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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

インスリンの新しい役割が発見される

2015-10-31 06:02:42 | 
New role for insulin: Studies tie the hormone to brain's 'pleasure' center

Findings also shed light on food choices, obesity

October 27, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151027074802.htm


(げっ歯類の脳細胞の画像
インスリン受容体(緑色)が活性化するとドーパミンの放出を促進する)

血糖レベルや食後の満腹感を制御するインスリンはすべての哺乳類にとって必須のホルモンだが、
インスリンはドーパミンの放出の調節にも強く関与することがニューヨーク大学のランゴンメディカルセンター/NYU Langone Medical Centerの新たな研究によって示された
ドーパミンは脳内で『報酬や喜びreward and pleasure』に関与する部分の制御を助ける神経伝達物質である

「我々はインスリンが脳内に多いほどドーパミンが多く放出されることを発見した」
NYUランゴンの神経科学者、Margaret Rice, PhDは言う

彼女たちのげっ歯類での実験はインスリンレベルが上昇するとドーパミンの再取り込みreuptakeを助けるだけでなく、正味の/最終的なnet影響はドーパミンレベルの上昇であることを初めて示すものだという

また、この結果はおそらくドーパミン経路におけるインスリンの役割が食物の選択に影響するかもしれないことを初めて実証するものだろう


Riseたちのげっ歯類の実験では、インスリンによって線条体の領域で放出releaseされるドーパミンが20%から55%上昇した
線条体はドーパミンが作用する場所の一つで、報酬rewardを得たことに対する応答を制御する器官である
この上昇はインスリン活性の上昇とほぼ同じ時間timeframeに生じたが、
これはドーパミンが再吸収(再取り込み)されるにもかかわらず起きた
ドーパミンは脳内の他の領域で動物に『食欲は満たされたappetite is satisfied』ことを伝える


Riceたちはさらに実験を続け、低カロリーのエサを与えたラットは脳内の増加したインスリンレベルに対して感度sensitivityが10倍になることを明らかにした
(つまり通常のエサのラットと比較して、上昇したインスリンレベルのわずか10分の1しか吸収takeしない)
対照的に、高カロリー食のラットは線条体-脳のインスリン応答性をすべて失った

「我々の研究は、脳内の報酬系の一部としてのインスリンの新たな役割を確立すると考えている
そして哺乳類は、おそらくヒトも、インスリンをより多く分泌させる高炭水化物または低脂肪食(低カロリー食)を選んだ方が良いmayということである
それらはすべてドーパミン放出を高める」


Riceによると、この発見が重要である理由は
脳内の慢性的なインスリンレベルの上昇とインスリン感度の低下が肥満や2型糖尿病と密接に結びついているからであるという

Riceの研究チームはさらなる実験で、インスリンがどのようにして哺乳類の脳で食の動機付けや報酬経路の制御に影響するのか、
そして肥満によってもたらされるインスリン感度の変化を無効にしたり予防できるのかどうかを調べる予定である


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms9543
Insulin enhances striatal dopamine release by activating cholinergic interneurons and thereby signals reward.
インスリンはアセチルコリン作動性の介在ニューロンの活性化によって線条体のドーパミン放出を促進し、それにより報酬シグナルを伝達する



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150130092921.htm
自閉症スペクトラム障害と関連付けられた遺伝子の多型はドーパミン輸送機能を障害する
 

うつ病の原因の一部はミクログリア

2015-10-30 06:01:11 | 
New depression diagnosis and treatment

October 22, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151022095223.htm

エルサレム・ヘブライ大学/Hebrew University of Jerusalemの研究者によると、今や大うつ病major depressionは脳内の免疫細胞の異常によって起きると考えられるという
これは次世代の精神科薬物治療に急激な変化をもたらすだろう

中枢神経系で活発にはたらく最も中心的なfirst and main免疫防御細胞である『ミクログリア』は、うつ病を引き起こす原因として重要である可能性がある
最新の理論はうつ病に対する薬物治療medicationsの新たな開発への道を開く


大うつ病は6人に1人が一生のうちにいつかはかかる病気である
世界的に心身障害の主な原因でありthe leading global cause of disability、その数は心血管疾患と呼吸器系疾患、癌、HIV/AIDSを合わせたよりも多い

ピアレビュー誌のTrends in Neurosciencesで発表された革新的な理論に関するレビュー論文でエルサレム・ヘブライ大学の研究者は、
「うつ病の生物学的な理解の進展progressは遅い」と述べ、うつ病は「ニューロンの機能の異常」が原因という考えを越える必要があることを示唆する

精神生物学psychobiologyの教授で主席著者のRaz Yirmiyaによると、
しばしば研究者に無視されてきた『ニューロン以外の細胞』がうつ病の原因としてより強く関与している可能性があるという

ヘブライ大学などによる最近の研究で、うつ病の中にはミクログリアの機能異常によって起きるものがあることが判明している

「しかしながら、」とYirmiya教授は警告するcaution
「これはうつ病や精神疾患のすべてがミクログリアの異常が原因であることは意味しない」


Yirmiya教授による新しい研究は将来の抗鬱薬の開発に強い影響を与える
現在の抗鬱薬は常に望み通りの効果が得られるわけではなく、うつ病の根本的な原因を診断して適切に治療するための生物学的なメカニズムならびに薬剤の標的を新たに発見する必要に迫られている

ヘブライ大学の研究者は、ミクログリアの異常がうつ病を引き起こし、その正常な機能を回復する薬が速効性の抗鬱剤fast-acting anti-depressantsとして有効であると主張するclaim

ミクログリアは脳の全細胞の10%を占める免疫細胞であり、細菌やウイルスによる感染と戦う
ミクログリアは脳の傷害injury and traumaによって生じたダメージを修復し治癒させるプロセスも促進する


「ミクログリアについての我々の見方は過去十年で劇的に変化した」
Yirmiya教授は言う

「我々は今や、ミクログリアがニューロン間の接続(シナプス)の形成ならびに微調整に関与することを知っている
ミクログリアは生涯を通じて接続の変化にも関与し、そのような働きは正常な脳や行動の機能にとって重要である
機能とは例えば、痛みの感覚や気分、認知能力などである」

「ミクログリアの構造と機能が変化するともはや正常な脳と行動のプロセスを調節することができなくなり、
うつ病につながる可能性があるということが、ヒトの死後の脳組織や特別な画像化技術、動物モデルを使ったうつ病の研究で実証された」

事実、うつ病の高い発生頻度と関連する多くの病態でミクログリアの変化が生じる
例えば感染症、損傷injury、外傷trauma、加齢、多発性硬化症のような自己免疫疾患、アルツハイマーのような神経変性疾患である

