪性脳腫瘍のサブタイプを定義する
Mycはグループ3(髄芽腫の25%を占める)、MycNはSHHという異なるサブタイプにつながる
その違いの原因はMiz1で、Miz1が腫瘍アイデンティティの決定に重要である
Miz1はMycとは結合するが、MycNとは結合しない
Miz1-Myc複合体はDNAに結合して遺伝子発現を変化させ、グループ3の髄芽腫の増殖と転移を促進する
http://dx.doi.org/10.1016/j.ccell.2015.12.003
The Interaction of Myc with Miz1 Defines Medulloblastoma Subgroup Identity.
Myc-Miz1は、Miz1/Ebox(nc)に結合して転写を抑制し、ニューロン分化をさせない(脱分化=悪性)
[グループ3]
Myc↑→Miz1と共にMiz1/Ebox (nc)に結合して転写を抑制→ニューロンに分化しない,幹細胞性↑,ciliogenesis↓,TGF-β経路↑
[SHHサブタイプ]
MycN↑→Miz1と相互作用せずMiz1/Ebox (nc)に結合しない→ニューロンに分化する
関連サイト
http://plaza.umin.ac.jp/sawamura/pediattumor/medullo/
髄芽腫の分子診断
1.WNT (wingless) 免疫組織染色で DKK1 (WNT)
2.SHH (sonic hedgehog) 免疫組織染色で SFRP1 (SHH)
3.グループ3 免疫組織染色で NPR3
4.グループ4 免疫組織染色で KCNA1
分類したあとの見込みは
1.ウイングレスはとても治りやすい
2.ソニックヘッジホッグとグループ4は中間くらい
3.グループ3は予後がとても悪い
January 27, 2016
http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160127141948.htm
セントジュード子ども研究病院/St. Jude Children's Research Hospitalの研究者は、髄芽腫medulloblastomaのサブタイプの一つである『グループ4』が生じる源であるらしい細胞を明らかにした
この発見は脳腫瘍の髄芽腫で最も一般的なサブタイプに対する今より効果的な標的治療開発への障壁を取り除く
セントジュード子ども研究病院を中心とする今回の国際的な研究結果は、Natureオンライン版で先行出版される
髄芽腫は乳児infants、子どもchildren、成人adultsのいずれでも発症するが、小児で最も多く見られる悪性の脳腫瘍である
この疾患に含まれる生物学的・臨床的に異なる4つのサブタイプの中で最も多いのが『グループ4』で、子どもでは髄芽腫の約半分がグループ4である
患者の転帰、特にグループ4のハイリスク患者の転帰を改善するためのあらゆる努力にもかかわらず、これまで正確な動物モデルが存在しないためにその試みはうまくいかなかった
今回の研究から得られたエビデンスからグループ4は発達中の小脳cerebellumの『上菱脳唇(じょうりょうのうしん)/upper rhombic lip』という領域から生まれる神経幹細胞から発生することが示唆された
小脳は調和的な運動を助ける脳の一部で、髄芽腫が発生する場でもある
※菱脳: 発生中の神経管の一部で、後に小脳・橋・延髄に分化する領域
「髄芽腫グループ4の源となる細胞を特定することは正常な小脳発達の理解を助け、そして遺伝学的に忠実な前臨床マウスモデルを開発する見込みchancesを劇的に改善する
そのようなモデルは髄芽腫グループ4を生物学的に詳しく理解し、患者の転帰を改善するための合理的な分子標的治療を評価するために切望desperately neededされている」
セントジュードの発達神経生物学のPaul Northcott, Ph.D.は言う
腫瘍の増殖を加速する異常misstepに関する今回の発見はエピゲノムの研究によるものだ
エピゲノムというのはDNAに結合するタンパク質や化学物質のことで、それらは組織特異的なやり方で遺伝子発現の制御を調整するために協力して働く
DNAはゲノムをコード化し、ゲノムは生命の計画書である
エピゲノムは様々な細胞の種類ごとにゲノム中の指示がどのように実行されるかを決定する
研究者たちはクロマチン免疫沈降法/chromatin immunoprecipitation(ChIP)と次世代シーケンシング(next generation sequencing)を組み合わせたChIP-seqという分析ツールを使い、
エピジェネティックな調節因子の活性に基いて髄芽腫のサブタイプごとの違いを特定して追跡した
この調節因子regulatorsにはマスターレギュレーター転写因子master regulator transcription factorsという転写因子の一種が含まれ、それらはエンハンサーやスーパーエンハンサーというDNA配列に結合する
マスターレギュレーター転写因子とスーパーエンハンサー配列は、細胞のアイデンティティを決定するような重要遺伝子の発現を調節するために働く
そうした分析ツールなどの助けを借りて研究者は28の髄芽腫サンプルから3000を超えるスーパーエンハンサーを同定し、
加えてスーパーエンハンサー活性がサブタイプごとに異なることも明らかにした
スーパーエンハンサーはよく知られる癌遺伝子を活性化しており、その中には髄芽腫と関連するALK、MYC、SMO、OTX2が含まれていた
サブタイプごとのスーパーエンハンサーについての知識から彼らはそれらの活性を調節する転写因子を明らかにした上で、
コンピューターを使ってそれらの情報を応用することにより、髄芽腫サブタイプの多様性とアイデンティティの原因となる転写因子ネットワークを再構築した
