Tumor-suppressor p53 regulates protein that stifles immune attack on cancer
November 20, 2015
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151120182831.htm
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者を中心とする研究チームは、
p53という癌抑制遺伝子が『免疫系のカスタマイズ戦士customized warriors』であるT細胞のスイッチが切られないよう阻止して、
肺癌への攻撃が停止しないように保護するとJNCI誌で報告した
「このp53の新たな役割の発見は、癌の免疫療法への応答を知るための潜在的なバイオマーカーや、治療標的となりうる新たな経路を我々に与えてくれるかもしれない」
MDアンダーソンで放射線腫瘍学Radiation Oncologyの准教授であり首席著者でもあるJames Welsh, M.D.は言う
p53が衰えるfailとその免疫を保護する役割が失われるが、
現在フェーズI臨床試験中の実験薬による前臨床研究は、その役割に取って代わる可能性を示す
p53遺伝子は癌で最も変異することが多く、一般的な癌の42%、肺癌の70%で失われるか発現が低下する
肺癌はアメリカの癌で死亡する原因の第一位であり、国立癌研究所によると2015年に新たに肺癌と診断される人数は約22万人、死亡は16万人弱と推定されている
p53は癌の制御において中心的な役割を演じることは以前から知られ、
それは異常が生じた細胞を強制的に修復させ、修復に失敗した時は自殺するというプロセスを調節することによるとされてきた
今回の研究でWelshたちはp53がPD-L1というタンパク質も阻害することを発見した
PD-L1は免疫による攻撃を停止させるために腫瘍が用いるwield分子であり、
PD-L1はT細胞のPD1というチェックポイント分子に鍵のように結合して活性化させることで妨害する
今年になり転移性肺癌の治療に対してペンブロリズマブ/pembrolizumab (Keytruda) とニボルマブ/nivolumab (Opdivo) という2つのPD1阻害剤が承認された
どちらの阻害剤も患者のかなりの割合に有効だが、すべての人に効くわけではない
p53はmiR-34aを活性化させてPD-L1を妨害する
p53 launches miR-34a to thwart PDL1
筆頭著者のMaria Angelica Cortez, Ph.D.は、p53がPD-L1の発現を阻害するメカニズムを同定した
Cortezは言う
「この相互作用は特異的である
p53はマイクロRNAのmiR-34aを活性化させ、miR-34aがPD-L1の発現を直接阻害する
p53が機能を失うと、miR-34aも失われてPD-L1が過剰に発現する」
タンパク質を作る遺伝子から転写されて生じるメッセンジャーRNAとは異なり、
マイクロRNAはタンパク質をコードせず代わりに他の遺伝子を調節する
これまでp53は免疫応答の別の面に関連付けられてきたが、今回のJNCIの論文は初めてp53を腫瘍による免疫回避ならびにPD-L1の調節と関連付けた
研究チームは細胞系統ならびに非小細胞肺癌/NSCLCの患者から得られた腫瘍サンプルで実験を実施し、さらにマイクロRNAの標的を予測するデータベースを用いて分析した
彼らはNSCLCのマウスモデルでMRX34というmiR-34をベースとした薬剤をテストし、それが単体でも放射線療法との組み合わせでもPD-L1の発現を低下させ、さらにT細胞の『疲弊exhaustion』も防ぐことを示した
MRX34はmiR-34を元にテキサス州オースティンのMirna Therapeuticsによって開発された初めての治療法であり、リポソームというナノパーティクルの中に合成したmiR-34aをパッケージングしたものである
MRX34は現在、MDアンダーソンや他の臨床施設で進行性の充実性腫瘍advanced solid tumorsの肺癌と血液がんに対するフェーズI臨床試験中である
研究者はTCGA/The Cancer Genome AtlasからNSCLC患者181人のサンプルを分析し、p53とPD-L1の発現が逆の相関を示すことを明らかにした
p53が変異した腫瘍ではPD-L1のレベルが高く、miR-34aのレベルは低下していた
高レベルのp53とmiR-34aが生存を延長する
High levels of p53, miR-34a increase survival
p53の発現が高くPD-L1の発現が低い患者、またはp53とmiR-34aのレベルが高い患者はどちらも、
