機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

2014年6月27日

2014-06-30 15:40:22 | 

いくつかの悪性の癌は、抗炎症薬に反応を示すかもしれない



新しい研究によれば、いくつかの悪性腫瘍の患者は、関節リウマチを治療する抗炎症薬から恩恵をうけるかもしれない。

セントルイスのワシントン医科大学の研究者はトリプル・ネガティブ乳癌を研究していて、いくつかの悪性腫瘍が抗ウイルス性経路に依存することを発見した。

この経路は炎症を引き起こし、炎症は癌、関節リウマチ、他の炎症性疾患において役割を果たすことが広く認識されている。



この特定の抗ウイルス性経路を活性化する腫瘍は、p53とARFの機能障害状態を常に有する。

研究者は2つの遺伝子がお互いを補うことを発見した。

p53とARFが両方とも変異すると、これらの遺伝子が単体で失われるよりも悪性である。

両方の遺伝子が失われて抗ウイルス性経路が活性化されるとき、患者はJAK阻害剤という関節リウマチで処方される抗炎症薬の恩恵を受けるかもしれない。



これまで、ARFはp53遺伝子が変異したいくつかの腫瘍でも発現することが知られてはいたが、ARFは機能していないと広く考えられていた。

しかし実際には、p53遺伝子がない場合、ARFは腫瘍がいっそう悪性化することから保護することが示された。



「ARFがp53遺伝子を完全に置き換えると言うのはおそらく不正確だろう。p53は複数の方法で作用する強力な腫瘍サプレッサだからである」、シニア著者のジェイソンD.ウェーバー博士は言う。

「しかし、細胞はARFにより一種の『バックアップ・システム』を準備したようである。
それらはお互いをバックアップしているので、両方とも失われると、最も悪性の腫瘍が形成される。」



ウェーバーと彼の同僚はトリプル・ネガティブ乳癌を研究した。これらの腫瘍がしばしばp53遺伝子とARFの突然変異を示すからである。

驚くべきことに、p53遺伝子とARFが欠如しているほとんどのトリプル・ネガティブ腫瘍は、ウイルス感染に対する自然免疫応答に関与する経路をオンにした。



「それは真の抗ウイルス性応答で見られるような活性化水準でない。しかし正常よりは高い」、ウェーバーは言った。

「この抗ウイルス性反応がより悪性の腫瘍を支える局所的な炎症の環境をつくっているかどうかに我々は関心がある。」



ウェーバーたちはさらに、JAKというシグナル・タンパク質ファミリーが抗ウイルス性経路の上流にあり、腫瘍の成長を引き起こしていることを知った。

「我々のデータは、抗炎症薬のJAK阻害剤が、p53遺伝子とARFを失ったいくつかの癌患者を治療する方法かもしれないことを示唆する。」

ウェーバーは付け加える。

「p53遺伝子またはARFが機能している場合、この抗ウイルス性経路は活性がない。したがって、腫瘍の成長において役割を果たしていない。」


学術誌参照:
1.ARFとp53遺伝子は、IFN-β-STAT1-ISG15発癌性シグナル軸の腫瘍抑制を調整する。

Cell Reports、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140627145932.htm



<コメント>
トリプル・ネガティブ乳癌の一部は、ウイルスがいないのに抗ウイルス経路の炎症を引き起こすという研究です。
p14ARF(alternate open reading frame)は、CDKN2Aによってコードされるタンパク質です。

ISG15(interferon stimulated gene 15)はSARSと関連する記事がありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8d731f5917cb526adb17363921fc6dac

自然免疫といえば、トリプル・ネガティブ乳癌はマクロファージを呼び寄せるという記事もありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8fad48f6f39ca9284c39a2cba385d6d1

2014年6月16日

2014-06-29 16:06:14 | 

乳癌の『悪性化』スイッチを力いっぱい引く



ハーヴァードSEAS(Harvard School of Engineering and Applied Sciences)のデイビッド・ムーニー教授によって指揮される研究者たちは、乳房の上皮組織において正常な細胞が悪性化する可能性がある機序を特定した。

密度が高い(dense)乳房組織は乳癌リスクの強い指標として長く認識されてきた。

しかし、これまでそのような組織密度の重要性はよく分かっていなかった。

ムーニーと彼の研究チームは、インヴィトロで機械的および生物学的変数を個別に分離することによって、それらの密度の高い組織の物理的力と化学的環境が、どのように浸潤、増殖性の様式へと細胞を駆り立てるかについて発見した。



「遺伝的な突然変異が癌の根源にある一方で、この10~20年にわたる多くの研究は、腫瘍の進行を促進するか抑制することにおいて重要な役割を果たすとして、細胞の微細環境を意味付けてきた」、ハーヴァードのムーニーLabで以前のポストドクターであり、最近スタンフォード大学の機械工学学部に加わった筆頭著者のOvijitチャウドゥーリーは言う。

