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プロポーズ小作戦83 

2009-07-06 09:13:28 | コードギアス
プロポーズ小作戦83 
2021/1/28深夜

「人魚姫は自分の城を出てみたかったから、王子を好きになったのを理由に魔女と契約したのよ」
星刻は何も答えない。実のところ一瞬で変わった天子に圧されて、声が出ない。
天子にはそんなことはまだわからない。だから心の波打つままに言葉を続ける。
「本当に王子が好きなら、王子を海の城に連れ帰るべきなのよ」
神楽耶に似た口調で天子は言い切る。
「海のお城で王子を幸せにする自信が無かったから、何があっでも幸せにできるほど愛していなかったから、人魚姫は自分を代価にしたの」
代価などという単語がさらりと出てくるあたり、このところの天子の読書内容がわかるというものである。
つまりは天子の考えでは、人魚姫は愛が少なすぎた。それは王子に対してだけではなく。自分自身に対しても。だから欲望と引き換えに自分の生きる世界を離れた。
人魚姫は愛されてはいた。父王たる海王にも姉妹達にも。その姉妹達の犠牲に対しても人魚姫は応えず自滅した。王子はそれを知ることさえなく幸福になった。これでは悲恋というより、愚劇である。
天子の言葉を文章に訳すなら、上のようになる。

星刻はゆっくりと天子をベッドに降ろした。
その手触りの柔らかさが、星刻に教える。天子はもう子供ではない。
法的にも16歳。そして心ももう幼い日のままではない。

「天子様」
ようやく星刻が口を開く。
「明日の式典に差し支えますから、もうお休みください」
言い終えると星刻は丁重に辞去の挨拶をする。
このときちょうど星刻の胸ポケットの緊急用に携帯が音を立てた。
「私は公館に戻ります」
どうやら、星刻が直接仕切らねばならないほどの何かが起きたらしい。
「星刻は私と一緒に水の底に来てくれる?」
自分を人魚姫になぞらえての問いかけ。
天子はただ一言が欲しい。あわただしく立ち去ろうとする男に強く問う。
「お守りいたします。永久に」
星刻の応えはあのときの言葉。


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