p53とmiR-34aの発現が低くPD-L1の発現が高い患者よりも、生存期間中央値median survivalが長かった
NSCLC細胞系統にmiR-34aを強制的に発現させると、PD-L1は抑制された
肺癌腫瘍マウスにMRX34を注入すると、miR-34aレベルは上昇してPD-L1レベルは低下した
研究チームはさらに、miR-34aがPD-L1遺伝子の特定の箇所に結合して発現を阻害することを示した
研究者たちはマウスを無作為に対照群、MRX34群、X線による放射線療法群、またはMRX34と放射線療法の組み合わせ群に割り振った
治療群the treatment armsは全て、腫瘍に浸潤するT細胞の数が増加し、PD-1チェックポイント分子が陽性のT細胞の数は減少、腫瘍の増殖は遅くなったが、MRX34と放射線療法の組み合わせが最も効果が強かった
次の段階
Next steps
現在進行中の研究では、PD-1阻害剤で治療した患者の臨床結果を後向きに分析し、最初の生検でp53またはmiR-34aの状態が阻害剤への応答を予測するかどうかを調べている
腫瘍内にPD-L1がある患者はPD-1チェックポイント阻害剤に応答する率が高いが、このバイオマーカーがない患者もこれらの阻害剤に応答する
そのため、さらに良い治療を導くためのバイオマーカーが探索されているとCortezは言う
Welshによると、研究チームはラボでMRX34とPD-1阻害剤を組み合わせて腫瘍の応答を改良できるかを調べているとのことである
http://dx.doi.org/10.1093/jnci/djv303
PDL1 Regulation by p53 via miR-34.
関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150420182407.htm
[非小細胞肺癌]
p53→miR-34a─┤PD-L1
MRX34はmiR-34aの効果を真似て、放射線療法中のCD8+T細胞を増やす@AACR2015
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/364b5bd79de2b47829a4608d1e85976e
[結腸癌]
IL-6↑→STAT3↑─┤miR-34a↓─┤IL-6受容体↑→IL-6シグナル↑
November 20, 2015
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151120182831.htm
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者を中心とする研究チームは、
p53という癌抑制遺伝子が『免疫系のカスタマイズ戦士customized warriors』であるT細胞のスイッチが切られないよう阻止して、
肺癌への攻撃が停止しないように保護するとJNCI誌で報告した
「このp53の新たな役割の発見は、癌の免疫療法への応答を知るための潜在的なバイオマーカーや、治療標的となりうる新たな経路を我々に与えてくれるかもしれない」
MDアンダーソンで放射線腫瘍学Radiation Oncologyの准教授であり首席著者でもあるJames Welsh, M.D.は言う
p53が衰えるfailとその免疫を保護する役割が失われるが、
現在フェーズI臨床試験中の実験薬による前臨床研究は、その役割に取って代わる可能性を示す
p53遺伝子は癌で最も変異することが多く、一般的な癌の42%、肺癌の70%で失われるか発現が低下する
肺癌はアメリカの癌で死亡する原因の第一位であり、国立癌研究所によると2015年に新たに肺癌と診断される人数は約22万人、死亡は16万人弱と推定されている
p53は癌の制御において中心的な役割を演じることは以前から知られ、
それは異常が生じた細胞を強制的に修復させ、修復に失敗した時は自殺するというプロセスを調節することによるとされてきた
今回の研究でWelshたちはp53がPD-L1というタンパク質も阻害することを発見した
PD-L1は免疫による攻撃を停止させるために腫瘍が用いるwield分子であり、
PD-L1はT細胞のPD1というチェックポイント分子に鍵のように結合して活性化させることで妨害する
今年になり転移性肺癌の治療に対してペンブロリズマブ/pembrolizumab (Keytruda) とニボルマブ/nivolumab (Opdivo) という2つのPD1阻害剤が承認された
どちらの阻害剤も患者のかなりの割合に有効だが、すべての人に効くわけではない
p53はmiR-34aを活性化させてPD-L1を妨害する