今回の研究で、細胞外マトリックスの剛性ならびにある種のリガンドの有効性は、どちらも、実際にどの遺伝子を呼び出すか、そして、正常な上皮細胞が悪性の癌細胞に特有の習性を示し始めるかどうかを決定できることが判明した。

「この微細環境の組成を評価することは、乳房X線撮影の密度に加えて、乳癌リスクのより望ましい評価を提供できるかもしれない」、チャウドゥーリーは言う。



ムーニー研究所が研究しているのは、細胞が環境を感知してそれに反応し、お互いに信号を送る方法に対して、自然バイオマテリアルと合成高分子の物性がどうやって影響を及ぼすかである。

細胞外マトリックス(生きている細胞を互いに接続してそれらの間のコミュニケーションを容易にする、クロスリンクされたタンパク質とポリマーの複雑なネットワーク)は、挑戦的な問題を研究に提供する。

ペトリ皿の二次元の細胞培養は、三次元の組織の劣ったモデルであると判明した。



「バイオエンジニアとして我々は、組成、空隙率、そして剛性のような環境因子の腫瘍形成に関する重要性を研究するために、それらを正確に調整できる三次元培養システムを設計できる」、ハーヴァードSEASのムーニー研究室で働く共同執筆者Sandeep Koshyは言う。

「これらの因子のいくつかは従来の2D細胞培養で観察するのが不可能であるが、細胞行動への重大な影響がある。」



先行研究は線維性蛋白のコラーゲンを様々な量で使用して、細胞外マトリックスの剛性を調整している。

しかしムーニーのチームは早くから、コラーゲンが細胞に対して単純な力学的な影響を与えるだけではないと認識していた。

つまり、それはある種のシグナル経路を引き起こすことができる。



線維コラーゲンは乳房上皮を囲む基底膜では通常は見られないので、どんなコラーゲン・シグナル伝達であれ、それらの研究の結論を混乱させる可能性がある。

コントロールできない変数を除去するために、研究チームは新しい具体的なモデルを設計した。

どんな細胞受容体とも結合することなく細胞外マトリックスを強化するために、彼らはコラーゲンの代わりにアルギン酸ゲルを使用する。

このモデルがその最も柔らかいモードであったとき、正常な、そして良性の乳房上皮細胞は、それの中で通常通りふるまった。そして、正常な生体内での乳房上皮の多くの重要な特徴を捕える腺房と呼ばれる細胞の構造を形成した。

しかし、ゲルがより硬かったとき、細胞は癌関連の遺伝子の発現を上向き調節し始め、細胞増殖と浸潤を引き起こすPI3K経路の活性が増加した。



「我々が『硬い』マトリックスで観察した浸潤性の構造は、早期のステージの浸潤性腺管癌の形態学に似ている。それらはまた、細胞分裂を引き起こすエストロゲン受容体アルファ[ER+]遺伝子の発現の増加も示す」、Koshyは言う。

「これらの多くのヒト癌で見られる変化が、単にそれらを囲んでいるマトリックスの剛性または組成を変えることによって、正常な乳房上皮細胞で誘発されることができることは印象的である。」



剛性は今回の話で重要であるが、しかしそれだけではない。

更なる実験は、細胞がラミニンの濃度の上昇にさらされると、高い剛性のゲル類において正常な行動を回復することを示した。ラミニンは基底膜で自然に見られるタンパク質である。

細胞外マトリックスが非常に柔軟であるとき、または、ラミニンの高濃度が確実に利用できるとき、細胞膜に存在するα6β4インテグリンはラミニンと結合して、ヘミデスモソームという構造を形成する。それは上皮細胞を基底膜に定着させる。


そして蛍光顕微鏡による研究により、硬いマトリックスの細胞は全くヘミデスモソームを形成していなかったことを明らかにした。

そのためムーニーのチームは、硬いマトリックスならびにラミニンの不足は、α6β4インテグリンを尾部がぶら下がって結合していない状態のままにすると仮定した。


チームの最終的な実験は、これらの結合していないインテグリン尾部が、実際、良いことには決して関係しないことを証明した:

それらは2つの重要な生化学的経路(PI3KとRac1)の活性化に関与し、それは生体外の上皮組織で悪性の細胞の挙動を誘導するのに必要かつ十分である。



この研究の癌生物学にとっての意味に加えて、アルギン酸塩ベースの細胞外マトリックス・モデルの発展も重要である。

「多くの他の生物学的プロセスの研究が、このシステムから利益を得る可能性がある」、ムーニーは言う。

「種々の組織と器官の幹細胞生物学、創傷癒合と発達に関する研究は、このシステムを利用することができる。」

学術誌参照:
1.細胞外マトリックス剛性と組成は、乳房上皮において悪性の表現型の誘導を共同で調節する。

Nature Materials、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140616141444.htm




<コメント>
細胞の悪性化には細胞外マトリックスの性質も重要かもしれないという研究です。
日光に当たらない足の裏にできる皮膚癌などもこういう機序によって起きるのかもしれません。

