機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

2015年4月20日

2015-04-27 18:19:18 | 

癌遺伝子は生命維持遺伝子のスイッチを切って、意図せず癌細胞の生命を終わらせる
Cancer gene unintentionally ends the life of cancer cells, turns off life supporting genes



新しい研究によると、Mycという癌遺伝子は生命を支えるための健康遺伝子(well-being genes)を抑制することによって細胞を自殺させる。今回の発見は、Mycという癌のドライバ遺伝子を癌の暗殺者へと切り替える新薬の開発につながる可能性がある。そして同時に、どのようにして癌の脆弱性の正体を暴くのかについて再考を促すものだと科学者は言う。

Myc癌遺伝子は容赦なく分裂する能力を腫瘍細胞に与えるが、同時にアポトーシスという細胞自殺プロセスを誘発する。Mycは、細胞の核にある1割もの遺伝子に発現を命令することによって細胞を制御する。しかしながら、20年以上の熱心な研究にもかかわらず、Mycによって発現を刺激される自殺遺伝子は発見されなかった。

ドイツのヴュルツブルク大学とフィンランドのヘルシンキ大学の研究者チームは、そのような自殺遺伝子を探すことは見当違いであることを発見した。新しい発見によれば、Mycは細胞の生命維持に必要な健康遺伝子を抑制することによって、癌細胞を脆弱にして死にやすくするのだという。



Mycは転写を指揮する地位の高い司令官であり、ゲノムで数千箇所の遺伝子制御部位を占有する。Mycは最も親しいパートナーであるMaxとMiz-1と協力し、遺伝子のスイッチを入れたり切ったりする。スイッチが入ることにより生じたmRNAと新しいタンパク質は細胞のエネルギー代謝と細胞分裂プログラムを管理し、必要ならば細胞に死ぬよう命令することさえある。癌の場合、Mycの量とその力は圧倒的になり、細胞は激しく分裂し始めて死ぬことを拒否し、腫瘍の塊は急成長する。

ヴュルツブルク大学の教授Martin Eilersと彼のPh.D学生Katrin Wieseは、Maxとは協力するがMiz-1は拒否するという突然変異を起こしたMycを研究していた。Katrin Wieseは次のように説明する。

「この突然変異Mycは遺伝子のスイッチを入れることに支障はなかったが、遺伝子をオフにすることは難しかった。このような障害があっても、変異Mycは細胞に分裂するよう命令することはできたが、細胞に死ぬように命じることはできなかった。」

この実験のすぐ後、研究者は長い間培われてきた考え、つまりMycがいくつかの自殺遺伝子のスイッチを入れることによって細胞が死ぬという考えは正しくないことに気付いた。代わりに、Mycは生命を維持するために必要な遺伝子をオフにすることによって細胞を殺す可能性がある。

それを確かめるため、WieseとEilersはフィンランドのヘルシンキ大学のJuha Klefstrom博士とPh.D学生Heidi Haikalaと協力を求めた。フィンランドの研究者たちはレンチのような形をしたRNAi分子を使って遺伝子をオフにする実験で、SRF(serum‐response factor)という核内の遺伝子を制御するタンパク質へとつながる道筋を特定した。

「癌細胞のMycとそのパートナーのMiz-1は、本来なら行ってはいけない遺伝子制御装置の領域に侵入する。そこでMycとMiz-1は、生命を健康に維持するために必要な遺伝子を妨害する」、Heidi Haikalaは語る。

「この健康遺伝子は、妨害されなければ細胞に生物エネルギーを供給し、他の細胞との関係を安定化する。MycとMiz-1タンパク質はSRFという遺伝子発現制御タンパク質と特に衝突し、この核での衝突は健康遺伝子を打ち倒して癌細胞を自殺させると我々は考えている。」

これらの細胞死の経路と反応は癌の治療法に利用することができるのだろうか?

首席研究者のMartin EilersとJuha Klefstromは、遺伝子のスイッチを切るMycの能力が細胞死の鍵であるというコンセプトに興奮している。

「細胞の活性を下げることは、上げるよりも既存の薬で簡単にできる。これらの新しい発見は、健康遺伝子の活性を低下させる薬が腫瘍細胞のMycの自殺活性を促進しうることを示唆する。」

この研究は4月20日にEMBO学術誌で発表される予定である。

学術誌参照:
1.SRF標的遺伝子の抑制は、Mycに依存的な上皮細胞アポトーシスにとって重要である。

EMBO、2015年4月

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150420084739.htm

<コメント>
癌遺伝子のMycが、どのように細胞の成長と細胞死を促進するのかについての記事です。

MycはMax(Myc associated factor X)がパートナーの時は遺伝子をオンにして細胞分裂を促進し、Miz1(Myc interacting zinc finger protein 1)がパートナーの時はSRF(serum‐response factor; 血清応答因子)を妨害して細胞を自殺しやすくするとのことです。

Abstractを見ると、MycとMiz1が抑制するのは細胞の接着と移動に関与する遺伝子で、インテグリンも含まれています。本来なら細胞同士の接着がAktのリン酸化による活性化を促進するところを、その接着分子が抑制されるので死にやすくなります。