これらの病態conditionsでミクログリアは『活性化』状態になって大きく丸くなり、脳内の炎症性応答を調整orchestrateする化合物を分泌する

ミクログリアの形状と機能は慢性的で予測不能なunpredictable精神的ストレスの後にも変化する可能性があり、そしてストレスはヒトのうつ病の主な原因の一つである
さらに重要なこととして、Yirmiya教授のラボの最近の発見によると、
そのようなストレスへの曝露後にいくらかのミクログリアは死んでしまい、残った細胞は小さくなり変性するようだという

これらの発見は理論的にも臨床的にも意味がある
新しい理論によると、ミクログリアは活性化しても弱体化declineしてもうつ病につながりうるという
ゆえに、同じ種類の薬が一律にuniformlyうつ病を治療できるわけではない

Yirmiya教授は、まず個々の患者のミクログリアの状態を最初に確定した上で個別化された医学的アプローチを選ぶべきであると主張するassert
そうした最初の評価に基いて、過剰に活性化したミクログリアを阻害するか、抑制されたミクログリアを刺激するための薬を利用すべきであるという


http://dx.doi.org/10.1016/j.tins.2015.08.001
Depression as a Microglial Disease.
ミクログリア疾患としてのうつ病



[ミクログリア]
 [TRP─(IDO)→Kyn ─(KMO)→3-HK ─(KYNU)→3-HAA ─(HAAO)→QUIN] →QUIN→NMDAR→うつ病├─ケタミン
     ┬
     │
1-MT

※1-MT/1-Methyltryptophan: IDO阻害剤


 TRP─(TH)→5-HT/セロトニン ⇒ニューロンへ

 Kyn─(KAT)→KYNA/キヌレン酸 ⇒アストロサイトへ
    ┬
    │
LPS,IL-1β,IFNs,精神的ストレス



ミクログリアの刺激による治療
 M-CFS、GM-CSF

ミクログリア抑制による治療
 ミノサイクリン、TNF-α阻害剤、IL-1ra、NSAIDs



関連サイト
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%8C%E3%83%AC%E3%83%8B%E3%83%B3%E7%B5%8C%E8%B7%AF
L-トリプトファンの代謝



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151016084936.htm
Inflammation in the brain is linked to risk of schizophrenia, study finds
ミクログリアによる炎症は統合失調症と関連する



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25883614
Fatigue sensation following peripheral viral infection is triggered by neuroinflammation

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4392663/figure/F1/
 ウイルス感染→[末梢マクロファージ]TLR3→[脳内ミクログリア]IL-1β→IFN-α→セロトニン輸送体─┤セロトニン→運動能
 

抗癌剤による貧血を説明する2つの酵素

2015-10-29 06:43:49 | 癌の治療法
Double enzyme hit may explain common cancer drug side effect

October 12, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151012181031.htm

白血病の多くは、Ptenのような酵素の喪失か、またはShp2のような酵素の過剰な活性化によって起きる
Ptenは細胞の増殖を抑制し、Shp2は細胞の増殖を促進する

 Pten─┤細胞増殖

 Shp2→細胞増殖


白血病の治療薬の中にはShp2やそれに似たようなシステムを阻害することで作用するものがある
しかし、カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者は、
PtenとShp2を両方とも持たないマウスは十分な量の赤血球を作って維持できないことを発見し、10月12日発行のPNASで報告した

この研究は、腫瘍の増殖に関する酵素を標的とする抗癌剤の副作用になぜ貧血が多いのか?についての説明を助ける

「この予期しない発見に基いて、利益よりも有害になる抗癌剤を処方する前に癌患者の遺伝的背景をスクリーニングすることについて考えたいと思う
さらに、この情報は白血病などの抗癌剤を個別化医療を考慮してデザインする際に役立つだろう」
病理学者で主席著者のGen-Sheng Feng, PhDは言う


Fengたちは遺伝子工学によりPtenかShp2、または両方を持たないマウスを作成した
Ptenを欠損するマウスは白血病と同じように白血球数が増加し、Shp2を持たないマウスは逆に白血球数が減少した
両方とも持たないマウスの白血球数は比較的正常だった

しかし、表面的な白血病の抑制にもかかわらずdespite the apparent reversal of leukemia、
PtenとShp2を両方とも持たないマウスは寿命が正常なマウスよりも短く、PtenまたはShp2どちらかを持たないマウスよりも短かった

分析の結果、PtenとShp2の欠損の組み合わせは致命的な貧血anemiaを引き起こしていた
赤血球は骨髄で適切に発達することに失敗し、作られた赤血球も本来よりも長続きしなかった
赤血球がなければ臓器や組織は必要な酸素を受け取ることはない


この遺伝学的研究を確認するため、研究者はPtenを持たない白血病マウスに、Shp2阻害剤、またはMEK阻害剤のトラメチニブ/trametinibを投与した
trametinibは細胞内のShp2と同じコミュニケーションネットワーク内にある別の酵素を阻害する
trametinibは膵臓癌などの治療で広く使われ、頻繁に貧血を引き起こすことが知られている

 Shp2→Ras-Raf-MEK-ERK経路

 Shp2阻害剤─┤Shp2→Ras-Raf-MEK-ERK経路
 
 trametinib─┤MEK

Fengのチームがtrametinibを投与したところ、Shp2遺伝子の欠損やShp2阻害剤と似たような効果が生じ、
マウスは重度の貧血になった


生物学の教授でもあるFengは次のように言う
「ここから我々が学んだのは、たとえ個々の分子が細胞でどのようにして機能するのかを知っていても、
それらを標的にする効果的な薬をデザインするためには特定の細胞タイプの、疾患という状況における分子同士のクロストークについて、より包括的に理解する必要があるだろうということだ」


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1507599112
Shp2 and Pten have antagonistic roles in myeloproliferation but cooperate to promote erythropoiesis in mammals.



参考サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/3300
チロシンホスファターゼのSHP2はRAS-ERK経路を活性化し、核に移行してWnt経路を促進する

SHP2の活性亢進型変異に起因するNoonan症候群は,
 顔貌異常および
 先天性の心疾患にくわえ,
 造血幹細胞を起源とする若年性骨髄単球性白血病の発症リスクの増進を特徴とする.

Wnt経路は
 頭蓋骨の形成,
 心臓の形成ならびに
 造血幹細胞の多分化能の制御に密接にかかわることが報告されている12,13).