先月号のNatureダイジェストにも似たような内容の記事がありました。

http://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/toc/11/6
>「細胞の形の変化が、その細胞の運命を決める」との、逆説的にも思える成果

2014年6月26日

2014-06-27 23:53:15 | 

ストレス誘発性の発熱に関与する脳回路が特定される



精神的にストレスに曝されたと感じるとき、我々はしばしば心拍数や体温の上昇のような生理的変化を感じる。

この反応は「闘争または逃走」の状況において筋肉を暖めるのに有効である;

しかしながら、今日の社会ではストレスが長い間続くことがある。それは体温の慢性的な上昇と強度の疲労をもたらす。



京都大学の中村和弘博士の研究チームは、ヒトの社会的ストレスと似ている社会的敗北ストレスをラットに与えて、心因性ストレス誘発性高体温(psychological stress-induced hyperthermia; PSH)を誘発した。

2つの脳領域 ― 背内側視床下部(dorsomedial hypothalamus; DMH)と吻骨髄縫線(rostral medullary raphe; rMR) ― のどちらかでニューロンを阻害すると、褐色の脂肪組織でのストレス誘発性熱発生は消失した。

あるいは、これらの2つの脳の領域をつなぐニューロンを促進すると、褐色の脂肪組織の熱産生ならびに血圧と心拍数の増大を引き起こした。

学術誌参照:
1.ストレスは背内側視床下部と骨髄縫線回路を活性化して、褐色の脂肪組織の熱発生と高体温を引き起こす。

Cell Metabolism、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140626121842.htm

<コメント>
社会的ストレスは交感神経を経由して褐色脂肪細胞による発熱を刺激するという研究です。
下の図のPVHは、室傍核(Paraventricular hypothalamus nucleus)でしょう。


※vDMH(ventral DMH)、dDMH(dorsal DMH)


京大の発表はこちら。

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2014/140627_1.htm

2014年6月25日

2014-06-26 06:09:40 | 医学

科学者は抗生物質の抵抗性に対抗する秘密の武器を発掘する



カナダのノバスコシア(Nova Scotia)に住んでいる真菌は、薬剤耐性細菌との差し迫った戦いにおいて新しい望みを与える。

マクマスター大学の研究者たちは真菌に由来する新しい分子、AMAを発見した。

それは最も危険な抗生物質耐性遺伝子NDM-1(New Delhi Metallo-beta-Lactamase-1; ニューデリー・メタロベータラクタマーゼ-1)を武装解除することが可能である。

AMAはペニシリンなどカルバペネム系抗生物質への薬物抵抗性病原体をブロックする。

「簡単に言えば、この分子は抗生物質が自分の仕事ができるようにNDM-1をノックアウトする」、マクマスター大学のMichael G. DeGroote感染症研究所の責任者、ゲリー・ライトは言う。



マクマスター大学、ブリティッシュ・コロンビア大学、そしてウェールズのカーディフ大学による研究チームは、無害な病原性大腸菌による高度なスクリーニングによりNDM-1を止めることができる分子を分離した。

NMD-1は亜鉛を必要とするが、ヒトで毒性を引き起こすことなくNDM-1から亜鉛を取り除く真菌の分子を、彼らはついに発見した。

「これは気が重い問題の1つの側面を解決する。AMAはカルバペネム系抗生物質の活性を救う」、ライトは言う。

記事ソース:
上記の記事は、マクマスター大学により提供される材料に基づく。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140625132358.htm

<コメント>
AMA(aspergillomarasemine A; アスペルギロマラセミンA)という、NMD-1やVIM-2を無効にする分子が発見されたという記事です。