2015年4月16日

2015-04-19 11:23:51 | 生命

基本的なプロセスの第一歩は、治療に使える細胞を作るために利用できる可能性がある
First steps in basic process could be harnessed to make therapeutic cells



胚の初期の細胞を様々なタイプの臓器へと発達するように誘導する分子シグナルを理解することは、組織がどのように再生し修復するのかについての洞察を提供する。発達の複雑な段階の根底にある原理を知ることにより、肝臓や心疾患の組織を修復したり移植するための新しい細胞を自由に作ることができるようになるだろう。

ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院の研究者たちは、このプロセスのちょうど始まりの時点での細胞のアイデンティティの変化がどのようにして生じるのかについて説明することが可能になった。

「科学者としての人生の中で、初期の細胞がどのようにして遺伝子プログラムの1つをオンにすることを『決定』してその他は排除するのかについて私はずっと魅了されてきた」、再生医療研究所のディレクターで細胞発生生物学の教授のKenneth S. Zaret博士は言う。

研究者によれば、今回の発見は多種多様な生医学的状況での細胞運命の誘導に応用できる可能性がある。例えば、受精後の初期胚のように別のタイプの細胞へ変身するときの分子的な変化を理解する際に利用できる。もう一つの例は治療目的で、例えば皮膚細胞を肝臓や血液、心臓細胞に直接変えることである。



 きつく圧縮されて(Tightly Packed)

それぞれの細胞のDNAは長さが2メートルで幅は原子20個分である。この遺伝物質は全て、体内にある14兆個の細胞それぞれの核の中に詰め込む必要がある。これは染色体タンパク質の周囲にDNAを巻きつけたヌクレオソームを一つの単位として、繰り返し構造を作ることによって可能である。これらヌクレオソームはさらにクロマチンと呼ばれる構造に圧縮され、すべてのDNAを細胞の核へと組み込む。

遺伝子発現を調節するタンパク質、つまり転写因子は、その標的であるDNAの作用部位をどのようにしてヌクレオソームの中から捜し出すのか? それは長年の謎だった。

京都大学のノーベル賞受賞者山中伸弥は、マウス皮膚細胞において遺伝子を調節する4つのタンパク質のスイッチを入れることで人工多能性幹細胞(iPS細胞)という胚性幹細胞と似た細胞に変換できることを発見した。遺伝子を調節する4つのタンパク質は、Oct4、Sox2、Kl
f4、c-Mycという転写因子である。これらはまとめて山中因子として知られ、通常は初期胚で活性化している。

山中らの研究を基礎として、Zaretの研究室は山中因子のヌクレオソームとクロマチンに対する標的活性を比較した。細胞にプログラムしたり再プログラム化を引き出すため、転写因子はもともとの細胞タイプではサイレンシング(silencing)されていて発現しないよう決められている遺伝子に結合する必要がある。これらのサイレンシングされた遺伝子は、典型的にはきつくヌクレオソームにグルグル巻きにされて「閉じて」いて、クロマチンの中に埋め込まれている。

最も高いリプログラム活性を持つ転写因子は、そのような閉じたヌクレオソームDNA上にある標的箇所と相互作用するために必要な能力を持つ。これらの転写因子は閉じたクロマチンの分子の変化を開始することができるので「パイオニア因子(pioneer factors)」と呼ばれる。

「これらパイオニアタンパク質の活性は、ヌクレオソームの表面上にあるDNAの特定領域に『適応』できる転写因子の能力と単純に関連する」、Zaretは言う。



 小刻みに揺れ動く因子(Wiggle Factor)

パイオニア因子のDNA結合ドメイン(DBD)は、ヌクレオソームに巻き付いたDNAの標的箇所を認識する。ヌクレオソームでのDNA構造部は染色体と関係するタンパク質によって閉じ込められている。パイオニア因子は、閉じてサイレンシングされたクロマチンの中にあるDNAを最初に標的とすることで、特定の細胞のサイレンシングされた遺伝子の発現を開始させる。それは一つの細胞タイプから別の細胞タイプへの変換を可能にする。

ZaretとSoufiは、パイオニア因子が特別なやり方で小刻みに揺れ動く(wiggle)柔軟な(adaptable)DBDを持つことを発見した。山中因子のOct4、Sox2、Klf4は、小刻みに揺れ動いてパイオニア因子として働くが、cMycはそれらより柔軟性がなく、パイオニア因子によって補助される。

パイオニア因子は小刻みに揺れ動くことにより、染色体タンパク質と複合体を形成しているDNA分子の形状と物理的に適応することができる。

「Oct4、Sox2、Klf4は、クロマチンの『閉じた』部位を標的とすることができる能力によってプログラムを作り直す間のパイオニア因子として機能するが、c-Mycはそうではない。この閉じた部分は、DNAの活性化した部分が持ちうる化学的修飾を欠くという点で『ナイーヴ』である」、Zaretは説明する。

