いくつかの悪性の癌は、抗炎症薬に反応を示すかもしれない
新しい研究によれば、いくつかの悪性腫瘍の患者は、関節リウマチを治療する抗炎症薬から恩恵をうけるかもしれない。
セントルイスのワシントン医科大学の研究者はトリプル・ネガティブ乳癌を研究していて、いくつかの悪性腫瘍が抗ウイルス性経路に依存することを発見した。
この経路は炎症を引き起こし、炎症は癌、関節リウマチ、他の炎症性疾患において役割を果たすことが広く認識されている。
この特定の抗ウイルス性経路を活性化する腫瘍は、p53とARFの機能障害状態を常に有する。
研究者は2つの遺伝子がお互いを補うことを発見した。
p53とARFが両方とも変異すると、これらの遺伝子が単体で失われるよりも悪性である。
両方の遺伝子が失われて抗ウイルス性経路が活性化されるとき、患者はJAK阻害剤という関節リウマチで処方される抗炎症薬の恩恵を受けるかもしれない。
これまで、ARFはp53遺伝子が変異したいくつかの腫瘍でも発現することが知られてはいたが、ARFは機能していないと広く考えられていた。
しかし実際には、p53遺伝子がない場合、ARFは腫瘍がいっそう悪性化することから保護することが示された。
「ARFがp53遺伝子を完全に置き換えると言うのはおそらく不正確だろう。p53は複数の方法で作用する強力な腫瘍サプレッサだからである」、シニア著者のジェイソンD.ウェーバー博士は言う。
「しかし、細胞はARFにより一種の『バックアップ・システム』を準備したようである。
それらはお互いをバックアップしているので、両方とも失われると、最も悪性の腫瘍が形成される。」
ウェーバーと彼の同僚はトリプル・ネガティブ乳癌を研究した。これらの腫瘍がしばしばp53遺伝子とARFの突然変異を示すからである。
驚くべきことに、p53遺伝子とARFが欠如しているほとんどのトリプル・ネガティブ腫瘍は、ウイルス感染に対する自然免疫応答に関与する経路をオンにした。
「それは真の抗ウイルス性応答で見られるような活性化水準でない。しかし正常よりは高い」、ウェーバーは言った。
「この抗ウイルス性反応がより悪性の腫瘍を支える局所的な炎症の環境をつくっているかどうかに我々は関心がある。」
ウェーバーたちはさらに、JAKというシグナル・タンパク質ファミリーが抗ウイルス性経路の上流にあり、腫瘍の成長を引き起こしていることを知った。
「我々のデータは、抗炎症薬のJAK阻害剤が、p53遺伝子とARFを失ったいくつかの癌患者を治療する方法かもしれないことを示唆する。」
ウェーバーは付け加える。
「p53遺伝子またはARFが機能している場合、この抗ウイルス性経路は活性がない。したがって、腫瘍の成長において役割を果たしていない。」
学術誌参照:
1.ARFとp53遺伝子は、IFN-β-STAT1-ISG15発癌性シグナル軸の腫瘍抑制を調整する。
Cell Reports、2014;
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140627145932.htm
<コメント>
トリプル・ネガティブ乳癌の一部は、ウイルスがいないのに抗ウイルス経路の炎症を引き起こすという研究です。
p14ARF(alternate open reading frame)は、CDKN2Aによってコードされるタンパク質です。
ISG15(interferon stimulated gene 15)はSARSと関連する記事がありました。
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8d731f5917cb526adb17363921fc6dac
自然免疫といえば、トリプル・ネガティブ乳癌はマクロファージを呼び寄せるという記事もありました。
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8fad48f6f39ca9284c39a2cba385d6d1