機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

多発性硬化症とビタミンD不足の関連性についての説明

2015-12-16 06:06:06 | 
Supplement for myelin regeneration

December 7, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151207095956.htm


(赤が軸索、緑がミエリン鞘/髄鞘。
VDRを阻害するとミエリン再生は損なわれる(右図))

ミエリン鞘/髄鞘(ずいしょう)はニューロンの周りを覆うことで絶縁し、中枢神経系のインパルス伝導を加速する
通常、ニューロンが脱髄するとオリゴデンドロサイトoligodendrocyteの前駆細胞/OPCがニューロンに向かって移動し、ミエリンを作るオリゴデンドロサイトに分化して成熟する
しかしこのプロセスは年を取るとともにだんだん非効率的になり、そして多発性硬化症の患者は絶えずミエリン鞘を失う(脱髄demyelination)

核内受容体のレチノイドX受容体γ (RXRγ) はOPCの分化と再ミエリン化を促進することが知られている
核内受容体は一般にペアになってはたらくため、
ケンブリッジ大学のRobin Franklinを中心とする研究チームは
RXRγの結合パートナーの同定ならびに再ミエリン化におけるその役割の調査を開始した

OPCにおいてRXRγはビタミンD受容体/VDRを含む複数の核内受容体と結合し、オリゴデンドロサイトを成熟させる
VDRを阻害するとOPCの分化は損なわれ、軸索を再ミエリン化する能力はex vivoで低下した
対照的に、ビタミンDはVDRに結合して活性化し、OPCの分化を加速した

ビタミンDの低レベルは多発性硬化症の発症と関連付けられてきた
今回の発見は、ビタミンDがミエリン鞘の再生regenerationを制御することにより疾患の進行にも影響する可能性を示唆する
ミエリン鞘の再生は症状を軽減する重要な段階であり、これは患者が年を取るにつれて欠けていくfail
したがって、VDRを活性化させる薬は、多発硬化症や他の脱髄疾患に苦しむ患者において再ミエリン化を促進することが可能であると思われる


http://dx.doi.org/10.1083/jcb.201505119
Vitamin D receptor–retinoid X receptor heterodimer signaling regulates oligodendrocyte progenitor cell differentiation.
ビタミンD受容体とレチノイドX受容体のヘテロ二量体によるシグナル伝達は、乏突起膠細胞前駆細胞の分化を調節する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/0fda8922932df875485256fcf8e88dd6
脳内に漏れたフィブリノゲンが多発性硬化症を引き起こす
 

神経芽腫の細胞系統に抗寄生虫薬が有効

2015-12-15 06:38:34 | 癌の治療法
New hope for children with cancer

December 7, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151207082225.htm

461の細胞系統をテストした結果、神経芽腫が抗寄生虫薬のフルベンダゾールに高い感受性を示すことが明らかになった

また、フルベンダゾールは患者5人から得られた初代primary神経芽腫サンプルの生存力viabilityをヒトで達成できると考えられる濃度において低下させ、
鶏卵の腫瘍モデルにおいて血管形成ならびに神経芽腫の腫瘍増殖を阻害した

ハイリスク神経芽腫において様々な抗癌剤への抵抗性の獲得が大きな問題だが、
様々な抗癌剤に抵抗性を獲得した140の神経芽腫細胞系統のうち119の細胞系統が、低濃度のフルベンダゾールに感受性があった


http://dx.doi.org/10.1038/srep08202
Identification of flubendazole as potential anti-neuroblastoma compound in a large cell line screen.

321の細胞系統の内、117 (36%) がIC90s < 1 μMを示した

全26のentityの内、リンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽腫という3つのentityで、117の細胞系統のうち67%を占める

ユーイング肉腫の57%、頭頸部癌の60%がIC90 < 1 μMを示したのを除いて、細胞系統の大部分がIC90 > 1 μMを示した

胃癌、メラノーマ、食道癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽腫の細胞系統は、一つもIC90 < 1 μMを示さなかった (Fig. 1; Suppl. Table S1)


<i><コメント>
すべての癌に効くというものではないようです(テストした26のうち効果が高かったのは5つのみ)



関連サイト
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%80%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%AB
フルベンダゾールはベンズイミダゾール系に属する抗寄生虫薬のひとつ



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c3124edbd023ba26daebb2aaa35f2939
ReDOの研究者は以前メベンダゾールというベンズイミダゾール系の抗寄生虫薬の抗癌特性を調べている

http://dx.doi.org/10.3332/ecancer.2014.443
Repurposing Drugs in Oncology (ReDO)—mebendazole as an anti-cancer agent
 


多発性骨髄腫にサリドマイド誘導体が効かなくなる理由

2015-12-14 06:05:47 | 癌の治療法
New pathway underlying multiple myeloma relapse

December 6, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151206213538.htm

多発性骨髄腫の治療で最も大きな疑問の一つは、なぜ現在の治療を受けた患者のほぼ全てが最終的に再発するのかというものである
エールがんセンター/Yale Cancer Centerの新たな研究により、癌細胞がどのようにして治療を回避して再発につながるのかという謎が明らかにされた
この発見は12月6日に第57回米国血液学会議/American Hematologic Societyで発表される


多発性骨髄腫の最初の治療の一つとして免疫調節薬のレブラミド/Revlimidまたはポマリスト/Pomalystのようなサリドマイド誘導体が使われる
これらの薬は最初は効果があるものの再発を防ぐことができず、治療を回避した残存癌細胞によりほぼ全ての患者が再発する

エールがんセンターの研究チームはこの残った骨髄腫細胞を調査し、免疫調節薬により誘導される生物学的経路を同定した
この経路により癌細胞は生き残って増殖できるようになる

「今回の場合、MBD3というタンパク質の喪失を含む経路により、腫瘍細胞はより幹細胞のようになって生き続けるpersistことができるようになる」
筆頭著者のRakesh Vermaは言う

「MBD3タンパク質の分解を防ぐことにより、骨髄腫細胞はこの種の薬剤を回避するのが難しくなるだろう」
首席著者のMadhav Dhodapkar教授は言う

「再発につながる細胞を標的にすることが骨髄腫の治療には必須である」



関連サイト
https://en.wikipedia.org/wiki/MBD3
MBD3は他のMBDファミリーと異なりメチル化したDNAには結合する能力を持たず、代わりにヒドロキシメチル化したDNAに結合する
MBD3はMi-2/NuRD複合体のサブユニットでもあり、この複合体はヌクレオソーム再構築ならびにヒストン脱アセチル化の活性を持つ
MBD3は転移関連タンパク質2/metastasis-associated protein 2 (MTA2) とコアヒストン脱アセチル化複合体との結合も仲介する
 

寒さは腸内微生物を変化させて脂肪燃焼を引き起こす

2015-12-13 06:08:55 | 腸内細菌
Gut microbes trigger fat loss in response to cold temperatures

December 3, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151203135832.htm

寒さと運動には同様の効果があり、代謝的な健康を改善して肥満から守ることが知られている
12月3日にCellで発表された研究によると、寒さによる健康への良い影響の一因は腸内の微生物によることが明らかにされた
寒さにさらされたマウスの腸内では細菌の構成が劇的に変化し、そしてこの細菌の変化は脂肪を燃やすのに十分な変化である
グルコースの代謝も改善され、体重は減少した

「我々が環境に適応するための能力に腸の微生物が強く関与するという、説得力のあるcompellingエビデンスを我々は提供する
それは直接我々のエネルギーバランスを調節することによる」
ジュネーブ大学/University of Genevaの教授であり首席著者のMirko Trajkovskiは言う

「我々はこれらの発見が治療につながる可能性に非常に興奮している
これらの微生物のいくつかを標的にすることが有望なアプローチになりうるかどうかをテストし、
肥満とそれに関連する代謝的な病態を防げるかを調べたいと考えている」


肥満を治療するための方法の一つは、『良い脂肪』つまり褐色脂肪やベージュ脂肪の形成を促進することである
ヒトの幼児は熱を産生するための褐色脂肪を大量に持ち、寒さから守られている
成人でも褐色細胞のサブタイプであるベージュ脂肪から主に構成される褐色脂肪を維持していることが最近明らかにされた
寒さや運動はベージュ脂肪の形成を促進し、それにより蓄えられたカロリーを燃焼して低体温から守り、肥満や代謝的な問題からも保護している