彼らは今回発見した原理の普遍性について調べるために他の研究に目を向け、同じメカニズムが他の例にも適用されることを発見した。皮膚細胞からニューロンを作成するような場合でも、転写因子は細胞をリプログラムする間にパイオニア因子として働く。

学術誌参照:
1.パイオニア転写因子はヌクレオソーム上のDNAモチーフの一部を標的にして、リプログラミングを開始する。

Cell、2015年4月

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150416141032.htm

<コメント>
山中因子のように細胞の運命を変えることができる転写因子は、閉じたヌクレオソーム上の標的と相互作用する能力がある「パイオニア因子(pioneer factor)」であるという記事です。ヌクレオソームのヒストンのメチル化やアセチル化などの修飾によりクロマチン構造は変化しますが、パイオニア因子は閉じたクロマチンに対してもアクセスして転写を開始できるとのことです。

山中因子以外にも例えばFOXA1はエストロゲン受容体による転写調節に先立つパイオニア因子であることが知られていますし、最近の記事でもTNFαシグナルが潜在的なエストロゲン受容体αの結合箇所を露出させて乳癌細胞の転写を変化させるというものがありました。



2015年4月7日

2015-04-12 22:28:38 | 腸内細菌
2015年4月7日

腸の免疫システムは糖尿病治療における有効な標的であることが新たに特定される
Gut immune system identified as a new and effective target in treating diabetes



クローン病のような炎症性腸疾患の治療として一般的に用いられる薬は、肥満マウスの血糖値を下げることが示された。この研究結果は、ヒトの糖尿病の治療における有効な標的である可能性を明らかにする。

「これらの結果は斬新で、そして非常に重要である。我々は腸に存在する免疫システムが血糖のコントロールに関与することを特定した。これは、腸の免疫学のあらゆる分野を利用して肥満とそれに伴う高血糖のような状態を研究する道を開く」、トロント総合研究所(TGRI)の糖尿病研究グループの科学者Dan Winerは言う。彼の研究室は双子の兄弟のShawn Winerとともに今回の研究を先導し、2人とも本論文の首席著者である。彼らの研究はCell Metabolism誌の2015年4月7日オンライン版で発表される。



過体重、特に腹部やウエスト周りでの肥満は、2型糖尿病を発病する可能性を増加させる。多くの科学者が答えようと試みている問題は、次のようなものである。

「なぜ肥満はインスリン抵抗性の原因となるのか?」

Winer兄弟は以前の研究で、腹部脂肪の内側の免疫細胞は炎症誘発性の化学物質の放出を引き起こし、血糖値を調節するホルモンのインスリンへの感受性を低下させることを示した。これはインスリン抵抗性として知られ、2型糖尿病の主要な引き金である。

今回の研究の焦点は脂肪組織ではなく腸である。Winer兄弟は、高脂肪で高カロリーの食餌を与えられたマウスの腸は通常のマウスよりも炎症誘発性の免疫細胞が多く、免疫を制御して終結させるのを補助する細胞が少ないことを発見した。同じ結果が14人のヒトでも観察され、そのうちの7人は肥満だった。

高脂肪食は腸の免疫細胞に炎症性の変化を誘導して免疫バランスを混乱させ、それは次に化学的カスケードを作動させて腸壁に損傷を与える。腸壁の損傷により、細菌の産物は血流に漏れ出す(leak)。この漏出はインスリン抵抗性の原因であり、そうなると細胞はもはやインスリンに反応することができず、インスリンを使って効果的に血糖を安定させることは不可能になる。

「このプロセスのちょうど始まりで炎症誘発性の免疫細胞を阻害することができれば、我々はより効果的に疾患を治療することができるだろう」、Shawn Winerはそのように推論する。彼はユニバーシティ・ヘルス・ネットワーク(UHN)薬剤プログラム研究室の胃腸病理学フェローである。

「腸に再び焦点を合わせることで、我々はさらに多くの(糖尿病の)治療選択肢を手にする。なぜなら、炎症を起こした腸の治療に利用できる承認薬は既にたくさん存在するからである。」



研究者は続いて、肥満マウスで観察される腸の炎症を標的にすべく5-ASAを投与した。5-ASA(メサラジン)は炎症性腸疾患を治療するために一般的に用いられている薬である。この薬はマウスのインスリン抵抗性を打ち消して、ほとんど通常のレベルまで血糖を低下させた。

「この薬を使うことでマウスの2型糖尿病を防げることが判明した」、UHNの内分泌病理学者であり、トロント大学の薬剤病理生物学研究室の助教授でもあるDan Winerは言う。

彼はさらに、腸を標的にするいくつかの薬剤は腸でのみ局所的に働き、腸以外の部分への吸収と副作用は最低限で済むことを指摘する。

学術誌参照:
1.腸への抗炎症性物質の投与による、肥満と関連するインスリン抵抗性の調節。

Cell Metabolism、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150407123054.htm

