きのう、「姑息」を「卑怯」だと思っている人の方が圧倒的に多いとの話を書いた。「姑息」の漢字を常々目にしていれば、それが「卑怯」とはずいぶんと懸け離れているなあ、と感じる事も出来るだろう、と書いた。しかし全く違う事を考える人の方が多いらしい。
今朝の東京新聞ののコラム「筆洗」は執筆者が「卑怯」だとずっと思っていたと告白している。正直で感心するのだが、日本語に関しての彼の知識は半端じゃない。何しろ、「我慢」は本来は「うぬぼれの心を指す言葉」だと知っているのである。
「我慢」は仏教用語で、「我が慢心する」の意味だから、「自分を偉く思い、他を軽んずる」の意味になる。
元は仏教用語で、その意味が変わってしまっている言葉は少なくない。仏教がそれだけ民衆の中に入り込んだ証拠と言えるだろう。言葉は低い方、より分かり易い方へと変化する。それは自然の成り行きであって、止める事は出来ないだろう。
コラムは最後に次のように言う。
ここは一つ「姑息」に「ひきょうな」の意も認めるというのはどうか。それこそ〝姑息〟な提案?
まあね、結局はそうした流れに自然となって行くのだろう。でも積極的に「卑怯」の意を認める事には私は反対だ。そうした事を安易に認めていれば、ずるずると言葉は間違った方向に行ってしまうだろう。
執筆者はやはり博学だ。『坊ちゃん』から次のような用例を引いている。
反動が恐ろしいの、騒動が大きくなるのと姑息な事を云った日にはこの弊風はいつ矯正出来るか知れません。
これはいたずらをした寄宿生に対して穏便な処分を主張する教師らに対する反論である。で、これは「一時しのぎ」の正しい意味とも、「卑怯な」の間違った意味ともどちらとも取れるが、「卑怯な」の方がしっくりくる気もする、と言っている。
「反動が恐ろしい」などと言っているから、私も「一時しのぎ」よりは「卑怯な」の方を取りたい。
なぜこれを引用したかと言うと、日本語学者の中には著名な作家の作品を挙げて、一流の作家も使っている言葉だから、間違いではない、などと言い張る人が居て、私は常々困った事だなあ、と思っているからである。私が勝手に「問題な本だなあ」と思っている『問題な日本語』にはそうした用例が幾つかある。
フランスと言う国は自国語を守る事に真剣に立ち向かっているそうで、この「姑息」などのような場合には、絶対に「卑怯な」などの意味を野放しにはして置かないだろう。どのような手段を取るかは知らないが、「姑息=一時しのぎ」である事を強力にアッピールするに違いない。
ずるずると流されていたのでは、簡単に文化などは低きに流れる。昔から、「悪貨は良貨を駆逐する」と言われているではないか。
今朝の東京新聞ののコラム「筆洗」は執筆者が「卑怯」だとずっと思っていたと告白している。正直で感心するのだが、日本語に関しての彼の知識は半端じゃない。何しろ、「我慢」は本来は「うぬぼれの心を指す言葉」だと知っているのである。
「我慢」は仏教用語で、「我が慢心する」の意味だから、「自分を偉く思い、他を軽んずる」の意味になる。
元は仏教用語で、その意味が変わってしまっている言葉は少なくない。仏教がそれだけ民衆の中に入り込んだ証拠と言えるだろう。言葉は低い方、より分かり易い方へと変化する。それは自然の成り行きであって、止める事は出来ないだろう。
コラムは最後に次のように言う。
ここは一つ「姑息」に「ひきょうな」の意も認めるというのはどうか。それこそ〝姑息〟な提案?
まあね、結局はそうした流れに自然となって行くのだろう。でも積極的に「卑怯」の意を認める事には私は反対だ。そうした事を安易に認めていれば、ずるずると言葉は間違った方向に行ってしまうだろう。
執筆者はやはり博学だ。『坊ちゃん』から次のような用例を引いている。
反動が恐ろしいの、騒動が大きくなるのと姑息な事を云った日にはこの弊風はいつ矯正出来るか知れません。
これはいたずらをした寄宿生に対して穏便な処分を主張する教師らに対する反論である。で、これは「一時しのぎ」の正しい意味とも、「卑怯な」の間違った意味ともどちらとも取れるが、「卑怯な」の方がしっくりくる気もする、と言っている。
「反動が恐ろしい」などと言っているから、私も「一時しのぎ」よりは「卑怯な」の方を取りたい。
なぜこれを引用したかと言うと、日本語学者の中には著名な作家の作品を挙げて、一流の作家も使っている言葉だから、間違いではない、などと言い張る人が居て、私は常々困った事だなあ、と思っているからである。私が勝手に「問題な本だなあ」と思っている『問題な日本語』にはそうした用例が幾つかある。
フランスと言う国は自国語を守る事に真剣に立ち向かっているそうで、この「姑息」などのような場合には、絶対に「卑怯な」などの意味を野放しにはして置かないだろう。どのような手段を取るかは知らないが、「姑息=一時しのぎ」である事を強力にアッピールするに違いない。
ずるずると流されていたのでは、簡単に文化などは低きに流れる。昔から、「悪貨は良貨を駆逐する」と言われているではないか。