腸内の微生物が肥満や代謝的な病態に関与することが知られているため、
Trajkovskiの研究チームは、腸の微生物が『寒さの健康的な影響』にも関与するかもしれないと考えた

 寒さ→ベージュ細胞─┤肥満

 腸内細菌─┤肥満

 寒さ─(腸内細菌?)→ベージュ細胞─(腸内細菌?)─┤肥満


この考えを支持するように、10日間の寒さ(6℃)への曝露はマウスの腸内微生物の構成に大きな変化を引き起こし、体重増加を防ぐことが実験から明らかになった

研究者は次に微生物が代謝に与える直接の影響を調べようとした
『寒さによって変化した腸内細菌』を無菌環境で育てられたために腸内に微生物を持たない別のマウスに移植したところ、
移植によりグルコース代謝は改善し、さらに寒さへの耐性toleranceが上昇して体重も減少した
さらに詳しく調べたところ、この改善はベージュ脂肪の形成が促進されたことによるものだった

「これらの発見は、環境の変化に応じて腸の微生物が直接エネルギーバランスを調節することを実証する」
Trajkovskiは言う


しかしながら、寒さの実験から3週間もすると、体重は安定し始めた
「エネルギー消費が高まったことによる体重減少に対抗counteractするため、より多くの栄養を腸が吸収しているのだろう」と研究者は推測した

この考えを支持するように、
『寒さに長くさらされたことと関連する腸内微生物』を移植したところ、
レシピエントマウスの腸のサイズは変化し、栄養を吸収する腸の表面積が増加することが実験で示された

「これらの発見は
長期の寒さと関連するエネルギー需要の増大に適応する方法として
哺乳類の腸内微生物がより多くのエネルギーを食物から取り入れられるようにすることを実証する
それにより微生物は低体温から守るのを助けるのである」
Trajkovskiは言う

「我々は腸の微生物が腸の構造と機能に対して劇的な影響を持つことにとても驚いている」


研究者は現在、腸の微生物が環境の変化を感知してホストのエネルギーバランスを変更させる分子メカニズムの研究を計画しているところである

研究のもう一つのアプローチavenueは、特定の細菌が腸の構造を再構成して腸からの栄養の吸収を『減少』させることにより肥満を防ぐかもしれないという考えに焦点を当てている


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.11.004
Gut Microbiota Orchestrates Energy Homeostasis during Cold.


Highlights
・寒さへの曝露は腸内微生物の構成に著しい変化を引き起こす
・寒冷微生物叢cold microbiotaの移植は、インスリン感受性を増大させ、白色脂肪組織の褐色化を誘導する
・寒さへの曝露または寒冷微生物叢移植は、腸の大きさを増加させて吸収能を上昇させる
・寒さにより抑制されるcold-suppressedアッカーマンシア・ムシニフィラ/Akkermansia muciniphilaの復元reconstitutionは、カロリー取り込みの上昇を逆戻りさせるreverts the increased caloric uptake


Summary
宿主の生理機能における微生物の機能は、宿主と微生物の共進化の結果である

我々は寒さへの曝露が微生物構成の著しい変化につながることを示す
そのように変化した微生物叢の無菌マウスへの移植は、
ホストのインスリン感受性を増大させるとともに、寒さへの忍耐を可能にするenable toleranceのに十分だったが、
その理由の一部は白色脂肪の褐色化の促進によるものであり、それがエネルギー消費ならびに脂肪減少の増加につながった


しかしながら、寒冷が長期化すると体重喪失は抑制されattenuated、
これは「絨毛villiならびに微絨毛microvilliの長さを増大させることによりカロリー取り込みを最大化する」という適応メカニズムにより引き起こされた

この吸収表面積の増大は『寒冷により変化した微生物叢cold microbiota』と共に移植可能transferableであり、寒冷微生物叢は腸の組織再構築を促進し、アポトーシスを抑制する遺伝子発現の変化につながる
しかし、『寒冷微生物』の移植中、寒さにより最も下方調節される株のアッカーマンシア・ムシニフィラを共に移植することによってその効果は減少する

我々の研究結果は微生物叢がエネルギー需要が増大する間のエネルギー恒常性全体を統合するための重要な要因であることを実証する


Figure 1
(H) Comparison of phylum-level proportional abundance of cecum and feces of up to 31 days cold-exposed or RT control mice.
門レベルの比較。室温/room temperature (RT)と比較して、寒冷曝露群では、盲腸cucumでも糞便fecesでも、ヴェルコミクロビア門/Verrucomicrobiaが減少している


(G)
下の方にヴェルコミクロビア科/Verrucomicrobiaceaeがあり、寒冷群で減少している


<コメント>
アッカーマンシア・ムシニフィラといえば糖尿病の改善と関連するとされてきた菌なだけに、
それが肥満を改善する寒冷によってむしろ『減少』するというのが意外だった

(寒冷が続くと、マウスの腸ではアッカーマンシア・ムシニフィラが減少して、腸からの栄養の取り込みが上昇した
逆に言うと、アッカーマンシア・ムシニフィラの増加は、腸からの栄養の取り込みが元に戻る/取り込みが減るという方向に作用するようだ)



※生物分類表
└ 細菌ドメイン Bacteria
 └ ヴェルコミクロビア門 Verrucomicrobia
  └ ヴェルコミクロビア綱 Verrucomicrobiae
   └ ヴェルコミクロビア目 Verrucomicrobiales
    └ ヴェルコミクロビア科 Verrucomicrobiaceae
     └ アッカーマンシア属 Akkermansia



関連サイト
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%93%E3%82%A6%E3%83%A0%E9
ヴェルコミクロビウム門はグラム陰性の真正細菌の門である



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b77a14410432564eed1bbe615cbf9fcc
緯度が北の方ほどファーミキューテス門が多くバクテロイデス門が少なく、その比率が肥満と関連する



関連サイト
http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?kibanID=5087
ラードを食べたマウスでは炎症を起こすビロフィラ属の細菌が増殖し、魚油を食べたマウスでは体重増加を抑えグルコース代謝を改善するアッカーマンシア・ムシニフィラが増殖した
 ラード→[腸内細菌]LPS→TLR4→TRIF/MyD88→CCL2



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/5410eb0f0900f4f19d875c843cfb6ab9
太るほど体内のsLR11というタンパク質が多くなり、sLR11は褐色脂肪による燃焼を抑制する



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151202142210.htm
メトホルミンが効く理由の一因は、腸内細菌の変化とそれによる酪酸など短鎖脂肪酸による

※メトホルミンの記事中のI. bartlettiは、Intestinibacter bartlettiiのこと(Intestinibacterは2014年に新しく作られた属)
クロストリジウム属のClostridium bartlettiが新たに分類し直され、Intestinibacter bartlettiiに変更された
 

乳癌の脳転移に関連するCTCサブ集団を特定

2015-12-12 06:29:16 | 
Researchers isolate cells implicated with breast cancer-derived brain tumors

December 3, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151203081224.htm

脳に転移した乳癌患者では、
・epithelial cell adhesion molecule (EpCAM) が陰性、
・ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体/urokinase plasminogen activator receptor (uPAR)
または
インテグリンβ1/beta-1 integrin (β1int) のどちらかが陽性
のCTCが見られた

しかし、この細胞集団から脳転移を再現することはできなかった
「これはおそらく、乳癌進行を適切に真似るぐらい十分多くCTCを作るのが難しいからだろう」


http://dx.doi.org/10.1038/srep17533
The isolation and characterization of CTC subsets related to breast cancer dormancy.
乳癌の休止状態と関連するCTCサブセットを単離して特徴付けをする

Abstract
CTCの表現型を明らかにすることは、その転移能metastatic competenceと関連する不均一性heterogeneityを分析するために有望である

CTCの生存率は非常に変わりやすくvariable、これが
浸潤と転移または休止状態のどちらかの原因となるまだ未探求の性質についての、多くの疑問につながる

我々は乳癌が脳に転移したと診断された患者とそうでない患者の末梢血からCTCサブセットを単離した

CTCサブセットは、EpCAM陰性だが、CD44+/CD24−という幹細胞の徴候が陽性のものが選ばれ、
それに加えて、uPARとintβ1を組み合わせた発現を選んだ
これらは乳癌の『休止dormancy』メカニズムに直接関与するバイオマーカーである