アスペルギルス・バーシカラ(Aspergillus versicolor)という真菌に由来するそうです。


2014年6月19日

2014-06-25 16:29:46 | 

膵癌の抵抗性メカニズムが特定される



成長と進行のために変異したKrasシグナル伝達に頼っている膵癌腫瘍は、そのKrasシグナルがいきなり強制的に止められても、出来あいの代用物を利用できる。



テキサス大学MDアンダーソン癌センターの研究者は、マウスで膵癌の成長を刺激するためにKras変異をオンにした。

彼らがそれを強制的にシャットダウンすると、腫瘍はKras変異とは独立して再発した。その腫瘍はKrasとは異なる癌遺伝子に依存していた。

再発性腫瘍はKras変異体の代わりに、Yap1という別の既知の癌遺伝子によるシグナル伝達に依存すると判明した。

そのYap1に依存的な腫瘍は、予後不良な膵癌の種類に似ていた。



研究で使われた遺伝子改変マウスモデルは、ドキシサイクリンで処置することによってKrasをオンにして膵癌を発病することができる。

腫瘍はすみやかに発病して、ドキシサイクリン処理の24時間の停止後に消失し始める。

ドキシサイクリン停止から3週以内に、腫瘍は全28匹のマウスで完全に消失した。

その後、そのマウスのうち20匹は9週から47週後の間に再発した。

再発した腫瘍は、15匹で肺または肝臓に転移する悪性の特徴を有した。

再発した腫瘍の半分は誘導可能なKras導入遺伝子が再び発現していたが、残り半分はKrasまたはそれに関連する経路が活性化している徴候がなかった。



非Kras再発性腫瘍を引き起こす分子機序を同定するためにチームは分析を行い、腫瘍遺伝子のコピー数多型を確認した。

「増幅していた唯一の遺伝子はYap1だった。Yap1は既知の癌遺伝子なので、これは道理にかなっている」、Avnishカプーア博士は言う。

Yap1の発現をRNA干渉によりノックダウンすると、Yap1が増幅していた再発性の腫瘍は縮小した。

Yap1は遺伝子の転写に関与するが、それ自体はDNAと結合しない活性化補助因子である。

Yap1はTead2と複合体を形成して、別の転写因子であるE2Fと共に作用する。

全体として、それらは腫瘍生存と成長を支える細胞周期とDNA複製プログラムを活性化する。



最近、膵癌は遺伝子転写プロフィールに基づいた分類により、Krasに依存的でないサブタイプが特定された。このいわゆる間葉系様の腫瘍(quasimesenchymal tumor)は予後不良である。

研究チームは、Yap1がこれらの腫瘍細胞系で強く発現していて、Yap1をノックダウンするとこれらの細胞の増殖が抑制されることを確認した。

Yap1は増殖と上皮間葉転換(EMT)、浸潤、そして転移に関与することが知られている。

Yap1は腫瘍の再発と進行を引き起こすが、しかし、膵癌の最初の形成を引き起こすには不十分であるとカプーアは言う。

学術誌参照:
1.Yap1活性化は、膵癌において発癌性Kras傾倒の迂回路を可能にする。

Cell、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140619125034.htm

<コメント>
いったんKrasが変異した癌をマウスで発症させると、たとえ変異Krasの発現を止めてもYap1/Tead2/E2Fによる迂回路ができてしまうという研究です。

何が起きているのかさっぱりわかりませんが、とにかく変異が起きた遺伝子を元に戻せばいいというものではないようです。



他にもKrasとYap1が協力してVimentinSnail2を発現させてEMTにつながるという同様の記事があります。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140619125315.htm


2014年6月24日

2014-06-25 11:52:54 | 

脳の遺伝子は腎臓癌と関連がある



脳の成長と発達を制御する遺伝子は、もっとも一般的な病型の腎臓癌である腎明細胞癌の促進に大きく関与することがフロリダのメイヨー・クリニックの研究者によって報告された。

遺伝子NPTX2はこのタイプの癌において必須の役割を果たし、一般の化学療法に抵抗性で、転移する患者では5年全生存率は10パーセント未満である。

「NPTX2がなぜ腎臓癌で発現するかはわからないが、我々はそれが何をしているか、そしてそれがどのように癌進行に寄与するか現在知っている」、彼は言う。

正常な腎臓組織ではNPTX2遺伝子は発現しないので、そのタンパク質を目標とする薬はきわめて焦点を合わせた治療を提供する。



研究者は、通常はNPTX2タンパク質が脳で標的とする受容体(GluR4)が、腎臓癌のサンプルでも見られることを発見した。

腎臓癌で過剰に発現されたNPTX2タンパク質は細胞から分泌され、それ自身の細胞膜上のGluR4に結合する。

NPTX2は複数のGluR4タンパク質を集合させ、細胞内へのチャネルを形成してカルシウムを流入させる。

GluR4チャネルをブロックすると癌細胞の死を引き起こした。

NPTX2は腎臓癌のすべての段階、特に転移で発現される。

学術誌参照:
1.ニューロンPentraxin2は腎明細胞癌悪性の調節因子で、それはAMPA選択的グルタミン酸受容体4の活性化を通してである。

Cancer Research、2014年6月;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140624105845.htm

<コメント>
乳癌でも同じようなことが起きているという記事がありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/bd101d81952b1c0b38f9d950e93c9617

>乳癌は、脳発達プロセスを再現する


2014年6月23日

2014-06-25 11:24:07 | 

ココア抽出物は、アルツハイマー病の特異的な機序に対処するかもしれない



ラバド(Lavado)ココア抽出物は、アルツハイマー病の頭脳で見られる損傷を低下させるかもしれない。

具体的に言うと、アルツハイマー病を模倣する遺伝子改変マウスを使用した研究で、Lavadoココア抽出物はベータアミロイド(Aβ)が脳で凝集するのを防止することが示唆された。



パシネッティ博士によって指揮される研究チームは、ダッチ(Dutched)、ナチュラル(Natural)、そしてラバド(Lavado)によるココア抽出物の効果をテストした。

Lavado抽出物は3つの間で最も高いポリフェノール含有量と抗炎症活性があり、研究のマウスではAβオリゴマーの形成を低下させ、シナプスへの損傷を逆転させることに最も効果的だった。