ヌーナン症候群/Noonan症候群および血液がんに由来するSHP2変異体は,野生型SHP2に比べparafibrominをより強くチロシン脱リン酸化した
 

iPS細胞で白血病を研究する

2015-10-29 06:06:41 | 癌の治療法
Researchers create 'leukemia in a dish' to better study it

October 8, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151008142755.htm

ヌーナン症候群/Noonan syndrome/NSと若年性骨髄単球性白血病/juvenile myelomonocytic leukemia/JMMLのiPS細胞を作成した
この2つはSHP2をコードするPTPN11遺伝子に変異を持つ

※PTPN11変異は2つの疾患の共通の要因だがすべての症例がPTPN11変異が原因ではなく、ヌーナン症候群の50%の症例はPTPN11遺伝子、20%はSOS1遺伝子の突然変異が原因


これらのiPS細胞では、STAT5によるシグナル伝達が増大し、miR-223とmiR-15aが上方調節されていた

miR-223とmiR-15aは、JMMLでPTPN11に変異を持つ骨髄単球細胞の11/19で上方調節されていたが、
PTPN11に変異を持たない細胞ではそうではなかった

NS/JMMLのiPSでmiR-223の機能を低下させると、骨髄形成myelogenesisは正常化された


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2015.09.019
Myeloid Dysregulation in a Human Induced Pluripotent Stem Cell Model of PTPN11-Associated Juvenile Myelomonocytic Leukemia.




参考サイト
http://www.nanbyou.or.jp/entry/4222
ヌーナン症候群は日本に600人
 


早期のインスリン治療が良い結果につながる理由

2015-10-28 06:58:44 | 代謝
Three months of intensive insulin therapy equal to 15 months of intensive oral therapy and may protect insulin-producing beta cells

October 17, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151017152227.htm

新規に2型糖尿病と診断された23人によるパイロットスタディで、早期のインスリンによる治療は経口薬による治療と同等に有効であり、インスリンを作る能力を改善する可能性もあることが明らかになった

現在の標準治療では、最初に経口薬(メトグルコ)で肝臓によるグルコース産生を抑制するよう求められている
それとは対照的に、インスリンは人体がグルコースを使えるようにすることで血糖値が高くなり過ぎないようにするホルモンである
インスリンを早く使うとより効果的な治療となり、代謝的な副作用も少なくなる

オハイオ大学と、ウェスタン健康科学大学・骨疾患学カレッジ/College of Osteopathic Medicineの研究者は、この最新のupdated研究成果をフロリダ州オーランドで開かれているOMEDカンファレンスで10月17日に発表する予定である

※American Osteopathic Association (AOA) Osteopathic Medical (OMED) Conference

15ヶ月の無作為化試験randomized controlled trialの結果、インスリン治療群のA1Cは10.1%から6.7%に改善し、経口治療群では9.9%から6.8%に低下した
インスリン治療群は重度の低血糖もなく忍容性も良好well toleratedで、体重も平均5ポンド(約2.3kg)減少したが、経口治療群は体重が増加した

※1ポンド=0.4536kg

「両グループでのグルコース改善はかなり似たようなものrelatively comparableだったが、
我々の結果は早期のインスリン治療が膵臓の自然なインスリン分泌能力を改善できるという考えを支持する」
筆頭著者のJay Shubrook, DO(Doctor of Osteopathy)は言う

「これはおそらく早期のインスリン治療がグルコースに応答してインスリンを作るβ細胞を保護するためだろう」


2014年にCell Metabolismで発表された別の研究から(※)、
このメカニズムはβ細胞の再分化/re-differentiationであるようだとShubrookは言う

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24746806
"Pancreatic β cell dedifferentiation in diabetes and redifferentiation following insulin therapy."

Shubrookは今回の研究の限界について
そのサイズと重度の肥満(BMIが40以上)と考えられる参加者の数について記している

そのような限界にもかかわらず、
今回の研究は糖尿病と新たに診断された患者の治療結果の改善について新たな手がかりcluesをもたらすものである


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24746806
Pancreatic β cell dedifferentiation in diabetes and redifferentiation following insulin therapy.


Highlights
・長期の糖毒性glucotoxic糖尿病では、β細胞のインスリン量が減少する
・糖尿病では、β細胞はニューロジェニン3陽性/インスリン陰性へ脱分化する
・血糖の正常化後(脱分化したβ細胞は)インスリン陽性β細胞に再分化する

Summary
糖尿病は糖毒性によるβ細胞の機能ならびにインスリン量の喪失が特徴である
我々はβ細胞の非興奮性(KATP機能獲得)によりインスリン分泌ができないマウスモデルの研究により、糖尿病の発症を実証し、ヒトの新生児糖尿病の特徴を再現するreiterates
糖尿病状態のβ細胞は成熟したアイデンティティを喪失し、ニューロジェニン3陽性/インスリン陰性の細胞に脱分化する
細胞系統追跡実験では、インスリン治療による血糖の低下後、脱分化したβ細胞は成熟したニューロジェニン3陰性/インスリン陽性の細胞に再分化する
我々はβ細胞はアポトーシスではなく脱分化がインスリン陽性細胞喪失の主なメカニズムであり、再分化はインスリン量回復ならびに抗糖尿病薬への応答性responsivityの原因であることを実証する

これらの結果は、長期の糖尿病でβ細胞量が徐々に減少することやインスリン治療後にβ細胞機能ならびに薬への応答性が回復することについての説明を助け、
さらに、『疲弊』したβ細胞を助けるアプローチをも示唆するものである



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150923134207.htm
ヒトの成体の膵臓では発現しないと思われていたニューロジェニン3/NGN3が、消化酵素を分泌する外分泌腺の細胞exocrine cellsで発現していた
NGN3を発現する細胞は、ヒトとマウスの外分泌『前駆体細胞』の特徴に極めて一致していた
この『前駆体細胞』は、膵島という膵臓組織の細胞のみを生じ、そして膵島の細胞の全てに分化する

http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0133862
Neurogenin 3 Expressing Cells in the Human Exocrine Pancreas Have the Capacity for Endocrine Cell Fate.
ヒトの膵臓の外分泌腺でニューロジェニン3を発現する細胞は、内分泌細胞に分化する能力を持つ



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/82f7c3a7cfab9d357ba28ebd02a421bb
α細胞からβ細胞へ、β細胞からδ細胞へのtransdifferentiation(分化転換)



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/21d0fd40e16dc12a2751eb54ade553d7
若い時に限って、δ細胞はβ細胞に変換することができるようだ



関連サイト
http://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(12)00940-3
Pancreatic β Cell Dedifferentiation as a Mechanism of Diabetic β Cell Failure
糖尿病のベータ細胞欠乏のメカニズムは、ベータ細胞の脱分化