CTCを三次元培養して腫瘍塊tumorsphereを生成させて分析した結果、
uPAR/intβ1を組み合わせた発現に特有のdistinctive、三次元培養されたCTC腫瘍塊の増殖性で浸潤性の性質を同定した

このuPAR/intβ1サブセットの分子メカニズムは、脳転移を生じる可能性が高いハイリスク乳癌患者を前向きに同定する能力を促進する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ea0de8563d5148bd004a897b9905082e
小細胞肺癌の循環腫瘍細胞を培養することに成功



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151203081222.htm
乳癌や前立腺癌がいったん骨に転移するとそこで『不活性dormantな状態』になり、数ヶ月から数年間たってから『活性化』して増殖を始め、転移巣を形成する
今回の研究では急速な分裂をしなくなると蛍光を発するようにした多発性骨髄腫をマウスの脛骨tibiaに注入し、それらのうち少数が休止状態に入るのを二光子顕微鏡で観察した
この骨髄腫細胞は、骨芽細胞により休止し、破骨細胞によって再活性化することがわかった



関連サイト
http://pdbj.org/eprots/index_ja.cgi?PDB%3A2FD6
セリンプロテアーゼの一種であるウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子(uPA)は細胞表面にあるウロキナーゼ受容体(uPAR)に高い親和性を示し、腫瘍の増殖や転移や炎症に関与する一連の信号伝達を誘発する。このuPAとuPARが関与する信号伝達機構は腫瘍の生育や転移に重要な役割を果たすと考えられており、可溶性ウロキナーゼ受容体(suPAR)の腫瘍細胞中濃度は、がん患者の予後状態を反映する指標として知られている。
またuPARの発現を抑制することによって、腫瘍細胞の浸潤や転移が抑えられ、浸潤の逆戻りが起こり、腫瘍の休眠期が延長されるという知見から、uPARの拮抗剤はがんの進行を食い止める薬剤になりうるのではないかと注目されている。 このような背景もあいまって、ウロキナーゼ受容体の立体構造の決定が待ち望まれていた。
 

遺伝子空白領域の立体的な相互作用

2015-12-11 06:12:22 | 
Folding your genes: New discovery sheds light on disease risk

November 30, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151130084522.htm

イギリスのマンチェスター大学とバブラハム研究所/Babraham Instituteの新しい研究により、
遺伝子間の空白gapがどのように相互作用して関節炎や1型糖尿病のような疾患リスクに影響するのかが明らかになった

Nature Communicationsで発表された研究で科学者は
DNAの折りたたみfoldsの中にある『空白の領域gap regions』が、
実はこれまで疾患に重要であるとは考えられてこなかった遺伝子と物理的に相互作用することを示す
この空白の領域は、遺伝子のスイッチを入れて発現を制御することに重大な影響を持つ
現在これらの遺伝子の多くが関節炎や乾癬、1型糖尿病のような疾患の発症リスクを増大すると考えられている

マンチェスター大学の主任研究者lead researcher、Stephen Eyre博士は言う

「かつて、研究者は空白の領域gap regionに『最も近い遺伝子』を探すというアプローチにより、特定の疾患を引き起こす遺伝子を探して特定してきた」

「事実はそれよりもはるかに複雑である
遺伝子間の空白は影響があるだけではなく、今回我々の研究が示したように空白は必ずしも『最も近い遺伝子』に影響を及ぼすとは限らない
それらははるかに遠い距離を越えて作用する可能性があり、遠く離れた遺伝子のオンとオフを切り替える」

このプロセスは、2メートルあるDNAを核内に詰めこむための折りたたみfoldingによって引き起こされる
折りたたみにより空白領域は『重要な遺伝子』と近くなり、したがって遺伝子の活性レベルを制御する

折りたたまれたDNAのある部分では、
様々な疾患へのリスクを上げるいくつもの空白領域が、同一の遺伝子と『出会う』

この発見は次のような可能性も生じる
「遺伝子の中には複数の疾患リスクを上げるものがあり、
それは空白領域によってどのように調節されるか、そしてDNA構造のどの場所から調節されるかに依存する」

この知識は、疾患の理解と治療の可能性への洞察につながりうる

研究の次の段階は、この複雑な相互作用をさらに深く、そして異なるタイプの細胞でも調査し、
遺伝子と空白領域がどのように相互作用して疾患リスクを上げるのかについてのより完全な全体像を明らかにすることである


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms10069
Capture Hi-C reveals novel candidate genes and complex long-range interactions with related autoimmune risk loci.
キャプチャHi-Cにより新たな候補遺伝子ならびに関連する自己免疫リスク遺伝子座との長距離相互作用を明らかにする

Abstract
ゲノムワイド関連解析/GWASはこれまで複合性疾患と関連する遺伝子バリアントgenetic variantsの同定に素晴らしい成功を収めてきたが、
関連シグナルassociation signalsの大部分は遺伝子と遺伝子の間にありintergenic、そのシグナルの多くがエンハンサー領域に存在するというエビデンスが蓄積しつつある


我々はキャプチャHi-Cを使い、「4つの自己免疫疾患に関するバリアント」と、「バリアントの機能的標的」との間の相互作用をB細胞とT細胞系統において初めて調査した

今回我々は非常に多くのループ形成による相互作用を報告し、B細胞とT細胞の両方に共通する相互作用はほんの少数に過ぎないというエビデンスを提供する
これは相互作用が非常に細胞タイプ特異的cell-type specificであることを示唆する

疾患と関連するいくつかのSNPは最も近い遺伝子とは相互作用せず、
より説得力のあるcompelling遺伝子(例えばFOXO1やAZI2)と相互作用し、それはしばしば数百万塩基も離れて存在する

そして最後に、
様々な自己免疫疾患と関連する領域はお互いに相互作用し、そして同一遺伝子のプロモーターとも相互作用する
これは自己免疫疾患の遺伝子標的が共通して存在する可能性を示唆する(例えばPTPRC, DEXI, ZFP36L1)


Results
例として、関節リウマチと関連するSNPがある領域はEOMES遺伝子の近くに位置するが、このSNPはAZI2のプロモーターと強く物理的に接触することを示唆する強いエビデンスが発見された
AZI2はNF-κBの活性化に関与する遺伝子であり、どちらの細胞系統でも64万塩基離れている (Fig. 4a)

さらに、関節リウマチ/RAと若年性特発性関節炎/JIAに関与するバリアントがCOG6遺伝子のイントロン領域に存在するが(COG6はゴルジ装置の要素をコードする遺伝子)、これはFOXO1遺伝子のプロモーターと相互作用することを示す
このバリアントはどちらの細胞タイプでも100万塩基離れている (Fig. 4b).

FOXO1遺伝子は関節リウマチにおいて『線維芽細胞様の滑膜細胞/fibroblast-like synoviocyte (FLS)』の生存に重要であることが最近発見された(18
関節リウマチのFLSでは、変形性関節炎osteoarthritisのFLSと比較して過剰にメチル化されており(19、これは遺伝子候補に関して我々の研究結果を強く支持する機能的エビデンスを提供する

※18: "JNK-dependent downregulation of FoxO1 is required to promote the survival of fibroblast-like synoviocytes in rheumatoid arthritis."
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24812285
RESULTS:
末梢血でのFoxO1のmRNAレベルはRA患者で減少し、滑膜組織でのFoxO1発現は疾患活動性disease activityと逆相関していた
RAのFLSをIL-1βまたはTNFで刺激すると、FoxO1は急速に下方調節された
この効果はAkt/protein kinase B (PKB) には依存せず、JNKを介するFoxO1のmRNA分解が加速されたことによる
RAのFLSにおけるFoxO1のアデノウイルスによる構成的活性化/ADAによる過剰発現はアポトーシスを誘導し、これは細胞周期と生存を調節する遺伝子(BIM, p27(Kip1), Bcl-XL)の発現の変化と関連した

