夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

言葉を間違って覚えているのは仮名書きのせいもある

2011年09月16日 | 言葉
 文化庁が発表した国語に関する世論調査で、最も誤解率の高かったのが、「姑息」だった。7割の人が間違って「ひきょうな」だと思っている。正解は「一時しのぎ」である。
 でも考えてみれば、「姑息」も「卑怯」も漢語だ。こんなに違った漢字と発音で同じ意味になるのはおかしいと思うのが普通ではないか。けれどもどちらも漢字で書かれる事はほとんど無い。「こそく」と「ひきょう」ではどうにも分からない。
 「姑息」の「姑」は難しいが、「息」は「いき。いきる」だと多くの人が知っている。「生きる」と「ひきょう」は違うだろう。普段から漢字で読み書きしていれば、自然とそうした考え方は出来るようになる。もちろん、そうした気力の無い人は無理だが。
 「姑」は「しゅうとめ」(夫の母)だが、「しばらく」の意味もある。だから「姑息=しばらく生きる」で、「一時しのぎ」の意味になる。
 「姑」にしても決して難しい漢字ではない。使う頻度が低いから常用漢字にはなっていないだけの話だ。
 「姑息」が漢語である以上、漢字で書かないと意味は分からない。純粋な日本語に「こそく」なる言葉は無い。

 その点、「ひきょう」はぴたりと合う日本語が無いから、普通の日本語として通用している。それでも「卑怯」と書けば、更に良く分かる。「卑」は「いやしい」で、「怯」は「おそれる。おびえる。よわい」だが、「卑」だけでも「ひきょう=勇気が無く、おくびょう」の気持は分かると思う。

 いずれにしても、日本語として現在通用している言葉の半数以上は漢語のはずだ。それはひいては中国語であり、発音だけの仮名書きにしたのでは、理解出来るはずが無いのである。
 人々の負担を軽くする目的で漢字を制限しているはずなのだが、言葉の理解を妨げている結果にもなっている。悩ましい所なのだが、易しくしても分からない物は分からないのだから、下手に漢字を制限する事は決して日本語のためにはならないと思う。


1 コメント

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確かに! (motchany2k)
2011-09-16 18:42:45
手元の国語辞典で調べてみたところ、姑息とは、
「その場だけの、まにあわせにすぎない」
とありました。私は「卑怯な」と勘違いしておりました。教えていただいて、ありがとうございます。

> 人々の負担を軽くする目的で漢字を制限しているはずなのだが、言葉の理解を妨げている結果にもなっている。

確かにそうですね。ひらがなで書かれていると、意味が推測できないですし、辞書をひいてみようとも思いませんね。
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