<コメント>
高脂肪食は腸の免疫を変化させてバリアを破壊し、インスリン抵抗性を引き起こすという記事です。

Abstractを見ると、マウスのインテグリンα4β7のβ7だけを欠損させて腸への免疫細胞のホーミングを抑制すると高脂肪食によるインスリン抵抗性は減少し、5-アミノサリチル酸(5-ASA)を投与すると結腸の炎症は回復して代謝パラメーターは改善したとあります。

下の画像の免疫細胞を数えてみると、Th1、CD8+T、IL-17産生γδT細胞は増加し、Treg(制御性T細胞)とNKp46+CD4-ILC(自然リンパ球/ILC。IL-22を産生して杯細胞からのムチン合成を促進する)は減少して、Th17は変化がなかったようです。


本文を見ると、サイトカインのIL-10とIL-22が低下し、代わりにIFN-γ、IL-17、IL-12p40、IL-1β、TNF-αが増加しています。IFN-γやTNF-αはタイトジャンクションを構成するタンパク質(ZO-1、occludin、claudin-1)の配置を変化させて、バリア機能を低下させることが知られています。

高脂肪食による免疫の変化は、食物に対する免疫寛容も低下させるとも書かれています。最近ブログで、高タンパク食/高脂肪食をしていてだんだん調子が悪くなり、IgGを計測してみるとグラフを振り切るほど数値が高かったという記事をいくつか見かけます。何か関係があるのかもしれません。

数年前のDiabetes誌に高脂肪食による代謝性エンドトキシン血症についての論文が掲載されていました(翻訳記事)。今Google Scholarで検索すると被引用回数が1500を越えていて、この分野への関心の高さが伺えます。


2015年4月9日

2015-04-12 09:27:16 | 腸内細菌

微生物は腸のセロトニン産生を助ける
Microbes help produce serotonin in gut



セロトニンは脳の神経伝達物質として有名だが、体内のセロトニンの約9割が消化管で作られると推定されている。実際、この末梢のセロトニンのレベルの変化は、過敏性腸症候群や心血管疾患、骨粗しょう症のような疾患と関連づけられている。Cell誌の4月9日号で発表されたカリフォルニア工科大の新しい研究は、腸の特定の細菌が末梢のセロトニンの産生にとって重要であることを示す。

「マウスや他のモデル生物が腸の微生物の変化によって行動の変化を示すという研究はますます増えている」、生物学と生物工学の研究助教授であり、研究の首席著者でもあるElaine Hsiaoは説明する。

「我々は、微生物がどのようにして神経系と情報を交換するのかについて関心がある。
我々はまず初めに、通常の腸の微生物が宿主の神経伝達物質のレベルに影響するのかを調査した。」

末梢のセロトニンは、腸クロム親和性(enterochromaffin; EC)細胞によって消化管で作られる。さらに、特定のタイプの免疫細胞とニューロンも作ることができる。Hsiaoたちは最初に、腸の微生物がセロトニンの産生に影響を及ぼすのか、そしてもし影響するならどのタイプの細胞が関与するのかを知ろうとした。

彼らは、通常の腸内細菌を持つマウスと、常在微生物を持たない無菌マウスの末梢セロトニンレベルを測定することから始めた。その結果、無菌マウスのEC細胞は、通常の細菌コロニーをもつマウスのEC細胞よりもセロトニンの産生が約60パーセント少なかった。これらの無菌マウスに通常の腸微生物を再定着させるとセロトニンレベルは戻った。これはセロトニン産生の障害は回復できることを示す。

「EC細胞は腸のセロトニンを大量に作り出す源である。我々がこの実験で観察したのは、EC細胞のセロトニン産生は微生物に依存するらしいということだ。少なくとも、その大部分は」、論文の筆頭著者のJessica Yanoは言う。

研究者は次に、腸に住む多様な微生物の中から特定の種類がEC細胞と相互作用してセロトニンを作るのかどうかを調べた。YanoとHsiaoたちは既知の腸内微生物の組み合わせを調査し、約20種の芽胞菌(spore-forming bacteria)が存在すると無菌マウスのセロトニンレベルが上昇することを観察した。この細菌のグループを投与されたマウスは無菌マウスと比較して胃腸運動の増加を示し、血小板の活性も変化した。血小板はセロトニンを使うと凝固を促進することが知られている。

この微生物と宿主の間の興味深い協力に関与するメカニズムを明らかにすべく鍵となる分子を探した結果、彼らはいくつかの微生物の代謝産物を特定した。その代謝産物は芽胞菌によって調節され、培養EC細胞からのセロトニン産生を増加させた。さらに、無菌マウスでこれらの代謝産物を増やすとセロトニンレベルは増加した。

この分野の以前の研究は、いくつかの細菌が単独でセロトニンを作れることを示した。しかし今回の新しい研究は、体内のセロトニンの多くは特定の細菌に依存し、細菌は宿主と相互作用することでセロトニンを作らせることを示唆するとYanoは言う。

