金属中毒

心体お金の健康を中心に。
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プロポーズ小作戦105

2009-09-29 04:19:28 | コードギアス
プロポーズ小作戦105

風の音を天子は聞いた。
朱禁城の壁は厚く、外の音を遮る。実際に聞こえているのは天子と星刻の呼吸音。

「どうして?」
天子の声は弱い。
星刻はいつも優しくて穏やかで大きくて、いつもなんでも教えてくれた。こんな沈黙が二人の間にあったことなど無い。
「どうして」
天子はもう一度同じ言葉で繰り返す。
一度目の問いはどうしてそんなことをしたのという問い。二度目はどうして答えてくれないのという嘆き。
星刻はいつも天子の言葉を全てわかってくれた。まだ幼い頃から。それなのに今日天子の言葉は星刻には通じなかった。
風の音がする。
「どうして」
星刻は天子の言葉をそのまま返した。
(なぜ、お分かりになってくださらない。私はいつもあなたのことだけを、あなたを守ることだけを望み行動しているのに)
星刻は椅子を立ち、天子の前にひざまづく。
見下ろす天子の視線と見上げる星刻の視線が交差する。
天子の瞳に揺らぎがないことを星刻はうれしく、同時にさびしく思う。
(天子様はもう子供では、ない)
すでに国主としての自覚を持ち、民のことを考えている。
天子の成長はうれしい。だがその成長があの男、ジノに促されたゆえかとおもうと。
自分がそこにいれなかったさびしさと、強い嫉妬心が星刻を満たした。