CONCLUSIONS:
我々の発見はJNKに依存的なmRNA安定性の調整を同定する
これはサイトカインによるFoxO1調節の根底にあるAkt/PKB非依存の重要なメカニズムであり、FoxO1の発現の減少がRAにおけるFLSの生存を促進することを示唆する


※19: "DNA methylome signature in rheumatoid arthritis."
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22736089


※線維芽細胞様滑膜細胞 (fibroblast-like synoviocyte: FLS): 滑膜組織の表層に存在し、関節リウマチにおいて強い増殖能を示す。サイトカインの産生、タンパク質分解酵素の産生により滑膜炎、パンヌスpannus形成、骨軟骨破壊に関与する


英語版WikipediaでのFLSの説明: 正常組織において、滑膜(関節包と関節腔articular cavityの間に位置する薄い層)を構成する、関節の内層である
滑膜synovial membraneは、外層outer layerである『内膜下subintima』と、内層inner layerである『内膜intima』という2つの要素から構成される
この内層inner layerは主に2種類の細胞から構成され、特殊化したマクロファージである『マクロファージ様滑膜細胞/macrophage-like synovial cells』と『線維芽細胞様滑膜細胞/fibroblast-like synoviocytes』からなる
これらは関節内部の恒常性の維持に重要であり、滑液synovial fluidの主な要素であるヒアルロン酸hyaluronic acidや他の糖タンパク質の代表的な供給源である
線維芽細胞様滑膜細胞は間葉系の源の細胞であり、線維芽細胞と共通する多くの特徴(複数のタイプのコラーゲンや、ビメンチンタンパク質、細胞骨格フィラメントの一部などの発現)を示すが、
線維芽細胞とは違い独特のタンパク質を分泌し、中でも特にルブリシンlubricinは関節の潤滑lubricationのために重要である

滑膜の過剰形成(細胞数の増加)は、関節リウマチという自己免疫疾患の典型的な特徴である
関節リウマチでは慢性的な炎症が生じ、軟骨と関節が破壊されて変形するが、
増殖とアポトーシスのプロセスの変化により滑膜内の細胞数は増加し、特に線維芽細胞様滑膜細胞が増加する
線維芽細胞様滑膜細胞は他の免疫細胞と共に炎症性の環境を滑膜に作り出し、損傷した箇所により多くの免疫細胞を引き寄せ、関節の破壊の一因となる [1][2][3]
滑膜内の線維芽細胞様滑膜細胞は関節リウマチで表現型の変化を示し、『接触阻止contact inhibition』の性質を失い、『粘着性の表面に依存性の増殖the growth dependency on adhesive surfaces』も失い、そのどちらも線維芽細胞様滑膜細胞の数の増加の原因となる(これらは例えば癌細胞の増殖の特徴でもある)
線維芽細胞様滑膜細胞は炎症性タンパク質の特にIL-6とIL-8や、プロスタノイド/prostanoids、マトリックスメタロプロテイナーゼ/matrix metalloproteinases (MMPs)を作る
これらは他の細胞に直接影響し、炎症の促進にも関与する
これらのプロセスは血小板に由来する微小胞microvesiclesによっても影響され、これもIL-1の分泌を通じて線維芽細胞様滑膜細胞の活性化の一因となる [4]


※pannus: パンヌス。慢性的な関節リウマチなどのときに出現する、滑膜の関節内への増殖状態



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b9a5d42e4bba4e00fb26777d33a8b188
ループを形成して遠く離れた相互作用をするDNAをキャプチャHi-C技術により調べる


癌細胞は線維芽細胞に転移と増殖をサポートさせる

2015-12-09 06:14:42 | 
Spreading cancer cells must change their environment to grow

December 3, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151203135844.htm

フランシス・クリック研究所のCancer Research UKの科学者の新たな研究によると、
転移しようとする癌細胞が新しい場所に到達すると、環境を作り変えて増殖し続けることが可能であるという
さらに、癌細胞が環境を変化させるのが早いほど、その増殖は早くなるだろうということも明らかになった


別の場所に移動した癌細胞は、周囲の組織からの『助け』が必要である
周囲の助けにより必要とする環境を得た癌細胞は定着establishedし、増殖を開始して新たな腫瘍を形成する

研究者は転移しやすい癌細胞がTHSB2を作ることをマウスで示した
THSB2は新しい環境をより快適welcomingにするのを助け、腫瘍が増殖できるようにする

さらなる分析により、THSB2は線維芽細胞を活性化させることが明らかになった
線維芽細胞は通常は体内の組織を作っているが、癌細胞の増殖をサポートすることも可能である


Cancer Research UKの科学者でフランシス・クリック研究所のグループリーダーであるIlaria Malanchi博士は言う
「癌細胞が新しい環境に適応する能力を阻害できれば、他の場所で癌が増殖するのを遅くできるだろう」

「癌細胞がTHSB2タンパク質を多く作るほど環境は素早く変化し、癌細胞の増殖にとって適した状態になる」

「これは刺激的な第一歩である
我々は次に癌細胞がTHSB2を作るのを止める阻害剤を見つけ、転移する能力を低下できるかを調べる必要があるだろう」

Cancer Research UKのchief scientistであるNic Jones教授は言う
「転移は複雑なプロセスである
今回のような研究により、我々は転移が起きるのを止めてより多くの人命を救うための方法の理解に一歩近づくだろう」


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2015.11.025
Mesenchymal Cancer Cell-Stroma Crosstalk Promotes Niche Activation, Epithelial Reversion, and Metastatic Colonization
間葉系の癌細胞とストロマのクロストークは、ニッチの活性化、上皮への再転換、転移増殖を促進する

※colonization/innidiation: 転移増殖
※EMT: 上皮間葉転換


Highlights
・AXLが陽性の間葉系状態の細胞は、線維芽細胞を活性化させる高い能力を持つ
・AXL-EMTに依存的な線維芽細胞の活性化はTHSB2によって促進される
・活性化した線維芽細胞は、癌細胞の上皮状態に向けた可塑性/柔軟性plasticityを促進する
・この間葉上皮転換は、BMP依存的な増殖と関連する


Summary
Subsequently, disseminated metastatic cells revert to an AXL-negative, more epithelial phenotype to proliferate
and decrease the phosphorylation levels of TGF-β-dependent SMAD2-3
in favor of BMP/SMAD1-5 signaling.

in favor of ...
〈事に〉賛成して,…を支持して,〈人に〉味方して:
〈事が〉…に有利に,の利益になるように.


http://dx.doi.org/10.1158/1538-7445.AM2015-4723
Abstract 4723:
Mesenchymal status promotes metastatic colonization via a cancer cell-stroma crosstalk which uncouples EMT and stemness
間葉状態は、癌細胞-ストロマのEMTと幹細胞性の連結を分離させるuncoupleクロストークを通じて、転移増殖を促進する
 


自己免疫性てんかんのサブタイプ

2015-12-08 06:15:55 | 
Autoimmune epilepsy outcomes depend heavily on antibody type

December 4, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151204145916.htm

薬が効かないてんかんの原因は免疫の機能不全であることがだんだん認識されるようになっているが、
免疫系がどのようにして、そしてなぜ神経細胞を攻撃するのかはよくわかっていない

アメリカてんかん学会/American Epilepsy Society (AES) の第69回会議で発表される2つの研究では、
薬剤抵抗性のてんかん患者において様々なタイプの自己免疫応答がどのようにして著しく異なる応答をするのかについて調べている


トロント大学とウェスタン大学による研究は、すべての自己免疫てんかんが同じではない(少なくとも予後と治療への応答に関しては)というエビデンスを提供する
以前の研究で、細胞内タンパク質への自己抗体の存在は、細胞表面タンパク質への自己抗体のそれと比較して
予後の悪さならびに免疫療法への応答の悪さと関連することが示されている

この二つのグループに存在するかもしれない違いを調べるため、論文の著者は自己免疫てんかん患者9人の臨床データと脳波図electroencephalogram (EEG) データを分析した
その結果、3人から細胞内タンパク質のMa2を標的とする抗体が検出され、残りの6人からは細胞表面タンパク質のLGI1への抗体が検出された
抗Ma2抗体を持つてんかん患者は全員が(てんかん罹患後のある時点で)集中治療室/ICUに入った経験があり、さらに全員がてんかん重積状態status epilepticusを経験していた一方で、
抗LGI1抗体を持つてんかん患者でこのような状態が当てはまるのは6人中1人だけだった

