ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

メアリーの総て

2019-10-02 13:15:46 | 映画

 

お彼岸もとっくに過ぎたというのに残暑が厳しいですね。

さて、今日紹介する映画は、

「メアリーの総て」(ハイファ・アル=マンスール監督 2017年 アイルランド、ルクセンブルク・アメリカ合作)

これ見たくてAmazonプライムに大枚500円払ったのよ。
アマプラって見たい映画いっぱいあるけど、新作はレンタル料高いよね。
グレン・クローズの新作「ねじれた家」なんか700円! 
たった二日間借りるだけなのに。高すぎやしない?

それはさておき、
「メアリーの総て」のメアリーというのは、メアリー・シェリーのこと。
かの「フランケンシュタイン」を書いた女性です。そのメアリーの伝記を基にした映画。またもや実話です。

主演はエル・ファニング。「シドニー・ホールの失踪」にも出てましたね。
今回は作家の妻ではなく、原作者として登場します。

「フランケンシュタイン」はあまりに有名で、映画やミュージカル、原作をベースとした物語は多数ありますが、これ、メアリー・シェリー20歳の時の作品だったって、皆さん知ってました? 私は知らなかった。
(本が出版されたのは1818年。今から200年前のことです)

映画では18歳で書いたことになってるけど、ともかく若い。

そして、メアリーは、例によって女性であるがゆえの様々な苦労を強いられます。
実母は彼女の出産で死ぬわ、継母とうまくいかないわ、男に騙されるわ、子どもに死なれるわ・・まあ女性が経験するあらゆる苦難を背負わされるわけ。

そんな過酷な人生の中で誕生したのが怪物フランケンシュタインだったというのは、深くうなずけます。今では怪物が独り歩きして、作者であるメアリー自身は忘れ去られてしまっているようだけど。

それを掘り起こし、エル・ファニングという妖精のような女優を起用して新たな角度で描いて見せたという点で、この映画は評価されるべきでしょう。
でも、それだけじゃなく、面白いのよ、これ。

最初は少し退屈。19世紀のロンドンはまるでディケンズの世界のようで、今にもスクルージが街角からひょっこり顔を出すんじゃないか、という雰囲気なのだけど、徐々にメアリーの世界に入っていきます。

若くして(16歳で)才能ある詩人と駆け落ちしたメアリー。
メアリーの両親は急進的な自由主義を唱える人たちでしたが(母はフェミニストの先駆者)、メアリーの父は彼女の駆け落ちに反対します。「激情に溺れるな」と言って。

案の定、詩人は甘やかされたボンボンで生活力はなく、しかも妻子がいたことが判明。
それでも、メアリーは彼の才能にかけます。彼もメアリーの才能を認めます。

でも、その後のメアリーの人生は惨憺たるもので、メアリーは(「天才作家の妻」のジョーンのように)自らに降りかかる不幸を作品に昇華させるのですね。

「だけど私は、絶望と闘いの中で、“私の声”を見つけた」
「私の選択が私を創った。後悔してないわ」

作家魂というか、作家にはこれくらいの執念が必要なのでしょう。
ハングリー精神はいつの時代も才能を開花させるトリガーになるようだけど、でも、それでダメになる人も大勢いて、その境界ってどこなんだろうと時々思います。

今の日本のように、パンとサーカスをふんだんに与えられ、ぬるま湯の中でじわじわと殺されていく状態では、なかなかいい作品は生まれないのかもしれません。
でも、きっと、次世代の優れた作家は女性の中から生まれてくると信じたい。

というわけで、なんか最近作家の映画が多い気がするのだけど、
サリンジャーの映画もあるようなので、次回はそれについて書けるかな。
若い頃「ライ麦畑でつかまえて」にハマったなあ。なつかしい~

コメント
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