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癌の過半数を駆動するプロセスを明らかにする

2015-12-22 06:54:38 | 
Scientists uncover process that could drive the majority of cancers

December 14, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151214150002.htm

p53遺伝子は遺伝子変異を防ぐという役割で知られ、『ゲノムの守護者』と呼ばれてきた
そして癌の半分以上がp53の変異または機能喪失から生じると考えられている
バージニアコモンウェルス大学/Virginia Commonwealth University (VCU) マッシーがんセンターの科学者、
Richard Moran, Ph.D.による研究はその理由を説明する


まず、Molecular Cancer Therapeutics誌で発表されたMoranの研究結果は、
p53遺伝子の変異または機能喪失がどのようにしてmTORC1(mammalian target of rapamycin complex 1)を活性化させるのかについて記述する
mTORC1は細胞の増殖に必要なエネルギー資源の調節を助けるタンパク質複合体である
mTORC1複合体は多くのタンパク質から構成され、細胞はリソソーム膜を足場として使ってこれらのタンパク質を一箇所に集める

通常の場合、p53遺伝子は必要に応じて
TSC2(tuberous sclerosis complex 2)というタンパク質がリソソームで適切なレベルに維持されるのを助ける
p53が適切に機能しないとリソソーム膜のTSC2レベルは低下し、RHEBというタンパク質がそれに取って代わるtakes its place

このRHEBの蓄積がmTORC1を活性化し、細胞増殖の制御の異常につながる

 p53→TSC2─┤RHEB→mTORC1
 p53↓→TSC2↓─┤RHEB↑→mTORC1↑

「p53が失われると癌の過剰な増殖につながるシグナル伝達プロセスを我々は初めて発見した
これらのタンパク質の相互作用は一連のイベントを通じて癌の発症につながる」
Moran, Paul M. Corman, M.D.は言う

彼はVCUマッシーがんセンターでがん研究のchair、基礎研究のassociate director、
発達治療学/Developmental Therapeuticsリサーチプログラムのco-leaderであり、
さらにVCU医学部では薬理学と毒物学の教授でもある


関連する研究でMoranのチームはペメトレキセド/pemetrexedに焦点を当てた
これは彼が共同で開発した薬であり、現在肺癌の大半で第一線の治療として使われている

Biological Chemistry誌に発表した研究で
MoranたちはペメトレキセドがmTORC1を妨害することにより作用することを実証する
ペメトレキセドはmTORC1を制御する要素の一つであるraptorというタンパク質を阻害し、
それがp53の変異や機能喪失が存在するかどうかに関係なく作用することを研究者は発見した
さらに、mTORC1の重要な調節因子であるTSC2がもはや機能していない場合でさえ作用することも明らかにした

「我々の発見は、ペメトレキセドがこれまで想像されていたよりはるかに臨床的な利用価値があることを示唆する」
Moranは言う

「この研究はp53が適切に機能していない他の癌に対するペメトレキセドの利用についての基礎を築くものであり、
これはもちろんp53だけでなく、TSC2の機能喪失によって起きる症候群である結節性硬化症にも利用できる
結節性硬化症は多くの臓器に良性だが破滅的に増殖する進行性の腫瘍を引き起こす」

※結節性硬化症: tuberous sclerosis
※TSC2: tuberous sclerosis complex 2


http://dx.doi.org/10.1158/1541-7786.MCR-15-0159
p53 Deletion or Hot-spot Mutations Enhance mTORC1 Activity by Altering Lysosomal Dynamics of TSC2 and Rheb
p53の消去またはホットスポット変異は、リソソームにおけるTSC2とRhebの動態を改変することによりmTORC1の活性を促進する

Abstract
p53の喪失または変異は、TSC2ならびにSestrin2の発現を低下させた

p53ヌル細胞へのTSC2のトランスフェクションはTSC2を元に戻しreplace、リソソームのRhebを減少させて野生型p53の細胞を再現した
対照的に、p53ヌル細胞にSestrin2のトランスフェクションはリソソームのmTORを減少させたが、Sestrin2レベルが低いとリソソームのmTORは変化しなかった


http://dx.doi.org/10.1074/jbc.M115.665133
AMPK control of mTORC1 is p53- and TSC2-independent in pemetrexed-treated carcinoma cells.
ペメトレキセドを投与した癌細胞において、AMPKはp53とTSC2には依存せずmTORC1を制御する

Abstract
AMPKはエネルギー状態のセンサーとして重要だが、
『アミノイミダゾールカルボキサミド リボヌクレオシド/aminoimidazolecarboxamide ribonucleoside (AICAR)』

から直接産生されるAMPアナログの『アミノイミダゾールカルボキサミド ヌクレオシド 一リン酸/aminoimidazolecarboxamide nucleoside monophosphate (ZMP)』

によっても活性化され、
また、抗葉酸のペメトレキセドによるプリン合成の阻害によってもAMPKは活性化する


しかし、この共通するメカニズムにもかかわらず、ペメトレキセドまたはAICARによって活性化されるAMPKシグナル伝達の下流は異なる

AICARにより活性化されたAMPKはmTORC1を阻害するが、
これは直接はmTORC1サブユニットのRaptorをリン酸化することによるものであり、
間接的にはmTORC1を調節するTSC2のリン酸化によりmTORC1を阻害する

対照的に、ペメトレキセドにより活性化したAMPKもmTORC1を阻害したが、
その機序はRaptorのリン酸化だけだった


この相違dichotomyの理由はp53の機能による
p53の標的遺伝子(TSC2を含む)の転写は、AICARによって活性化されるが、ペメトレキセドでは活性化されない
AICARもペメトレキセドもp53を安定化させるが、AICARだけがChk2リン酸化を活性化させ、p53依存的な転写を刺激する

しかしながら、AMPKによるRaptorリン酸化はp53から独立しており、そしてそれはmTORC1を阻害するのに十分である
(ペメトレキセド投与でRaptorリン酸化しか生じなくてもmTORC1は阻害される)


結論
ペメトレキセドのmTORC1への効果はTSC2ならびにp53からは独立している
AICARに応じたp53の転写の活性化はChk2の活性化によるものだが、これはペメトレキセドによっては誘発されない



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核から細胞質に排出されたFoxO1はTSC2に結合する。それによりTSC1/TSC2複合体は解離して、結果としてRhebが介するmTORC1-S6K1経路は活性化する。

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Rhebの活性は、結節性硬化症タンパク質のTSC1(ハマルチン)とTSC2(チュベリン)により厳密に調節されている。TSC1とTSC2は機能的なヘテロダイマー複合体を形成し、TSC1はTSC2を安定させる。TSC2複合体にはGTPアーゼ活性化タンパク質 (GAP) が存在し、GTPをGDPに加水分解する。TSC1とTSC2の複合体はこの機能によりRhebを不活化させる。
TSC1かTSC2遺伝子のどちらが機能喪失型の変異を起こしても、過誤腫症候群である結節性硬化症を引き起こす。