大荒れのＫ子①

Ｋ子は今夜も仕事終わりに立ち寄った近所のショットバーからメールを寄越した

「何だかつまらない、今からそっち行っても良い？」

当店はまだノーゲストだったので

一も二もなく「大歓迎よ」と返信した

数分後彼女はやって来た

今夜も色々と鬱憤が溜まっていそうだ

職場では他のスタッフとの軋轢があるらしく

「最近はもう慣れたけど…」と言いながらも

不満は酒の力を借りて次々と口をついて出る

さっき店前でキャッチしている時に

通りがかったモリちゃんからいただいた高級お煎餅をついばみながら

Ｋ子の不満は更に拍車がかかって行く


しばらく彼女の話を聞いていたらドアが開いた

コンノちゃんだ

彼もまたＫ子と同じカテゴリーの人間だ

声が兎に角大きく威圧的な物言いに最初は戸惑ったが

よく話してみると決して悪い人ではなく

むしろ興味深い愛すべき酔っぱらいなのだ

私たちと少し離れたテーブルに腰掛けたコンノちゃんを

「ねえ、あのタイプはイケる？」とＫ子に訊いてみた

しばらく店内唯一のオスを眺めていた彼女は

「無理だわ～」

もし気が合えば隣同士に配置して和気藹々やってくれれば

こちらとしても営業し易かったのだが

そんなに都合よく行かないのが現実だ


またＫ子の話の続きを聞いていたら

今度はアニメイターのＹちゃんが登場

久々のご来店だ

独特の世界観を持つ彼はよく隣り合わせたお客様と口論になる

Ｋ子の隣で大丈夫かと一瞬躊躇したが

コンノちゃんの隣に配置しても

ヒデミ１人で２人を接客できないので

仕方なく私がお相手する事に…

「Ｋ子、こちらＹちゃんよ

　とってもアニメの世界では有名な人なの」

Ｋ子も人が良いので一応ウエルカムな態度で挨拶してくれた


Ｋ子、コンノちゃん、Ｙちゃんと年代が近い事もあり

最初はアニソンで大盛り上がりだった

そこへ今度はオナベちゃんのお客様が初来店

コンノちゃんの横に腰掛けてもらう

しかしヒデミは新規客を一瞥しただけで相手しようとしないのだ

また調子に乗ってカウンターで焼酎を盗み飲みしたらしい

こうなるとホント仕事そっちのけで楽ばかりしたがるのだ

おまけに色が濃いので

そのうち隣ににじり寄って勘違い営業を始めるのだ

スタッフが２人しか居ないのだから少しは気を利かせて欲しいものだが

この酒乱ガマには馬耳東風だ

ＹちゃんをＫ子に押し付けて新規のオナベちゃんの席にお邪魔する

以前は高円寺のオカマバーで働いていたらしい

身体の方も手術済みで声も男性そのものだ

人柄の良さそうな彼のプロフィールをさりげなく聞き出して

ヒデミにバトンタッチする


その時である

Ｋ子が声を荒げた

「アンタに何が解るって言うのよ！」

その怒りはＹちゃんに向かっている

あ～、やっぱり

恐れていた事が現実に…

続きは次回ね（そう言いながら忘れちゃったらゴメンナサイ）