※てんかん重積状態: てんかんが長く続くか(30分以上)、短い間隔で繰り返し起きる状態

抗LGI1の患者の主な懸念はてんかんだったが、抗Ma2の患者はさらにナルコレプシーやふるまいの変化のような神経的な問題を経験する傾向があった

抗Ma2の患者では3人中2人に癌性腫瘍cancerous tumorsが検出されたが、抗LGI1患者には1人も検出されなかった

どちらのグループも複数の薬を処方されていたにもかかわらずてんかんのコントロールが不良だったが、抗Ma2の患者は抗LGI1の患者よりも免疫療法に応答しなかった

「全体的に、抗Ma2抗体の患者は抗LGI抗体の患者よりも悪性の推移を示す
抗LGI1患者の大部分と抗Ma2患者の大部分はてんかんを抗痙攣薬anticonvulsant drugsでコントロールできなかったが、
免疫療法に応答する割合は抗LGI1患者の方が多かった」
トロント大学で神経学のレジデントresidentであるClaude Steriade, MDCMは言う


発表される2つ目の研究では、自己免疫てんかん患者の中には脳の手術が有益な場合があり、何に対する抗体かという抗体の種類は手術の結果outcomeには影響しないようだということが示唆される
スペイン・バルセロナのホスピタル・クリニックを中心とする研究チームは複数センターによる後向き研究を実施し、
薬剤抵抗性で免疫機能異常のてんかん患者11人の脳手術の結果outcomeを評価した

手術前、患者のそれぞれで様々な自己抗体が同定された
(抗Ma2抗体が2人、抗GADが5人、抗Huが1人、抗VGKC/voltage-gated potassium channelsが2人、抗LG1が1人、抗CASPR2が1人)

手術後のフォローアップで訪問した際、患者の5人はてんかんがなくなったかほとんどなくなっており、この5人はニューロンに関する様々な抗体を持っていた
(抗Ma2 1人、抗GAD 1人、抗Hu 1人、抗VGKC associated to GAD 1人、抗LG1 1人)


「手術療法は抗ニューロン抗体antineuronal antibodyと関連する薬剤抵抗性てんかんの患者において、てんかんの頻度を改善する
しかしそれは患者の少数であり、異なるアプローチがありうることから、これらの患者をよりうまく分類するガイドラインの必要性を示唆する
より多くの集団で結果を研究するために国際的な患者の登録が必要だろう」
著者の一人、バルセロナ・ホスピタルクリニックの教授でありてんかん専門医epileptologistのMar Carreño, M.D., Ph.D.は言う



関連サイト
http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2013/11/-lgi1.html
LGI1欠損マウスはシナプス伝達異常により生後2-3週間で致死性てんかんを必発し、
LGI1自己抗体を高値かつ単独で有するほぼ全ての患者が辺縁系脳炎と診断されていた



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6b9481df85e3a016060c9384a78fbf77
抗NMDAR抗体は統合失調症や双極性障害を引き起こす可能性がある



<コメント>
ハンニバルでウィルが抗NMDA受容体脳炎に罹患していた

 

無痛症を再現する調合レシピを発見

2015-12-07 06:09:39 | 
Genetically modified mice reveal the secret to a painless life

Researchers have discovered the pharmaceutical recipe for painlessness

December 4, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151204090034.htm

生まれながらに痛みを感じることができない人が存在する
彼らはまれな遺伝子変異を持つが、この変異による影響を薬剤により再現しようとした試みは驚くほど成功していない

ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン/University College Londonの研究者は
医学研究会議/Medical Research Council (MRC) とウェルカム・トラストの資金提供を受けて
ヒトと同じ変異を持つように修飾modifiedしたマウスで研究を行い、無痛painlessnessの処方/レシピrecipeを発見した


神経細胞の細胞膜にシグナルを伝えさせる『チャネル』は、神経系における電気的なシグナル伝達にとってきわめて重要である
2006年、ナトリウムチャネルのNav1.7が痛みを伝える経路において特に重要であり、Nav1.7が生まれつき機能しない人々は痛みを感じないことが示された
その発見以降Nav1.7の阻害剤が開発されてきたが、その効果は弱く、失望させるものだった

Nature Communicationsで発表された今回の研究で、
Nav1.7を持たないヒトとマウスは自然に生じるオピオイドペプチドレベルの産生も通常より高いことが明らかにされた

オピオイドが無痛に重要かどうかを調べるために研究者がNav1.7を持たないマウスにオピオイド拮抗薬のナロキソンを与えたところ、そのマウスは痛みを感じることが可能になった
研究者が次にNav1.7のまれな変異を持つ39歳の女性にナロキソンを投与すると、彼女は人生で初めて痛みを感じたという


「これまで10年間の薬の試験はかなり失望させるものだったが、
我々はついに、Nav1.7が本当にヒトの痛みに重要な要素であることを確認した」
首席著者のJohn Wood教授 (UCL Medicine)は言う

「これまで秘密だった成分ingredientは、昔からあるold-fashionedオピオイドペプチドであると判明した
我々は現在、低用量のオピオイドをNav1.7阻害剤と組み合わせる方法の特許を提出しているfiled a patent
これはまれな変異を持つ人々が経験するような無痛を再現するはずであり、
我々は既に遺伝子を修飾しないunmodifiedマウスでこのアプローチをテストして成功している」


広域broad-spectrumのナトリウムチャネル阻害剤が局部麻酔local anaestheticsとして使われているが、
それらは完全なしびれ感/麻痺numbnessを引き起こし、やがてover time深刻な副作用が生じうるために痛みの長期の管理には適さない
対照的に、機能するナトリウムチャネルNav1.7を生まれつき持たない人は、
副次的作用side-effectとしてまだなお痛みのない触覚を正常に感じ、匂いを感じることができないことが知られるのみである

モルヒネのようなオピオイド鎮痛剤は痛みの抑制には非常に効果的だが、長期の使用は依存性と耐性toleranceにつながる
体が薬に慣れるusedにつれて効果が弱くなり、同じ効果を得るために高用量が必要になる
副作用はより強くなり、最終的にまったく作用しなくなる

「Nav1.7阻害剤と組み合わせて使うことで、痛みを抑えるために必要とされるオピオイドの用量は非常に少なくなる」
Wood教授は言う
「Nav1.7が機能しない人々は低レベルのオピオイドを生涯作り続け、耐性を生じたり不快な副作用を経験することはない
我々はこのアプローチを2017年までにヒトでの臨床試験で調べたいと考えている」


今回の発見は『トランスジェニック』なマウスを使うことで可能になった
つまり、他の生物の遺伝子要素を持つように修飾したということであり、
この場合はヒトが痛みを感じるのを妨げる変異である

正確な生理学的実験により、トランスジェニックマウスの神経系には
同腹litterの仔で遺伝子が修飾されていないマウスと比べて、自然に生じるオピオイドが約2倍含まれていることが示された


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms9967
Endogenous opioids contribute to insensitivity to pain in humans and mice lacking sodium channel Nav1.7.

Nav1.7の消去は遺伝子発現に深い影響を与え、
結果としてエンケファリンの前駆体であるPenkのmRNAならびにメチオニンエンケファリン(Met-enkephalin)が上方調節された

※エンケファリン/enkephalin: 5つのアミノ酸からなるペンタペプチドのメチオニンエンケファリン、ロイシンエンケファリンを含む4種類がある

関連サイト
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%83%8A%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%8D%E3%83%AB
侵害受容に関わる一次知覚ニューロンに発現しているNav1.7の変異は、先天性無痛症(congenital insensitivity to pain, CIP)などに関わっている。
これまで知られているCIPを引き起こす変異はすべてNav1.7をコードする遺伝子の途中に終止コドンが挿入され、チャネルとしての機能を喪失することが分かっている[22]。

[22] "Sodium channelopathies and pain."