「Dutchedココア抽出物ではなくLavadoココア抽出物によってシナプスが欠損から保護されたという我々の発見は、ポリフェノールがシナプス伝達を救う活性がある構成要素であることを強く示唆する。

なぜなら、Dutchingプロセスは高いアルカリ度によってポリフェノール含有量の多くが失われるためである。」

学術誌参照:
1.ココア抽出物は、アミロイド-βのオリゴマー形成を低下させる:
アルツハイマー病の認知改善に対する意味。

J Alzheimers Dis、2014年6月;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140623224910.htm

<コメント>
アルツハイマーにはココアが効くと言いたいところですが、ダッチプロセスによる抽出ではポリフェノールが失われるのであまり効かないようです。

ラバド(Lavado)はスペイン語で「洗った(washed)」を意味するので、おそらく水かお湯で抽出するのでしょう。
ただ残念なことに、日本語で「ラバドココア」と検索しても1件も引っかかりませんでした。


2014年6月23日

2014-06-25 10:23:25 | 

ハンチントン舞踏病における致命的な細胞の機能不全が特定される



ワシントン医科大学(セントルイス)のヤノヒロコ博士は、ハンチントン病では脳細胞のエネルギー工場、つまりミトコンドリアへのタンパク質の輸送が損なわれることがマウスの研究でわかった。

「細胞に輸送タンパク質を過剰生産させることで問題を解決できることを我々は示した」、ヤノは言う。

科学者は、ハンチンチン・タンパク質の変異がミトコンドリアを破損させ、脳細胞を殺すことをしばらく前から知っていた。

新しい研究でヤノとピッツバーグ大学の協力者は、疾患の初期をシミュレーションするために遺伝子組み替えマウスで研究した。

変異ハンチンチン・タンパク質はTIM23複合体というタンパク質のグループと結合する。

このタンパク質コンプレックスは通常、必要なタンパク質と他の必需品をミトコンドリアへと移動させるのを助ける。

研究者は、ハンチンチン・タンパク質の変異がそのプロセスをそこなうということを発見した。

学術誌参照:
1.変異体ハンチンチンによるミトコンドリア・タンパク質移入の抑制。

Nature Neuroscience、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140623224908.htm

<コメント>
ハンチントン病についての関連記事は多いですが、ミトコンドリアが機能しなくなるのはもっとも致命的なように思います。

TIM23(Translocase of the inner membrane 23)はTim17、Tim21、Tim23、Tim50等の複合体で、さらにTim44とmtHSP70等と協力してミトコンドリアにタンパク質を移入するようです。


2014年6月23日

2014-06-24 20:18:21 | 腸内細菌

初めての胃腸マイクロバイオーム調整薬であるNM504は血糖を改善する



まだ名前が付けられていないNM504は、胃腸マイクロバイオーム調整薬(gastrointestinal microbiome modulator)という新しい分類の治療薬では最初のものである。

胃腸のマイクロバイオーム(消化器系における微生物とそれに関連する身体的・化学的ファクターの混合)は、人体の代謝を調節することにおいて重要な役割を果たすかもしれないと考える研究者がいる。

「我々は現代の西洋型の食事が2型糖尿病の発症に寄与すると考えているが、それは腸に住んでいる微生物を置き換えるからである」、MicroBiome Therapeutics主任研究員のマーク・ハイマン博士は言う。

ハイマンによると、NM504は胃腸の細菌と他の微生物(微生物叢と呼ばれる)、そしてその環境を置き換えて健康を改善することができるように設計されている。

NM504には生物活性のある食品成分(イヌリン、線維、ベータ-グルカン、そしてポリフェノールなどの抗酸化物質化合物)が濃縮されて含まれているという。



ハイマンと同僚は28人の糖尿病前症の成人で研究を行った。

ブドウ糖負荷テストでの120分後と180分後の血糖値は、プラセボ群よりもNM504群で著しく低かった。

NM504は試験中のインスリン感受性を増加させ、食欲も減少させた。

記事ソース:
上記の記事は、Endocrine Societyにより提供される材料に基づく。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140623120414.htm

<コメント>
食物繊維や抗酸化物質を組み合わせた胃腸マイクロバイオーム調整薬(GI microbiome modulators)が糖尿病の治療薬として開発されているという内容です。

少し前にも、1型糖尿病の幼児の腸内細菌が健康な幼児とは異なるという記事がありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/9511d3372d8ee41a0fbeb937fbf108e4

>腸にとっての理想的なシナリオは、発酵産物である酪酸塩を産生する細菌の適切なバランスを持つことであると著者は考察する。

>「我々は、果物と野菜で高い食事が最善であると思う。なぜならこれらは繊維/複合糖質が豊富であり、酪酸塩の産生種は繊維分解者(fibre degraders)との相互の栄養補給関係を経て、間接的にそれらに依存しているからである。」