Highlights
・アポトーシスではなく脱分化Dedifferentiationがβ細胞欠乏failureの主な原因
・FoxO1は、β細胞が代謝性ストレスに適応adaptation to metabolic stressする間に、β細胞の運命を強制するenforce
・脱分化したβ細胞は、α細胞、δ細胞、Pp細胞に変換する傾向がある

Summary
FoxO1は、β細胞の増殖を、適応的β細胞機能と結びつけるintegrates
我々はβ細胞でFoxO1を欠損させたマウスを使い、これら二つのプロセスがβ細胞の機能不全に寄与するのかを調べた

FoxO1の除去ablationは、
多産multiparityと加齢のような生理ストレスphysiologic stressの後に、β細胞量の減少をともなう高血糖を引き起こした

驚いたことに、
β細胞量の喪失はβ細胞の細胞死ではなく脱分化によることが系統lineage追跡実験で実証された
脱分化したβ細胞は前駆体様の細胞に逆戻りし、その細胞はニューロジェニン3/Neurogenin3, Oct4, Nanog, L-Mycを発現していた
FoxO1欠損β細胞のサブセットはα細胞の運命を受け入れadopt、その結果として高グルカゴン血症になった
印象的だったのはStrikingly、
異なるマウス糖尿病モデルの特徴featureとして同じイベントの連続sequenceを同定したことである

我々は、β細胞欠乏の自然な経過において内分泌細胞の死ではなく脱分化が中心であることを提案する
そしてβ細胞の機能不全の治療は、β細胞の増殖ではなく、脱分化を回復すべきであることを示唆する
 

脳内に漏れた血液が脳への攻撃を引き起こす

2015-10-27 06:44:02 | 
Blood clotting protein triggers immune attack on brain

Disruption of the blood-brain barrier triggers a cascade of events that results in autoimmunity, brain damage characteristic of multiple sclerosis

October 9, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151009185431.htm

BBBが壊れると血液中のタンパク質が漏れ、そしてBBBの破損は多発性硬化症/MSという自己免疫疾患の特徴である
しかしながら、BBBの破損が自己免疫応答を引き起こすのか、それともBBBの破損は自己免疫応答の結果なのかは不明のままだった

今回の研究でグラッドストーン研究所の科学者は新しい動物モデルを作成し、BBBの漏れleakageが自己免疫を引き起こすのかどうかを調べた
実験の結果、たった一滴の血液が脳内に入ると自己免疫応答が開始され、連鎖反応で炎症とミエリンmyelinの傷害が生じることが明らかになった

ミエリンは神経線維を絶縁insulateして保護するための「鞘/さや/sheath」であり、MSで主に傷害を受ける箇所である(ミエリンは髄鞘の構成成分)
科学者はさらに、疾患を引き起こすプロセスの引き金が血液中の凝固因子であるフィブリノゲンfibrinogenであることを特定した

フィブリノゲンは脳内でミクログリアを活性化して、ミクログリアは末梢の免疫細胞を脳に呼び寄せるシグナルを送る
末梢の免疫細胞であるマクロファージとT細胞が脳内に入るとミエリンを攻撃した


研究結果を確認するため、科学者はミクログリア表面のフィブリノゲン受容体である補体受容体3/complement receptor 3/CR3 (CD11b/CD18) を欠損させた
この相互作用の阻害により自己免疫プロセスは抑制され、ミクログリアは末梢免疫細胞へのシグナルを出さず、ミエリンへの傷害と炎症は回避されたavert
研究者は現在、小分子を使った生物学的アプローチによりフィブリノゲンを阻止しようと試みているところである

「この発見は、ミエリン特異的なT細胞が脳内でミクログリアと脳マクロファージを活性化することで炎症を開始するという長年のパラダイムに疑義を唱えるものだ」
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の神経学教授であり共著者でもあるScott Zamvilは言う

「この研究は、新たなパラダイムが逆に起きるということを実証する
つまり、初めにミクログリアと脳マクロファージが活性化して、それがT細胞を活性化するのかもしれないということだ」


科学者は、この血液により脳の炎症が起きるというモデルは新薬のスクリーニングにも使えるという点で有用なツールであるという
そしてこれらのメカニズムは自己免疫疾患でのみ起きるのではなく、脳の炎症またはBBBの破損に関する他の病気でも起きる可能性がある
例えば外傷性脳損傷traumatic brain injury、脳卒中、アルツハイマー病、認知症である


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms9164
Blood coagulation protein fibrinogen promotes autoimmunity and demyelination via chemokine release and antigen presentation.

フィブリノゲン→フィブリン

CD11b+ミクログリア

CXCL10、CCL2/MCP-1、IL-12

CD11b+マクロファージ
Th1
 


パーキンソン病の治療に重要な遺伝子

2015-10-27 06:38:17 | 
Gene could hold key to treating Parkinson's disease

October 19, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151019154121.htm


(ショウジョウバエの幼虫の画像
キングスカレッジロンドンの研究者は幼虫の神経細胞に遺伝子工学で緑の蛍光タンパク質/GFPを導入し、ミトコンドリアが傷害を受けた神経を観察しやすくなった
この幼虫と成虫の分析により、ミトコンドリアが神経機能を阻害するシグナルを出すことが明らかになった)


[パーキンソン病のショウジョウバエモデル]
 ミトコンドリアのダメージ─(HIF-α)─┤神経の成長

リー症候群という神経疾患をともなうミトコンドリア不全のショウジョウバエモデルでも同様だった


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1505036112
Mitochondrial retrograde signaling regulates neuronal function
ミトコンドリアの逆行性シグナル伝達は神経機能を調節する

Significance
ショウジョウバエでのリー症候群ならびにパーキンソン病モデルにおけるHIF-αのノックダウンは神経機能を回復した


Abstract
ミトコンドリア逆行性シグナル伝達のニューロンにおける役割を調べるため、我々はミトコンドリアの機能不全をショウジョウバエの神経系に導入した

ニューロンのミトコンドリア機能不全は、
ニューロンの生存能力viabilityの低下、ニューロン機能の障害、酸化還元電位redox potentialの低下、前シナプスミトコンドリア数ならびにアクティブゾーンactive zone(神経伝達物質がエクソサイトーシスされる領域)の減少を引き起こした

分析の結果、ニューロンのミトコンドリア機能不全は、数百以上の核遺伝子の発現を制御する逆行性シグナル伝達応答を刺激することが判明した

ショウジョウバエのHIF-αオーソログのSimilar (Sima) は数百のミトコンドリア逆行性シグナル伝達を調節した
これはSimaがミトコンドリア逆行性シグナル伝達を仲介することを示唆する

特に際立っていたのはRemarkably、Simaのノックダウンが最初primaryのミトコンドリアの異常に影響することなくニューロン機能不全を回復したことである
これはミトコンドリア逆行性シグナル伝達がニューロン機能不全の(部分的な)原因であることを実証する


※Leigh disease: リー病(リー脳症、リー症候群とも)
チトクロームC酸化還元酵素などの酵素の欠乏によるミトコンドリア疾患。症状は痙攣、精神運動遅滞、運動失調など
 

肺癌を飢えさせる新しい方法

2015-10-26 06:06:19 | 
A new way to starve lung cancer?

