今日はミステリー小説の話を。
以前紹介した「カササギ殺人事件」の著者アンソニー・ホロヴィッツによる新しいミステリー小説が、今書店の店頭に平積みされています。
「メインテーマは殺人」(アンソニー・ホロヴィッツ著 創元推理文庫)
そもそもの始まりはTVドラマの「刑事フォイル」
これにすっかりハマり、
このドラマの脚本家なら面白いに違いないと思って「カササギ殺人事件」を読み、そしてまた新しい小説が出たので衝動買いしたというわけ。
最近、本を読むとすぐに眠くなるのでベッド脇に睡眠導入剤がわりに本を置いてたのですが、本読んで眠くなるのは年のせいじゃなくて本のせいだ、と気づいた!
もうね、寝食わすれてという言葉通り、昨日は夕飯抜きでした。
夕飯抜いても犯人が知りたい、一体犯人は誰なんだ???
というわけで、475ページの文庫本を一日で読了しちゃったのでした。
いやあ、面白かったよお。
ミステリーなのでネタバレはしないけど、ストーリーと関係ないところならいいでしょ。
「カササギ殺人事件」がアガサ・クリスティへのオマージュなら「メインテーマは殺人」はシャーロック・ホームズのパスティーシュだ、とある批評家も言ってるように、
ここでは、ホームズ役をホーソーンという元刑事、そして、ワトソン役をアンソニー・ホロヴィッツ自身が買って出ます。
つまり、ワトソンがホームズの事件について書き記しているように、アンソニー・ホロヴィッツがホーソーンという元刑事と共に殺人事件を追いながら、実名でそれを書き記していくという手法。
このホーソーンがなかなか嫌なヤツでね・・あまり書くとネタバレになるから書かないけど、それでいて憎めないというか。これはシリーズ化されるそうで、ホーソーンシリーズの第一作目がこれ。
英語版ではすでに二作目も出ているようです。
しかもね、いかにも本当っぽく実在の映画やドラマ、人物が多数登場するのですよ。
有名どころでは、スティーヴン・スピルバーグにピーター・ジャクソン。
「タンタンの冒険」の新シリーズの脚本をアンソニー・ホロヴィッツが書くことになっていたという設定。彼が実際に手掛けた「インジャスティス」というドラマや「刑事フォイル」も登場します。
フォイル役のマイケル・キッチンの提案で脚本が変更されたんだとか・・
実際の映画やドラマネタがふんだんに散りばめられていて、これはもう、映画好きにはたまらない小説です。
でも、どこまでが事実でどこからが虚構なのかよくわからないので全部信じ込むわけにはいかないのだけど。
ミステリー自体も実によくできています。伏線の張り方、回収の仕方は見事という他ない。私しゃ最後まで誰が犯人がわからなかった。
そして、わかったとき、
ああ、そうだったのかあ!!
と腑に落ちて、納得し、これ以上読むページがないことを惜しみながら、ああ、面白かった! とため息をついて本を閉じる・・
そういう本です。これは。
若い頃、ミステリー作家になりたいと思った時期がありました。
挑戦してみたけど無理だとわかった。頭がついてかないのね。
でも、考えてみれば、人生というのはそもそもミステリー。明日はどうなるか全くわからない。それでも人は、明日もまた今日と同じ日がやってくるとなぜか信じて暮らしているわけです。
でも、よおく考えたら、明日も今日と同じ日が来るなんて誰も保証してくれない。誰にもわからない。明日生きているかどうかさえわからない。たとえここが戦場でなくても、どんな事だって起こりうる。もしかすると、明日殺されるかもしれない・・
「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか・・」
ゴーギャンじゃなくても、誰もが一度は考えたことがあると思います。
そんなミステリアスな人生&世界に、こうしたエンターテイメントはいっとき至福の時間を与えてくれます。
ミステリーにはミステリーを、というわけ。
できれば作る側になりたかったけど、受け取る側のほうが絶対楽しいとも思います。
作るの大変だもの。
最後にミステリー映画を1本紹介します。
「タロットカード殺人事件」(ウディ・アレン監督 2006年)
劇場でこれを見終えて外に出て、私はスキップしながら駅への道を歩いたものです。
なんてすてきな殺人事件!って思いながら。