関連サイト
http://www.nanbyou.or.jp/entry/2351
先天性無痛症は遺伝性感覚・自律神経ニューロパチー(HSAN)に属する疾患で、このうち
4型(先天性無痛無汗症:Congenital Insensitivity to Pain with Anhidrosis:CIPA)と
5型(先天性無痛症:Congenital Insensitivity to Pain:CIP)
が相当する。全身の温痛覚消失を主徴とする。CIPAでは全身の発汗低下を合併し、種々の程度の知能低下を合併することがある。
 

p53はPD-L1を調節する

2015-12-05 06:08:18 | 癌の治療法
Tumor-suppressor p53 regulates protein that stifles immune attack on cancer

November 20, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151120182831.htm

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者を中心とする研究チームは、
p53という癌抑制遺伝子が『免疫系のカスタマイズ戦士customized warriors』であるT細胞のスイッチが切られないよう阻止して、
肺癌への攻撃が停止しないように保護するとJNCI誌で報告した

「このp53の新たな役割の発見は、癌の免疫療法への応答を知るための潜在的なバイオマーカーや、治療標的となりうる新たな経路を我々に与えてくれるかもしれない」
MDアンダーソンで放射線腫瘍学Radiation Oncologyの准教授であり首席著者でもあるJames Welsh, M.D.は言う

p53が衰えるfailとその免疫を保護する役割が失われるが、
現在フェーズI臨床試験中の実験薬による前臨床研究は、その役割に取って代わる可能性を示す


p53遺伝子は癌で最も変異することが多く、一般的な癌の42%、肺癌の70%で失われるか発現が低下する
肺癌はアメリカの癌で死亡する原因の第一位であり、国立癌研究所によると2015年に新たに肺癌と診断される人数は約22万人、死亡は16万人弱と推定されている

p53は癌の制御において中心的な役割を演じることは以前から知られ、
それは異常が生じた細胞を強制的に修復させ、修復に失敗した時は自殺するというプロセスを調節することによるとされてきた

今回の研究でWelshたちはp53がPD-L1というタンパク質も阻害することを発見した
PD-L1は免疫による攻撃を停止させるために腫瘍が用いるwield分子であり、
PD-L1はT細胞のPD1というチェックポイント分子に鍵のように結合して活性化させることで妨害する

今年になり転移性肺癌の治療に対してペンブロリズマブ/pembrolizumab (Keytruda) とニボルマブ/nivolumab (Opdivo) という2つのPD1阻害剤が承認された
どちらの阻害剤も患者のかなりの割合に有効だが、すべての人に効くわけではない


p53はmiR-34aを活性化させてPD-L1を妨害する
p53 launches miR-34a to thwart PDL1

筆頭著者のMaria Angelica Cortez, Ph.D.は、p53がPD-L1の発現を阻害するメカニズムを同定した

Cortezは言う
「この相互作用は特異的である
p53はマイクロRNAのmiR-34aを活性化させ、miR-34aがPD-L1の発現を直接阻害する
p53が機能を失うと、miR-34aも失われてPD-L1が過剰に発現する」

タンパク質を作る遺伝子から転写されて生じるメッセンジャーRNAとは異なり、
マイクロRNAはタンパク質をコードせず代わりに他の遺伝子を調節する

これまでp53は免疫応答の別の面に関連付けられてきたが、今回のJNCIの論文は初めてp53を腫瘍による免疫回避ならびにPD-L1の調節と関連付けた

研究チームは細胞系統ならびに非小細胞肺癌/NSCLCの患者から得られた腫瘍サンプルで実験を実施し、さらにマイクロRNAの標的を予測するデータベースを用いて分析した
彼らはNSCLCのマウスモデルでMRX34というmiR-34をベースとした薬剤をテストし、それが単体でも放射線療法との組み合わせでもPD-L1の発現を低下させ、さらにT細胞の『疲弊exhaustion』も防ぐことを示した

MRX34はmiR-34を元にテキサス州オースティンのMirna Therapeuticsによって開発された初めての治療法であり、リポソームというナノパーティクルの中に合成したmiR-34aをパッケージングしたものである
MRX34は現在、MDアンダーソンや他の臨床施設で進行性の充実性腫瘍advanced solid tumorsの肺癌と血液がんに対するフェーズI臨床試験中である

研究者はTCGA/The Cancer Genome AtlasからNSCLC患者181人のサンプルを分析し、p53とPD-L1の発現が逆の相関を示すことを明らかにした
p53が変異した腫瘍ではPD-L1のレベルが高く、miR-34aのレベルは低下していた


高レベルのp53とmiR-34aが生存を延長する
High levels of p53, miR-34a increase survival

p53の発現が高くPD-L1の発現が低い患者、またはp53とmiR-34aのレベルが高い患者はどちらも、
p53とmiR-34aの発現が低くPD-L1の発現が高い患者よりも、生存期間中央値median survivalが長かった

NSCLC細胞系統にmiR-34aを強制的に発現させると、PD-L1は抑制された
肺癌腫瘍マウスにMRX34を注入すると、miR-34aレベルは上昇してPD-L1レベルは低下した
研究チームはさらに、miR-34aがPD-L1遺伝子の特定の箇所に結合して発現を阻害することを示した

研究者たちはマウスを無作為に対照群、MRX34群、X線による放射線療法群、またはMRX34と放射線療法の組み合わせ群に割り振った
治療群the treatment armsは全て、腫瘍に浸潤するT細胞の数が増加し、PD-1チェックポイント分子が陽性のT細胞の数は減少、腫瘍の増殖は遅くなったが、MRX34と放射線療法の組み合わせが最も効果が強かった


次の段階
Next steps

現在進行中の研究では、PD-1阻害剤で治療した患者の臨床結果を後向きに分析し、最初の生検でp53またはmiR-34aの状態が阻害剤への応答を予測するかどうかを調べている

腫瘍内にPD-L1がある患者はPD-1チェックポイント阻害剤に応答する率が高いが、このバイオマーカーがない患者もこれらの阻害剤に応答する
そのため、さらに良い治療を導くためのバイオマーカーが探索されているとCortezは言う

Welshによると、研究チームはラボでMRX34とPD-1阻害剤を組み合わせて腫瘍の応答を改良できるかを調べているとのことである


http://dx.doi.org/10.1093/jnci/djv303
PDL1 Regulation by p53 via miR-34.



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150420182407.htm
[非小細胞肺癌]
 p53→miR-34a─┤PD-L1

MRX34はmiR-34aの効果を真似て、放射線療法中のCD8+T細胞を増やす@AACR2015



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/364b5bd79de2b47829a4608d1e85976e
[結腸癌]
 IL-6↑→STAT3↑─┤miR-34a↓─┤IL-6受容体↑→IL-6シグナル↑
 

良性腎腫瘍が悪性に進行しないための障壁

2015-12-04 06:05:30 | 
Identification of barrier that prevents progression of benign kidney tumors to malignant disease

November 20, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151120183144.htm

良性腫瘍とされる腎臓のオンコサイトーマにはタイプ1とタイプ2があり、
タイプ1は染色体の喪失がなく、タイプ2は特定の染色体喪失がある

タイプ2は好酸性嫌色素性腎細胞癌/eosinophilic chromophobe renal cell carcinoma (ChRCC) に進行するが、
タイプ1は悪性に進行しない

※オンコサイトoncocyteは唾液腺などに見られる細胞。オンコサイトーマoncocytomaはそれに似た腫瘍細胞で、多数のミトコンドリアを持つ。唾液腺、腎臓などに生じるまれな良性腫瘍だが一部が悪性の経過をたどる


そのようなタイプには関係なく/irrespective of the 'type,'
オンコサイトーマはミトコンドリアゲノムの変異によりエネルギー産生の低下を示す
腫瘍進行を支えるエネルギーの不足が、この腫瘍の良性の性質を説明する

この良性腫瘍では廃棄物の処理や細胞内タンパク質の収集と配分などがミトコンドリア機能低下により低下している
今回の研究結果は、メトホルミンのようなミトコンドリア阻害剤がいくつかの癌の治療薬として使える場合があることを示唆する

このような『障壁』は、タイプ2のサンプルではp53のような変異のために破綻し、良性腫瘍は好酸性ChRCCに進行できるようになる


良性腫瘍は悪性腫瘍と異なり、浸潤せず局部に留まるために除去によって治癒可能である
腫瘍を良性のままに制限することは癌治療へのアプローチを示す可能性があり、
我々の研究はメトホルミンによるミトコンドリアの阻害が様々な癌で抗癌作用を持つことも示唆する


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2015.10.059
The Genomic Landscape of Renal Oncocytoma Identifies a Metabolic Barrier to Tumorigenesis.