Metabolic alterations in lung cancer may open new avenues for treating the disease

October 20, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151020121129.htm

科学者は肺癌の増殖を止める新しい方法を同定した
それは癌細胞が代わりの栄養源alternative sources of nutritionを使う能力を阻害することによる
この発見は、癌細胞が増殖を促進するために使う代謝プログラムを同定することによりなされた
10月15日にMolecular Cell誌で発表された今回の研究結果は、肺癌治療への新たな道を指し示すものになるだろう


癌細胞は何を『食べる』のか
What cancer cells 'eat'

癌細胞の代謝は通常の細胞とは非常に異なり、その急速な増殖により栄養の必要性は増大する
この必要性の増大はグルコースを主な栄養源として使うことにより満たされmet、癌細胞は通常の10倍から100倍の早さでグルコースを使う
しかしながら、グルコースが不足すると、癌細胞はその増殖と生存を維持するために代わりの栄養源を使うようスイッチを切り替えなければならない

カナダのマギル大学/McGill University、セントルイスのワシントン大学、ロシア・サンクトペテルブルグのITMO大学、イギリスのブリストル大学からなる研究グループは、グルコースが利用できなくなった時の癌細胞の応答を研究した
彼らが肺癌の最も一般的なタイプ(85-90%)の非小細胞肺癌/NSCLCを研究対象として選んで実験した結果、
グルコースが欠乏すると代わりにグルタミンへと『食事の好みpreferences』を変化させる癌細胞がいることを発見した

そして癌細胞は代謝を再プログラムするためにPEPCKという酵素を使う

「最近までPEPCKはグルコースを作る肝臓のような臓器でのみ研究されていた」
マギル大学の助教/Research Associateで筆頭著者のEmma Vincentは言う

「癌細胞の中にはPEPCKを発現するものがあり、これは癌細胞にグルタミンをエネルギーや増殖を支える構成成分building blocksへと変換する能力をもたらす
この代謝のスイッチを入れることでPEPCKは癌細胞を単に生き残れるようにするだけでなく、飢餓の状況下でも増殖を続けることができるようにする」

科学者たちは癌細胞のPEPCKを阻害することでマウスの腫瘍の成長を遅くできることを実証し、
さらに肺癌患者の組織でPEPCKレベルが上昇するというエビデンスも発見した


癌細胞の代わりの燃料
Alternative fuels for cancer cells

今回の研究は、癌細胞がグルコースや他の栄養素を求めて他と競合する生体organismにおいて
栄養の利用可能性availabilityが癌の進行に影響を与えることを示唆する

「我々の研究は、癌がストレスの多い状況下で増殖を刺激するための源として代わりの燃料を使えることを示す」
マギル大学のGoodman Cancer Research Centre生理学部で准教授/Associate ProfessorのRussell Jonesは言う

「この注目すべき柔軟性flexibilityは癌をさらに致命的にしているが、新たな治療への希望をもたらすものでもある
癌細胞が環境への適応のために使うメカニズムを理解することは治療への新たな可能性を生む」


http://dx.doi.org/10.1016/j.molcel.2015.08.013
Mitochondrial Phosphoenolpyruvate Carboxykinase Regulates Metabolic Adaptation and Enables Glucose-Independent Tumor Growth.
ミトコンドリアPEPCK/PCK2は、代謝的適応を調節し、グルコースに依存しない腫瘍の増殖を可能にする


Highlights
・腫瘍細胞の代謝の柔軟性はグルコースに依存しない細胞増殖を可能にする
・PCK2はグルコースが少ない状況下でも解糖系の中間生成物intermediatesの産生を助ける
・PCK2の発現はグルコースによって調節され、in vivoでの腫瘍の成長に必要である
・PCK2の発現は非小細胞肺癌/NSCLCで上昇する

※PCK1
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=PCK1

※PCK2
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=PCK2


Summary
癌細胞は栄養素が限られている状況での増殖に代謝を適応させる

今回我々は転写的ネットワーク-代謝的ネットワーク分析を組み合わせ、グルコースに依存しない腫瘍細胞の増殖を支える代謝経路を同定した
グルコースの欠乏は、クエン酸回路ならびに糖新生早期段階の再配線re-wiringを刺激し、グルコースに依存しない細胞増殖を促進した

グルコースの制限はグルタミンからホスホエノールピルビン酸/phosphoenolpyruvate/PEPへの合成を促進し、
それはミトコンドリアPEPカルボキシキナーゼ/PCK2の活性を介するものだった

これらの状況下でグルタミン由来のPEPは
通常はグルコースによって維持されている生合成経路(セリンとプリンの生合成)の燃料として使われた

PCK2の発現は、in vitroのグルコースが制限された状況下での腫瘍細胞の増殖の維持ならびにin vivoでの腫瘍成長の維持に必要だった
PCK2発現の上昇はヒトのいくつかの腫瘍タイプで観察され、NSCLC患者の腫瘍組織でも多かった

我々の研究結果は、PCK2の癌細胞代謝再プログラムにおける役割を定義して明らかにするdefine
この代謝再プログラムはグルコースに依存しない細胞増殖を促進し、代謝ストレスへの抵抗性をヒトの腫瘍にもたらす



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/886e4bba2af90bbc4bda6ab12d6caae1
PKCζが欠けている腫瘍は代謝を再プログラムして代わりにグルタミンを用いることが可能である



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

Melecular Cell誌に今回のような論文が載ってもこういう人たちはなぜか認めようとしませんが
宗教か何かなんでしょうか
 



SNORA42は結腸直腸癌の進行を予測する

2015-10-25 06:59:08 | 
Newly identified biomarker may help predict colon cancer progression, personalize therapy

Study finds 'biomarker' in aggressive, migratory, treatment-resistant colorectal cancers that could help determine patient risk and treatment strategies