2014年6月23日

2014-06-24 17:56:25 | 癌の治療法

トリプル・ネガティブ乳癌への抗アンドロゲン療法は、アンドロゲン腫瘍を低下させるために有益かもしれない



トリプル・ネガティブ乳癌は、他のサブタイプの乳癌のための治療からは利益を得られない。

しかし最近の研究は、この腫瘍の3分の1がアンドロゲン受容体を発現することを示す。

現在、これらの腫瘍でアンドロゲン受容体を阻害する臨床試験が行われている。



トリプル・ネガティブ乳癌は最近、高いアンドロゲン受容体発現を伴うサブタイプが分けられた(レーマン、JCI 2011)。

エンザルタミド(enzalutamide)による抗男性ホルモン受容体は前立腺癌の治療で広く使われるが、エンザルタミドはアンドロゲン受容体を発現するトリプル・ネガティブ乳癌の増殖・移動・浸潤する能力を低下させるだけではなく、アンドロゲン受容体は乳癌細胞の生存に必須のようである。

バートンと同僚がこれらの細胞でアンドロゲン受容体をブロックしたとき、細胞は死んだ。

しかし、影響を受けたのはアンドロゲン受容体の発現が高い細胞だけではなかった。


「トリプル・ネガティブの他のサブタイプでも、アンドロゲン受容体が同様に重要な役割があることを研究は示した」、第一著者のヴァレリー・バートン博士候補は言う。

動物モデルでは、複数のトリプル・ネガティブ乳癌サブタイプ全体で、アンドロゲン受容体の阻害はアポトーシスを増加させ、成長を阻害し、壊死を60パーセント増加させた。

記事ソース:
上記の記事は、コロラド・デンバー大学により提供される材料に基づく。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140623121006.htm

<コメント>
男性ホルモン受容体の阻害がトリプルネガティブ乳癌のサブタイプで有効かもしれないというコロラド・デンバー大学の研究です。
少し前から何回か記事になっているようです。

http://www.sciencedaily.com/releases/2012/06/120604094121.htm
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/12/121203121640.htm

2014年6月23日

2014-06-24 17:06:01 | 医学

2型糖尿病の治療を改善する方法



PPARgammaを活性化する薬(チアゾリジンジオン; thiazolidinedione/TZD)は、抗炎症性とインシュリンの感度を高める活性が2型糖尿病の治療になると長く考えられていた。

しかしながら、そのクラスの大部分の薬物は体重増加、水分貯留と心不全などの危険な副作用があるとされ、現在は市場から回収されたか、使用が厳格に制限されている。

究極の目的は「望ましい」性質を打ち消すことなく、PPARgamma活性の「ネガティブ」な側面を目標とすることである。

BUSMの研究者は、脂肪細胞において脂肪組織活性とPPARgammaを上手く調節する戦略を特定した。

学術誌参照:
1.GPS2/KDM4Aによる活性の先導は、PPARγのプロモーター特異的なリクルートを調節する。

Cell Reports、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/03/140320173158.htm

<コメント>
脂肪細胞でPPARγが転写因子としてプロモーターに結合して機能するためには、GPS2がユビキチンリガーゼのRNF8を阻害して、それによりH3K9脱メチル化酵素KDM4Aが安定することが必要だという研究です。




関連記事は、TZDがどのように腎臓近位尿細管での再吸収を促進して浮腫(edema)を引き起こすかについてです。

http://www.sciencedaily.com/releases/2011/05/110503132700.htm
http://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/S1550-4131(11)00137-9

一人抄読会さんの翻訳があります。

http://syodokukai.exblog.jp/13512716/

2014年6月20日

2014-06-24 10:55:16 | 

ごちそうにありつく前の膵臓癌は飢えている



癌の主要な治療目標は血管形成である。

癌細胞は生き残るために必要なものを得るため、最初は近くの血管に依存する。しかし腫瘍が成長するにつれて、彼らは新しい血管を形成する必要がある。

これらの血管は普通の血管とは異なる。それは癌の治療が非常に困難な理由の一部である。

カンザスシティーVA医療センターのSushanta博士は説明する。

「腫瘍の血管は停滞していて、しかも漏れやすい。そのため薬は腫瘍まで容易には到達できない。」



以前の研究において、Banerjees博士は特定のタンパク質(CCN1)が膵癌で過剰発現していることを発見した。

CCN1は正常な組織および癌組織の両方で新しい血管成長を促進するが、普通の細胞とは対照的に膵腫瘍の細胞によって分泌されるとき、CCN1は余計な何かをする。

それは腫瘍の内部で血管形成を促進して、血管の内層を形成する内皮細胞の移動を増加させた。

国立癌研究所によると、この移動プロセスは、腫瘍の血管形成の鍵である。

「腫瘍細胞はそれ自体にCCN1を分泌する。それは血管形成を始めるシグナルである」、Snigdhaは言う。



さらに、CCN1はソニックヘッジホッグ(SHh)遺伝子の重要な調節装置である。

研究者は、CCN1によって活性化されるSHhが膵臓癌細胞での血管形成を促進するとわかった。

「これらの要素の両方とも血管形成のために決定的なようである」、Sushantaは言う。

BanerjeesがshRNAを用いてCCN1タンパク質をノックダウンすると、マウス皮膚下で形成される血管と毛細管は極めて少なかった。

学術誌参照:
1.膵臓腫瘍細胞により分泌されるCCN1/Cyr61は、内皮細胞の移動と異常な新生血管の形成を促進する。

Scientific Reports、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140620163234.htm