セロトニンはヒトの健康の多くの面で重要だが、Hsiaoは「これらの発見がクリニックで使えるようになるにはもっと多くの研究が必要である」と警告する。

「我々は一群の細菌を特定したが、それらはセロトニンを増加させること以外にもおそらく影響がある」と彼女は言う。

「また、末梢の過剰なセロトニンが有害らしい病態も存在する。」

本研究は腸内のセロトニンに限られたものだが、Hsiaoと彼女の研究チームは現在、このメカニズムが脳の発達にとっても重要かについて調査している。

「セロトニンは様々な生物学的プロセスに関与する重要な神経伝達物質でありホルモンである。腸の微生物がセロトニンレベルを調整するという発見は、それらを使って生物学的変化を促進するという興味深い見通しを増やす」、Hsiaoは言う。

記事出典:
上記の記事は、カリフォルニア工科大学によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.腸微生物叢の常在菌は、宿主のセロトニン生合成を調節する。

Cell、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150409143045.htm

<コメント>
腸内細菌の特定の種類がセロトニンの産生に重要という記事です。

Abstractを見ると、ヒトとマウスがもともと持っている芽胞を作る細菌(indigenous spore-forming bacteria from the mouse and human microbiota)による代謝物は、腸のクロム親和性細胞(enterochromaffin cells)のトリプトファンヒドロキシラーゼ1(Tph1)の発現を増加させて、セロトニンserotonin (5-hydroxytryptamine, 5-HT) の生合成を促進するという内容です。作られたセロトニンは粘膜、腸管、循環血小板に供給されて、胃腸管/消化管の運動性と、血小板の機能を調整するとあります。

Referenceを見ると、胆汁酸のコール酸(cholic acid)、二次胆汁酸のデオキシコール酸(deoxycholate)、腸内細菌のクロストリジウム属が関係あるようです。Referenceの一つには、Clostridium scindensによる7α-脱ヒドロキシ化(7α-dehydroxylation reaction)が胆汁酸を変化させ、クロストリジウム・ディフィシレ(C. difficile)への感染への抵抗性を促進しているというものがあります。免疫の変化なのか腸管の運動性の結果なのかは分かりませんが、これがつまりセロトニンが腸管に分泌されることによる効果ということなのでしょう。

腸内のセロトニン産生にはビタミンDが関与するという記事がありました。

自閉症の子供では早くから胃腸の問題が起きやすいという記事もあります。





2015年4月8日

2015-04-10 09:45:46 | 

脳腫瘍の弱点が特定される
Biologists identify brain tumor weakness



MITとホワイトヘッド生物医学研究所の生物学者は、脳腫瘍細胞の脆弱性を発見した。この発見は脳腫瘍に対して今よりも有効な薬を開発するために利用できる可能性がある。

ホワイトヘッド研究所とMITコッホ統合がん研究所の研究者を中心とする研究チームは、膠芽腫という腫瘍の一部がアミノ酸のグリシンを分解する酵素に依存することを発見した。この酵素がないと、代謝による有毒な副産物が腫瘍細胞に蓄積して細胞死に至る。この膠芽腫の酵素を阻害することは腫瘍と戦う新しい方法を提供できるとDohoon Kimは言う。彼はホワイトヘッド研究所の博士課程終了者(postdoc)で、Natureの4月8日オンライン版に発表される今回の研究の筆頭著者である。MITの生物学教授でありホワイトヘッド研究所の一員でもあるDavid Sabatiniは論文の首席著者である。

GLDC(glycine decarboxylase; グリシンデカルボキシラーゼ)という酵素が研究者の注目を引いたのは「先天性代謝異常」という疾患を調査している時である。それらの疾患は細胞が特定の代謝酵素を失っているときに生じる。この障害の多くは、特に脳の発達に影響を及ぼす; 先天的な代謝異常の中で最も一般的なものは、アミノ酸のフェニルアラニンを分解することができないことが特徴のフェニルケトン尿症である。この患者は知的障害と癲癇発作のような問題を防ぐためにフェニルアラニンを避けなければならない。

グリシンを分解するGLDCが欠損すると「非ケトン性高グリシン血症」という障害が生じる。この障害はグリシンが脳で蓄積するために重症の精神遅滞の原因となりうる。そしてGLDCは、膠芽腫の一部でもしばしば過剰に活性化している。膠芽腫は脳腫瘍の中でも最も一般的で最も攻撃的なタイプである。

研究者は、GLDCが過剰発現するのはSHMT2遺伝子の発現も高い膠芽腫細胞だけであることを発見した。SHMT2はセリンをグリシンに変換する酵素である。それらの細胞は非常に強くGLDCに依存しているため、GLDCを失うと細胞は死ぬ。

更なる研究により、SHMT2はいわゆる虚血領域(酸素と栄養が非常に少ない領域)に住む癌細胞で最も高く発現することが明らかになった。虚血領域(ischemic regions)は腫瘍の中心にしばしば見られ、血管が到達することができない場所である。この低酸素環境ではSHMT2が細胞に生存上の優位を与えることが判明した。その理由は、SHMT2はブドウ糖を分解する細胞の仕組み(解糖系)の一部であるPKM2という酵素の活性に間接的に影響することができるためである。

