金属中毒

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プロポーズ小作戦81 

2009-07-05 14:48:16 | コードギアス
プロポーズ小作戦81 
2021/1/28深夜

星刻はどうするかしらと、そっと見上げる。どきどき波打つ心臓の音。ふと星刻の声が止まると、天子に聞こえるのは自分の心音だけ。その音さえも、好きだと言っているように聞こえてしまう。
(深い透明な黒)
ずっと前に詩や文学の教師が、たまたま入ってきた星刻を見てそう評した。
教師によると本当に純粋な水は、全ての波長の光を吸収し尽くし、深い黒に見えるという。
黒河はその透明さゆえに黒の名を得た。もっともそれは昔の話で、今では水源が枯れかけ、どこが黒河だったかさえはっきりしない。

今黒に写るのは白。星刻は自分の髪を見ている。こんな時小さい頃は、いつも優しく漉いてくれた。今宵、天子は動かない彼の手に不満を感じる。
私を見て。天子は星刻に視線を合わす。
星刻は一度瞬きした。
目を開いたとき写っていたのは、優しい桃色。中華の誇る桃花園を刺繍した室内履き。
星刻の視線は天子の足元を見た。
まるで、彼女の瞳を見ることに耐えられないかのように。
天子は泣きたいような怒りたいような気分になる。
神楽耶様やナナリー様に聞いた話や、本の知識によると、この後は強く抱きしめられるはずなのに。
星刻は動かない。
『あちらは立場の差や年の差を気にしておられるのでしょう。でも、そんなものなど乗り越えてこそ恋ですわよ。天子様。だから、ぜひここらで天子様からラブアプローチしましょう』
『いろいろお考えのようですし・・・(そういうところまで、お兄様に似ていらっしゃる)。以外に急なイベントやアクシデントによわいかもしれません。天子様が強く迫ればうまくいけば押し倒せます』
いつの間にか2人に増えた恋愛ナビゲーターの期待を込めた予測もむなしく、星刻は動かない。