<コメント>
膵癌細胞はCCN1を分泌してオートクリン/パラクリン的にSHhソニックヘッジホッグ)の分泌を調節することで、血管形成を促進するという研究です。



WikipediaのCCN1/Cyr61には、CCN1が腫瘍の成長を促進するにも関わらず、アポトーシスを誘導するともあります。
単純に阻害すればいいというものでもないのでしょうか。

>However, CYR61 can also induce apoptosis and cellular senescence.

2014年6月5日

2014-06-24 10:02:19 | 代謝

低酸素と糖尿病の関係



カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の研究者は、高脂肪食に対する初期の細胞の応答の連鎖を初めて記述した。

それは肥満によって誘発されるインスリン抵抗性と糖尿病に結びつく可能性がある。

「我々は肥満に関連する糖尿病の病因を説明し、ステップの全てがどのように起こるかを正確に指摘した」、UCサンディエゴのジェロルドM. Olefsky博士は言う。



第一著者Yun Sokリー博士たちはマウスに高脂肪食を与え、食事の大量の飽和脂肪酸がミトコンドリアのアデニン・ヌクレオチド輸送酵素2(ANT2)を活性化することを発見した。

ANT2の活性化は増加した酸素消費量を引き起こした。それは細胞が利用できる酸素が減少することを意味する。

その結果として起きる低酸素または不十分な酸素供給は、HIF-1alphaという転写因子の産生を誘発した。

HIF-1alphaはさらにケモカインの放出を引き起こした。

高脂肪食の継続はこのプロセスを確実に持続させ、マウスの肥満と、慢性的な軽度の組織炎症、そして最終的にはインスリン抵抗性に至った。

学術誌参照:
1.脂肪細胞のO2消費の増加はHIF-1αを誘導して、肥満における炎症とインスリン抵抗性を引き起こす。

Cell、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140605140015.htm

<コメント>
高脂肪食はマウスで脂肪細胞のミトコンドリア機能不全を引き起こして酸素消費を増加させ、サイトカインの放出を引き起こす結果、炎症とインスリン抵抗性が起きるというものです。

これはマウスの研究ですが、ヒトにおいても高脂肪食は1型糖尿病で食後血糖値とインスリン必要量を増加させるという研究がDiabetes Careに掲載されています。

http://care.diabetesjournals.org/content/36/4/810.full


CellのAbstractによれば、次のような流れです。

高脂肪食/肥満→カイロミクロン/リポリシス→遊離脂肪酸
→(ミトコンドリア機能不全)ANT2による脱共役呼吸(uncoupled respiration)とO2消費の増加
→脂肪細胞の低酸素状態→HIF-1α
→iNOS / MCP-1, LTB4 / PDK
→NOによるAktニトロシル化 / 脂肪組織マクロファージ(ATM)による炎症 / 乳酸産生増加による糖新生
→糖不耐性とインスリン抵抗性



※ニトロシル化(nitrosylation): ニトロシル(1価の基-N=O)によるニトロソ化合物の生成

2014年6月19日

2014-06-24 07:59:07 | 医学

アテローム性動脈硬化症を促進する新しい治療目標



UTサウスウェスタン医療センターの研究者によって、アテローム性動脈硬化症を促進する新しい分子が特定された。

この27-ヒドロキシコレステロール(27HC)という分子はオキシステロールの一種で、コレステロールの正常な分解により産生され、アテローム硬化性のプラークに蓄積することが知られている。

動物モデルと他の戦略により、研究者は27HCがアテローム硬化性プラークの形成を促進し、動脈壁において脂質の蓄積を二倍にすることを発見した。

エストロゲンは通常、アテローム性動脈硬化症の発症と進行から保護することができる。

27HCはエストロゲン受容体をブロックすることによってその効果を阻害して、アテローム性動脈硬化症を促進する。



研究者はさらに27HCが動脈壁で炎症を引き起こすということを発見した。

この有害な効果は、サイトカインという炎症を引き起こす分子の促進が特徴である。サイトカインはマクロファージの動脈壁への接着を増強した。

アテローム硬化性プラークの形成を引き起こすのは、脂質(例えばコレステロール)を蓄積するマクロファージの動員である。


「スタチンはコレステロールを低下させることにより心血管の健康に劇的な影響を示すが、アテローム性動脈硬化症と戦うためにはまだ補完的な方法が必要である」、Shaul博士は言う。