PKM2の調節は新しい癌細胞を作るための素材を生み出すことができるかどうかに影響を与え、さらに、虚血領域では乏しい資源である酸素の消費にも影響を及ぼす。

「SHMT2の活性が高い細胞はPKM2の活性が低く、それゆえに酸素消費率も低い。それは虚血性の腫瘍微小環境において生き残るために好都合である」、Kimは言う。
しかしながら、この過剰に活性化したSHMT2は、グリシンも過剰に供給する。そのグリシンを細胞はGLDCを使って分解しなければならない。
GLDCが存在しないとグリシンは異なる代謝経路に入って有毒な産物を生じ、蓄積して細胞を殺す。
研究者によると、このようなGLDCに依存的な細胞はGLDC活性を阻害する薬で殺すことができるかもしれないという。

彼らは現在、まさにそのような化合物を探しているところである。

学術誌参照:
1.SHMT2は虚血において神経膠腫の生存を促進するが、グリシン除去への依存を強要する。

Nature、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150408141643.htm

<コメント>
脳腫瘍で血液による酸素が届かない領域では、酸素を使わないように代謝が組み替えられているという記事です。

Abstractによると、脳腫瘍の一部ではセリンからグリシンに変換するSHMT2(mitochondrial serine hydroxymethyltransferase 2)の発現が上昇し、SHMT2はPKM2(pyruvate kinase 2)を抑制することで、TCA回路に入るピルビン酸を減少させて酸素の消費を抑えています。

代わりに生じるグリシンをグリシン開裂系のGLDC(glycine decarboxylase)により代謝できないと、アミノアセトン(aminoaceton)やメチルグリオキサル(methylglyoxal)という有害な代謝物が生じるとのことです。



2015年3月20日

2015-04-09 00:33:12 | 代謝

危機の間に肝臓の維持を補助するバックアップシステムが発見される
Backup system that helps sustain liver during crisis discovered



モンタナ州立大学とスウェーデンの科学者は、他のシステムが失われるか障害を生じたときに肝臓の機能維持を補助する『抗酸化システム』を発見した。

電力が不足している時に始動する発電機や主役が病気の時にステージに上がる代役のように、新しく発見されたシステムは危機的状況の間に増大する。それはアミノ酸のメチオニンによって燃料を供給され、ハーブティーやサプリメントからは得られない。メチオニンはヒトの体内で作ることができず、タンパク質を食べることによってのみ得ることができる。

「これは重要な発見である」、MSUの微生物学と免疫学部の教授であり、研究の共著者でもあるEd Schmidtは言う。

「それは我々に、ヒトと全ての生物について語る。これはあなたの細胞が生存に必要とするバランスを維持するための、もう一つの方法である。」

Schmidtはカロリンスカ研究所の共同研究者らと共に、彼らの発見をNature Communicationsで3月20日に発表した。カロリンスカ研究所はヨーロッパで最大の、そして最も卓越した医学大学の1つである。

いくつかのビタミンとサプリメントは抗酸化物質の働きをするとSchmidtは言う。酸化は加齢や癌、炎症性疾患の原因となりうるが、抗酸化物質は細胞をそのような損傷から保護するのに役立つ。しかしながら、ビタミンとサプリメントは、肝細胞にもともと存在する2つのシステム、チオレドキシンとグルタチオンを置き換えることはできない。

詳しく調査するため、Schmidtの研究室は2つのシステムの重要な構成要素を肝臓に持たないマウスを開発した。そのマウスは弱々しく、ほとんど死ぬ寸前だったとSchmidtは言う。しかし彼らは生き残った。

研究者はその謎を追い求め、第3の抗酸化システムを発見した。この発見はヒトの健康問題に広範囲の影響があるという。その力の驚くべき源はメチオニンである。

「メチオニンは含硫アミノ酸であり、細胞がタンパク質を作るために食事で取る必要がある。さらに、メチオニンは以前は知られていなかった強力な抗酸化物質である。これまで調べられてきた他のいかなる抗酸化物質とも異なり、他の2つの抗酸化システムが存在しないか障害を生じたときでも、メチオニンは肝臓を維持することが可能である」、Schmidtは言った。

「それはよく知られていたが、影に隠れていた」、Schmidtは続ける。

「強力で普遍的な2つのシステムを取り除いても肝臓は生き残ることを発見したことで初めて、我々はこの第3のシステムの役割を認識した。」

メチオニンは、卵、肉、魚、ブラジルナッツ、ゴマの種、そして穀物に多い。

「標準的なバランスのよい食事には、メチオニンが多く含まれる」、Schmidtは言う。

「これが問題になるのは、食事からタンパク質が欠乏していたり、おそらく何らかの毒にさらされた時などの極端なケースだけである。」

学術誌参照:
1.食事に含まれるメチオニンは、マウスの肝臓において細胞質の酸化還元ホメオスタシスを維持することが可能である。

Nature Communications、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150320133114.htm

