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メトホルミンは子癇前症を予防して治療する

2015-12-24 06:06:14 | 心血管疾患
New study indicates that metformin has the potential to prevent and treat preeclampsia

Drug shows promise for treating this complication of pregnancy that can threaten the life of both mother, baby

December 22, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151222082011.htm

産科学と婦人科学の学術雑誌であるAmerican Journal of Obstetrics and Gynecologyで発表された論文によると、
糖尿病で一般的に使われている薬のメトホルミンは
子癇前症/preeclampsia(妊娠高血圧症候群)を予防し、治療する能力があるかもしれないという
メトホルミンは妊娠中の糖尿病患者の治療にも長い間使われてきており、妊娠中の使用は安全であると考えられている

子癇前症は妊娠女性の5%から8%が罹患し、妊娠20週以降の高血圧の新たな発症ならびに尿中タンパク質の存在により診断される
この病態は妊婦死亡の主な原因であり、全世界で毎日約100人の母親と400人の周産期女性が亡くなっているが、
これまで子癇前症の唯一の治療は出産しかなかった

子癇前症は妊娠時にのみ生じる疾患であり、胎盤の問題と関連がある
胎盤への不十分な血液供給が損傷を引き起こして母親の血液中に有害な『毒素toxins』を放出させ、
高血圧や肝臓、脳、腎臓など多くの臓器に障害を引き起こす

数十年かけて、科学者は子癇前症が血管上皮細胞の疾患であることを同定してきた
少なくとも二つの『毒素』が胎盤によって作られ(可溶性VEGF受容体1/soluble vascular endothelial growth factor receptor 1、可溶性エンドグリン/soluble endoglin)、
子癇前症で増加して血管上皮細胞にダメージを与え、疾患の原因となる機能不全を引き起こす
しかしながら、現在これらの毒素を減少させる薬剤を妊娠中に臨床で利用することはできない


マーシー婦人病院とメルボルン大学(オーストラリア)の医師と科学者からなる研究グループは、メトホルミンがこれら二つの毒素の産生を減らし、傷ついた血管の治癒も助けることを報告する
筆頭著者のFiona Brownfoot博士たちは、メトホルミンが妊娠中の使用も安全であり、子癇前症の治療に使えるかどうかを見るための臨床試験が実施されるべきであると考えている

American Journal of Obstetrics and Gynecology誌で産科学の編集長であるRoberto Romero, MD, DMedSci.(Doctor of Medical Science) は、
今回のin vitro/ex vivoの研究結果をエキサイティングで有望であると評する/みなすcharacterize

Romero博士は、抗血管形成状態/anti-angiogenic state(血管形成が促進されない状態)は子癇前症だけでなく、他の妊娠合併症にも存在することを示す
(例えば胎児死亡fetal death、胎児発育遅延fetal growth restriction、早産premature labor)

※fetal growth restriction: 胎齢に対して5%以上の体重減少

「メトホルミンは21世紀のアスピリンのようである
この薬は糖尿病だけでなく多嚢胞性卵巣疾患polycystic ovary diseaseや癌に対してすら思いもよらない健康的な利益をもたらすことが発見されている」
Romero博士は言う

この容易な介入が子癇前症や他の妊娠合併症を防ぐのに効果的でありうるかどうかを決定するために
妊娠女性にメトホルミンを投与した以前のランダム化臨床試験や新たな臨床試験のシステマティックなレビューが至急必要であると
彼は考えている


http://dx.doi.org/10.1016/j.ajog.2015.12.019
Metformin as a prevention and treatment for preeclampsia: Effects on soluble fms-like tyrosine kinase 1 (sFlt-1) and soluble endoglin secretion, and endothelial dysfunction.

子癇前症は、胎盤の虚血/低酸素、ならびに可溶性Flt-1と可溶性エンドグリンの血液循環中への分泌と関連する
これが広範囲に血管上皮の機能不全を引き起こし、臨床的には高血圧と多臓器傷害として表れる

※endoglin: エンドグリン。血管内皮細胞の表面に存在するタンパク質で、TGF-βに結合する

最近、HIF1αを阻害する小分子が可溶性Flt-1ならびに可溶性エンドグリンの分泌を低下させることが発見されているが、それらの安全性プロファイルは不明である
メトホルミンは妊娠中も安全であり、ミトコンドリアの電子伝達鎖の活性を低下させることによりHIF1αを阻害することも報告されている



関連サイト
http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&view=article&id=6056:2015723&catid=24&Itemid=111
メトホルミンを服用することで、母親の血糖値と子癇前症や未熟児に関連するマーカーのレベルは低下したが、流産や死産リスクは低減されなかった。



