機械翻訳2

興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

遺伝子空白領域の立体的な相互作用

2015-12-11 06:12:22 | 
Folding your genes: New discovery sheds light on disease risk

November 30, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151130084522.htm

イギリスのマンチェスター大学とバブラハム研究所/Babraham Instituteの新しい研究により、
遺伝子間の空白gapがどのように相互作用して関節炎や1型糖尿病のような疾患リスクに影響するのかが明らかになった

Nature Communicationsで発表された研究で科学者は
DNAの折りたたみfoldsの中にある『空白の領域gap regions』が、
実はこれまで疾患に重要であるとは考えられてこなかった遺伝子と物理的に相互作用することを示す
この空白の領域は、遺伝子のスイッチを入れて発現を制御することに重大な影響を持つ
現在これらの遺伝子の多くが関節炎や乾癬、1型糖尿病のような疾患の発症リスクを増大すると考えられている

マンチェスター大学の主任研究者lead researcher、Stephen Eyre博士は言う

「かつて、研究者は空白の領域gap regionに『最も近い遺伝子』を探すというアプローチにより、特定の疾患を引き起こす遺伝子を探して特定してきた」

「事実はそれよりもはるかに複雑である
遺伝子間の空白は影響があるだけではなく、今回我々の研究が示したように空白は必ずしも『最も近い遺伝子』に影響を及ぼすとは限らない
それらははるかに遠い距離を越えて作用する可能性があり、遠く離れた遺伝子のオンとオフを切り替える」

このプロセスは、2メートルあるDNAを核内に詰めこむための折りたたみfoldingによって引き起こされる
折りたたみにより空白領域は『重要な遺伝子』と近くなり、したがって遺伝子の活性レベルを制御する

折りたたまれたDNAのある部分では、
様々な疾患へのリスクを上げるいくつもの空白領域が、同一の遺伝子と『出会う』

この発見は次のような可能性も生じる
「遺伝子の中には複数の疾患リスクを上げるものがあり、
それは空白領域によってどのように調節されるか、そしてDNA構造のどの場所から調節されるかに依存する」

この知識は、疾患の理解と治療の可能性への洞察につながりうる

研究の次の段階は、この複雑な相互作用をさらに深く、そして異なるタイプの細胞でも調査し、
遺伝子と空白領域がどのように相互作用して疾患リスクを上げるのかについてのより完全な全体像を明らかにすることである


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms10069
Capture Hi-C reveals novel candidate genes and complex long-range interactions with related autoimmune risk loci.
キャプチャHi-Cにより新たな候補遺伝子ならびに関連する自己免疫リスク遺伝子座との長距離相互作用を明らかにする

Abstract
ゲノムワイド関連解析/GWASはこれまで複合性疾患と関連する遺伝子バリアントgenetic variantsの同定に素晴らしい成功を収めてきたが、
関連シグナルassociation signalsの大部分は遺伝子と遺伝子の間にありintergenic、そのシグナルの多くがエンハンサー領域に存在するというエビデンスが蓄積しつつある


我々はキャプチャHi-Cを使い、「4つの自己免疫疾患に関するバリアント」と、「バリアントの機能的標的」との間の相互作用をB細胞とT細胞系統において初めて調査した

今回我々は非常に多くのループ形成による相互作用を報告し、B細胞とT細胞の両方に共通する相互作用はほんの少数に過ぎないというエビデンスを提供する
これは相互作用が非常に細胞タイプ特異的cell-type specificであることを示唆する

疾患と関連するいくつかのSNPは最も近い遺伝子とは相互作用せず、
より説得力のあるcompelling遺伝子(例えばFOXO1やAZI2)と相互作用し、それはしばしば数百万塩基も離れて存在する

そして最後に、
様々な自己免疫疾患と関連する領域はお互いに相互作用し、そして同一遺伝子のプロモーターとも相互作用する
これは自己免疫疾患の遺伝子標的が共通して存在する可能性を示唆する(例えばPTPRC, DEXI, ZFP36L1)


Results
例として、関節リウマチと関連するSNPがある領域はEOMES遺伝子の近くに位置するが、このSNPはAZI2のプロモーターと強く物理的に接触することを示唆する強いエビデンスが発見された
AZI2はNF-κBの活性化に関与する遺伝子であり、どちらの細胞系統でも64万塩基離れている (Fig. 4a)

さらに、関節リウマチ/RAと若年性特発性関節炎/JIAに関与するバリアントがCOG6遺伝子のイントロン領域に存在するが(COG6はゴルジ装置の要素をコードする遺伝子)、これはFOXO1遺伝子のプロモーターと相互作用することを示す
このバリアントはどちらの細胞タイプでも100万塩基離れている (Fig. 4b).