<コメント>
メチオニンは、肝臓の抗酸化システムのバックアップとして働くという記事です。

Abstractを見ると、チオレドキシン(thioredoxin)とグルタチオン(glutathione)の経路は、グルコースからペントースリン酸経路を経て得られるNADPHに依存的に肝細胞の抗酸化経路を維持しています。

それらの経路の内、チオレドキシンレダクターゼとグルタチオンレダクターゼを欠損したマウスはNADPHに依存しない3番めの経路により生き残りますが、シスタチオニンγ-リアーゼ(cystathionine γ-lyase)を阻害すると肝細胞は急速にネクローシスしたそうです。


「メチオニンによって促進される含硫置換基移動が、NADPHに依存しない経路を経由してグルタチオンの合成に必須の前駆体であるシステインを合成酵素に供給する。食事によるメチオニンは細胞のジスルフィド還元力ならびにすべての含硫アミノ酸を供給する」とあります。

メチオニンとコリンを欠乏させることでNASHを引き起こすモデルマウスとも関係がありそうです。


2015年4月2日

2015-04-05 23:39:50 | 代謝

脳と腸の関係:
体重を調節する脳細胞の、重要な遺伝子の引き金

The brain-belly connection:
Scientists find key genetic triggers in weight-regulating brain cells


あなたに食べるように命じる、または食べることを止めることを命じる頭の中の小さな声は、実際には小さな声ではない。実際、それは約1万もの特殊な脳細胞の集まりである。今回、科学者の国際研究チームはそれらの細胞の内側にある小さい『引き金』の存在を明らかにした。その引き金は『声』を生み出し、一生の間ずっとあなたに話し続ける。

この新しい研究は魚とマウスで実施されたもので、食べ過ぎるヒトやほとんど食べないヒトにはまだ適用することはできない。しかしそれは、DNAのほんの一部が人体の食欲と体重の調節に対してどのようにして大きな影響を及ぼすかについて明らかにする。これは体重の調節に関与する脳細胞の遺伝子がどのように制御されるかについての初めての厳密な考証である。

今週のPNASオンライン版で発表される論文と最近のPLoS Geneticsの論文において、研究チームはPOMCと呼ばれるニューロンにとって重要な遺伝子調節因子に関する発見を報告する。脳内の深い位置にある視床下部に存在するPOMCニューロンの集まりは、満腹感や空腹感のコントロールセンターである。POMCニューロンは体内からの信号を受け取り、化学的シグナルを発して食欲と摂食を調節する。POMCニューロンが存在しないか正しく機能していないと、動物とヒトは危険なまでに肥満になる。今回の新しい発見は、POMCニューロンの内側にある特定の遺伝子の『引き金』が作用していなくても同じことが起きることを動物実験で示す。

Malcolm Low医学博士(ミシガン大学メディカルスクール)とMarcelo Rubinstein博士(アルゼンチン・ブエノスアイレス大学)らが率いる研究チームは長い間POMCシステムを研究してきた。彼らの新しい発見は、食欲を調節するシグナルを生じるPOMCニューロンの遺伝子、つまりPomc遺伝子が中心である(Pomcはproopiomelanocortin/プロオピオメラノコルチンの略)。

しかし、遺伝子の研究それ自体はPOMC細胞がなぜ、そしてどのように活動するのかについての一部始終を語ってくれるわけではない。研究チームは2つの新しい論文において、転写因子と2つのエンハンサーがどのようにPomc遺伝子の引き金として働くのかについて報告する。これら3つはすべて、POMC細胞がどのくらいの頻度で、そしていつその遺伝子を使ってシグナル分子を作り、体内に伝えるのかを調節する。

さらに、Islet 1という転写因子は、生まれる前の脳の発達で最も初期の段階の間にPOMC細胞が正しく育つのを助ける際にも重要な役割を演じる。

「脳はレプチンというホルモンからの影響に反応して体重を調節するが、POMC領域はその調節するための手段の中核である」、分子統合生理学部の教授であるLowは言う。

「我々は、Pomc遺伝子がこれらのニューロンでどのように調節されるのかについて理解することに関心がある。POMCニューロンは非常に小さい集まりだが、仕事としては大きい。」



遺伝子の引き金を徹底的に調べる

PLoS Geneticsで報告された発見は、2つの異なる遺伝子エンハンサーの影響を示す。エンハンサーはPomc遺伝子の近くのDNAに存在する配列で、細胞がDNAを読み込むことを容易にする。空港の滑走路への道をパイロットに示すシグナルライトのように、エンハンサーはタンパク質を遺伝子の方へ導く。

研究者は2つのエンハンサーがお互いを補うように働くことを明らかにした。それらは両方とも重要な時にPomc遺伝子の発現を促した。2つのうち1つはすべての哺乳類で同じ形で見つかり、もう1つはすべての胎盤哺乳類の間で見つかる。このことは、2つのエンハンサーが進化の過程を通じて完全に保たれてきたことを示唆する。

