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EBV感染により老化が引き起こされるスイッチ

2016-01-25 06:06:20 | 
Disrupting cell's supply chain freezes cancer virus

Drug shows promise for controlling Epstein-Barr virus

January 19, 2016

http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160119153504.htm


(緑の蛍光染色は、リンパ芽球状の細胞表面上のグルコーストランスポーターGLUT1を示す
リンパ芽球状細胞はエプスタイン-バー・ウイルス感染によって引き起こされるリンパ腫形成に進行する
このウイルスはその感染経路を持続させるためにグルコースへの需要を増大させ、細胞を乗っ取ることによりGLUT1を表出させる

Credit: Amy Hafez, Duke University)

エプスタイン-バー・ウイルス/Epstein-Barr Virus(EBV)が免疫系のB細胞に入り込むとウイルスはB細胞をだまして急速に細胞自身のコピーを作らせ、増殖したB細胞はそれぞれウイルスを運ぶことになる
急速に増える細胞は、増殖のための材料building partsを大量に必要とする
その需要を満たすためにB細胞は自分自身の中身を食いつぶしchew up、アミノ酸や脂質、ヌクレオチドをバラバラにして解放するfree up

しかし、もし材料materialsの供給が低下するとrun low、
B細胞は『老化senescence』という休止状態になって細胞分裂は止まり、
ウイルスの進行を停止させることがデューク大学の研究チームによって明らかになった


EBVがヒトにがんを引き起こすウイルスであることが初めて示された時から、その存在は研究者を長い間悩ませ続けた
EBVは世界中の成人の90%に感染しているが、ウイルスが引き起こすリンパ腫や他のがんによって死ぬのはほんのわずかに過ぎない

デューク大学医学部で分子遺伝学と微生物学の准教授associate professorであり、
デューク大学ウイルス学センターの副所長deputy directorでもある筆頭著者のMicah Luftigは、
答えの大部分は人体の免疫系にあると言う

健康な免疫系はあらかたEBウイルスの進行を止めるとLuftigは言う
事実、EBVと関連する癌の多くはほとんどがウイルスを排除する能力が低下した免疫不全の患者で発見される
しかし、今回新しく発見された『老化のトリガー/senescence trigger』はもう一つの別の答えであるかもしれないとLuftigは言う


個々の細胞がどのような成熟状態にあるのかを調べることが可能となる新しい技術を使い、
研究チームは細胞ごとにfrom one cell to the nextウイルス遺伝子の活性の変化を調査した

その結果、EBVは細胞の燃料源fuel sourceを切り替えることが可能であり、
細胞が材料を供給しようと細胞自身の内部を食いつぶした時でさえ、細胞分裂を続けられることが判明した


そこで、研究チームはラパマイシンという薬剤を使いB細胞が「自分は飢えている」と感じさせようとした
この戦略はうまくいき、EBVに感染した細胞の老化のオンとオフを切り替えることに成功した


この研究の次の段階では、ヒトの免疫系を持つマウスを開発するノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究者が参加するだろう
EBVに感染したマウスで研究者は様々な薬剤をテストし、老化の応答を引き起こして制御可能かどうかを調べるつもりだとLuftigは言う


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1517141113
Metabolic Stress is a Barrier to Epstein-Barr Virus-mediated B-cell Immortalization.
代謝ストレスは、エプスタイン-バー・ウイルスを介するB細胞不死化への障壁である


Significance
エプスタイン-バー・ウイルス/Epstein-Barr Virus(EBV)はヒトに腫瘍を引き起こすことが判明した初めてのウイルスである
ほぼすべての成人がEBVに感染しているが、癌に進行することはほとんどない
その理由を我々はやっと理解し始めたに過ぎない

EBV感染は非常に急速な細胞分裂を一定期間誘発するが、それにはヌクレオチド、アミノ酸、脂質のような代謝産物の供給の増大が必要である
この増大する代謝的な需要を満たすことができないEBV感染細胞は強制的に増殖が止められ、『老化senescence』という永久的な増殖の停止状態に入ることを我々は発見した


Abstract
EBVは発癌性のヘルペスウイルスであり、B細胞リンパ腫や上皮悪性腫瘍の発症の原因として関連付けられている

感染後早くにEBVは一時的に急速な増殖を誘発するが、DNA損傷応答damage responseの活性化ならびにG1/S期増殖停止により増殖は抑制される
この増殖停止により感染細胞のほとんどは長期の成長が阻止される

我々はこの早期の突発的に増殖した後の感染細胞を単離して特徴付けをする方法を開発し、
B細胞の不死化immortalizationを弱める経路をより理解するために遺伝子発現と代謝的プロファイリングを統合した

分析の結果、増殖が停止した細胞はミトコンドリア呼吸レベルが低下し、
TCA回路/クエン酸回路ならびに酸化的リン酸化/oxidative phosphorylationに関与する遺伝子の発現が低下することが判明した
事実、感染早期の細胞における増殖停止は、TCA回路を補うことにより回復した

停止細胞はp53経路の遺伝子標的の発現が増加しているのが特徴であり、この発現増加にはセストリンが含まれていた
セストリンの増加はAMPK活性化につながり、mTORシグナル伝達が低下し、結果として細胞の生存に重要なオートファジーが上昇した

[老化したEBV感染細胞]
 ミトコンドリア呼吸↓,TCA回路↓,酸化的リン酸化↓
 p53↑→セストリン↑→AMPK↑─┤mTORシグナル伝達↓─┤オートファジー↑↑

オートファジーは、代謝的なストレスの間の感染早期の過剰増殖を維持するためにも重要である


最後に、感染早期から長期成長への代謝的な変化を評価したところ、
それにはグルコース取り込みならびに細胞表面のGLUT1レベルの増大が伴い、
この増大が解糖系と酸化的リン酸化の上昇、基礎オートファジーbasal autophagyの抑制につながることが明らかになった

[老化しないEBV感染細胞]
 GLUT1↑→グルコース取り込み↑→解糖系↑,ミトコンドリア酸化的リン酸化↑,(AMPK↓,mTORシグナル伝達↑),オートファジー↓

我々の研究は
癌遺伝子によって誘発される老化が
代謝的ストレスmetabolic stressならびに遺伝毒性ストレスgenotoxic stressの組み合わせによって引き起こされ、
この老化はEBVを介する形質転換transformationに対する内因性の障壁として作用することを実証する


<コメント>
「ミトコンドリアを活発にすれば癌が治る」

『すべての癌』が治るのか?




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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/25975f05fc419689d413391e2d74ee6d
強制的に癌細胞にミトコンドリアを使わせるためには、ミトコンドリアピルビン酸担体/Mitochondrial Pyruvate Carrier(MPC)が機能しているかどうかを調べる必要がある
研究者が癌細胞の細胞質にピルビン酸を増加させた結果、正常なMPCの活性は回復した。このことは担体の異常ではなく『燃料の不足』がプロセスに影響することを示す



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/48c84908b3281faadd5097f99215b450
開発中の抗癌剤のFY26はミトコンドリアを強制的に癌細胞に使わせ、その作用はシスプラチンの49倍強力である



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