October 15, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151015211817.htm

ステージ2の結腸直腸癌の大半は手術のみで治癒するが、中には再発して死ぬ者もいる
SNORA42はそのような患者を見分けるバイオマーカーとして使える

このタイプのRNAは他のRNAよりも安定しているため、研究者は
素早く簡単にSNORA42のような分子を検出する非侵襲的な血液検査などが開発されると考えている


研究結果は次のようなものだった
・SNORA42の過剰発現は有意に疾患進行と関連
・過剰発現は癌細胞の素早い増殖、腫瘍形成、移動、浸潤、細胞死プロセスを生き残るといった能力につながる
・SNORA42を抑制するとこれらの影響は無効化されるreversed
・SNORA42の発現上昇は、結腸直腸癌患者の再発ならびに予後の悪さを予測するようだ


SNORAsは「核小体低分子RNA/small nucleolar RNAs」のことで、
現在は細胞運命ならびに様々な癌の発症における役割に関して認識されているだけのマイクロRNAサブセットである


http://dx.doi.org/10.1136/gutjnl-2015-309359
http://gut.bmj.com/content/early/2015/09/29/gutjnl-2015-309359.abstract
Clinical significance of SNORA42 as an oncogene and a prognostic biomarker in colorectal cancer.

small nucleolar RNAs (snoRNAs)

※nucleolar: 核小体。仁
 

腕のほくろを数えてメラノーマリスクを推測する

2015-10-25 06:24:23 | 
More than 11 moles on your arm could indicate higher risk of melanoma

October 19, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151019122234.htm


(もともと存在するほくろから生じるメラノーマはわずか20%から40%だが、ほくろの数は皮膚癌の最も重要なマーカーである)

キングス・カレッジ・ロンドンの研究者は、メラノーマのリスクを調べるために一般医/GPsでも使える新しい方法を調査している
研究者によると、腕のように体の『近い』場所のほくろの数を数えることで、全身のほくろの数を素早く確定できるという


もともと存在するほくろから生じるメラノーマはわずか20%から40%だが、ほくろの数は皮膚癌の最も重要なマーカーである
皮膚癌リスクはほくろが1つ増えるごとに2%から4%上昇すると考えられるが、
しかし全身のほくろの合計を数えるのはプライマリ・ケア/primary careの環境では時間がかかる

※primary care: プライマリ・ケア、初期治療。これを行うのは日本ではかかりつけ医、イギリスでは一般医/general practitioner;GP、アメリカでは家庭医family physician;FP/family doctor;FD/home doctorと呼ばれる


体の特定の箇所のほくろを数えることで、代わりにas a proxy全身の数を正確に推定しようと試みた過去の小規模な研究では、腕が最も予測できるという結果が出ている

ウェルカム・トラストの出資による今回の研究では、大規模なサンプルから最も有用な『代わり』の箇所を確定しようとした
さらに、皮膚癌を発症するリスクが最も高い人たちを予測することができる『カットオフ』の数も確認することも目的だった

※カットオフ値/cut-off value: 正常と異常/陽性と陰性の判定をする際に判別点となる値のこと


研究者は1995年から2003年までの3594人の白人女性の双子のデータを調べた(TwinsUK study protocol)
双子は熟練したナースによる肌のテストを受け、テスト内容は肌のタイプ、髪と目の色、そばかすfreckle、そして全身17箇所のほくろの数だった

この結果は次に、以前発表されたUKメラノーマ患者対照研究/case control studyの男性と女性の参加者による広範囲のサンプルで追試されたreplicated

分析の結果、右腕のほくろの数が最も全身の数を予測できることが判明した
右腕にほくろが7つより多い女性は全身のほくろが50より多いリスクが9倍高く、右腕で11より多いと合計が100を越える可能性が高かった
これはメラノーマの発症リスクが高まることを意味する

さらに、右ひじから上の部分が特に予測に役立つこともわかった
男性では足も全身の数と強く関連があり、背中でも同様だった

筆頭著者のSimone Riberoは言う
「今回の研究は以前の結果と一致するものだ
以前との違いは選択バイアスselection biasがない、より大規模な白人集団によるものであり、同様の健康なイギリス人集団の症例対照研究で再現されたということである
それによりこの結果はGPにとって、より有用usefulで適切relevantなものになる」


http://dx.doi.org/10.1111/bjd.14216
Prediction of high naevus count in a healthy UK population to estimate melanoma risk.



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6832148feca41a85fb439af1e65884a6/
ほくろの数が50を上回る人はメラノーマを発症するリスクが上昇するが、ほくろが50未満の人もメラノーマに警戒すべき
 


TRIB1の立体構造の理解はAMLの治療につながる

2015-10-24 06:59:59 | 
3D image of cancer protein aids quest for new treatments

October 9, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151009155306.htm

Trib1はタンパク質の分解に関与する「足場タンパク質」で、多くのタンパク質からなる大きな複合体を形成して特定のタンパク質を分解させる

急性骨髄性白血病acute myeloid leukemia/AMLの中にはTrib1が多く産生されるものがあり、それにより通常は癌を抑制するはずのタンパク質が阻害される
Trib1の構造の理解はAMLの治療につながる可能性があるという

また、Trib1はpseudokinaseと呼ばれる『キナーゼ活性を失ったキナーゼ』である
シンクロトロンから生成される強力なX線ビームにより、Trib1はその祖先となるタンパク質と比較して大きな歪みcontortionsが生じたことが明らかになった
この構造変化がTrib1のキナーゼ活性を失わせ、足場として作用することを可能にしたとウォルター・アンド・イライザ・ホール医学研究所のMurphy博士は言う


http://dx.doi.org/10.1016/j.str.2015.08.017
Molecular Mechanism of CCAAT-Enhancer Binding Protein(CEBP) Recruitment by the TRIB1 Pseudokinase.