Highlights
・タイプ2の腎臓オンコサイトーマは好酸性ChRCCに進行する可能性がある
・ミトコンドリアの機能不全はゴルジ体の編成と輸送を破綻させる
・オンコサイトーマにおけるミトコンドリアの蓄積は除去の障害による
・ミトコンドリア機能の障害は腫瘍発生の障壁barrierである

Summary
タイプ1はCCND1(サイクリンD1)再編成の二倍体diploidであり、
タイプ2は多くで染色体1とXまたはY and/or 14と21の喪失を伴う異数体である
 

酸素が不足した肝細胞癌はブドウ糖の代わりに酢酸を使う

2015-12-03 06:08:44 | 
Blocking body's endocannabinoids could be effective liver cancer treatment

November 23, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151123103057.htm


(肝臓癌の患者をACSS1の発現に基いて階層化するstratified)

スウェーデン王立工科大学(KTH)による新しい研究で、
肝臓のカンナビノイド受容体は肝臓癌患者の何割かで標的となりうることが明らかにされた
Cell Reportsで発表された今回の研究結果は、患者にどんな治療が最も効きやすいのかを予測する方法も提供する

この研究では、最も一般的なタイプの肝臓癌である『肝細胞癌/Hepatocellular carcinoma (HCC)』が酸素の不足した低酸素の環境でも増殖できるようにする代謝プロセスを明らかにする
その中で研究者は、どの患者がCB1受容体を阻害する薬物に反応するのかを予測するために代謝プロセスをどのようにしてモデル化するのかについての方法を示す

ストックホルムのKTH王立工科大学/Royal Institute of Technologyのシステム生物学者であるAdil Mardinogluは言う
「これは患者が特定の薬物療法に応答するかどうかを予測するプレシジョン・メディシン(精密医療/precision medicine)への可能性を開く」

「我々の研究はなぜいくつかの抗癌剤が全ての患者に効果があるわけではないのかを説明し、
そして癌を治療する前に何をすべきなのかを示す」

「たとえ同じ癌でも(この場合は肝臓癌)治療の前に腫瘍の特徴を明らかにすることが重要である
肝細胞癌/HCCの治療で利用可能であり臨床で最も使われている抗癌剤は、患者の30%しか応答しない
その理由の一部は患者の階層化stratificationが欠けているためである」


癌細胞は増殖するという要求requirementsに合わせるために代謝を調整しなければならない
その要求の一つがアセチル-CoAのコンスタントな供給である
アセチル-CoAは多くの生化学反応において重要な役割を演じる分子であり、癌細胞を構成する材料の主な前駆体の一つである

栄養が豊富で酸素の供給が十分な状態では、アセチル-CoAは主にブドウ糖から作られる
しかしながら、腫瘍の内部はしばしば酸素が限られた状態になり、それは結果としてブドウ糖の利用を制限する

研究チームは、酸素が欠乏したHCC細胞がブドウ糖の代わりにミトコンドリアによって作られる炭素を食べて育つthrive on carbonことを発見した
ミトコンドリアは短鎖脂肪酸の酢酸acetateという分子を分解してアセチル-CoAを作り、脂質を作るための材料を生じる
そして、このHCCの増殖プロセスではミトコンドリアアセチル-CoA合成酵素(ACSS1)が鍵となる重要な酵素であることが判明した


今回の研究ではスウェーデンのヒトタンパク質アトラスプロジェクト/Human Protein Atlasのプロテオミクスデータを利用して作成されたコンピュータモデルを使い、
約360のHCC腫瘍と50の健康な肝臓サンプルの全遺伝子発現をプロファイリングして分析した

KTHで微生物学の教授でありHuman Protein AtlasプログラムのディレクターでもあるMathias Uhlénは、
このオープンソースである研究データベースの目的は「新たな診断法diagnosticsと薬剤の開発を刺激するだけでなく、
正常なヒトの生物学的な基本的洞察を提供するためでもある」と言う
「今回の研究は、肝臓癌のようなヒトの疾患を探求するためにオープンソースな情報を利用した優れた例である」


ヒトの体はマリファナのような物質を体内で作っていて、これをエンドカンナビノイドendocannabinoidと呼ぶ
エンドカンナビノイドはcannabinoid type 1 receptor (CB1) という受容体を活性化させて肝臓の脂肪酸合成を増加させることが知られている
CB1受容体は脳や肺、肝臓、腎臓に見られ、気分、食欲、痛覚pain sensation、記憶など多くの生理的プロセスに関与する

今回の研究ではCB1受容体の発現が通常よりも肝臓癌サンプルで増加することが明らかになった
これはCB1受容体を阻害する薬が肝細胞癌に有効である可能性を示唆する

「そのような薬は望ましくない精神病的な副作用を引き起こすことがわかっているが、
脳に入り込まないCB1アンタゴニスト/拮抗薬はそのような副作用を生じず、しかし末梢のCB1受容体を通じて治療効果は保たれる
そのような薬が現在開発中である」
研究の共著者であり米国立アルコール乱用依存症研究所/National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism (NIAAA) で科学ディレクターのGeorge Kunosは言う


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2015.10.045
Stratification of Hepatocellular Carcinoma Patients Based on Acetate Utilization.


Highlights
・HCC腫瘍に関するゲノムスケールでの代謝モデルを再構築
・HCCにおける代謝の変化を明らかにする
・HCC腫瘍間でのACSS1とACSS2の不均一な発現を分析
・低酸素状態下でのネズミとヒトのHCCサンプルにおけるACSS1の誘導

Summary
ACSS1はヒトHCCの低酸素状態下での腫瘍の増殖ならびに悪性度malignancyと関連する



[肝細胞癌]
 CB1↑→脂質合成↑

[肝細胞癌]
 酢酸─(ACSS1↑)→脂質合成↑
 

高脂肪食で脳のシナプスが減少する

2015-12-02 06:06:34 | 
High-fat diet prompts immune cells to start eating connections between neurons

November 23, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151123203118.htm


(Alexis M. Stranahan博士)

免疫細胞は通常の脳内ではせわしく動き回っているbustling
しかしジョージア医科大学の科学者によると、高脂肪食が肥満を引き起こすとそれは移動しなくなりsedentary、ニューロン間のつながりを破壊してしまうようだという

良い知らせもある
わずか2ヶ月の間低脂肪食に戻すだけで、少なくともマウスではこのような認知能力の低下傾向は体重が正常化するにつれて回復するのだという

「ミクログリアはシナプスを『食べる』
これは肥満におけるシナプス喪失と認知障害の一因である」
今回の論文の責任著者/corresponding authorでジョージア医科大学の神経科学者であるAlexis M. Stranahan博士は言う

「これはとても恐ろしいことだが、しかしこの状態は可逆的でもある
低脂肪食に戻せば、肥満が完全には解消しなくても
この脳内の細胞プロセスを完全に回復して認知能力を維持することが可能である」


問題は体内の過剰な脂肪から始まるように思われる
脂肪は慢性的な炎症を生じ、それはミクログリアを刺激して自己免疫応答を開始させる

脳内のミクログリアは体内のマクロファージのように脳内の廃棄物trashや感染病原体を取り込み、
内部の強い酸でそれらを排除get rid ofすることでニューロンの機能と健康をサポートするのを助けている
しかしマウスが肥満になるにつれて、ミクログリアは過食することに興味を持つようであるseem focused on overeating

「通常の脳内でミクログリアは常に動き回り、その小さな指fingersと突起processesを動かし続けている
肥満になるとそれらは動きを止める」
Stranahanは言う
「ミクログリアは全ての突起を引っ込めるdraw in all their processes
基本的にその場で移動しなくなり、そしてシナプスを『食べ』始める
ミクログリアがシナプスを食べ始めるとマウスの学習効率は低下する」


研究では正常なオスのマウスを調べた
グループの一つにはカロリーの約10%が飽和脂肪酸のエサを食べさせ、もう一つには脂肪が60%のエサを食べさせた
これらのエサは平均してon par、ヒトの「健康な食事」と「ファーストフード」に一致する

