ショータイムの着替えもそっちのけで
今しがた店を出た一の瀬を追った私
彼の連れの女がスカーフを忘れたのだ
既にエレベーターホールに2人の姿はない
階数を示すランプは1階だ
窓から顔を出して彼らの行方を追う
通りに停めたタクシーに、一の瀬が女を乗せた
彼を残したまま車は走り出した
帰る方向が違うのだろうか
そうではない、横断歩道を渡って通りの反対側へ…
何とそこには先程まで具合が悪かったはずのA子が立っていたのだ
強制一気の末、ぐったりしたままトイレで介抱して貰い
挙句の果てには楽屋で休憩していたはずのA子
あれは演技だったと言うのか
顔色さえ変えて苦しそうに見えた
その彼女が今は一の瀬と共にどこかへ消えようとしている
今度こそ背中のジッパーを完全に下ろされ
心置きなく続きを楽しむつもりなのだろうか
「何やってるのよ!早く着替えなさい!!」
オープニングの衣装に着替え終えたママが
血相を変えて怒鳴りつける
大慌てで楽屋に戻り支度を整える
ショーの衣装は見た目よりも簡単に着替えられる様に出来ている
しかし、A子の事が気になってついモタついてしまう
オープニングの派手な音楽が鳴り始めた
頭に乗せる羽帽子をピンで留めていない
フィリピン人のキャンディが
「エドナちゃん行きましょ!」と背中を押す
カラフルなライトが点滅する中
張り付いた笑顔で踊り始めるオカマたち
私はとてもそんな余裕がない
しかも元々踊りは苦手な私
幸いにも私の立ち位置は後ろの方であまり目立たない
その時、アスカの手が私の頭に当たった
ピンで留めていない羽帽子は床に転がった
拾おうと思うがフリが激しくて
下手したら私の手をヒールで踏まれそうだ
今日はホントについてない
フィナーレも無事に終え
メンバー紹介が始まった
「今日は何だか元気のないエドナちゃ~ん!
もしかしたらアノ日でしょうか」
お客様から割り箸に挟んだチップをいただく
「そしてお気づきの方もいらっしゃるでしょうが
特攻野郎A子ちゃんが脱走しました
いつもの様にマクラ休憩でしょうか?」
えっ?私は耳を疑った
ママは酔っていたのだろうか
それともオフザケで言ったのだろうか
普段から口の悪さには定評があるが
いくら何でもそれはないだろうと思う
次の日、A子はいつもの様に出勤し
何事もなかったかの様に仕事をしている
彼女の表情から昨夜の様子を伺うことは出来ない
ママも他のスタッフも全く気にしていない
ママが言ったアレはやはり暗黙の了解、周知の事実だったのだろうか
今しがた店を出た一の瀬を追った私
彼の連れの女がスカーフを忘れたのだ
既にエレベーターホールに2人の姿はない
階数を示すランプは1階だ
窓から顔を出して彼らの行方を追う
通りに停めたタクシーに、一の瀬が女を乗せた
彼を残したまま車は走り出した
帰る方向が違うのだろうか
そうではない、横断歩道を渡って通りの反対側へ…
何とそこには先程まで具合が悪かったはずのA子が立っていたのだ
強制一気の末、ぐったりしたままトイレで介抱して貰い
挙句の果てには楽屋で休憩していたはずのA子
あれは演技だったと言うのか
顔色さえ変えて苦しそうに見えた
その彼女が今は一の瀬と共にどこかへ消えようとしている
今度こそ背中のジッパーを完全に下ろされ
心置きなく続きを楽しむつもりなのだろうか
「何やってるのよ!早く着替えなさい!!」
オープニングの衣装に着替え終えたママが
血相を変えて怒鳴りつける
大慌てで楽屋に戻り支度を整える
ショーの衣装は見た目よりも簡単に着替えられる様に出来ている
しかし、A子の事が気になってついモタついてしまう
オープニングの派手な音楽が鳴り始めた
頭に乗せる羽帽子をピンで留めていない
フィリピン人のキャンディが
「エドナちゃん行きましょ!」と背中を押す
カラフルなライトが点滅する中
張り付いた笑顔で踊り始めるオカマたち
私はとてもそんな余裕がない
しかも元々踊りは苦手な私
幸いにも私の立ち位置は後ろの方であまり目立たない
その時、アスカの手が私の頭に当たった
ピンで留めていない羽帽子は床に転がった
拾おうと思うがフリが激しくて
下手したら私の手をヒールで踏まれそうだ
今日はホントについてない
フィナーレも無事に終え
メンバー紹介が始まった
「今日は何だか元気のないエドナちゃ~ん!
もしかしたらアノ日でしょうか」
お客様から割り箸に挟んだチップをいただく
「そしてお気づきの方もいらっしゃるでしょうが
特攻野郎A子ちゃんが脱走しました
いつもの様にマクラ休憩でしょうか?」
えっ?私は耳を疑った
ママは酔っていたのだろうか
それともオフザケで言ったのだろうか
普段から口の悪さには定評があるが
いくら何でもそれはないだろうと思う
次の日、A子はいつもの様に出勤し
何事もなかったかの様に仕事をしている
彼女の表情から昨夜の様子を伺うことは出来ない
ママも他のスタッフも全く気にしていない
ママが言ったアレはやはり暗黙の了解、周知の事実だったのだろうか