「27HCを標的にして合成を低下させる、または、その作用を阻害することによって、その補完的なアプローチを提供することができるかもしれない。」

学術誌参照:
1.コレステロールの代謝産物27-ヒドロキシコレステロールは、エストロゲン受容体アルファによって仲介される炎症誘発性のプロセスを経て、アテローム性動脈硬化症を促進する。

Cell Metabolism、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140619172612.htm


<コメント>
コレステロールのCYP27A1による代謝物、27-ヒドロキシコレステロールは、ERαを介してアテローム性動脈硬化を促進するという研究です。

Cell MetabolismのAbstractを見ると、27HCはマクロファージと血管内皮の接着を促進するのに加えて、エストロゲンによるNF-κBの抑制を阻害するとも書かれています。
(27HCはERK1/2とJNKに依存的にIκBαの分解を刺激する)




少し前にも、27-ヒドロキシコレステロールはER+の乳癌を促進するという記事がありました。
今回と同じテキサス大学サウスウェスタンによる研究です。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/25cbc239586c3cd4be7cd940bd012d56

>研究チームは、27-ヒドロキシコレステロール(27HC)というコレステロールの代謝産物が、エストロゲンレセプター・ポジティブな乳癌で腫瘍成長を促進するということを発見した。

>先行研究は、27HCを代謝する酵素のCYP7B1をエストロゲンが上向き調節することを示した。

2014年6月17日

2014-06-23 08:08:34 | 癌の治療法

ヘパリン誘導体は、神経芽細胞腫の成長を抑制する



デュークMedicineの研究者は、ヘパリン(凝血塊が形をなすのを防止するために血液を希釈化する注射薬)の派生型を使用して神経芽細胞腫を治療するための新しい戦略を確かめた。

ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーションで発表される研究は、ヘパリンの血液低粘稠化の特性を取り除くと、重症の出血を引き起こすことなく神経芽細胞腫を抑制して縮小することができることを発見した。



神経芽細胞腫と他の固形腫瘍の間の差の1つは、ストロマの機能または腫瘍周囲の結合組織である。

「ほとんどの場合、我々は固形腫瘍では、癌が侵襲性になるのを助ける悪いものとしてストロマを考える。神経芽細胞腫において、それは正反対である。つまり、腫瘍周辺に多くの結合組織があることは患者にとって好都合である」、デューク大学のC. Blobe医学博士は言った。

結合組織は、硫酸ヘパリン・プロテオグリカン(heparan sulfate proteoglycans; HSPG)と呼ばれる神経系シグナル伝達に関係する受容体を産生してリリースすることを研究者は確かめた。

硫酸ヘパリン・プロテオグリカンは癌細胞に分化の影響を及ぼして、未発達の癌細胞をより成熟したニューロンのように振る舞わせ、それらが増殖しないようにした。

硫酸ヘパリン・プロテオグリカンは抗凝固性のヘパリンと構造的に類似している。そしてそれは研究者に、ヘパリンが自然にストロマで生じている機能を再現するかもしれないと仮定させた。


彼らは、培養したヒトの神経芽細胞腫の細胞ならびに神経芽細胞腫のマウスにヘパリンを投与した。それは癌細胞を分化させ、マウスの腫瘍を消失させた。

しかしながら、ヘパリンは重症の出血を引き起こした。

研究者はヘパリンの構造を研究して、血液凝固の阻止のために必要な特性とは関係なく、いくつかの特性だけが分化を促進するシグナル伝達にとって重要だと確定した。

この発見により、分化を誘導できるが血液凝固の阻止は生じないというヘパリンの派生物を彼らは同定した。

学術誌参照:
1.ストロマの硫酸ヘパリンは、神経芽細胞を分化させて、神経芽細胞腫の成長を抑制する。

ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140617130758.htm

<コメント>
ヘパリン、硫酸ヘパリンプロテオグリカン(heparan sulfate proteoglycans; HSPG)、2-Oまたは3-O-脱硫酸化ヘパリン(2-O, 3-O-desulfated heparin; ODSH)は、ERK1/2リン酸化を介して転写因子のID1(inhibitor DNA binding 1)を発現させて、神経芽細胞腫の分化を誘導するという内容です。

同様に、硫酸ヘパリン修飾(heparan sulfate modification)された可溶性の受容体(soluble receptor)、例えばTβRIII、GPC1、GPC3、SDC3、SDC4(論文中ではsTβRIII、sGPC1、sGPC3のように表される)も分化を誘導することが可能だったと論文にはあります。

硫酸ヘパリン修飾ができないようにアミノ酸を置換するとそれが不可能になりました(TβRIIIの534番目のセリン残基からアラニンへの置換; S534A)。

レチノイン酸と急性前骨髄球性白血病の場合とは異なり、FGF2による神経芽細胞腫の分化を促進して効果を発揮するようです。