研究者たちは4週と8週、12週時点で、体重や摂食量、インスリン、血糖レベルなど様々な代謝状態を計測した
さらに学習と記憶のである海馬で、シナプス特異的に存在するタンパク質のようなシナプスのマーカーのレベルも計測した
このマーカーレベルはシナプスの数と相関する

彼らは炎症性サイトカインのレベルも計測した
これはミクログリアが作るもので、それらが活性化し始めたことを示す

4週時点では両グループのレベルは基本的に同じだった
8週で高脂肪食のマウスの方が太っていたが、他の計測値は正常だった
12週までに高脂肪食マウスは肥満になり、インスリン抵抗性は見られなかったが脳内のサイトカインレベルは上昇し、シナプスの数と機能を示すマーカーは減少した

この時点で、研究チームは高脂肪食のマウスの半分を低脂肪食に切り替えた
体重が正常に戻るまで2ヶ月かかったが、脂肪パッドfat padは通常のエサのグループよりも大きいままだった
(この脂肪層は将来太りやすくさせるとStranahanは言及する)
ほとんどのヒトと同様に、低脂肪食を維持したマウスは年をとるにつれて脂肪の蓄積が遅かった

一方で高脂肪食のままのマウスは太り続け、より炎症が悪化し、シナプスは失われたと彼女は言う
通常はシナプスの機能をモニターし、ミクログリアが動くのを助けているミクログリアの突起は、しなびて縮んだwitherままだった

シナプスからの入力を受けるニューロンの樹状突起棘dendritic spineも同様に高脂肪食で縮んだが、
低脂肪食によってミクログリアの突起processesと同様に回復した

Stranahanは今回の結果が有望であるという
肥満マウスの脳内では炎症サイトカインやTNF-αが上昇するが、これらを阻害する薬剤が既に関節リウマチやクローン病の治療に使われている
今回の研究結果は、それらの薬が新たな目的のために使えるかもしれないことを示す


肥満はミクログリアによる極端な破壊を生じるが、本来ミクログリアは概して識別力がありdiscriminating、ニューロンにとって役立つhelpful
例えば発達中のミクログリアは機能しないシナプスを刈り取るprune

発達中の脳は自己を改良しrefine、使っている必要なシナプスだけを保つ
脂肪はこの力dynamicを劇的に変化させる


http://dx.doi.org/10.1016/j.bbi.2015.08.023
Dietary obesity reversibly induces synaptic stripping by microglia and impairs hippocampal plasticity.
食事による肥満は可逆的にミクログリアによるシナプス剥離を誘導し、海馬の可塑性を損なう



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/a6ad95ba8371441ea0e406453e8bfaa8
ミクログリアはシナプス剥離によりシナプスを取り払い、ニューロンの発火を増加させ、脳細胞の生存を増強する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4dde5462dcc4bcf35207eca93752fdd6
Aβは年老いたマウスのミクログリアのEP2受容体の活性を増加させる
 

太れば太るほど痩せなくなる理由

2015-12-01 06:06:27 | 代謝
Stored fat fights against the body's attempts to lose weight

November 24, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151124112140.htm

我々は太れば太るほど、脂肪が燃えるのを阻害するタンパク質を多く作るようである
Nature Communication誌で発表された今回の研究結果は、肥満や代謝疾患の治療に関係があるかもしれない


体の脂肪細胞のほとんどを占める白色脂肪細胞は、余分なエネルギーを蓄えるように働いてそれが必要になった時に放出する
しかし褐色脂肪細胞という細胞は主に熱を作るプロセスのために働き、体温を保っている(熱発生thermogenesis)

しかしながら、イギリスのケンブリッジ大学と日本の東邦大学の『ウェルカムトラスト - 医学研究評議会 代謝科学研究所』の国際研究チームは、体内のsLR11というタンパク質がこのプロセスを抑制するように作用することを示した


研究者たちは、なぜこのタンパク質を作る遺伝子を持たないマウスが非常に体重が増加しにくいのかの理由について調査した

全てのマウスは(そしてヒトも)、低カロリー食から高カロリー食に切り替わっても代謝率metabolic rateはわずかしか増加しないが、sLR11の遺伝子を持たないマウスは代謝率が大きく増加する
これはカロリーを素早く燃やせることを意味する

さらなる実験により、このマウスでは通常は褐色脂肪組織に関連する遺伝子が白色脂肪細胞で活性化していることが明らかになった
この観察と一致して、sLR11を持たないマウスは実際に体熱をより多く生じthermogenic、特に高脂肪食後のエネルギー消費が増加していた

分析の結果、sLR11は脂肪細胞の特定の受容体に結合し、熱発生thermogenesisを活性化する能力を阻害することが明らかにされた
sLR11は脂肪の効率を増加させるシグナルとして働き、熱発生を制限することによりエネルギーを蓄えて過剰なエネルギー喪失を防ぐ


ヒトで調べたところ、血中のsLR11レベルは総脂肪量と相関することが判明した
言い換えると「sLR11が多いほど総脂肪量は多かった」

肥満手術後の体重減は直接sLR11レベル低下と比例したproportional
これはsLR11が脂肪細胞によって作られていることを示唆する

論文の中で著者は、sLR11が他の代謝シグナル、つまり大食いlarge mealや短時間の気温低下のようなシグナルの『急上昇spikes』の間、脂肪細胞が脂肪を燃やしすぎないよう抵抗するのを助けることを示唆する
これにより脂肪組織は長期にわたってより効率的にエネルギーを貯蔵できるようになる


肥満や糖尿病、心疾患などを治療するための熱発生thermogenesisを標的にする薬剤への関心が増しつつある
その理由は、過剰な脂肪を比較的安全な方法で処理するメカニズムになるからである
そうして熱発生や熱発生できる脂肪細胞の数を増やすことが可能な分子が既に多く同定されてきたが、
熱発生を減少させることができる分子はほとんど発見されていない

今回の研究結果は、人体がその蓄えられたエネルギーを保ち続けるhold ontoために利用するメカニズムの一つに光を当てた
sLR11のレベルは蓄積された脂肪の量と一致して増加し、脂肪が熱発生のために『無駄遣いwasted』されないように防ぐのである


Andrew Whittle博士は次のように言う
「我々の発見はなぜ太った人々は痩せるのが信じられないほど難しいのかを説明するかもしれない
蓄えられた脂肪は、脂肪を燃やし尽くすburn offための努力に対して、分子レベルで積極的に戦うのである」


Toni Vidal-Puig教授は以下のように付け加えた
「我々は『脂肪を燃焼する能力を高める』のを助けるだけでなく、『脂肪を燃焼しないようにする』ために標的とすることができる重要なメカニズムを発見した
このメカニズムを調節することで神経性食欲不振症/anorexia nervosaのような『エネルギーの節約が重要』となるような病態の人々も助けることができるかもしれない」


研究に出資した英国心臓病財団/British Heart Foundation(BHF)でAssociate Medical DirectorのJeremy Pearsonは言う
「sLR11/SorLAの作用を阻害することにより肥満を減らすのを助けたり、sLR11/SorLAの作用を真似ることで体重が減らないようにコントロールするような新薬の開発を今回の研究は刺激するだろう
この有望な発見を元にしたケンブリッジの研究チームによる将来の発見を我々は期待している」

「しかし、安全に体重を減少させる肥満の治療に有効な薬ができるまで、まだ少し時間がかかるだろうsome way off
それまでin the meantime、体重を健全に減らして心臓の健康を促すためのアドバイスを我々BHFのウェブサイトbhf.org.ukで見つけることができる」


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms9951
Soluble LR11/SorLA represses thermogenesis in adipose tissue and correlates with BMI in humans.
可溶性LR11/SorLAは脂肪組織の熱発生を抑制し、ヒトのBMIと相関する

Affiliations
東邦大学
千葉大学大学院医学研究院
つくば研究所
千葉大学病院



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http://www.sciencedaily.com/releases/2015/01/150115134824.htm
レプチンとインスリンはPOMCニューロンに作用して白色脂肪の褐色化を促進する



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http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140807145940.htm
Notchシグナル伝達の阻害は白色脂肪組織の褐色化を促進して肥満を緩和する