関連サイト
http://nihonjinken.kilo.jp/blog/?eid=100
抗VEGF薬はvascular healthを阻害するために、高血圧をきたします。薬の使用開始直後に血圧がはねあがることも少なくありません。また、使用開始数週間後には高度の蛋白尿がでることも珍しくありません。これは糸球体のpodocytesにVEGFが高濃度に発現していることが関係していると思われます。
Preeclampsiaは、血管新生のバランスがpro-angiogenicからanti-angiogenicに傾きすぎるために起こると考えられています。健全な胎盤発達のためにはVEGFやplacental growth factorなどが必要ですが、pro-angiogenicに傾きすぎないように、胎盤からはVEGFのシグナルを減少させる物質も同時につくられています。このVEGFシグナルを減少させる物質は、一般にsoluble Fms-like tyrosine kinase 1(sFlt1)、もしくはsVEGFR1といわれ、端的に言えば、VEGFのレセプターが細胞膜から分離して浮遊しているようなものです。sFlt1が血中に大量に浮遊しているとsFlt1と結合するVEGFが増え、結果、細胞膜上に存在しているVEGFレセプターと結合するVEGFが減少することになります。つまり、sFlt1が増えるとVEGFのシグナルが減少します。sFlt1, VEGF濃度とpreeclampsiaの発症には強い相関関係があります。
治療ですが、ハーバードのKarumanchiらのグループはコレステロール吸着膜を使用してsFlt1を取り除く方法(apheresis)を選択しました。
 

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ミトコンドリアからの逆行性シグナルはHIF-1αを介する

血流障害はエピジェネティックな変化とアテローム性動脈硬化症につながる

2014-06-01 11:17:51 | 心血管疾患

血流障害はエピジェネティックな変化とアテローム性動脈硬化症につながる



妨げられた血流のパターンは、血管の内側を覆う細胞の遺伝子にエピジェネティックな変化を誘導して、それらの変化がアテローム性動脈硬化症へと寄与することを研究者は発見した。

この発見は、有酸素運動により促進される良好な血流パターンの保護的な影響が、なぜ時間がたっても持続することができるかについて示唆する。

結果は、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーションで刊行の予定である。



アテローム性動脈硬化症は動脈での脂肪の蓄積と炎症細胞の蓄積であり、心発作とストロークへとつながる可能性があるプロセスである。

動脈の湾曲と、その結果として生じる妨げられたフローは、アテローム硬化性プラークがどこで出現するかについて影響を与える。

生物医学的エンジニアHanjoongジョーと彼の同僚は、急速に妨げられた血流の、炎症性の影響を見るためのモデルを開発した。

ジョーは、ジョージア工大とエモリー・ユニヴァーシティでウォレスH.クールター生物医学工学部の生物医学工学教授である。

「この新しい研究は、妨げられた血流がアテローム性動脈硬化症へと導くエピジェネティックな変化を誘導することを示す」、ジョーは言う。

「プラークが湾曲するか分枝状の動脈で優先して出現することは長い間知られていたが、高い血中コレステロールのような危険因子が存在する場合に、妨げられた血流がアテローム性動脈硬化症を実際に誘発する可能性があるということを証明することが我々の研究室は可能だった。」



アテローム性動脈硬化症の血流パターンの重要性は証明されているにもかかわらず、それはDNAメチル化のプロセスを中断する薬により、マウス・モデルでブロックすることが可能だった。

ジョーのチームは、妨げられたフロー状況の下でオフにされるいくつかの遺伝子を特定し、それにはDNAのメチル化を必要とした。

これらの遺伝子のいくつかは、アテローム性動脈硬化症で新しい治療的な目標を意味するかもしれない。



ジョー研究室のマウス・モデルでは、高脂肪食の存在下で、1方の側でのみ、3つの頸動脈の血流を制限する。

Bloodの2010年の論文では、妨げられた血液フローによって誘導される遺伝子の1つが、DNAメチルトランスフェラーゼ酵素をコードするDNMT1であることを彼らは発見した。

ダンと彼女の同僚は、5-アザ-2'-デオキシシチジン(急性骨髄性白血病を治療するために使われる薬)による処置が、マウス・モデルでアテローム硬化性プラークの形成を予防することができることを発見した。


「臨床の場でアテローム性動脈硬化症治療のために5azaを使おうとは思わないが、我々の結果は潜在的な治療的な目標を明らかにする」、ジョーは言う。

この研究のより広い意味として、例えば有酸素運動による血流パターンの増進は、血管において遺伝子発現に関して長続きする刷り込みを誘導することができるということである、と彼は言う。

学術誌参照:
1.血流に依存的なエピジェネティックなDNAメチル化は、内皮遺伝子発現とアテローム性動脈硬化症を調節する。

ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/05/140527185355.htm

<コメント>
血流が阻害されるとDNMT1の発現が増大して、DNAがメチル化されることにより炎症が起きてアテローム性動脈硬化につながるという内容です。
(炎症に関しては、siRNAによるHoxA5ノックダウンによりHUVECへの単球の接着が増加したと論文中にあります)

下の写真のRCAは通常の血管、LCAは血流が阻害された方の血管です。
赤い部分はoil red Oによる染色で、脂肪が蓄積している領域を表しています。