このnPE1とnPE2と呼ばれるエンハンサー(neuronal POMC enhancer)は、脳内でのみPomc遺伝子を特に調節することを新しい研究は示す。それらの両方とも持たずに生まれたマウスは、あたかもPomc遺伝子が働かなくなったかのように肥満になった。一方、nPE2だけを持たないマウスはnPE1がそれを補うことで正常に育った。Pomcの重複するエンハンサーシステムはこの遺伝子の重要性を示唆するとLowは言う。

しかし、Pomc遺伝子を読み込むように細胞の引き金を引くのが具体的に何なのかについて理解するとなると、遺伝子のエンハンサーは方程式の一部に過ぎない。エンハンサーにくっつくタンパク質、つまり転写因子も不可欠である。



研究者はPNASの新しい論文で、Isl1遺伝子によってコードされる転写因子Islet 1が、このPomcにとって重要な役割を演じると報告する。その名前が示唆するように、Islet 1は膵臓の膵島細胞(islet cells)において転写因子として働くが、それはPOMCニューロンでも発現することが判明した。妊娠の途中に視床下部の細胞がIslet 1を作らないように阻害すると、胎児マウスのPOMCニューロンはまったく育たなかった。さらに、生まれる前の視床下部で正常にIslet 1を作らせてからその後に阻害すると、POMCニューロンの量は著しく低下し、そして肥満になった。

研究者はゼブラフィッシュでもIslet 1の重要性を示すことができた。発達初期においてIslet 1転写因子を阻害されたゼブラフィッシュも、マウスと同様にPOMCニューロンは発達しなかった。ゼブラフィッシュはPomc遺伝子の転写の調節にnPE1/2とは異なる遺伝子エンハンサーを使うので、この結果はIslet 1それ自体の確かな重要性を示す。

「まとめると、本研究は脊椎動物におけるニューロン特異的な遺伝子の最初の例を表す。そこで我々が明らかにしたのは、エンハンサーとそして様々な種で共有される転写因子は、脳を発達させる際に、そして成人になってからも生涯を通じて遺伝子発現を制御するということである」、Lowは言う。



今後の方向

Islet 1の喪失の影響、そして2つのPomc遺伝子エンハンサーの一方または両方の喪失についての研究は、これらの引き金の重要性を示すと彼は言う。しかし同じ要因がヒトでも同じように作用するかどうかの研究は、他のエンハンサーと転写因子が関与する可能性があるためさらに複雑になると思われる。これまでのヒトのゲノムワイド研究では、Isl1遺伝子の変化と肥満との間に関係はまったく示されていない。

POMCニューロンへのシグナルとPOMCニューロンからのシグナルの結合を追跡する画像化研究は、更なる手がかりを明らかにした。そして理論的には、Pomc遺伝子産物の産生を増加させる薬や、機能不全を起こしたPOMCニューロンの代わりの細胞を発達させる薬を発見できる可能性はある。

「ヒトでは、Pomcの調節は体重管理の方程式の一部かもしれない」、Lowは言う。

「まだはっきりとはわからないが、マウスモデルに似ている可能性があると我々は考えている。マウスモデルではその役割がダイヤルと似ていて、Pomcの発現量と肥満度の間は線形関係である。この研究は、脳がどのようにして摂食を調節するのかについての全体的な理解への道を開く。」

LowとRubinsteinは、POMCニューロンの研究を続けるために米国国立衛生研究所(NIH)から助成金を新たに受け取ったばかりである。彼らは他の転写因子を探し、そしてPOMCニューロンを刺激する際のレプチンとエストロゲンの役割を調べたいとしている。

彼らはさらに、人工多能性幹細胞(iPS)から発達するニューロンを使ってPOMCニューロンが育つ間の遺伝子の活性も研究したいと考えている。加えて、妊娠中または授乳中のマウスでPOMC発現が低下して摂食が増加するときのPOMC活性を研究するつもりである。

記事出典:
上記の記事は、ミシガン大学ヘルスシステムによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.Islet 1は視床下部メラノコルチンニューロンの同一性を特徴づけ、成人期における正常な食物摂取と肥満にとって重要である。

PNAS、2015;

2.部分的に重複するエンハンサーは、哺乳類のPomc発現を重要な機能的閾値を上回るように協力して維持する。

PLoS Genetics、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150402081628.htm

<コメント>
視床下部で満腹感を調節するPOMCニューロンでPomc遺伝子の発現を調節する3つの因子についての記事です。

POMC(プロオピオメラノコルチン)からは、エンドルフィン (オピオ)、メラニン細胞刺激ホルモンMSH (メラノ)、副腎皮質刺激ホルモンACTH (コルチン) が作られ、その産物の一つのα-MSHが食欲を抑制します。

POMCがないマウスは食べ過ぎて肥満になりますが、ヒトではIslet 1をコードするIsl1遺伝子の多型は肥満との関係が見つかっていないとのことです。

下の画像は、左が正常に成長しているマウスの視床下部POMCニューロンの画像で、緑色は転写因子が作られていることを示し、オレンジ色は細胞の正常な産物を表しています。
右では転写因子の遺伝子が削除され、細胞は転写因子を作らなくなり、体重の調節を助ける正常な産物も作られていません。