FOXO1遺伝子は関節リウマチにおいて『線維芽細胞様の滑膜細胞/fibroblast-like synoviocyte (FLS)』の生存に重要であることが最近発見された(18
関節リウマチのFLSでは、変形性関節炎osteoarthritisのFLSと比較して過剰にメチル化されており(19、これは遺伝子候補に関して我々の研究結果を強く支持する機能的エビデンスを提供する

※18: "JNK-dependent downregulation of FoxO1 is required to promote the survival of fibroblast-like synoviocytes in rheumatoid arthritis."
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24812285
RESULTS:
末梢血でのFoxO1のmRNAレベルはRA患者で減少し、滑膜組織でのFoxO1発現は疾患活動性disease activityと逆相関していた
RAのFLSをIL-1βまたはTNFで刺激すると、FoxO1は急速に下方調節された
この効果はAkt/protein kinase B (PKB) には依存せず、JNKを介するFoxO1のmRNA分解が加速されたことによる
RAのFLSにおけるFoxO1のアデノウイルスによる構成的活性化/ADAによる過剰発現はアポトーシスを誘導し、これは細胞周期と生存を調節する遺伝子(BIM, p27(Kip1), Bcl-XL)の発現の変化と関連した

CONCLUSIONS:
我々の発見はJNKに依存的なmRNA安定性の調整を同定する
これはサイトカインによるFoxO1調節の根底にあるAkt/PKB非依存の重要なメカニズムであり、FoxO1の発現の減少がRAにおけるFLSの生存を促進することを示唆する


※19: "DNA methylome signature in rheumatoid arthritis."
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22736089


※線維芽細胞様滑膜細胞 (fibroblast-like synoviocyte: FLS): 滑膜組織の表層に存在し、関節リウマチにおいて強い増殖能を示す。サイトカインの産生、タンパク質分解酵素の産生により滑膜炎、パンヌスpannus形成、骨軟骨破壊に関与する


英語版WikipediaでのFLSの説明: 正常組織において、滑膜(関節包と関節腔articular cavityの間に位置する薄い層)を構成する、関節の内層である
滑膜synovial membraneは、外層outer layerである『内膜下subintima』と、内層inner layerである『内膜intima』という2つの要素から構成される
この内層inner layerは主に2種類の細胞から構成され、特殊化したマクロファージである『マクロファージ様滑膜細胞/macrophage-like synovial cells』と『線維芽細胞様滑膜細胞/fibroblast-like synoviocytes』からなる
これらは関節内部の恒常性の維持に重要であり、滑液synovial fluidの主な要素であるヒアルロン酸hyaluronic acidや他の糖タンパク質の代表的な供給源である
線維芽細胞様滑膜細胞は間葉系の源の細胞であり、線維芽細胞と共通する多くの特徴(複数のタイプのコラーゲンや、ビメンチンタンパク質、細胞骨格フィラメントの一部などの発現)を示すが、
線維芽細胞とは違い独特のタンパク質を分泌し、中でも特にルブリシンlubricinは関節の潤滑lubricationのために重要である

滑膜の過剰形成(細胞数の増加)は、関節リウマチという自己免疫疾患の典型的な特徴である
関節リウマチでは慢性的な炎症が生じ、軟骨と関節が破壊されて変形するが、
増殖とアポトーシスのプロセスの変化により滑膜内の細胞数は増加し、特に線維芽細胞様滑膜細胞が増加する
線維芽細胞様滑膜細胞は他の免疫細胞と共に炎症性の環境を滑膜に作り出し、損傷した箇所により多くの免疫細胞を引き寄せ、関節の破壊の一因となる [1][2][3]
滑膜内の線維芽細胞様滑膜細胞は関節リウマチで表現型の変化を示し、『接触阻止contact inhibition』の性質を失い、『粘着性の表面に依存性の増殖the growth dependency on adhesive surfaces』も失い、そのどちらも線維芽細胞様滑膜細胞の数の増加の原因となる(これらは例えば癌細胞の増殖の特徴でもある)
線維芽細胞様滑膜細胞は炎症性タンパク質の特にIL-6とIL-8や、プロスタノイド/prostanoids、マトリックスメタロプロテイナーゼ/matrix metalloproteinases (MMPs)を作る
これらは他の細胞に直接影響し、炎症の促進にも関与する
これらのプロセスは血小板に由来する微小胞microvesiclesによっても影響され、これもIL-1の分泌を通じて線維芽細胞様滑膜細胞の活性化の一因となる [4]


※pannus: パンヌス。慢性的な関節リウマチなどのときに出現する、滑膜の関節内への増殖状態



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b9a5d42e4bba4e00fb26777d33a8b188
ループを形成して遠く離れた相互作用をするDNAをキャプチャHi-C技術により調べる