夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

古賀氏の退職で、巨大な不毛の存在が明らかになった

2011年09月30日 | 政治問題
 電力会社と大企業、官僚が癒着して利益を貪る巨大組織が、獅子身中の虫と見られた古賀氏が辞職に追い込まれた。周囲は時間の問題だと思っていた。本来なら、古賀氏の立場を守るべき政治家達、例えば与謝野氏や枝野氏、蓮舫氏などがそっぽを向いた。蓮舫氏などは、古賀氏の本さえ読んでいないとはっきりと言った。皆さん、口では色々とおっしゃっているが、実際にはあの程度なのだろう。

 電力会社は独占企業である。日本は世界一高い電気料金を支払わされていると聞いた。その料金は国民が払う。もちろん大企業も払うが、電気料金は原価として国民の支払う代価の中に含まれる。従って、電気料金はすべて国民が支払う結果となる。
 寡占に近い大企業が国民の幸せを願って、幸福をもたらす物ばかりを作っているのなら、話は別だが、結構、無駄でどうしようもない物も作って国民に売り付けている。そして我々国民は、それで幸せになれるのだと洗脳されているから、文句を言わない。
 何の事は無い。我々の払う電気料金はすべて電力会社に入る事になる。そしてそれが独占企業なのである。そうした図式を抑えるのが官僚の役目のはずだが、その官僚が甘い汁を吸いたいと黙認するだけではなく、奨励さえしている。

 今度の福島の原発事故で、そうした図式がすっかりあからさまになってしまった。国民は全員、それを知っている。にも拘らず、相変わらず糊塗しようと彼等は躍起になっている。それが古賀氏を退職に追い込むと言う典型的な形になって現れている。
 電力会社・大企業・官僚が癒着している。「癒着」とは「必要以上に何かの組織にべったり依存する」(新明解国語辞典)だが、漢語だから、感覚的に良く分かる、とは言い切れない。我々には、と言ってもすべての人々にではないだろうが、もっと直接に訴え掛けて来る言葉がある。「つるむ」である。「電力会社・大企業・官僚がつるんでいる」。「つるむ」とは「連れ立って行動する」の意味でも使われるが、元々は「動物が交尾する」の意味である。岩波国語辞典にはその意味しか載っていない。

 「電力会社・大企業・官僚の癒着」は「交尾」なのである。そんな事を堂々と天下にさらして良いものか。当人達は厚顔無恥だから、恥ずかしいとは思わない。恥ずかしさよりも金儲けの方が遥かに抵抗しがたい事なのである。だからその金儲けがいかに莫大なものかがはっきりと分かってしまうのである。

 動物の交尾がなぜ人間が連れ立って行動する、の意味になるのだろうか。先の明解国語辞典は、それは、雅語動詞「つるぶ」の転用、だと言う。しかし、岩波古語辞典には「つるぶ=交尾する。交説する。〈つるみ〉とも」としか無い。「つるみ」には「つるびに同じ」としか無い。
 新選古語辞典(小学館)は少し違う。
・つるむ=「つるぶ」とも。1・つれだつ。「あとからつるんで来申すわ」。2・交尾する。
・つるぶ=交尾する。「つるむ」とも。
 「つるむ」では「連れ立つ」の方が原初の意味になっている。これは「つるぶ=つるむ」ではない事を示している。元々は「つるぶ」だった。それは「交尾する」である。そして「連れ立つ」姿の実態が「つるぶ」にそっくりな、言い替えれば、みっともない連れ立ち方を「つるぶ」で表すようになった。でもそれではあんまりだ、と言い方を少し変えて「つるむ」の言い方になった、と考えるのが筋が通る。
 新明解国語辞典は三省堂の発行である。そこに、「つるむ」は「つるぶ」の転用だと書かれている。にも拘らず、同じ三省堂発行の例解古語辞典には「つるぶ」も「つるむ」も無いのである。そう言えば例解古語辞典には他の二冊の古語辞典にはある「兄=え」も無かった。
 話が発展してしまっているが、古語の「え=兄」は「弟から見た兄。妹から見た姉」の意味なので、とても重要な言葉なのである。従って、「弟=おと」は「兄に対する弟」「姉に対する妹」になる。万葉集関係のある本では、「兄と言えば弟」だと言って、「兄」の表記で「(男性の)弟」を表していると説明しているが、「兄」の表記で「妹」を表している場合もある。多分、その執筆者は「兄=男性」だと思い込んでいたのだろうが、例解古語辞典だけしか持っていなければ、間違いだと気付く事は恐らくは無いだろう。辞書の責任は重大なのである。