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神経変性を止めるための新たな手がかり

2015-12-30 06:34:32 | 
New clues to halting nerve degeneration

December 10, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151210124557.htm

ニューロン変性とニューロン間コミュニケーションの喪失につながるメカニズムについての発見は、
パーキンソン病やアルツハイマー病のような神経変性疾患の治療に将来つながる可能性がある

ノッティンガム大学の科学者は、ニコチンアミドモノヌクレオチド/nicotinamide mononucleotide (NMN) という小さい分子が
軸索axonというニューロンの突起processの内部で一連の破壊反応を引き起こすことを発見した

Cell Reports誌で発表された今回の研究は
大学の生命科学部のLaura Conforti博士と博士課程学生/PhD studentであるAndrea Loretoを中心として実施されたものである


ニューロンは通常とは異なるextraordinary高度に区画化されたcompartmentalised細胞であり、体内の他の細胞に軸索を通して電気信号によるシグナルを伝える細胞である
軸索はとても長く細長い突起projectionで細胞容量の99%までを構成し、その繊細な形と重要な機能により、加齢と関連する様々な神経変性疾患において早くから起きる変性に対して軸索は非常に脆弱である
(神経変性疾患とは例えばパーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、運動ニューロン疾患、多発性硬化症、外傷性神経損傷traumatic nerve injuriesなど)
変性は神経細胞のお互いのコミュニケーションや他の細胞への情報伝達を妨げ、しばしば症状を引き起こす

※運動ニューロン疾患/motor neuron disease (MND): 上位運動ニューロン(大脳~橋,延髄,脊髄)と下位運動ニューロン(橋,延髄,脊髄~筋肉)が選択的に変性脱落して神経膠細胞が増殖する疾患群。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方に障害を生じる運動ニューロン疾患。MNDがALSのことを指す場合もある


ノッティンガムの科学者は以前ニコチンアミドモノヌクレオチド/nicotinamide mononucleotide (NMN) について調べて発表している
NMNはニコチンアミドアデニンジヌクレオチド/nicotinamide adenine dinucleotide (NAD) の前駆体で、NADは補酵素/コエンザイムであり酵素の機能を『助ける』ための分子である
あらゆる生きた細胞に存在し、細胞のエネルギーを作るために不可欠である
研究では培養したニューロンとゼブラフィッシュによる急激な神経損傷acute injuryならびに神経毒性モデルを使い、NMNが軸索の変性を開始することが示された

 NMN→軸索変性

以前の研究を元に、今回の研究では
損傷した軸索においてNMNが自然免疫系に関与するSARM1タンパク質とともに働き、SARM1が軸索変性において重要な役割を演じることを実証する
SARM1は一連の反応を引き起こしてカルシウムを有害なレベルまで上昇させ、軸索を断片化する

 NMN→SARM1→軸索変性

新たな研究でも再び培養ニューロンとゼブラフィッシュモデルを使い(後者はMartin Gering博士と協力して作成した)、
最新の顕微鏡技術をSchool of Life Sciences Imaging (SLIM) 研究所のTim Selfのアシストで利用した

Laura Conforti博士は言う
「この研究はNADの代謝と神経変性との間の関係について、我々の理解に新たな層を加える
NMNはこれまで単なるNADの前駆体という認識だったが、
我々はそのシグナルを伝達する役割を明らかにした」

「NMNとそれが引き起こす下流のシグナルの制御により
軸索変性が根本的な原因の神経学的疾患において予想もされなかった治療の可能性が生まれるかもしれないことを今回の研究は示唆する」

「臨床的な応用にはまださらなる研究を必要とするが、
我々の発見は軸索の死につながるカスケードで重要なプレーヤーを明らかにした
この段階は治療の最も有望な標的である」


OPEN
http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2015.11.032
Wallerian Degeneration Is Executed by an NMN-SARM1-Dependent Late Ca2+ Influx but Only Modestly Influenced by Mitochondria
ウォラー変性はNMN-SARM1に依存的なカルシウムイオンの遅れた流入によって遂行されるが、ミトコンドリアによる影響は限られたものに過ぎない


※ウォラー変性/wallerian degeneration: 神経線維が切断された時に、その末梢側の線維に起こる変性。軸索がふくらんで数珠状になって断片化し、中は神経原線維で満たされる

※ニコチンアミド ホスホリボシルトランスフェラーゼ/nicotinamide phosphoribosyltransferase (NAMPT): NAD+生合成サルベージ経路の律速酵素。ニコチンアミド/nicotinamideをニコチンアミドモノヌクレオチド/nicotinamide mononucleotide (NMN) に変換する

※ホスホリボシルトランスフェラーゼ/phosphoribosyltransferase: 5-ホスホ-α-D-リボシル-ピロリン酸(PRPP)から、D-リボース-5-リン酸(RP)を、プリン・ピリミジン・ピリジンへ転移させる酵素。特異的なホスホリボシルトランスフェラーゼは、例えば『ウラシル ホスホリボシルトランスフェラーゼ』(ウラシル+PRPP⇔UMP+ピロリン酸)のように転移される側の名称が前に付く

※5-ホスホ-α-D-リボシル-ピロリン酸/ 5-ホスホリボシル1-ピロリン酸(PRPP):ペントースリン酸経路の中間体であるリボース5-リン酸から作られる。リボース5-リン酸の部分を転移する『ホスホリボシル供与体』などとして働く


Highlights
・軸索断片化にわずかに先行してshortly preceding、NMNは軸索内のカルシウムイオン/Ca2+の上昇を刺激する
・NMNはCa2+上昇と軸索分解を誘発するためにSARM1を必要とする
・NMNにより誘発される軸索Ca2+上昇の主な源は細胞外環境である
・ミトコンドリアの活発な変化dynamic changesは、NMNにより誘発される変性において原因ではない


Summary
軸索の損傷により、NADを生合成する酵素のNMNAT2が急速に枯渇し、その基質であるNMNのレベルが高くなる

我々は以前ウォラー変性においてNMNが重要な役割を果たすことを提案したが、
その下流のイベントならびに他のメディエータとの関係は不明のままである

今回我々は、軸索切断axotomyが後の軸索内Ca2+上昇につながり、
それは薬理学的または遺伝学的なNMNレベル低下により無効化されることをin vitroとin vivoで示す

NMNがCa2+流入と軸索変性を刺激するためには、変性促進タンパク質pro-degenerative proteinであるSARM1を必要とする

NMN合成の阻害ならびにSARM1の消去はCa2+上昇を阻害して軸索を完全に保ったが、
早期に起きるミトコンドリアの活発な変化を防ぐことはできなかった

さらに、脱分極したミトコンドリアdepolarizing mitochondriaの存在は、ウォラー変性の生じる割合を変化させない

これらのデータは
NMNとSARM1が軸索内Ca2+上昇と軸索断片化につながる共通の経路で作用するが、ミトコンドリアの機能不全はこの経路と無関係である/dissociate mitochondrial dysfunctions from this pathwayことを明らかにし、
そして治療標的としてどの段階が最も効果的になる可能性があるのかを示すものである