COP1ユビキチンリガーゼ
 

CHD4の阻害はAML治療の有効性を高める

2015-10-24 06:58:36 | 癌の治療法
Preclinical study shows potential to increase the effectiveness of leukemia treatments

October 13, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151013144034.htm

バージニアコモンウェルス大学マッシーがんセンターの研究チームは
chromodomain helicase DNA-binding protein 4 (CHD4) というタンパク質の産生を阻害する前臨床試験で
急性骨髄性白血病acute myeloid leukemia/AML治療に対する化学療法の有効性を高めることを示した

Blood誌で報告された研究によれば、
AML細胞でCHD4タンパク質を枯渇させるとDNAの損傷を修復する能力が低下し、標準的な化学療法に対しての感受性が上昇する

重要なことに、健康な骨髄細胞の感受性は上昇させず、その増殖にも影響しなかった


CHD4は腫瘍抑制遺伝子のサイレンシングに関与する酵素であり、最近DNA損傷の修復にも関与することが示されている
前臨床実験では、CHD4の欠乏がAML細胞の寒天培地でのコロニー形成能やマウスモデルでの腫瘍形成能を強く制限することが観察された

さらに、AML細胞でCHD4の産生を阻害すると、ダウノルビシンdaunorubicinとシタラビンcytarabineへの感受性が上昇した
どちらもAMLの治療で最初に使われる標準的な化学療法薬である

「この研究は、エピジェネティックな調節因子が遺伝子発現に与える分子プロセスを理解するためのチームの努力から成り立っている」
マッシーがんセンターのディレクター、Gordon Ginder, M.D.は言う

「これからの研究でCHD4がAML細胞の白血病を生じる能力を低下させる詳細なメカニズムを明らかにし、この重要なタンパク質を標的とする方法を探る予定である
CHD4が酵素としてはたらくという事実は、それが創薬可能druggableであることを示唆する」


http://dx.doi.org/10.1182/blood-2015-03-631606
CHD4 sensitizes AML blasts to genotoxic agents and reduces tumor formation.
 

癌の最適な治療法を血液検査で見つける

2015-10-24 06:23:55 | 癌の治療法
Blood test could match cancer patients to best treatments
October 15, 2015
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151015083405.htm

血液中を循環する癌細胞から遊離したDNAを次世代シーケンシングにより配列決定し、治療法を決める

http://dx.doi.org/10.1158/1078-0432.CCR-15-0584
Serial Next-Generation Sequencing of Circulating Cell-Free DNA Evaluating Tumor Clone Response To Molecularly Targeted Drug Administration.



Research discovery leads to potential diagnostic for assessing breast cancer recurrence
By measuring DNA methylation, researchers might determine which patients are at higher risk for relapse or metastases
September 17, 2015
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150917135215.htm

血液中を循環する癌細胞から遊離したDNAで、乳癌の転移を予測する21箇所の過剰メチル化が特定された

http://dx.doi.org/10.1186/s13148-015-0135-8
Whole-genome bisulfite sequencing of cell-free DNA identifies signature associated with metastatic breast cancer.

21の遺伝子は、BEND4, CDH4, C1QL3, ERG, GP5, GSC, HTR1B, LMX1B, MCF2L2, PAX5, PCDH10, PENK, REC8, RUNX3, SP8, SP9, STAC2, ULBP1, UNC13A, VIM, VWC2

Discussion
21の遺伝子の内、RUNX3, PENK, PAX5, PCDH10の過剰メチル化は乳癌と関連付けられている [11]–[13]
我々は以前、乳癌の脳転移におけるPENK遺伝子の過剰メチル化との関連を報告した [14]
RUNX3, GSC, CDH4, BEND4, PENK, VIM, PCDH10は以前、浸潤と転移に関連付けられている [14]–[20]
UNC13A, SP9, GP5, C1QL3, SP8, VWC2の過剰メチル化は癌において報告されていない


細胞から遊離したDNA/cell-free/cfDNAの様々な変化が報告されている
その中には、点変異、マイクロサテライトmicrosatellite(反復配列)の不安定性、ヘテロ接合性heterozygosityの喪失、そしてDNAの過剰メチル化が含まれる [24], [25]
適切なDNAメチル化を維持する必要性essentialityは癌において特に際立ちhighlighted、癌では正常なパターンが失われる

異常メチル化は、癌において最も早く、最も化学的に安定な分子的変化の中の一つであり、早期検出またはリスク予測のバイオマーカーとして有用である可能性がある
 


多発性骨髄腫はどのようにして生じるか

2015-10-24 06:07:02 | 
Scientists find evidence of how incurable cancer develops

October 16, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151016115440.htm

骨髄腫と診断された患者の全てが、初めに比較的良性の病気である『意味不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症monoclonal gammopathy of undetermined significance (MGUS)』を発症する

MGUSは高齢者にかなり一般的な状態であり、そこから骨髄腫に進行するのは約100人につき1人に過ぎない
しかし、どのMGUS患者が骨髄腫に進行するのかを正確に予測する方法は現在のところ存在しない


バーミンガム大学を中心とする研究チームがMGUSの人と骨髄腫患者、健康な人から提供された骨髄と血液サンプルを化学的に分析して比較したところ、
驚いたことに、MGUSの人の骨髄の代謝的な活性は健康な人とは全く異なっていたが、MGUSと骨髄腫との間ではまったくほんのわずかな違いしか存在しなかった
この発見は、無症候性のMGUSで代謝的に大きな変化が生じ、骨髄腫に進行した時には変化が生じないことを示唆する

健康なボランティアと、MGUSまたは骨髄腫との間には200を超える代謝的な違いが見られたが、MGUSと骨髄腫との間の比較では26の違いしか見られなかった
研究者は、この小さな変化が骨髄において鍵となる転換shiftを刺激driveし、それが骨髄腫の成長を支えるために必要なのだろうと考えている


http://dx.doi.org/10.1038/bcj.2015.85
Alterations in bone marrow metabolism are an early and consistent feature during the development of MGUS and multiple myeloma.

>必須アミノ酸のイソロイシンとスレオニンがMGUSと多発性骨髄腫患者の骨髄で有意に減少し、
>ヌクレオチドの分解産物であるヒポキサンチンとキサンチンも同様に減少していた (Figure 1b)

>必須アミノ酸の源は外因性であるため、この変化はMGUSとMMで骨髄を占める細胞による同化anabolismの増大を示唆し、
>それはこのニッチでのプラズマ細胞の増大を念頭に置いてbearing in mind予測される



※monoclonal gammopathy of unknown significance (MGUS): 意味不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症
(無症候で,形質細胞の腫瘍新生がまったく確認できない老年者において,電気泳動により診断される高ガンマグロブリン血症).


※monoclonal gammopathy of undetermined significance (MGUS): 意味未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症
(3g/100mL以下のパラプロテイン血症(λ軽鎖物質中心の異常なγグロブリン)で,発見時には明確な原因がないもの.) 

