俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

「ファルコとの出会い」その17

2008年07月05日 04時06分54秒 | 小説『ファルコとの出会い』

「後ろだ!! フォックス!!」
 ペッピーの声が、ファルコの腕になかば見惚れていたフォックスの意識を切り裂いた。
 レーダー上、敵機を示す輝点が、自分の真後ろで明滅している。真後ろに、ファルコがいるのだ!
 空中をターンし、後方にすり抜けたとばかり思っていたファルコ機は、もう一度宙返りし、自分の後ろに回りこんだらしい。フォックスの、敵の腕に見惚れ、称えるような気持ちが、一瞬にして凍りつき、死の恐怖へと変わった。これがもし、重力場発生装置しか武器を持たないファルコ機でなく、レーザーや対空砲を装備したベノム軍機だったら? 息つく暇もなく、背中に攻撃を浴びていることだろう。死という、厚くみえてその実悲しいほど薄い壁のむこうに、父親の姿が見えた気がした。
 気が遠くなるほど思考をめぐらせた一瞬ののちに、フォックスは操縦桿を握り締め、大きく引いた。先刻ファルコがしたのと同じように。
 ファルコ機に勝るとも劣らない機敏な反応で、アーウィンはそれに応え、機種は真上を向きさらに後方へと方向転換する。空飛ぶツバメが身を返すようにスムーズな動きだ。それはファルコのようにパイロットの腕だけによるものではなく、多くをアーウィンという機体の性能に頼ったものではあるが。

 間一髪だった。かげろうのような重力場をまとったファルコ機が、反転するアーウィンの直下を猛スピードでかすめていった。
 はっ、はっ、とフォックスは息をついた。喉がからからに乾いていて、皮膚はじっとりと湿っていた。


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