朝から災難

あ～寒い

布団から上半身だけ出してキーボードを叩いている

相変わらず無駄に過ごした日曜日


定時に店が終了したので始発の小田急急行に間に合う

発車まで１５分あるが

ホームには既に電車が待機している

今年のダイヤ改正から、この電車が６両から

１０両に延長されたので楽に座れる様になった

特に空いている先頭車両の一番前の席に腰掛けて

いつもの様に疲れた身体を休める事にしよう


下北沢から乗って来た若いカップル

学生にも見える真面目そうな２人だ

見た目とは裏腹に夫婦漫才みたく喋りまくる

それまでの平和な静寂を破る彼らに

周囲の客も眉をひそめている

しかも私の隣に座っているのだから堪らない

ｉ－ｐｏｄがバッテリー切れで

耳栓する事も出来ない

おまけに、オーバーアクションなので

話に併せて不愉快な振動まで伝わってくる

電車の中の睡眠ほど心地良いものはない

そのささやかな幸せすら彼らによって奪われてしまった私


嫌でも耳に入ってくる会話の内容もくだらない

恐らく飲み会の帰りだろう

合コンほどの華やかさは感じられない

男が彼女にとても気を遣っているのが解る

会話が途切れたら間が持たないのだろう

何かしら思い出しては喋りまくっているが

時折、関西弁のイントネーションが顔を出す

女の方もなので、きっと出身が近い事で盛り上がり

帰りのルートが小田急と言う事で同乗してるのかも


ＪＲ南武線との接続駅、登戸あたりで降りないかしらと

密かに期待しているのだが

一向に下車する気配もない

会話も一層盛り上がっていて

オーバーアクションは更に激しくなっている

よっぽど途中で降りようかと思ったが

彼らの為に寒いホームで次の電車を待つのもバカバカしい

それよりもあと２０分くらい我慢すれば

私の降りる駅だ

何とか腹の虫を治めながら目を閉じていた


車掌のアナウンスで目が覚めた

この状況でうたた寝したようだ

隣には相変わらず騒音の元が周囲に迷惑をかけている

でも私はこの駅でやっと解放される

ホームが近付いて来たので席を立つ

「じゃあまた来年、良いお年を！」

男が女に声をかけた

私と同じ駅で女が降りるようだ

残された男はやっと大人しくなる

周囲の客もホッとしているのが解る

何だか私一人が損した気分になった