前立腺細胞は「再プログラム」されて腫瘍を形成する

2015-10-23 06:37:14 | 
Prostate cells undergo 'reprogramming' to form tumors, study finds

October 12, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151012115707.htm

ダナ・ファーバー癌研究所のMatthew Freedman, MDとMark Pomerantz, MDを中心とする研究チームは、
正常な前立腺の細胞を癌に向けて刺激するprod『鍵となる一連のイベントについての初めての機構的な洞察』を同定したという
それは前立腺の腫瘍がどのようにして始まるのかについて明らかにする

Nature Geneticsに報告された研究によると、悪性の増殖を促進するのは前立腺細胞のDNAコードの書き換えではなく、遺伝子のマスター調節因子の再プログラムである

これは長年の疑問だった
なぜなら、前立腺の腫瘍には遺伝子変異がほとんど見つからないからである



研究者が細胞の再プログラムを苦労して発見したspotのは、複数の患者から得られた癌化細胞と正常な前立腺細胞とを比較していた時だった

この再プログラムは『エピジェネティック/epigenetic』と呼ばれるが、その理由はDNAコードに永続的な変化を加えることなく遺伝子の働き方を制御するからである

※epi: 「上」「次」「追加」「付帯」「外側」「後」「間」を意味する


今回の研究では前立腺癌の形成中にエピジェネティックなプログラムが根本的に変化することが実証された

研究著者によればエピジェネティックな再プログラムは潜在的に覆すことが可能であり、
いつか薬によって標的にすることで前立腺癌を防いだり攻撃できるようになるかもしれない



この腫瘍は男性ホルモンのテストステロンによって刺激されるため、患者はしばしばテストステロンがアンドロゲン受容体を活性化しないよう阻害する薬を処方される

男性ホルモンによって活性化されたアンドロゲン受容体は、前立腺細胞の増殖やその他の機能を制御する遺伝子をまとめてオンにしたりオフにするthat turns on or off sets of genes

「アンドロゲン経路は前立腺癌の中心的な経路であり、癌の発症とその進行から治療への抵抗性まですべてを制御する」
Freedmanは説明する


アンドロゲン受容体は転写因子である
転写因子は結合箇所/binding siteと呼ばれる特定のDNA配列に強く結合してlatch onto、DNA情報がどのくらいの速度でRNAに転写されるのかを制御することで、細胞を動かすための遺伝子活性を調節する

アンドロゲン受容体は数千もの特定の鍵穴(結合箇所)にぴったり合う鍵のセットのようなものでlike a set of keys、
この結合箇所はあらゆる前立腺細胞のDNA青写真に据えられているsituated on the DNA blueprint of every prostate cell


研究者が複数の患者由来の前立腺癌細胞でアンドロゲン受容体の結合するDNA配列を調べていたところ、
受容体はもはやnow正常な細胞とは異なる箇所に結合していたとPomerantzは言う

「ある男性の腫瘍での結合パターンは、彼自身の正常な細胞のパターンよりも、他の腫瘍の男性のパターンに似ていたlook like」

アンドロゲン受容体は再プログラムされ、前立腺細胞が異常増殖して拡散できるように細胞の遺伝子を活性化または不活化する

さらに、アンドロゲン受容体の再プログラムにはFOXA1ならびにHOXB13という2つの転写因子が重要であることを発見した


「アンドロゲン受容体の結合箇所は腫瘍化tumorogenesisの間に著しく配分が変更されるがmarked redistribution、
これは前立腺癌でまだ発見されていない、頻発するrecurrentエピジェネティック/ジェネティックな変化の一つを代表しているのである」


http://dx.doi.org/10.1038/ng.3419
The androgen receptor cistrome is extensively reprogrammed in human prostate tumorigenesis.
ヒト前立腺癌の腫瘍発生においてアンドロゲン受容体のシストロームは広範囲に再プログラムされる


哺乳類の細胞においてマスター転写因子はDNAと相互作用して細胞タイプアイデンティティを確立し、遺伝子発現を調節する(1, 2
これら転写因子の結合箇所binding sitesのゲノムワイドなマップは『シストロームcistrome』と呼ばれている(3

今回我々は、前立腺の上皮が形質転換transformationする間にアンドロゲン受容体/ARのシストロームは広範囲に再プログラムされることを示す

我々はヒト前立腺組織を使い、AR結合箇所の中心的なまとまりa core set of AR binding sitesを観察した
それは腫瘍において一貫してconsistently再プログラムされる

ヒト腫瘍組織においてFOXA1とHOXB13は再プログラムされたAR結合箇所に共局在する

不死化した前立腺細胞系統へのFOXA1とHOXB13の導入はARシストロームを再プログラムし、それは前立腺腫瘍と類似していた
この結果はこれら特異的な因子をARシストローム再プログラムと機能的に関連付けるものだ


これらの研究結果は正常な前立腺上皮を形質転換させる際に重要な一連のイベントへの機構的な洞察を提供し、
ヒト前立腺の腫瘍発生tumorigenesisにおいてエピジェネティックな再プログラムが中心的な役割centralityを果たすことを確立する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/aa7ce8a3ea88b20b934baef2d98b09d8
SNPの一つrs339331でのリスクTアレルは前立腺癌細胞系統でHOXB13のrs339331領域への結合を増加させ、
エンハンサーと関連するH3K4me2ヒストンジメチル化の蓄積を増加させた



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/02/140210161234.htm
アンドロゲン受容体/ARはSPOPというE3リガーゼによってユビキチン化されて分解されるが、
ARのスプライシングバリアントはSPOPを介する分解に抵抗性であり、
前立腺癌と関連するSPOP変異体はARに結合できずARの分解を促進しない




関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/12/131220121046.htm
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/02/140227191211.htm
アンドロゲンは代謝のマスター調節因子であるAMPK-PGC-1αシグナル伝達カスケードを制御し、前立腺癌細胞の増殖を増大させる

>In their studies, Frigo's team showed that prostate cancer cells respond to androgens not only by increasing the breakdown of sugars, a process known as glycolysis that is commonly seen in many cancers, but also escalating the metabolism of fats.
(Frigoの研究チームは、前立腺癌細胞が解糖系として知られるブドウ糖の分解プロセスの増大だけでなく、脂肪の代謝の上昇によってもアンドロゲンに応答することを示した)

>While much of the research on cancer metabolism has historically focused on glycolysis, the researchers say it's now becoming apparent that not all cancers depend solely on sugars.
(これまで多くの研究が癌の解糖系に焦点を合わせてきたが、研究者は『すべての癌がブドウ糖だけに依存するわけではないことが明らかになってきている』という)

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24186207
>Our data indicate that androgens increase overall mitochondrial function.
(我々のデータはアンドロゲンがミトコンドリア機能を全体的に増大させることを示す)



<コメント>
癌細胞はミトコンドリアを使えないなどと断言しちゃってる人がいらっしゃいますが

http://blog.goo.ne.jp/kfukuda_ginzaclinic/e/2a6208bb6445a07d05be991b0c70ff5f/
>がん細胞のミトコンドリアを活性化し、嫌気性解糖系を阻害するとがん細胞は死滅する

言い切っちゃって大丈夫なんですか
それとも単なる素人さんなんですか