それは様々な髄芽腫サブタイプの調節因子に関するランドスケープならびに転写的な産生についての新たな洞察をもたらした
これらのアプローチからLmx1Aが髄芽腫グループ4のマスターレギュレーター転写因子であることが発見され、
ここからグループ4の源が上菱脳唇/upper rhombic lip(uRL)である可能性が明らかにされた
Lmx1Aは上菱脳唇と小脳細胞の正常な発達に関与する
Lmx1Aを持つマウスまたは持たないマウスを使った研究からも、上菱脳唇の細胞がグループ4の源である可能性が支持された
「エピゲノムの研究から我々は新たな経路と分子的な依存性も明らかにした」
Northcottは言う
「この発見は新たな治療への道を開くものであり、
特に、患者の転帰が他よりも良くないサブタイムのグループ3とグループ4の治療につながる」
例えば研究者はTGFβ経路を標的とするエンハンサー活性が上昇することを明らかにしたが、この発見はTGFβ経路がグループ3を促進するというこれまでの証拠を補強するものだ
現在、グループ3の予後は最も悪い
TGFβ経路は細胞増殖と細胞死などの癌でしばしば妨害されている機能を調節するが、その髄芽腫における役割はほとんど理解されていない
今回の分析では4つのサブタイプを代表する28の髄芽腫サンプルが含まれる
これは単一の癌のタイプに関するエピジェネティックな分析としては過去最大のものであり、
重要なことにこれは研究室で培養した細胞系統ではなく、患者の腫瘍組織に由来する大規模なコホートを使った初めてのものである
以前の研究で細胞系統が腫瘍のエピゲノムの研究には限定的にしか役立たないことが示唆されていた
今回の研究ではグループ3髄芽腫の3つの細胞系統も分析され、エピジェネティックな調節因子の作用が細胞系統と腫瘍サンプルで著しく異なることが浮き彫りになったhighlight
http://dx.doi.org/10.1038/nature16546
Active medulloblastoma enhancers reveal subgroup-specific cellular origins.
Abstract
我々は28のプライマリーな髄芽腫の標本に対して
ヒストン3リジン27アセチル基とBRD4のクロマチン免疫沈降とシーケンシングを組み合わせ (ChIP-seq) 、
それをDNAメチル化と転写全体/トランスクリプトームのデータと統合して
アクティブなシス-調節的ランドスケープcis-regulatory landscapeを記述する
異なって調節されるエンハンサー・スーパーエンハンサーの分析から
サブグループ間の不均一性heterogeneityの違いが補強され、
髄芽腫の生物学への新しくかつ臨床的に関連がある洞察が明らかにされた
中心的な調節回路をコンピュータによって再構築することにより、転写因子のマスターセットを明らかにしてそれをChIP-seqで確認validateした
それらマスターセットは各サブグループの相違の原因であり、グループ4の源となる細胞の候補に影響する
大規模な初代腫瘍サンプルprimary tumour samplesにおけるエンハンサー配列についての統合的な分析から、
シス-調節的な構造cis-regulatory architectureならびにこれまで認識されていなかった依存性、そして細胞の源についての洞察が明らかになった
※St. Jude: 聖ユダ(タダイThaddeusのユダ)。セントジュード子ども研究病院はマロン派カトリック教徒だったDanny Thomasが1962年に設立した病院。コメディアンでその日暮らしpaycheck to paycheckだった彼は第一子が生まれる前にデトロイトでミサに参加し、最後の7ドルを献金箱に投じて新しい家族を迎える準備をしたいとSt. Jude Thaddeusに祈り、それが「叶った」ことからその名がついたとされる
関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160111152825.htm
タンパク質相互作用が悪性脳腫瘍のサブタイプを定義する
Mycはグループ3(髄芽腫の25%を占める)、MycNはSHHという異なるサブタイプにつながる
その違いの原因はMiz1で、Miz1が腫瘍アイデンティティの決定に重要である
Miz1はMycとは結合するが、MycNとは結合しない
Miz1-Myc複合体はDNAに結合して遺伝子発現を変化させ、グループ3の髄芽腫の増殖と転移を促進する
http://dx.doi.org/10.1016/j.ccell.2015.12.003
The Interaction of Myc with Miz1 Defines Medulloblastoma Subgroup Identity.
Myc-Miz1は、Miz1/Ebox(nc)に結合して転写を抑制し、ニューロン分化をさせない(脱分化=悪性)
[グループ3]
Myc↑→Miz1と共にMiz1/Ebox (nc)に結合して転写を抑制→ニューロンに分化しない,幹細胞性↑,ciliogenesis↓,TGF-β経路↑
[SHHサブタイプ]
MycN↑→Miz1と相互作用せずMiz1/Ebox (nc)に結合しない→ニューロンに分化する
関連サイト
http://plaza.umin.ac.jp/sawamura/pediattumor/medullo/
髄芽腫の分子診断
1.WNT (wingless) 免疫組織染色で DKK1 (WNT)
2.SHH (sonic hedgehog) 免疫組織染色で SFRP1 (SHH)
3.グループ3 免疫組織染色で NPR3
4.グループ4 免疫組織染色で KCNA1
分類したあとの見込みは
1.ウイングレスはとても治りやすい
2.ソニックヘッジホッグとグループ4は中間くらい
3.グループ3は予後がとても悪い