p53 launches miR-34a to thwart PDL1
筆頭著者のMaria Angelica Cortez, Ph.D.は、p53がPD-L1の発現を阻害するメカニズムを同定した
Cortezは言う
「この相互作用は特異的である
p53はマイクロRNAのmiR-34aを活性化させ、miR-34aがPD-L1の発現を直接阻害する
p53が機能を失うと、miR-34aも失われてPD-L1が過剰に発現する」
タンパク質を作る遺伝子から転写されて生じるメッセンジャーRNAとは異なり、
マイクロRNAはタンパク質をコードせず代わりに他の遺伝子を調節する
これまでp53は免疫応答の別の面に関連付けられてきたが、今回のJNCIの論文は初めてp53を腫瘍による免疫回避ならびにPD-L1の調節と関連付けた
研究チームは細胞系統ならびに非小細胞肺癌/NSCLCの患者から得られた腫瘍サンプルで実験を実施し、さらにマイクロRNAの標的を予測するデータベースを用いて分析した
彼らはNSCLCのマウスモデルでMRX34というmiR-34をベースとした薬剤をテストし、それが単体でも放射線療法との組み合わせでもPD-L1の発現を低下させ、さらにT細胞の『疲弊exhaustion』も防ぐことを示した
MRX34はmiR-34を元にテキサス州オースティンのMirna Therapeuticsによって開発された初めての治療法であり、リポソームというナノパーティクルの中に合成したmiR-34aをパッケージングしたものである
MRX34は現在、MDアンダーソンや他の臨床施設で進行性の充実性腫瘍advanced solid tumorsの肺癌と血液がんに対するフェーズI臨床試験中である
研究者はTCGA/The Cancer Genome AtlasからNSCLC患者181人のサンプルを分析し、p53とPD-L1の発現が逆の相関を示すことを明らかにした
p53が変異した腫瘍ではPD-L1のレベルが高く、miR-34aのレベルは低下していた
高レベルのp53とmiR-34aが生存を延長する
High levels of p53, miR-34a increase survival
p53の発現が高くPD-L1の発現が低い患者、またはp53とmiR-34aのレベルが高い患者はどちらも、
p53とmiR-34aの発現が低くPD-L1の発現が高い患者よりも、生存期間中央値median survivalが長かった
NSCLC細胞系統にmiR-34aを強制的に発現させると、PD-L1は抑制された
肺癌腫瘍マウスにMRX34を注入すると、miR-34aレベルは上昇してPD-L1レベルは低下した
研究チームはさらに、miR-34aがPD-L1遺伝子の特定の箇所に結合して発現を阻害することを示した
研究者たちはマウスを無作為に対照群、MRX34群、X線による放射線療法群、またはMRX34と放射線療法の組み合わせ群に割り振った
治療群the treatment armsは全て、腫瘍に浸潤するT細胞の数が増加し、PD-1チェックポイント分子が陽性のT細胞の数は減少、腫瘍の増殖は遅くなったが、MRX34と放射線療法の組み合わせが最も効果が強かった
次の段階
Next steps
現在進行中の研究では、PD-1阻害剤で治療した患者の臨床結果を後向きに分析し、最初の生検でp53またはmiR-34aの状態が阻害剤への応答を予測するかどうかを調べている
腫瘍内にPD-L1がある患者はPD-1チェックポイント阻害剤に応答する率が高いが、このバイオマーカーがない患者もこれらの阻害剤に応答する
そのため、さらに良い治療を導くためのバイオマーカーが探索されているとCortezは言う
Welshによると、研究チームはラボでMRX34とPD-1阻害剤を組み合わせて腫瘍の応答を改良できるかを調べているとのことである
http://dx.doi.org/10.1093/jnci/djv303
PDL1 Regulation by p53 via miR-34.
関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150420182407.htm
[非小細胞肺癌]
p53→miR-34a─┤PD-L1
MRX34はmiR-34aの効果を真似て、放射線療法中のCD8+T細胞を増やす@AACR2015
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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/364b5bd79de2b47829a4608d1e85976e
[結腸癌]
IL-6↑→STAT3↑─┤miR-34a↓─┤IL-6受容体↑→IL-6シグナル↑